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HARD BLOW !

MBSドキュメンタリー 『あるボクサーの死 ~精神医療を問う父の闘い』を見た

 先だって日曜日の深夜に関西地区で地上波放送されたテレビドキュメンタリー『あるボクサーの死 ~精神医療を問う父の闘い』を見ました。

毎日放送の番組HP
 
 大阪の堺市にある勝輝ジムのプロ第一号だったプロボクサー武藤通隆選手が自殺した事件について、精神医療のあり方を問うという大変に重いテーマを扱った内容でした。

 武藤さんは大阪教育大学を卒業後、高校で数学の非常勤講師をしながらプロボクサーをしていたという異色の選手でした。

 ボクシングの練習後に精神の不調を訴えて訪れた精神科で統合失調症の診断を受けて入院した武藤選手は、身体拘束や向精神薬の注射が必要な状態であるにもかかわらず病院を退院させられて、その後自殺をするにいたりました。その背景には国の精神科の診療報酬についての制度変更の影響があったのではないか?という指摘が番組中なされます。

 男手一つで武藤選手を育てたという父親の浩隆さんは病院を相手取った裁判を闘いつつ、同時に精神医療のあり方についても国に対して積極的に提言をされています。

 統合失調症の発症とボクシング競技には直接の因果関係は無いのかも知れませんが、頭部を打撃することや過酷な減量、試合の恐怖や敗戦の心理的ダメージなどのボクシングにつきものの極限状態が精神にもたらす影響については分からないことだらけです。ボクシングというスポーツを考える上でも様々な示唆にとんだ内容であると思います。

 関西ローカルの番組ですがMBSの有料動画サイトで今後見れるようになると思います→MBS動画イズム 「映像シリーズ」

 ボクシングファンには是非見ていただきたい内容だったので、ご紹介させて頂きました。

 文責 旧徳山と長谷川が好きです

再起戦はまたも世界ランカー 大沢宏晋スパーリングレポート&インタビュー

ポスター_R

 今年四月に元世界チャンピオンの久保隼選手に敗れた元OPBF・WBOAPフェザー級チャンピオン大沢宏晋選手。

 不当なサスペンドからラスベガスでの世界戦、再起ロードまで大沢選手についての過去記事はこちらから→過去記事一覧

 進退をかけることを広言して臨んだ試合だったことからその後の動向が注目されていましたが、来る12月22日に大阪で再起戦を戦うことが正式にアナウンスされました。対戦相手はコロンビアのベルマー・プレシアド選手。ポスターではWBA10位となっていますが、現在のランキングは9位。昨年フランクリン・マンザネラ選手(フリオ・セハに勝利)に勝ってランク入りした30歳です。

プレシアド×マンザネラの動画
    ↓


 大沢選手は世界戦でオスカル・バルデスに敗れて以降5試合目ですが、うち4戦が世界ランカーとの対戦で、そのうち三戦が中南米の選手です。年齢的にも常に後がない大沢選手にとっては試合自体がリスキーであるのは勿論、フェザー級近辺の世界ランカーを中南米から呼べばファイトマネーやエアチケットの経費などがかかり招請費用は高額となります。このような試合が連続して組めるのは「大沢の試合が見たい」という熱心なファンがいるからこそ。そしてお手ごろのアジアンボクサーを呼ぶ安易なマッチメイクだをしないからこそ、ファンも意気に感じてチケットを買っているわけです。
 
 試合間隔は充分ということで、11月の中旬の時点でかなりスパーリングを積んでいるという大沢選手。去る11月16日に堺東ミツキジムに出稽古に行くと言うことで、そちらにお邪魔してスパーの様子を見学してきました。

 スパーの相手を務めるのは11月25日に刈谷で東洋ランカーとの試合を控えて、調整の最終段階だった横川聡也選手(試合結果は見事KO勝ちで東洋ランク入り確実)。

スパー7_R
スパー9_R
スパー10_R
スパー5_R
スパー4_R
スパー1_R


試合直前の横川選手は右を狙った飛び込みのタイミングが印象的。一方大沢選手はキレのあるジャブとパワフルなボディが有効でした。

スパー3_R
スパー後は意見交換

 練習後に大沢選手にお話を伺うことが出来ました(大沢選手の発言は赤文字

HARD BLOW!(以下HB)「負けたら引退という覚悟で久保戦に臨んで結果的に敗れましたが、再起と言う決断になりました」

大沢「それ言われることは覚悟してます。自分は打ち合ってボコボコにされて負けたなら納得いくんですよ。でもあんな試合で『負けた』と言われてもという話で」

 その試合については当方もレポート記事を掲載しています。→一ヶ月で三つの格闘技興行を見て感じたこと

 ひたすら密着して距離を潰す久保選手が僅差判定勝ちしたものの、世界戦への期待値が上がるような試合内容では正直ありませんでした。勝たなければ人が離れる、戦績に傷がついたら後退するという構造は分かるのですが、プロとして「勝てばよい」という試合をしていればいいのか?という疑問を呈する内容になっています。実際勝った久保選手には勝ってもチャンスが来ていません。

HB「密着して打ち合いを避けるような試合をして勝っても結果的に期待値は上がらないですよね」

大沢「あの試合の後、自分よりむしろ周りの人が『あんなんで終わりやなんて冗談や無いで』って再起を後押ししてくれた感じですね」

HB「以前会場でお会いした時は『階級を上げるかも』という話もされていたと思うのですが...」

大沢「自分では分からなくても減量の影響で動きが悪かったのかな?と思ったりして...。ただ今回は対戦相手が見つかったので結局階級アップは無くなりました」

再起に向けて、技術・戦術の見直しの必要を感じたといいます。

大沢「『良かった時と何が違うんやろう』と昔のから自分の試合のビデオを何回も何回も見直して。それでガードの手の位置が高くなってることに気付いて、下げたらジャブが出しやすくなって視野も広くなって、調子が戻ってきたんです」

HB「元々ジャブの評価は高かったですけど、右が強くなってから右につなげる倒すボクシングになって、もう一回原点に戻ってバランスをとったと言う感じですね」

大沢「本当に原因はシンプルなことなんですけどね」

昨年からどこか手数がスムーズに出ず膠着する試合が続いていたのは確かでした。窮屈だったスタイルが、次の試合では変わっているでしょうか?

競技とは無関係のトラブルによるどん底状態から、強敵との連戦でチャンスを切り開いてきた異色のボクサー大沢選手のキャリアも、いよいよ最終盤に入って来ました。勝ってもう一度世界ランクに返り咲き、世界へのチャンスを掴むことが出来るか?

これから試合に向けてレポートを続けていこうと思います。お楽しみにお待ちください。

(ラグビーW杯のチケットは全滅だった)旧徳山と長谷川が好きです