HARD BLOW !

大阪城ホールで考えたこと

 チケットは完売との煽りもありましたが蓋を開けてみたら結構空席もあったこの日の大阪城ホール。ボクシングに不向きで使用料も高いこんな会場わざわざ使わんでもええのになあとも思いますが、まあそりゃやる方の勝手ですね、そうですねすいません。会場内に入ると白い法被を着た山中応援団の善男善女の皆様の姿がとてもよく目立ちます。地元への凱旋(まあ滋賀なんですけど)ということでファンの側も気合が入っています。地べたで酒盛りしてたりする長閑な感じも、ボクシング会場らしくなくなんだかほっとしてきます。
 
 この日は撮影禁止ということで画像もありません。しかし今日日撮影禁止ってねえ。最近は外タレのライブなんか動画も写真も撮り放題、録音もし放題なんですけどね。

 スタンドに入ると丁度粟生選手の名前がコールされているところ。対戦相手はマルコ・アントニオ・ロペスというパッと見には名チャンピオンみたいな名前の人で、パンフレットによると23勝3敗とのことですが、かなりモッサリした選手。「この戦跡ホンマかいな」と思いつつ観戦するが、粟生が一方的に攻撃するもののロペスは打たれ強くダウンを奪えない。結局さしたる起伏も無いままゴングで3-0粟生。ただジャッジの原田さんが1ポイント差だったのは一体…。東京のボクサーに関西ジャッジがアウェイの洗礼を浴びせたのでしょうか?一体何の意味が…。

 なんとそこからいきなり長谷川の世界戦。まだ6時半だよ。ド平日なんだからまだ間に合ってない人もいるでしょうに。7時から生中継じゃダメなのかなあ…。まあ私は間に合ってるからいいんですけどね…。

 会場が暗くなってリングアナに呼び込まれた長谷川は、すぐに花道に登場。最近テーマ曲がJポップみたいになったのが不満だったのですが、歩いている長谷川を見ているとなぜか涙が溢れて来ました。これは自分でも全く予想外でした。ブルゴス戦でバーンアウトして、それ以降は抜け殻のようだったという長谷川。もうあの高速連打や自在なフットワーク、神がかりなタイミングの打ち抜くカウンターが戻ってくることはないのか?メカ二クスが狂っているのか?モチベーションが上がらないのか?フィジカルが衰えたのか?

 試合前の調整時や記者会見の時の様子も、念願の世界戦のはずなのにどこか達観したような雰囲気でどうにも覇気が感じられないし、コメントも「僕自身が納得いく試合をする」という非常に精神的なもの。そして試合翌日の長谷川選手のお父上の「前日電話で話したときに息子は呂律が回っていなかった」というコメントも併せても、最初から12R戦える状態ではなかったのではないか?と言う疑念が浮かびます。

 実際の試合も1ラウンドは全盛時の動きを彷彿とさせたものの、2R早々には足が止まり打ち合いに付き合うしかない状況になってしまう。ダウンシーンもサイドに逃げないのが不可解でしたが、あれは「ムキになって打ち合った」というより、単に「体調が悪く足が動かなかった」だけなのではないか?と思えました。あるいはもはや以前のような勝利への意欲が無かったのか?その後も打ち合いの中で時折鋭いカウンターやハンドスピードに溢れる連打は見せるものの(ボディは効いていたと思います)、余りにも足が動かない。これだと必然、打ち合いの中で一発にかける確率の低い玉砕戦法になってしまわざるをえません。実際、眼窩底と鼻骨を骨折していたと言う事実を見ても長谷川が払った代償は明らかです。

 試合前に様々な方に勝敗予想を聞きましたが、やはり皆さん一様に「打ち合いに付き合わず、スピードを生かしてボクシングすること」を勝利の条件に挙げておられました。私もそうでした。ところが試合は序盤から全く別の展開で長谷川は分の悪い打ち合いの中でマルチネスの重いパンチを浴び続けて消耗し、最後は崩れるように倒れました。

 会場からは暖かい拍手が起こり「ありがとう」と言う声援が飛び交いました。自分はなぜか「ありがとう」と言う気分にはなりませんでした。うーん「ありがとう」か?「お疲れ様」も違うな?なんだろうこの感じ?枯れ切った長谷川の佇まいにただただ戸惑いました。

 長谷川との二戦目に敗れたウイラポンが人目もはばからず号泣しているのを見たとき、いつも冷静沈着で無表情で『デスマスク』と呼ばれた男がこんな風に泣くんだなと驚いたことを思い出しました。ウイラポンはデスマスクの下にこんな熱情を持っていたんだなとあの時感じたように、長谷川は即興的で華麗なスタイルだったけどこういう玉砕覚悟の狂気を秘めていたんだなと思い至ったといいますか。

 長谷川はかつて自身にとってのボクシングの定義を聞かれて「大人になってからも続いている青春だ」と答えていました。その言葉通り彼は老成を拒否して自身のスタイルに殉じたのかもしれません。まあこれもちょっと精神的に捕らえすぎかも知れませんね。頭でっかちなんですいません。

 自分は全盛期の長谷川選手の試合を会場で沢山見ました。2009年は三回神戸の会場に通ってうち二回が1RKO、合計6Rしか見れなかったもんなあ。ハンドスピードが速すぎて肉眼で見えず、会場のモニターでコンビネーションの確認をしたもんでした。

 ジョニゴン戦は津波の後の復旧作業で仙台空港に行った後天童市のホテルのテレビで見て、KOがショックで自棄酒して夜中に三回吐いたなあ。と自分のことも色々思い出しました。

 長谷川選手はまずは怪我を治して、それからゆっくりと心のままに生きて頂きたいと思います。

 青春が終わった後はどういう大人になるのでしょうか?

 山中選手の衝撃的な勝利はさながら世代交代を思わせましたが、実は長谷川と二歳しか違わないですよね。しかしパンチであんな風に人が吹っ飛ぶとは。気孔のデモンストレーションみたいでした。まさしく規格外。今回はジャモエ君が単調すぎて引き出しを開ける必要が無いという感じでしたが、もう少し本気にさせる相手との試合が次は見たいですね。日本人なら岩佐か和気で。

 余談ですが「前戦負けたジャモエが3位っておかしくない?」という声が複数の方からありました。私もそう思いました。ホンマランキングっていい加減ですね。

 ところで真正ジムは大場、長谷川と連敗しキツイ状況になって来ましたね。これって帝拳の毒見役としてIBFの試合を連戦した帰結だと言うのはうがち過ぎでしょうか?

 帝拳本体はあくまでWBCで、マカオなどではWBOも触り、傭兵のロマゴンはWBA、村田は三迫をトンネル会社にしてトップランクともパイプを保持、そしてIBFは真正ジムに一回やらせて見て…とまさに全方位外交じゃないの。この寡占状態は果たして業界にとって良いことなのでしょうか?他のプロモーターの皆様の奮起を…とかそういう次元もとうのとっくに超えてる感じですね。

 観戦後まる徳に行ったら徳山さんはおらずガッカリしてたら、辰吉さんが焼肉食ってて嬉しかった(旧徳山と長谷川が好きです)

Comment

いやまじで says... ""
大阪城ホールといえば私にとっては渡辺vsパヤオのプレミアムな会場ですが、
(日テレは辰吉伝説で押してましたが)
この日はテレビ画面で見ても客の入りはともかく少し雰囲気ちがってましたね。

>彼は老成を拒否して自身のスタイルに殉じたのかもしれません。

たしかに長谷川は若いころから打ち合いは好きでしたね。
私なんかの期待する試合運びの巧い老練なボクサーになることを
たしかに彼は拒否したのかもしれません。

階級や肉体面の条件でできなかったのかもしれませんが、
少なくともタッチボクシングみたいになることを拒否したことは確かですね。
2014.04.26 08:41 | URL | #Twj7/TDM [edit]
B.B says... ""
試合翌日の日刊スポーツ読んだら、長谷川父の衝撃的な談話がありました。
身近の人は異変に気付いてるんですよ、あたり前の事だけど。
悲しくて泣けて泣けて仕方なかった。
長谷川穂積よ、貴方だから最後の試合を許されたんだと。

長谷川選手のブログが話題になった事がありましたが、この時何となく予感はありました。
選手としては終わったんだなと。

だけどこういう事はもうあってはなりません。
ボクシングに携わる人たちには言いたい。
エディさんの言葉を思い出して下さい。
「この子たちをこのまま家族の元に返す事が僕の仕事」

ボクシングだけは特別というプライドがいつか狂気に繋がる事を。

2014.04.26 10:19 | URL | #bH1htKmU [edit]
旧徳山と長谷川が好きです says... ""
感動をありがとうで済む話ではないですね
2014.04.26 11:28 | URL | #- [edit]
B.B says... ""
長谷川選手の偉大な功績と共に、心は張り裂けそうだけども、ちゃんと総括しておかなアカンと思うんですよね。
その意味でもこうした記事は勇気のいる事ですけど、ありがたいなと思いました。
2014.04.26 11:52 | URL | #bH1htKmU [edit]
バンコク愚連隊 says... ""
帝拳が真正を使ってIBFの味見?

そんなことはないと思いますよ。本田会長はIBFのピープルズ会長を非常に高く評価してますし、IBF自体も評価してます。今回は試合前に長谷川の練習も見に行ってたし(そこで「長谷川は変わった。よくなってる。」といっていたのに長谷川がその変わったところを試合で見せられなかったのが限界だったんですかねえ…)

とはいえすでに石本を挑戦させる段取りも進めていますね。石本が決定戦に勝てれば、ですが…
2014.04.26 15:11 | URL | #4A9T8td. [edit]
B.B says... ""
4団体になれば・・という対抗業者の目論見もあったんじゃないでしょうか。
しかし、結局のところ主導権を握るのは誰?という答えが見えてきちゃいましたね。
2014.04.26 20:16 | URL | #bH1htKmU [edit]
B.B says... ""
話しを戻しましょう。

山中選手の剛腕です。
実力差があったというものの相手をサンドバッグのように打ちまくり、最後はボディへのストレートですよ!世界戦ではあまり記憶がありません。
それと僕はストレートパンチャーが大好きなので、もう山中選手には痺れまくりました。
テレビ観戦でしたが「凄い!」「凄い!」しかありませんでした。

しかしメディアでも「神の左」という表現ばかりが溢れまくっていて、「なんだかなぁ・・」と。
競技者としても天才肌ではないし弛まぬ努力の賜物と思いますから、スポーツメディアはせめてそこに敬意をはらって左ストレートの「スペシャリスト」くらいには言って欲しい。
神は比較や比喩にして使う風潮らしいですけど軽すぎます。漫画じゃないんだから。


2014.04.26 20:36 | URL | #bH1htKmU [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
>バンコク愚連隊さま

まあこれはあくまで私感なのですが、やはり帝拳さんは国内の興行ではWBCとの関係を重視していると思いますよ。WBAは外国人と例外の下田、WBOの下部タイトルやIBFの決定戦に進む石本は海外での試合と『日本市場におけるWBCのプライオリティ』は守っていると言う印象を受けます。

それにしても認可前にWBOの下部タイトルを取ったのは大沢も石本も同じなのに大沢だけ処分されたのはどう考えてもおかしいです
2014.04.26 21:23 | URL | #- [edit]
B.B says... ""
結局ね、今のボクシング界に確固たる基準やそれを示す指標が無いのが問題だと思うんですよ。
言ってみれば哲学ですよ。
これがないから混迷する。
2014.04.27 04:52 | URL | #bH1htKmU [edit]
やわらか says... ""
私 浪速のショーも楽しみだったんですが、相手との実力差がありすぎて あっという間に終わってしまったんで 少し残念でした。

かなり身体が大きく感じたんで、スーパーバンタムよりフェザーのがいいのかな?と感じました
2014.04.27 08:50 | URL | #- [edit]
ビートル says... "帝拳の一強状態は確かに問題"
 初めて投稿させていただきます。

 私も今のボクシング界は帝拳ジムの「一党支配」「一強状態」になりつつあるのではないかと懸念しています。かつてから日本のボクシング界は帝拳、協栄、三迫、ヨネクラの四大ジムが支配し、他のジム、特に地方のジムにはまともな機会すら与えられないという批判がありましたが、近年は後三者の力が衰え、興行のルートも有力な選手もほぼ全て帝拳の息がかかるという状態になっているのではないか(愉快な話ではないが、唯一、帝拳に対抗しうる勢力を有していたのは「鬼っ子」の亀田ジムだった。だが、これも過去の話である)。ただでさえ日本ではジムの会長に権限が集中しすぎて多くの問題を発生させているのに、このうえその中の一つのジムが圧倒的な支配力を有するようになれば、極めて困ったことになると思います。
 私は選手、プロモーター、マネージャー、マッチメイカー、ジムがそれぞれ独立したシステムが理想だと思っていますが、それが望めないにせよ、せめてどこのジムにいようが王者への挑戦ルートだけは整備される体制になってほしいと思います。有力な選手(特に地方ジムの選手や外国籍の選手)が機会を与えられず終わってしまうことがしばしばありますが、これは理不尽です。しかし、今の状況はそれとは真逆の方向に行っているのではないかと気がかりです。国内にいる限り万事帝拳の意向に従うルートのみが選手に許される状況となってしまうのではないか?なお、長谷川選手が2階級制覇に挑んだのがスーパーバンタム級ではなくフェザー級になったのも、西岡選手の邪魔にならないようにという帝拳ジムの意向が働いたのではないかと思います。

 IBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチの試合自体は強打を振るう荒々しいボクシングをする王者マルチネス選手に、長谷川選手が経験と技術で食い下がっている印象がありました。しかし、ポイントとは無関係に長谷川の劣勢は明らかであり、最後はパンチが当たっても効かなくなっている様子でした。不世出の名選手もやはり限界になっていたのではないかと思います。正直、現状ではよくやった部類だと思います。なお、「穴王者」などという失礼な評価も一部にありましたが、マルチネスは強い選手でした(今時、それも欧州では珍しいタイプだと思う)。また、この種の「打ち合い上等」というタイプの選手は長谷川とはあまり相性がよくなかったのかもしれません。
2014.04.29 16:46 | URL | #dJddGAtI [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
『地方ジムの選手はチャンスが無い』ということをファンが自明のこととして追認してしまっていること自体が問題だと思います。

現状のプロモーターの寡占状態は自由競争には程遠く、結果的に業界を沈滞化させてるだけだと思います。現状が続けば意欲やアイデアのある人はやる気をなくしてしまいます。

2014.04.29 21:52 | URL | #- [edit]
やわらか says... ""
長谷川進退は年内に結論とありましたね。ジムワークも再開してるみたいですし…身体大丈夫なんですかね?

もし仮に復帰するなら足を使ったボクシングに戻してもらいたいんですが、長谷川の性格からいって難しそうだし。
2014.10.09 21:08 | URL | #- [edit]
B.B says... ""
僕も再起を支持しません。
2014.10.11 10:41 | URL | #bH1htKmU [edit]
いやまじで says... ""
長谷川選手のセカンドキャリアがどこまで用意されているか、
もしくはボクサーのキャリア形成の問題でもあると思いますね。

王者としてというよりボクサーとしての生活への未練は理解できますし、
大相撲の横綱のように衰えたら引退ではなく、
世界王者ではなくとも選手として活動し続けるという道もあるかもしれない。
実際海外ではそういう例はいくらでもある。

ただボクシングというスポーツにおいてそれは身体的ダメージの面からリスクが大きいというのが現実だと思います。

長谷川選手については足が使えなくなったと私は見ているので現役続行には反対ですが、
ダメージを蓄積しない形で、
そういうスポーツとしてボクシングを続けられる道があってよいと思います。

競技スポーツではなくリクレーションンスポーツとしてのボクシングの可能性というものがもっと考えられてよいと思います。
2014.10.11 15:12 | URL | #QWDkGr0I [edit]
B.B says... ""
スポットライト、自己証明、そして何よりキャリアでの未達成感。
多くの元選手が体が動く限り、これをずっと引きずって生きてますね。

>競技スポーツではなくリクレーションンスポーツとしてのボクシングの可能性というものがもっと考えられてよいと思います。

ひとつの道としてTRY-Fが目指しましたが、これら受け皿としての試みはとても有効に思えます。
僕も裏方として僅かながら参加させて頂きましたが、この団体が主旨を良く理解した人たちの手によって更に昇華しながら拡大して行く事を望みますね。
2014.10.11 16:37 | URL | #bH1htKmU [edit]

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