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ある裁判記録 その10 ― 被告 準備書面4 (前半)―

この裁判は、原告が被告を訴えた民事裁判である。 
訴状は原告により平成24年5月24日某地裁に提出され受理された。
以下は被告準備書面4(平成24年12月27日提出)の要約である。

※〔 〕は要約者による注。
※ 準備書面とは、民事訴訟において原告・被告双方が、自らの主張と証拠となる事実を示すための書類である。実質的に裁判の進行状況を示す書類である。
※ 書証(証拠となる書類・写真・録音テープ等)は要約の対象外とした。
※ 要約者が要約に困難を感じたために原文通りとした(ただし実名は除く)部分があり、始端と終端に記号を付し、▼原文▲のように示した。

■■■■

被告 準備書面4(H24年12月27日)


第1 はじめに

1.本質的解雇事由と「共謀」

 ▼被告は本件において、本件の当事者が立場を変えて訴えを提起し、もしくは申立をした解雇の有効性を争っている諸事件において「本質的な解雇事由」を主張しているところ、本準備書面をもってその詳細を陳述する。
 本質的解雇事由は略言すれば、後述の通りW、jらのグループ(以下「チームW」という)がWの世界タイトルに挑戦したいと欲していた意図と、原告が抱いていた被告の改革構想及びその後における原告、L、I、J(以下「被解雇者ら」という)が被告に対して抱いていた反抗意図が合作し、日本において被告と別の組織を立ち上げ及びこれを成就せしめるためにおこなった被解雇者らによる被告組織の壊乱その他の行為が被告の就業規則に違反したことを問題にしている。
 ここにおける被告の関心は、もちろんかかる企てが被解雇者らと「チームW」との間に通底する様々な行動によって遂行されたことに対しても向けられており、本準備書面においてはこのことについて論ずるけれども、専ら問題にしているのは、被解雇者らがチームWと意思を共同にしたこと(以下「共謀」ということもある)それ自体、ないしは、共同意思によって成立した「共謀」そのもののというよりは、むしろかかる全体的行動の重要部分を占める被解雇者らの行為が被告の懲戒解雇に該り、解雇ないしそれに伴う処分が正当であることについてである。▲

2. 「チームW」とJ

 〔Wの経歴。省略〕
 Jは南アフリカ・ブラクバンでのv記者としての取材を通じ、j(トレーナー兼マネージャー)、k(サポーター)などからなる「チームW」メンバーと知り合い、当時のメンバーM(マネージャー補佐)と昵懇となった。

3. 同じ頃、原告とJは、fに関しても、ゆくゆくはfは中国へ進出することについても共通認識を持った。
 ▼一方、原告は被告事務局長として予てからボクシングと格闘技を統括する団体(格闘技統括団体という)を構想しており、J(ないしチームW)の話は、原告にとって共感を覚えるものがあったと推察され、やがて被告と別団体を立ち上げ、日本においてW戦を開催する企てへと「チームW」を巻き込んで展開してゆく。▲

4. 原告による被告切崩し工作

 原告は本部事務局長として、被告内部の統制と組織の掌握に失敗し、おそくとも平成23年初頭には被告事務局は原告に反発するグループと同人を支持するグループとの間に意見の対立をみるようになった。そして前者グループから経理不正をはじめとする疑惑がコミッショナー宛に告発され、調査委員会の調査を経て、平成23年6月28日、調査報告書が提出され、同日理事会にて原告は降格処分を受け、同日理事の地位からも辞任する意思を表明した、これをもって、原告は自らの被告における地位が不安定になったことを遺憾に思うようになった。即ち、かねて構想していた格闘技統括団体を立ち上げ、g及びfのボクシング興行を認定・管理せしめ、他方においてボクシング興行のプロモーター会社を設立して、g・fの日本における興行を行い、原告を含む支持者の経済基盤を確立することを企て、かくすれば被告の組織を壊乱して、その社会的地位は低下するが、そうなっても構わないとの認識のもとに、被解雇者ら内にあって自らを支持するL、I及びJらと意思を通じて、

 ① 公益通報その他の手段を用い、被告のガバナンスを頽廃させて内部分裂を図り、被告執行部の力を減殺し、
 ② 格闘技認定団体の設立を準備し、
 ③ プロモーション会社の設立を準備し、
 ④ gの日本興行の実現に向けg等と接触し、
 ⑤ gに対して選手に関する情報を漏えいした

のである。

5. 就業規則違反

 これら行為は、L、原告、I、J、M、K、及びWらが意思を共同して行ったもので、被解雇者ら従業員であったL、原告、I、Jについては、各人の各行為が被告就業規則55号各号に定める懲戒解雇事由に該当することは明らかである。
 各行為と就業規則違反については以下該当箇所で指摘する。



第2 共謀の形成

1. 被告の課題
(1) 被告のプロボクシング界における位置づけ

 昭和27年4月21日設立、一国一コミッションを標榜し、日本においてプロボクシング競技を統括する唯一の機関で、d、e、zに加盟している。

(2) 日本におけるg、fの世界タイトルマッチ開催

 近年g、fが有力なチャンピオンを輩出していることから、Wをはじめ挑戦機会を求め、国内ライセンスを放棄して海外に拠点を移す選手も目立つようになり、現状では選手の海外流出が加速し、現行でのクラブ制度が崩壊しかねないとの懸念も関係者内で広がっていたことから、被告x〔たんなるxの誤りか〕では平成22年10月に、g・f両団体加盟申し入れを表明した。
 これら状況に配慮した被告は、平成23年2月28日、g・fについて日本ジム所属の、d、e王者との統一戦に限り認めることに決定した(防衛戦は不可)。但し、当時事務局長の原告は、展開次第で、まず海外で防衛戦、そして国内で防衛戦と段階を踏んでいく見通しとの見解を示した。このように被告にとって課題であったg・f問題は原告にとっても同様であった。
 
(3) 他競技との関係

 ▼ところで、K-1・PRIDEを初めとする新興格闘技の人気上昇に伴い、近年はボクシング引退後に他の格闘技へ転向する選手も多くなっているが、これらの選手の中にはボクサー時代に心身ともにダメージを受けている者も多く、その上で格闘技の激しい試合をすることは健康管理上からも非常に危険と判断されている。このことはプロボクサーの健康管理と安全防護を事業目的とする被告にとっても重大な関心事であり、eが平成17年よりムエタイ(タイのボクシング)部門を設立したこともあって、原告は被告を格闘技全体の統括団体(日本アスレチックコミッション)へと発展させる構想を秘めていたかもしれない。▲


2. W、M、Jらの関係

(1)
〔Wの経歴。省略〕平成22年9月1日南アフリカにおける「g世界ミニマム級挑戦者決定戦」に勝利し、挑戦権を獲得。

(2)
平成1月29日、Wは南アフリカのブラクパンで、Xに挑戦。3R負傷ストップ。無効試合となったため、Xはgの規約上、Wと再度タイトルマッチを行わなければならなくなった。

(3)
〔Wの経歴。省略〕WvsX戦をvの記者であったJが取材。チームWのメンバーと知り合った。


3. 被告の混乱と原告ら

(1) Jの被告事務局への接近

 Jは業界の内側からボクシングに関わりたいと考え、平成22年11月取材で知り合った被告関西事務局長へ就職の話を持ちかけ、Oは原告と相談。空席がなく職員になれなかったJは予てより取材を通じ原告とも顔見知りになっていた。

(2) 原告に対する●●〔要約者の責により2文字欠落〕

 平成23年4月18日の差出人不明の書面(告発文)に原告とSと思われる写真が同封されており、Sを採用(同年3月20日付)したのはOであり、原告とOが極めて近い関係にあったということができる。
 この告発文は被告内外に大きな波紋を呼び、同22日東京試合役員会の総会で、(被告専務理事Bほか、F、R、T、V、Qも出席)、原告の解雇を求める意見が噴出した。(上記、F、R、T、V、Qのほか、後に原告の解雇を主張するHを加え、反原告派と言ってよい。)
 Bは同23日a理事会、同25日本部事務局会議にも出席したが、いずれの会議でも原告の解雇を求める意見が大勢を占めた。

(3) Jの採用

 ▼同じ頃である。3月23日か24日に、JはOに電話をしたところ、Oから困ったことが生じたため取り急ぎ事務局業務を手伝って欲しいと言われた。また、同月25日頃に原告よりJに電話があり、今日からでも事務局に入ってほしいとのことであった。ただし、そこで条件提示などは一切なかったため、Jは、話を聞かせてほしい、と言ったところ、原告からは、かねてより被告事務局の弱点であった広報業務、そして、英語力を活かせる国際関係の業務に従事してほしい、などと言われている。
 おそらく、原告とOとしては、Sを情実により関西事務局職員に採用したとの批判を恐れ、Sが辞職した後に直ちにJを雇い入れれば、Sを採用したのはあくまで業務上の必要があったからであることを裏付けられるとする意図もあったと考えられる。しかし、それだけではなく、Jを雇い入れることを検討した時期はg世界タイトルマッチを日本で開催することが取り沙汰されていた(結局実現せず)時期とほぼ同時期であり、このことに照らすと、原告はJがWのg世界タイトルマッチを取材した経験を買い、その意味で国際関係の業務を担当させるつもりでJを採用したものと思われる。▲

(4)原告への告発と事務局長解任

 同年5月10日「被告東京試合役員会話、事務局員合同調査委員会」名義で、同月9日付「調査報告書」と(以下「通告書」)及び「真相究明と原告事務局長の解任を求める連判状」が被告に提出された。通告書は、告発文の真偽を確かめるための調査を行った結果を報告する体裁をとっているが、「原告事務局長の責任追及の総意に基づくもの」である旨記載されることから、原告に関する各事実に関する告発の通告であって、各事実が真実であれば明らかに懲戒解雇事由に該当する内容を含むものであった。

ア. 不正経理を通じて横領行為や背任行為に及んだとする事実
イ. 情実により権限を濫用してSを不正に採用した事実
ウ. 本部事務局職員Iに対して程度を超えて親密に接し事務局長としての体面を汚した事実
エ. 執務上の職務を懈怠し、ないし職場を離脱したり職場を放棄したとの事実
オ. 事務局職員に対し「パワーハラスメント」に及んだとする事実

 そこで被告は、調査委員会設置を決め、原告に1か月間(5月10日~6月9日)の休職を命じた。同年5月16日、被告は理事会で調査委員会を設置した。


 ▼このような被告における混乱状況の中、Oは、調査委員会設置と同日である5月16日に、試用期間3か月の約定でJを関西事務局員に採用した。これにより、被告関西事務局長は、O、H、Jの3名で組織されることとなった。
 ところで、本部事務局及び関西事務局の職員のうち、上記原告の解雇を求めた事務局職員を除く者、即ち、O、L、Iは、いわば原告派とも称すべきものであり、Oに採用されたJもやがてこの原告派の一員となった。▲


 平成23年6月28日、被告は調査委員会の調査報告書を受理。緊急理事会を開催し、出席理事全員(特別利害関係にあるため一旦退席した原告を除く)の賛成が得られたので、議長である被告代表理事が原告の事務局長職を解き、一般職員への降格処分を決定。その際、新しい本部事務局長としてD、B専務理事が辞することに伴いCが専務に就任することを決議した。そして、再び理事会の場に入った原告に対し、議長A代表理事が降格処分の旨を告知すると、原告は、出席理事全員に向かって深々と頭を下げ、処分に従う旨を態度で示し、また、同日、マスコミ各社に、降格処分を真摯に受け止めて、理事を辞任することを発表した。しかしながら、後に判明するように、原告は内心では上記処分に対する強い不満を持ち、自身が被告の内部における然るべき地位に復帰する強い決意を秘めていたと考えられる。事実、マスコミに表明した理事の辞任についても辞表を提出していない。
 反原告派の事務局職員は、被告らに対し、少なくとも原告と同一の事務所で勤務することは出来ない旨を強く申し入れてきた。▼そこで被告としては原告の女性問題に端を発して上述のような大騒動になった以上、少なくとも1年程度の冷却期間を設けないと被告における業務に差しさわりが生じると判断し、原告に対しs新宿ビル4階にあるU事務所において勤務することを命じた。▲

(5) 関西事務局の混乱


 平成23年7月5日、関西試合役員会より、被告に対して「O関西事務局長の一連の問題について同問題に関する確実な真相究明と厳重処分を求める要請書」(乙第48号証)と題する書面が提出された。これは、上記原告に対する告発事実にOが関与したことに関する調査を行い、これに基づく処分を求めたものである。これに対し、DとCは、Oに対し、関西地区試合役員会とよく話し合うことを求めた。


 同年7月上旬頃、DとFは、被告の財政状態が厳しいので、関西事務局員を1名増員し3名とする余裕はなく、2名で十分業務を行えること、Jの採用が同年5月16日で試用期間3か月であることから、その満了1か月前の7月15日には解雇予告しなければならないと考え、7月14日午後5時頃、DはOに電話し、経費節減のため、Jを8月15日付で使用期間満了を理由に解雇することを通知した。
 Oは、Jを解雇する合理的な理由はなく、寄付行為上、関西事務局職員の任免権は自分にある(寄付行為第29条)ことから、Jの解雇には承服できない旨回答した。
 しかしながら、Fは、Dの許諾を得て、同日、関西事務局J宛にD名義のJに対する「試用期間満了に伴う通知」(甲第23号証)と題した解雇予告通知を郵送し、同通知は翌15日に関西事務局に到達した。


 Cは同年7月14日~18日、休暇をとって、DがJに解雇予告を通知したことを、休暇明け19日頃Fからメールで事後報告を受けた。CはFを呼び出し、Fに対し、試用期間であっても解雇するというのは重大なことであり、十分に解雇理由を調査し、その理由がなければできないことを注意した。同月20日、Jへの解雇予告を撤回することとし、21日にDがOにその旨伝えさせた。Cは、Dに指示して、D名義の7月25日付解雇予告撤回書(甲第24号証)をJに郵送させ、これは27日にJに到達した。


 ▼以上のとおり、撤回したとはいえ、D及びFが解雇予告通知を送付してしまったことをきっかけとして、Jは現執行部に強い反感を持ち、ますます原告派に傾倒して行ったことは想像に難くない。▲ 
 その後被告は、平成24年6月16日付解雇通知書(乙第49号証)をもってJを懲戒解雇した(就業規則55条4号、同6号、同11号、同18号違反を理由とする)。
 なお、Oは、上述のとおり、C及びDから自身の問題に関して関西試合役員会と話し合うことを求められていたが、結局話し合うことなく、7月29日付の退職届を被告に提出し、8月15日をもって被告を退職する旨の意思を表示した。


4. 公益通報

 Jへの解雇予告発送以来、平成23年7月~11月中旬にかけ、原告派に属する職員から、C、D並びに反原告派に対し、次々と公益通報(公益第2~10号)がなされ、被告はその対応を余儀なくされた。
 原告に属する者が次々と公益通報(第1号の申立を除く)を行った真の目的は、反原告派に対する意趣返しもさることながら、反原告派に処分を科し、C、Dをその職から追い落とすことにより、被告組織を壊乱し、被告の組織立て直しには原告に期待する外なしとする原告待望論を醸成して、原告の事務局長復帰を果たすことにあったものと考えられる。なお、原告はいずれの公益通報の通報者にもなっていないが、Lが被告に返却したパソコン内に残っていたメールのデータによれば、いずれの公益通報も原告がLらに指示して行ったものであると認められる。

ア. 被告公益通報第2号:解雇予告通知問題(平成23年7月16日付公益通報書)
 ①公益通報者 :O、J
 ②被公益通報者:C、D、F

イ.被告公益通報第3号:情報改竄問題(平成23年7月16日付公益通報書)
 ①公益通報者 :L、I
 ②被公益通報者:D、F

ウ.被告公益通報第4号:詐欺問題(平成23年7月24日付公益通報書)
 ①公益通報者 :L、I
 ②被公益通報者:H

エ.被告公益通報第5号:  (平成23年7月28日付公益通報書)
 ①公益通報者 :L、I
 ②被公益通報者:H

オ.被告公益通報第6号: (平成23年8月2日付公益通報書)
 ①公益通報者 :L、I、O
 ②被公益通報者:H

カ.被告公益通報第7号:暴行・傷害問題(平成23年8月4日付公益通報書)
 ①公益通報者 :L
 ②被公益通報者:Q

キ.被告公益通報第8号:脅迫・強要問題(平成23年8月15日付公益通報書)
 ①公益通報者 :L
 ②被公益通報者:Q

ク.被告公益通報第9号:立替金処理問題(平成23年9月28日付公益通報書)(乙第50号証)
 ①公益通報者 :L
 ②被公益通報者:B

ケ.被告公益通報第7号:背任問題(平成23年11月7日付公益通報書)(乙第51号証)
 ①公益通報者 :L
 ②被公益通報者:C、D

(2)
 ▼第9号公益通報に関連してのことであろうと思われるが、平成23年9月29日、午前10時57分、Lは原告に対し、

 ミッションB、ミッション千鳥ヶ淵とも完了です。

とメールを打っており(その用件名は「けけけ」としてふざけている。乙第52号証)、また、同日午後1時19分、原告に対し、

 ミッション妖怪の最終版です。秀逸の添付資料1をご覧下さい。

ともメールを打っている(乙第53号証)。Lが原告と通謀してかかる申し立てを行っていることが明らかである。文中「妖怪」とはBを指している。▲

(3)
 被告は上記通報を調査するため平成23年10月21日調査委員会を設置。平成23年11月25日に上記1~8号、平成24年2月2日に9、10号につき調査報告書をとりまとめた。被告が公益通報を懲戒解雇事由としたのは、上記9、10事件の事実であり、9、10号の通報内容には多くの虚偽が含まれており、「公益通報」と称するに値しない。被告はかかる虚偽事実の通報によって、Lが被告事務所内の風紀秩序を乱したことを懲戒解雇事由とした(就業規則第55条2号違反)。

■■■■

以上。(後半につづく)

by いやまじで

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