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HARD BLOW !

一ヶ月で三つの格闘技興行を見て感じたこと

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4月28日の久保隼×大沢宏晋戦より

四月から五月の連休にかけて、三つの格闘技興行を続けて観戦しました。今回は三つの興行を見て感じたことを書いていきたいと思います。

その前にちょっとお断りを。

最近はネット環境も2000年代と大きく変わり、観戦記や試合の感想はツイッターにあげた方が、速報性や議論のしやすさが段違いで、実際ページビューもかなり差があります。ですので、今後ブログは考えをまとめた上での評論や、一部好事家のニッチな需要を満たす(笑)インタビューやレポートなどの長文を載せる場所にしていきたいと思っています。

今後ご意見、ご感想はHARD BLOW!のツイッターまでよろしくどうぞ。直接会って文句を言いたいと言う方も大歓迎ですよ
       ↓
@hardblowblog

まずは4月14日の、今年初の生観戦となった久高寛之×翁長吾央と久田哲也×板垣幸司のダブル日本タイトルマッチの感想から。

沖縄にルーツをもつ者同士の決定戦となったスーパーフライ級の久高×翁長は、後がない二人のボクサーの日本タイトルへの執念がにじみ出る、なかなかに味わい深い内容でありました。

沖縄タイムスのWEBに、この試合についての素晴らしいエッセイが掲載されています。
[大弦小弦]プロボクシングの比嘉大吾選手が初めて敗れた日…

挫折を経たベテラン同士の意地のぶつかり合いを的確に描写しつつ、直近の世界戦で体重超過をして挫折を味わった比嘉大吾選手にエールを送るという人間味あふれる内容で、無味乾燥な記事ばかりのスポーツ紙や専門誌のボクシング記者は見習って欲しいと思えるようないい文章でありました。

メインの久田×板垣は、強打を狙いすぎて手数が乏しい久田に対して、板垣が軽快な出入りを生かしたボクシングで巧みにペースを握って先行する展開。終盤ようやく久田が手数をまして挽回したものの、板垣逃げ切りかと思いきや久田の僅差判定勝ち。久田は、板垣の速い出入りと軽快な連打につかまって、ここ数試合のパワーを生かして重い左で削って右の強打に結びつけるという展開を作れず課題の残る内容でありました。

日本タイトルマッチが二試合ということで集客はなかなか良かったのですが、やはりセミが終わったら帰ってしまうお客さんが結構いてメインが少し寂しい雰囲気に...。10回戦が二試合判定決着になったら時間的に居られなくなる人が出るのは分かるのですが、もうちょっとなんとかならんもんでしょうかね?

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続いて4月28日に神戸で行われた久保隼×大沢宏晋戦。

この日は前座で芦屋大学の出身の山内祐季選手と近畿大学出身の佐伯霞選手の公開プロテストが行われたのですが、なぜか「テストですので声援など送らないように」というアナウンスが。じゃ公開でやる意味なくない?と思いました。
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会場で佐伯選手のプロテストの観覧に来ていた澤谷廣典氏にもお会いしたので少し立ち話。当方はずっと追いかけている大沢選手の応援ですが、その場に居たアマ関係者の皆さんは軒並み久保選手サイドの応援でありました。
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久保選手はリングで見ると一際大きく、大沢選手とはかなり体格差があります。リングに上がると山下会長と手を合わせて相撲のような押し合い。これが今考えたらこの後の展開の複線になっていました。

1Rのゴングがなると大沢はボディストレートを伸ばしますが、久保のジャブと左ストレートが当たってヒットを稼ぐ。ラウンド終盤大沢の右もヒットするも手数は明確に久保。

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2Rには久保の左ストレートで大沢が鼻血を出しますが、ラウンド終盤大沢の右が当たって久保の腰が落ちる場面も。やはり大沢はパンチがあります。とはいえポイントは久保か?

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3Rも久保のワンツーにキレがあり、左が良く当たる。大沢は密着から右を当てるもポイントは久保。このあたりから徐々に揉み合い、密着が増えてくる。

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4Rも久保の左が当たるも単発気味。久保の単発の左が当たって密着という展開が増えて、膠着気味になってくる。
5Rに入ると大沢はポイントを意識してか、展開を変えようとプレスを強め、久保はバッテイングで流血。大沢は中間距離でのいきなりの右が有効。ここからポイント挽回できるか?と思いきや、大沢がもみ合いの中でホールディングで減点。クリンチが多いのはお互い様だし、少し唐突な感じがしました。
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6Rも中間距離で大沢の右が有効。久保は打っても打たれても前進&密着が増える。
7Rは大沢の右のビッグパンチで久保の腰が落ちる場面も。さらにホールドで久保が減点。これでポイント差は大分詰まったか?
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終盤も久保のジャブは切れているものの単発&密着が増える。もみ合いの多い展開を受けて大沢応援団からはブーイングが。
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終盤は打っても打たれても前進&密着の久保と、中間距離で右を狙う大沢という展開。見せ場となるような打ち合いがない、噛み合わない終盤を経て試合は終わりました。

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判定は2-1(97-95、96-93、94-95)で久保勝利。確かにヒットは久保が多かったですが、打っても打たれても中間距離を嫌って密着し、フィジカルを生かして押すという戦略一辺倒で、相撲のぶつかり稽古を見せられたような気分になりました。勝ちたいのは分かるのですが、一応安くないお金とって見せてるエンタテイメントとしてこれでいいの?と感じた次第。ボクシングのサバイバルマッチは、得てしてこういう膠着する展開になりがちなところはあるのですが、これは良い試合をすればファンから評価されてキャリアがつながっていくという信頼関係が無いがゆえではないでしょうか?というかお客がボクシングのファンでなく、選手個人を応援してる人ばっかりなので、勝たないと次につながらないんだよなあ。

別に大味な殴り合いが見たいと言ってるわけじゃないのです。例えば「世界ランカー同士の試合があるのか」と思って予備知識無しに見に来た人が「なかなか面白かったな。またボクシングが見たいな」と思わせるようなスポーツになってるか?ということです。

採点やレフェリングについても、北村ジャッジは10-10(減点を含まず)が4Rもあり、半分近く優劣をつけられないというのはジャッジとしてどうなの?と感じたり、川上レフェリーは自分は好きなレフェリーなのですが、最初の減点と帳尻合わせのような久保の減点に、終盤の闇雲な密着に対する注意がなかったことなど、こちらも疑問。

当方は大沢寄りで見ていてバイアスがかかってるとは思いますが、彼が負けたから言ってるわけでなくちょっといろいろモヤモヤする試合でありました。

それと専門誌やスポーツ紙の観戦記が「久保は後半も前進し、正面から打ち合って試合を制した」というトーンの記事ばかりですが、現地で観戦した身としては大いに違和感ありです。むしろ久保選手の前進は、密着してパンチを出させないようにするためじゃなかったですか?

勝つための戦略として密着するのはルールの枠内だから別に良い。ただ打ち合ったと報じるのはちょっと違いやせんですか?と思いました。

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続いてGWど真ん中の5月3日、大阪府立体育館で行われたキックボクシングの『KNOCK OUT』の興行のことを少し。

カードゲームやトレーディングカードの開発で急成長した、株式会社ブシロードが新たに手がける新興キックイベントの『KNOCK OUT』は、昨年首都圏で大ブレイクした連続興行。スキャンダルが続出し、内部統制に問題をかかえるK1や、2000年代のTV格闘技の残滓を大きく引きずるRIZINを尻目に、新たな格闘技メジャープロモーションとして着実な成長を見せています。新日本プロレスを買収してプロレス界に参入すると、あっという間に斜陽と思われていた団体を建て直し、新しいファン層を開拓したブシロードが、新規事業としてキックボクシングに参入してきたことは、個人的には大変喜ばしいことです。大企業が直接経営することで、格闘技興行にこれから果たしてどのような変化・影響が生まれるのでしょうか?

そんな『KNOCK OUT』が関西発上陸ということで、勉強もかねて観戦に行って参りました。

会場のエディオンアリーナで、東京から遠征に来た某マニアと合流。この人は、私にキックやSBの興行について色々教えてくれる知恵袋的なありがたーい先生でございます。

この日の当日券はなんと立ち見2000円。初期投資としてのお試し価格ということなのでしょうが、それにしても安い。これも業績好調な大企業が運営していて、新規事業として投資しやすいという環境があってこそ可能になることです。個人経営のボクシングジムではとても出来ません。

会場の地下の第二ホールに入ると、小さいながらもビジョンがあり、照明も効果充分。音響機器も持ち込まれており音圧充分で音質もクリア。半月前に同じ会場で見たボクシングのダブル日本タイトルマッチは、立ち見で5000円。勿論試合のクオリティは素晴らしいのですが、会場は蛍光灯で白々と明るく、音響機器も会場備え付けのもので故障していて音は割れててガビガビ。正直、殺風景&低クオリティなものでした。

関係者と観客のゾーニングもボクシングとかなり差がある。控え室に友人や取り巻きがドヤドヤと入っていけるようなつくりになっていない。会場の後ろで封筒にお金を出し入れしてチケット代の精算をやってる選手も当然居ません(笑)。実は久保×大沢の会場でのこと、私の席の真横で椅子に座っていた若いジム生のところに、井岡一翔の応援ジャージを来たジム関係者と思しきオジサンがいきなり駆け寄ってきて「オドリャー」とどやしつけたかと思うといきなりビンタをするという事件があって、客の前でやることかよ...と心底ゲンナリしたのでありました。KNOCKOUTの会場はそういうバイオレントな雰囲気は皆無でありました。

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何の予備知識も無い人はたしてどっちを見ますか?という話であります。

興行の仕切りもプロフェッショナルで、映像と音響とアナウンスの連携もスムース。選手のコールはリングインの時に行い、両者がリングに上がったらすぐゴングというテンポのよい進行で中だるみもなし。照明がリングにしか当たっていないので、観客はみな集中してリングを見ています。ボクシング会場によくいる試合中に試合見ずに立ち話してる人や、ラウンド中に席を立ってウロウロする人も殆どいません。ローブローやダウンシーンがあればすぐにビジョンでリプレイが流れるところも、大変プロフェッショナルでした。要はボクシング興行が手作りなら、こっちはプロがやってるショウビジネスという空気が濃厚なのです。

試合も様々なタイプの対戦が組まれており、マニアの解説を聞きながら堪能。見事な回転ヒジでKO勝ちしたタネヨシホ選手が個人的なMVPですが、メインを任された大月晴明選手の華のある試合も最高でした。

このマニア先生が以前から私に言っていたのは『キックのファンサーヴィスと興行を盛り上げる工夫は、ボクシングよりかなり進んでる』ということでした。会場で次の興行のチケットを販売していたり、受付で試合に出ない選手がサイン会をしていたりといった工夫が普通に行われているのです。またビジョンで選手のプロフィールや試合の見所を流して観客に周知したりといったところも親切。

ボクシングファンはとかくキックや総合を馬鹿にする権威主義者が多いですが、はっきり言って経営面も含めてキックの方が進んでることはかなりあります。特に旧弊なファンがもっている、プロボクシング観戦を巡る陰気な精神主義・権威主義は害毒ですらあります。

ブシロードの参入で旧態依然の格闘技興行の世界に新風が吹き込まれて、沈滞した空気が刷新されることを強く望みます。

JリーグのV・ファーレン長崎は、ジャパネットたかたの創業者高田明氏を社長に迎えることで、破産寸前の経営危機から財務状況がV字回復し、成績も上昇。社長交代から、わずか一年でJ1昇格を果たしました。リクルートのアジア法人トップからヘッドハントされJリーグチェアマンに抜擢された村井満氏は、DAZNとの巨額放映権契約を締結し、Jリーグに一千億円もの巨額の手元資金をもたらしました。

ボクシング界もまともな投資、まともな経営者を呼び込める世界を目指せばまだまだポテンシャルはあると思います。

大沢選手の敗戦がとにかく残念だった(旧徳山と長谷川が好きです)