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アマ・プロ対決 『村田ルール』VS公益認定

 最新号で『日本ボクシング界の秩序を守るために』と言う、何が言いたいのか分からない珍妙な記事をわざわざ見開きを使って掲載し、一部読者・関係者を大いにポカーンとさせたボクシングマガジン誌。一方、競合誌であるボクシングビート誌は「アマ協会が選手から『プロへ行かない』という誓約書をとる方針だ」と言う、あらゆるファン・関係者にとって重大な規則変更-いわゆる『村田ルール』-の詳細を一般誌・スポーツ紙に先んじて報じ、専門誌の面目躍如となりました。専門誌には、このような貴重な情報にこそページを割いて欲しいと私は思います。それは多くのファン・関係者にとっても同じでありましょう。

 さてその肝心の『村田ルール』はと言えば、「これって憲法違反じゃないの?」と思わざる得ない時代錯誤なシロモノで、到底広汎な支持を得られるような内容とは思えません。軽い気持ちで近所のプロ非加盟ジムや高校のボクシング部に入った少年が、一生十字架を背負うようなルールは大変問題があるものです。30%という『搾取率』じゃなかった『マネジメント料の比率』や、引退後に移籍を制限される2年という年月の根拠も不明で、失礼ながらいい大人が議論して決めた内容とは到底思えません。
 このルール変更の異様さの根底には、村田諒太選手のプロ転向に関してアマチュア側の面子を潰すような何かがあったことは想像に難くないわけですが、かといってこんな個々の選手・現場の指導者にしわ寄せがいくようなやり方は明らかに間違っています。「アマはプロの育成機関・下請けじゃないぞ」「五輪金という実績は、プロ選手の箔付け材料じゃないぞ」という憤懣は正当なものだとは思いますが、それをスポーツを健全化するオピニオンとしてでなく、いきなり生臭いゼニカネの話として打ち出してしまっては世間はドン引きするのみです。
 それもこれも、ロンドン五輪でのダブルメダル獲得によって『終身会長』というモノ凄い肩書きを得た山根明氏の絶大な威光が、他の理事の皆さんの判断をゆがめていることが原因ではないのでしょうか?日本ボクシング連盟の皆様には、どうか怒りを一旦置いて冷静になって頂きたいと、生意気ながら意見させて頂きます。そうでなければ主張自体が世間に届きません。
 それとこれは個人的な心配ですが、フジテレビ・三迫・帝拳・電通・トップランクという中間搾取の多重連結状態でプロに漕ぎ出す村田選手は正当な報酬が得られるのかいなとこちらも心配になります。さらにアマ側が「こっちにも分け前を」と言い出したとなればますます事態は複雑化するでしょう。今となってムナシイだけですが、なにかこうもうちょっと円滑にやる方法があったのではないだろうかと思えてなりません。

 さてそんなアマ側の迷走(と言っていいと思います)が話題をさらう影で、プロ側でひっそりと結構重大な制度変更がアナウンスされました。JBCのホームページの「告示 平成25年6月14日」から引用します(以下引用)

平成25年7月1日、財団法人日本ボクシングコミッションが一般財団法人日本ボクシングコミッションに移行後は、従前の健康管理基金制度を廃止し、新たに健康管理見舞金制度を創設し、平成25年7月1日(月)より実施する(引用以上)

 なんとJBCは2008年以降の公益法人格の見直しに伴い、7月1日以降一般財団法人に移行するらしいのです。ならばこの制度変更は公益事業の整理統合措置でありましょうか?この制度変更が改善なのか改悪なのかは、私はまだ勉強不足で分からないのですが、少なくとも健保が使えず自己負担額100%になる外国人選手がもし深刻事故に遭って手術と言う事になれば、10万円では到底足りないでしょう。その場合誰が医療費を負担するのかは問題になると思います。あるいは試合後体調が悪い選手がいても、「国内で倒れられても面倒だから、医者に見せずに速く国に帰らせよう」という発想になりはしないでしょうか?公益指定を得られないことで選手の安全が犠牲になるような事態はあってはならないと思います。

 思えば、大相撲の八百長スキャンダルの時に相撲協会がとにかく拘ったのが、NHKのテレビ中継と公益法人格の維持でありました。そんな公益法人格をアッサリ手放してしまうJBCの行動は私には不可解です。勿論「公益指定なんかわずらわしいだけで大してメリットないよ」という見方にも当然一理はあるのでしょうが、税制面の優遇だけでも充分なメリットではないかと私は思います。そもそも、認証が困難だと言う公益法人格自体が業界の先人の遺産であり、それを手放すに当たって議論が尽くされたのだろうか?という疑問もあります。今月号で「ボクサー・練習生が払った金をムダ使いするな」と、大仰に嘆いていたつまらない方の専門誌あたりは、公益指定が外れたことでJBCの財務内容がどう変るか、来月号当たりで伝えて頂ければ、読者も少しは見直すかも知れません。ま、もう手遅れか。

 専門誌二誌が来月号でこの問題をどう報じるか?報じないか?にも注目して成り行きを見て行きたいと思います。

 「村田ルール」と言う名前は村田には迷惑だろうと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)

Comment

ウチ猫 says... ""
まあこの「村田ルール」にはビックリですね。
まず、プロ転向に関しての「移籍金支払い義務」と「2年間はプロ入り禁止」については、おっしゃる通り明らかに「職業選択の自由」に反していると思います。
この規則の存在自体、取り消し命令が出てもおかしくないレベルだと思いますが、仮に誓約書にサインした選手がこの規則を破ったとしても、裁判になれば負けることはないんじゃないでしょうか。
当事者双方が合意して締結したものでも、法律や公序良俗に反する契約は無効ですからね。
プロに行こうという時点で、多くの選手はその後またアマに戻ることは考えないでしょうから、「そんなルールは知りまへん」で済むと思うんですけどね。後味は悪いでしょうが。

もう一つの30%のテラ銭というのもまた強烈ですね。
ルールとしては、一団体内の規則としてはギリギリセーフかなという印象ですが、今回の村田選手のようなケースはそうそう起こることではないと思いますので、あんまりがっつくのもどうなんでしょね。
ギャランティを最初に連盟に支払わせて、そこから30%抜いて選手に払うというのもすごいですね。30%は純然たる連盟の取り分で、その他に事務手数料だとかなんとかで、もう数%くらい引くんじゃないの?なんて勘ぐってしまいますが、そのくらい「がめつい」という印象を与えてしまうんじゃないでしょうか。

JBCの制度変更については、なかなか新旧の制度の詳しい内容がわからないので私も断言できませんが、少なくとも今までは、試合中に死亡事故に至った場合は、遺族に1300万円が支払われることになっていたようですね。
交通死亡事故等の場合の損害賠償・慰謝料は億単位になるのが普通ですが、さすがにボクシングの場合はリスクが高いので、高額の補償を準備しようと思えば、積む方の額も大きくなってしまうでしょう(それでも保険料率が自由化となった今日では、一つくらい引き受ける会社が出てこないですかね?)。

新制度の方は、告示の文章と一覧表を見る限り、治療自己負担額と支払見舞金しか書いてないんですが、死亡時の補償はなくなったということでしょうか?
選手が積立金として徴収される方の金額の上限が1試合あたり16.5万円、1年間で50万円なのに、支払いの方の上限が10万円ポッキリでは、細かい計算抜きにしても不満が出そうな気がします。

公益法人格についても、私はこのJBCの問題に触れるまであんまり考えたことがなかったので、これからまた勉強させていただきますが、公益法人として認められていること自体が、ボクシングをスポーツたらしめている一つの根拠だと思います。
そんなのは情緒的に過ぎる意見だと言われるかもしれませんが、一つ一つ事実の積み重ねを以って検証していきたいと思います。勿論、旧徳さんのおっしゃる通り、専門誌の方々にも「大いに」期待しています。
2013.06.21 02:00 | URL | #C1S5FS7c [edit]
B.B says... ""
まさに迷走ですね。
しかし、それを誘引し助長しているものは何か?
一連の問題の根源は関係者のボクシングと選手に対する愛情の欠如、そしてグローバルな視点を持つリ-ダ-の不在ですよ!
皆他人事なんですよ!

本当に目を覚まして欲しい。
2013.06.21 04:23 | URL | #bH1htKmU [edit]
B.b says... ""
もう一つウチ猫さんの最後の部分。
本当に平田編集長なにやってるんですか!
契約社員の言いなりですか!
2013.06.21 04:46 | URL | #bH1htKmU [edit]
いやまじで says... ""
 アマボクの山根会長は、プロアマ連携、選手強化システムなど諸改革を推進し、それが昨年のロンドン五輪におけるメダル獲得につながり、村田選手も感謝の弁を述べた極めて優秀な方です。村田選手のプロ入りの経緯は、彼が日本におけるAPB(AIBA プロフェッショナルボクシング)の目玉であっただけに面子をつぶされた格好になったことでしょう。しかしアマ選手に将来に関して一筆書かせるというのはどう考えても尋常じゃない。野球やサッカーでトップがそんなことを言ったら大変な騒ぎになっているところです。もう少し頭を冷やしてほしい。

 JBCの一般財団法人への移行ですが、JBCはあるところで「将来的には公益財団法人へ移行することを目指すが、当面、特例民法法人から一般財団法人となる旨を決定」としています(H24年2月時点)。なぜ今ではなく「将来的には」なのでしょうか。「公益」でないことによって、税制の優遇が得られないだけでもマイナス面は大きいはずです。アマからプロへの選手の動きが強まっている中JBCが公益法人化すれば、競技としてのイメージアップ、競技人口拡大にもつながるのではないかと思います。

 公益財団法人化については最近日本相撲協会に次のような動きがありました。

・親方衆、雇用から委任に(6月17日付朝日新聞)

http://digital.asahi.com/articles/TKY201306160223.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201306160223

 公益法人は税制面で手厚く優遇される代わりに公益性が厳しく問われ、外部の評議員が理事を指名します。相撲協会と雇用関係にある親方衆は内部の立場にありますから、評議員になれないのですが、協会は、親方衆を協会から委任された外部の立場に改めることで、評議員となって理事を指名できるようにしようとしているのです。

これは制度の趣旨に反するもので到底認められるとは思えませんが、親方の中には自分たちの思う通りにできないなら、という考えの方もいるとの由。

JBCがこの数年のゴタゴタで準備が整っていない可能性はありますが、内部の人間の意向だけで組織を動かすことを優先して公益法人化を放棄しているのではないかと心配していしまいますね。私は相撲協会が国技館を持つように、ボクシングでもボクシングの殿堂やコロシアム(闘技場)を建設できるようにしてほしいと思っているので、そのためにも公益化してほしいと思っています。
2013.06.21 08:38 | URL | #Twj7/TDM [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
ロマチェンコもAIBAプロでもWSBでもなく、既存のプロボクシングを目指すかもという情報があるようです

http://blog.livedoor.jp/serishunya/archives/52066420.html

アマプロのギスギス感は世界情勢の代理戦争と言う側面もありそう。「『村田ルール』は東京五輪を睨んでの動き」という指摘をしている方もいらっしゃいます。巨視的に状況を見る必要があると思います
2013.06.21 20:55 | URL | #- [edit]
B .B says... ""
「『村田ルール』は東京五輪を睨んでの動き」

この視点には気が付きませんでした。
二年縛りにもAIBA参入を睨んでの背景があるようですね。
2013.06.22 11:10 | URL | #bH1htKmU [edit]

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