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HARD BLOW !

こんなところに日本人?!

 ご無沙汰しております。久々の更新です。

 昨年書いたとおり、試合の感想やボクシングについての日々の雑感はツイッターでやっております。あっちのほうが格段に議論しやすくアクセスも多いのでそちらをご覧下さい。HARD BLOW!のツイッター→https://twitter.com/hardblowblog

 ブログの方は長文でないとなかなか伝わらないインタビューや批評などに限定させて頂きます。

 というわけで本題です。まずは以下の画像とリンクをご覧下さい。BOXRECに掲載されている4月21日にタイのバンコクで行われた日本人選手が出場した試合の情報です。BOXRECへのリンク→ Sunday 21, April 2019

 タイ2_R

 プロモーターの欄にはTaishi Aoshimaとあります。日本人が関与しているようです。

タイ1_R

 もう一つは4月28日に行われた折尾ジム所属の栄拓海選手が出場した試合。BOXRECへのリンク→ Sunday 28, April 2019

タイ3_R

試合会場はラジャダムナンスタジアムになっていますが、当地ではムエタイの試合の合間に国際式の試合が挟まれることがあり、そういう形での試合出場でしょうか?

 先月行われたという上記二つの興行で4人の日本人選手は全勝となっています。「敵地で全勝とは逞しいじゃないか」となりそうな話ですが、対戦相手のレコードを見てみると日本人と戦った4選手はなんと全員未勝利!特に吉野ムサシ選手と戦ったKamon Singram選手は0勝27敗という凄い戦績です。日本ランカーの栄選手の相手は一敗一引き分けという戦績で、日本ランカーの対戦相手としては全く相応しくない選手です。 弱い選手を選んで戦うための遠征など、当の選手にしたところで気勢も上がらない『お仕事』で意欲を持って望めるとは思えません。


 なんでわざわざ海外まで言って弱い選手を選んで試合しているのか理解に苦しみますが、どうもJBCによるルール変更に理由があるようなのです。

 JBCのWEBに掲示されている以下の文書をお読みください。
                       ↓
 告示 タイ国所属ボクサーの招聘について

JBC告示_R


 これはJBCが2018年4月から、タイ人ボクサー招請時の戦績証明について制度変更をした旨の告示であります。内容を要約すると「来日タイ人選手の戦績は、従来のタイ国コミッションが発行した戦績証明でなく、世界中のボクサーのレコードを記載する国際WEBサイトBOXREC(http://boxrec.com/)のレコードを根拠とする」ということです。BOXRECはファンにとっても、選手の戦績を調べるには欠かせない便利なサイトですが、コミッション公式の戦績証明を超える信用度を獲得したことになります。

 この告示に先んじて2017年にJBCからはすでに外国人ボクサーの招聘の規制についてという来日ボクサー招請に対する守るべき規制基準が告示されていました。

 JBC2_R.jpg

 これらの規制は言うまでも無く、いわゆる『かませボクサー』相手の無気力試合をなくすことを目的にしています。前掲のタイ人選手に関する規制は、この戦績基準の設定を更に厳格に管理するための追加措置ということでしょう。逆に言うと、こういう規制が必要になる背景には『タイコミッションと組んで本来来日できないレベルの選手の戦績を粉飾して来日させているブローカー的な存在がいた』ということでしょう。

 実際この一連の規制以後、今までのように対戦表を見ただけで結果が分かってしまうような試合や、素人同然の無気力選手の来日は目に見えて減少し、アンダーカードでも意欲のある選手による内容の良い試合や日本人選手が倒される番狂わせがかなり増えました。再起戦や調整試合で力が下の選手と戦いたいと言う需要は確かに存在しますし、毎試合潰し合いの試合をする必要はありませんが、モノには限度ちゅうもんがあります。観光気分でやってくる半分素人のような選手の試合は無くなるに超したことはありません。

 こうした流れはファンサイド、競技面から見れば歓迎するべきことでも、逆にプロモーターや個々の選手の後援者からすれば困ったことでもあるようです。「こんな規制したら安価で弱い選手が呼べなくなる」という旨の『本音』をブログにアップした大手ジムの会長もいらっしゃいました(現在は削除済み)。勿論興行は綺麗ごとだけでは出来ません。少子化の影響でますます志望者が減るなか、好適な対戦相手を探すのも簡単ではないでしょう。タイから都合の良い選手が来てくれるのは結構な話なのでしょう。

 ですが、こうした自分が契約・後援している選手を弱い選手に当てたいという願望が、時として恐ろしい結果を生むことがあります。

 以下の記事をご覧下さい。

  渡部あきのりOPBF戦延期 横浜の興行でリング事故

 去る3月31日に横浜で行われた溜田剛×レネリオ・アリザラの6回戦で、KO負けしたアリザラ選手が右急性硬膜下血種で開頭手術となったのです。アリザラ選手はなんとか一命をとりとめたものの、大変深刻な事故であることに変わりはありません。この試合は溜田選手がA級ボクサーであるにも関わらず6回戦で挙行されました。アリザラ選手の戦績が前掲の来日選手の基準に抵触しA級の試合と認められなかったためです。プロモーターも選手の所属ジムも有名な大手の興行でもこのような危険なマッチメイクがまかり通っているのが現実です。

 そもそも競技人口の減少という根本的問題を解決しない限り、その場しのぎで外国籍選手に頼っても付け焼刃に過ぎません。新人王のトーナメント表はスカスカ、興行のラウンド数は減る一方という現状を見るに、いかにボクシング界の魅力をアピールして若い選手を呼び込んでいくか?という対策が急務だと思います。

 今年もこういう地味な記事を上げていこうと思っている(旧徳山と長谷川が好きです)