HARD BLOW !

悪童・・榎 洋之さんのこと・・  それでもボク愛

誤解の無いようにしておきますが、「彼」を悪ガキと言うつもりはありません。
悪童とは一般的には手のつけられない悪さをする子供という意味ですが、私は彼には敬意を持ってそう呼びたい。純粋で邪気の無い言動はしばしば大人達を困惑させます。
人類みな平等とうたいながら現として存在するヒエラルキーの社会で誰も彼もが物分かりの良い人を演じ、錯覚した権威権力の人たちは人としての裏付けもないくせに尊大さを肥大させ、やがて人としての価値観や情さえも失っていると感じます。
厭なものはいや、間違いは間違いとハッキリ言える人に!と育てられた昭和の子供たちは大人の教えに忠実に育ちました。しかし自己主張を繰り返す子供は次第に煙たがられ、時にレッテルを貼られ、寂しさを感じてしまった子供は次第に大人しくなっていく。
飼い殺されるのが必然となってしまった社会で、これが大人になると言う意味ならば子供回帰してでも自身に純粋だった自分を取り戻したい…彼を見ていてそう思うのです。

さてJBC騒動でファンが問題意識を持ったのは拳論の記事でしたが、決起するきっかけとなったのは紛れもなくこの人だったでしょう。
拳論のコメント欄では我に「正義」ありとし、後に本名を明かし、盛んにJBCに対する抗議行動を促されていました。その言葉は時としてあまりに乱暴であり、文章も練り上げられたものではありませんでしたが、読み手にとってはその真っ直ぐな人格と心情がダイレクトに胸に響いてきました。
彼の登場は問題意識を持ちながらもネット上の文字だけでは身に引き当てるような現実感を持てず、いま一歩を踏み出せないでいたファンにとって、まるで風雲の中からまさかの龍が舞い降りる姿を見てしまったように妙で、そして急激にリアリティを持たせる事になりました。リアルファイターには一線を退いた後でもそのオーラには説得力があるものです。

紆余曲折のあと、友人のボクサーを介し彼と会う事になります。
彼の怒りとも言える主張の根幹は彼の最後の試合の相手であったメキシカンから受けた反則を度々見逃したレフェリーに向けられたものでした。
試合後1ヶ月以上、その反則で受けたダメージの後遺症に苦しみ、選手としての胸の内を周辺に洩らしていました。
しかし、彼によれば彼の言葉を真剣に聞く人はいなかった。いなかったと言うのは適切でない。実際のところは彼の痛みをそして怒りを同じ苦しみとして受け止める事が困難だったと言うべきなのでしょう。

彼と初めてこの件で会い、問題とされる試合のビデオ検証をした日、私は開口一番こう言いました。
「今日は榎さんが受けたという肘打ちをこの頭に喰らう覚悟で来ました。」
そうでもしなければ彼の痛みは解らないだろうと本気で考えたのです。

私自身その後、彼との交流の中で感情移入もし理解もしましたが、彼の怒りを受け止める事など到底出来ません。彼の生の言葉は一々に鋭く、時として本質を射抜く為に、いい加減な返答ではこちらが苦しくなります。「僕はプロのリングにさえ立てなかったし、僕が反則を受けた訳でもない。だから何処まで行っても榎さん自身にはなれないんです」と正直に言うしかありませんでした。

彼には美しい奥様とこれまた可愛い娘さんがいます。ある人が「榎さんの奥さまは人物ですね」と言いましたが、その通りで実に聡明で健気な方とお見受けしました。
現在の彼は月間100時間以上の残業をこなすほどに多忙な企業のエンジニアです。
昨年はご夫婦の力を合わせて東京の郊外に新築一戸建てを購入されるなど堅実な生活基盤を築かれています。
娘の話題になれば普通の父親の子を慈しむ顔が見えます。

しかし誤解を恐れずに言えば、そんな家庭でさえ癒されない心。
一面、それほどボクサーの心はボクサーである限り、リングの外でも孤独と葛藤し続けるものなのでしょう。言える事は彼は今でもボクサーなのです。

中学の頃、強くなりたいと兄の影響で始めたボクシングは、プロアマ通じて80戦にもなりました。ボクシングは彼の人生そのものになってゆきます。あまりに純粋で一途な性格はアマチュア時代にも騒動となって大人を慌てさせました。それはプロになってもそのファイトスタイルに表れ、決して退く事無い闘志で、自分自身で立てたスケジュール通りに試合を展開して行きます。
大人達のアドバイスの中でそれが親身であればあるほど、迷いに迷った時期もありました。
しかし、極めて強い我と本来の資質と弛まぬ努力は度々鮮烈な結果を持ってファンを魅了しました。

彼は口癖のように言います。
「僕はずっと命がけでやって来ました。それは自分だけじゃない。だから審判も命がけで来て欲しいんです。人間だから間違いもあります。間違ったら仕方ない。ゴメンナサイでいいじゃないですか。次につながればいいんです。」

JBC関係者に話しを聞きました。当時を知るボクサーらにも聞きました。ジムの会長さんらの話しも聞きました。協会にも聞きました。「榎君はボクシング界の宝と思いますよ」と言って下さる方がいました。「問題として取り上げるべきと」おっしゃる高名なトレーナーさんもいらっしゃいました。
しかし、総じては「ボクサーの分を弁えるべき」「審判の威厳が保たれない」「もう終わった事」という意見が多かったのが事実です。

しかし、私は本当にそれで良いのか?と思います。
試合運営役員の方々が名誉職として粉骨砕身されている事は長い観戦歴の中でありますので勿論解っているつもりです。
しかしながら、果たして権威を守る為だけに一人のボクサーの勇気ある訴えを黙殺して現代ボクシングの理想などを求められるのでしょうか?あるいは管理者が安住としていてボクシングの権威など本当に守れるのでしょうか?そして何より命懸けで戦う選手たちを守る事が出来るのか!

私は彼が彼と同じようななボクサーらの代弁者であってもいいと思うのです。

Comment

オルフェーヴル says... ""
こんばんは。ボクシングファンになって5年程ほど。拳論のコメント欄では「榎もジョンも好きです」など。基本匿名で、何かあったら捨てハンをつけるスタイルでした。

特に旧徳さんは匿名で書いてもコメントを拾ってくれるので、こちらとしてはお世話になった感覚があります。ウチ猫さんは競馬談義に付き合ってもらった記憶があります。トピ違いでも競馬愛を貫いたりしていて、フォローしてもらったのを覚えています。ボク愛さんとも対話したことがあって「自分はボンクラですが…」というコメントが、ちゃんと向き合っていますという枕詞のように感じていました。いやまじでさんとは、それほど絡んだことがありませんが、とても平均的な人として記憶に残っています。一定のスタンスを持った人(ものの見方の、ものさしを持っている人)という感想です。

>いい加減な返答では

これがまさしく、このブログに書くことを躊躇する理由です。榎さんだけではなく、このブログに書いている方々に対してもそうです。最新記事を見て、その気持ちが一層強くなりました。真剣勝負はこちらにとっても大変なのです。どうしようか迷ったのですが、一定の距離を保ちつつも、まずはご挨拶をと思いました。コメントは散発的になりますが、ブログ読んでますよということで。微妙に寒かったり暑かったりで大変ですが、お互い体壊さないようにしましょう。ではでは。
2012.10.09 00:48 | URL | #Tkpa4MnU [edit]
B.B says... ""
オルフェーヴルさん、貴重なご意見本当にありがとうございます。
初回のやり取りですので、少々堅苦しいご挨拶になる所はご勘弁願います(笑

早速ですが・・
>真剣勝負はこちらにとっても大変なのです。どうしようか迷ったのですが、

これは私どもとしましても、ブログ開設にあたって考えるところでありました。
出発に際しては榎さんの事も含めて真剣勝負の覚悟を持って臨みましたし、事に当たってのそのスタンスにも今後変わる事は無いと思います。
様々な立場の方々から(業界の方々も含めて)ブログに対するご意見やアドバイスを頂いておりまして真摯に取り組まざるを得ない状況でもあります。

しかし、その変わる事の無いボクシングとボクサーへの想いや表現は個々様々であって然るべきで、その意味では随分と堅苦しい空気が漂ってしまっているなぁ、お読み頂いている皆さんにも意見の発信がし難い場所だろうなぁと大変申し訳なく思っています。
私たちはあくまでも利害を持たないボクシングファンの集まりですので、本音は言いたい事、感じた事を自由に発信して頂ける場所を目指したいと希望しております。

また、これまで多くの方々と意見交換をしてきましたが、特にファンの発想は実に自由闊達で閉塞感漂う業界、また携わる関係者の方々にとっても多くのヒントが含まれている事を感じますし、実際にいくつかの意見を取り上げて頂いた場面はありました。

ぶっちゃけた話し業界の方々との懇談の中で「内情を知らないくせに」「ファンの分際で」という頭の固い方は、おそらくごく一部で、ファンが真剣に向き合った時には「ファンの皆さんの意見を吸い上げて頂きたい」「もっと話しをしたい」と胸襟を開いて下さる方が実に多いのです。

あるジムの会長が「ファンも業界も手を携えて進む時ではないでしょうか」と言われましたが、それに応える為にもファンも勉強し、歩み寄りを見せなければならないと痛感しています。
これまで「置き去りにされている感」がファンの間にも確かにあったと思いますが、いたずらに対立を煽るのではなく、対話の中で互いの理解を深めて参りたいと強く希望します。
その作業がやがて愛すべきボクサー達の利益に通じるとひたすら信じております。

今後ともどうぞ宜しくお願い致します!
2012.10.09 08:24 | URL | #65fpICiI [edit]
ウチ猫 says... ""
いらっしゃいませオルフェーヴルさん。
「榎もジョンも好きです」というお名前を使ってた方というと、初期の頃ショウさんと名乗ってた方でしたっけ?あとは「象(急所)」とかいうHNも記憶にありますね。
いやまじでさんや自分と同じく、けっこう長文でビッチリ書くことが多かったですよね。時には考察の掘り下げ具合が深すぎて、漢字をたくさん読むことに不慣れなゆとり君が噛みつくこともあったりして。自分の頭の悪さを棚に上げて(笑)。

真剣勝負云々に関しては、ボク愛さん改めBBさんがおっしゃる通り。私らは直接色々な方々と接しておりますので、情報の取り扱い一つにしてもいい加減にはできないという緊張感は持ってますが、こちらを訪れてくれるボクシングファンの皆さんは、もっと気楽にお話しいただけたらと思いますよ。明らかな悪ふざけや中傷等は論外ですが、ある程度ストレートに言わないと回りくどいだけですから。
真剣な意見のぶつかり合いなら、どんなに激しくなっても険悪にはなりませんしね(実際に対面して話すとなると、これがまたビミョーに違ってきますが)。
これからも感想やご意見を聞かせてください。
2012.10.09 23:42 | URL | #nZcYMxmY [edit]
オルフェーヴル says... ""
>B.Bさん
委細承知しました。こちらこそ、今後ともよろしくお願い致します。

>ウチ猫さん
そうです。「象(急所)」というHNはすっかり忘れていました。ショウでは確率についてコメントしていたことを思い出します。勝負論や当て勘に繋がる話でした。

>もっと気楽にお話しいただけたらと思いますよ。
ありがとうございます。気が楽になりました。これからも記事楽しみにしています。
2012.10.15 02:24 | URL | #WMHXR4AY [edit]
宝瓶宮 says... ""
懐かしい~
オルフェーブルさんは「ショウ」さんでしたか。
私と同じ時期にコメ欄に入った方で、独特の感性と分析でボクシングを語る方でしたね。
引き込まれるような長文が印象的でした。乗ってくると長文を何回にも分けて入れてくれて・・・。
で、この続きはまた後で書きます~とか・・・(笑) 本当に楽しみでした、ショウさんのコメント。

HB!は、拳論コメ欄でHNを見つけると、読むのが楽しみだった元常連さんたちに会えるブログ。
それぞれの個性的なコメントを再び楽しませていただきます。
2012.10.15 13:48 | URL | #/5lgbLzc [edit]
B.B says... ""
いや、こちらこそでございます宝瓶宮さん!そして皆さま!
なんか旧友に会えたように嬉しいです。
2012.10.15 20:27 | URL | #65fpICiI [edit]
オルフェーヴル says... ""
宝瓶宮さん、同時期でしたか。ありがとうございます。何人か読んで下さっていたそうで、楽しみと言ってくれた方は2人目です。素敵なご婦人で、たしかクリスジョンファンでした。芋焼酎さんとか、にゃさん、にゃんたろうさんも同時期だったかな。こぶしの論さんもお世話になりました。もしこれを読んでたら、また書いて下さい(笑)。

ファンだったといえば、涼しい木星さん。アカンな~さんもブログやってますよ。
2012.10.19 23:59 | URL | #LQFiFnTI [edit]
宝瓶宮 says... ""
同時期にいた素敵なご婦人といえば・・・
〇さん、辛子明太子さん、三毛猫さん、みるみるさんですね。
クリスジョンファンは・・・〇さんかな?もしくは、みるみるさんじゃないでしょうか。

こぶしの論さんのコメント~その薀蓄の深さに目から鱗がポロポロ落ちましたっけ(笑)
あの頃が拳論コメ欄の最盛期だったんだなと、今振り返ってみて思います。
粘着荒らしに執拗に絡まれて・・いつの間にかそのHNを見ることができなくなりました。
是非もう一度復活していただきたいですね、このブログで!
2012.10.20 21:08 | URL | #/5lgbLzc [edit]

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://boxing2012.blog.fc2.com/tb.php/65-3489dabd