HARD BLOW !

高山勝成公開スパーリングin 近畿大学ボクシング部レポート

 シルバノ戦前の高山選手インタビュー記事は→こちらから

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                  高山選手と中出トレーナー
             
 当HARD BLOW!でもお馴染みIBFミニマム級チャンピオン高山勝成選手の国内復帰第二戦がいよいよ近づいて参りました。日本国内のライセンスを返上し海外で未承認タイトルを狙うという高山選手とその陣営のチャレンジは、日本人ボクサーとして21年ぶりの海外奪取という偉業となって結実し、昨年末大阪で国内復帰戦となる指名試合も完勝でクリア,高山選手のトレーナー・マネージャーを勤める中出博啓氏は2013年度のエディ・タウンゼント賞を受賞しました。一見無謀と見える針の穴を通すようなチャレンジを勝ち抜き、国内ボクシングシーンに復帰した彼らは、果たして2014年にはどのような冒険を見せてくれるのでしょうか?

 高山選手の今年の初戦は、当初内藤大助からダウンを奪った試合で日本でもお馴染みの熊朝忠選手とIBF・WBCの統一戦を戦うと見られていました。ところが熊選手が2月にWBC王座から陥落したことで統一戦のプランもご破算となり、IBF同級10位の小野心選手(ワタナベジム)との防衛戦が発表されました。日本人との対戦は2007年の新井田豊戦以来となります。

 このマッチメイクを受けて、ファンもメデイアも圧倒的に高山有利と言う分析が主流ですが、当の中出トレーナーがブログで表明された見解を見ると決して楽観的では無いようです。果たしてその真意は?ということでスパーリングの舞台である近畿大学ボクシング部に向かう車に便乗させて頂き、まずは中出トレーナーのお話を伺いました。

HB「ブログで苦戦予想をされてましたが…」

中出「みんな高山有利やと言ってるでしょ?」

HB「ファンもメディアもほぼそういう感じですね」

中出「これは盛り上げようとかそういう意味じゃなくてほんとにね、嫌な相手やと思うんですよ。一見すると特徴が無いんやけどそれでいてずっと世界ランクを維持してるでしょ。まず戦い方が崩れない」

HB「スタイルが崩れないということですか?」

中出「スタイルと言うより自分が出来るボクシングを真面目にやる選手なんやろうなっていうこと。離れてるときはアップライトやけど、接近してくると全然違うスタイルになるからバッテイングも心配やし。それとまっすぐ下がらないのも厄介やね。見た目よりもパンチを当てにくい選手やと思います」

HB「そういえばそうですね。キムウェリ戦でも大きいパンチもらってるようで意外とダメージを感じさせない」

中出「パンチをまともにもらわない選手なんですよ。逃がし方と言うかもらい方というか…。でも対策は考えたんでそれをやっていきます」

続いて熊朝忠の陥落について伺いました

HB「熊が負けたときは中国の試合会場にいたんですよね」

中出「熊にはCCTV(中国中央電視台)がついてて放送契約もあって、次は高山と統一戦する予定やったんですよ。俺らも招待で行ってるからね。で俺らの座ってる席にテレビカメラが何回も来て『勝てば次はこの高山とやる』って中継で盛り上げてるわけ。でカメラに向けてサービスしようと思って、笑って手振ったりしてたんやけど、その手を振ってる後ろで熊がボッコンボッコンに殴られてて(笑)。いやこんなことしてる場合ちゃうやろと。」

HB「予定が狂いましたね」

中出「統一戦は全部のチャンピオンに打診してるんですよ。これからも交渉はして行きます」

続いて大学のボクシング部での公開スパーと言う試みについて…

HB「近畿大学でスパーというのは小野選手への対策の意味があるのですか?」


中出「それはあります」

HB「アマとの交流と言うのは面白い試みですね」

中出「でもプロアマの規定とか細かいこと知らんかったから、最初は『ホンマに行ってええんやろか?』と思ってたんやけど、向こう(近大)の方は『いや気にせんと来てください』と言う感じで」

 その後年末の興行での『亀田トラブル』についての見解などを伺っているうちに車は近畿大学に到着。ボクシング部は柔道場や剣道場や土俵、レスリング場等々体育会の練習場だけが入っている雑居ビルのような凄い建物の中にありました。

 「近畿大学のボクシング部って『花の応援団』みたいな感じなんじゃ…」というベタな先入観を持ったまま恐る恐る引き戸を開けて中に入ると、予想に反して中にいた部員たちは今時の礼儀正しい学生ばかり。すでに到着し鏡の前でアップ中の高山選手を発見し「高校入学おめでとうございます」と声をかけると照れながら笑うチャンピオン。広いジムの中にはAIBAの公式リングがデンと据えられており、公開スパーリングと言うこと報道関係者や大学の広報の方の姿も見える。

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                    活気溢れる練習風景

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                 高山チャンプも学生に混じってバッグ打ち

 名門と言われた近畿大学ボクシング部は2009年に所属部員が路上強盗で逮捕されると言う不祥事で一度廃部になりましたが、部員やOBの地道な活動・嘆願によって2012年に赤井秀和総監督という新体制で復活し、この春からは元WBAスーパーフライ級チャンピオン名城信夫さんをヘッドコーチに迎えています。名城コーチにご挨拶をさせて頂いて少しお話を伺いました。

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                      名城信夫ヘッドコーチ

HB「ヘッドコーチと言うことですが練習は毎日見ておられるんですか?」

名城「毎日見てます」

HB「アマの指導者になられると言う選択には驚いたのですが」

名城「前々からやりたい、これしかないと思っていたので」

HB「アマチュアの指導者になりたかったということですか?」

名城「いやアマチュアとかじゃなく、ボクシングを教えることがしたかったということです」

HB「ボクシングを教えたいと思っていたところにOBだった近大さんから話があったと」

名城「そういう感じです」

HB[「コーチに就任された時の報道で『その人に合わせた指導がしたい』と言っておられましたが?」

名城「画一的な指導じゃなくそれぞれの人の個性に合わせた指導をしていきたいです」

HB「世界チャンピオンだった人が大学のボクシング部のコーチになると言う選択はファンとして名城さんらしいな、ぴったりだなと思いました」

名城「そうですか。ありがとうございます」

とファン丸出しで色々伺いましたが、お忙しい中お答え頂きありがとうございました名城コーチ!

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                 熱血指導中の名城コーチ

 本日の高山選手のスパーリングは三人のパートナー相手に8ラウンド。最後の一人が小野選手と同じサウスポーとなります。学生達にとっては世界チャンピオンに胸を借りるまたとないチャンスとあって気合充分にチャンピオンに挑みます。
 青年監督の浅井さんが高山コーナーに来て「もっと攻めてくれていいですよ!」と要望し、学生たちには鬼の形相で「弱気になるな!」と発破を飛ばせば、名城コーチは学生がいいパンチを入れればセコンドから積極的に「いいねー」と声をかけて選手を鼓舞。プロのジムとはちょっと違うこの部活感が新鮮、なんですが学生選手はスピードがあってパンチも正確で実力はほんと侮れない。
 最後にリングに上がったサウスポーの選手はトリッキーな動きと独特の当て勘を持っている好選手。意外なアングルからパンチを出してくるアマらしからぬ曲者タイプで、仮想小野にはうってつけか?打たれてもひるまない気の強さもあるし、サイドへの俊敏な動きやタイミングの良いアッパーもいい。
 ただフレッシュな状態では打ち合えていてもラウンドを重ねれば高山選手のプレッシャーに飲み込まれて、最後は失速。ロープに詰めてのボディ打ちで手数も止まってしまう。リングを降りた彼の口からは「プレッシャーが凄くて体力がどんどん減っていく」と言う感想が漏れました。

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 スパー終えた高山選手はパートナーを勤めた三人に感想も交えて技術指導した後は、縄跳びの跳び方から教わっているような初心者の新入生にジャブやワンツーの打ち方を懇切丁寧に教えたりと部活に積極参加。
 学生に溶け込みすぎて、終礼の円陣ではちゃんと並んでるのにコーチから「高山チャンピオンはどこ行ったんや?」と探されると言うプチハプニングも起きました。
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           高山チャンプが初心者部員にジャブ・ワンツーをコーチする一幕も

 プロアマの関係が決して良いとはいえない日本ボクシング界ではありますが、東京五輪もあることですしお互いわだかまりを捨てて大同団結して欲しいと願わずにはいられません。現場レベルでの人的な交流はもはや規制のしようがないわけですからね。
           写真 (5)
                 豪華な2ショット

 帰りは高山選手も同乗した車でさらにお話を伺いました。

HB「昨年末の試合(シルバノ戦)ですが、ご本人の評価はどうですか?」

高山「(かなり長く考えて)あそこまで押してたんやから倒したかったなと…」

HB「僕らもそういう感想を中出さんにメールで送ったんですけど、そしたら中出さんから『厳しいなあ』と。『八分の力で怪我もせず完勝したと言うところを評価して欲しい』と言われて。確かにそう言う視点はなかったなあと思いました」

中出「怪我しないで明確に勝つことがテーマやったからあれはあれでいいんですよ。1Rにビッグパンチ当てたことで相手が一気に消極的になったのもあったし…。やっぱりファンには技術をもっと見て欲しいんですよ。防御とか駆け引きも楽しんで欲しいというか」

HB「『KOなら良い試合』という価値観は確かに違いますよね」


この日の前日に朝のワイドショーで紹介された高校入学についても質問してみました

HB「高校入学と言うニュースには大変驚きました。名城さんの大学コーチ就任と併せて『関西のボクサーの動きは予測がつかんな』と」

高山「みんなそれぞれ自由にやってていいでしょ(笑)」

HB「ブレザー姿で完全に溶け込んでましたね」

高山「今日も学生に溶け込みすぎてコーチに見失われましたけど(笑)」

HB「もともと学業をしたいという志向はあったんですか?」

高山「二十歳のころは定時制や通信制の高校を探したこともあったんです。ただ試合が決まっていくし、なかなか予定が立たない仕事ですから難しくて」

HB「菊華高校は全日制ですか?」

高山「そうです。スポーツアクトコースというのがあってそれやったら通えるかなと」

HB「どういう経緯で入学が決まったんですか?」

高山「それは山口賢一さん(インタビュー参照→こちら)がその高校のボクシング部の顧問になると言う話を聞いて『自分も勉強したいから』ということでお願いして…」

HB「じゃ山口さんが発端なんですね」

中出「野球部と一緒に練習したり昔から交流がある学校なんですよ」

HB「ちなみに中学までは勉強は好きだったんですか?」

高山「そんなもん大嫌いですよ(笑)」

中出「俺は『勉強せい!勉強せい!』て言ってたんですけど、全然せえへんかった(笑)」
  
HB「今日も学生に指導してましたが教えるのは好きですか?」

高山「いや、なんかそういうわけではないんですけど…」

HB「『教員免許を取って指導者になりたい』と言うコメントを報道で読みましたけど」

高山「それね…僕言ってないんですよ」

HB「そうなんですか?」

高山「なんか僕の引退後とかを考えて学校の人が提案として言ってくれたことがいつの間にか僕が言ったことになってて…。まだ高校に入ったとこで教員免許とかそんな先のことは…。こういう仕事だから何があるか分からないですし」

中出「マスコミの人ってウケる方向に話を持って行きたがる傾向はあるからな。中田とか野茂みたいな考え方のぶれへん選手は、本人の想いと違ったニュアンスで報道されたりとかもあったし、正確に伝える必要あるわな」

 というわけで高山選手はまずは高校卒業を目標に頑張っていかれる由、了解致しました!

HB「今日初心者の新入生にジャブとかワンツーの打ち方教えてましたけど、高山さんって人に対してフラットですよね」

高山「それは自分が海外で一人の時があったからだと思います。彼らもね今日むっちゃ居場所が無くて暇やったと思うんですよ。自分もスパー終わって時間あったから、そやったら一緒になんかやろかというだけなんです」

HB「新入生で世界チャンピオンから直接ワンツー習えることなんかなかなかないですよ」

高山「初心者の時ってね自分がやってることの意味が分からないんですよ。だから今やってる練習はこういう意味があってって教えてあげることで少しでもやる気が出たらええなと思って」

お疲れのところ色々な話を聞かせていただきありがとうございました。関西は世界戦の興行が続きますが、高山選手にはインパクトのある勝利を期待したいと思います。

 近畿大学の皆様大変お世話になりました(旧徳山と長谷川が好きです)

Comment

B.B says... ""
旧徳さんお疲れ様でした!
近大での練習、プロアマ交流と色んな事を示唆する記事になりましたね。
名城さんの近況も伝えて頂きました。
来月12日は「緩くて深いボクシングナイト」のゲストですね、楽しみになりました。

さて、中出さんのブログ読んでましたから、苦戦予想が何故なのかずっと気になってました。
なるほどなぁ・・という部分といやぁそれでも・・という部分がまだ入り混じってます(笑
どんな試合になるか本当に楽しみ。

初防衛戦を観戦後、1ポイントも取られてしまったやんか!と騒いだのは自分であります。
フルマーク付けたジャッジもいましたから完勝なんですけどね、たしかに厳し過ぎました。
次は2ポイントくらいは取られてもいいです(笑
いや冗談はさておき、小野選手も死にもの狂いで来るでしょう。
ほんと怪我なく大事に戦って欲しいと思います。
長く長く高山選手の活躍を見ていたいです。

今年になってからですが、後楽園ホールのエレベーターで高山選手に声を掛けさせて頂きましたら「ハードブロウ見てますよ」と。
嬉しかったなぁ・・
5月7日大阪は応援というか、元気を貰いに行きます!ワッショイ!!
2014.04.28 23:41 | URL | #bH1htKmU [edit]
やわらか says... ""
映像を含めて小野選手実はあまり知らなかったんですが、中出トレーナーも警戒してるみたいだし楽しみになりました。

メインも周りで言うほど楽な試合ではないと思うんですよね…最近の井岡バッシング…まぁネットだけみたいですけど悲しくなってきたんで井岡にスカッと勝ってもらって改めて実力をアンチにみせつけてほしいです。

またアンパイ狙ったロマゴン!ロマゴン!て騒ぐんでしょうけどね…頭痛くなりそう
2014.04.29 12:28 | URL | #- [edit]
B.B says... ""
やわらかさん、井岡選手めちゃくちゃ良い選手ですよねぇ。

しかしバッシングって・・マッチメークの事でしょうか?
世界王者に対しては失礼かも知れないが、僕にはちゃんとキャリアに応じた成長の階段登ってると見えます。
前回の防衛戦見てもバッシングが起こるなんて信じられない。
ローマンは強いですけどそれを見据えていると思いますし、井上選手ともいつか絡んで欲しいという希望は勿論ありますが。

ほんともう僕の持論というか願望なんですけど、出来れば世界獲る前にキチッとキャリアを積ませるべき、そうして欲しいということ。
世界王座乱立でもうすでにチャンピオンがゴールの時代は終わりました。
「最短で王者」にどれほどの価値があるのか自分には正直解りません。
むしろ怒りさえ湧いてくる。

天才と言われた辰吉も世界王者としては短命だった。
僕は辰吉選手の試合でボロボロ泣いてしまうほどの感動を貰いましたし、人間としては大好きです。真っ直ぐだし本当に律儀だし人としての情も深い。
しかし、彼のボクシングは好きでは無かったんです。最後まで好きになれなかった。
やはり、6回戦、8回戦、10回戦とその時々でマスターすべき事があるはずと。
それを省いてはいつか必ずツケが回って来る。
一人のボクサーが自身最高のパフォーマンスをおそらくは見せる前に体がボロボロになって「引退」という場面をどれほど見て来た事か。
眩いばかりの才能を、そして成長から円熟期までを、ファンならずっと観ていたいじゃないですか。
それがファンの心理だとずっと思ってました。

最短!最速!と騒ぐテレビもメディアも本当はボクシングやボクサーが好きでは無いんじゃないの?と悲しい思いになります。
2014.04.29 14:53 | URL | #bH1htKmU [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
八重樫に明確に勝ってるのに、『八重樫を見習え』とバッシングされちゃうのは不条理そのものですね。ボクシングファンの精神主義もここに極まれり
2014.04.29 19:34 | URL | #- [edit]
いやまじで says... ""
高山選手のオーラの無さ(?)は半端じゃないようですが、

>初心者の時ってね自分がやってることの意味が分からないんですよ。だから今やってる練習はこういう意味があってって教えてあげることで少しでもやる気が出たらええなと思って

指導するというと上から目線になりがちだと思うのですが(世界チャンピオンともなればなおのこと)、高山選手の場合はかつての自分を忘れずにいて、なおかつ、相手の目線に立って考えることができる。これは単なる人柄の問題ではなく、人の心をよく理解することができる力だと思います。戦いにおいてもそうですし、指導者としての資質でもあると思います。
2014.04.30 20:02 | URL | #Twj7/TDM [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
やっぱり海外に行くと内省するようになると言う意味のことは中出さんも高山選手も仰ってましたね
2014.05.01 08:49 | URL | #- [edit]

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