HARD BLOW !

日韓親善対抗試合 キム×岩渕

三度防衛した日本スーパーライト級王座を返上し、東洋のベルトに狙いを定めた岩渕真也(草加有沢)。21勝中17KOという破格の強打が魅力だが、対するチャンピオンのキム・ミヌク(韓国)も、デビュー戦で黒星を喫して以来9連勝中(7KO)。
KO決着必至のこのカードは、今回で三回目となる「日韓親善対抗試合」のメインとして組まれた。

新人王戦の予選二試合の後、全出場選手がリングに上がってのセレモニー。「ソナギ」こと柳明佑氏等も登場してなかなか華やか。
しかし、現在の韓国ボクシング界の状況を詳しく知っているわけではないが、かつての強豪国のイメージを失って久しい現状では、メイン以外の試合は、果たして内容として盛り上がるかどうか…という懸念もあったが、結果的には意外な展開となっていった。

日韓戦セレモニー

日韓戦としての第一試合、冨田正俊×キム・イェジュンのスーパーフライ級4回戦は、オープニングカードとしてこれ以上ない劇的な幕切れとなった。
客席の冨田応援団から「相手はウェイトオーバーしてるんだから腹から行け!」と声が飛んでいたが、確かにキムは調整を失敗したようだ。

3分のうちまともに動けるのは30秒から長くて1分。それ以外の時間は大きくリングを回って休んだりくっついて休んだり。初回のみ、その元気な時間帯の連打で(私の採点では)ポイントを取ったが、2回3回は、冨田の細かい攻撃とスタミナロスで一気にスローダウン。
最終4回も冨田優勢。自身初のKO勝ちに向けて怒涛のラッシュを仕掛けるが、もう残りは数秒。うーん残念、判定勝ちか…と思った瞬間、打ち合いの中で放った、破れかぶれ気味にも見えたキムの左フックがジャストミート!ガクッと腰を落とした冨田に右フックを追加し、冨田がキャンバスに膝をついたと同時にゴング!

カウント内には立ちあがったものの、4回戦でダウンの「-2点」は非常に大きい。
結果は、38-38が一者、38-37(私もこのスコア)が二者で、キムの大逆転勝利となった。
かつて、「クレイジー」と名乗っていたキムという選手が、最終回残り1秒で逆転KO負けを喫したことがあったが、今回のダウンもほぼゴングと同時。あの試合ほどではないにしろ、ドラマチックな逆転劇であった。

次は珍しいヘビー級の4回戦。
大和藤中(金子)に対するは、韓国クルーザー級6位というイ・ギョンハク。
何年も前のことだが、小堀佑介がモーゼスに負けた時のアンダーで、翁長と韓国1位のランカーとの試合を見た時、その韓国選手の技術の無さに驚いた記憶がある。

その韓国ランキングで6位かぁ、っていうか、クルーザー級に少なくとも6人の選手がいること自体がすごいな、と思いながら見たこの試合は、2-0でイのへばり負け。
大和も、もう少しでダウンを取れそうな場面もあったが、上背で上回る相手と押し合いへしあいでこちらもへばったか。

第三試合は、2012年全日本新人王でフライ級12位にランクされている長嶺克則と、韓国スーパーフライ級2位のシン・ヒョンジェとのフライ級6回戦。
これは7戦全勝4KOの長嶺の完勝。シンは苦しいながらも決定打は許さなかったが、4回のラッシュでシンの抵抗力が弱ったところでストップ。

第四試合。ガーナ出身のクウエ・ピーター(KG大和)は、一力ジムの椎名との試合を観戦したことがある。ビルドアップされた褐色の肉体を見ると、無条件にメッチャ強く見えてしまうが、そこはまだ6回戦選手。
ちょっと動きが固いかな、と思った瞬間、キム・ジンスの左ストレートでピーターダウン!

ピーターの背中側から見ていたかぎりでは、試合が終わるほどのパンチには見えなかったが、立とうとして足がもつれ…を二回繰り返し、どうにかこうにかカウント8で立ったものの、レフェリーは両腕を交差。
続行可能を訴えるピーターに、自分の目を指差しながら話しかけていたところをみると、視線が定まっていなかったのだろう。

こうして、なんだかんだいいながら2勝2敗、大将戦で決着をつける、というお膳立てが整った。
予想した通り、総じて技術では日本人選手がかなり優っているものの、それだけで勝負が決まらないのがボクシングであり、他の競技でも白熱する日韓戦ならば尚のことである。

ここでメインの前に月刊表彰の発表、その後に、先日五十嵐を破ってフライ級王座を獲得した八重樫東へのベルト授与式が取り行われた。

八重樫東

インタビューで、「フライでもライトフライでもいいから、井岡選手にリベンジしたい」と話し観衆を沸かせた八重樫。日韓戦についても「僕は先日の試合、コリアンスタイルで王座を獲りました。日韓それぞれいいところを伸ばして、お互いが強くなるようになれば」とコメントしたが、相変わらず人の良さがにじみ出てる感がある。


そしていよいよメインのOPBFタイトルマッチ。
岩渕のパンチがまともに当たればチャンピオンも無事では済まないが、逆もまた同じことが言えそうだ。
初回は両者とも慎重に入り、静かな立ち上がり。

岩渕×キム

サウスポーの岩渕、この試合全体を通じて、右のジャブは終始キムの顔面を捉えていたが、そこから左の大砲へがなかなかつながらない。
対するキムは、直近4試合がすべて2回KOという結果ほどには「超強打者」とは感じない。むしろ、よくまとまった選手というイメージで、この試合でも、深いダメージを与えた強烈なクリーンヒットというものはほとんどなかったように思うが、初回から右のタイミングは合っており、岩渕の苦戦が予想された。
2回に岩渕の左が当たり、一瞬相手を止まらせるシーンもあったが、最初の4回はやや王者ペース。
公開採点も40-38、39-37、38-37で王者リード(私の採点は39-37で王者)。

12ラウンドあるといいながらも岩渕は挑戦者なので、この採点の結果を受けて、まずは8回終了までに五分以上には持ち込みたいところ。
一方のキムは、ここまでの戦いで真っ正面からのぶつかり合いは危険と読んだのか、変わらず右、右で来るが、強弱やタイミングの緩急をつけて、岩渕に先手を取らせない。
私が見た中でいえば、(右と左が逆であるが)沼田康司と中川大資の試合がこれに近いか。
それでも個人採点は、8回終了で76-76と並んだが、ジャッジ三者は79-74、79-75、78-75で王者支持。
うーん、王者リードはわかるが、二者が79(王者は1ラウンドしか落としてない)とつけているのはちょっと疑問。

さすがにもう焦らなければならないラウンドになってきた。岩渕は9回のゴングと同時に飛び出す。
しかしキムも流石に王者。明らかに攻勢を強めてきた岩渕に対し、下がって捌くのではなく、こちらも前に出て迎え撃つ。ビッグパンチはないものの、空転させられ、細かくパンチを食っている岩渕もキツい。ここが正念場。

迎えた10回、打ち合いの中でついに岩渕の左がクリーンヒット。さらに返しの右までフォローし、明らかに王者の動きが止まった。この時点で多分、時間は1分以上はあったと思うが、嵩にかかって攻める岩渕に対して必死に凌ぐ王者。
ここでダウンが取れれば、2点分詰めたという勢いを得て、精神的にも残り2ラウンドを優位に戦えたと思うのだが、さらなる追撃が出来ないまま10回終了。

11回。一般的に最終回はどちらも死力を尽くすので、ここで踏ん張った方が勝ちに近づくというが、まだ10回のダメージを少し引きずっていたように見えた王者に対し、岩渕も疲労の色が見える。
単発で右のジャブ、アッパー等は当たるものの、序・中盤のように見合う時間が長い。
10回後半とこの11回で詰め切れず、回復を許してしまったことが最終的な敗着であろうか。
最終回はキムも王者のプライドを見せ、流すことなく打ち合いに応じて試合終了。
117-115、116-114、116-113の3-0でチャンピオンの防衛となった。

私の採点は、少し岩渕に辛くしたつもりだったが、計算したら114-114。しかし2、3ポイントで王者は妥当な採点だろう。
岩渕としては、序盤にゆっくり入ったまま、ほぼ前半まるまるギアが上げられなかったことと、10回の後半から試合終了までの7、8分間に力を爆発させられなかったことが敗因だと思う。
日本王座を返上し、あとは上だけを見続けてこの試合に挑んだこととは思うが、結果は結果として受け止めなければならない。
何と言ってもあのパンチは魅力的であるだけに、まずは体が無事なこと、そしてこの試合で何か得たものがあると感じられたなら、またリングに帰ってきて欲しい選手である。

(ウチ猫)

Comment

B .B says... ""
岩渕選手は本当に前半の戦いぶりが悔やまれますね。
サウスポーの強打者相手に長身オーソドックスの王者が右ストレートを多用してましたが、これは定石。
中盤までこれにまったく対応出来ませんでしたね。
岩渕選手の強い右のリードから鋭く踏み込んで得意の左強打を当てるという戦略イメージは手に取るように判るんですが、尽く王者の右に脅かされ単発で終わってしまった。
長身の王者は懐が深いというより岩渕選手の攻撃のポジショニングは常に正面からですから、前足を外に出すのも容易。
ディアスの粟生対策にも似てますが、後半の岩渕選手の攻勢の時は今度は足の位置取りが逆転している。
ボクシングの攻防は複雑ですから勿論これだけではありませんが、こうした右対左の場面はいくらでも転がっています。
イメージトレーニングやシミュレーションは大事だなぁと思わされる。

以前、体操の内村航平が「自分を俯瞰しているもう一人の自分がいる」と言っていたのを書きましたが、これはイメージトレーニングの究極の結果ではないかと。。
海外の中継などを見ると時々リングの真上から眺めているかのような映像が差し込まれますね。
内村の特殊能力が無くとも、こうした機械的な材料からも位置取りを体得する因が探れるのではないかと、ふと思いました。
どこかのジムで実験してくれないかなぁ。

それにしても最終回、明らかに勝っている王者キム選手は一発逆転も恐れず攻め続けたのは偉かった。ハートでも挑戦者を上回ったと思いました。
岩渕選手もしかしタフでしたねぇ、坂本博之さんのような戦法に徹すれば雪辱も可能だと思います。
2013.04.22 20:43 | URL | #65fpICiI [edit]
たか says... ""
朝鮮の選手って言えばやっぱりドンちゃんですね。

徳山選手の傷害容疑で逮捕ってニュースも入ってきました。
ペニャロサ戦など見に行ったのにな。
本人も認めてるみたいですね。
なんで朝鮮人は火病起こすんだろ。
2013.04.23 10:47 | URL | #- [edit]
いやまじで says... ""
日本人同士の試合もよいのですが、このレベルでの国別対抗戦も面白いですね。韓国はタフなファイターが多いですが、そうでない発見もある。
それと4回戦からのレポートというのもいいですね。
現地観戦の醍醐味の一つとして興行全体の流れを味わえるというのがありますが、
途中のイベント含めて臨場感ありました。
それと4回戦といっても戦う気持ちは変わらない面がありますし、
技術的な未熟さは見る側にとって勉強になることもあります。
韓国サイドはアウェーで勝ち越しですから、このあたり気持ちの強さも感じますね。
2013.04.23 22:04 | URL | #Twj7/TDM [edit]

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