カマセもとめて三千里!奇妙な海外遠征は国内ボクシング市場縮小の産物?!
ご無沙汰しております。久々の更新です。
昨年書いたとおり、試合の感想やボクシングについての日々の雑感はツイッターでやっております。あっちのほうが格段に議論しやすくアクセスも多いのでそちらをご覧下さい。HARD BLOW!のツイッター→https://twitter.com/hardblowblog
さて、本題です。当ブログは今年の五月にアップした記事で、強豪日本人選手がわざわざタイに遠征して負け越しボクサーと試合をするという変な興行が行われていることについて問題提起させていただきました→(当該記事『こんなところに日本人?!』)。
昨年来、負け越しタイ人やインドネシア人の招請基準が厳格化したことで(JBCによる当該通達→『告示 外国人ボクサーの招聘の規制について』『告示 タイ国所属ボクサーの招聘について』)国内での無気力試合は目に見えて減りましたが、クラブオーナーやマネージャーにすれば所属選手が再起戦や調整試合で負けるリスクがアップし頭の痛い問題となっていたであろうことは想像に難くありません。その結果「カマセが呼べないならいるところに行けばいいじゃん!」という逆転の発想が生まれ、わざわざ弱い選手と対戦するために手間隙をかけて海外遠征するボクサーが急増しています。五月に記事化した試合以降も、A級ボクサーやアマ実績のあるB級デビューの選手が、実績のない負け越し選手との試合のために次々と海を渡っています。
去る10月3日には六島ジムの峯佑輔選手と西田凌佑選手がタイで試合をしましたが、どちらの対戦相手も未勝利の選手。特に峯選手の対戦相手は0勝28敗。過去記事で言及した4月の興行では吉野ムサシ選手に勝ち星を供給していた選手で、2017年には千葉開選手や木村翔選手にも勝ち星を献上している日本人ボクサー御用達の選手であります。
BOXRECに記載されたタイでの試合結果
↓
https://boxrec.com/en/event/796001
峯選手も西田選手もアマ時代に国体優勝経験があるエリートと言ってよい選手です。なぜにデビュー直後にこんな試合をする必要があるのか理解に苦しみます。
そして肝心のボクシングメディアも招請禁止間違いなしレベルのボクサーとの試合を取り上げて「会長に感謝しています」なんてコメントつきの提灯記事にして賛美してしまう(BOXING NEWS掲載記事→六島ジムの近大出身コンビ タイでTKO勝ち)。誌面でカマセボクサーとの試合を批判してたくせに海外でやったらOKなんかい?というこの虚脱感ときたら…。
さらに今月19日には、日本から三選手が遠征して負け越し選手と対戦する謎イベントが開催(→https://boxrec.com/en/event/796466)。松浦大地選手が戦った選手は『実力不足』を理由に招請禁止リストに掲載されている選手です。
↑ゴンピチット・トーサンデット選手の招請禁止理由は『実力不足(日本での6戦全てKO負け)』…
招請禁止リストへのリンク→https://www.jbc.or.jp/web/invitation/invitation.pdf
一月にアメリカでハイメ・ムンギア選手と世界戦を戦って好試合を演じた井上岳志選手も登場していますが、世界戦までやった選手がこういう試合をやって何らかの意義があるのでありましょうか?
何も当方は、「毎試合毎試合ハイリスクの試合をしろ!」と言ってるわけではございません。ただこんな試合をしても、マネージャーやブローカー的業界人の方の利益になるだけで「カネと手間を使って勝ち星を買ってるようにしか見えまへんで」ということを言っているのです。
レコードや報道で表に出てるのは選手の名前であり、マネージャーの指示で海外行ってるだけなのに「こいつは勝ち星カネで買ってる奴やな」と選手が誤解されるだけです。
そして何よりも言いたいことは「プロボクシングは観戦スポーツなんじゃないの?」という根本的な疑問です。こういう遠征が頻発してるということは、現状の日本ボクシング界には「海外のほとんど観客がいない状態で負け越し選手を倒してレコードを作ったほうが、日本国内で会場を押さえてチケット売って興行するより気楽で安上がりだからこっちでいい」と思ってるプロモーターが結構いるということです。
よくファンや関係者が「プロボクシングは一敗が重い」なんていいますが、結局そういう風潮が間違った勝利至上主義に行き着いてこういう奇妙な遠征の温床になっていると感じられてなりません。
書くべきネタがあるので11月はあと何本か記事を上げようかと思っている(旧徳山と長谷川が好きです)