JBC亀田裁判控訴審 証人尋問傍聴記 PART2
PART1はこちらから→JBC亀田裁判控訴審 証人尋問傍聴記 PART1
今回より本題の傍聴記です。
この日尋問の為に出頭した証人は、TBSが亀田大毅×リボリオ・ソリス戦(以下、大毅×ソリス)の際、試合前日から試合会場にいたスペイン語と英語の通訳であるH氏、元亀田ジムマネージャーの嶋聡氏、JBC職員で関西事務局勤務のS氏、そして元事務局長の森田健氏の4名。
筆者は当初証人の数も把握しておらず、「午前中に終わるでしょ」と言う感じで軽く考えていたので、裁判所に掲示されていた時間が午後四時までになっているので大変驚いたのでした。
4人の証人の尋問全体を通して、一貫して問題になっていたのは、大毅×ソリスの試合前日に行われたルールミーテイングの事実関係でした。
考えてみれば、この訴訟におけるJBCと亀田兄弟のトラブルの発端は、ソリスの体重超過発覚後に行われたルールミーテイングにおける「言った、言わない」の双方の主張の対立であり、『もう一度原点に返って、そこを調べてみよう』という裁判所の姿勢は極めてまっとうに感じられます。
最初に法廷に呼ばれたのは、英語・スペイン語通訳のH氏。まずは原告亀田側の質問を受ける形で、ルールミーテイングに同室した経緯や当時の事実関係を、記憶に基づいて証言しました。
H氏がボクシングの通訳をするようになったのは、2004年のロレンゾ・パーラ×坂田健史からで、依頼主は亀田側でもJBC側でもなくTV中継をするTBSとのこと。利害関係的にはJBC側でも亀田側でもない立場になります。
大毅敗戦後にタイトルの扱いを巡って亀田とJBCの対立が先鋭化したあと、H氏はルールミーティング時のいきさつについて、JBC側と亀田側双方から電話で聞き取り調査を受けています。当該ルールミーティングからは、既に7年半以上が経過しており、また亀田側、JBC側双方が作成した聞き取り調査の内容に大きな事実関係の齟齬はないということから、亀田側が聞き取り調査をもとに作成したレポートを参照しながら証言をする旨が、H氏から説明されました。
当時の記憶を聞かれ
「ソリスの計量失格で雰囲気は悪かった」
というH氏。ただ先述した通りH氏はTBSに雇われた立場であり
「TV放送に関係ないルールミーティングには通訳として参加していなかった」
と答えました。亀田側が聞き取り調査の内容を、後日報告書にまとめて事実関係の間違いなどを確認した際も、H氏はメールでの返信において「ルールミーティングでは通訳もしていないし、配布された書類も見ていない」ということを特に強調したのだといいます。
H氏はボクシングの世界戦の仕事をするようになった当初はルールミーティングでも通訳をしていましたが、放送に関係ない仕事が増えてきたことから疑問に思い、TBSのプロデューサーに関与するべきか確認したところ、「(関係者が)言葉の問題で困っていたら、助け舟を出すくらいはいいが、放送に関わる部分に徹してくれ」との返答を得たことで、それ以降ルールミーティングを通訳をすることは無くなったのだといいます。
そのため、当該試合のルールミーティングにおいても「会話の内容は断片的にしか聞こえないし、よく聞いていなかった」というH氏は、亀田側弁護人に
「JBC側はH氏が『大毅が負けたら空位になる』と通訳したと言っているが』事実か?」
と問われると
「通訳はしていません」
と明確に否定し
「(雇い主である)TBSに配慮して何か事実を隠したか?」
と言う質問にも
「していません」
と答えました。
ルールミーテイング後に、IBF立会人のリンゼイ・タッカーが囲み取材で「大毅が負けた場合空位になる」と言う発言をした際の感想を問われると、IBFルールを確認して理解していたH氏は
「え?なんでこんなことを言うのだろう思った」
と答え、その場にいたマスコミもざわついていたと説明しました。その後JBC側の聞き取り調査のレポートでも、事実関係には大差がないことを説明して、亀田側の尋問は終了、JBC側の弁護士による反対尋問に。
大毅×ソリス戦前後のTBSが中継した亀田兄弟や井岡選手や宮崎亮選手の世界戦で、一つ一つ試合名を挙げながら、H氏にルールミーテイングで通訳をしたか?と何度も聞くのですが、答えは全て「していません」というもの。
「TBSの通訳であっても、JBCとの信頼関係で通訳をしたことがあるのでないか?」
「一般論として同席したら通訳するのではないか?」
と色々な聞き方で尋ねるのですが、答えが変わるはずもなく、「これ同じことを何度も聞いてるだけだよね?」と言うモヤモヤが筆者の胸に去来してきます。
「放送に関与する部分もあるから、TBSはルールミーティングの通訳をするべきだと言うのではないですか?」
と聞かれるとH氏は
「通常は(ミーティングの結論を掲載した)文書が出るので大丈夫です」
と答えました。最終的に契約書を交わすわけですから、口頭の説明で完結することあり得ないし、もっともな話であります。
JBCの弁護士からは「統括団体のルールに詳しいですが何でですか?」みたいな質問も出たのですが
「放送上説明が必要な場合があるから、書類を見て覚えた。JBCルールもある程度知っている」
とこれまたもっともな回答。プロの通訳なら、ボクシングの通訳をするとなったら専門用語やルールを下調べをするのは当然でありましょう。
「タッカーがルールミーティングの中で(大毅が負けた場合の)IBFタイトルの扱いについて話したか?」
と言う質問に対しては
「覚えていない」
とのこと。
この質問も聞き方を変えて繰り返されましたが答えは同じでした。
またH氏からは、証言の中で「通常はルールミーティングの結論が文書として出されるが、この試合では出なかったと思う」と言う重要な指摘もなされました。
尋問を通して、H氏側は
「ルールミーティングでは通訳をしていないし、IBFのリンゼイ・タッカーが『大毅が負けた場合、タイトルは空位になる』と発言したのも聞いていない」
と騒動直後から一貫して主張していること分かります。
一方JBC側は
「H氏の通訳を介してリンゼイ・タッカーが『大毅が負けた場合、タイトルは空位になる』と言う発言を確認した」
と主張しており、真っ向から対立しています。
これはどちらかが嘘をついているということに他なりません。
そもそも「会議の様子を撮影するなり録音するなりしていれば、こんなことにはなっていないのに」と思えてなりません。
JBC側にルールミーティングで議論するに足る英語力のある人間がいなかったことも、改めて確認できました。
次回は元亀田ジムマネージャーの嶋氏の尋問の様子をお伝えします。
50肩が痛い(旧徳山と長谷川が好きです)