スパーリング打ち上げ!大沢宏晋ベガス渡航直前リポート
大沢選手とロマンサジムのご協力により、あしかけ約一ヶ月続いた当方のレポートも今回が最終回であります。いよいよ本番へ残すところ2週間弱となった10月25日、最終のスパーリングを見学させて頂きました。
ジムに伺うと試合で着用するチームジャージも完成しており、いよいよ臨戦ムード。
試合を想定した長いスパーリングは先週で終わり、この日は防御などの確認として4R程度のスパーとのこと。
最終のロングスパーではインターバルを30秒から本番と同じ1分にしたところ、回復が格段に違い、最後までしっかり動けたとのこと。
「スタミナは何の問題もないです」(以下大沢選手の発言は全て赤文字)
という力強いコメントが出ました。KO必至と言われる試合ですが、判定になるような展開でも12R戦う体は出来ているようです。
ウエイトはリミットまで3キロ台ですが、食べながら落とせておりこちらも順調。シャドーなど見る限り体も絞れて、動きは3週前あたりの疲れのピーク時から見れば、軽快でありました。スパーでかけた負荷が効いて、試合では重石がとれて軽くなるというのが狙いだと言うことですが、中島トレーナーはオーバーワークにならないように慎重にスパーリングのラウンド数など調整してるようでありました。もともと10月当たりに試合を計画していたということで8月あたりからスパーも積んでいたところに、9月にトップランクからオファーが来たと言う経緯があり、結果的に100ラウンド以上のスパーをこなしたとのことです。
減量中ということもあり防御の確認など、仕上げの意味を込めた4ラウンドの短いスパーでしたが、打ち合い自体はいつものバチバチで、大変激しいパンチのやり取りがありました。大きいグローブでもジャブやインサイドからのパンチも当たっており、試合本番では果たしてジャブやカウンターがどこまでバルデスにヒットするか、大変楽しみであります。
スパーを見てきて感じたのは、距離がつまった場面で不完全な体勢でも強い連打を出せるのが、大沢選手の強みだということ。下半身や体幹の強さを感じました。小さいスイングで、姿勢が悪くても強いパンチが打てるというのは本番で必ず武器になると思います。
大沢選手がポイントに上げていたジャブ、中島トレーナーが勝負の分かれ目と分析したショートカウンターは果たしてバルデスに通用するのか?興味が尽きません。
バルデスはレコードどおりスピードもパンチ力も図抜けており、オリンピアンということで技術も申し分なし。フック系のパンチが目立ちますが、ジャブもパンチを散らすのも巧く、必要がないので引き出しを開けずに勝っているだけで、まだ出していない技術があるのでは?とすら思えます。トップランクが期待をかけるだけはある、素晴らしい選手です。ただフェザーとしては小柄。大沢選手はもともとライト級ですから、リーチと身長の差を生かして、得意のジャブを印象付けつつ、接近戦で多少やられても打ち負けずやり合えるか?が鍵になると思います。
日本人の海外挑戦では「何も出来ず負ける」というケースがままあります。「記念挑戦だ」なんて揶揄されるような試合でなくとも、例えば西岡利晃選手のノニト・ドネア戦などもそうした範疇に入る試合であったと思います。実際日本のファンの方でも、今回の試合は勝ち目のないミスマッチだと言うような評価をされている方もいます。ですが、自分は大沢選手はそういうタイプではなく、強敵相手であっても試合を作れる選手であると思っています。メンタルも図太いし、パンチ力やフィジカルの強さという武器もあるし、試合展開を作れる強引さも持っていると思います。世界中のファンが注目する舞台で勝敗を超えたエキサイテイングな試合をして、世界を驚かせて、キャリアを切り開いてほしいと切に願います。そして閉鎖的な日本のプロボクシングに革命を起こしてほしいと思います。
練習後大沢選手に少しだけお話を伺いました。
バルデスとは体格差がありますが、小さい選手にはやりにくさは感じないですか?
「特にないです。インファイトでも腕たたんで、アッパーとかやり方はいくらでもあります」
ジムワークのない日はウエイトなどをやっているみたいですが?
「ウエイトじゃなくて加圧トレーニングですね。筋肉つけるとかはどうでもいいんですよ。加圧で筋持久力つけて、心拍数が上がってても動ける体を作るのが狙いです。」
こんなに楽しみな世界戦は久しぶりです。全くどうなるか分からない。
「練習は一切妥協なくやってきたんで、なんの不安もないです。バルデスが勝ったら相手が俺より強かったというだけのことで。勝った方が強いと言うことです。」
この日もダイエットコースの見学に来た方に親切に対応したり、出稽古に来た大学生をいじって談笑したりと、過剰に入れ込んだりピリピリしたりすることもなく普段通りだった大沢選手。リラックスして自然態のまま試合にいけそうでありました。
理不尽なライセンスの停止を経て、精神的にも肉体的にも更に逞しく強くなった大沢選手。彼の身に降りかかった全てのことが、報われるように願ってやみません。あとはもう暴れてもらうだけです。彼ならきっと臆することなく大きな仕事をやってくれると思います。期待して試合の日を迎えたいと思います。
最後になりましたが、ロマンサジムの皆様のご協力に、今一度感謝致します。大変お世話になりました。ありがとうございました。
ロマンサジムの雰囲気に新しい息吹を感じた(旧徳山と長谷川が好きです)