HARD BLOW !

世界王者のベルトはもはや重荷なのか?

 先ごろ自らが保持する世界タイトルの返上を巡って、所属ジムとトラブルになり結局移籍した真道ゴー選手。
 その真道選手の移籍トラブルについて触れた、ジョー小泉氏によるレポートがFightnews.comに掲載されたのですが、ちょっとバイアスがひどいといいますか、余りに真道選手に酷な内容でありまして、私の周囲の関係者も「これはあまりにも書き様がひどいんじゃないの?」と疑問を呈するシロモノ。まずは以下のリンクから記事をご覧下さい。

こちらから

 さすがジョーさん英語力はJBCとは比べ物になりません(笑)。ですが記事の内容は失礼ながら見事とは言いがたいかと...。

 真道選手とクラトキジムとのトラブルを感情論であるかのよう印象付ける書き出しからおかしいと思いますが、記事の内容自体がジムサイドにベッタリで、真道がワガママで無軌道だという印象を与えようと言う作為がアリアリ。これを読んだ海外の関係者は『経済的に支援し、チャンスを与えて来たジムに後足で砂をかけるようにして出て行った真道』という人物像を否応無く抱くことになります。選手の保持するベルトを本人の承諾なしに返上すると宣言してしまったジムサイドには落ち度は無いのでありましょうか?『真道は自身の栄達を追求するばかりで、日本のボクシング界に貢献していない』旨まで書いてますが、競技に打ち込んで世界王者になることは貢献ではないのでしょうか?

 根本的な問題として、ジョーさんは『殿堂入りマッチメイカー』と紹介されることが多いですが、殿堂入りの理由はジャーナリスト活動であり、ファイトニュースにおいてはジャーナリスト・ライターと言う位置づけです。はたしてこれを読んでいる海外の読者はジョーさんがトラブルの当事者であるWBCに顔が利くマッチメイカーで、ボクシングビジネスのステイクホルダーであり、下手したら真道の試合を組んでた利害当事者の可能性すらあるという事情を知悉しているのでありましょうか。もし真道が移籍することでビジネスの機会を喪失したマッチメイカーが書いてる記事だとしたらそれは報道・評論だといえるのでしょうか?

 ジョーさんは過去の日記で「マッチメイカーであることと、ジャーナリストであることは両立しない」と書いておられたように記憶していますが、それはまさに至言であると思います。亀田を巡る論評のスタイルがコロッと変わってしまった事情もご自身のビジネス的なスタンスによるもんじゃないのか?と思えてならないのですが...。

 それとこの記事、アップされた時点では「世界王者になれたのは自分の努力の結果で、ジムのサポートは関係ない」という旨の真道のコメントが引かれていて、私は「本当に真道はこんなこと言ったのかなあ?」と疑問だったのですが、今記事を読み返したらそのコメントは無くなってますね。何があったのでしょうか?

 とはいえ記事中の 「日本では女子ボクシングの人気が無いから経済的に回っていかない」と言う分析自体は正しいと思います。地方ジムをとりまく不利な興行事情もその通りでしょう。福岡を拠点にしていた山田選手の『防衛せず引退』も真道選手と同様の原因により起こったことなのだろうと推測されます。首都圏を拠点にする小関選手と、JBC加盟前から積極的に女子ボクシング興行を行っていたフチュール勢と言った例外的存在を除いて、女子ボクシング興行を巡る状況は依然厳しいものでありましょう。昨年には契約書を交わしていた選手が来日せず世界戦の認可が下りないと言うトラブルもありましたが、来日しなかった選手にすれば、ファイトマネーや移動の苦労を天秤にかけてより良いオファーを取ったと言うことなのでしょう。

 世界王者を持っていても経費ばかりかかって少しも回収できない、思ったような見返りが得られない。そこからジムと選手の間に秋風が吹き始め...。しかしこれ女子ボクシングに限った事情でもなくなってきてるのではないか?と思えるのです。

 例えば佐藤洋太選手が選択防衛試合を国内開催にもって来れず陥落し、そのまま引退したケースなど明らかに経済的な理由だと思われます。ガソリンスタンドでのアルバイトをしながら防衛を続けていた佐藤選手の経済事情は推して知るべしと言うところでありましょう。三浦隆司選手や内山高志選手も試合が組めず年間一試合ペースとなっています。普通に防衛戦を重ねていてもビジネスとしては回っていかないと言う現実。河野公平陣営が亀田興毅との対戦に拘っているのも、戴冠時に投資した資金を回収したいという動機ではないでしょうか?世界戦で日本人対決が増えているのも、チケット販売や経費の面でローリスクだからです。

 一方世界挑戦の列に並ぶ選手を見てみても、長期防衛してもサバイバルマッチに勝っても世界戦が出来ないという状態です。野生的な倒すボクシングに、端正なルックス、強烈なキャラクターも兼ね備えた和気慎吾選手など世界戦を待望されていながら未だにチャンスは来ません。同じくスーパーバンタム級の日本王者大竹秀典選手も日本タイトルを返上。もはや日本タイトルやOPBFタイトルも興行を打てないジムの選手にとっては長期保持するメリットが無くなって来ています。

 世界挑戦にまつわる経費負担は重いのに、タイトルをとっても思ったように稼げない。これでは小さいジムの選手はワリを食うばかりです。

 そしてこのような構造不況の中で体を張っているボクサーに対して、見返りの無い状態での「ハードなマッチメイク」をただ求めているだけで良いのか?と言う疑問も浮かびます。

 ファンはちょっとジムや選手の経済事情を無視しすぎなんじゃないのと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)


 

Comment

サル says... ""
>見返りの無い状態での「ハードなマッチメイク」をただ求めているだけで良いのか?と言う疑問も浮かびます。

確かに、国内のサバイバルマッチは盛り上がりますが、それが世界につながらないなら、敢えてやってもなんのメリットもないですよね。むしろ、上位ランカーに勝ってしまうと、危険な相手と見られて選択戦で敬遠されかねません。
統括団体と交渉して、挑戦者決定戦にするとか、二手ぐらい先を読んで試合を組まないと。
大竹選手の返上も大丈夫なのかと思ってしまいます。
もし世界への展望が描けないのであれば、プロモートは他に委ねた方がいい。身の丈に合わないことをやっても、誰も得をしないと思います。
2014.10.04 13:59 | URL | #sLdgtBxg [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
>サル様

かつてのように「日本タイトル、東洋タイトルを保持していればテレビ局が着いて世界戦が」というシステムがもう働かなくなっているということだと思います。

>統括団体と交渉して、挑戦者決定戦にするとか、二手ぐらい先を読んで試合を組まないと。

JBCが統括団体の総会などで日本タイトルホルダーを指名挑戦者にするように交渉するなどする必要があると思うのですが。当然英語力が要りますが(笑)

>大竹選手の返上も大丈夫なのかと思ってしまいます。

清水選手のケースがありますからね。ただ勝っても勝ってもチャンスが無い選手がいるというのは理不尽なことだと思います
2014.10.04 14:54 | URL | #- [edit]
B.B says... ""
踏み込んだ記事になりましたね。
様々な示唆に富んでいると思います。

>世界への展望が描けないのであれば、プロモートは他に委ねた方がいい。身の丈に合わないことをやっても、誰も得をしないと思います。

まったく頷くしかありません。
大プロモーター制の必要性、既存のジム制度の弊害、業界関係者の幾人もの人がこれらを口にしていました。

僕はこの記事を読んで思い出した事があります。
選手は命の危険を冒してまでも何の為にリングに上がるのか?
ファンはここに自己を投影して感情移入して行ったのだなと。
栄光や名声を得たいがため、あるいは自分への挑戦、様々な動機はあるはずです。
そしてその先にあるもの。いや、直ぐ目の前にある正直な欲求。

故大場政夫さんの試合直後のインタビュー映像ですが、プロとして正直であることがこれほどカッコイイものなのだと思い知らされます。
試合における貪欲な勝利への執念は、ここから生まれているのだとも。
あっけらかんとした正直さがストレートに胸に響いて来ました。
選手が本音を口にする事が辛うじて許された時代とも言えます。
本田さんも若かったですね。

https://www.youtube.com/watch?v=xfwLSm03wuk
2014.10.04 16:45 | URL | #bH1htKmU [edit]
says... ""
ジョー小泉氏はクラトキジムのマッチメーカーとして真道ゴーの試合を組んでいた当事者だと聞いています。その当事者が今度はジャーナリストを名乗り英語であれば誰もわからないだろうと国際的なサイトでチャンピオンの中傷記事を書く。クラトキジムと真道選手の間に何があったかは知りませんが、自分の仕事を失った報復としか読めないのは私だけでしょうか。
真道選手や現所属ジムのみならず、ボクシング関係者もファンも舐められているんでしょうね。
2014.10.04 23:26 | URL | #- [edit]
yamaken? says... ""
確かにジョー氏は真道ゴーのマッチメイク担当。

記事に山口賢一氏が「偏向報道。王者の話を聞いたのか?」とコメントいれてますね。
2014.10.05 05:13 | URL | #mQop/nM. [edit]
やわらか says... ""
世界王者になって富と名声を手に入れて。

ボクサーの最終目標 世界王者になってもスタンド勤務をしていた佐藤洋太選手。私大好きな選手だっただけに後々色々な話を聞いて泣きそうになりました。

個人ジムで世界までは難しい時代になってきたのだと思います。もしたどり着いたとしてもそれに見合った報酬があるわけでもなし。プロモーターに身を委ねるのが一番かもしれませんね。向こうは海千山千の強者ですからなあなあだと骨抜きにされてしまうかもしれませんけどね。

2014.10.05 11:56 | URL | #- [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
かつては目標であった世界王者が今は、それを取った後どうやって稼ぐか?に構造変化しているということだと思います。

統括団体が増え、階級が増えればベルトの価値は当然相対低下します。だからこそ海外のボクシングとの市場統合が必要になるのではと思えます。

マカオでも定期的にビッグイベントが開かれるようになっており、例えばここで億単位のファイトマネーを稼ぐ選手が出てくれば一気に構造変化が起こる可能性もあるかと思います。
2014.10.05 13:03 | URL | #- [edit]
サル says... ""
佐藤洋太は、世界ランク上位まで登ったのに、なぜオプションだらけの選択戦を組んでしまったのか?とても疑問でした。
その辺は、亀田はしたたかですよね。井岡もかな。

ワタナベジムは謎です。なぜ王座決定戦なのにデンカオセーンに数千万なんだか。
入札になつまたとしても、そんな馬鹿な額はないかと。

そもそも、外国の世界チャンピオンを数千万出して呼んでるのに、自分のとこの選手がチャンピオンになってもそんなには儲からないことが、本来なら不思議なことなんですけどね。
2014.10.05 17:26 | URL | #sLdgtBxg [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
>サル様

>その辺は、亀田はしたたかですよね。井岡もかな。

決定戦が多いのに意外と批判されない帝拳もしたたかなんじゃないかと(笑)
しかしテーマの無い試合を繰り返しても選手も磨り減っていきますから、モチベーションを維持するテーマ設定がないと選手もいい試合は出来ないですよね。

河野の決定戦に関しては金額的には足下見られたとも言えると思います。ただデンカオセンを担ぎ出して契約を結ばないと決定戦は出来ないわけで、リスクを取ったと。この後亀田とやればテレビもついて、知名度も上がって...、と思っていたら当てが外れたと言うのじゃないかと私は推測しています。
2014.10.05 18:38 | URL | #- [edit]
レッドマン says... ""
亀田の記事が削除されましたけど何かありましたか?
2014.10.09 16:21 | URL | #- [edit]
ウチ猫 says... ""
>レッドマン様

お返事遅れてすみません。
亀田の記事が削除云々…というのは当ブログのことでしょうか?
どれのことかわかりませんので、ご指摘頂ければ幸いです。
2014.10.10 00:58 | URL | #- [edit]
B.B says... ""
携帯からだと検索の仕方によっては新しい記事が反映されない場合がありますね。
何度か別の候補を試すとやっと表示された事がありました。
えと、ご指摘の件ですが記事削除はしておりませんです。
削除の必要がある場合は事前にその旨と理由を必ず告知します。
2014.10.10 13:23 | URL | #bH1htKmU [edit]
ビートル says... ""
 ジョー小泉氏のボクシングへの愛情は疑う余地がないと思いますが、時として非常に保守的で視野狭窄に陥っている感があります。特に日本ボクシング業界自体の抱える問題、その中でもジム(プロモーターやマネージャーを事実上兼任している)と選手の力関係の不均衡に基づくものについては、ジムの側に立つことが多いように思えます。
 また、小泉氏自身がかつてマネージメントしていた選手との間にトラブルがあったことも(ルイシト・エスピノザ選手との紛争は有名)、ジムと選手間の紛争に関して選手が悪いと決めつける遠因になっているのではないでしょうか?
 
 ただでさえ日本のスポーツメディアは選手とその「上位者」(監督やオーナー、ジムの会長等)との間に紛争が起きると、「選手が悪い」「選手がわがまま」と決めつけがちです(例外は選手が日本人のスター、監督等が外国人の場合くらい。でも、これは一種の排外主義の産物なので誉められたものではない)。ましてボクシングメディアは既存の体制の問題点にほとんど批判的な姿勢をとることがなく、ジムと紛争になった選手の味方をすることはほとんどありません(西島洋介山選手の事例が好例)そんな中、日本のボクシング関係者の最高権威ともいえるジョー小泉氏が一方的に選手側に非があるとするような記事を書けば阿諛追従する記者やライターは数多いでしょう。今後の真道選手の選手人生が非常に心配です。
2014.10.19 20:07 | URL | #dJddGAtI [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
ジョーさんは凄い人だと思います

ただボクシングビジネスのインサイダーなので純粋なジャーナリスト評論家とは言えない、と言う前提は分かっていないといけない思います。

あとジョーさんにとってはメキシコサイドも大事なクライアントであり、要はメキシコサイドの意向を受けて真道のタイトル返上を画策した可能性もある。

日本サイドから見ればクラブオーナー制度を守ってるように見えますが、メキシコサイドから見れば日本にあるベルトをメキシコに戻すと言う動きでもあるわけです。メキシコはいま女子ボクシングバブルですからね
2014.10.19 23:20 | URL | #- [edit]
まつば says... ""
大竹秀典選手の世界挑戦が決まりましたね。向こうからのセレクトとはいえ、チャンスがあるということは良いことですので、是非勝って欲しいです。

ただ、その大竹選手の挑戦に金銭的なバックアップはどれだけあるのか。気になる所です。
2014.10.25 05:17 | URL | #- [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
当初和気選手の名前が出てましたが、大竹選手に落ち着きましたね。

結局今後も「大手ジムでない限り海外から声がかかるのを待つ」と言うことになりそうですね。

小さなジムは共同でプロモート会社を作って外部から人材を招請して交渉力を増すような試みがいるではないか?と思います
2014.10.25 12:11 | URL | #- [edit]

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