HARD BLOW !

ボクシングマガジン賛歌

 世界タイトルの乱立、不可解な判定の頻発、ボクシング中継の減少、業界の構造不況。雨降りの車中からワイパー越しに見るような視界不良のボクシング界。「一体ボクシングファンはどうしたらいいんだ?」問いかけたところで壁に貼った尾崎のポスターもファンシーケースの脇のラークのゴミ箱も何にも答えてはくれません。いきおい私の生活は荒れました。安酒をあおってあてどなく街をさ迷い、気がつけば書店の雑誌コーナーの前。「壇蜜のグラビアでも立ち読みするか」と半ば自暴自棄になっていたその時、ある一冊の雑誌が私の目に飛び込んできたのです。荒れた海を行く小船の航路を照らす灯台のように、あるいは悩める小羊たちを導く預言者のように、あるいは出張先で出会った話好きのタクシーの運転手の如く、インターネット上の不確かなボクシング情報に一喜一憂するボクシングファンに確かな指針を与える存在がまさか書店にあるなんて…。

 「ボクシングマガジン」という雑誌を皆さんご存知でしょうか?発行はベースボールマガジン社とありますが野球と何か関係があるのでしょうか?第三種郵便物ってどういうこと?恐る恐るページを開くとそこはボクシングファンの桃源郷が。こんな世界があったのか!私は矢も盾も堪らずレジに直行。つり銭と一緒に「ボクシングマガジン」をワシ掴みにすると家路を急ぎました。しかし「一刻も早く読みたい」そんな焦りがいけなかったのでしょうか。家に帰ってつり銭を確認すると1000円札に対するお釣りがなぜか40円しかないのです。いくら白黒ページと広告が充実しているからといってこの値段はあり得ない。書店員のミスでしょうがしかしあせった自分にも一抹の責任はある…それに今はどうしても「ボクシングマガジン」を読みたい…抗議は明日にしようと自分を納得させていよいよページを開きます。

 人気選手へのインタビューのトーンはまるでアイドルのグラビア。さながらJUNONのようです。少数精鋭のカラーページの後に控えるのは読み応え満載の記事が溢れる白黒ページ、充実した広告ページと続きます。巻末には各団体のランキングがパソコンやスマホがなくても確認できる便利な情報のページがドンと控え、どこをとっても削るところのないタイトな作り。活字離れが言われる昨今でも何の不安もない誌面構成ではありませんか。きっと頻繁にリニューアルが行われて現在の形になったであろうことは想像に難くありません。そして何と言っても一番読み応えがあるのは最終ページの編集長のコラムです。今月号では「テレビがゴールデンタイムに村田や井上の試合を中継すればまたボクシング人気出るんじゃねえ?」という昭和から一切ブレていない筋の通った意見を拝読出来て当方はもはやお腹イッパイ。暗いと不平を言うよりも、進んで灯りをつけましょボンボリに、金メダルバブルに踊らにゃソンソンというジャーナリステイックな姿勢には脱帽するしかありません。

 楽しい時間はすぐ過ぎるといいますが、思ったより早く読み終わり「来月も絶対買うぞ!多分!!」と決意も新たに目次を眺めて余韻を楽しんでいると奇妙な違和感が…。なんと「大沢宏晋選手に1年間ライセンス停止処分」と言う記事のページが目次と違うのです。目次は96ページですが実際は98ページに掲載されたこの記事。サスペンドと言う重い題材を扱ったが故についつい熱が入りすぎ「上手の手から水がこぼれる」ことになったのか…。とはいえ「JBCの裁定の正しさを何が何でも証明したい」と言う書き手の熱意が乗り移ったアジビラのようなの檄の前では誤植など所詮小さな綻びに過ぎません。あらゆる問題点を元職員と自称マッチメイカーに集約するアクロバチックなレトリックにただ酔えばいいのです。この記事から見て取れる「ボクシングマガジン」とJBCの強い絆は人民日報と中国共産党のように麗しい一体感です。そして当事者大沢選手のコメントで記事を締める構成は「関係ない周囲の事情に巻き込まれて一年間試合が出来ない選手の無念さ」などという感傷的な要素には一切配慮しない・出来ない厳格なコミッションの姿勢をボクシング業界に周知するという見事なガバナンスでもあります。こうやってコミッションとメデイアが一体ならば我々ファンも安心です。JBCがなければボクシングもありません!大切な事に気付かせてくれてありがとう 「ボクシングマガジン」 そしてさようなら 「ボクシングマガジン」

     ボクシングマガジンに真のジャーナリズムを見た(旧徳山と長谷川が好きです)

追記:その後書店にお釣りの間違いを抗議に行ったところ、ボクシングマガジンの定価は960円であること
が判明しました。書店員の方にはご迷惑をおかけしました。良く考えたら960円って適正な値段だと思います。いやむしろ安いかも。「来月も絶対買います!多分!!」

Comment

B.B says... ""
旧徳さんの折角の記事なのに申し訳ないですが・・
そう言えばもう5年ほど手にしてませんねぇ。
まだボクシングファンのための・・っていうサブタイトルがついてるんでしょうか?
もうそれだけで血液が沸騰したもんですが。
いまや業界機関誌にまで成り・・いや登り詰めたんですから、そうですねぇ価格は3千円くらいが妥当なんじゃないですか。
昔はファンに媚びるあまりに試合評も辛口だったり、時に協会批判、コミッション批判、選手の自覚に対する批判などがあってハラハラドキドキしたもんですが、いつの頃からだろう?そんな心臓に負担のかかる記事はとんと見なくなりまして、ああこれで記者さんも安泰だな、少なくとも食いっぱぐれはないなと安心したもんです。

ところが聞くところによると最近は部数も落ちて大変だと言うじゃありませんか。
ボクシングファンの質が落ちたのか、理解が足りないのか・・
こんなに体の負担も無く安心して読める絵本のような貴重な専門誌も少ないですから皆さん、旧徳さんにならって毎月買いましょう。
ということで昨日近くの本屋に行きましたがありませんでした。
なんだ心配する事も無い、売り切れだったんでしょうね多分。残念!
2013.02.18 10:07 | URL | #65fpICiI [edit]
いやまじで says... ""
すみません、旧徳さんに今月のボクマガの記事はスゴイとうかがっていたのにまだ読んでおりません。
近場の書店に置いてないのです。やはり売り切れなのでしょうか。
なんとか大型書店に出向いて入手しようと思います。

amazonなんか使いません。届くまで待ちきれませんからね。
2013.02.18 18:13 | URL | #Twj7/TDM [edit]
等々力酸素魚雷 says... ""
中学生の頃からボクマガ発売日はワクワクして書店に行ってました。
当時8百何十円でしたっけ?高かった(笑)
日本人が世界挑戦する時は発売日が遅れたりしてウズウズてたもんです。
いつからか買わなくなり、今では立ち読みさえしなくなりました。
ネットで情報があふれている現在は試合結果はリアルタイムでわかるし、それ以上のことを読みたくさせる内容なんてない。僕の中では存在意義がきれいに無くなりましたね。
知り合いが記事に載ったら立ち読みでもしようかとも思いますが・・・。
近所の書店では数年前から見かけなくなったし、発行部数はかなり減ってるんでしょうね。

そう言えば昔掲示板コーナー(今もあるんですかね?)で1970年代から1980年代までのバンクナンバーを譲ってもらいました。200冊近くで全部で5000円くらいだったかな?
実家にほっぽらかしてたら全部棄てられてて今でもトラウマです・・・。
2013.02.18 18:52 | URL | #- [edit]
ななし。 says... ""
今も昔もマガジンが凄いですよ。1000円じゃ安いですって。
佐瀬稔さんの「感情的ボクシング論」、ジョーさんが辛口の論評をいろんなところに書いてね。
編集長は前田衷さんです。ボクシング雑誌は今も昔もマガジンですよ!


2013.02.18 21:11 | URL | #/OUezYRM [edit]
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
 皆さんさすがマニアだけあってボクシングマガジンについて本当に良くご存知ですね。自分も早く皆さんに追い付きたい・・・。ところで今日、発売日でないのは重々承知で「もしかしたら間違ってもう出ているのでは?」という一縷の望みにかけて「ボクシングマガジン」を買いに書店に行ったら「ボクシングビート」という「ボクシングマガジン」のバッタもんがありました。アイアンマン別冊ってなんですか?小学館の学習雑誌じゃタダでついてくる別冊付録で金を取るんですか?安かろう悪かろうと言いますが、価格も「ボクシングマガジン」より安い設定で亜流臭がぷんぷんです。 「さて昨今のボクシング界の焦眉の問題である大沢選手のサスペンドをどう報じているのやら」と怖いもの見たさで見てみれば、情報ページのベタ記事のみ。横溢する想像力で自称マッチメイカーと問題職員の暗躍をあぶり出し業界内の巨悪に断固たる姿勢を見せた「ボクシングマガジン」のような気概は微塵もありません。危機感のない「ボクシングビート」の姿勢は所詮亜流の限界と言ったところでありましょう。もう二度と読みません。
2013.02.18 22:59 | URL | #- [edit]
たか says... ""
ボクマガのチケット当選率は異常
皆応募しないんでしょうか?
ジァーナリズム云々は良く分かりませんが、プロレスの死亡事故まで自分達の遊び道具にした輩たちは許せません。
2013.02.20 06:17 | URL | #- [edit]
キッズリターン says... ""
シジミを品種改良して大きくしたい(旧徳山と長谷川が好きです)さん

おもしろ記事ありがとうございます。

>所詮亜流の限界と

斜め読みにしてやっとわかりましたよ(笑)
たしかにビート反主流とかアンチテーゼとか意識してますよね。
それでもやっぱり書けないこともあるんですかね。
2013.02.20 08:05 | URL | #65fpICiI [edit]

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