HARD BLOW !

イズム全開 山口賢一インタビュー&スパーリングレポートpart4

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Ⅸ.ボクサー山口賢一はいかに誕生したのか?

ここらで原点にかえりまして、ボクサー山口賢一はいかに生まれたのか?その経緯を伺いました

HB「プロフィールによるとNS学園(某大物お笑い芸人の出身校としても有名な全寮制のスパルタ学校)出身と言うことですが」

山口「僕は野球の特待生で入ってるんですよ」

HB「そうなんですか?なんでボクシングを始めたんですか?」

山口「それはうどん屋のオバハンですわ」

HB「うどん屋?」

 山口選手が現在ジムを構える大阪天満で、ボクサーやボクシング関係者が集う店として有名な『こまいち』という食堂。その店の女将がボクサーヤマケンの産みの親と言ってよい存在だったのです。

こまいちと山口選手

最近改装された食堂『こまいち』と山口選手


 高校を卒業し大阪で働き始めていた山口少年は、いかにしてボクシングと出会ったのでしょうか?

山口「高校出てこっち帰ってきて、梅田の大東洋の横のバッテイングセンターでバイトしとったんですよ。その仕事が終わった後、そこのうどん屋によう飲みに行っとったんですよ。その当時はまだこの辺でそんな朝まで酒飲めるようなとこはそこくらいしかなかったんですよ。」

 山奥にある全寮制のスパルタ高校で野球部に所属していたという状態から、いきなり自由になった山口少年が当時感じていたであろう開放感は想像するに余りあります。悪友と酒を飲んで朝まで過ごす日々を楽しむ山口少年に、ある日うどん屋の女将が声をかけてきます。

山口「『あんた~エエ若いもんが酒ばっかり飲んでへんとボクシングし』って言うて来て。うっさいの~と思とったんですけど『ボクシングのチケットあげるから一回見に行ってみ』ってチケットくれたんですよ。3000円って書いてあるから『金いらんの?』って言うたら『タダであげるわ』って言うから、ほんなら一回行ってみよかって。で見てみたらね、出てる選手の運動神経とか、これやったら自分でも出来そうやなと思って」

 この辺は野球の特待生で進学したというくらいですから、きっと運動能力に自信はあったのでしょう。

HB「それまではボクシングは一切視野には無かったんですか?」

山口「無かった。まあ言うたらオバハンがきっかけを与えてくれたというか。最初は『そんなんやれへん』って言うてたんですけど、オバハンがとにかくひつこいんですよ!ひつこい!」

女将のしつこさに根負けする形でボクシング始めることを決意した山口少年は、当時の遊び仲間と袂を分かつことになります。

山口「その当時つるんでた仲間ね、まあ言うたら悪いじゃないですか。『もう俺ボクシングやるから』っていうて『ほんならもうええわ』ってなって。で僕がボクシング始めてすぐそいつら全員捕まってもうて」

HB「じゃ良かったんじゃないですか!(笑)」

山口「そう!良かったんですよ」

 悪の道一歩手前でボクシング界に足を踏み入れたことで辛くも逮捕を免れたという山口少年。このころから偶然や人の縁に恵まれていたようです。

Ⅹ.プロテスト、タイ修行

HB「ジムはどういう基準で選んだんですか?」

山口「最初こまいちのオバハンに勧められたジムに行ったんですよ。でも見に行ったら汚いジムやったんですよ。なんか暗いし、トレーナーもおらんし。で月謝みたら12000円でしょ。うーんこんなもんか…って思って」

そこからどうやって所属の大手ジムにたどり着いたのか。

山口「こまいちのオバハンが『あそこだけは行くな、絶対アカン』って言うてたとこなんですよ。そこは大手やったからオバハンはそこのアンチやったんです。でもそんなん言われたら逆に気なるじゃないですか。ほんで見に行ったら、きれいやしめっちゃ人おるんですよ。活気が全然ちゃう」

HB「ボロボロの寂しいジムと、ピカピカの活気のあるジムとどっちがええかと」

山口「同じ12000円出すならこっちやろと。誰でもそうやと思いますよ。でもそこに入ったことはこまいちのオバハンには隠しとったんですよ。店にもしばらく行かへんかったんです。そうこうしてたら一年くらいで僕がプロテストに合格したんですよ。そしたらそれが新聞載るでしょ。それ見たんでしょうね朝の六時くらいにいきなり電話かかってきて朝はよから誰やねんと思たら『こまいちのオバちゃんやで~アンタ一発で合格するなんか凄いやんか!』って。なんで知ってるねん、すごいオバハンやな思て。」

山口選手とこまいちのおばちゃん

 ボクサーヤマケンの産みの親こまいちの女将さんと山口選手

ベルトと山口選手

サリド戦のきっかけとなったWBOアジアパシフィックのベルトもこまいちの店内に飾られている
ベルトと山口選手


ベルトアップ


よく見ると修理痕が...サリドとの世界戦とこのベルトの関連はPart2をご参照下さい→こちらから

 実はこまいちの女将は店に出入りするトレーナーから山口選手の近況を逐一仕入れていたそうです。げに恐るべき情報網ではありませんか。こうして晴れてプロボクサーになった山口選手にある転機が訪れます。

山口「タイのチュワタナに練習に行ったんですよ。でそこでポンサクレックとかウイラポンともスパーリングすることがあって。その時に強いけどどうもなれへんということないな、と思ったんですよ。」

HB「強いけど工夫次第でどうにかできると言う感じですか?」

山口「あいつらの生活ってボクシングだけじゃないですか。これと同じ生活になれば絶対いけるなって言う自信はありましたね。」

HB「ボクシング漬けになればあそこまでいけるということですね」

山口「だからタイから帰ってきて生活リズムも変わりましたね。バイトも三つも四つもやってたのもやめて。月にかかる経費なんか実家におったら知れてるじゃないですか。ジムの月謝と携帯代、メシ代だけあったらええんやから。それで空いた時間はとにかく練習しよと」

HB「それはタイのトップ選手見てここまでボクシング漬けにならなイカンなと思ったと言うことですか?」

山口「結局プロ意識ですよね。世界チャンピオンになろうと思ったら24時間ボクシングのこと考えとかなアカン。その環境作りですよね。」

このタイでの海外ボクシングの原体験が現在の山口選手のキャリアを決定付けたようです。

ⅩⅠ.ネットカフェ難民が天皇に直訴!

国内でもトップ選手とのスパーリングを重ねてきたという山口選手。

山口「長谷川、名城、粟生、山中、下田色んな選手としましたよ。こいつには敵わんとおもったことは一回もないです」

 ちなみに山口選手が一番強いと感じたのは下田選手だそうです。これは身体能力を重視する山口選手のボクシング観が出ている面白い視点だと思います。

 タイから帰国後、山口選手は上京し泊まりこみで帝拳ジムに出稽古に通う日々を過ごしていました。

山口「3ヶ月くらい東京おったんちゃうかな?泊まるのは漫画喫茶でね。まだニュースとかでネットカフェ難民やなんやって出る前ですよ。だから僕がネットカフェ難民の第一号ですよ!」

HB「そこでもパイオニアですか!(笑)『ここやったら泊まれる』って気付いたんが俺や!と(笑)」

山口「そうですよ。で帝拳のジム通ってる時に、たまたま関西の知ってるトレーナーの人がおったんですよ。で『お前どこ泊まってるねん?』って聞かれたから『漫画喫茶です』って言うて、そしたらエーってなって。『いま泊まってる部屋がツインでベッド一個あいてるから泊まるか?』って言われて、『ええんすか?』言うてホテル行ったんですよ。」

この何気ない誘いがヤマケンイズム全開の事件を引き起こします

山口「でそこからホテルに泊めてもらってたんですけど、粟生の日本タイトルマッチが終わった時に『みんなでメシ食うからお前も来るか?』って誘ってもらったから、『ええんすか~』言うてええホテルやから何食えるんやろと思って行ったんですよ。そしたら本田会長とか色んな人がおったんですけどなんかみんなしょうもないカレーかなんか食ってて」

HB「しょうもないカレー(笑)」

山口「まあ出してもらってるから文句言うたらアカンのですけど。で仕方ないから自分もカレー食べて」

HB「みんなカレーやから仕方ないですよね(笑)」

山口「でも、メシ食ってても全然おもんないし、みんな黙ってるから本田会長に『ちょっと聞きたいことあるんですけど』って言うたら『おうどうしたの?』って聞いてくれたから『日本タイトルマッチしたいけど、どうしたらいいんですかねえ?』っていきなり聞いたら『そりゃ自分とこの会長に相談しないとダメだろ~』って言うから『いや出来ないんですよ。やる気ないからね』って言うたら『そりゃ移籍するしかないだろ~』ってなって」

なんとネットカフェ難民が本田天皇にまさかの直訴!田中正造と山本太郎の間にヤマケンがいたとは歴史の盲点でありました!

山口「そしたら俺を連れてきてくれたトレーナーの人は『コイツ何言い出すねん』って言う感じになって(笑)。でもその時は本田会長は紳士的に話してくれて。ちゃんと話聞いてくれましたよ。」

 この話を聞いた私は天皇だなんだと遠ざけられがちな本田会長も実はこうやって若いボクサーから意見をぶつけられたいのではないか?とふと思ったのでした。
 
 とび出す形で辞めたかつての所属ジムもにしても、無名の若者にこうして色々なチャンスを与えてくれた舞台でありました。

山口「だから色々あったけど今でも元おったジムには感謝してるんです。あの時が無かったら今も無いわけですから。」

というわけで一向に最終回になりません!次回こそ本当の最終回です。

連載が長くなりすぎて恐縮している(旧徳山と長谷川が好きです)

Comment

やわらか says... ""
あっけからんとなんでもハキハキ喋ってしまう山口さん しかもユーモアセンスもありますし、本田会長に直訴する豪胆さもあるし。いや読んでてすごくおもしろいです。

旧徳さんの田中正造からメロリンQのくだりも噴いてしましいました。
2014.05.04 02:18 | URL | #- [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
>やわらかさん

山口さんは自分が自分の社長みたいなものなんでしがらみが無いと言うのはあるでしょうね

何回も言いますがご本人の口から直接聞いたらもっと面白いですよ

2014.05.04 11:21 | URL | #- [edit]
いやまじで says... ""
面白いのでまだまだ続けてもらってかまわないです。(笑
2014.05.05 09:02 | URL | #Twj7/TDM [edit]
ホシイモ says... ""
早く続きが読みたいでつ

(u☆∀☆)
2014.05.05 11:10 | URL | #bGf9qjkw [edit]

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