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読者投稿 ある関係者が見た最高裁判決、健保金問題とJBCのこれから

判決確定後も、遅々として進まないJBCの正常化でありますが、「なんでこうなの?」という当方の疑問に対するアンサーと、「で実際のところこれからどうなる」と言う観測が読者の方より寄せられました。さすが『中の人』と言う感じの、大変明快な分析であります。勉強になりました。

匿名での投稿と言う形になりますが、割とドップリ(笑)と業界にいる方でございます。

読者の皆様に於かれましては、「これ書いてるのあいつじゃね~の?」なんて想像しながら読んでいただけたら...。

というわけで以下に、一切手を入れず原文のまま掲載いたします。

面白いので、今後も記名、匿名問わず「俺にも言わせろ!」と言う、関係者の方の投稿をお待ちしております。

サイドバーのメールフォームより、どしどしコンタクト下さい。

旧徳山と長谷川が好きです

****************ここより本文************************

 私は一ジム関係者だが、本職は中小企業で経理や労務管理などを行っている一会社員でもある。その視点で、JBC問題の論点を、できるだけ客観的に整理したい。また、どうしてここまで事態がこじれたのか、その背景となるボクシング界内部の空気というものもお伝えしたい。

1.安河内氏の裁判について

 最高裁の決定は「JBCによる上告の棄却」であり、つまり昨年6月17日の高裁判決を確定させる、というものである。地裁、高裁とも安河内氏の「降格無効」の判断を下しており、その意味では昨年6月時点にさかのぼった上で、事務局長復職を命じている、と解釈すべきだと思われる。
 すなわち、当時は統括本部長なる役職は存在しておらず、高裁の降格無効判断は安河内氏を権限のある現場トップに戻すべき、という意味を内包している、ということである。
 高裁判決後にJBCが定款を変更し、事務局長の権限を大幅に縮小した上、その上位に新しい役職を新設したのは、やはり乱暴なやり方であったと見られても仕方ない。
 現在の「事務局長」という名前の位置に安河内氏が戻るとなると、実質の降格処分となるので、裁判所の決定に反することになってしまうからだ。
司法判断を素直に受け取るなら、安河内氏は少なくとも統括本部長に就任すべきであろう。
しかしJBC秋山理事長が、司法判断を受け入れることに抵抗しており、膠着状態に陥っているのが現状だ。

普通の社会であれば、4名もの職員を一斉に不当解雇し、その労務裁判で相次いで敗訴(もしくは敗訴に近い和解)という結果になれば、ブラック企業というレッテルを張られることになろう。経営陣に対して何らかの責任を問う声が出てもおかしくない。その点でいうと、ボクシング界の意識は社会から乖離していると言わざるを得ない。
ボクシングジム自体もその大半は超零細企業であり、経営の悪化を理由に、または人間関係のこじれから、トレーナーがあっさり首を切られることも、はっきり言うと日常茶飯事のようにある社会である。ジムの会長たちに、労務管理の重要性を理解させるのは、そもそも不可能に近い。
さらにボクシング界は争い事が絶えない業界ではあるが、このムラ社会の掟として、ご法度なのは「裁判沙汰」「マスコミ沙汰」である。ボクシング人はこの二つだけは、どうしても本能的に避ける行動原理を持っている。これはボクシングの人気が揺らぐ中で、紛争が表に出ることでさらにボクシングの威信が傷つくことを恐れている、という理由もあろう。後述するJBC財政の悪化についても、なぜここに至るまで表面化しなかったのかといえば、一部の関係者が声をあげてはいたものの、それを封じ込める空気が業界全体に存在するからである。
このムラの掟を突き詰めると、裁判沙汰は「起こす方が悪い」という論理につながる。「現代ビジネス」のような記事が出ると、「リークする奴が悪い」ということにもなる。JBCは、安河内裁判においても亀田裁判においても「訴えられたのだから訴訟費用がかかるのは仕方がない」と、大幅な支出増の原因を訴えた側に責任を転嫁する主張をしているようだが、一般の社会からすると論外ともいえるこの主張も、ボクシング界においては違和感なく受け止められる土壌がある。だから、安河内裁判が長期化した上で完敗しても、JBCに結果責任を問う声が大きくならない。心の中では多くの人がいまだに「安河内は裁判まで起こしてボクシング界に迷惑をかけやがって」という気持ちを、ぼんやりと持っているからである。

2.健保金問題(JBC財政問題)について

 私は、これについてはすでに健保金問題ではなく、財政問題と呼ぶべきものになっていると思っている。JBC全体の財政が危機的状況になっており、健保金の保全はすでに不可能、健保金を流用したとしても下手すると2年から3年で組織自体が破たんすると試算されるからである。

 ここ数年のJBC財務諸表をチェックすると、管理費の中の委託費という支出科目が安河内氏失脚翌年から、異様な伸びを見せている。2011年まで200万前後だったものが、2012年1500万、2013年1200万、2014年1500万と、毎年1000万円以上が余計に出ているのが分かる。
 つまりこれが弁護士費用と推測される。
 さらに計4名の職員の不当解雇での敗訴、和解にかかる費用も、雑損失科目や人件費科目の伸びを見れば5千万はすでに支出されていると思われる。
 こうして1億近くもの金が消えたわけであるが、そもそもJBCは規模からいうと1億5千万ほどの正味財産しか持たなかった組織である。その三分の二を訴訟沙汰で失ったのであるから、これを財政危機と言わずして何というのか。現代ビジネスへの回答でJBCは「恒常的に著しい財務の悪化は認められません」と述べているが、恒常的なことなど誰も聞いていない、この数年の急激な悪化を危惧しているのである。
 亀田との係争を続けていく中で、このペースで弁護士費用が支出されれば、JBCはもちろん破産への道を突き進むことになる。ここについての明確な回答がないから、現代ビジネスにも「危機感が希薄」と切り捨てられるのだ。
 2015年末の実質上の正味財産は6300万円となっているが、このうち約5000万円は健保金で、治療費以外の使途は認められないと協会は主張している。それに対してJBCは「健康管理収入は一般収入であり、JBCが何に使っても問題ない」という見解を示している。
 この論争はどちらが正しいのであろうか。
 まず言えるのは、JBCの主張を正当と見なすには、全体の財産を減らさずに運営している、という前提があってのことだろう。例えば保険会社でも、顧客から預かった金は確かに収入として処理し、会社の運営に使える。しかし、全体の資産をわずか数年で3分の一にまで減らすような経営危機が表面化したら、顧客から「我々の預けた金を保全せよ」と突き上げられても文句は言えまい。
 健保金という名目でボクサーから強制的に徴収してきたのだから、「その使途は制限されない」という理屈を持ち出すなら、そもそも全体の財産を大きく減らすような経営をすべきではない。
 さらに言えば、JBCは2014年1月に健康管理見舞金専用口座を新設、そこに約6000万円弱を入金し、以後はこの口座で見舞金の収支を管理する、と協会に約束しているのである。
 経緯を振り返るとこうだ。2013年6月に、それまでの健保金制度を見舞金制度(治療費補助の上限を10万以内に収める制度)に変更する旨をJBCが各ジムに通達。しかし、一部のジムがその通達に対し、疑問を投げかけた。
 曰く「制度を変更するのなら、これまでの制度でいくら積みあがったのか、それをこれからどう使うのか、説明をすべきである」と。また「見舞金制度になることによって、健康管理というコミッションの重要な存在意義をなくすことにならないか」という質問もあった。
 それに対するJBCの回答は「JBCの財務状況はホームページに掲載されているから、それを見ろ」「健康管理は一次的にはジムの責任である」という、とんでもないものだった。
 これに怒ったのが、松尾会長を始めとする地方の協会員たちである。財務諸表を検証して独自に計算したところ1億700万円が健保金の残高であると判明し、この金額を保全するよう要請したのである。
 JBCはそれに対して残高は6000万円しかないと説明した上で、それを別口座に移し、以後はこの口座の資金は治療費以外で使わないと約束した。
 その口座を確定させた時、当時の森田事務局長名義で、「健康管理見舞金口座」と自ら呼称している文書を協会に出しており、これは協会の議事録にはっきりと記載されている。
 つまりこの時点でJBCは、健保金は会計上においては一般収入であっても、実態は基金的性格を持つ、と認めていることになる。
 現代ビジネスの報道によると、結局、この口座から訴訟費用が使われていることが判明し、残額はなんと2200万まで落ち込んでいるという。これは重大な約束違反であり、協会員が怒るのも無理はない。
 松尾会長は浦谷氏らへの刑事告訴を視野に入れているという。これが事件化されるかのポイントは、JBC執行部の特別背任を立証できるかであろう。
 特別背任罪は「組織運営に重要な役割を果たしている者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は組織に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該組織に財産上の損害を加えたときに成立する」と規定されている。
 健保金の訴訟費用への流用が、組織の存続のためにやむを得ぬ処置だったのか、それとも浦谷氏らが自らの保身のために裁判を長引かせ組織に損害を与えたのか、というところが争点になってくるのではないか。
 法律の専門家ではない私には、安易な結論は出しかねるが、気になるのは安河内氏裁判の判決において、浦谷氏が「クーデターの首謀者」と名指しされた上に、JBCの人事は違法だと認定されていることだ。これが特別背任の一つの根拠になり得ないか。
 さらにJBCにとって大問題なのは、JBCは公益認定を諦めたため、現在、特例民法法人から一般法人へと移行する段階にあり、移行法人と呼ばれる今のJBCは、それまでの資産の大半を公益目的の事業で放出することが義務付けられている、ということだ。訴訟関連の費用は明らかに公益目的とは認められないであろうから、裁判によって資産の三分の二を溶かしてしまった現在の状況では、万が一、認可行政庁の厳格な調査が入った場合、、間違いなくJBCに対し強烈な是正命令が発せられるだろう。
 いずれの視点から見ても、健保金問題でJBCの言い分を是とする根拠は、薄弱だと思わざるを得ない。
現代ビジネスやデイリースポーツの記事を見ても分かる通り、この問題に社会の関心も非常な高まりを見せている。ボクサーが命をかけて戦っている真横で、そのボクサーから徴収した資金を使って裁判遊びをしている(とみられる)姿勢は、到底理解を得られないだろう。
健康管理は、ボクシングをスポーツとして存続させるための根幹であり、コミッション制度の核ともなる事業のはずである。JBCには、そのことに真摯に思いを馳せてほしいと願う。