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亀田裁判高裁判決解説

 亀田兄弟が予想通り二審の高裁でもJBCに勝訴して、はや一か月が経ちました。
 
 賠償額は一審地裁判決の4550万円から倍増以上となるおよそ1億円。この賠償金には更に利息がついており、亀田側が訴訟を提起した2016年に遡って年5%の利子がつきます。賠償金が利息込みで一億数千万円、それプラス訴訟費用や弁護士費用など莫大な負債を負ったJBCはゾンビ法人と言っていい状態です。

 当ブログは某筋より判決文の記述内容を入手しましたので、なぜ賠償額が増額になったのか?どのような事実関係が争われたのか?を、今一度振り返ってみようかと思います。今更判決内容を検証したところで何ほどの意味があるのかは分かりませんが、一つの大きな節目として顛末を記述しておく必要はあるかと思います。

 まず『なぜ賠償額が倍増したのか?』ですが、これは恐らく亀田兄弟がライセンスの発給を止められて不利益を被った期間の認定が変わったことに由来しています。判決文より当該箇所を引用します。(以下引用)

 一審被告JBCの理事長である一審被告秋山は、一審原告3選手がボクサーライセンスを取得するために、吉井らが本件処分を受け入れることを条件としていた。そうすると、本件処分を争っていた吉井が、一審被告JBCに対し、平成27年以降にクラブオーナーライセンスを新規申請したとしても、これが交付される可能性はない。したがって本件処分と相当因果関係のある損害は、平成26年中に生じたものに限られず、同年から吉井と一審被告JBCの紛争が解決した別件和解時(平成29年7月19日)までの間に生じたものがこれに当たると解するべきである(引用以上)

 要は、亀田兄弟がJBCのライセンスの不支給によって試合が出来なかったと見なされる期間を、ライセンスの有効期間の一年でなく、ライセンスを申請してもJBCが拒否したであろう期間まで延長したと言うことであります。不利益を被った期間が長くなったことによって、『出来たであろう試合数』が増え、その結果『稼げたであろうファイトマネー』が増えたということでしょう。極めて妥当な判断だと思います。

 亀田を毛嫌いするあまり、「亀田の収入がそんな高いわけ無いだろう」みたいな妄言吐いてるアホなボクシングファンもいるみたいですが、亀田サイドは証拠として所得証明や納税書類なども提出しており、金額は確かなものです。もとより裁判はそんな甘いもんではありません。

 もう一つ、この裁判では新たに証人尋問が行われて、亀田大毅×リボリオ・ソリス戦の為のルールミーテイングにおける事実関係が審理されました。筆者はその尋問を傍聴し、やりとりを詳細に記事にしています。
               ↓
JBC亀田裁判控訴審 証人尋問傍聴記 PART1
JBC亀田裁判控訴審 証人尋問傍聴記 PART2
JBC亀田裁判控訴審 証人尋問傍聴記 PART3
JBC亀田裁判控訴審 証人尋問傍聴記 PART4
JBC亀田裁判控訴審 証人尋問傍聴記 PART5
JBC亀田裁判控訴審 証人尋問傍聴記 PART6
JBC亀田裁判控訴審 証人尋問傍聴記 PART7

 証人尋問ではソリス選手の体重超過による失格で、IBFタイトルの扱いがどうなると決まったか亀田側の主張とJBC側の主張真っ向から対立しましたが、判決文ではJBC側の主張は『供述等の信用性が認められることにはならない』『不自然と言わざるを得ない』『その内容が大きく変遷しており、不自然である』と悉く信用性を否定され、『(JBC側証人の)供述等を信用することは出来ないというべきである』と結論付けられました。 

 賠償金の支払いについては、組織としてのJBCと当時の理事長だった秋山弘志氏、事務局長だった森田健氏、後に事務局長になった浦谷信彰氏の被告4者が『連帯して』支払うように命じています。JBCは現在借金経営であり、支払い能力がないため残りの被告が個人的に賠償することになるんでしょうかね?知ったこっちゃないですが。

 JBCが上告を断念したことで虚しい裁判闘争は終わり、勝ち目のない裁判を続けたJBCは高額な賠償と過大な裁判費用で破綻しようとしています。ことここに至って、JBCの腐敗を無視して来たアホなボクシング雑誌や亀田追放を煽ってきた低脳ボクシングファン達が「JBCが無くなったらプロボクシングはどうなるんだよ!」「公正な試合管理が出来るのかよ?」と被害者ぶって逆ギレしています。こうしたジャーナリズムや論壇の不在と、亀田を追い出すこと以外頭にない幼児的なファンの気質がJBCの崩壊を速めたことは間違いありません。要は記者やファンのノリが余りにも『子供っぽい』のです。

 JBCの財政はもう何年も前に、安河内剛氏や職員を不当解雇して、労働裁判で連続敗訴したことで危機的になっており、どの道破綻することは明らかでした。

 当ブログは過去に、行きがかり上でアマチュアボクシング界を震撼させたいわゆる『山根問題』にも関与しましたが、アマの世界では関係者に、「なんとかしなければならない」と言う危機感があり、自浄作用が働きました。しかし、残念ながらプロボクシングでは関係者は他人の出方を見てばかりだし、ファンや専門誌は「ボクの大好きプロボクシングはどうなっちゃうの?」とうろたえてるだけ。

 JBCはスポーツの試合管理をする組織であり、本来は選手や関係者に『ルールを守れ』と言う立場です。そのJBCの職員が組織をあげて何度も違法行為をおこなってきたことを、誰も問題にしないならこのスポーツはどの道長くないでしょう。どっちが勝った負けた、誰が強い弱い、とキャッキャッ言うとりゃええのです。

 最後に、安河内剛氏の追放に始まるJBCの崩壊劇については、株式会社東京ドームにも重大な責任があります。JBCは実質的に東京ドームの外郭団体であり、コミッショナーは東京ドームの社長で、幹部はドームの社員の兼任、賠償を命じられた当事者の秋山氏は東京ドーム出身で、裁判でJBC側の代理人を勤めた谷口好幸氏は東京ドームの取締役です。東京ドームは、自社の幹部社員が関与する組織が違法行為を乱発していることについて責任を感じていないのでしょうか?新たに東京ドームのオーナーになった三井不動産はJBCの違法行為をこのまま放置するのでしょうか?企業の社会的責任はどうなるのでしょうか?

 有耶無耶に終わらせれば、また同じ問題が起きるだけだと思います。

 書いててゲンナリした(旧徳山と長谷川が好きです)

Comment

ビートル says... ""
 JBCが財政破綻、消滅の危機にあるというのに、ボクシングメディアを初めとするスポーツメディアの反応は極めて鈍いものがあります。これは非常に不思議な話です。曲がりなりにも日本ボクシング界を統括し、タイトルマッチやランキングの認定などを行ってきた組織が消えてしまうと言うのは一大事なはずです(仮にプロ野球で日本プロ野球機構がコミッショナーも含めて消えてなくなったらどうなるか)。ところが、ボクシングメディアはやれゴロフキン対村田とか、井上対ドネア第二戦だとか相変わらず試合の報道のみに狂奔しています。理屈を言えばJBCが消えてしまった後は、どんな好カードも「草拳闘」になってしまうかもしれないのにです。

 危機感皆無の現状はまさに管理人さんが仰る通り「JBCの腐敗を無視して来たアホなボクシング雑誌」だからなのでしょうが、私はもっと深刻な事情があるとも思っています。つまりJBCとは消えてなくなってもかまわないような団体だったというわけです。だいぶ昔に「JBCは所詮興行主の連合体にすぎず、何ら公的な権威のあるものではない」という批判を目にした事があるのですが、そうだとしたら「なくなっても大して支障がない」という発想でボクシング関係者が動くのも当然と言えば当然でしょう。でも、その程度の団体が最高権威として君臨し続けてきた日本ボクシング界とはいったい何なのかがまず問われるべきです。

 今回のJBCの崩壊劇から真に教訓を導き出すとすれば、今度こそ真っ当な統括機関、公正なランキングやタイトルの認定ができるコミッションを作り出すことはもちろん(コミッショナーはお飾りではなく、きちんとした権限を持った最高責任者でなければならない)、ボクシング界全体の体質改善も急務だという事です。しかし、その方向を目指す動きは残念ながら乏しいと評せざるを得ません。
2022.05.23 20:37 | URL | #Dp0g9hEU [edit]

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