前回に続き澤谷氏のインタビューをお送りします。

近畿大学ボクシング部前総監督 澤谷廣典氏
その前にアマチュアボクシングの判定の『政治性』について簡単におさらいを。
ソウル五輪のロイ・ジョーンズjrは言うに及ばず、2012年のロンドンオリンピックでは、清水聡選手とアゼルバイジャン人選手との対戦で、何度ダウンをとってもダウンカウントがとられず、一旦清水選手が判定負けしたのち日本側の抗議を受けて裁定が覆った、というややこしい事件ありました。このときは「AIBAがアゼルバイジャン政府(の息のかかった富豪)からの多額の貸付の見返りに、金メダル二個の約束をしている」という疑惑をBBCが報じましたが、これは真偽は怪しいようです。
ただ、そのような疑惑がでる背景には、AIBAの属人的な組織運営についての不信感が根強くあるのです。
2006年に白夜書房から出たムック本「あしたのボクシング No.2」(←クリックするとアマゾンに飛びます)には、トップアマ出身プロ代表として内山高志選手と佐藤幸治選手の対談が掲載されています。その中で佐藤幸治選手はパキスタンの地元判定の酷さに言及し、内山選手は不当判定で暴動が起きた経験を生々しく語っています。
前回の記事で触れた岩手国体の成年の試合も、アマの関係者の間では試合直後からすでに大きな話題となっており、昨年10月の時点で村田諒太選手も言及していたということを、記事をアップした後ある方から後教えていただきました。

村田諒太選手のFACEBOOK記事へのリンク
この画像は私が前回の記事でアップしたのと同じ2016年10月7日の岩手日報の切り抜きで、昨年秋の時点でアマボクシング関係者の間で話題となり、SNSを通じて回覧されていたことが分かります。やはり関心は高かったようです。
正直、採点競技が逃れられない宿命なのかも知れませんが、ボクシングはプロ・アマ問わずそういうことが起き易い風土・素地があるということではないでしょうか?プロボクシングにも政治的な判定やおかしな裁定はありますが、プロは少なくとも世間の目に晒されており、露骨な不当判定は容赦なく批判されます。一方アマチュアボクシングは採点基準も不透明で、注目して見ているファンもプロに比べたらずっと少ない。それがオリンピックや国体で『部外者』の目に晒されると、アラがより目立って見えてしまうということではないでしょうか?
というわけでインタビューの続きです。後半はプロアマの関係についての話を中心に、まずは日本ボクシング連盟(以下日連)の山根明会長と大手ジムの関係ついて…。(澤谷氏の発言は全て赤文字)
澤谷「帝拳ジムは日連に1000万円を二回支払ってることを認めてますけど、その他にも、色んなジムから貰う試合のチケットがあるんです。村田諒太や井上尚哉の世界タイトルマッチの中継見てたら、リングサイドに山根会長が白いスーツ着て映ってますやろ。あれは全部、プロのジム側がチケットを提供してます。テレビの画面に映る位置で、白いスーツ着て観戦することで『俺はこういう場所でタイトルマッチが見れる人間やぞ』とやってるわけです。笑い話とちゃいますけど、私が山根会長と観戦する時にたまたま白い服着てたら、翌日、連盟の副事務局長を介して『山根会長が目立たないから今度はもっと地味な色を着るようにしてくれ』と言われたこともあります(笑)。
帝拳ジムは20~30枚チケットをくれるので、山根会長は貰ったチケットで色んな人を招待しては恩を売ったり、時にはチケットを転売して自分の小遣いにしたりしてます。井岡ジムも毎回、スーパーVIP席チケットを複数枚提供してくれてたんですが、席が帝拳ジムに比べて2列目なのでへそを曲げて最近は行かなくなりました。井岡ジムの好意に背く本当に罰当たりな話です。」

服装が問題となった日の写真だそうです…
言うまでもないことですが、チケットは有価証券であります。どのように会計処理されているのか分かりませんが、税金も投入されている団体のトップが、こういう不透明な利益供与を受けていても良いのでしょうか?
そしてこのチケットが、実は近大ボクシング部の名城信男ヘッドコーチ(元WBAスーパーフライ級チャンピオン)の冷遇や不可解な処分と関係があるというのです。
澤谷「プロの時、名城コーチのおった六島ジムが、試合のチケットなどを持って挨拶に来んのが山根会長には不服なんですわ。でも、そんなもん名城とは何の関係もないことでしょ?」
HB「そもそもタダでチケット持ってくる必要なんかないですよね。」
澤谷「そうですよ。処分理由の『去年の国体で、会場横のウォーミングアップルームに他人のIDつけて入って教え子のミット受けしたから』というのも無茶苦茶ですわ。試合前にミット受けできる人間がおらんから、困って電話してきた教え子に対応しただけやのに、それだけで大会の会場へ出入り禁止になるなんておかしいでしょ?しかも、その時同じ場所に、他人のID下げて中に入ってる現役プロボクサーもおったらしい。そっちはカード貸したほうも、入ったほうも、何のお咎めもなしです。
山根会長は『名城の処分は理事会の全会一致や』と言うてたんですけど、あとからいろんな理事が『名城君処分されたんですか?何があったんですか?』と聞いてくる。『おかしいやないか、お前らホンマに知らんのか?』となって、理由を説明したら『そんなくらいのことで、そんな処分出されたんですか?』と驚きを通り越して呆れてました。名城は他にも、かいわいそうなくらい苛められとったんです。鈴木監督の伝手で自衛隊に出稽古に行こうとしたら『あいつは入れるな』と手を回されたり。」
統括団体のトップが、処分やライセンスの発給を盾に権力的に振舞うというのは、我々が過去取り上げて来たプロの問題でも沢山ありました、アマも同じようであります。
澤谷「山根会長は『アマの選手は日連が金かけて育てて来た』とことあるごとに言いますけど、別に自分の金じゃないでしょ?もっと言えば税金(JOCやTOTOの助成金)ですよ。プロに行くなら返せというなら、国に返すべきです。」
HB「山根会長の代になってから、国際大会で判定でやられてたのがポイントが入るようになった、勝てるようになった、という声もあるようですが...。関係あると思いますか?」
澤谷「関係ないでしょ。たまたまやと思います。メダルも選手の力ですよ。」
今後オリンピックへの参加問題は一体どうなるのでしょうか?
澤谷「IOCが認めてる以上は、法に基づいてせな仕方がないと思う。ただ実力主義で、アマもプロも入れて、有名なプロボクサーがリングに上がることで、人気も出ますよね。ただまあ今のアマの状況では、今すぐというのは難しいのも事実ですよね。」
今回の告発の動機については、様々な憶測が出ていますが、この問題は今後どのように進展行くのでしょうか…。最後に胸中を伺いました。
HB「全国の関係者の中に今の状況に不満を持っている人はいないんですか?」
澤谷「それは一杯いますよ。ただ、やっと今回、山根会長なって6年なりますけど、初めて私が反逆と言うか告発の狼煙あげたわけです。そうしたら『澤谷さんの告発を見て、今まで分かっていながら声を上げられなかった自分がはずかしい』と連絡をくれた先生もおるし、ぽつぽつとは動きは出てきてます。みんな元をただせばスポーツマンで、教育者ですもん。
ただ、逆らったら自分の立場も悪くなるというのもある。洗脳されてるようなもんじゃないですか。それを、どこかで気付いて力を合わせてくれたら、そこだけなんですよ。
私の今回の動きを、所詮権力争いや、次の会長のなろうとしてるんちゃうか?と言うてる人がいるのも知ってます。でも本当にそうじゃないんですよ。山根会長がおらんようなっても同じ穴のムジナが後とったら同じなので、最後まで見届けますけど、そういう邪念じゃないけど、気持ちがあったらダメです。爆弾巻いて山根会長に抱きついてあの世に一緒に行ったるぞ!というくらいの気持ちじゃないと、とても戦えない。」
最後は少し物騒な例えが出ましたが(笑)、病み上がりとは思えぬ意気軒昂ぶりでありました。
確かについ先日まで「オヤジと息子」と呼び合って、蜜月関係と見られていた同士に諍いが起これば、何かあったと勘繰るのが当たり前であります。告発の動機については、私も推し量るしかありません。
ただ澤谷氏の提示した告発内容は極めて具体的であり、日本ボクシング連盟についての多くの重要な問題を含んでいます。
今回当方が記事にしたことも、あくまでお聞きした情報の一部分に過ぎません。今後も取材を進めつつ事の成り行きを見て行きたいと思います。
AIBAの世界選手兼やってることがほとんど知られていないことに危機感を持ったほうがいいと思っている(旧徳山と長谷川が好きです)

前近大ボクシング部総監督 澤谷廣典氏
『村田諒太を私物化する「ボクシング連盟のドン」』と銘打たれた、山根明会長告発記事が、週刊文春8月10日号に掲載されて以来、沈黙を守っていた日本ボクシング連盟(以下日連)ですが、8月18日になって公式ブログ上に『文春砲』への反論とも言うべき文書を掲載しました。
日連ブログ反論記事へのリンク→「週刊文春」の記事について
反論文中で日連は、文春報道を全否定していますが、そこは週刊文春側が続報で裏付けと反論を出してくれるでしょうからそれを待つとしましょう。
私が、この文書で個人的に気になったのは、週刊文春へ情報提供した、前近大ボクシング部総監督である澤谷廣典氏へのむき出しの敵意であります。「山根会長への反逆者は許すまじ」という、人格攻撃とも言うべき激しい筆致に、私は思わず鼻白んだのでありました。
以前から日連のブログには、海外や国内の大会で活躍した選手や海外からの賓客、プロ側の重鎮などが山根会長に『謁見』する様子を伝える写真や記事が多数掲載されており、どこかの国のニュースのような個人崇拝的ノリがありましたが、ここに来て組織防衛のために攻撃性がより先鋭化しているという印象です。
直接取材が信条の当HARD BLOW!としては、ここでも当事者のお話を伺うしかない!ということで、山根会長に反旗を翻した告発者、澤谷廣典氏にFACEBOOK経由でコンタクトをとってみたところ、インタビューを快諾していただき、じっくりとお話を伺うとともに、様々な資料も見せて頂きました。
元々は赤井英和総監督(当時)の後輩であると言う個人的な結びつきから、部員による強盗事件で廃部状態だった近畿大学ボクシング部の復活プロジェクトに関わったと言う澤谷氏は、ボクシングには門外漢でした。そこから個人的な人脈を駆使してマスコミなどに働きかけながら、学生選手や大学当局と協力してボクシング部を復活させ、一部に返り咲くまでの強豪へと部を育て上げてきました。
実は澤谷氏は、今年の三月に高校選抜大会の視察に訪れていた岐阜で、脳梗塞に見舞われ、生死の境を彷徨うという経験をしており、この取材時もリハビリ中。当初は、担当医師から確実に後遺障害が残る、と言われたそうですが、現在は右手の指二本と顔面にやや麻痺が残る程度にまで驚異的な回復を見せており、取材当日も特に何の障害もなく会話が出来ました。
インタビューを読んでいただく前に、筆者のこの問題に対するスタンスを間単に説明しておきます。週刊文春誌上では、山根氏の金銭問題や強健的な組織運営、女性問題などが俎上にあがっておりましたが、当ブログはボクシングブログであり、何を置いても問題とするべきなのは「日連が政治力を持って特定の選手を勝たせているのではないか」「IOCやAIBAと方針をたがえるような組織運営をしているのはなぜか?」「プロとなぜ協力関係築けないのか?」と言う疑問であります。競技の本質を歪めているかもしれないこれらの問題を、日連の内情を良く知る澤谷氏に質すのが今回のインタビューの大きな目的でありました。
澤谷氏はざっくばらんに、その胸中と数々の疑惑について語ってくれました。(澤谷氏の発言は赤文字)
澤谷「今、アマの選手はヒーローインタビューする時には、猫も杓子も『山根会長のおかげです』と言います。これ言わないやつは全部チェックしてますからね。
近畿大学が、二年前入れ替え戦に勝ってマスコミは、テレビも新聞も山盛り来てくれてました。あくる日、どの新聞見ても『近畿大学7年ぶり復帰。赤井男泣き。』とダーっと出たわけです。で、我々もコメント出してたんですが、そこに『山根会長のおかげです』と言う言葉がないから、エラい私に怒って来たんです。そういうことを露骨にトップが要求してくることは『情けないな』と思ったんですけど、私は父親もおりませんので山根会長との関係は『オヤジと息子』やという気持ちもあったし、(山根会長に)いいところも勿論あるし、我慢して尽くしていかなアカンと。ただそれもあくまで、近畿大学のため、近畿大学ありきですよ。選手を世界の舞台に送ってもらうには山根会長の力も必要や、と。そういうことで私も我慢に我慢を重ねてきた。
今回の話でも、事件にもならんような私のことを拾ってきて『暴行やから処分する』『事件や!』『事件や!』というけど、何が事件やと。」
『ボクシングビート』誌が2017年7月号で報じた、当時総監督だった澤谷氏による『コーチ暴行事件』が氏の総監督辞任の直接の引金となりました。その顛末は澤谷氏によると以下の様なものでした。暴行事件があったのは今年の3月18日のことです。
澤谷「当時はボクシング部が、新しい寮に引越す費用の700万円の金策のさなかでした。道場で仕事をしてたら、そこにコーチのAがやって来て『日連のコーチ登録費3万円がないんで、出してくれないか』と言うて来たんです。私は金策で頭が痛い状態で、というかこの二日後に脳梗塞で倒れたわけで、実際に頭が物凄く痛くて体調は最悪でした。そんなときにわずかな金額の話を言ってきたので『おまえそれぐらい自分でちゃんとせい』と言うたら、Aは『ほんなら辞めますわ』と言い返して来たんです。
私は最初は『ほんなら辞めんかい』と言って無視してたんですけど、段々頭にきて、Aに詰め寄って足を蹴り上げて、そのあと道場ではアカンと思って場所を変えて、『お前カネ、カネ言いやがって、ええ加減せいよ!』言うて平手打ちもしたんです。」
暴行があったのは事実でした。そのことは澤谷氏も認めています。どのような事情があったにせよ、やってはならないことです。
その二日後、澤谷氏は旅先の岐阜で脳梗塞を発症し、死線をさまよいます。岐阜の救急病院で意識が戻った後、澤谷氏は見舞いに来たボクシング部の関係者からAコーチが引き続き練習指導に来ている事を聞かされて安堵します。
澤谷「Aは大学時代の後輩の弟で、その後輩から『Aのことを頼むで』と言われてきたような関係です。コーチ業以外の昼間の仕事の身元引受人も私がなっています。今までコーチ業に関わる経費もほとんど私が負担してきました。ずっと面倒見てきた人間が甘えたことを言ってきたから、パチンとやってしまったわけです。」
『パチンとやった』という表現が、適切かどうかは暴行を受けた当人の捕らえ方とは違うかもしれませんが、澤谷氏にとっての認識はそのようなものでした。脳梗塞発症から10日後の3月29日、大阪の病院に転院した澤谷氏のもとに、後にセクハラ・パワハラ事件で諭旨解雇となる鈴木康弘監督がAコーチを伴って現れ、そこで話が出来たことで澤谷氏はAコーチとは『和解が出来たものと思っていた』そうです。
ところが、それから一ヶ月以上経過した5月上旬になって、澤谷氏は突然近畿大学の理事から「A氏への暴行事件について聴取したいから来てください」という呼び出しを受けます。その際の理事との面談で、Aコーチが事件直後に診断書をとっていたことを知らされ、澤谷氏は「とっくに和解したはずなのに、なぜ?」と驚いたそうです。澤谷氏は自らの暴行の事実は認めて、すでに当事者と和解したことを説明し総監督に留任しますが、氏の脳梗塞発症に乗じて発生した近大ボクシングの内部抗争は一気に顕在化します。
事件直後にA氏に診断書取得を命じて(経費も負担していた)、保管していたその診断書を五月になって大学当局に持ちこんだのは、ボクシング部OB会長のB氏でした。学生選手を置き去りにしたこの人事抗争は、一部リーグ戦の優勝争いが激しくなった6月まで続きました。指導者の内輪もめに巻き込まれたボクシング部員の境遇は気の毒としか言いようがありません。
澤谷氏の見解では、そのリーグ戦の優勝争いがこの問題の背景にあるというのです。
澤谷「こっちはゴタゴタを乗り越えてリーグ戦も全勝で来て、芦屋大学と4勝0敗で並んで、さあこれから決戦やと思ってました。そしたら、6月に入って鈴木監督とAに対して日連から呼び出しがあって、山根会長は『Aに対する暴行事件は問題やから、澤谷は処分や!』と言うて来たんです。でもAはそのときに『和解してるし、この問題は選手は関係ない』と言ってます。私も『事件や言うなら警察でも何でも行ったらよろしいがな。処分でも何でもしなはれ』と言ってたんです。そしたら『いや澤谷の暴力事件は、マスコミが嗅ぎつけとる』と。それが、ボクシングビートに載ったあの記事ですわ。でもこれは、なんのことはないリークして書かしとるんですわ。ビートの発売前に前田編集長から『山根さんが澤谷さんを処分するって言ってるけど、どういうことなの?』という電話が来ましたから。
そこからは、とにかく総監督を『辞任せい』『辞任せい』の一点張りですわ。『澤谷が辞めんかぎり、近畿大学はリーグ戦に出さん。優勝しても、全日本には出さん。』とも言われたようです。これを丁度、芦屋大学と近畿大学が4勝0敗で並んだ時に言うて来たんですよ。これもしね、ウチがどっかで星を落としとったら、こうはなってなかった思いますわ。僕がAを怒って叩いたことなんかとっくに分かってたことでしょ?問題にするならその時やったらいいじゃないですか。それが、二週間後に優勝かけて一騎打ちやいう時に急に言うてきて、ボクシングビートにも載せて。」
ボクシングビートに記事が掲載されたこともあって、澤谷氏は近畿大学に辞任届けを提出しました。
澤谷「それでいざ決勝迎えたら、関東から山根会長が子飼いにしてる腰巾着連中を審判に呼んどるわけですよ。以前、山根会長は私に『そのうちオマエのところ(近畿大学)がぶっちぎって優勝するようになるんやから、今はあんまり焦ってガタガタ騒ぐなよ』と言ったことがあるんです。これって要は『その内優勝できるんやから、今年は芦屋大学でええやろ』と言ってるようなもんでしょ。
去年も二回ダウン取ってるのに負けにされて、アマに嫌気さして中退してプロに行った子がおるんです。それで、今度やったらゆるさんぞ、と思ってたところにこれですわ。」
ここで澤谷氏の口から飛び出したのは、判定が操作されているという衝撃的な告白でした。俄かには信じられないような話です。
とはいえ、以前からアマチュア・ボクシングをよく観戦している人から「奈良出身の特定選手が、判定で優遇されているとしか思えない勝ち方をする」と言う話を、聞くことはありましたし、ネット上でもそのことに言及した書き込みは多々あります。果たしてそんなことが実際にあるのでしょうか?
もしそれが事実なら、実際にどのような手法で、審判を操作するというのでしょう?澤谷氏は私の疑問に、よどみなく答えてくれました。
澤谷「今はC、D、Eという三人の理事が審判団を仕切って、多い時で一日40試合くらいの審判を決めてます。対戦表の横に審判割りというのがあって、試合前にそれを山根会長のところに持っていって、それを見ながら奈良の選手のところを『ちょっとこいつとこいつ代えとけや。」とやるわけです。ほんなら入れ替えられた人間は、なんで自分が入れ替えられたか分かるわけです。私は以前インターハイで滞在していたホテルで、山根会長が奈良出身の選手に負けの判定をつけたジャッジを自室に呼び出して『お前は舐めとるんか?!今度やったら処分や』恫喝するのも目の前で見てます。」
HB「もし思ったような判定が出なければ、個別に呼び出されて叱責される、ということですか?」
澤谷「そういうことです。最近は、何かあったら奈良県が総合優勝、国体も二連覇してるわけです。私も奈良県ボクシング連盟の理事も兼ねとったから、ここの祝賀会にいかなあかんわけです。スピーチもせなあかん。でもどんだけ情けないか。ホンマに情けない。こんなことしてて、よお『勝った!勝った!』と喜べるな、とやっぱり思うじゃないですか。奈良の体育協会は、ある高校に新品のリングまで寄贈してます。
去年の国体でも地元岩手の選手が、奈良の選手相手に最終ラウンドに二回ダウンを取ってるのに、判定で負けにされて、会場は『おいなんだこれ!逆じゃねえのか?!』ってお客が騒ぎ出して、物凄い雰囲気になったんですよ。」
その騒動について岩手県の地方紙の報道を調べてみると、確かに判定のおかしさを指摘する内容になっていました。

2016年10月7日付 岩手日報より
記事を書いている記者がアマチュアボクシングの採点基準を理解していないことや、岩手県の新聞が地元選手について書いていることから生じているバイアスなどを考慮しても、判定が納得のいかないものであったことが伝わって来ます。会場が騒然となったことも事実のようです。
澤谷「いつも思うんですよ。山根会長が奈良の会長やったら奈良県の子を勝たせたがるの分かるけど、アンタはもう日本の会長やろ、と。それやったら奈良が勝とうが、広島が勝とうが、北海道が勝とうが、ホンマに強い子を育てたらええんちゃうの?と。なんでこないに、奈良奈良奈良というのか...。まあ息子(日連理事の山根昌守氏)が奈良の会長やっとるからね。」
現在の日本におけるアマチュアボクシング報道の第一人者である、ノンフィクションライターのせりしゅんや氏は、アマチュアボクシングの判定の政治性についてブログの記事中で以下のように述べています。
2015年8月4日のインターハイについての記事より以下に引用いたします。
『負けた選手側の応援団がなかなか納得できないのが現在の採点法だが、明らかに不公平な採点がなかったわけではない。大げさではなく、観戦した最低8割が逆だと思っていた判定まであった。分の悪い試合で勝者になり続けると、選手は誤った感覚を磨き続けるため、結局、伸び悩むことになってしまう。それを考えても「ジャッジが勝手に保身に入った採点」は、今後も抑制に努めていくべきだろう。これはこの競技における伝統的な問題である。』(引用以上)
『ジャッジが保身に入った採点』という表現は、澤谷氏の語った内容と合致するものがあると思います。
氏の口から語られた日連の内情は驚くべきものでした。はたして一連の氏の告発は事実なのでしょうか?次回はオリンピックのプロ選手出場問題や、大手プロジムとの金銭やチケットを介した密接な関係について触れて行きます。
またも熊本に来てる(旧徳山と長谷川が好きです)
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(補足)
発言中で触れられている国体の総合優勝ですが、実はボクシング競技は2023年度から、国体では隔年開催になることが決まっており、関係者からは失望の声が広がっています。金メダリストの村田諒太選手も、FACEBOOK上でこの件にふれて厳しいコメントを発しています→村田諒太選手のFACEBOOK記事へのリンク。以下に引用します。
7月27日の書き込みより
『国体のボクシング競技って隔年開催になるそうですね。僕の時代では日本記録にあたる、高校6冠王という記録を目指したりもしたもんですが、隔年開催じゃ、それも難しくなりますね。そして選手からしたら、試合するチャンスが失われるなんて最悪の事態です。競技団体に下された評価を元にしているそうですが、こういった責任は誰がとるんですかね?根本的に、良い時に「自分達のおかげだ」という人間は多いですが、そういった人間達に限って、悪い時に「責任を取ります」なんて間違っても言わないものでしょう愛する世界が陥っている状況に悲しみを覚えています』(引用以上)

村田選手が『競技団体に下された評価を元にしているそうですが』と書いている判断の根拠については、日本体育協会によって採点基準が公表されています→日本体育協会『国民体育大会における実施競技について』。
1800点満点で競技団体を並行比較して、ふるい落としが行われたようですが、採点基準を見れば分かるとおり、ボクシングはオリンピック競技であるために入れ替わりで毎年開催になった柔剣道に比べて200点のアドバンテージがありました。にもかかわらず、隔年開催になってしまった。このことは日連のガバナンスに対する冷徹な評価といえるでしょう。
金メダリストからの苦言は、果たして日連のトップには響いているのでしょうか?
日本ボクシング協会は8月4日、日本ボクシングコミッション秋山弘志理事長に対し、前統括本部長(現本部事務局長)浦谷氏の国内試合運営関与を制限する旨を通告した。
内容は浦谷氏に対して全国の試合会場立ち入りを実質的に禁止するもの。
この決定は7月26日に行われた協会理事会で決議されたもので、9月1日から実行に移される。
昨年8月5日、混乱と混迷を深めたコミッションの財務問題、健康管理金問題、労使裁判問題その他の解明に向けて共同声明文が発表される予定であったが、直前に決裂。
以来、協会側は根気強くJBC側との話合いを模索したが、責任追及を避けたい秋山氏の態度は固く、協会側の要求にも応える事無く一年が経過した事から今回の強硬措置となった。
これはウィキペディアの日本ボクシングコミッション事件に詳しいが、2011年当時、試合役員であった浦谷氏を中心とした一部の職員が上司を追い落とすために企てたクーデター事件に起因する。
最高裁まで持ち込まれた民事裁判において、不法行為と認定された卑劣ともいえる手段でコミッションを乗っ取ったかたちの浦谷氏らだが、業界内では当時からその職務能力に疑問が投げかけられていた。
そして、その後起こった所謂、健保金問題でも適当な言質や言い逃れを重ねた結果、ジム会長や選手らによる告発準備にまで至り混乱に拍車をかけた。
今回はその責任の追及というかたちだが、筆者の取材では、その他にもコミッション内部の混乱(クーデター一派の内部確執)、財務悪化にも有効な手段を講じる事も無く、高額な給与を受け取っていること、混乱を招く事務局長2名体制、等の背景もあるようだ。
我々もJBC問題をこれまでつぶさに伝えてきたが、とりわけ健保金問題では緑ジム松尾会長の勇気ある行動が無ければ、こうした様々な問題は浮き彫りにはされなかった。
この後のコミッション改革を目指したJBC理事による実質の内部告発、協会理事による問題提起並びに告発記事と続く訳だが、業界内部の意識改革はこれまでを見れば一気に進んだ事は間違いない。
今回の浦谷氏への措置は問題解明に向けての協会総意の回答であり一つの決着であるとして、しばらくトップに固定してあった健保金署名記事は一旦下げる事にした。
これまで趣旨に賛同しご支援とご協力を下さいました皆さまには、この場を借りて深く感謝申し上げたい。
しかし、一連のJBC問題はまだまだ解決には至っておらず、また、係争中の高額訴訟問題もまだ終わっていない。
これらの現場管理責任はJBC理事長である秋山氏にあることは明白だ。
ある協会理事は「とかげのしっぽ切りにはさせない」と当ブログ取材に応えてくれた。
文責 B.B

電子署名・キャンペーンサイトとしてお馴染みのchange.orgにおいて、健保金問題の究明を求める電子署名ページが設立されました。
電子署名サイトへのリンク
↓
プロボクサーの納めた健保金を守ろう
change.orgは国境なき医師団や三遊亭円楽師匠も利用している電子署名サイトです。署名用紙を郵送する手間なども省けますので大変便利です。
このページは、昨晩設立されてすでに50筆近くの署名が集まっています。署名用紙と併せて皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
この記事はしばらくトップに固定しておきます。
HARD BLOW!一同
タイトルの通りです。
昨夜の山中慎介×ルイス・ネリ戦で、4Rに中盤からネリの猛攻に晒された山中選手は防戦一方となり、セコンドの大和心トレーナーのタオル投入によるストップ負け、TKOとなりました。
私は、諸事情でリアルタイムの観戦はかなわず、先ほど録画した試合を見たのですが、ダウンしていない段階でのタオル投入は確かに異例っちゃ異例ですが、別にそうおかしくもないよなあ、と感じた次第。山中選手のキャリアに寄り添ってきた大和トレーナー以上に、正確な判断が出来る人がいるんですか?ちゅう話であります。
頭の中が昭和のまま冷凍睡眠になってるアホマニアは「昔の試合はあんな程度でストップしなかったよ」みたいな、やくたいもないこと言ってるみたいですが、そんなもん「だから何?」という話であります。アホちゃうか。
まあそういうアホなオッサンが、視野の狭い思い込みで「もっとやらせろ」「どっちが倒れるまでやれ」「金返せ」とやるのは下品でバカですが、まあシロウトさんやし仕方がない。問題は利害当事者である帝拳の本田会長と、一部タイコモチボクシング記者の言動であります。
多くのスポーツ紙が報じているように、本田明彦会長は試合後にセコンドのタオル投入にあからさまに不満を表し、「あれぐらいでタオル投げるなよ」という旨の発言をしたというのです。
スポーツ紙各紙の報道を見てみましょう。
まずはデイリースポーツ紙。
↓
帝拳・本田会長怒り心頭「最悪のストップ」タオル投入の判断に
以下に引用いたします。
山中の王座陥落に、帝拳ジムの本田明彦会長は「最悪のストップ」と試合後、怒りを抑えきれなかった。怒りの矛先は、棄権を示した陣営のタオル投入のタイミングに向けられた。4回中盤、ネリの左右フックでダメージを負った山中は懸命に左ストレートを打ち返すも、嵐のような挑戦者の連打を断ち切れず、ロープを背負って防戦一方となった。2分24秒、ダメージを心配した大和心トレーナー(元日本同級、東洋太平洋スーパーバンタム級王者)がタオルを投げ、レフェリーが試合を止めた。「(通常タオルを投げる時は)相談がある。こんなことは初めて」と本田会長。「あいつはいいヤツで優しいから。魔が差したかな」と、二人三脚で山中とV12ロードを歩んできた大和トレーナーについて語った。
過去、山中はダウンを喫しながらも逆転KOで仕留めた防衛戦が複数回ある。「展開は予想通り。2、3回倒れても結果KOで勝つという。コンディションは最高だった」。
なんと「2.3回倒れても」予定通りだと言うじゃないですか。本気ですかセニョール?!なんすか、そのダウンありきの作戦?!
岩佐選手との伝説の日本大タイトルマッチから、世界奪取後の長期防衛までずっと山中選手に寄り添ってきた功労者の大和氏が、さしておかしいとも思えないタオル投入をしたらマスコミの前で吊るし上げ食っちゃうというのは、パワハラなんじゃないでしょうかね?
つづいては報知
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山中TKO 陣営の思いに温度差 トレーナーのタオル投入に本田会長「個人的な感情が入った」
帝拳ジムの本田明彦会長(69)は「(トレーナーの)個人的な感情が入った。しのいでしのいで、後半チャンスを待つというボクシングを練習していた。耐える展開は予想通り。トレーナーも分かっていたはず」と早いストップを悔やんだ。大記録を逃した結末を「観客やテレビを見ていた人たちに申し訳ない」とわびた。
帝拳プロモーションの浜田剛史代表(56)は「俺の指示不足かな。山中は効いてなかった」と複雑な表情だった。
どうみても『感情が入って』いるのは本田会長ではないでしょうか?端から見てる分には「日本記録達成を煽って、具志堅さんも呼んで盛り上げてる試合で何してくれてるねん!」とキレてるだけで、冷静さは皆無です。
浜田代表は『指示不足』と謎の総括をしてますが、帝拳はチーフセコンドに決定権がない状態で試合をしているんでしょうかね?
帝拳の選手は試合後の勝利者インタビューで必ず「試合を組んでくれた本田会長ありがとうございます」とリング上で謝意をあらわしますが、勝ったら会長・代表のおかげで、負けたらトレーナーのせいなんでしょうかね?「成果はトップのもの、失点は部下のもの」じゃブラック企業か独裁国家です。
本田会長は、村田×エンダムの後も「村田にポイント入れなかったジャッジは処分しろ!」と『激おこ』でございましたが、最近ちょっと言動が過激になってるようで心配でございます。周囲に諌めるものがおらず、裸の王様になっておられるのではないでしょうか?
そもそも帝拳ジムは、2009年に起きた辻昌健選手の痛ましいリング事故の当事者です。辻選手がポイントでリードしていた為に、セコンドがタオル投入を躊躇したという分析も多かったあの試合のことを、本田会長はもう忘れてしまったのでしょうか?本田会長の叱責によって、今後セコンドがタオル投入を躊躇し、その結果深刻事故が発生したらどうやって責任をとるのでしょうか?業界の『天皇』とも言われ、プロボクシングのイメージを担っている帝拳のトップが、このような粗雑な発言を公共の場所ですることの責任の重さが分かっているのでしょうか?私は呆れてしまいました。
業界のトップが、こうした人命軽視・健康度外視の前近代的発言をしても、さして問題にもならないのはまあお約束ですが、全力でタイコモチを演じる奴もいるというのですから、ボクシング記者の質も落ちたもんであります。
その記者とはネットメデイア『THE PAGE』の本郷陽一記者。亀田大毅×リボリオ・ソリス戦後トラブルの時は検証なしにJBC秋山大本営の発表を垂れ流したり、長谷川穂積選手の三階級制覇の記事で肉親の発言を捏造したり、アクセス稼ぎのヒマツブシメデイアに相応しい活躍を見せてくれる彼氏ですが、今回はなんと本田会長のセコンド批判に丸乗り。
本郷陽一記者のチョウチン記事はこちらから
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V13具志堅超えに失敗した山中はタオル投入の暴走がなければ勝てていたのか
記事のタイトルにあるとおり、非常に妥当なタイミングだったセコンドのタオル投入を『暴走』とむりやり印象操作して、業界の天皇にすりよるイイ仕事ぶりを見せています。以下に特にイイ部分を引用してみます。
ネリが入念に練った作戦の罠に嵌っての敗北だったが、4ラウンドのTKOは、山中陣営のセコンドが暴走してタオルを投入したことが発端となっていた。帝拳の本田明彦会長は「最悪のストップ。ビックリした。山中も納得していないだろう」と無断でタオルを投げたトレーナーに激怒。山中も「効いたパンチもなかった。期待してくれたファンに申し訳ない」と悔しさを隠さず号泣した。セコンドの暴走がなければ逆転勝利があったのか。それとも……まさかの不完全燃焼で、6年間積み上げてきた記録が止まった34歳の神の左と呼ばれたボクサーは、今後の進退についての明言を避けた。(引用以上)
のっけから『無断でタオルを投げたトレーナーに激怒』『セコンドの暴走がなければ逆転勝利があったのか』と本田会長の忠犬ぶりを遺憾なく発揮。「本田会長と山中は速すぎたストップの犠牲者で、悪いのはセコンド」と印象付けようと必死ですが、あんまり巧く行っているとは思えません。更に引用します。
会見の最中に、廊下に出た本田会長は早すぎるタオル投入をしたセコンドの暴走に怒りを爆発させた。
「ダウンもしておらずタオルを投げるタイミングじゃない。ビックリした。個人の感情が入った最悪のストップ。魔がさして頭が真っ白になったんだろうけど、こういうこと(冷静に判断できないこと)が起きるから私は、親子にセコンドをやらせるようなこともしないんだ。山中は相手のフックを流していた。それを(セコンドが)わかっていない。
一回我慢してから巻き返し倒して勝つのが山中のボクシング。展開は予想通り。7回や8回で、あの展開ならまだわかるが、今回、山中は練習の段階から肉体が丈夫で強くなっていたんだ。チケットが手に入らないほどの記録のかかった大きな興行。お客さんやファンに申し訳ないし、これからという展開で、ああいうことが起きて、もし私がファンならカネ返せの世界ですよ。タオルはもとより(セコンドが)リングの中に入っちゃっているんだから、取り返しがつかない。山中も納得いかないだろう」
帝拳ではタオル投入や重要な試合中の作戦指示は、本田会長が出すが、今回は会長の判断を仰ぐことなく、山中と長年タッグを組んでいた大和トレーナーが独断でタオルを投げたという。(引用以上)
本郷記者自ら『本田会長は早すぎるタオル投入をしたセコンドの暴走に怒りを爆発させた。』と書いてるように明らかに感情的なのは本田会長の方なのですが、なぜか本田会長がセコンドの判断をこき下ろすと、本郷記者は「セコンドの分際で本田天皇に逆らうとは何事じゃ!」と言わんばかりのタイコモチぶりで同調。そこには「展開が速い試合でそんな悠長なことやってて事故が起きたらどないするねん」という安全に対する問題意識は微塵もありません。
本田会長が滔々と述べてる興行にまつわる話も、要は「俺が日本記録煽って話題作って盛り上げてたのに、なんで止めるねん」というゼニカネ+世間体の話で、長年TV中継の屋台骨を支えてきた功労者である山中選手の健康状態への配慮は微塵もありません。
この記事はYAHOOのポータルのほうにも掲載されているので、沢山コメントがついているのですが、上位のコメントは概ね『暴走』と言う表現には批判的で折角の援護射撃も失敗してるようです。
取材章貰ってリングサイドで見せてもらってる本田会長を批判するわけにはいかんのかも知れませんが、こういうセコい記事はどうかと思いますよ本郷さん。
明日から仕事の(旧徳山と長谷川が好きです)
先日お伝えした、育成目的のアマキック大会『PETER AERTS SPIRIT』が8月6日に大阪市内で開催され、私も観戦して参りましたのでレポートいたします。

過去記事はこちらから
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格闘技のアマチュア育成と底辺拡大を考える アマチュアキック大会『PETER AERTS SPIRIT』大成敦代表インタビュー
まずはその前に、大会前日に行われたローンチパーティ(ローンチ=launch→『立ち上げ』のことだそうです)に実行委員会関西事務局の樫山賢一氏よりお招きを頂き、お邪魔してきたので、その様子から...。


パーティーにはピーター・アーツ氏も参加されて、盛況の中で行われました。東京五輪挑戦を宣言した高山勝成選手も来場しており、会場でアマ活動認可の請願署名集めも行われ、ピーター・アーツ氏も笑顔でサイン。

現代のガリバー旅行記か?


この時点では瞼の手術の為の入院直前だった高山選手でしたが、出術は無事成功したようで、大変良かったです。先日、自身の後継王者である福原辰弥選手に遭いに、熊本を訪問した時の感想を尋ねると
「福原選手は、カジェロス戦で序盤ビッグパンチ貰っても慌てずに立て直したように、メンタルは素晴らしいと思います。ボディ当てるのは巧いですが、精度を上げればもっとよくなる。みぞおちでもレバーでも、もっとピンポイントで打てるようになれば、さらに強くなると思います。」
という見立てでございました。
試合当日物凄い酷暑で、フラフラで会場に辿り着くと、エアコンが効いていて一安心。
試合ルールは2分2ラウンドで、ヘッドギアあり、ヒジうちと顔面へのヒザ蹴りなしというールール。キッズから高校生、一般まで様々な年齢の男女選手がワンマッチで戦い、全国7ヶ所での地方大会で行われた試合の内容から、大成敦代表が選考した選手が全国大会でトーナメント戦を戦うとのこと。
会場で関西大会実行委員会の樫山氏にお話を伺うと「力のあった選手同士でマッチメイクしている」とのことでしたが、確かに試合は拮抗した内容が多く、これは育成目的の試合では大切なことだなと感じました。



ピーターさんもリングサイドで全ての試合を観戦。大阪の片隅の入場無料の大会に、レジェンドがいるというのも不思議な感じであります。

女子選手の試合もハイレベルでした
試合の合間にはピーターさんによるセミナーも行われ、『パンチをブロックしてローキックから、両手を前に出してヒザ蹴り』という現役時代を思わせるコンビを通訳を介して直接指導。短い時間でしたが、有名選手と同じリングに上がればキッズにもきっと励みになることでありましょう。



ピーターさんの双子のお子さんもキックボクサーだそうで、セミナーで子供達を指導しました。

全ての試合が終わると表彰式。実行委員とピーターさんが選んだ選手に、ピーターさんから賞状とトロフィーが授与されました。2分2ラウンドということで、ポイントを取るために接近戦でパンチとミドルキックを多用する選手が多い中で、井上大斗選手の長いキックも多用した落ち着いた試合振りが個人的に印象的でしたが、みごと優秀選手賞を受賞。長いラウンドだと更に持ち味が出るのではないか、と感じましたが、

ピーターさんは総評として「優秀選手の選考はとても難しく、二転三転しました。今日負けた選手も勝った選手も、みんな才能があると思うので、キックを辞めずに続けてください」大意そのようなこと仰って、選手を激励しました。

最後に大成代表から全国大会出場選手には後日通達があることと、関西で年内にもう一度ワンマッチの大会を開催することがアナウンスされて、この日の大会は終了となりました。
全体を通して私が感じたのは、全国大会出場という目標設定や、ピーター・アーツというビッグネームが実際に会場で試合を観戦してセミナーを行うことなど、出場する選手やジムから見ても魅力的なイベントになっているのではないか、ということでした。採点やレフェリングも公平で、ダウンやストップの判断も適切だったと思います。入場無料で観戦できることも驚きでした。
このまま大会が大きくなって、存在が周知されていくことお祈りしております。
『PETER AERTS SPIRIT2017』の日程は以下の通りです。
7月16日(日)九州大会 さざんぴあ博多(既に終了)
7月30日(日)中部地区予選大会 春日井市総合体育館(既に終了)
8月6日(日)関西大会 大阪府平野区民ホール(既に終了)
8月11日(金・祝)東北地区予選 夢メッセMIYAGI(既に終了)
8月13日(日)関東地区予選大会 大田区総合体育館(12時開始)
9月3日(日)沖縄地区予選大会 環境の杜ふれあい体育館(12時開始)
9月17日(日)北海道地区予選大会 K&Kボクシングジム(12時開始)
【全日本大会】11月19日(日)2017年全日本大会 夢メッセMIYAGI(12時開始)
全国大会が見たくなった(旧徳山と長谷川が好きです)
先日発足した『高山勝成選手のアマチュア登録を支える会』ですが、早速FACEBOOKページが立ち上がるとともに、請願の署名活動が始まっています。署名用紙をダウンロードして署名を集める方法と、電子署名の二つの方法が可能です。皆様のご協力をお願いいたします。
詳しくはこちらをごらんください
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高山勝成選手のアマチュア登録を支える会のFACEBOOKページ
署名希望の方は以下のリンクからどうぞ
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署名用紙のダウンロードはこちらから
電子署名はこちらから
繰り返しに成りますが、IOCのルール上はプロ選手の参加を妨害することは出来ません。一刻も早くアマ選手登録が出来ることを望みます。
IOCとAIBAの方針に逆らって、プロ経験者のアマ登録を妨害している、そんな日本ボクシング連盟(以下日連)が、思わぬトラブルで激震しております。なんとびっくり、週刊文春というドメジャーな媒体が山根明会長の告発記事を掲載したことで、記事の一部内容がYAHOOのトップにも掲載され、一連の問題は広く周知されました。これは、プロボクシングを統括するJBCの一連のスキャンダルと同様の病理といいますか、要はプロアマ問わずボクシング業界自体が極端な村社会であり、チェック機能を持たないことからくる構造的問題であります。
週刊文春記事のダイジェストはこちらから
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村田諒太も犠牲者「日本ボクシング連盟」のドンを告発
山根氏への告発の端緒となったのは近畿大学ボクシング部を舞台にした、鈴木康弘元監督によるセクハラ・パワハラ問題であります。鈴木氏は女子部員へのセクハラや男子部員へのパワハラなど数々の問題行動で、すでに諭旨解雇されており、監督就任期間はわずか一年強でありました。スパーリングで学生選手を『制裁』するというような陰湿なこともやっていたようで、なんとも人格を疑うような話であります。
NHKが詳しく報じております
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近大ボクシング部監督 諭旨解雇
週刊文春によると、ロンドン五輪代表で自衛隊出身の鈴木氏は、山根明氏の孫娘と結婚しており、近畿大学監督就任も山根氏の政治力によるものだということ。報道が事実であれば、近畿大学ボクシング部にとっても、大学当局にとっても、まさに迷惑千万であります。そもそも鈴木氏は北海道出身で拓殖大学から自衛隊という経歴で、関西にも近畿大学にもなんのゆかりもなく、山根氏との縁戚関係をみれば政治的な登用であったことは問題発覚前から明らかでありました。彼のやりたい放題の問題行動も、日連の絶対権力者である山根氏の威光を借りたものであってこそ、だと私には思われます。したがって山根氏にとっても決して他人事ではないのです。
山根氏の個人支配の問題性は、アマチュアボクシング界では公然の事実であり、アマ選手のプロ転向を妨害する『村田ルール』から始まって、清水選手のAPB参加を巡るトラブルや、IOCの方針を無視したプロ選手の排除宣言など、属人的で非民主的な組織統治は従来から明らかでありました。あの独特のファッションも含めて「オリンピック競技を統括する団体の長である」ということを客観視する素養がないことは明白であると思います。
近大のスキャンダルに置いても、山根氏は自分の責任は棚に上げて鈴木氏を批判していますが、今回文春の記事で実名の告発者となったのは、元近畿大学ボクシング部のコーチと総監督を歴任し、日連では理事も務め山根会長の側近と言われた澤谷廣典氏。近畿大学や日連の内実についてもっとも詳しいと言ってよい人物です。私が高山選手のスパーリングの見学に行った際も、澤谷氏に現場で取材対応をしていただいたことがございます。当時は現役選手でもあった青年監督の浅井大貴さんと元世界チャンピオンの名城信男ヘッドコーチが選手を指導し、澤谷氏は部全体を統括するというような役割分担に見受けられました。
近畿大学ボクシング部に訪問した際の過去記事二本を以下に再掲しておきます。
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高山勝成公開スパーリングin 近畿大学ボクシング部レポート
異例の二団体同時決定戦へ!高山勝成インサイドレポート&スパーリングレポートin近畿大学
その澤谷氏がコーチに対する暴力事件で辞任したことが、6月にまずボクシングビートで報じられ、7月に入って鈴木氏のセクハラ・パワハラが一般紙にも載るようなニュースになり解雇され、その後今度は名城信男ヘッドコーチのアマ会場への立ち入り禁止がアナウンスされると言う奇妙な事態が起こります。
名城コーチへの出入り禁止処分を伝える記事
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名城・近大ヘッドコーチ、アマ試合出入り禁止
この名城コーチに対する処分は、全く不可解で不当なものであると思います。ぶっちゃけ鈴木監督の問題行動を告発した近大ボクシング部に対する、山根氏サイドからの意趣返しだと見えるのですが穿ちすぎでしょうかね?そうでないとタイミングが余りに不自然です。近大のボクシングに近親者を送り込んだものの、問題行動で排除されたことを逆恨みして、試合時にコーチが選手の指導をすることを妨害しているとしたら、これは競技そのものへの冒涜です。
日連は学校の部活動も統括管理する立場であり、教育現場に顔向けできないような行為をしている人物がトップにいることは大変な問題だと思います。現場で選手を指導するアマチュアボクシング関係者は、選手と業界の未来の為にも自浄作用を発揮して組織の刷新を果たして欲しいと思います。
そしてこれはプロにとっても決して他人事ではなく、JBCの秋山氏も山根会長と同様の、個人支配による様々な弊害を生んでいることを自覚してほしいと思います。極端な個人支配が生まれる背景には、周囲の人間にも少なからず責任があるのです。
しかしライセンスの発給をちらつかせて他人を支配するってプロもアマもやってること一緒やん。ボクシング界ってこんなゲスしかトップにおらんの?
日連がどうなるか着目している(旧徳山と長谷川が好きです)


(記事中の写真は全てPETER AERTS SPIRIT実行委員会より許可を得て掲載しています)
今回の記事は、当HARD BLOW!としてはちょっと異色の、立ち技格闘技・キックボクシングについての話題です。筆者である私は数年前、ある問題の取材過程で偶々大阪在住のキックボクサー・格闘技トレーナーの樫山賢一氏と知遇を得ることが出来、以来氏と交流しながらキック選手の視点から見たボクシング界や格闘技界についての知見などを伺うことで、記事執筆の際に大いにヒントを頂いて来ました。
その樫山氏が関わる、キックボクシングのアマチュア選手の為の大会が、現在全国で行われています。そのイベントの名称は『PETER AERTS SPIRIT』。90年代以降の立ち技格闘技のブームを支えてきた、皆様ご存知のレジェンド、ピーター・アーツ氏がエグゼクティブ・プロデューサーを務めるというこの大会は、ジュニア選手の育成を目的としており、現在全国各地で予選の真っ最中。樫山氏はその関西大会の実行委員です。
『PETER AERTS SPIRIT』のHPはこちらのリンクから
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PETER AERTS SPIRITのWEB
HPで大会のスケージュールを見てみると、全国七地区で予選大会を行い11月に全国大会が行われるという、かなり大規模なイベントであることが分かります。
「PETER AERTS SPIRIT 2017」大会スケジュール
【全日本大会予選】
7月16日(日)九州大会 さざんぴあ博多(既に終了)
7月30日(日)中部地区予選大会 春日井市総合体育館(既に終了)
8月6日(日)関西大会 大阪府平野区民ホール(12時開始)
8月11日(金・祝)東北地区予選 夢メッセMIYAGI(12時開始)
8月13日(日)関東地区予選大会 大田区総合体育館(12時開始)
9月3日(日)沖縄地区予選大会 環境の杜ふれあい体育館(12時開始)
9月17日(日)北海道地区予選大会 K&Kボクシングジム(12時開始)
【全日本大会】11月19日(日)2017年全日本大会 夢メッセMIYAGI(12時開始)
入場無料で観戦できるということなので、関心のある方は是非会場で観戦してみてください。私も関西大会にお邪魔して観戦させて頂きます。
少子化・人口減少時代の到来が確実となっている昨今、各スポーツ団体はジュニア選手の底辺を拡大することにに躍起になっています。野球やサッカーのような人気競技ですら例外ではありません。格闘技界においては、伝統空手がオリンピックの正式競技となったことで、ジュニア選手が他競技に転向せずに競技を続ける動機付けが強まり、ボクシングやキックにとってはジュニア選手のが確保がさらに困難になることが予想されます。
キック系のイベントは一時低迷していたK1の人気が復活しつつあり、もう一方で那須川天心選手や梅野源治選手といったスターを擁するKNOCKOUTも、人気が急上昇中。わけても、ヒジありルールのKNOCKOUTは、新日本プロレスを巧みな戦略でV字回復させて日本の格闘技ビジネスに革命を起こした、株式会社ブシロードが運営主体であり、チケットの手売りを否定するスタイルなどから顕著なように、格闘技興行をタニマチ頼みの打ち上げ花火から、収益の上がるビジネスに脱皮させる可能性を秘めています。海外に目を転じれば、中国発のクンルンファイトが大人気で、K1に出ていたブアカーオやキシェンコ、内山高志選手と国際式ボクシングルールで戦ったジョムトーンなどが出場して高額のファイトマネーを得ており、プロボクシングを凌ぐ勢いを見せています。実際、ボクシングもキックも両方見る筆者の知人によれば、興行の華やかさやファンサービスで比較すれば、チケット代に対する満足度はキックやシュートボクシングの方が高いことが多いといいます。会場にいるファンもキックは若い女性や子供が多く、中年男性が多いボクシングの会場とは明らかに好対照になっています。
自助努力でジリジリと人気を回復させつつあるキック界で、選手育成の一翼を担うことを期待される『PETER AERTS SPIRIT』は果たしてどのような方針をとっているのか?代表である大成敦(おおなりあつし)氏に書面にてインタビューを行い、その目指すところ伺いました。(大成氏の回答は赤文字)
Q 『PETER AERTS SPIRIT』のカテゴリー、参加資格、ルールはどのようなものでしょうか?
「年齢は、アンダー8から、10、12、15、17と、それ以上は一般部とし、国際的に対応出来るようなクラス分けをしています。また層の厚い部分は女性の部もあります。 基本的な参加資格は、国内のキックボクシングジムに所属していること。 ルールは、基本的な技術であるパンチとキックの攻防を重視したものにしています。」


Q この大会の目的はなんでしょうか?
「目的はキックボクシングを通じて、青少年の健全な育成に寄与し、世界に通じるキックボクサーを輩出することにあります。」
Q 出場選手のバックグラウンドやレベルはどのような感じでしょうか?
「現在はキックボクシングジムの所属選手が殆どですが、例えば空手やボクシングなどの類似格闘技や総合格闘技などの他種競技との入口や接点として、また各大会でジュニアへのセミナーを開催し、正しい技術や新しい層へのキックボクシングの普及に努めています。」


Q 優勝するとどのような特典がありますか?
「昨年は、最優秀賞を獲得した選手を、オランダにあるピーターアーツのジムへ派遣しました。」
Q 今後海外との連携はありますか?
「来年は他の国とのアマチュア団体と提携し、中東や北米、ヨーロッパなどに、優秀な成績を残した選手を派遣する予定です。」
Q 今キックはK1の人気が復活し、一方でヒジありルールのKNOCKOUTがブレイクしようとしていま す。また中国ではクンルンファイトで100万ドルファイトが実現したり徐々にキックの興行事情は上向いて いると思います。今後日本で立ち技格闘技のビジネスをさらに大きくするにはどのような施策が必要だと思い ますか?
「特にプロフェッショナル団体との提携は考えていません。国籍や所属団体などに偏らず、ルールに則って、誰にでも公平であるべきアマチュア団体であると自負しております。 先ずは底辺の拡大とレベルの向上が、私共の責務であると考えています。」
Q 伝統空手がオリンピック競技になりジュニア選手が空手に定着することで、ボクシングやキックはジュニ ア選手の獲得がさらに難しくなることが予想されます。キックは学校の部活動もなくジュニア選手の獲得は大変だと思います。キック界はジュニア選手にどのような目標や夢を設定出来ると思いますか?
「ボクシングや空手、レスリング、柔道はオリンピック競技のため2020年の東京オリンピックという目標がありますが、 キックボクシングの選手にとって我々のプロジェクト『PETER AERTS SPIRIT』の世界大会が同様の目標になるような大会を作り上げることが私共の責務であると考えています。」
大成氏の回答を通して、底辺の拡大とアマ選手にとっての目標設定というのが当面の趣旨であることがはっきりと伝わって来ました。立ち技格闘技はプロモーション同士の交流が途絶状態で興行主体が乱立していますが、一方でJBCや日連のような強健的な存在がないゆえに、風通しが良く色々なことが試せる状況でもあると思います。
ボクシング界の閉鎖性や後進性を見ると、若者が夢を持って飛び込める世界になっていないと感じる一方で、伝統空手の堅実な組織運営や、立ち技・総合格闘技の明るく自由なイメージは魅力的に映ります。
各競技が生き残りをかけてどのような戦略をとっていくのか?を今後も注視していきたいと思います。
メイウエザー×マクレガーのDAZN中継が決まって嬉しい(旧徳山と長谷川が好きです)