HARD BLOW !

4.6 キャンプ座間 遠足日記

昨日は神奈川県座間市にある在日米軍基地内で行われたOPBFスーパーウェルター級タイトルマッチがメインの興行に行って来た。

主催者後援会のご厚意で用意されたマイクロバスに同乗させて頂いたのだが、貸切バスに乗るなんて何年振りだろう?
米国陸軍が地域との交流を深める為に行われる例年行事のひとつ、桜祭りとのジョイントだが興行は今回が2回目。
主催者の信念と情熱が実を結んだこれまで誰にも出来なかった一大イベントの実現だ。
翌日の朝日新聞神奈川版には「ジム会長・大佐の絆が縁」と報道されたが並大抵の苦労では無かったはずだ。

今回一般客の入場は無料で経費のほとんどをこのイベント主旨に賛同した企業の協賛金で賄ったという。
そんな水面下の苦労も知らない遠足気分の僕は嬉々として友人とバスに乗り込んだのだった。

20130406 座間 屋台

20130406 座間 桜

20130406 座間 ヘリ

午前8時過ぎにバスに乗り込みボクシング談義であっという間にベースに到着。
IDと荷物のチェックを終え基地の中に入ると、各国の屋台ブースが並び、BBQやホットドッグの焼き上がりの匂いに誘われて客が長蛇の列。
あいにくの天気にも関わらずどこも盛況だ。
14時からの試合まで3時間ほどあるので暇つぶしに苦労するかと思ったが、僕とI君はアメリカンビール片手に散策。コンサートやヘリコプターの浮上を楽しんだ。
異国の空気はビールが二杯三杯とすすむ。

基地内のいたる所に見る迷彩柄は自分にとっては戦争カラーだ。
祖父の戦争体験を聞いて育ったせいかアジアの緊迫を煽るマスコミ報道にもいささか辟易とする訳だが、基地問題も含めて平和とは何か?を積極的に議論をしようという前向きな姿勢には共感を覚える。要は対話だ。
深刻な少子化問題やエネルギー問題を抱える日本は30年後、50年後、アジアのいや、世界の中の後進国になるやもしれない。新たに国家100年の計を迫られている。
相反する主義主張の対立を対話と現実の中の歩み寄りによって解決の糸口を探す作業も並大抵ではない。
一つの運動とこうしたイベントの合流は後世には発明と呼ばれる可能性すら感じるのだ。

普段ホールなどの試合では滅多にアルコールを口にしないのだが、しかし今日はフィエスタ。
主催者、関係者の「思想を超えて」という想いを知れば、なおそれで良いのだと思った。

20130406 座間 YANO FITNESS CENTER

さて、第一試合4回戦は定刻をやや過ぎて始まった。
注目していた三谷ジムのミドル級、古川善広のデビュー戦。
長身細身のスラッガーは僕の好みだが、将来そのように成長する可能性を秘めた逸材だ。
開始1分早くも強打が火を噴いた。金子直也(山上)のテンプルに右フックを決めなぎ倒した。
かろうじて立ち上がった金子に襲いかかる古川。
ところがまたしてもガードの開いた所に金子の左フック一閃、起死回生の一撃に今度は古川がダウン。
「またしても」とは斉藤司を含むここのところの三谷ジム勢の流れだ。
立ち上がった古川だが相手もまだ効いている。
ここは冷静にと思ったが4回戦、互いにもう一度得意のパンチを決めればそこで試合は終わる。
左右の強打を振って賭けに出たのは古川だったが、逆に金子の同じ角度の左フックを浴びて決着がついた。
試合後悪びれず「やっちゃいました」と客席に挨拶していた古川だが、なかなか太い男だ。
試合前のスパーでは評判がすこぶる良かった。デビュー戦はほろ苦いものだったが練習では学べない事もある。
次戦、必ず復活する。

第二試合6回戦は鈴木悠介(八王子中屋)対澤田京介(JBスポーツ)

日大出身、澤田はデビュー戦。
明大出身の鈴木はプロ第二戦で共に豊富なアマチュアキャリアがあるが、インターハイ準優勝の澤田がどんな技術を見せるか期待した。
しかし、終始落ち着いた試合運びの鈴木は澤田の攻撃を見極め要所要所で的確に有効打を決めた。
3-0判定で鈴木。
デビュー戦で実力を発揮出来なかった澤田だが巻き返しに期待。

第三試合、勝又ジム期待の輸入ボクサー、ジョビー・カツマタの日本デビュー戦。
予定されていたコーチ義人が怪我の為、対戦者が変わった。
相手は昨年の東日本Sバンタム級新人王久野伸弘(オサム)で二階級上の選手。
正直、酷なマッチメークと思われたが滑り出しは上々。
左がまえからのスピードに乗ったストレートからつなげる比国人特有の左アッパーにはキレがあった。
しかし、これまで経験した事の無い曲者久野の変則的なリズムは若い比国人を体格差でも徐々に圧倒して行く。
クリンチの際に相手の肩を叩いてブレークをアピールしながら、すかさずパンチを叩きこむ久野のやり方は再三に渡りフェアでは無いと感じたが、これもレフェリーの介入が無いのだから仕方が無い。
冷静さを欠いたところにパンチを貰ってしまいダメージを蓄積していく。
3Rについにダウンで良く立ち上がったが、回復の余地は無い。4R開始早々連打から詰められ棒立ちに。
タオル投入のタイミングかと思われたが、左フックで再びダウン。
レフェリーがノーカウントで試合を止めたが、もう少し早く止めてあげて良かった。
試合後のダメージを心配したが、「パッキャオだって負けて強くなった。また頑張る」と言ったジョビーはまだ少年の面影残る19歳。
ミンダナオの田舎から首都マニラよりもさらに遠いジャパンへ。
常にリスクを負ったハードなマッチメークを課す勝又会長だが、次はこのボーイに少し自信をつけさせてあげて下さい。

第四試合は連敗中の関本純太(勝又)再々起戦.
二年前の座間興行ではTKOで敗れ、再起戦では格下の林涼樹(三谷)にダウンを奪われど根性で巻き返しを計るも判定負け。
ここまで負けが込んでも後援会が離れないのは関本の真面目な人柄からだろう。
ファンが選手に求めるものは勝ち負けだけではないのだ。
しかし、この試合だけは絶対に負けられない。
そんな決意が初回から見られる。
韓国フェザー級5位ハン・イクスー相手に様子見も無くボディ、顔面へと攻撃を仕掛ける。
ペースを握るかと見えたが、カウンターを浴びて早くもダウン。
3Rにも仕掛けたところに再びカウンターでダウン、ここまでかと思われた。
しかし、関本はあきらめず下から上へと執拗に韓国人を攻め続け、6Rついに連打でレフェリーストップを呼び込んだその瞬間会場が大きく湧いた。
かつての新人王技能賞に輝いた関本だが不屈の闘志が今の彼を支えている。

メインイベントの前にスペシャルカードと銘打たれた女子4回戦が組まれていた。
女子ボクシングに興味の無い僕はいつもなら喫煙室で一服の時間だ。
しかしI君の下調べでこの試合ばかりは見てみようと思った。
高野人母美(たかの・ともみ)のデビュー戦だ。

見てみよう、いや見たい!と思ったのは奇跡の9等身と言われた現役モデルのプロボクシングデビューという触れ込みだからではない。
そんな話題先行に自称ボクシングファン歴40年を誇る中年が騙されるわけがないだろう。
スレンダーな美人が好みという個人的な趣味だからでもない。断じてない!!
あくまでもI君が調べた高野のプロフィールから興味が湧いただけだ。
小学生時代はサッカー、卒業してキックなどの格闘技を経験し、天笠尚の試合を観て山上ジムに入門したという経緯は天笠ファンとしても無視できないわけだ。

対戦相手はアルファジム所属の大空ヒカル。女子ボクサーらしい選手でこちらもデビュー戦。
腹を決めてこの世界に入った。意地でも負けたくないだろう。

初回、身長差からか大空は慎重な立ち上がりで高野のジャブを良くブロッキングして反撃の様子を伺う。
高野はかまわずジャブからワンツーとつなげる。
177cmのスーパーフライ級の体躯はいかにも華奢だが、攻めは実にシャープ。
長身から放たれるストレートが意外にキレる。
基本通りのワンツー主体の攻撃だが大空の固いブロッキングを次第に突き破り始めた。
迫力がある。
左右のストレート・フックを3連打して最後の右で痛烈なダウンを奪った。
からくも立ち上がった大空に再び強烈なパンチを浴びせレフェリーが割って入る。
わずか32秒の出来事だったが、男子顔負けの強打だ。
なるほど天笠に憧れてと言うだけの事がある。
正直驚いた。
試合後、高野は「聖地である後楽園ホールで試合をしたい」と語ったが、次の彼女の試合も是非観たいと思った。
くどいようだが、彼女の美貌に惚れ込んだわけではない。絶対に無い・・
彼女の記事だけが特別に長いのはあくまでも偶然だ。


さて、メインイベントはいよいよOPBFスーパーウエルター級戦。
20130406 座間 国歌

チャーリー太田(八王子中屋)の7度目の防衛戦。相手は同級9位のカク・キュンスク。
王者はスムースな動きでコリアンファイターの攻撃を捌きながら、軽いながらもボディ顔面に的確なパンチを決める。
粘る挑戦者だが試合の行く末が見え始めた6R、ついに王者の右でダウン。
決着がついたと思ったが、ここから韓国人が喰い下がる。

試合前のセレモニー国歌斉唱で思わぬハプニングがあった。
アメリカ、日本の国旗が掲揚されたが韓国国旗が無いのだ。
主催者発表では韓国国旗が間に合わなかったとの事だが、まさか政治的背景などは無いだろう。
しかし韓国人歌手は国旗の無い試合会場での国歌斉唱を拒んだのだろうか、異例とも言える韓国民謡に差し替えられた。

これが韓国人挑戦者の闘志にさらに火を付けた訳ではあるまいが、得意の左強打を振い続け王者の攻撃を単発に終わらせる。ナショナリズムは日本ではもはや精神論になりつつあるが、逃げ場の無いリングでは最大の効果をもたらす事がある。
試合の流れが一気にひっくり返るような強打だった。
しかし王者は冷静だ。
終盤はまるでサンドバッグを打っているかのような力のこもった王者のパンチが挑戦者の顔面にボディにとめり込んだ。
しかし、驚異的なタフネスを見せる韓国人の闘志がついに最終ゴングを打ち鳴らせた。

大差の判定勝利で防衛テープを伸ばしたチャーリー。安定感がさらに増して来た。
このクラスで世界照準の米国人には欲を言えば、連打をまとめてストップしてもらいたかったが、試合終了と同時に会場は大喝采だった。

この日は何も考えずに楽しもうと気ままにしていたが、ボクシングの力にあらためて秘めたものがあると感じた。
興行の大成功はこうした可能性に賭けた主催関係者、物品販売などの売り上げを協賛金として計上されたIジム会長、また協賛企業の熱と尽力の賜だ。
利害を超えた、主義主張を超えた、こうした大イベントには心から大声援を送りたい。

来年の春も是非参加したいです。

B.B

追記:
下記のリンクから試合の模様が見られます。
PACIFIC BOXING SHOWDOWN IN CAMP
※高野人母美選手の試合は56分過ぎ

Comment

いやまじで says... ""
私は純太くんの試合から観戦ですが、見事な粘りで逆転勝利でしたね。

高野は身長・リーチだけでなく、身体能力、運動神経も非常に恵まれていて今後が楽しみ。

チャーリーの相手はLW級でスイコ、ミドル級で渕上と対戦していて結構手強いのではと思いましたが実際パワーはありましたね。ただチャーリー選手は非常に落ち着いて戦っていました。試合のキャンセルが続いたようですが、キャリアにプラスになる戦いだったと思います。

基地内の試合でしたがアメリカの町のお祭りに来た気分ですね。

国と国との関係は否応なしに人と人との関係を規定してしまうところがあるわけですが、こういう交流の場があることが、固定し硬化した壁に小さな風穴を開け続けるのだと思います。

次回は美味しい物も食べてもっとゆっくり楽しみたいですね。
2013.04.09 22:18 | URL | #XmKBmEnU [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
自分は仕事で三沢基地に一週間ほど通った事があります。中はほんと映画と同じアメリカで黄色いスクールバスが走っててビックリしたもんです。先日岩国に行った時は基地ナンバーの車の横柄な運転(ウインカー出さない!)に驚いたり、でも街を歩けば異文化交流の面白さもあるよなと思ったり。

ヨーロッパでは徴兵制は左翼の主張なんだそうです。戦争をやるなら国民から遍く兵隊を集めなければ不公平と言うのと、徴兵制にしとけば世論が自然と戦争回避に向かうという知恵からだそうです。映画「プラトーン」の主人公は徴兵免除される大学生なのに志願してベトナムに行った青年で、同じ小隊の徴兵されて来てる兵士に「なんで好き好んでベトナムなんか来たんだ?」と聞かれて「貧乏人の子供ばかり戦場に行くのはおかしいから」と答えて「お前バカじゃないのか」と呆れられるシーンがありました。これは監督のオリバー・ストーンの実体験だそうです。昔は戦場に行くのはノブレスオブリージュといいますか、貴族・権力者の責任だった。日本の世論はすっかり勇ましくなりましたが自衛隊への志願者が増えたって話は聞かないですね。結局他人事なんですよね。アメリカの田舎から極東に派遣されてる青年達にもきっとそれぞれ違った意見があると思います。

しかし勝又会長のマッチメイク厳しいですね。お会いした時に「自分はカマセ犬は嫌いなんです」と仰ってましたが、それ亀田家にも言ってやって下さいよ!(笑)

しかし後楽園ホールを飛び出して基地で無料で興行するという試みは返す返す凄いと思います。会長ご自身には色々な政治主張はおありだとは思いますが、見た人の捕らえ方は様々だと思います。またそうでなければこういうイベントを打つ意味もないと思います
2013.04.09 22:40 | URL | #- [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
私の友達の元極左活動家のおじさんは兵器や飛行機も大好きなので「オスプレイは良い飛行機だよ!あれが欠陥飛行機だと言ってる反基地運動の連中はおかしいよ!『オスプレイは良い飛行機だけど米軍は日本から出て行け』でいいじゃないの」と言ってて笑ってしまいました
2013.04.09 22:46 | URL | #- [edit]
記事の中でのIです says... ""
キャンプ座間お疲れ様です。
たまにはバスに揺られるのも良いですね!

現地のビールも中々良いものでボクシングそっちのけになりそうでした。(笑)

イヤァなんといっても女子プロボクシング!!!
たまげました!

お前はそれだけかぁ!!
って怒られそうですが、そこは流して下さい。

もちろん男子のボクシングも楽しみました。
花見にビールにボクシング。
本当に良い1日で心も体も満足でした。

最後にB.Bさん!
高野人母美選手のプロフィールちょっと違ってますよ‥

結局高野人母美選手の虜になってしまったIでした!!

またコメントします。
本当にお疲れ様でした!



2013.04.10 03:36 | URL | #/2CD/BNk [edit]
B .B says... ""
記事の中でのIです さん、高野選手プロフィールについてのご指摘ありがとうございます!

彼女のサッカー経験は小学生の時でしたね。
訂正しました。

また、ボクシングデビューはプロボクシングに訂正しました。
正確にはアマチュアで4戦しているんですけど、全敗というのも意外でしたね。
プロテストも2回目の挑戦でパス。
しかし、この時のスパー相手をKOしてしまった!

プロデビュー戦、大空選手からダウンを奪った時のニュートラルコーナーの高野選手の表情がこれまた凄かった。まさに獣のようでしたね。
闘争本能が彼女を覚醒させた瞬間にこちらは身震いしてしまいました。

また来年もキャンプ座間行きましょう!
2013.04.10 16:37 | URL | #65fpICiI [edit]

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