HARD BLOW !

なでしこと名城

昨年の女子サッカーW杯におけるなでしこJAPANの優勝は、世界の女子サッカー界にとってエポック・メイキングな出来事だったと思う。それはなでしこが女子サッカーをスペクタクル(=瞠目すべきもの)にした点だ。

圧倒的な身体能力で覇権を握った中国、アメリカに対し、高い個人技と組織力、そして、澤や宮間や川澄の勝負強さでひっくり返したなでしこ。パワーとスピードのサッカーに、高度なテクニックとスキルのパスサッカーを対立させたことで、女子サッカーをインテリジェントでスリリングでドラマチックなものに変えた。これがなでしこジャパンの最大の功績だと思う。

昨日昼、たまたまテレビをつけるとヤングなでしこ(U20W杯)の対スイス戦を再放送していた。プレーする表情のあまりの明るさに、これまでのスポーツ・シーンになかった何かを感じた。その後スポナビでこんな記事を見た。

「ポップなヤングなでしこ なぜ楽しいのか」http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/japan/2012/text/201208290001-spnavi.html

釜本氏のコメントも興味深いが、吉田監督の言う「自分で考える」「自分で戦う」ことの奨励とは何なのか。「今、判断しなさい、こう判断しなさい、なんて指導者が言っていたら、選手は育たない」とあるように、どう判断したらよいのかを「教えない」ことである。

「教えない」だけで選手が勝手に成長するなら皆名監督だがそんなわけがない。実際には選手のプレー意図の良い点悪い点を正確に読み、良い点をしっかり評価すること、これが選手の成長につながる。だから監督には指導者としての力量が必要になる。

選手は自分で判断を下す根拠を他から与えられないから自分の中に探し求める。自分一人の経験は狭く小さいが、使えるものを探し出すうちに、使えるものと使えないものがはっきりする。自分の経験の内容が整理され、自分の中に無かったものを自分の中に摂り入れることもでき、自分に足りないピース(欠点)が何であるかもはっきりする。

こうして選手が成長すれば、選手は誰かの判断ではなく自分の判断で上手くなるのだから、自信もつくし、楽しくもなる。

彼女たちの明るさには「自分で考え判断する」指導法が背景にあり、それが彼女たちとそれを観る者の「楽しさ」につながっているのだと思う。

なでしこのメンタリティとして付け加えておくと、監督との縦関係をあまり感じない点である。女子サッカーチームのオープンなムードはジュニアユースレベルから全般的な傾向としてあるようだが、試合中のポジション・チェンジなど自己判断(監督に確認はしてはいるが)が男子よりも多いように思われる。もっと言えば、ゲームコントロールの能力は男子よりも良い。この辺は、女子サッカーが置かれてきた厳しい環境が、彼女たちにそれを強いた面はあるのかもしれない。

さて名城である。

名城がカサレスに王座を追われた時、再戦は名城有利ではないかと思っていた。日本人世界戦で苦戦→再戦の場合、研究が功を奏してか勝利するケースを度々あるからだ。しかし結果は逆だった。1戦目が名城に分のある引分けだっただけに意外だった。その一方、カサレスに2度同じパターンで攻められた名城に、技術であれ何であれ上積みはあったのかと疑問だった。

その後の世界戦での敗戦も、何かがプラスされないと勝てないのではないかと危惧しつつ、見ればテクニシャン相手に世界を逸していた。

自分が向上しても、相手も同様に努力し進化する。だから追い付けないこともある。これはやったものにしかわからない。しかしそれも込みで自分を高めるのがアスリートの世界。女子サッカー、女子バレー、女子卓球、いずれも相手をにらみつつの、相手に勝つための、武器の備えがあった。

調印式で名城自身は「年がいってから強くなるパターンもある」と言った(西岡のこと?)。9月1日の挑戦で、彼のボクシングに何か新しい見るべきものはあるのか。彼が何を考えて試合に備え、また試合で何をどう判断するのか、まずそこを見たい。

リング禍の苦悩をモーチベーションに昇華させ初戴冠した名城 ― 今度は別の形の勝利でファンに感動を与えてほしい。

BYいやまじで

Comment

ウチ猫 says... ""
皆さんへのメールにも書きましたが、私は普通にいい勝負になると思いますよ。
ボクシングの場合、陸上や水泳の記録のように、客観的に実力を測る基準がないので、私のような素人には難しいです。で、テーパリ君を、あくまでその対戦者をモノサシにして測ると、私が彼の映像を見たのは、やる気ゼロの清水選手と序盤はどっこいどっこいの展開だったあの試合のみなんで、正直「並のチャンピオン」という印象です。
亀田2号との試合なども強い戦いっぷりだったようですが、そりゃあの相手ならパンチ当てること自体は容易じゃないの?って感じで。

まあ巷の評価は圧倒的名城不利、もう「やるだけ無駄」「恥を知れ」的な言われようですが、それならそれで、その評価に見合う圧倒的な力をテーパリが見せてくれれば納得ですが、名城選手も十分チャンスありと見ます。

ちなみに私の評価では、この両者よりも佐藤洋太選手の方が断然上なんですが、これまた世間の評価とは違うんですよねぇ。要するに見る目がないってことなんでしょうが(笑)。
2012.08.31 14:24 | URL | #nZcYMxmY [edit]
ベランダに鳩が愛の巣を・・・(旧徳山と長谷川が好きです) says... ""
ベンゲル監督(だったかなあ?フェリペ・スコラリだったかも)が日本人の良さを聞かれた時に「マジメさとアジリティ」と身も蓋もない意見を言ってましたが、指導者の言う事を聞きすぎるのが日本人の長所であり短所ですわな。この辺はコーチ=教育者と言う学校体育の弊害でもあると思います。それを置いてもとかく日本人は監督論・指導者論が好きでプレイヤーにはなかなか関心がいかない。ジーコジャパンやザック・ジャパンなんて言い回しは日本にしかないそうです。プロ野球の優勝監督がビジネスマン向けの自己啓発本出すのももはや出版業界の秋の恒例行事ですからね。メジャーリーグのチームをヤ軍とかマ軍とかレ軍とかいうのも『巨人軍』(タカラジェンヌと並ぶ珍フレーズだと自分は思います)からの流れなんでしょうが、スポーツチームは軍隊じゃないんだけどねえ。女子サッカーは選手にフォーカスした報道姿勢が顕著ですね。監督は裏方、主人公は選手というコンセンサスがないと日本人FWは育たないですよ。ただ『ヤングなでしこ』というネーミングセンスは相当ひどいと思います。女子サッカーをバブルで終わらせないという決意は感じますが。本来はJリーグのように親会社やテレビ中継に頼らない強い組織作りをこそするべきだと思いますが。気まぐれなメデイアに振り回されませんように。まあ贅沢な悩みですね。

名城のカサレス戦は二戦とも生観戦しましたが、一戦目はとても良い試合で、自分の近くに座ってた観客も口々に「良い試合やなあ」「おもろいなあ」と言ってました。スイッチしてパワーパンチを打って来るカサレスに対してブロッキングで距離を詰めてプレスをかけていく戦法がとてもスリリングでした。二戦目はヒットは多いのですが踏み込みがいまいちでダメージを与えることは出来なかった。結果カサレスは被弾しても下がらず、距離を支配することが出来た。テレビで見たムニョス戦の印象に近いゲームでした。名城のテーマはいかに右ストレート当てるかしかないと思うのですが、テーパリは気持ちよく打ち合ってくれる選手。明日は持ち前の勇気のある踏み込みでスリルのある接近戦を見せてくれると信じます。藤原トレーナーがいないことがどういう変化を生むかも注目したいです
2012.08.31 20:00 | URL | #- [edit]
いやまじで says... ""
>ウチ猫さんへ

私も名城に勝機ありと見てますが、テーパリはディフェンスと勝負勘が良いので、単なる力押しではうまくいかないのではと心配します。(私が見たのはDフランシスコ戦と清水戦。フランシスコ戦は動画がまだあります。)

能力を伸ばすのには長所を伸ばすのと短所を補うのと二つあるのですが、名城の場合そのどちらもできてないのではないかという疑問があってそれだときついかなと。

佐藤洋太については私も同感です。今後大きな試合で勝てばもっと強くなりますね。

>旧徳さんへ

女子サッカーの「自分でやるんだよ」ってムードは選手全体で受け継がれてきているように感じます。なでしこではノリさんがだいぶ注目あびましたが、それほどでもない。選手たちは過去の厳しさも知っているし今後の厳しさも覚悟しているところもあるんじゃないですかね。それも彼女たちの明るさの底にあるように感じます。

「ヤングなでしこ」はまんまだからいいかなと(笑 死語になっているサムライブルーよりは。

テーパリは短躯で頭が小さくパンチを当てにくそう。接近戦も厭いませんが細かいディフェンス技術があるので、そこで名城が空転させられるようだときついなと。コンディションが良さそうですが、力押しでテーパリを捕まえるのは難しいかなと。藤原トレーナーこの時期なんで東京にいるのって思ってましたがそうでしたか。これはその意味でも楽しみですね。
2012.09.01 00:18 | URL | #- [edit]
B.B says... ""
テーパリットの評価は僕の中では高いんですよね。

どうしてもドリアン・フランシスコを介して見てしまうもんで。
例えば佐藤洋太選手とやったとしたら、僕は中盤までにドリアンが捕まえるんじゃないか?とか。

とにかく下降線だったとはいえ、あのロベルト・バスケスを右ストレートズタボロにした試合、パナマのリカルド・ヌネスを大ナタのような左フック失神KOした試合が頭から離れない。

ボクシングに三段論法は成り立たないのは百も承知ですが、そのドリアンの強打を封じ込めた鉄壁のディフェンス、リーチの長さでも劣るはずが、常に左のリードを先に当てる勘の良さ。加えて確実にレバーを叩くボディブロウ、ドンピシャの左フック、スタミナと頑丈さも兼備したほぼ完成したファイターというのが僕のテーパリット評なんです。

まずい、なんだか僅かな名城選手への期待観が薄れてく・・
テーパリットが亀田大毅選手の時のようにガチンコ勝負に出てくれたら・・とも思うんですが名城選手を格下扱いはしないでしょうからね・・。

しかし、試合としてはテクニカルなインファイトが堪能できる試合になるのではないでしょうか?
それ以上にサムライ名城選手の意地がどこで出るのか。
ここに注目しています。
2012.09.01 17:25 | URL | #65fpICiI [edit]

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