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ある裁判記録 その9 ― 原告 準備書面4 ―

この裁判は、原告が被告を訴えた民事裁判である。 
訴状は原告により平成24年5月24日某地裁に提出され受理された。
以下は原告準備書面4(平成24年11月13日提出)の要約である。

※〔 〕は要約者による注。
※ 準備書面とは、民事訴訟において原告・被告双方が、自らの主張と証拠となる事実を示すための書類である。実質的に裁判の進行状況を示す書類である。
※ 書証(証拠となる書類・写真・録音テープ等)は要約の対象外とした。

■■■■

原告準備書面4(H24年11月13日)

 被告準備書面1「第3 懲戒解雇事由」に対する認否・反論

第1 パソコンデータについて

1. 本件データを被告が発見した経緯について
 被告は平成24年3月23日にLを「自宅待機にした際」、Lのパソコンを調べ、明らかになったとしているが、事実と異なる。
 事実は、Lを「懲戒解雇した後」パソコンから何らかの手段で抽出したものである。
 同年4月9日に実施されたLの「聞き取り」時に、Eは明確に「(Lが使用していたパソコンに)メールも何も残っていない」と発言している。更にLは4月12日付で懲戒解雇されているが、懲戒解雇事由に当該メールデータの件は一切示されていない。また、Lの本訴準備書面1で被告は、「4月12日以降に本件メールデータの存在が判明した」としていることからしても(1頁最終行~2頁2行目)、「3月23日付Lを自宅待機にした際」に発見したとの主張は虚偽であり、Lの解雇後に何らかの不正な手段を用いて復元したものである。


2. 違法収集証拠の排除の主張
 被告は、Lの本訴準備書面1において、Lが使用していたパソコンを懲戒解雇後に調べたところ、メールのデータが残っていることが判明したと述べるが、このメールデータは、Lが、被告在籍時に業務上使用していたメールアドレスではなく、全く私的に使用していたメールアドレスから発信・受信されたものである。被告は何らかの不正な手段によりLのパスワードを入手後、当該パスワードを使用して、Lの上記メールアドレスのメールボックスにアクセスして、収拾したものと考えられる。
かかる行為は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律3条1項に違反し、「3年以下の懲役または百万円以下の罰金」(同法11条)に処せられるべき違法な犯罪行為である。このように被告はLの私信であるメールをLの許諾なしに不正かつ違法な手段により収集したものであるから、これらは証拠の申し出は違法であり、却下されるべきである。また、これら証拠はいずれも証拠能力がなく、違法収集証拠として排除されるべきでる。


第2 “JAC”の設立準備について

 原告指摘事実を全て否認し、就業規則55条第15号に該当するとの主張は争う。

1.共謀の不存在

(1) 被告の主張は、Lの私用のGメールアドレスの送受信ボックスに保存されていたメールを勝手につなぎ合わせて作り上 げた全く虚構のストーリーにすぎない。

 被告は懲戒解雇事由として、原告がM、W、K、J、L及びIの6名と「共謀」して“JAC”の設立準備を行った旨主張する。
 しかし、原告が共謀者とされる人物のうちWとは面会はもちろん電話、メール等の連絡を取り合ったこともない関係であることが示すように、原告と共謀者とされる人物との関係は、被告指摘のように「共謀者それぞれがJACの活動を利用し利益を図ることを目的」とするような関係になかった(甲25、週刊朝日のW記事)。
 被告は、Lの私用Gメールアドレスの送受信ボックスに保存されていたメール「のみ」を手がかりに、M、W、Kからなんら事情聴取することなく、原告が上記6名と「共謀」して“JAC”の設立準備などを行った旨主張するが、これは共謀者とされる人物らから直接聞き取り調査など行わずに、被告が原告らのメールを都合良く繋ぎ合わせて作り上げた全くの虚構のストーリーである(甲26、内容証明文書)。

(2) 原告と共謀者とされる者との関係について
 以上、原告と共謀者とされる者との関係の説明。以下の人間関係は、相互に面識のない者も含まれており、到底被告と事業が競合する新しい団体の設立を共謀したとはいえないことは明らかである。

ア. Mとの関係
 Mは大阪在住、個人事業としてプロボクシングのマッチメークを行っている者。
 原告は、平成23年9月ころに、被告関西事務局員Jを通じて、Mから今後のボクシング界での活動等について相談されたことをきっかけに、1、2度会ったことのある程度の関係である。

イ. Wとの関係
 Wとは、大阪在住、平成12年デビューのプロボクサー。平成17年4月、世界ミニマム級チャンピオンになっている。原告とWはボクサーと被告職員という立場でいちおうの面識はあるものの、個人的な交流は一切なく、メールのやりとりをしたこともない。(甲25、週刊朝日、W記事)

ウ. Kとの関係
 Kは、平成18年に被告の「マッチメーカー」ライセンスを取得した者。平成24年8月13日に原告とほぼ同様の理由により、被告から「マッチメーカー」ライセンスの無期限停止処分を受けているが、これに対し「聴聞の機会も与えられず、捏造された事実で一方的に処分された」と主張している。(甲27、日刊スポーツ記事)

エ. Jとの関係
 Jは、元vの記者であり、平成23年5月に被告へ入所。被告関西事務局に勤務していた者である。
 Jは平成24年6月に原告とほぼ同様の理由により懲戒解雇されているが、無効であるとして大阪地裁に地位確認等を求める訴訟を提起しており、現在係争中である。

オ.  L及びIとの関係
 L及びIは、被告在職時での本部事務局での同僚。上記両名とも被告から解雇され、当該解雇は無効であるとして、東京地裁に地位確認を求める訴訟を提起しており、現在も係争中である。


2. そもそも“JAC”なる団体は存在しないこと

(1)
 原告、M、W、K、J、L及びIの合計7名が「JAC」なる団体を設立したとする被告の主張は、平成23年9月下旬~同24年2月上旬までの間に原告を含めた上記7名の間でそれぞれ別個の案件について取り交わしたメールのみを根拠とするものである。これらメールはそれぞれ別個の案件について取り交わされており、相互に関連性がないものである。そして、被告は、M、W、Kから事情聴取も全く行っていない。これらのことから、被告の主張は、被告がこれらメールの内容を一方的な憶測に基づいて無理やりに繋ぎ合わせ、勝手に作り上げた、虚構のストーリーあるいは空想の物語にすぎない。

(2)
 被告が、原告らが「“JAC”設立準備を行った」ことの証拠として提出した乙27号証等のメール内容を見ても、平成23年12月にMが原告に「そろそろJACの設立にご注力いただけないでしょうか。」との勧誘の記載があるが、これはそもそも原告自身がJAC設立に注力していないことを示す事実である。そして、このメールに原告は一切返信していない事実は、原告、J、Lが、Mのメールによる勧誘に全く応じていないことを示すものである。
 そして、その後のMらのメールには「JAC」との文言は一切出てきていないことから、
 ①原告、J、及びLの3名が平成23年12月12日の時点で、JA設立準備に関わっていなかったこと、
 ②上記3名がMからの乙27号証のメールによる勧誘にも応じず、
 ③結局、JACは設立されなかったことは明らかであり、原告がJACなる団体を設立しようとしたとする被告の主張が事実無根であることは明らかである。

(3)
 以上のとおり、原告はJACを設立しておらず、設立しようと考えたこともないので、原告にとってJACがいかなる団体かは知るところではない。一方、被告は、「JAC」を被告とは別のボクシングタイトル認定団体であると勝手に解釈しているが、被告が提出した証拠からいかなる根拠でかような団体と認められるのか全く不明で、被告が示す解雇事由は全く根拠の裏付けがないといわざるをえない。
 そして、「共謀者それぞれがJACの活動を利用して利益を図ることを目的として」(被告準備書面1、12頁)という点についても、原告を含む各人がいかなる方法で「具体的に」利益を図ることを意味するのか全く明らかにされていない。
 被告は、JACの事業が、被告と「競合」し、「被告の利益を損なう」と主張するが、その具体的な意味を証拠に基づいて全く示していない。営利企業でなく、スポーツを管轄する財団法人であり、プロボクシングの試合管理を行う被告との関係において、いかなる意味で、いかなる市場で「競合」するのか、被告は全く具体的に明らかに示していない。
 さらに被告は、原告らの行為が「被告の利益を損なう」と主張するが、かかる主張は極めて抽象的なものにすぎず、被告が損なわれる利益はいかなるものか(例えば、被告の売り上げが減少するということなのか)、具体的には全く示されていない。

(4)
 以上の通り、被告の「“JAC”の設立準備」とは、被告が原告らのメールのみを根拠に、そのメールを都合よくつなぎ合わせて独自の解釈をした上で、作り上げた虚構のストーリーにすぎない。
 それ故、その内実があまりにも曖昧で、具体性を欠くものであって、全体としておよそ意味不明であり、到底、懲戒解雇事由となりうるものではない。


3. ア JACの設立を具体化するためにGの協力・支援を得ようとして接触を保ったとの指摘に対する反論

(1)
 被告は、原告がJAC設立の具体化のためgの協力・支援を得ようとして接触を保ったことの証拠として、3つのメール(乙25、28、29)を挙げているが、文面から原告がgの協力・支援を得ようとしている事実がどこから読み取れるのかが、全く不明である。また、これらメールから、gの強力な支援を得ることが、いかなる意味でJAC設立を具体化することになるか、全く不明である。以下、メール毎に原告の真意を説明する。

(2)
 乙25号証は、MからJ、原告、Lに発信されている。文面から、平成23年10月23日にMがg本部でg本部関係者と会見したことの報告になっているが、原告からMに対しg関係者に接触するように依頼したことはない。Mがg訪問の事実を一方的に報告したにすぎない。
 なお、このメールに原告は一切返信しておらず、その後も、g関係者と面会もメール接触を図ったことも一度もない。

(3)
 乙28号証は、日本政府観光局から<gの会議を日本で開催したいという話があり、被告に連絡した方がよいのか>との問い合わせの電話があり、Iが<よくわからないので、明日連絡するようにLにお願いした>旨答えたというメールを見て、来年はgの会議はハワイで開催が決まっていたと原告は認識していたので、なぜgが日本観光局に打診したのか疑問であったことから、「来年はハワイでの開催が決まっています。ちょっとくさいですね」と答えたにすぎず、このメールの返信がいかなる意味で、JACなる団体の設立の具体化の証拠となるのか全く意味不明である。

(4)
 乙29号証は、日本政府観光局のy氏から、今後直接「gが被告にアプローチを希望した場合、被告の連絡先を伝えて構わないか」との問いかけに対し、その場合は私のメールアドレスをお伝えくださいと、Lの被告業務用メールアドレスを伝えただけで、このメールがいかなる意味でJACなる団体の設立を具体化するものか全く不明である。

(5)  
 なお、乙29号証メールは乙41号証からの流れのメールで、日本での会議開催を希望するgの問い合わせへの対応を、LがDに相談したうえ、Lが「対応できない」と返事をしたメールを受けてのもの。乙41号証でもLは、外国のボクシング関係者から日本の政府機関を通じて被告にアプローチがあること自体は、日本のボクシングの国際化の観点から悪いことではないと考え、「今後も諸外国からのアプローチがございましたらご連絡をいただきたく、心よりお願い申し上げます」と答えている。これを受けて、日本政府観光局から、今後g側からのアプローチがあった場合に被告の連絡先を伝えて構わないかとの問い合わせがあり、それに対しLは被告業務用メールアドレスを答えたのである。
 そもそも被告が主張する、被告と競合する別のボクシングタイトル認定団体の設立準備行為としてgに接触を保つなら、被告業務用メールアドレス使用するはずがない。そもそもgは被告の連絡先を知りたがっていたのであり、「JACなる団体の設立準備者」の連絡先を知りたがっていたのではない。このような競業行為を画策するのに、日本政府観光局を通じて接触を図るはずがないことは明らかである。
 このように乙28、29号証からJACの設立の具体化のためにgとの接触を保とうとしたと断定する被告の考えには、著しい論理の飛躍があり、こじつけというほかない。


4. イ.JACに関係する合同会社(LLC)を設立するための定款案を作成したとの指摘に対する反論

(1)
 原告は、JからMが今後ボクシング界でマッチメーク等を行っていくうえで助言をもらいたいとの依頼を受け、あくまでM個人の会社として、定款案を作成したにすぎない。
 被告は、原告が、JACに関係する会社として、プロボクシングその他の格闘技等のマネジメント、興行、コンサルタンティング業等を営む合同会社(LLC)を設立するための定款案を作成したことが、被告と競合する別団体(JAC)を設立する行為と断定するが、この定款案作成が、いかなる意味でJAC設立の準備行為につながるのか全く不明である。
 被告自身も、原告が「JACに関する会社の定款案を作成した」と認定しているように、これはJACなる団体の定款案ではない。
 なぜこの定款案の作成がJACなる団体の設立準備行為と言えるのか、全く不明である。以下メール毎に原告の真意を説明する。

(2)
 乙30号証は、Jから、Mへの助言の依頼を受け作成。原告は、市場規模の小さいボクシング界で活躍するには、個人事業主では心もとないが、株式会社は運営に負担が大きいので、LLCという法人格をアドバイスした。J以外にも送信したのは、今後厳しくなるのであろうボクシング業界について考える上で参考にしてもらえればという程度である。このメールには、結局誰からも返信がなかった。原告は、この定款案がどのように活用されたか、また、JACと関係する団体の設立されたか否かについて知るところではない。

(3)
 乙31号証は、乙30号証のようなJを通じたMからの依頼に対し、定款案を作成、送信した。この時点で原告はMと面識がなかったが、参考資料として作成した。
 原告とMは上記のような関係だったので、依頼者のMの真意をよく知らないで作成していることがメールの文面から明らかである。(「一人会社です。複数で考えているようでしたら」)
 被告主張のようなJACに関連する事業会社のような重要な組織であれば、その後も綿密に打ち合わせ等を行うはずだが、LLCの件はこの乙30、31号証で完結しており、以後全く話題にもなっていない。Jら宛先人からの返信も一切ない。その後の活用、関係団体の設立の有無も知らない。


5. ウ.JACの収支予算を試算するなどして、被告とは別のコミッション及び会社の設立を具体化しようとしたとの指摘に対する反論

 被告は、乙32、34号証のメールを根拠に、この収支予算書はJACの収支予算書と断定するが、この収支予算書は、JACなる団体のものではない。
 そもそもこの予算書は、キックボクシングというプロボクシングとは競技性もファン層も全く違うスポーツの収支予算書につき、経理に詳しいLが依頼され、作成したものである。
 別のメール(乙27号証)でJAC設立に関心を持つと思われるMは送信先になく、Jも送信先にないことからも、先の定款案と無関係であることが明らかである。
 原告はメールのC.C.に加えられただけで、具体的に何ら関与していない。KがLに依頼したものであり、原告は関係していないし、読んでもいないし、返信もしていないし、助言を与えていないし、予算書に関する発言もしていない。


6. 被告がJACの設立準備行為の具体的事実として列挙するア、イ、ウの相互関係について

 ア乃至ウの事実は、それぞれ関連性のない全く別個独立の行為である。被告はそれらを勝手に繋ぎ合わせ虚構のストーリーを作り上げたにすぎない。
 被告は懲戒解雇事由の存在の立証責任を負うが、M、W、Jらの事情聴取も行わず、メールのみを根拠にした被告の主張は、懲戒解雇事由の存在を立証したものとは到底いえない。


7. 就業規則第55条第15号の適用について

 ア. 懲戒解雇という処分の重大性から鑑みると、同号「職務上の地位を利用して営利行為もしくは特定の第三者の利益にあたる行為をしたとき」とは、第54条では「虚偽の事項を報告し、被告に不利益をもたらしたとき」(5号)や「被告を誹謗中傷する目的をもって外部に対し告発をしたとき」(7号)でさえも減給または停職処分事由に留まることとの均衡からすると、単に職務上の地位を利用して営利行為を行ったのみでは足りず、「当該労働者が職務上の地位または権限を不正に利用して営利行為もしくは特定の第三者の利益にあたる行為を行い、その結果、実際に当該組織に具体的な重大な損害を与えたり、実際に当該組織の業務の正常な運営を阻害したとき」に限られるというべきである。
 
 イ. 被告は、原告らの送受信メールのみを根拠にし、原告が職務上の地位を利用し営利行為もしくは特定の第三者の利益に当たる行為をしたときに該当すると主張するが、原告らはこれらメールの送受信によって何ら実際に当該組織に具体的な重大な損害を与えたり、実際に当該組織の業務の正常な運営を阻害したりしておらず、実際に被告はそのような事態に陥っていない。原告らは、JACを設立しておらず、その意思もなかったのであるから、原告らにとってJACとはいかなる団体であるか知るところではない。それ故原告は被告に具体的で重大な損害を与えたり、実際に当該組織の正常な運営を阻害するような行為を何も行っていないといえる。
 以上のことから、原告の行為が就業規則第55条第15号に該当しないことは明らかである。



第3 情報の漏洩について

1. Lのメールで送信した情報は業務上の重大な秘密に当たらない。

(1)
 被告は、乙35乃至39号証のメールを根拠に、原告がL・Iと共謀して、被告の業務上の重大な秘密を谷漏らしたと断定しているが、Lがメールで送った情報は重大な秘密に当たらない。理由は以下のとおりである。

(2) 乙35号証 
 平成23年9月当時、ボクサーoについて、過去に頭部外傷を負い、被告から引退勧告を受けた経緯が判明。Lは、o選手に健康管理上の重大な問題があると判断し、同選手の所属のwのマネジメントに関する東京代理人を務めるKに対し、その経緯を説明したもので、ボクサーの安全管理を預かる被告の職員として当然の行動であって、業務上の秘密にあたるものではない。

(3) 乙36乃至39号証
 ボクサーの戦績をLがメールで送信したもの。ボクサー戦績は、元々対外的に公表される性質の情報であり、外部に流出されても被告は全くの損害が生じず、正常な業務の運営が阻害されていないのであるから、「業務上の重大な秘密を他に漏らしたとき」に該当しないことは明らかである。

(4)
 また、被告は、Lが行ったメールによるボクサー戦績、健康状態の送信が、「別組乃至会社設立すること」によって「被告の組織を弱体化させる」「被告内部の秩序を壊乱し」「ガバナンスを崩壊せしめ」「被告〔JACの誤りか〕と共謀すること」を「意図して行われた一連の行為」と位置づけているが、LのメールはJACなる団体と全く無関係のことである。
 この点につき、被告の主張は、被告のこじつけというほかない。

(5)
 そして、そもそも原告は乙37、38、39号証に関しては一切関与しておらず、情報開示に具体的な行動をとっていない。共謀者とされるIは、乙35号証において事務連絡をしたのみで、他は一切関与していない。

(6)
 以上のとおり、原告の行為が就業規則55条6号に該当しないことは明らかである。



第4 独断の行為について

1. 独断の行為には該当しないこと

(1)
 被告は、乙28、29、40~42号証メールを根拠に、これらメールがJAC設立後gと協調して事業を展開する準備行為としてgと通信・接触したと断定するが、何をもって準備行為といえるのか全く意味不明である。以下メールの真意である。

(2)
 そもそも被告に対してgが接触したいと電話連絡があったのではなく、日本政府観光局から、gから同観光局へ日本国内でのg会議開催希望の問い合わせがあり、こうした場合、日本のプロボクシングの管理団体である被告に連絡した方がよいかと問い合わせがあったのである。
 
(3)
 「Dに伝達せず」「Lがあたかも被告の窓口であるかのように装い」と指摘があるが、実際にはLは、平成23年12月28日、13:10頃、秋葉原「麹蔵」〔飲食店〕にて、Dに問い合わせ内容を報告し、Dから被告はgに加盟していないので協力できない旨の回答をするよう指示を受けている(甲28、反訳資料)。

(4)
 同日14:27、日本政府観光局y氏に「被告として対応できない」旨の電子メールを送信している。したがって報告の主張は事実無根である。

(5)
 以上のとおり被告の懲戒解雇事由は全く事実に反し、Lの行為は「著しく自己の権限を越えて、独断の行為があったととき」には当たらず、ましてメール発信者でない原告はなおのことである。



第5 被告内部秩序の壊乱について

 就業規則第55条18号に該当との主張は争う

1. 被告内部秩序の壊乱について

(1) 就業規則55号第11号「損害を与えたとき」には該当しない

ア. 
 JACなる団体は、実体的活動はおろか、設立すらされておらず、それ故、被告の業務に具体的な影響は生じておらず、実害が生じていないことは明らかである。よって「故意または重大な過失により被告に損害を与えたとき」(11号)に該当しない。

イ.
 別団体・会社の設立による、被告組織の弱体化、被告内部の秩序の壊乱、ガバナンス崩壊、事業における被告との競合を意図して行われた一連の行為とは、全く抽象的で、雇用関係における極刑というべき懲戒解雇処分の適用にあたって、きわめて不明確な事実認定というほかない。
  少なくとも、別組織乃至会社が株式会社、合同会社、財団法人、などのいずれにあたるのか、いかなる意味で被告組織を弱体化させるのか(引き抜きなどの人的資源を奪う)などについて、被告は全く客観的根拠にもとづいて立証できていない。

ウ.
 以上、被告主張の懲戒解雇事由もまた、意味するところが曖昧かつ不明であり、到底懲戒解雇事由とはなりえない。

(2) 「その他前各号に準ずる程度の行為があったとき」(18号)には該当しない。

 このような包括条項の規定の設定が許されるのは、就業規則上の懲戒解雇事由は労働者保護の観点から限定列挙と解される一方で、個々の職場の実情に応じて、予め類型化して規定することは難しいが、限定列挙事由と同程度の著しい職務規律違反と言うべき行為についても懲戒解雇事由とすべき必要が認められるからであることは先に述べたとおりである。
 かかる観点からすると、同条11号で「被告に損害を与えたとき」と現実に損害を与えた場合に限定して懲戒解雇事由としているのに、本件に同条18号の規定を適用することは、現実に損害が生じていない場合にまで拡張して適用するものに等しく、厳格な適用が求められる懲戒解雇の規定の適用として到底許されるものでないことは明らかである。
 以上のとおり、本件では、原告の行為により被告には全く損害が生じていないのであるから「被告に損害を与えたとき」(11号)「に準ずる程度の行為があったとき」(18号)に該当するとの解釈及び適用は不当なものであり、このような就業規則規定の誤った解釈及び適用による懲戒解雇処分は無効であることは明らかである。

■■■■

以上

by いやまじで

Comment

ななし。 says... ""
あくまで原告側の準備書面なので、被告サイドからは違った書面となってくる、という前提で。

怖いですね。
単純に、怖い。事件の始まりから3年。解雇からでも2年を迎えようとしていますが、原告側の名誉や地位はなにも戻ってきていない。被告側は全く違った主張をしているでしょうし、そちら側だけを読んでいる方もメディアイにはいると聞ています。やはり、両サイド、というのが大切ではないでしょか?
パスワードを盗んでメールを復元し証拠として提出。
それを中心に裁判を争っているって・・・。
事実なら、刑事事件ですよね。
2014.05.27 14:07 | URL | #/OUezYRM [edit]
B.B says... ""
ななしさん、どうもです。
こちらは原告の準備書面ですが、被告準備書面要約もあがっています。
次回はそれのハイライトとなるでしょう。

結びに至るにはまだ時間が掛りますが、一年以上にわたり裁判所に通い、相当の時間と労力を使った結果がここにあります。
この裁判の事実を周知し皆が考える為のものであります。
いやまじでさんのご苦労に本当に敬服しますが、彼もまた「誰の為でも無い」と言い切ります。

さて個人的感想はハッキリ言って、被告はこれで裁判を争うのか?まともな組織じゃないと容易に思える内容です。僕は非常に驚きました。
原告が何故和解に応じなかったのかがも解るような気がします。

>事実なら、刑事事件ですよね。

その通りではないかと思います。またその可能性に気付いたマスメディアは既にあります。
これまで何故どこも書かなかったのか?今はまだ書けない理由がそこにある気がします。
28日は被告側証人の最終尋問ですが、結果によっては大変な事になると予測しています。

またこの記事の持つ意味についてですが、当事者には勿論結果がすべてでありましょうが、それだけではないと考えています。
将来のボクシング界を左右するような大きなテーマのプロローグと僕は位置付けています。
この裁判の持つ意味を今後も時間を掛けて掘り下げていきたいと思います。




2014.05.27 17:59 | URL | #bH1htKmU [edit]

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