HARD BLOW !

佐藤洋太、まさかの8回TKO負け!

佐藤選手が負けるとするなら、ありえないレベルの不当判定か、交通事故のような一発で沈むパターンかと思っていたが、TKO負けという結果以上に予想外の展開となった。

いくら敵地タイの試合とはいえ、中差以上の判定でチャンピオン防衛、というのが私の予想。
いやまじでさんの記事にBBさんがコメントしている通り、佐藤選手のメンタルの強さは折り紙つき。リカルド・ロペスレベルの化け物でも出てこない限り自分のスタイルは崩さないだろうし、いつものパフォーマンスを織り交ぜつつ、「普通に勝つ」と。

ところが初回から、ロープにつまって相手の前進を許す展開。
当たろうが当たるまいが、シーサケットが手を出すだけで大歓声が上がるのは想定内だし、実際クリーンヒットはもらってないとはいえ、ポイントロスという面だけでなく、相手の土俵で伸び伸び戦わせてしまうというのは非常に不安。
スイッチする相手というのはわかっていたが、最初からずっとサウスポーで来たのが少しやりづらさを増したか。

それでも2回には、いい右をカウンターしてシーサケットの動きが一瞬止まるシーンもあり、リングの状態、相手と自分の状態、その他様々な要素を確認しながら戦い方を修正していく王者の適応能力が発揮されていくだろうと感じさせる。

ところが3、4回も、リプレイをみているように同じ展開が続く。
敢えてコーナーやロープを背にして相手の攻撃を受けることは王者のよくやる戦法であるが、それにはまずクリーンヒットを食わないことと、その後に回るなり迎え撃つなりして主導権を奪い返すことが必須であり、今まではそれで勝ってきた。
しかし今日の王者は、とにかく体が重い。
詰まったら詰まりっぱなしで、ガードを固めて丸くなるのみ。

シーサケットは、純粋な技量では大きく王者より劣るとは思うが、止まって固まってるだけの相手を殴るとなると、これは楽な流れ。
コンパクトな連打は回転もよく、強弱・上下の変化もつけて益々勢いに乗る。
特に、細かいアッパー、ボディは、ただでさえ体の重い王者からさらに羽をもぐ効果があったように思う。

4回終了時の公開採点は39-37が二者(私も同じ)、40-35が一者でいずれも挑戦者支持。
フルマークでも不思議ではない。が、おそらく三回の猛攻を10-8としたと思うが、これはやや疑問か。

しかしまだ三分の一。
「普通に」王者がいつものスタイルを取り戻せば、多少相手のポイントがゲタ履いても、ドロー防衛は全然無理ではないスコアだ。
事実、5回6回は、ほぼイーブンかやや王者優勢と見えた。
シーサケットは最初から全開で来た分、またこれまで長いラウンドを経験していないこともあってか、失速とはいわないまでも、少しスローダウン。
しかし、このあたりで王者は「いっぱいいっぱい」ではなかったかと思う。
短い距離での応戦でそこそこ戦ってはいたが、それがいい戦術だと考えて接近戦を選択したのではなく、それしかできないほどに体が動かなくなっていたように思う。

挑戦者は、5回6回は敢えて休んだいたとも思えるように、7回になると再び王者に襲い掛かる。
この回のロープ際の攻防は、それまでとは明らかに違って、王者がまともにもらうシーンが増える。完全に大ピンチ。終了間際のラッシュでは、止められてもおかしくなかったような状態。

迎えた8回。
王者は意識的に大きくリングを回り、ひょいひょいと左を突いて普段のスタイルを取り戻そうとも見えたが、もう足にスピードはなく、腕をだらりと下げるポーズも、何かの意図があるわけではなく、単に上げていられないほど疲弊していたのではないかと思う。
またもコーナーに詰まって挑戦者のラッシュを受けたところでレフェリーがストップ。
最後は特に猛烈な連打をくったわけではないが、あれだけ体が動かなければ仕方なしか。
8回1分23秒、TKOで挑戦者シーサケットの王座奪取となった。

しかし、あれだけ体が動かず、打ち合いオンリーで戦えば、この結果は当然のこと。
問題は「なぜそうなってしまったか?」ということであるが、中継で電話がつながった金平会長の弁によると、コンディション等も問題なく、しかしいざ始まってみたらまるで動かなかった、とのこと。
スピード豊かなテクニシャンが粉砕されたとなると長谷川穂積選手を連想してしまうが、しかし今回の佐藤選手のケースは、何とも不可解ではある。
赤穂戦について、ファンに対して申し訳ないというような発言をしていたが、だからといって単純に打ち合いに出る選手とは思えない。それとも、タイでの連敗記録やジャッジへの不安等が目に見えないところで作用していたのだろうか。

いずれにしても残念至極ではあるが、文句なしの負けではあるものの、「実力を出し切って、それでも絶対に敵わなかった挙句の敗戦」ではないので、ぜひとも捲土重来を期待したい。

(ウチ猫)

Comment

いやまじで says... ""
結果を知った時にはもちろん驚きましたが、勝負ごとですから負けることもある。それにしても佐藤に何があったのか、そういう思いでしたね。

佐藤のらしくない戦いはウチ猫さんがおっしゃるように「不可解」ですね。ですから推測するしかないのですが…

録画観戦して感じることは、本人のコメント通り諸々のことが重なった結果の完敗ですが、私はその中でも暑さ対策が十分ではなかったのではないかと思います。

試合前は好調をアピールしていましたが、試合になると体が動かなかった。試合後は減量苦も口にしていましたが、それはいつのもこと。敵地で40°前後の気温、会場は人いきれでそれ以上の息苦しさでしょう。まして例年より気温の低い日本からの遠征。精神的な重圧。そういう状況が佐藤から足と頭(脳)を奪ったのではないかと思います。サウスポーで向かってきたシーサケットに対して足が動かなっただけでなく戦術のアイディアも切り替えも利かなかった。今回の暑さ対策について詳しい情報がないので結果論ですが。

コンディショニングというのは難しい。試行錯誤しても同じ状況はなかなかないからです。またアウェーでの戦いという点で言えば、敵地防衛を果たした選手に渡辺二郎がいますが、彼は世界初挑戦で金喆鎬に敗れた試合を後々非常にプラスになったと言っていました。そういう経験値という意味でも佐藤にはこの負けが必要だったのかもしれません。

シーサケットの左構えに対して佐藤は主に左回りで対応していましたが、もう少し右回りも動きも入れて、ジャブで相手を回したり体を入れ替えたりしてできなかったかな、というのが技術面で感じることです。結局ガードを固めて正面に止まってしまったことが命とりになりました。

シーサケットはこれまで動画で見たよりも動きはよかったですね。ただ佐藤が乗せてしまった感もある。私としては佐藤にタイで雪辱してほしいですが、そういうチャンスが得られるとは限ませんから難しいですかね。ただ頭のいい彼のことですから、この試合から何かを見つけてもう一段飛躍できると信じています。

佐藤選手、敗れましたが一生懸命戦いました。お疲れ様です。まだまだ応援してますので、もう一段強くなった貴方の試合を見せてください。
2013.05.04 06:31 | URL | #Twj7/TDM [edit]
ウチ猫 says... ""
やはり暑さですかね。
アウェイでの防衛は当然楽ではないですが、彼ほどの選手があそこまで何もできない状態になるということは、「想定外のことが起きた時に、それを修正しようとしたのに、それでもどうしようもない状況になってしまうほどの想定外の事態」ということでしょうから。
そうなると、事前に完全には準備・想定できない要素=暑さかなぁ、と。

室内に暖房をかけて対策をしていたようですが、練習中の数時間そうするだけでは足りなかったのかもしれません。極端な話、ひと月くらい前から現地入りするとか、あるいはもっと踏み込んで、「暑さで体が動かず、初回から打ち合うしかない状況を想定した上での作戦」まで準備しておくとか。まあ結果論ですけどね。

キャリア初期にいくつか黒星を経験し、地域王座を取ったあたりから目に見えて才能が開花したという点でも長谷川選手とかぶるわけですが、今回の佐藤選手の場合は、「敗因の特定」までは多分できると思うんですよね。
その上で彼のボクシングインテリジェンスがどう発揮されるか、それを見てみたいと思います。
2013.05.04 10:55 | URL | #C1S5FS7c [edit]
等々力酸素魚雷 says... ""
タイは乾期(暑い)、雨季(蒸し暑い)、暑気(めちゃくちゃ暑い)ありますが、今回はその一番暑い暑期。
まだ映像は見てないんですが、序盤から距離をつめられてたみたいで。試合前のセレモニーが30分近くあったらしいですが、暑さで集中力の持続がうまくいかなかったのかもしれませんね。現地での公開スパーも押しこまれてたらしいですし、調子自体良くなかったのかも。

恒例の嫌がらせはそれほどでもなかったみたいですが、温和でしかも大の親日であるタイ人がボクシング、ムエタイの試合になるとそんなことをするのがいつも不思議です。
2013.05.04 11:09 | URL | #- [edit]
いやまじで says... ""
>事前に完全には準備・想定できない要素=暑さかなぁ、と

断言できないところが難しいですね。

暑さ対策のコンディショニングについて詳しいわけでありませんが、暑い時期と寒い時期では汗腺の開き具合が違うようで、それを調整するために現地ではなくても似た気候の地域で合宿を張ることがサッカー日本代表などではあるようです。(暑→寒は比較的問題ないが、寒→暑の移動は難しいらしい。)ただその時期や期間どれぐらいが適当なのかは季節や選手の体質によるでしょうから、簡単ではないと思います。計算が立つと言えない部分が大きいので、ある程度結果からしか成否を言えないところがある。

また参考事例として高知馴化について言えば、これもサッカーですが、王国のブラジルが高地のボリビアにWC予選アウェーで敗れることがよくあります。ブラジルは経験上あまり早く現地入りすると馴化の段階で消耗してしまうため直前(当日・前日)の現地入りをしているようですが、この馴化段階での消耗もコンディショニングの難しさの一つです。

敗因の主たるものが暑さと決まったわけではないですが難しいという意味ではこれが大きいのではないか。あとは本人が肌で感じた数値化できない敵地の厳しさのようなものもあるでしょうね。

そういえばIBF戴冠の高山は南ア、フィリピン、メキシコと敵地での試合を重ねました。メキシコのグアサベは高地ではなく、暑さもさほど問題なくて、調整は順調だったようですが、高山の場合はアウェー経験が心身両面で生きていたのではないかと思います。高山のケースはグローバルスタンダードとまでは言いませんが、今後の日本人ボクサーにとって重要なサンプルになるのではないかと思います。

>温和でしかも大の親日であるタイ人がボクシング、ムエタイの試合になるとそんなことをするのがいつも不思議です。

そのあたりはウチ猫さんがどこかで触れていた「スポーツではない」部分でしょうね。お金が絡む問題ですし、王座を持っていかれて困る人がいるという意味で。タイのファンはそういう事実をそもそも知っているんですかね。(メキシコなんかもそうですが。)
2013.05.04 20:14 | URL | #Twj7/TDM [edit]
B .B says... ""
佐藤選手まさかの惨敗でしたねぇ・・やっぱりコンディションだろうなぁ。
試合を観た人は一様に別人のようだったと言いますね。

佐藤選手のブログを見ると試合の数日前にも「バンコクは快適」なんて書いてましたから気候にも順応してるのかなと思ってましたが。
ということは計量からリングインまでの約24時間で不調につながる何かがあったのか。
必ず原因はあるはずですからね。
「相手が強かった」の一言では納得いきませんね。
本人はおそらく解っているはずですから、いつか語って欲しいですね。
2013.05.05 22:29 | URL | #bH1htKmU [edit]
B .B says... ""
録画を何度も見直しましたが「いつもの佐藤洋太ではなかった」という金平会長の一言に尽きますねぇ、これは・・ちょっと言い訳が見つからない。

前言撤回になりますが、新王者が佐藤選手を良く研究してしっかり準備していたという事ですね。
圧力をかけ続け止まった所にパンチをまとめて消耗させるという単純な作業ですけど、逃がせばスタミナロスから後半失速というリスクもある。
場内の大歓声を背に自分を信じて「絶対勝つんだ」という闘志が溢れていましたね。
新王者の見事な勝利ですね。

佐藤選手としては1、2Rは様子を見て・・というところだったんでしょうが、ボディ効かされて捕まってしまった3Rがターニングポイントのように見えました。
オーソドックスと思ってたのがサウスポーに構えていたのは驚いたでしょうが、それにしてもピンチの時、右のブロウで壁を作られた訳でもないのに、何故大きく左回りしなかったのかが不思議。
友人の比国人トレーナーとも同じ意見でしたが、相手の右を左手のパリーなどで抑えながら左足を前に出すだけで自然に自分の距離を取れるはずなのに。

もっともオーソドックス潰しの左中心の攻撃でしたからねぇ・・これから逃げられなかった。

教え子を「何人もタイ遠征に送り出したけど、走っていれば暑さはほとんど関係ないよ」と言ってましたが、「そりゃそうでしょう、あなたの国だってタイと変わらないんだから(笑」

あらためて佐藤選手のレコード見るとサウスポーとの対戦はほとんど無いんですね。
3年前に翁長吾央選手に勝って以来ですか・・

それとパーリング、ストッピングなどの防御技術の重要性をもう一度見直して欲しいですね。
攻防一体の基本中の基本ですが、最近はこれを実践する選手が少ない。
防御の先には直ぐ攻撃のチャンスが見えてくるはずです。
セレス小林さんが上手に解説してくれてます。
http://www.sportsclick.jp/boxing/02/index13.html

ストッピングは「キャッチボールの要領でコツを掴め」と昔は教えられました。
2013.05.08 17:41 | URL | #bH1htKmU [edit]

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