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高山勝成選手インタビューPART2 ソト戦、体重超過を語る

 インタビューのPART2です。今回は海外で大きな話題を呼んだテキサスでのエルウィン・ソト戦の感想や、頻発する体重超過についての体験に根差した見解などを伺いました。

PART1はこちらから→五輪挑戦からプロ復帰、ソト戦、そしてこれから 高山勝成選手インタビューPART1
   
高山勝成選手の過去記事はこちらから
2013年11月
2014年4月
2014年8月
2014年12月
2015年4月
2015年9月
2019年7月 全日本選手権愛知県予選のレポート
2019年9月 全日本選手権東海予選のレポート

テキサスでのソト戦について

 インドアでのスポーツイベントでアメリカ史上最高の動員(73000人)になったというカネロ・アルバレス×ビリー・ジョー・ソーンダース戦のアンダーカードとして行われたエルウィン・ソト戦について。試合後のパフォーマンスも含めて世界中で大きな話題を 呼んだ試合について、当事者からみた感想を伺いました。

―オファーがあったのは3週間前ということですが、間に合うだろうと思いましたか?

高山「まあなんとか(笑)」

―他の日本人の選手にも声がかかってたみたいですけど、話が来てすぐ受けたんですか?

高山「即答しないと他の選手にとられると思ったのですぐに手を挙げました。正式な契約をしたのは2週間前です」

―スパーはどれくらい出来たんですか?

高山「スパーはやってないです」

―じゃ技術練習と減量だけと言う感じですか?

高山「サンドバッグの打ち込みはやりましたね。一階級上げるし、自分のパンチの質は一撃で決めれるようなものじゃないのは分かってるので、12R動けるスタミナを作って、前半と中盤はやりすごして、後半に相手のスタミナと集中力が切れたところに一気に襲い掛かって、コンビネーションと連打でKOかTKOに持って行こうというプランで三週間トレーニング積んでました」

―ソトの印象はどうでしたか?今までの試合で荒っぽいタイプかと思ってたんですけど、思ったより技術がしっかりしてましたね

高山「僕の印象では若くて勢いがあるヤンチャなタイプかなと思ってたんですけど、エディ・レイソノにも見てもらってたみたいで、そういう技術もミックスされたスタイルにもなってるなという印象でした。ただ1,2Rは上手く行ったんですよ。いいの貰ってぐらついたりしたんですけど、それでソト選手が行けると思って振り回してくれたんで、3R4Rくらいで集中力が切れて来てたんですよ。こっちとしたらこのままのらりくらりやり過ごして、集中力が切れるのを待ったらいいからスタミナも温存しとったんですよ。ボディ効いてきてるのも分かってたので、後半失速したところを一気に行こうと。そしたら止められて(笑)」

―凄い変なタイミングで…

高山「8ラウンドの後のインターバルで、中出さんからも『ここからの3ラウンドで自分の判断で行けると思ったら勝負しろ』って言われてたんですよ。こっちもそのつもりでいたら、その9ラウンドで止められてしまって…」

―実況も『ここで止めるんかい!』という感じで(笑)

高山「あのレフェリーは良くないっすね。インターバルでコーナー来て選手の表情見たらどっちが疲れてるか分かるはずだし。でも試合終わった直後のシャドーが、僕の言いたいこと全てです」

DAZNのツイッターにアップされた高山選手の試合後のシャドーの動画は現在56万回再生!→高山選手試合後のシャドー動画

―本来真面目でおとなしい高山さんが、瞬間的に会場を湧かせるような自己表現が出来るようになったということも凄いことだと思いました

高山「やっぱり海外の試合は張りがあるというか、よりやるかやられるか感が出るし、ダラスはメキシカンが多いからアウェイじゃないですか。自分はやっぱりそういう環境で試合するのが好きだし、そういう場所で勝ってこそ本当の勝者だと胸張れると思います」

―アメリカでの試合は初めてですよね?

高山「カネロとソーンダースと言う、ああいうイベントのセミファイナルで出来たと言うこともね、自分にとってはいい経験になりましたね」

―アメリカのメガファイトって結構セミまでガラガラみたいな時もありますけど、かなりお客も埋まってていい雰囲気やったと思うんですけど

高山「そうなんですよ。僕もセミまではガラガラなんかな?と思ってたんですよ。でもセミセミくらいから客席がビッチリ詰まってたんで、これは最高の舞台やと思って」

―コロナの自粛開けでお客さんもエンタテイメントに飢えてたんでしょうね

高山「自分としては三週間という短い準備期間で、ちゃんとコンディション作って考えていた戦術通り戦えたので、やるべきことはやったと思っています」

体重超過について

 続いては最近頻発する体重超過や、計量前の救急搬送などについて、高山選手が東京スポーツの取材に答えた記事を踏まえてお話を伺いました。

―谷口×石澤戦の体重超過について東スポの取材に答えて記事になってましたね

東スポ記事へのリンク→高山勝成が異例のミニマム級タイトルマッチを一刀両断「危ない試合」「僕なら断る」


高山「ソト戦の後も取材のオファーはあったんですけど全部断ってたんですよ。メディアの人もオリンピック予選のことやアメリカの試合のこと色々聞きたいとは思うんですけど、結局何話しても業界の話とかジム制度の話とかそういうことは全然書いてくれなくて当たり障りのない内容にされるので取材受けても意味ないなと思って。ただ東スポの依頼は体重超過についてということだったので、それだったら意味あるかと思ったので受けました。限られた紙数の中で僕の言いたいことはちゃんと全部書いてくれたので、取材受けて良かったなと思いました」

―はっきり試合はやるべきじゃないと言った

高山「そうですね。分かっててもこの業界の中ではなかなか言えない」

―プロモーターもジムも選手も、なんでみんなこんなに準備してないの?と思うんですけど

高山「結局興業側も選手も責任感ですよね。自覚、プロ意識、というか。スポンサー、応援してくれてる人に迷惑かけるし、実際何千万というお金が動いてるわけじゃないですか?僕やったら体調は崩しても体重は作ります。最低限の仕事やから。僕がもし石澤選手の立場やったら、公開計量や記者会見にも出てないです」

―落ちてないのに秤乗っても意味がないから、セレモニーに出てる暇があったら体重落とす、と

高山「そうです。ちゃんと相手陣営に説明して、時間が許す限り体重落とす努力をします」

―高山さんは今でも試合一週間前に一回リミットにするというスタイルなんですか?

高山「そうですね」

―体重超過が頻発してるなかで、昔ながらじゃないけど同じ方法で年齢を重ねてもちゃんとウエイトを作ってるベテラン選手も沢山いますね

高山「体重超過する人はトラブルを想定してないのかな?と思うんですよね。僕は今流行ってる直前に水抜きで一発勝負みたいなのは怖くて出来ないですよ」

―体重超過だけじゃなくて試合直前に棄権とか救急搬送とかも増えてますね

高山「何も減量に限った話じゃなくて、試合でも序盤にいいカウンター貰って、効いてダウンすることがあるかもしれない。その時にムキになって立ったらふらついて止められるかも知れない。だから、あらかじめそういう展開を想定してダウンしてもカウントエイトまで使って動揺してないか、手足は動くか、頭は冷静かを確認してから立つという準備をしておかないといけない。減量についても同じで、試合直前に怪我して練習できなくなるかも知れない、風邪ひくかも知れないというトラブルを想定しておかないといけないんですよ」

―どれだけ不測の事態を想定するか?ということですね

高山「試合でも練習でも自分のイメージ通りに行くことってあり得ないじゃないですか?そもそも軽量級は中量級や重量級と比べても身体の体積の違いからくる筋肉量、基礎代謝、汗の量が違います」

―同じ一キロでも普段の体重との比率が全然違いますしね

高山「体重超過があると勝っても納得がいかないというかモヤモヤするし、見てるお客さんも心から楽しめないと思うんですよ。誰にとっても中途半端な結果になるので、試合はしない方が良かったと思います」

今後の目標について

 最後に今後の目標について伺いました

―五輪挑戦宣言した当時、中出さん(高山選手のトレーナー兼マネージャーの中出博啓氏)は『高山本人がやる気が出る目標を探してて、それがオリンピックなんじゃないか』みたいにおっしゃってたんですけど

高山「それはそうですね」

―では今後というか、オリンピック終わってボクシング出来る年数もいよいよ限られて来てると思うんですけど、今一番やりたいことはなんですか?

高山「今一番やりたいことですか?四月から大学に戻ってて、教職の単位が少し残ってるのまずはそれをしっかり全うして」

―じゃ教育実習も行って

高山「そうです、今年はその教員免許をとることを第一の目標にしてるので」

―確かに、もう闇雲に試合をするという段階でもないですもんね

高山「そうですね。今は」

―今所属してる寝屋川石田ジムはどうですか?

高山「若い選手が多くてみんな個性があっていいですよ。プロ選手からも一般会員の方からも刺激を貰っています」

―試合中継見てると中出さんもセコンドについたりしてますね

高山「そうなんですよ。この間は僕も興業の時、会場の入口で『ここで検温して下さい』とかやったりして」

―誘導係とか場内整理とか

高山「そうです、そうです。僕が大学に戻って、中出さんも今は仕事をメインにされてて」

―もう関係も長いから、なんかあったらまたすぐ集まって動けると言う感じですね

高山「そうですね。今は教職過程の授業からの学びと発見を大事にしていきたいと思います」

 常に予想外の行動でファンを驚かせて、日本のボクシング界の閉鎖性を打ち破ってきた高山勝成選手とチームは今後どこに向かうのか、次の動きを期待して待ちたいと思います。高山選手どうもありがとうございました。

久々に長文書いて疲れた (旧徳山と長谷川が好きです)

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