HARD BLOW !

長谷川穂積の感じた「理不尽」にまつわる雑感

MSNのトップ画面を見ていたら「穂積、ボクサーへの法律に怒り」という穏やかでないタイトルを発見。
これはどう考えても我が愛する長谷川穂積選手であろうということで詳細を読んでみると、自身のブログにて「ボクサーはいついかなる時も手を出したらあかんのかい!」という不満をぶちまけたということのようです。

http://topics.jp.msn.com/entertainment/general/article.aspx?articleid=2059693

私は法律家ではないからよくわかりませんが、彼の主張するところの「ボクサーの拳は凶器」だのといったことは、多分法律には書かれていないと思います。ただもし殴ってしまった場合に裁判等で、一般人より鍛えこまれた拳であることはボクサー自身もわかってるはずだから、普通の人に当てはめれば、素手ではなくそこらの棒っきれを拾って殴ったのと同じ(より威力の高い攻撃を選んだ)という風に判断される可能性がある、ということではないでしょうか。

また、暴力沙汰を起こしてしまったボクサーの場合は、相当な酌むべき情状があったとしても、「手を出した」の一点を以って、プロ選手として何がしかのペナルティを受けることが多いです。
今回は自分の後輩がそういう状況に巻き込まれて被害を受けたこともあり、そうした「とにかくボクサーは何があっても手を出すのはご法度」というのが我慢ならないという思いで書いたものと推察します。
ですからこの問題は、単純に「ボクサーがリング以外で人を殴るのは是か非か?」という二択で決められることではないと思います。

昔であればガッツさんのような逸話(あの話も本当のところは、かなり内容は「盛られている」らしいですが)も、「さすがチャンピオン!」と受け止められる土壌がありましたが、あの場合は相手方が公序良俗に反するような方々であったこともあって、大きな問題にはならなかったんではないかと思います(詳しくは知りません)。
あくまで現在は、大っぴらに人様を、しかも明らかに人を傷つけようという意図で殴っても咎められないのは、(ボクサーでない)二十歳未満のクソガキだけ。ボクサーはリングの中でのみ、スポーツとしてその拳を振るうという考え自体は正しい。

ですからよく「そういう時は走って逃げろ」などと言いますが、しかし実際に身の危険や、ましてや家族や友人に危険が迫っているような状況に遭遇してしまったら、これは四の五の言わずに手を出してしまうのはやむを得ないと思います。極端な話、自分の奥さんに暴漢が数人でのしかかっているような状況で、「自分はプロボクサー。拳は凶器だし、選手生命に障るので逃げました」なんていうヤツはいないでしょう。
たとえば相手が何か凶器を持っていたような場合、普通の人でも、手近に棒っきれが転がっていれば使うはずですから、そのような状況で、ボクサーが「武器」としてその拳を使ったとしても、心情的には理解できるし、多分実際の判決も、さほど世間一般の感覚と違わない結果が出ると思います。

さあでは、業界としてコミッションや協会、所属ジムはどう対応すべきかということになりますが…これは難しいですね。
ガッツさんの時のような相手ならまだいいんですが(笑)、某選手の時のように、相手が酔っぱらった一般人で実際にケガもした、というようなことになると、いくら相手方に非があったとしても、業界として「相手が悪いから選手は無罪放免です」とは言いにくいでしょうね。
しかも、空手家やレスラーと違って、ボクサーの場合は「凶器」と認識されてるのは両拳だけだと思いますが、じゃあ「パンチは使っておらず、投げ飛ばしただけです」という場合は許されるかと言うと、多分そんなことはないでしょう。既にその事件の時は引退後であった某選手の場合は、ある人を監禁した場所に立ち会ったということだけで、大きくメディアに取り上げられました。

その人の場合は「暴力事件」というより「不祥事」という意味合いでしたが、いずれにしてもスポーツであり興行でもある以上、世間の目を気にする部分は致し方ないですから、司法の判断や世論の風向きを見て処分を決めることになるでしょう。幸いにというべきか、ボクシングの場合は元々が数カ月試合間隔が空きますから、半年程度のサスペンドなら「一応罰したという形にもなり」「でも実質お咎めなしに近い」という結果になるんじゃないかと思います。

そうではない、完全に自分に非がある理由で暴れたタワケには当然に厳罰を与えるべきですが、どのような処分であれ、いつ誰に訊かれてもしっかり説明できるように、覚悟と責任を持って決めていただきたいと思いますね。こういうことは「懲役なら永久追放、執行猶予なら○○年のサスペンド…」などと、一律で決めることができないこと問題ですから。
しかし現状は、それこそ「理不尽」な理由で処分を受けたり、逆になぜか「お咎めなし」だったりすることが多いので、お任せするのは非常に不安ですが…

あと、ボクサーの拳が凶器と認識されるなら、相手がボクサーと知って敢えて突っかかったヤツについても、ちょっとは罪を重くすべきだと思いますよ。
上で「クソガキ」と書きましたが、未成年ということに加え少年法でも保護される中学生くらいのゴロツキは本当にタチが悪くて、教師も親も手が出せないことを承知でやりたい放題しています。
それと同じで、たとえば今回の長谷川選手の後輩に暴行したというやつらが、ボクサーは素人に手は出せないということを見越してやったんだとしたら、これは相当に卑劣というほかない。いうならば、反撃できないことがわかってる身障者の人に暴行を働くのと同じことです(パワハラなんかにも通ずる考え方ですかね)。
「ボクサーはリング外で手は出せない」と併せて「ボクサーが手を出せないことに乗じて危害を加えようとした者はより罪が重くなる」というのもセットで流布されたら、少しは選手も安心できるんじゃないでしょうか。

しかし、自分が原因でそういう状況にならないように、人間関係等に気をつけるくらいの自衛は必要でしょうが、たまたまそのような場面に出くわしてしまったらしょうがないですからね。
いつだかホールの興行で試合の合間に、泥棒だか強盗だか、とにかく何かの犯人を取り押さえたという元ボクサーの方を表彰するというセレモニーがありました。
でも「トラブルに巻き込まれないようにまず逃げろ」がボクサーとしての鉄則なら、この場合も美談として紹介するのはまずいんじゃないの?なんて突っ込みたくなりますよね。ボクサーはリング外では無闇に格闘したらいかん、というんですから。

まあこの方はとっくに引退した「元」ボクサーですし、それにもうお爺ちゃんという年齢の方でしたので、素直にその勇気を讃えることにまったく異議はないですが、理屈としては、相手が犯罪者で無事捕まえたから結果オーライ!ではいけないと思うんですけどね。
もしその犯人が凶器を持っていた場合、元ボクサーの方が首を突っ込まなければ、単にそいつが逃げて終わり、だったのが、取り押さえようとしたせいでその元ボクサー氏が刺されて、余計な被害者が増える可能性もあったわけです。
もっと言えば、逃げてたのが善良な市民で、追いかけてきた方が実は悪人。元ボクサー氏が犯罪者だと思って取り押さえた男を、追いかけてきた男が「悪いねぇ爺さん、助かったよ」なんて言って刺し殺した…なんてことになったら、殺人に加担することになってしまいます。

ちょっとたとえが極端になりましたが、要は単純に「ボクサーだから殴るな」とか「いいことしたから褒めてやる」ということでなく、ボクサーたち自身をを守る為に、協会にしろコミッションにしろジムにしろ、しっかりと責任感を持って選手を導いて欲しいなと思います。
日頃の指導は勿論、万一何か事が起こった際には、慎重に公平に判断して物事を決めていただきたいと。
あの袴田巌氏の死刑判決の根底には「どうせボクサーあがりはこんなヤツら」といった偏見があったとも聞きます。現在においても、必ず年に一人か二人、現役や元選手の不祥事が話題になります。
ファンとしては、選手はみんな根は気のいい青年と信じたい、と思っていますので、何とかそういう悪いイメージを覆して欲しいと思います。

(ウチ猫)

Comment

B.B says... ""
う~む・・後輩がよっぽど酷い目に会ったのでしょうか。
心情は痛いほど理解出来ますが・・「なんでいまさら」と正直、残念というか悲しいです。
どうであれです。元世界王者がしかも現役の選手がコレを言ってはダメです。
名選手、長谷川穂積には最後までボクサーのプライドを説き語って欲しかった。

昔はジムでの教育は徹底していたと思います。
バンテージを巻く頃には、あるいはスパーが始まる頃には、どんなに遅くともプロライセンス取得までにはキッチリ教えられたはず。
「“その覚悟”が無ければボクシングをやる資格なし!当然プロを目指す資格も無い。ボクサーが厳しいのはリングだけでは無いのだ」と。

運転免許停止を喰らった事がある人なら経験があると思いますが、講習では「貴方がたは本来操作をしてはならない自動車やバイクという、もしかしたら人を殺めてしまう凶器の運転を特別に許可されたという事を忘れてはならない」と。

プロボクサーの拳は間違いなく凶器であります。
プロライセンスは公的機関の資格取得ではありませんが、だからこそ厳しい目と自らを律し戒める為の“プロ意識”が必要なのだと思います。
2013.09.11 18:44 | URL | #bH1htKmU [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
 私の職場の後輩の体験談です。

その人X君は高校時代は強豪サッカー部のGKとして活躍していました。そんな彼が高校の部活帰りに夜道を歩いていると、向こうからガリガリの目つきの悪い男が歩いてきます。目があったのとインネンをつけてきたその男の挑発に、高校生で血気盛んだったX君思わずケンカを受けてしまいます。しかしガリガリと舐めていたその男、いざ殴りあうとパンチの一発一発が異常に痛い。「なんかおかしいな」と思いながら耐えるX君。一方のガリガリ男も「あれコイツ倒れないなあ」という当惑の表情。GKで打たれ強いX君はその辺の高校生とはちと勝手が違う。とそこにその男の知人と思しき仲間が駆けつけ、X君に「スイマセン、スイマセン」と平謝り。仲間の男が言うにはそのガリガリ男は試合に負けて自暴自棄になったプロボクサーだと言うじゃありませんか。余りに身勝手な暴力の理由に唖然とするX君ですが「コイツはケンカが表沙汰になったらもうボクシング出来ないんだ。なんとか抑えてやってくれないか」と頼む仲間にほだされてこの件はウヤムヤになったそうです。当のX君は「ボクサーのパンチって痛いんですよ。参りました」とのほほんと言ってましたが、試合に負けた上に高校生に情けをかけてもらったとなると形無しですね。

勿論プロボクサーが理不尽な理由で暴力の被害に遭うこともあるでしょう。でも心得がある事を自覚せず手を上げてる輩も現実にいるんですよね。
2013.09.11 21:01 | URL | #- [edit]
B.B says... ""
先程、ある方との電話でもこの話題に。
「そう言えばいつ頃からボクサーの拳は凶器という定義になったんでしょうね?」
少なくとも僕の世代にはそう教えられたと記憶しますが、「法律以前に指導者のモラルの問題でしょう」と互いに納得。

拳は凶器という定義は、実はボクサーとボクシングを守る為の先人の知恵ではなかったか。
2013.09.12 00:37 | URL | #bH1htKmU [edit]
いやまじで says... ""
長谷川としてはいろいろなことが分かった上で、

「ボクサーが手を出さずに、その結果死に至る、そこまでいかなくても重篤な障害が残るような事態になったら、一体誰が責任とってくれるのか?」

という切実な思いがあったのだと思います。
その「どうであれ」の部分はウチ猫さんがおっしゃる通りだと思いますし、
感情的になっている部分も含めて「元世界王者」が言うべきではないというのはB.Bさんのおっしゃる通りだと思います。

ただボクサーが自らの拳をなぜリング外で使ってはならないのかということは、
繰り返し問われて然るべきだと思います。

ボクサーの拳が凶器だというのは「定義」というより「事実」だと思います。
それが「相手を殺傷することのできる道具」という意味においてです。

私は昔柔道をやっていましたが、絞め技を習うと、頸動脈が動脈で唯一体表に露出していることを知ります。(絞め技は呼吸を阻害して相手を窒息させているのではなく腕を首にフックして頸動脈を圧迫し脳への血流を阻害することで気絶させる技です。)そうすると必然的にどうすれば人を殺せるかということを知ることになります。そういう知識・技術自体がすでに武器や凶器となる。しかしそれを知ったことによって責任を感じる。

拳の威力の大きさを知ってその濫りな使用を控えることは、ボクシングの存在意義にも関わる大事なことですね。
2013.09.12 09:44 | URL | #Twj7/TDM [edit]
ウチ猫 says... ""
皆さん、ご意見あるがとうございます。
私にとってのアイドルの発言ですから、つい長谷川選手の意図するところをくみ取ってあげようという方にシフトし過ぎてしまったかもしれませんね。

確かに今回のような発言は、私たちのようなファンが言う分には構いませんが、選手やジム関係者など、業界側の人間は決して言ってはならないことだとは思います。
特に発言した人間が元王者の有名現役選手となるとその影響は大きいし、その影響が大きいということを本人も自覚する必要があると思いますね。
その意味では昨日、長谷川選手がやはり自身のブログで、言葉が過ぎたことを謝罪してくれたのは非常に嬉しいことです。

さてその上で、今回の話の原点と言いますか、「ボクサーがリング外で拳を使うことの是非」を考えると、まず選手側の意識としては「何があってもNO!」と認識していて丁度いいと思います。
しかし、たとえば社会生活の中で、もしかしたら拳を使わざるをえない状況もあるのではないか?ということについては、私は協会やコミッション、ジムオーナーといった、指導者的な立場にいる人間は、絶対に考えておく必要があると思っています。
それは当然、選手に「こういう場合は殴ってもええで」と教える為ではありません。選手には常に「何があっても手を出すな。ヤバけりゃ逃げろ」と指導しててもいいんですが、もし何かあった場合に、それを検証・判断する為の基準というか準備は整えておくべきだと思います。

たとえば「組織においては上司の命令は絶対だ!」なんて言葉に対し、「じゃあ上司が死ねと言ったら死ぬのか!」なんて返したとします。
そんな時、中には「死ねという命令の理由に納得できれば死んでも構わない」なんてツワモノもいるかもしれませんが、普通は「んな極端なこと言うなよ」となりますよね。

「上司の命令には、たとえそれが死ねという内容でも従う」ということと、「上司の命令なんかまったく聞かない」という両極端の間には無限の段階があって、それぞれが自分の中で「ここまでは無条件に従うが、これ以上はちょっとなぁ」という基準があるでしょう(その自分の中の基準と、実際の職務上でどこまで上司に従わなきゃいけないかという基準が異なる時にグチが出るわけですな)。

さてでは、ボクサーが路上で絡まれた時のことを想定してみます。
「話し合いで解決する余地もあったし、逃げる余裕もあったけど、ブン殴った方が早いから殴る」というのが論外なのは当たり前。
でも一方で「相手が何人でも、どんな凶器を持っていても、足をヘシ折られても目玉をくり抜かれても、お前はボクサーだから手を出すな。我慢しろ。それで死んでも仕方ない」というのもこれまた論外でしょう。
何十年も前の喧嘩なら、散々やりあって両成敗、終わったら仲良くなったりすることもあるでしょうが、いまどきの悪い連中は限度を知りませんから、些細なことで、死ぬまで痛めつけることは起きうることです。
そんな現状で「何があっても手を出すな」とまで言ってしまっては、これはもう基本的人権(生存権)の侵害と同義ということになっちゃいます。

そこで、ですよ。
何か事が起きてしまった時に「殴ったからダメ」とか「殴らなかったからいい」とか、または「人助けになったからOK」といった、結果のみにとらわれて判断するのではなく、様々な要素・事実を精査した上で、公平・公正な判断(処分)をしていただきたい、と思うんです。
その為に、どこまでやったらダメなのか?それはなぜなのか?このくらいは仕方ないと思うが、その場合刑法上の規定とバランスするだろうか?といったことを、とりあえずは漠然とでもいいから、指導的立場にいる方々は各自考えておいて欲しいと思います。

BBさんの出した運転免許の例で言えば、運転者に「車は人殺しの道具にもなるんだぞ」と、厳しく教育するのはいいことです。
では、30キロの速度制限の道路で45キロ出して捕まった人が、即免許取り消しになったり、刑務所に入ったりするでしょうか?
たとえたった15キロのオーバーでも、自転車に乗った子どもをはねればかなりな確率で死亡事故になる。だからこんなヤツには金輪際運転させない!というのは、理想論では正しいとしても、あまりに現実感がないですよね。
たとえ運転者全員・歩行者全員が交通法規を守るつもりでいても、どうしたって事故や違反は起きてしまうものです。だから事故や違反をした際の罰則等々が細かく規定されているわけで。

だからこそ、有事に際しての判断基準を普段から持っておいた方がいいのではないか、と思うんですよね。
不幸なことに、ボクサー、元ボクサーの暴行や不祥事の事例はけっこうな数にのぼりますから、同様の事件を予防する意味でも、どうして彼らはそういうことをしてしまったのか、その時の処分は適正であったか、ということを検証してみるのは無駄なことではないと思います。
しかし繰り返しいいますが、それと選手の教育は別ですよ。選手にはとにかく厳しく教えるのはいいと思います。教習所で「まあ取り消しまでいかなきゃ講習で免停期間は短縮できるから、うまいこと計算して違反しなよ」なんて言う教官はいるわけありませんからね。

とはいえ「ただでさえ忙しいし、そんな後ろ向きなことで考えつめるのはイヤだなぁ」と思う方もいるでしょう。
しかしこういうことは、いやまじでさんがおっしゃる「ボクシングの存在意義」という意味でも重要なことだと思います。
ある方が「なぜ、そこらの路上でやれば犯罪行為になるようなことが、リングでは認められるのか。そういうことを充分に考えなければいけない」というお話をされていて、なるほどなと考えさせられました。
定番の言い方ですが、命のやりとりにもなる競技ですから、それに関わる人間は全員、それぞれの中で「ボクシング哲学」のようなものを持つべきだと思います。

ボクシングジムは教育の場でもあるといいます。
であればこそ、つい誤ってしまった若者に対しては「お前、手ぇ出したからアウトな」と切り捨てるのではなく、選手として復帰するとかしないに関係なく、再出発の為に力になって欲しいと思いますね。
くどいですが再度念押ししますと、そういうことと普段厳しく教育することは別だし、やる気が無く放り投げた者までは拾えないのは当然ですが。
2013.09.12 12:41 | URL | #nZcYMxmY [edit]

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