HARD BLOW !

村田金への雑感

 ボクシング好きにとっては村田諒太のミドル級での金メダル獲得という超のつく偉業で大団円を迎えたロンドン五輪。いやまじでさんがリンクを紹介していたせりしゅんやさんのブログ(http://blog.livedoor.jp/serishunya/)によると、その村田諒太がかつて発していたと言う印象的なコメントがあります。彼は北京五輪予選で敗退し一度引退した後現役復帰した時「社会ではボクシングで日本一になるより、普通にワードやエクセルを使えるほうが上だった。だから自分のボクシング復帰も、自己満足なんです。8年後には、金メダリストでも世間から忘れられる。そうなると、見返りじゃなくて、自分が自分を満足させられるかどうかだと思いますね」と言ったというのです。これはマイナースポーツと言っていい日本のアマチュアボクシング(世界的にはマイナースポーツではない)に体を張るものの矜持と覚悟が溢れているコメントであると思います。

 五輪の時だけ注目されるアマチュアスポーツ選手の苦境を描いたスポーツ映画に「プリフォンテーン」という作品(http://www.tsutaya.co.jp/works/10001606.html)があります。これはDVDすら出ていないマイナーな一本で、アメリカ代表の陸上中距離選手としてミュンヘン五輪に出場したステイーブ・プリフォンテーンの伝記映画。彼はアメリカのアマ選手の生活と地位の向上に貢献した選手であり、また黒人テニスプレイヤーのイノベイターとなったアーサー・アッシュ(マイク・タイソンが彼のタトゥーを入れていることでも有名)と並ぶ創業期のナイキのシューズを有名にした選手でもあります。戦闘的なレース振りで中距離トラック競技を人気スポーツに押し上げ、ライバルとの激しい五輪選考を勝ち抜き、選手村でのテロ(スピルバーグの「ミュンヘン」の題材にもなった黒い九月がイスラエルの選手を誘拐して殺害した事件)を経験した彼の人生はそれだけでとてもドラマチック。しかしメダルが取れなかった五輪が終われば彼には何も残りませんでした。飲み屋の経営で糊口をしのぐ彼は大衆と社会に怨嗟をぶちまけます。曰く「普段は見向きもしない経済的にサポートもしないくせにいざオリンピックになるとメダルを取れとプレッシャーをかけてくる。でもオリンピックが終わればまたほったらかし。こんなもんやってられない」と。そこから彼は競技で報酬が得られるようにアマチュア規定を変更させようとAAUとの闘争に入るのですが、不慮の事故に遭い24歳で夭逝します。マイナースポーツ選手の気高さと、しかし理想だけでは生きられない悲哀が描かれた異色のスポーツ映画でありました。
 
 振り返れば日本でもバンクーバーでの冬季五輪でスノーボードの選手が選手団の制服の着方を批判され猛烈なバッシング受けました。「公費で派遣されているんだから身の程を知れ」というような心無い言葉も浴びせられました。選手に国力を仮託するような野蛮状態をまだ我々も生きてるわけです。早くそんな段階を過ぎて優れた人間を称えるような社会、彼らが払った犠牲と貢献に正しく報いるような社会に早くならないでしょうか?かくいう村田選手も一生食うに困らないような待遇が待っているわけではなく、むしろ彼が言うように一夜の王のような評価しか受けられないかも知れません。せめてボクシングファンくらいは彼の偉業を覚えていなければいけないと思います。

 最後にプロ転向ですが、ドイツやアメリカのプロモーターから引きは無いのでしょうか?キューバ人を亡命させるようなエグいことやってるわけだから、是非村田を勧誘して欲しいなあと思います。彼のスケールに日本の業界は合っていないのでは?実際マッチメイクすらままならないと思われます。

 投稿者 アイスを食べたら歯の詰め物が取れた(旧徳山と長谷川が好きです) 

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