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ドーピング違反についての基礎知識が学べる映画のご紹介

山中慎介×ルイス・ネリ戦におけるドーピング違反や本田明彦氏によるタオル投入批判、不可解な井岡引退に象徴される奴隷契約トラブル問題など、今年も日本のプロボクシング界は問題山積。一方アマチュア側に目を転じてみれば、日本ボクシング連盟のガバナンス不全と組織の私物化は半ば公然となっているにも関わらず、自浄作用はなんら働いていません。

相撲協会のスキャンダルが日夜メディアを騒がせていますが、隠蔽体質や人脈支配の酷さは、正直ボクシング界もドッコイドッコイ。マイナースポーツゆえに社会の注目が低く、批判が起きていないだけであります。

そんなボクシング界ではありますが、年頭から早くも新たな問題が発生。

ラスベガスで殊勲の敵地戴冠を果たしたIBFフェザー級チャンピオンの尾川賢一選手が、なんと当地で受けたドーピング検査で陽性判定となるという事件が発生。昨年ルイス・ネリのドーピング違反への対応で大騒動に見舞われた帝拳プロモーションですが、今度は一転疑惑の目を向けられる立場になってしまいました。

時あたかも漕艇競技において、オリンピック代表クラスの選手がライバルに違反薬物を飲ませて陥れるという事件が発覚したばかり。尾川の事案も、事実関係については虚虚実実の観測が飛び交っています。

日本のファンの中には、根拠もなく「日本人はドーピング違反なんて卑怯なことはしない!」と断言しちゃうような風潮もありますが、現状はあくまでグレイであり、一般論として一番確率が高いのは運動能力を向上させる為に本人が意図的に摂取したケースです。『悪意がないから大丈夫。裁定は覆る』みたいなチョーチン記事書いてるおめでたい人もいますが(三浦勝夫氏による帝拳援護射撃?記事→米国で世界王座獲得の尾川堅一に薬物反応。But、裁定は覆る?)、意図的かどうかなどということが配慮されたら検査の意味がありません。シャラポアみたいな大スターでもWADAの検査でサスペンドされてるわけで、口先で誤魔化せるような次元の話ではありません。あらゆる予断を排して、事の成り行きを見守る必要があります。

WADAが実施しているオリンピック方式のドーピング検査と言うのは大変厳しいもんで、抜き打ち検査はいつ何時でも拒否できず、尿道から尿が出ている様子も検査官によって目視で確認されます。女子も例外ではありません。

アテネ五輪で室伏広治選手が繰り上げで金メダルを獲得した際に一位失格となったアドリアン・アヌシュ選手は、他人の尿をカテーテルで膀胱に入れて検査を逃れようとまでしました。尿道にカテーテル挿し込んで、他人のションベンを膀胱に入れるという『痛い&汚い苦行』をしてでも勝ちたい!というのがアスリートの本能なのでありましょうか。

ドーピング違反については参考になる映画が二本ございます。まずはアマゾンプライムで見れる『疑惑のチャンピオン』
  ↓
アマゾンプライム 『疑惑のチャンピオン(字幕版)』


この作品は2000年代の自転車ロードレースで大スターだったランス・アームストロングの伝記映画。ツール・ド・フランスを7連覇して生きる伝説となった彼が、ドーピング違反の発覚で堕ちたヒーローとなり、永久追放されるまでの過程を描いています。キャリアの初期に癌に罹患したアームスロングは、生存率50パーセントを宣告されながら辛い治療を乗り越えて完治し、復帰後破竹の連勝を続けることで癌サバイバーの希望の星となります。ヨーロッパが主だった自転車ロードレースの市場をアメリカに広めた功績で、業界での地位も不動のものとなり、その特権的な存在感によってマスコミによる批判が及び腰になった結果、問題の発覚が遅れたということも劇中言及されています。ドーピングを請け負う怪しい医者や、ヨーロッパで国境を越えて薬物を買いにいくシーン、検査逃れのドタバタぶりなどもユーモラスに描写されており、ドーピング違反の実態が良く分かる映画となっております。スティーブン・フリアーズ監督なので映画としても普通に面白いです。

もう一本はNETFLIXで見れる『イカロス』
   ↓
NETFLIX『イカロス』


こちらはドキュメンタリー映画。映画監督で、自転車ロードレースのハイ・アマチュアでもあるブライアン・フォーゲルは「自分自身を実験台にしてドーピングの効果を確かめたら面白いんじゃないか?」と言うどうかしてるアイデイアを思いつき、ロシアからドーピングの専門家ロドチェンコフ氏を呼びよせる。フォーゲルはロドチェンコフの指導の下『検査でもばれないドーピング』を試みるが、映画製作中に、ソチ五輪でのロシアによる組織ぐるみのドーピング違反が発覚。ロドチェンコフはロシア政府から口封じで抹殺されのを恐れて、フォーゲルに国外逃亡の手助けを求めてくる。フォーゲルの手引きでアメリカに逃亡したロドチェンコフは、捜査機関を通じてロシアのドーピング手法を赤裸々に証言。フォーゲルが個人的な動機で始めた映画は、ロシアの国家的陰謀を告発する映画へと巨大化していく。

その後のオリンピック本大会でのロシア選手団の追放にまで発展した大問題となるこの事件の成り行きや、当事者の口から語られるソチ五輪で行われた不正行為の実行方法、ロシアとアメリカの政治的な暗闘など見所も多く、また当事者であるロドチェンコフさんの明るくひょうきんなキャラクターも最高でありました。

上記二本の映画はネット配信で気軽に見れて、スポーツ界に蔓延するドーピングについて楽しんで学べます。是非見てみてください。

大沢×久保が楽しみな(旧徳山と長谷川が好きです)

Comment

クセル says... ""
失礼します
https://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/978-4-7885-1546-8.htm
この本けっこう面白かったのでおすすめですよ。今のグローバルスタンダードとかとは外れますけど、WADAなんか存在が不要とかけっう過激な面もあって面白いです。意図的かどうかなどということが配慮されたら検査の意味がありません。とありますが刑法(傷害)
第二〇四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(過失傷害)
第二〇九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
これよりキツイとかどんなんでしょうかと思ったりします。

2018.02.11 00:41 | URL | #- [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
スポーツのドーピングテストと言うのは合意の上でするもんだし、別に違反したからと言って刑務所にぶち込まれるわけでもないので、刑法と比較するのは無理があると思います。
2018.02.11 00:47 | URL | #- [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
http://www.tamakimasayuki.com/sport.htm

『世界の薬品メーカーのなかには、ドーピングのクスリも、それを隠すクスリも、隠すクスリを発見するクスリも、すべてを開発している企業まであり、そんな馬鹿馬鹿しくも思えるドーピング騒動に対して、いっそのことすべてのクスリを解禁してしまえば? と主張する人までいる。

 が、人間の身体を結果的に傷つけるクスリを解禁するのは非道徳的であり、解禁すれば、一流のアスリートを目指す10代の年少者にもクスリが広がることは確実で、そうなると副作用に弱い年少者に大きな犠牲が続出するだろう。』
2018.02.11 13:41 | URL | #- [edit]
クセル says... ""
再度失礼します
http://shin-yo-sha.fan.coocan.jp/book/1546-8.pdf
日本の刑法はドイツ由来の法律ですが
>ドイツのように反ドーピング法を持ちドーピングそのものに刑事罰を科す国は少数派だが、ドーピングに詐欺罪や偽証罪を適用したりする国もある。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54096?page=3

>そもそも、競技スポーツそのものが怪我や事故などと隣り合わせであり、プロスポーツ選手には故障がつきものだ。
そう考えれば、選手本人が健康リスクについて十分に理解していて同意したのであれば、わざわざ国際組織がでしゃばって規制するのは行き過ぎといえなくもない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54096?page=2

それと人間の身体を結果的に傷つける危険性をいうならボクシング含む格闘技は全面禁止が筋でしょう。リング渦、減量、パンチドランカー、
2018.02.11 15:27 | URL | #- [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
オリンピックの勝利至上主義がドーピングの温床となっているというのはその通りでしょうね。ただだからと言って全面解禁と言うのは飛躍が過ぎるのではないでしょうかね?いやな人はオリンピック競技以外のスポーツをするか、ドーピングフリーの競技会を立ち上げたらいいんじゃないでしょうかね?

ドイツに反ドーピング法があるならドイツ国民は従うべきでしょう。で『日本の刑法はドイツ由来の法律』今私たちがしてる議論と何の関係があるのでしょうかね?

>わざわざ国際組織がでしゃばって規制するのは行き過ぎといえなくもない

WADAは近所のおせっかいオバサンみたいなもんじゃなく、IOCが作ったもんです。オリンピックとは一体であり「でしゃばって」るという認識自体が間違っています。

>それと人間の身体を結果的に傷つける危険性をいうならボクシング含む格闘技は全面禁止が筋でしょう。リング渦、減量、パンチドランカー、

そういう基準でいくと格闘技全般にマラソンやスキージャンプ、モータースポーツも禁止にするべきでしょうかね?為にする極論はご自分のブログなどで存分に開陳して頂きたい。
2018.02.11 16:32 | URL | #- [edit]
クセル says... ""
刑法という極めて重い手段でも、過失や緊急避難正当防衛等で減刑されるのに単に同意があるからといって、いっさいドーピングが考慮されないのはルールとして行き過ぎではないでしょうか?
>格闘技全般にマラソンやスキージャンプ、モータースポーツも禁止にするべきでしょうかね  競技トップスポーツは内在的に勝利のために危険性を高める方向にいっている。趣味レベルでの話とは違うとはいえるでしょうね。

2018.02.11 17:50 | URL | #- [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
>ルールとして行き過ぎではないでしょうか?

ではあなたの思う改善方向に向けて是非頑張ってください。

>趣味レベルでの話とは違うとはいえるでしょうね。

趣味レベルの話なんか最初からしてないですけどね。

2018.02.11 21:50 | URL | #- [edit]
クセル says... ""
>ただだからと言って全面解禁と言うのは飛躍が過ぎるのではないでしょうかね?
私は全面解禁なんてことを言っていませんよ。

>トップレベルのスポーツには、さまざまな種類のパフォーマンス向上の実践(トレーニング、筋肉量の向上や肺活量の向上、生理学や遺伝学的な介入、選手の装備の改善)が導入されており、ドーピングとの区別はしばしば困難なのだ。他方で、パトリック・ロールの概念を借りて、「ドーピング的振舞い」全体を考慮に入れてみれば、それは社会全体に広まっている。試験に合格するためにアンフェタミンなどの興奮剤を服用する。アナボリックステロイドを服用する、等々。要するに、一方には非道徳的で恥ずべきドーピング、他方には許容されたり評価されたりする諸実践という、少しばかり便利でイデオロギー的な区別を拒絶してみてはどうかということだ
https://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/978-4-7885-1546-8.htm
>07年度から16年度までの10年間に発覚した国内のアスリートによるドーピング違反は計68件。世界的な比較では少ないが、うっかりではない意図的なドーピングも数例はある。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21110020U7A910C1000000/?df=2
それと一般論としては意図的にやるというケースは少ないですね
2018.02.12 01:54 | URL | #- [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
>私は全面解禁なんてことを言っていませんよ。

『わざわざ国際組織がでしゃばって規制するのは行き過ぎといえなくもない。』と書いてますよ。しっかりしてください。

>それと一般論としては意図的にやるというケースは少ないですね

尾川の試合はラスベガスですが、あなたが出してるのは国内の統計ですね?

まああなたが披露している概念的な議論は高尚で素晴らしいとは思いますが、副作用や競技能力の公平性を担保する観点から厳しいドーピングチェックは必要であると私は考えます。

何度も書いてますが持論の開陳や啓発活動はご自分のサイトなどでしてくださいね。
2018.02.12 10:07 | URL | #- [edit]
ビートル says... "何とも冴えないことになりました"
 問題のネリ選手ですが、今度は体重超過で試合前にタイトル剥奪ということになってしまいました。明日のタイトルマッチは山中選手が勝てば王座奪回、それ以外はタイトル空位ということになります。
 「今度はまともに試合が行われてくれ」というのがせめてもの願いだったのですが、一挙に気持ちが萎えてしまいました。これで山中選手が王座に返り咲く可能性は著しく高まったと言えるでしょうが、なんともパッとしませんね。
 こんなことならたとえ不利であっても、誰もが認める世界的ビッグネームとの対戦を組んでやればよかったのにと思います。
2018.02.28 21:28 | URL | #Dp0g9hEU [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
ネリは当日1キロ落ちてるので、かなり余裕があったと思います。

繰り返しになりますが、試合直後からネリとの再戦に拘っていたのは本田さんです。山中には再戦か引退かと言う選択肢しか提示されていない。ドーピングは不問。山中を守った大和トレーナーを非難した件も不問。メデイアは再戦頑張れ!ボクシングで制裁!リングでお返し!という能天気なヨイショのみ。

誰も彼も現実が見えてなかったんじゃないでしょうかね?
2018.03.01 00:07 | URL | #- [edit]
says... ""
薬物陽性の尾川、王座剥奪と出場停止。
処分6ヶ月とファイトマネー20%のペナルティは緩い?
2018.04.19 21:12 | URL | #- [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
王座剥奪と言うか、試合自体がノーコンテストになるみたいですね。何で禁止薬物が検出されたのか、中立的な調査が必要だと思うのですが...。ちょっと帝拳の世界戦は去年からトラブル多すぎないですかね?
2018.04.22 04:25 | URL | #- [edit]
says... ""
JBCは処分で有耶無耶にせず摂取経路の厳密な調査は必要ですね。
違反事実のみではコミッションの役目は果たせないと思うのですが。


2018.04.22 07:04 | URL | #- [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
まさに仰るとおりで、なぜ薬物が検出されたのかの客観的な調査が不可欠だと思います。
2018.04.23 00:21 | URL | #- [edit]

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