HARD BLOW !

20121027粟生vsディアス ―査定マッチ―

WBC世界SFe級王者、粟生隆寛(23-2-1,10KO)が明日27日Gディアスと4度目の防衛戦を行う。粟生選手と言えば、私にとってWガルシア戦が思い出される。2010年4月30日日本武道館、長谷川vsモンティエル、西岡vsバンヤゴン戦のアンダーである。

2008年4月に榎洋之とのWBAFe級エリミネーター戦で引き分けた後、2009年3月老兵ラリオスから2度目の挑戦でWBCFe級世界王座を奪うものの、その年7月の初防衛戦でEロハスにタイトルを奪われる。階級をSFeに上げた再起戦でFビロリアに判定勝ち。ビロリアはこの3ケ月前にWBOSFe級王者Rマルチネスに挑戦し9RKOで敗れているので、粟生にとっていきなりの査定マッチだったが危なげないUD勝利。Wガルシアは、2006年にEバレロに1RKO敗、2008年にJリナレスに5RKO敗(WBASFe決定戦)、2009年Yガンボアに4RKO敗(WBAFe世界戦)と、ビッグネームとの対戦が目立つ強豪。

私は生観戦したが、階級アップしたためか序盤力みの目立つ粟生を見ていて、非常にイライラした。ついに「アオー!!、楽に打て、楽に!!」と静かな会場内の2階席から大声でアドバイスを飛ばしたものだ。そのかいあって?粟生は回転を重視した軽打を増やし始め、8Rストップ勝利を収めた。直後の粟生は号泣していた。比較対象の多いガルシアにはどうしてもKOで勝ちたかった。判定ではだめだ。そんな思いがあったのではないだろうか。

このようにいろんな勘違いもあってファンとしては楽しい生観戦の思い出がある私にとっての粟生選手。その後2010年11月、アテネ五輪銅メダルのアマエリートVタイベルトに見事なカウンターを決めてダウンを奪い、WBCSFe王座戴冠。2011年4月の初防衛戦では元暫定王者Hグティエレスを文句のないKOで退ける。ここまではよかった。同年11月、Dボスキエロ戦は苦戦のスプリット判定防衛。というか、代々木第2でのこの試合、生観戦した私の目からは粟生の負けである。たしか戦前に粟生は最新医学技術も導入してコンディショニングに励んでいたのだが、なぜか試合中にガス欠状態になったようで、苦戦の原因は調整の失敗ということにされ、本田会長からは厳しい言葉がとんだとの情報もあった。ボスキエロが攻撃的でタフな好選手であったことは確かだが、中盤からのヘロヘロ粟生の海外なら暴動もののなりふり構わぬクリンチ攻撃はちょっと異常だった。(結局この試合の苦戦の原因が何であったのかはいまだ分からず、私にはちょっと引っかかっている。)

2012年4月、タイの実力者ターサク・ゴーキャットジムにUD勝利。こちらは粟生が序盤にターサクのパンチを見切り、力を技で制した一戦だった。

こうしてキャリアを積んできた粟生だが、この試合は再度査定マッチになるようだ。内山との統一戦が話題になり、粟生自身も意欲的だったが、本田会長からは海外進出を示唆する発言が出ている。

http://www.nikkansports.com/battle/news/p-bt-tp0-20121026-1037859.html

指名試合の無視などしようと思えばいくらでもできるはずだし、仮に行うにしても日本開催は不可能ではないはずだから、積極的に世界進出しようという意志表明であろう。粟生自身は「会長の言うとおり」としかならないだろうが、いずれにしても試合前のこの手の取らぬ狸の皮算用的情報にはヒヤヒヤする。もっとも、プロである以上こういう情報のさ中にあっても目前の試合に集中して結果を出さなければならないこともまた確か。そういう意味でも査定マッチになるだろう。

査定の相手Gディアス(36-9-2,17KO)であるが、31歳のメキシカン・ファイター。名のある選手との対戦はこれだけある。

2005年12月 Rゲレーロ:SD勝(NABFFe戦)  
2006年06月 Rゲレーロ:6RKO敗(NABFFe戦)
2007年 7月 Eロハス:SD勝(WBCFe挑戦者決定戦)
2007年12月 Jリナレス:8RKO敗(WBCFe戦)
2008年10月 Uソト:11RTKO敗(WBC暫定SFe戦)
2009年 4月 Zマラーリ:判定敗(IBOSFe戦)

Rゲレーロは現在WBC暫定We級王者。この11月にはアンドレ・ベルトとの防衛戦を控える3階級制覇王者(暫定がつくが)。このゲレーロとの2戦が興味深い。1では距離をとって戦おうとするゲレーロが、前へ出るディアスの攻撃をコントロールできず僅差判定に敗れている。ディアスは前へ出て踏み込んでのパンチに威力があるとともに、踏み込んだ後の打ち終わりを相手が打ち返す際、スウェイでかわし、間髪おかず返しをコンビで打つというパターンが有効だった。ゲレーロは自身も前へ出るが、ディアスも前に出てくるために距離が合わず、有効なパンチを決められない。これが第1戦だった。

2ではゲレーロが初回から積極的というより猛然と前へ出て左を打ち込んでいく。しかも出てくる相手に対して、腕をたたんでそこから打ち抜くことで効かせるパンチを打っていた。初回にダウンを奪うとその後も攻勢を緩めず6Rに強烈なボディを1発決めて試合を終わらせている。ゲレーロの試合はこの2試合しか見ていないが見事に変貌しているのが見て取れる。(ファイター化…この2試合だけかもしれないが。1Rを見比べただけでよく分かる。)

Gamaliel Diaz vs Robert Guerrero 1
Gamaliel Diaz vs Robert Guerrero 2

このゲレーロの戦い方にディアス戦のヒントがあるのではないか。ディアスはとにかく前に出て、自分のウェイトを預けながらパンチを出してくる。遠い距離からのパンチの伸びも良いし、相手の返しに対する反応も速い(というか彼のパターンである)。これを後ろに下がって捌こうとするとゲレーロとの1戦目になる可能性が高い。ある程度前へ出て、短い距離で相手の突進を止める、というより、先に前に出て短い距離でコンパクトにパンチを効かせることが必要になってくる。粟生の場合は、これにもっと左右の動きを入れてもいいかもしれない。

KOしようと思わずこちらの攻撃で相手の攻撃を封じながらダメージを与える。そうすれば粟生のカウンターが決まるチャンスも多くなるだろう。「勝つと思うな思えば負けよ」的あるいは「急がば回れ」的ではあるが、圧倒的なパンチ力があるわけではないボクサーの場合これが一番大事である。

明日の試合は、岩佐vsDデラモラ(亀田興毅に判定敗、モレノにKO敗)、三浦vs三垣も、査定試合という意味で興味深い。岩佐と山中が再び相まみえる日が来るであろうか。

最近3年間は13連勝のディアスだが、目立った強豪との試合はない。しかし年齢的に極端な衰えがあるとも思えない。ビッグチャンスと燃えているだろうし、一発を狙ってくることだろう。粟生にはとにかく集中して戦ってほしいと思う。

粟生の後半KO勝利を予想する。粟生にはKOを狙わずにKOすることを望む。試合内容はハードな打撃戦になるのではないか。

byいやまじで



付記1
Rマルチネスが2012年9月にMベルトランJrとの決定戦をコントロバーシャルな判定で制し王座に返り咲いたことは記憶に新しい。

付記2
Rゲレーロはその後サリド、リツォー、階級上げながら、ジョルダン、クラッセン、カサマヨル、カティディスと強豪を撃破してゆく。

付記3 
生観戦したターサク戦、会場の東京国際フォーラムはボクシングの試合は初めてとのことだったが、なかなか微妙な会場である。有楽町から徒歩5分はアクセスがよく周囲に繁華街もあり至便である。ただ観戦するには席によって見にくい場所があるようだ。私は客席のちょうど中央付近(同列に長谷川穂積の家族がいた)で見たが、ステージ上のリングをほぼ水平に見ることができ、距離もそれほどなく、まずまず見やすかった。1階席・2階席の後方はかなり遠いのだが、それ以上にステージ下最前列は、ステージ高+リング高で見あげる形になるので、こちらの方が見にくいのではないかと思った。前の席だからそれなりにチケットは高額だろうに、それでこうならちょっと、というところである。私が行った時は、動画撮影を防ぐためかテレビ映りを良くするためか、ステージ上方から客席に向けて強いライトが当てられていた。これは客席からリングを見るにはかなり妨げになるので勘弁してほしいものだ。要は一長一短であるが、音響や映像設備は良いし、あとは問題点を改善してほしいところである。

20120406 国際フォーラム01

20120406 国際フォーラム02

追記 2012/10/26 16:25
石田順裕選手のブログを拝見しました。世界のトップと戦い続け敗戦が続いていますが、プロボクサーとして充実ぶりがよく分かります。

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