HARD BLOW !

20130508 二つのKOの中身

井岡ジム2王者がそろってKO防衛。以下はその観戦記である。

●宮崎亮vsカルロス・ベラルデ(7位)
…WBAミニマム級世界戦

18勝(10KO)3分の宮崎は156㎝とこの階級でも短躯だが、パンチがあって足もある魅力的な選手だ。

対するベラルデは、23勝(13KO)2敗(1KO)1分の22歳、地域タイトル獲得歴のあるメキシコの上位選手。だが対戦相手を見る限り実力的に未知数。

立ち上がり宮崎は近い距離、低いガードで相手とパンチを交換。ガードが低いのはともかく、相手のパンチをかわす工夫に乏しく、自分も当てるが相手のパンチも喰う展開。

ベラルデはガードを上げ、左右上下長短のパンチが淀みなく出て、接近戦で宮崎を何度もグラつかせる。

5Rに入って宮崎が距離をとり、左のリードを軸に戦いを立て直した直後、宮崎の左フックがカウンターで顎に痛烈に決まりベラルデ大の字。レフェリーは即ストップ。記録はTKOだが内容的に10カウントKOといえる。

文字通り結果オーライのKO防衛で、むしろ1~4Rの宮崎選手の戦い方に疑問が残る。おそらく接近戦で相手の力を測り、さしてパワーを感じないところから力で押し切ろうという判断だっただろうが、実際には相手のパンチを喰って自身が無用なダメージを負う形になった。

宮崎選手は本来どんな戦い方をするのか、それが見えない戦いだった。

相手によって戦い方を変えるのは当然としても、自分の本来の戦い方をせずに、相手のパンチを喰う状況というのは、技術的に世界戦の緊張感に欠ける。

理由は二つのメンタルにあると思う。

一つは世界戦で客が喜ぶ試合をしたいという欲求。より正確にはそのために自分のボクシングを忘れてしまうという錯誤。最近ではフライの五十嵐がその傾向にあった。結局自分のボクシングを伸ばせずにいる。猪突猛進は勇気ではない。

もう一つはエゴの不足。井岡に届いたとは思わないというコメントは謙虚で殊勝だが、同じ階級のボクサーとしていつかは食ってやるという何かを感じさせてくれないと。失礼かもしれないが、飼い馴らされた獣のようなところがリング上の戦いに出てしまっているのではないか。

この日の一発KOで宮崎選手が方向を見誤らないことを願います。こんな幸運はもう二度とないのだと…


●井岡一翔vsヴィサヌ・ゴーキャットジム(2位)
…WBAライト・フライ級世界戦

井岡一翔は11勝全勝(7KO)、この日はWBAライト・フライ級レギュラー王座の初防衛戦。立ち上がりはいつも通り相手の出方を見ながらヒットポイントを探る様相。コンディションは良さそうだ。

挑戦者のヴィサヌ・ゴーキャットジム(29歳、タイ)は43勝(13KO)8敗(6KO)2分の戦績が示す通りのベテラン・サウスポー。2007年以降PABAライト・フライ王座を獲得、防衛を重ねるタイの階級上位選手。1Rの内容を見る限り、踏み込んで左のボディ・ストレートがよく伸び、右のジャブ、出入りの足も速い。しかし打ち終わりやフェイント時に相手の射程距離内に不用意に静止するクセがあり、これは井岡も1Rの時点で気づいたであろう。

井岡は最初の2Rこそヴィサヌに左ボディを当てられたが、3R以降はヴィサヌにほとんどヒットを許さず、左のリードと右ストレート、左の返しのフックで徐々に相手にダメージを蓄積。相手のスキが見えているためか井岡は狙い過ぎて単発になるところがあり、タフなヴィサヌに決定的なダメージを与えるには至らないが、9R左から右のボディ、さらに左から再度右ボディと繰り出した2度目のボディが「身構える前に受けてしまい、息が出来なくなった」(ヴィサヌ談 朝日新聞)というタイミングで決まり、ヴィサヌは立ち上がれず。井岡が初防衛戦をKOで飾った。

タイ選手がボディでKO負けする(さしたる苦悶の表情も無く)ことには首を傾げるが、この日の井岡はヴィサヌを試合内容で圧倒しており、ダメージも深かったので、その意味ではヴィサヌの試合放棄にも見えた。

井岡の良さは相手が誰であっても高い緊張を保って戦えるところ。以前は格下相手にダウンも喫したが、今は非常に高い集中力を発揮している。絶対に勝つ、絶対にボクシングで相手に勝る、そんな気迫がうかがえる。ローマン・ゴンザレスとの対戦を回避したことで批判はあるが、私はリング上の戦いは評価できると思う。

この日はヴィサヌのスキがはっきりしていたために、そこに点で合わせる意識が強くなり、なかなかコンビネーションが作れなかったようだが、相手の手を封じながら確実にダメージを与え続けた末のKOシーンは、狙ったものではないだろうが、必然ではあった。

byいやまじで

Comment

B .B says... ""
録画で見ましたが、なるほどメキシコ人はインファイトが上手いですね。
記事にある通り、宮崎選手は相手の距離で潰し合いを挑んだように見えました。
しかし、あのまま付き合っていたらダメージのオーバーフローを先に起こすのは宮崎選手だったかも知れませんね。
中間距離を意識した5Rはセコンドの指示だったのでしょうか、見事にはまりましたねぇ。
挑戦者が変化に一瞬集中力を切らしたのは、至近距離の打ち合いに慣れてしまったから。
メキシコ人は再びガチガチの打ち合いしか頭に無かったのではないか?
そうした心理と空間の隙をついての右から切り返した見事な左フックだったと思います。

となると、それまでの四つのラウンドが伏線になったのか?
この鮮烈な決着は偶然なのか、それとも必然を引き寄せたのか?
興味の湧くところですが、どちらにしてもチャンスを引く力が宮崎選手にあった。
中間距離が得意かも知れない宮崎選手ですが、面白い戦略をこの試合で学んだ事と思います。
宮崎選手はまだまだ強くなりますよ。
2013.05.10 17:11 | URL | #bH1htKmU [edit]
B .B says... ""
井岡選手、対戦者に怖い武器が無かったとはいえスパーリングのような試合にしてしまいましたね。冷静で距離も抜群。八分の力でも充分にダメージを与え圧勝でした。

しかも最後は右アッパーをストマックに決めましたが教科書にあるようなパンチ。
サウスポー対策も万全で素晴らしい出来だったと思います。

「前足を触角のように使っている」とは鬼塚さん。
左構え攻略に不可欠というかまぁ基本ですけど、まとまな解説を聞いたのは久しぶり。

ただねぇ井岡選手、試合後のインタビュー「伝説になりたい」
その気概良しですが、伝説とは人が決め人々が語るもの。
他人の評価を気にしていると足元すくわれる。
2013.05.10 17:44 | URL | #bH1htKmU [edit]
いやまじで says... ""
>面白い戦略をこの試合で学んだ事と思います。

そうあってほしいですね。私は宮崎選手への期待値が大きいのでどうも厳しめのコメントになってしまいます(苦笑
2013.05.16 01:20 | URL | #Twj7/TDM [edit]
B .B says... ""
宮崎選手の密着取材をしたバースディ再放送をたまたま見ましたが良い作りでした。
5Rからの修正はやはりセコンドの指示だったですね。
インターバルでの井岡トレーナー「距離が近い、もっと離れて」の声が聞こえます。

セコンドの指示を実行し結果に繋げた宮崎選手は戦略というより、今回は自分の持つ力を再確認したというべきですね。
それが「僕はカッコ良かったですか」になったのかも。

初防衛戦のプレッシャーを跳ね退け、冷静に指示を実行出来たのは素晴らしい。
大事な世界戦ですから、立ち上がりは慎重に相手の力を計り徐々に自分のペースに、というのが定石と考えましたが、実際は違った。
僕がこの試合結果を見て想像していた「面白い戦略」とは、将来を見据えてあえて色々な戦い方の経験を積ませる育成法でした。ボクシングの幅を広げるという事ですが、それを世界戦でやるのか?と。
序盤はあえて相手の距離で戦い、打ち負けない練習を積んで来た成果(ダメージを序盤に与える)を見せる。中盤から一転してポイントを確実に取るボクシングに、という事で選手の力を信じなければ中々出来ない事と思います。宮崎選手は世界ではキャリア浅いですし、すれ違いがあればギャンブルにも等しい。
しかし、王者のボクシングという経験を積ませる意味では重要だと思えたんです。

しかし、その想像もやや違ったか。

練習で不用意なパンチを喰らう宮崎選手の頭をはたきながら「何度言ったら解るんだ!」と叱る井岡トレーナー。
「距離が掴めない。それさえ判れば・・」と宮崎選手。
おそらく自分の得意パターンを実行したかったのでしょう。
それでも「トレーナーを信じてやるしかないです」とも。
決して天才肌の選手で無く、もがきながらやっている。

となると興味の湧いた偶然か必然かですが、前者の方が近くなりますか。
しかし、この試合が将来の為の大きな財産になる予感がします。
鮮烈なKO勝利にも、陣営はおそらく手放しで喜んではいないでしょう。
「なにやってんだ!」という井岡トレーナーの声が聞こえてきそうです(笑

2013.05.16 08:10 | URL | #bH1htKmU [edit]
いやまじで says... ""
なるほど、距離の取り方については不安定さを感じますね。
というか、私がイメージしている宮崎選手のボクシングはまだ「自分のボクシング」と言えるほど確立されていないのかもしれません。それを造っているところ、現在進行形ということでしょうか。

世界戦ではこれまでとは相手のレベルも違ってくる。そういうアジャストも必要な段階なのかもしれません。
2013.05.17 08:48 | URL | #Twj7/TDM [edit]
B .B says... ""
>「自分のボクシング」

これ本当に大事な事ですね。

宮崎選手の過去の試合映像をあらためて見てみました。
フックのダブルやアッパーなど左からの切り込みは上手いですよね。
目が良いので中間距離では相手の攻撃をスイスイと器用に避けられる。
ただ飛び込んでからの接近戦には課題が残りますね。
カバリングが忙しくなり後手に回るシーンも目立ちます。
それでもポンサワンには打ち勝ちましたから体も気持ちも強いんでしょう。

しかし、自分の得意で無い距離で相手に付き合うより、インファイトでも強い足腰を生かして出入りの変化が付けられればさらに左が生きて来る。
これに右ストレートのカウンターが身につけば、もう少し試合展開も楽になる気がします。

具志堅さんもインファイトは不得手でしたが、防衛を重ねながら独特のリズムとフットワークを磨いて盤石なボクシングを築きました。
自分のボクシングとはイコール「常に得意な距離で戦う」に集約されると思います。
宮崎選手も自分のボクシングの形を完成させて欲しいですね。
2013.05.21 09:25 | URL | #bH1htKmU [edit]

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://boxing2012.blog.fc2.com/tb.php/185-fccbcb49