先日読者の方より教えて頂いて、立ち技格闘技のKrushの興行のストリーミング中継を見る機会がございました。
中継をやっていたのはテレビ朝日とサイバーエージェントの出資で設立された、ネットストリーミングサーヴィスのAbema TV。
Abema TVへのリンク
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https://abema.tv/
有料のネット配信業者が続々と参入する昨今ではありますが、Abema TVはテレビ局とネットベンチャーが組んだTV放送のような形式と無料が売り。通常の番組はCMが入りますが、Krushの中継は何時間にも渡ってノーCMで次々と試合が流れ、普段キックの興行を見ない自分には、選手は誰が誰やら分からないながら、大変新鮮で面白かったです。
先週末にはこれも立ち技のK1や総合のDEEPの中継が連日放送され、「格闘技のストリーミングにかなり力を入れているな」という印象を持ちました。DEEPではUFC帰りの菊野選手の試合が見れたりと、これもなかなか面白かったです。
有料配信大手のHULUでは、日本テレビ傘下になったことで、NPBの巨人戦のネット中継が始まったりしております。コンテンツを求める有料配信業者が、今後スポーツ中継に食指を伸ばしてくるのは確実と思われます。
ボクシングは相変わらず地上波テレビ中継一辺倒のビジネスモデルですが、キックや総合勢の柔軟さを見習う必要もあるのでは?と感じたのでありました。
改めてボクシング以外の格闘技も面白いなと感じた(旧徳山と長谷川が好きです)
ウルボ〜泣き虫ボクシング部〜(A Crybaby Boxing Club) 日本公式ホームページ
この映画はボクシングの強豪校として知られる、東京朝鮮高級学校のボクシング部を舞台にしたドキュメンタリー映画です。東京朝高と言えば日本プロボクシング史上最高のテクニシャンである徳山昌守を育んだ場所であります。徳山選手もOBとして出演しています。
この映画が生まれた背景には、今日本で大きな社会問題となっている在日韓国朝鮮人に向けられたヘイトスピーチがあります。
いわゆるネット上での差別言動をやってたバカが、実際に路上や実社会に出て、憂さ晴らしにしか見えない差別言動をデモと自称して大々的に始めたのは2010年前後でしょうか?
今年の5月にヘイトスピーチ対策法が成立、ようやくああいう低脳の類の振る舞いを規制する法的根拠が出来ました。余りにも遅かったとはいえ、ようやく日本も先進国並みの倫理基準を目指そうかという道についたところであります。
高校生達のインターハイを目指した闘いは勿論、朝鮮高校出身者同士の日本タイトルマッチなどプロボクシングの試合も取り上げられています。
モハメド・アリの死に際して、スポーツと政治や社会との関わりが大きく取り上げられていましたが、日本にだって似たような問題はあるのです。マイノリテイが自己実現の手段としてスポーツを選ぶということは、どこの社会でもある現象です。
本作に登場する東京朝校出身の日本ランカー尹文鉉選手(ドリームジム)は「どこにも属さない、属せない」という寄る辺ない自分の心情を率直に語ります。
監督は韓国出身で滞日十年というイ・イルハ氏。実は在日ではない韓国人は朝鮮高校に入るのは違法らしく、最初は迷いもあったそうですが、韓国人の目から見た朝鮮学校の状況や在日の歴史など大変興味深いものでありました。
単純に今まであまり紹介されてこなかった朝鮮高校の内部が見れると言う面だけとっても、貴重なドキュメントであると思います。
ここ数年ボクシング映画は力作が続いておりますが、本作も良い映画であったと思います。
劇場公開の予定がないということが大変残念な(旧徳山と長谷川が好きです)
読者の方より様々なご指摘を受けましたので、記事を改稿しております。会計には不案内なもので、まことに申し訳ありません。(2016年6月23日追記)
最高裁判決が確定した後も「当方としては、安河内氏にすみやかに出社するよう命じております」と、一切現実が見えてない居丈高なコメントを発表し、世間をポカンとさせた栄光のJBC統括本部長(笑)浦谷信彰氏。
2011年に怪文書に端を発する内紛に呼応するかのように安河内氏を追及して安河内氏を追い出し、一介の試合役員からJBC職員→事務局長→統括本部長(笑)へと階段を駆け上がった現代のシンデレラ…。
そんな彼が一連の騒動のさなかに、記者会見を開いてまで告発したのは、安河内事務局長が関西出張の際立ち寄った大衆ふぐ料理店の17000円相当の飲食費のレシートでありました。この飲食費を「不正経理である」と槍玉にあげ、公益通報までした浦谷氏。聞くところにようと当時彼は、この飲食費を告発した理由について「ボクサーの納めた金は一円たりとも無駄にしてはいけない」と言っていたそうです。なんと清廉な方でありましょう。
この時夕刊紙のコラムやブログを使って安河内氏の『疑惑』を焚きつけたのは、後に亀田兄弟への名誉毀損事件で敗訴し賠償を命じられる、悲運の捏造ライター片岡亮氏でありました。安河内氏の怪文書に丸ノリして
「僕が追っているものは、 たかが1万数千円のレシートだけではないですよ。」
とまでぶち上げながら、裁判に関する続報は皆無で、記者会見にすら現れなかった片岡氏。あの怪気炎は何だったのでありましょうか?景気のいい発言が今となっては虚しくこだまするのみです。
ちなみに「亀田兄弟に監禁・恫喝・暴行された」という狂言を広める記者会見と捏造ライター片岡氏への情報提供で仲良く敗訴した語尾を延ばすJBC職員氏は、浦谷氏の大学の部活の後輩で、安河内氏を追い出した後、浦谷氏と同時期にJBC職員となっています。
脱線しましたね。浦谷氏に話を戻します。
賢明な読者諸氏に置かれましては
「17000円の支出にすら、疑惑の目を向ける浦谷氏が統括本部長(笑)という要職に就いたからには、さぞJBCの財政状況は健全に維持されているのであろうなあ」
とお考えのことと思います。というわけで、JBC様のサイトにお邪魔して公開されている財務諸表から現在の財政状況をチェックしてみましょう。
財務諸表はWEBサイトにて公開されています
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平成27年度財務諸表
この表で注目すべきは貸借対照表の流動資産の項目にある『仮払金』の部分。

2014年、2015年の二年連続で、なんと1990万円→3600万円と多額に計上されているのです。ちなみにその前年は500円!なんだよこの増え方。
仮払金というのはサラリーマンの皆様にとっては出張旅費の前渡しでおなじみのシステムでありましょう。貰ったお金で新幹線や飛行機のチケット代やホテル代を払った後、残額を領収書を添えて提出すれば会計処理されるのが通例。一般に、企業や団体は仮払金を早く分類して会計処理したがるもので、まあ普通は出張から帰ったら「早く返しなさい」といわれる類のもんであります。そんな仮払金が3600万円も未処理のまま放置されていることは、財団法人としてはちょっと異常なことであると思います。
そもそもJBCの年間予算一は億円台というところ。そんな予算規模のところが3600万円もの仮払金を抱えていることも不自然です。
仮払金は会計上は資産に分類されるので、粉飾決算に利用されるということもままあるのだとか。苦しい財政状況を糊塗する為の手法でなければ良いのですが…。心配です(魚の死んだ目で)。
JBCの仮払金は、おそらく解雇した職員との一連の地位確認裁判が連続で敗訴となり、未払いの賃金や上告に際しての供託金などとして充当されたのではないか?と推測されます。
勝訴すれば返ってくる可能性があるから『仮払い』というのが、JBC側の一応の根拠なのでありましょうか?まあ現実は思ったような結果になってませんが。
と、ここでBBさんもコメント欄で触れられているように『健保金の残額が2200万円しかない』という情報が現在業界を駆け巡っています。
ご存知のとおり健保金はもともと、JBCが試合時の傷病対策・医療費として選手からファイトマネーの3パーセントを徴収して積み立てられてきた保険金的な資産であります。2011年度に安河内事務機局長が辞任する時点で1億2千万があったことが分かっています。
2013年度にJBCがこの健保金を一般会計に組み入れて、傷病時の支払い金額も減らすという制度変更決定(JBCのWEBに掲載されている制度移行の告示→告示 平成25年6月14日)をした時に、協会から抗議を受けて預金口座を切り離したという経緯もあります。この時点で協会サイドが確認した残額は5700万円という情報を当方は得ています。なぜか二年で6000万円以上が減っています。この時のJBCと協会の対立の様子は当方でも何度か記事にしています。
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健保金問題解決へ向けて
深刻事故を受けて ある文書から考える健康管理
当時掲載した資料を再掲します。この時点で問題点は予見されていましたね。

そして最新の数字といわれている残高が2200万円。
17000円のレシートで鬼の首でも獲ったように騒いでいた浦谷氏は現在の財政状況をどのように考えているのでしょうか?
上から目線で『出勤を命じ』ている場合ではないと思います。
トンチンカンな事実誤認記事で安河内氏や谷川氏を「ボクサーから集めた金を無駄使いした」と指弾したボクシングマガジン誌と、この記事に情報提供した城島充氏と浅沢英氏は、違法行為で無駄な裁判闘争を繰り返し億単位の金を失った可能性があるJBCを放置されるのでありましょうか?いやむしろこの違法行為を行った連中に、お墨付を与えて支援したという自覚はあるのでしょうか?
財政破綻が来る前に早急に手を打つ必要があると思います。
解決の方法がとんと思いつかない(旧徳山と長谷川が好きです)
いきなりですが、現代日本は誰が望んだのか知らないですが、コンプライアンス全盛のご時勢でございます。人気タレントや都知事ですら身辺のちょっとした躓き・綻びから、あっという間にドブ川に叩き落される息苦しい時代の趨勢…。
勢いマスコミに流通するのは、失敗を恐れてお茶を濁す無難な発言ばかりです。
いなくなったよサムライは…。痛快な本音トークで天下取りを目指す、トランプ候補のような猛者は日本にいないのか…?
先日、そんな現代社会の薄暗がりに、一筋の光明が差しました。
自分の責任を棚上げして、無茶を承知で上から目線のトークをすることで閉塞感に満ちた時代を打つその人の名は、日本ボクシングコミッション(以下JBC)の浦谷信彰統括本部長その人であります!
判決文で違法行為の首謀者にして当事者と名指しされて様々な批判を浴びていながら、そういう要素は華麗にスルーと言いますかガン無視といいますかなかったことにして、
「いろいろと向こうの主張が出ているみたいですが、コメントすることはありません。当方としては、安河内氏にすみやかに出社するよう命じております」(デイリースポーツより)
と言い放ったというじゃないですか!
「コメントすることはありません」といいながら、コメントしてるという根本的な問題点がかすむくらいの、上から目線のブレないコメントににじむこの男らしさ!最高裁で負けたと言う事実は、彼の思考には、微塵も影響を与えていないようであります。
捏造ライター片岡亮氏と共謀した名誉毀損事件で敗訴して、多額の賠償金を支払った語尾を延ばす職員もそうですが、違法行為を犯すことなど屁の河童でもないような職員が、JBCには何人かいらっしゃるようであります。
組織に逆らう奴がいたなら、違法行為も辞さず!
敗訴も賠償も関係ねえ!
とても普通のサラリーマンの感覚じゃないといいますか、なんとも頼もしいじゃないですか。
分けても浦谷氏は違法行為の首謀者だと裁判所に名指しされたあと、新設された上級職へと華麗なる出世をとげられています。違法行為をすればするほど出世する組織って、JBC以外じゃ任侠団体くらいじゃないでしょうかね?
時代の一歩先をいくJBCを今後も見守りたいと思います。
夏が嫌いな(旧徳山と長谷川が好きです)
会見は15時30分から始まり16時に終了しました。終了後会見場前で囲み取材が20分程行われました。
今後のJBCへの対応、また自身がJBCの一員として諸問題にどのような問題意識で臨むか等コメントがありました。
なおwikiにおいて「日本ボクシングコミッション事件」としてこの問題が詳細に記述されておりました。
貴重なドキュメントになるものと考えております。
JBCには司法判断を尊重した対応を望みます。
安河内氏にはJBCの正常化のみならずボクシング界そのものの活性化を期待します。
まあ、道は長いですが。
by いやまじで

本日行われた記者会見の速報です。出席者は30人以上もおり椅子が足りない状態で、質疑応答も活発だったとのこと。
質疑の内容については追って記事に致します。
会場で配布された概要を記載した資料を転載しておきます。




最高裁でJBCに完全勝訴し、JBCの事務局長であることが法的に確定した安河内剛氏が、6月16日15時30分より霞ヶ関の司法記者クラブにて記者会見を行います。加盟社だけでなくフリーの方も是非出席して下さい。よろしくお願いいたします。
安河内氏の旧悪(?)をブログや夕刊フジでこれでもかと暴き、彼の降格・解雇を援護射撃した上に、やたらと語尾を延ばすJBC職員と共謀して捏造記事を書くという名誉毀損事件で共同不法行為の認定を受けて賠償を命じられた片岡亮氏や、法廷では一切認められなかった「新コミッション」構想をボクシングマガジン誌上でまことしやかに告発した城島充氏、浅沢英氏もふるってご参加下さい!
言論人なら責任持とうね!
それと、安河内氏の地位確認が確定したということは、彼の地位を奪って事務局長になった森田氏及び浦谷氏には法的な正統性がなく、従ってその後に彼らが主導して行われた人事や制度の変更も法的な正統性が極めて怪しいということです。そこのところも踏まえて今後の展開をお楽しみに。
しかしJBCがらみの裁判全敗とJBCに賠償が生じる和解だけで。賠償総額は何千万円か~。弁護士費用入れたら幾らかな~。
負けてもなんの発表もなしか~。すごいな~。
昨夜TBSラジオの番組でモハメド・アリの特集がありましたが、大変興味深い内容でした。ポッドキャストにより公開されています。
再生はこちらから
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【Podcast】追悼・モハメド・アリ。史上最も偉大なチャンピオンは、何と闘ってきたのか?▼林壮一&粂川麻里生&高橋和夫▼6月9日(木)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)
『マイノリティの拳』の林壮一さんによる解説はちょっとユルい部分もありましたが、粂川麻里生さんが学生時代にアリの宿泊してるホテルに突撃して本人に会えたときのエピソードが最高でした。イスラムセンターのパンフレットにサインしてもらうなんてねえ~。
粂川先生と言えば
富樫リングアナは、大きな業績のある方ですが、ますます英語直訳の変な日本語で、あえて正直申し上げますが、もう聴くに堪えません。ちっとも興奮を盛り上げないどころか、観客も、選手も、迷惑がっている人は少なくないのではないでしょうか。考え直していただきたいと思います
と言う意見を『2015年のボクシング界に望むこと』として挙げておられましたが、先生の願いが通じたのか最近は余り富樫リングアナはお見受けしませんね。不思議ですねえ。
イスラムの専門家の放送大学の高橋和夫教授によるアリのイスラム信仰についての解説も大変勉強になりました。
音声は一週間で削除されるようなので、お早めにダウンロードして下さい。
TBSラジオのポッドキャスト撤退に驚いた(旧徳山と長谷川が好きです)
安河内剛JBC事務局長のブログに最高裁の判決文(?)がアップされましたので転載させて頂きます。
安河内剛事務局長のブログへのリンク
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最高裁で上告棄却 勝訴が確定致しました
最高裁の文書って初めて見ましたよ。長生きはするもんですね。全員一致です。当然です。
この結果は目に見えておりました。なんで上告したんでしょうね?頭悪すぎます。


明日以降の動きにもご注目下さい。
上告棄却ということで、確定判決は原判決を踏襲しているものと思われますので、地裁・高裁判決についての当方の過去記事へのリンクを貼っておきます。
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安河内裁判判決文のタグつき記事一覧へのリンク
個別の記事については以下のタイトルからごらんになって頂けます
安河内剛氏がJBCに勝訴した地位確認訴訟の判決文を転載します
安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART1
安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART2
安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART3 新コミッション画策編
安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART4
安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART5
安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART6
ようやく判決が確定しました
以下のスポニチの配信記事をご覧ください
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JBCの敗訴確定 元事務局長の解雇無効 情報漏えい認めず
全文引用させて頂きます
JBCの敗訴確定 元事務局長の解雇無効 情報漏えい認めず
日本ボクシングコミッション(JBC)を懲戒解雇された元事務局長安河内剛さん(55)が、地位確認などを求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は9日までに、JBCの上告を退ける決定をした。8日付。解雇無効とした二審判決が確定した。
確定判決によると、JBCは2011年6月、業務上の不手際を理由に安河内さんを降格。12年6月には「別団体を設立しようとした上、ボクサーの個人情報を外部に漏らした」として解雇した。
一審東京地裁は、別団体設立や情報漏えいは認められないとして解雇無効と判断。二審東京高裁も支持した。(引用以上)
違法行為を主導した面々、秋山弘志理事長、浦谷信彰本部長、捏造ライター片岡亮氏と結託して名誉毀損で敗訴した語尾を延ばすリングアナウンサー、高松クレメントホテルで亀田和毅が職員に暴行を働いてる現場を見たと虚偽の事実を吹聴した上に敗訴した裁判でも同様の主張をした関西事務局の職員らは、現在の地位にいる法的正統性がないのですから即刻辞任するとともに、謝罪し、あわせて法的・道義的責任を取らねばなりません。
また、いい加減な取材に基いてまことしやかに安河内氏による新コミッション構想を報じて、JBCの人権侵害が正しい行為であるかのような虚偽報道をしたボクシングマガジンと、その記事への情報提供者である城島充氏と浅沢英氏は、判決についてコメントする義務があると思います。逃げずに、なぜにあのような記事を出したのか説明して頂きたい思います。
失われた時間もですが、JBCが使った裁判費用、本来不要だったはずの組織をのっとった人間に支払われた賃金、一連の訴訟で解雇無効になった職員たちに支払われた未払い賃金とそこに加算される利子を合算すれば恐らく1億円超の支出になるのではないか?と思われます。
彼らの自分勝手な組織乗っ取り、不法行為でボクサーがコツコツと支払ってきた貴重な財貨が溶けてなくなったのです。この責任は一体誰がとるのでしょうか?
今後の成り行きにご注目ください。
判決が出るのに時間がかかりすぎだと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)
20世紀最高のボクサーにして、おそらく世界で一番有名なスポーツ選手でもあり、尚且つ反差別の激烈な闘士でもあり、ブルース・リーやゲバラのような人種や国境を越えて世界中の人に愛されたポップアイコン・トリックスターでもあったモハメド・アリ氏が、6月3日に亡くなりました。
プロボクシングが現在も世界中の人に愛されるコンテンツになっているのは、この人の功績でありましょう。日本じゃ『アントニオ猪木と変な試合をしたボクサー』として有名になってしまったという特殊事情はありますが…。
アリの人生を知るのに好適な本としては、トマス・ハウザーによる、上下刊合わせて1000ページを超える長大な評伝『モハメド・アリ―その生と時代』(岩波現代文庫)が読み応えが充分でおすすめです。『高校時代に遠征に行く途上ずっと汽車の窓から「俺は最高だ~」と叫んでた』、とか『「蝶のように舞い、蜂のように刺す!」と最初に言ったのはアリじゃなくてハロルド・バンディーニ』とか、『ザイール人を人食い人種呼ばわりしてザイールの外務大臣に注意された』とか、『スパーリングパートナーしてたスピンクスがアリが練習しないで女とずっとイチャイチャしてるので注意したら逆ギレされた』等々、面白いエピソードも沢山載っております。別れた奥さん達への取材も抜かりなく、アリの人間性が重層的に伝わる労作となっております。
そしてアリのライヴァルはやっぱりフレイジャーなんだよなあということも、この本読めば良く分かる。実直で口下手なフレイジャーはアリから散々「ゴリラ」とか「アンクルトム(白人にへつらう黒人の意)」とかなんとか罵倒されても言われっぱなし。だが、アリの悪口攻撃の影響で子供が学校で苛められたことで堪忍袋の緒が切れて、アリ戦に並々ならぬ闘志で挑んだというという経緯など、大変興味深いものでした。個性豊かなライヴァル達の存在があってアリもまた輝くことが出来たということが良く分かります。
映画ではやはり『モハメド・アリ かけがえのない日々』でしょうかね。アリのボクシングキャリアのクライマックスとなる『キンシャサの奇跡』でおなじみ、アリ×フォアマン戦のドキュメンタリーです。キンシャサでのアリの様子や、試合前に行われた黒人ミュージシャンによるライブコンサートなど、70年代の空気感がビンビン伝わる貴重映像がテンコ盛り。アリに対峙する若き日のジョージ・フォアマンの存在感も完璧です。
ドン・キングはキンシャサのアリ×フォアマンをプロモートしたと現在も広言していますが、実際に試合資金を提供してプロモーターを務めたのはザイールのモブツ大統領でした。アリ×フォアマンを開催し、全世界に衛星中継するという、どハデな国家宣伝を行った独裁者モブツは、97年に失脚するまで30年以上大統領を勤めました。コンゴ民主共和国がザイールという国名だったのはモブツ独裁の26年間だけで、アリ×フォアマンによって現代史の1ページに名前を残すことになりました。

徴兵っちゅうのは白人が黒人を黄色人種と戦わせて先住民から奪った国を守らせるってことだろう!
アリはキャリアのピークとなるべき期間を、徴兵拒否による裁判闘争で棒に振っており、「あの期間試合が出来ていたらなあ」というマニアも未だに多くいます。実際当時も「意地張ってないで、ボクシングするために兵役にいけよ」という人は多かったそうです。「後方の任務に行けるようにするから」というような働きかけもあったのだとか。だがアリは頑として我を曲げず、裁判を戦い抜きました。アリの不屈のイメージはこの時の裁判闘争から生まれたものだと思います。
KOラウンドの予告や、アリラップといわれた詩の朗読、時に露悪的ともとれる対戦相手への罵倒などのいわゆるキャラクター作りは、当時の反差別闘争の高揚とセットで考えなければ理解できない部分が多々あると思います。ザイールでの試合も「黒人によるビジネス」の模索の一環でありました。黒人によるビジネスにこだわりにすぎた結果、ドン・キングに偉い目に遭わされたりするわけですが…。
彼の巨大さはなかなか語りつくせないですが、今後も様々な評伝や研究書が出てくると思うのです、それを楽しみに待ちたいと思います。
ケン・ノートンの人生が壮絶すぎて驚いた(旧徳山と長谷川が好きです)