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HARD BLOW !

どちらも捏造だったSTAP細胞とスラップ訴訟 小保方晴子「あの日」を巡って

先日出版された、小保方晴子さんの手記「あの日」は、なんとアマゾンでベストセラー一位になるくらいの、爆売れ状態のようでございます。
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あの日 単行本 – 2016/1/29 小保方 晴子 (著)

私も先日書店で手にとって、パラパラとナナメ読みしたのですが、一番驚いたのは小保方さんの強烈な自己愛でありました。

ボストンへの留学体験はキラキラ女子の自己実現エッセイみたいな文体で、異常に詳細(不動産屋が現地のエイブルとか書く必要あるでしょうかね?)なわりには、捏造への言及は驚くほど淡白。データの捏造は、研究のパートナーだった若山照彦教授に全ておっかぶせる一方で、報道機関への恨み言はテンコ盛り。再現実験の失敗は理研のせいで、私はちょっとズルしたけど全人格を否定されるような悪人でしょうか!でもこんな私でも信じて応援してくれる人が沢山いるんです!笹井先生見ていて下さい、私やります!みたいな感じで、ちょっと読んだだけで、相当ゲンナリとしたのでした。

海外の研究者による追試や、本人の再現実験で一度たりともSTAP現象は確認されず、論文作成当時の実験ノートも無く、博士論文など過去の論文を検証してみればデータの操作やコピーばかり。まあはっきり言って、研究者としては食わせモンとしか言いようがない人で、膨大な研究費や高額な給料を返納せよ、と言う裁判をおこされなかったのがラッキー、と言うレベルであります。

でもそんな彼女にも、なぜか熱烈なファンがいて「小保方さんは嵌められたんだ!」「理研はけしからん」「STAP細胞の利権をつぶすアメリカのバイオ企業の陰謀がナンタラカタラ」(再現できない技術を巡ってなぜ抗争が起きるのかはナゾ)と言った感じで頓珍漢な論陣を張って、頑張っておられます。この本にも、そういった『信者』の皆様への、感謝の言葉が述べられています。

たまたま今のタイミングこの本を読んだ私は、捏造がばれた人には、ある種の類似点があることに気付きました。

それは

・主観的印象と客観的事実の区別がついていない

・自分が意図的にやった捏造が原因で苦境に陥っているのに被害者ぶる

・なんでもすぐ人のせいにする

・捏造をした当時の記録が無い

・嫌疑に対して具体的な反証をせず、「信者」がいることを自分の正しさの根拠にする

・「信者」にだけメッセージを送り、批判を無視する

・経歴や実績を『盛る』

・過去の仕事にも捏造が散見される

などなどであります。うーん比べれば比べるほど似てるぜ。

科学もジャーナリズムも、事実だけを前提にし、捏造はご法度と言うルールは同じ。小保方氏も片岡氏も、科学者やジャーナリストを名乗るような、素養も職業意識も無い人であった、と言えると思います。

というわけで、次回から判決文の分析に入りたいと思います

小保方さんは印税どすうるのかしら?と感じる(旧徳山と長谷川が好きです)

『ナイトクローラー』と『スマイリーキクチ中傷事件』から考える、需要と供給の問題

判決文の分析は今しばらくお待ち下さい。

いきなりですが、映画の話から。

昨年公開され、間もなくDVDも発売となる『ナイトクローラー』と言う映画を、皆様ご存知でしょうか?



この映画は、ひょんなきっかけで、交通事故や犯罪現場の『衝撃映像』を撮影して、テレビ局に売るフリーカメラマンになった青年の物語。主人公は、最初は愚直に警察無線を傍受して普通の取材をしていましたが、クライアントであるテレビ局のディレクターに言われるまま、エグイ映像を求めて次第にエスカレート。事故現場の死体を動かしたりして、現実を改変すると言ったタブーをおかし、最後には映像を撮る為に他人を焚きつけて事件を起こそうとすらします。

自分が撮った映像の反響を受けて、どんどんエスカレートしていく主人公の姿は、まさに狂気といった感じなのですが、同時にそれは、より強い刺激を求める周囲のスタッフや、視聴者の欲望の写し絵でもあるとも言えるわけです。

で、その関係性は、攻撃対象を貶める目的で捏造記事を書いてしまう片岡氏と、彼を利用してJBCを乗っ取って職員になって亀田に敗訴したリングアナウンサーと、「亀田がやったに決まってるよ!片岡さん応援してます!」式の思考停止をしてるボクシングファンの関係と似たとこがあるな思った次第。

で、昨日コメントでちょっと取り上げたブログの如く「火の無いところに煙はたたぬ!」的な根拠で、片岡氏が正しい!亀田が悪い!と九官鳥のように繰り返してる「ボクシング愛に溢れた頭の悪い皆様」のありようを見て思い出したのは、スマイリー・キクチさんのネット中傷事件でありました。

キクチさんのインタビューへのリンク→ネット上の中傷「加害者を減らしたい」 お笑い芸人のスマイリーキクチさん

お笑い芸人のスマイリー・キクチさんは、「女子高生コンクリート詰め殺人事件の犯人グループの一員だった」と言う内容のデマをネットで流されて、何年にも渡って中傷されるという、とんでもない被害に遭いました。この事件で、警察のご厄介になった中傷犯の皆さんの動機は、『正義感』でありました。根拠も不確かなネット上のうわさを「みんな言ってるからそうなんだろう」と妄信した結果、深刻な人権侵害を生んだわけです。

「亀田が悪いに決まってる」「亀田がやったに決まってる」と繰り返し彼が犯罪者であるかのように書いていた人は、本来なら判決が出た時点で、間違いを認めるのが普通です。ところが未だに、火の無いところに煙は立たぬと開き直って中傷を続けている向きばかり…。これはっきり言って、人権侵害であり違法行為です。

「亀田の試合はつまらない」「反則をしたからケシカラン」「態度が嫌い」「顔が嫌い」と書くのは批評です。

しかしやってもいない監禁や暴行を「やったに違いない」と書くのは、ただの違法行為です。

そういった基本的な社会常識すら踏まえていない人が、ボクシング愛を語るなどは噴飯ものであります。

ボクシングファンを名乗るなら、世間一般の人から見て恥ずかしい行為はしないで頂きたいと、切に願います。

むしろ「やってもいない悪事をやったと言ってすいませんでした」と、亀田兄弟に謝罪するべきなのに…。

小保方さんの手記を読んだら眩暈がした(旧徳山と長谷川が好きです)

今日はいろいろありました

捏造記事を書いた片岡亮氏に司法の鉄槌が下ってから、一日が経ちました。

マスコミ報道は、JBC職員に勝訴した時の方が、はるかに多かったですね。まあ判決については『消化試合』だったので、あんまり関心が無かったのかも知れませんね。焦点は賠償金額だけでした。

当方はすでに判決内容を入手し、鋭意分析中です。今しばらくお待ちください。

我々はこの裁判も、資料の分析をし、裁判を傍聴し、当事者にも取材し、専門家の意見も聞いた上で記事にしています。

ネットで聞きかじったことだけで印象批評してる、低脳ボクシングマニア連中とは次元が違うと言うことは分かっといて下さいな。

片岡氏は明日テレビでコメンテイターするそうです。捏造で他人を陥れて賠償を命じられた人が、ちゃんとしたジャーナリストや専門家に混じって、社会問題や事件を語ることは、公益上大変重大な問題があると思います。MXテレビは東京都も株主ですから尚のこと、このような人物を使うのは問題があると感じます。

というわけで判決文の分析をお楽しみに。

判決後ツイッター経由で色んな人からコンタクトがあった(旧徳山と長谷川が好きです)

とりあえず速報 ゴシップライター片岡亮氏がブログ記事での名誉毀損を認定され亀田兄弟に敗訴

見出しの通りです。

判決の言い渡しを傍聴した方によりますと、亀田興毅氏、亀田和毅選手双方に150万円と、原告側の訴訟費用の一部(割合は聞き取れず)の支払いを命ずる判決とのことで、まあざっくり300万円の賠償と言う感じすね。

判決を知ったのは昼休み中だったので、とりあえずHARD BLOW!のツイッターで速報を打ったところ、亀田興毅氏や吉田豪さんにリツイートしていただき、なんと現在43リツイート。フォロワーが19人しかいない過疎アカウントには出来すぎでありましょう(笑)。

ハードブローのツイッターへのリンク

時事通信より短信も配信されています。
     ↓
亀田兄弟への名誉毀損認める=フリーライターに賠償命令-東京地裁

以下記事を全文引用いたします。

ブログに事実と異なる内容の記事を掲載され名誉を毀損(きそん)されたとして、プロボクサー亀田3兄弟の長男興毅さんと三男和毅選手が、フリーライターの片岡亮氏に計2000万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁(中吉徹郎裁判長)は27日、「ブログの内容は真実とは言えず、裏付け取材も十分と認められない」と判断し、計300万円の支払いを命じた。

 判決によると、片岡氏は2013年9月、次男大毅選手の世界タイトル戦について自身のブログで触れた際、「試合の舞台裏で、亀田陣営が日本ボクシングコミッション職員に対し暴行やどう喝を行った」などと記載した。 (2016/01/27-18:26)
(引用以上)

片岡氏の記事のネタ元として、ガセネタを流したと裁判で認定されたJBC職員氏の賠償金額は320万円ですので、それより少ないですね。ですが、あちらは亀田兄弟以外にもジムのスタッフに対する賠償も含まれていましたので、まあ金額的にはこんなもんですか、という感じですね。

たまたま直前に、週刊文春が掲載記事を巡って、橋下徹氏に訴えられた裁判で和解しましたが、その和解金額が200万円とのこと。ブログ記事で300万円は結構厳しいとも言えると思います。

当ブログでも、過去にマスコミ記事とブログ記事の名誉毀損の賠償額について、比較検討したことがございます。
                ↓
二つの判決から考える名誉毀損

できるだけ早期に判決文を入手し内容を精査するとともに、皆様にお伝えしたいと思います。しばらくお待ちください。

それにしてもスラップ訴訟とかなんとか言ってた連中はなんだったの?と思います。とっととコメントするべきと思います。

余りにも予想通りの判決でなんの驚きもなかった(旧徳山と長谷川が好きです)

明日は判決

いよいよ明日、亀田兄弟がゴシップライターを名誉毀損で訴えた訴訟の判決が下ります。

賢明な読者の皆様におかれましては、同じ事案を巡って事実関係が争われ、JBC職員が敗訴した裁判の顛末を見れば、判決の予想はおおよそつくかと思います。

嘘をついて他人を陥れ、事実が露見しても恬として恥じないという連中はこれから高いツケを払うことになります。

そしてその尻馬に乗って「亀田を追い出せ」と囃し立てた、現実を見れないバカ連中は一体どういう対応を見せるのでありましょうか?

ジックリ観察させて頂きます。

それと判決前に裁判についてどのような発言をしてきたか、も併せて厳しく検証していきたいと思っとります。

まずは明日の判決をお待ちください。

これまで彼の被害にあった方は勇気を出して声を上げていきましょうと言いたい(旧徳山と長谷川が好きです)

業界のタブー?

昨年末お笑い芸人が学校の校舎に忍び込んで女学生の制服を泥棒したというニュースで驚いていたら、年が明けたらハーフタレントがパブリックイメージと真逆の不倫騒動を起こし(どうでもいいですが『卒論』じゃなくて『中退届』じゃないの?と思えてなりません)、それで「へー」と驚いてたら、今度は大手芸能プロのアイドルグループが独立・解散騒動と、芸能ニュースで大ネタが相次いでおります。

当初日刊スポーツがスクープと言う形でスッパ抜いた『独立問題』ですが、出遅れた他のスポーツ紙は「独立すれば干されることは必至」「独立は芸能界ではタブー」と言った具合に軒並み事務所サイドのスピンコントロールにまんまと乗せられているような感じでございます。まあ今後の付き合い考えたら事務所サイドの肩持った方がいいんでしょうね。

あのグループの計上する売り上げは一説には年間200億円超とも試算されており、それがかれこれ15年ほど続いていると推測されますからなんだかんだで3000億!そんだけ事務所に貢献しても、独立しようとしたら「タブーを犯した」「恩知らず」「干されてもしらねーぞ」と言われるなんて、まるで江戸時代の年季奉公のようであります。

ミュージシャンや俳優が自分が仕事しやすい環境を求めて、信頼できるスタッフと独立していくのはごく自然なことだと思うのですが、なんでこうまで異常事態といわれてしまうのでありましょうか?

まして合法的に契約関係を解消したあと、政治力を使って仕事を妨害するような陰湿な行為を批判することなく、「干されて仕事がなくなるよ!どうするの?」てな具合に書いてるスポーツ紙の記者には呆れてしまいます。

日本の社会と言うのは個人に冷たく組織に甘いなあと再認識致しました。

とはいえ当事者の彼らは年収が億単位と言う、比較的恵まれた立場ではありますし、戦う手段もまだあるでしょう。

でまたもボクシング界の話であります。

『移籍はタブー』どころか「引退しようとしたら妨害された」とか、逆に「その気も無いのに引退させられた」なんて話も聞きます。
全てはジムの会長の胸先三寸です。
現役中にジムを持つのはご法度だし、マネジメントはクラブオーナーしかできないルールです。

以下は私が選手本人または選手に近い方から聞いた実例です。

A選手のケース

チャレンジャーとしてタイトル挑戦が決まっていたA選手ですが練習中に怪我をしてしまいました。やむを得ず試合をキャンセルしましたが、ジムの会長は彼に「ジムが損害を蒙ったから金を払え」と要求。キャンセルの時点で試合までは一ヶ月以上あり、損害の根拠も判然としないのですが結局彼は会長の要求する金額を支払ったそうです。ファイトマネーが入ってこない上に金までとられては信頼関係など成立しないのではないでしょうか?

B選手のケース

請われて出稽古に行った先であるランカーとの対戦をオファーされたA級ボクサーのB選手。対戦相手は注目選手ですがなかなか相手が決まらず難渋していたということで、興行のメインで20万円のファイトマネーを提案されます。早速ジムに帰って会長に報告すると対戦を了承されます。しかし後日会長から「ファイトマネーは10万円だ」と言われます。B選手は「それはおかしいでしょ!この試合は会長に関係ないところで僕が持ってきた話で金額も僕が交渉したんですよ。それがなんで半分になるんですか?」と抗議。半分の10万円を会長が抜いていることは明らかでありました。するとその会長は怒り出し「お前がそういう態度なら、もうこの話は無しだ!」と相手方に勝手に断りを入れ、試合自体が消滅してしまいました。

結構この手の話はあるんでしょうかね?

大手でも世界チャンピオンになってもバイトがやめられないとか、夜な夜な会長の奥さんが宗教の勧誘にやってくるなんてジムもあるようでございます。

クラブオーナーがマネジメントとプロモーターを兼ねる現在の日本の業界慣習ではグローバルビジネスになったボクシング界に打って出ることは出来ないのではないか?と思えてなりません。

昨年は日本ランカーが一般の方に暴行して逮捕されると言う事件も起きました。勿論本人の責任も重いですが、マネジメント側がキャリアに応じた目標設定をしなかったことで、選手のモチベーションを保てなかったことも遠因ではないのかと思えます。マネジメントする側もプロとして選手がボクシングに集中して情熱を燃やせるような環境をつくる努力を怠ってはならないのではないでしょうか?

WOZジムの大森選手にしても、リスキーなマッチメイクで試合を落としたのに、会長が「未熟。一番警戒していたパンチをもらう。ただの未熟。調子に乗っていた。てんぐになってた部分はあるやろうし」と梯子を外してしまう。そうじゃないでしょ、試合を組んだのはあなたでしょ、と。

一昨年の和気選手のトラブルの時も書きましたが、この業界なんかあったら選手のせいという安易な総括がちと多すぎやせんでしょうかね?

奇妙な因習はなくなって欲しい(旧徳山と長谷川が好きです)


エゴの荒波

先日、海外から配信された有名選手のインタビューにおいて、思わぬ形で日本人選手が言及されました。

時事通信が1月7日に配信した

メイウェザー氏、ボクシング界には「人種主義がある」(←記事へのリンク)

という記事。fighthype.comというアメリカのボクシングポータルサイトに載ったメィウエザーのインタビューを引用する形で彼の発言がまとめられています。

元記事はこちらです
   ↓
 FLOYD MAYWEATHER SOUNDS OFF ON THE STATE OF BOXING: "I TRULY BELIEVE THAT RACISM STILL EXISTS IN THE SPORT"

時事通信がつけた見出しは『人種主義』となってますが、訳が間違ってるのでこれじゃなんのことやら分かりません。racismの訳語は普通『人種差別』です。メイウェザーは「スポーツ業界には未だに人種差別が横行してるで」と色んな黒人選手の実例を挙げながら怒ってるわけです。
「白人選手がトラッシュトークすると歓迎されるのに、黒人の私がやると批判される」
「バーナード・ホプキンスは相手を選んでると散々批判されたけど、GGGが似たようなことしても誰も批判しない」
「ロンダ・ラウジー(白人女性MMAファイター)はちょっと活躍したら芸能の仕事が沢山来たけど、彼女より美人なレイラ・アリが同じくらい活躍しても全然そういう仕事が来なかった」

などなど黒人同胞の不遇を嘆いた彼は、その一連の流れで

「アンドレ・ウオードは無敗で、勝ち方も凄いのになんでリングマガジンのPFPランキング一位じゃないの?悪いけど9位の日本人は私は名前すら知らないよ」

この9位の選手と言うのが山中慎介選手。リングマガジンのせいで迷惑なトバッチリ!まあ山中選手を批判してるわけじゃあありませんが…。

でこの発言それなりに重要な指摘を含んでるとは思うのですが、彼が過去トラッシュトークでアジア人をステロタイプ化する蔑視発言をしてたことも相俟ってイマイチ議論にはなっていないようでございます。

しかし彼が言ってるのは『人種差別』というタームは刺激的なものの、要は「感情バイアスで選手の評価を曲げてるんじゃないの?」ということで、「亀田が~」「井岡が~」式の日本のアホなファンの頑迷さに対する批判にもなっていると思った次第。

それ以上に公共の場所でトップ選手(というか世界一稼いだアスリート)がこういう意見発信が出来る土壌があることが大変すばらしいことだと思いました。日本のファンはボクサーに社会的な発言なんかハナから望んでいないでありましょうが。ボクサーが「次も頑張ります」「ファンの皆様のおかげです」「本田会長ありがとうございます」以外の本音をしゃべれる日本になって欲しいもんであります。なんかいうとすぐ規制するんじゃなくてね。

しかし山中選手はメィウエザーの強烈なエゴのとばっちりで本当にお気の毒でした。メィウエザーに「あん時は私が無知でした」と言わせるような今後の活躍を期待いたします。

もう一つ、WBAが普段は滅多に出さない対戦命令を出したという話題。

WBAが来月イギリスで行われるクイッグ×フランプトンのWBA・IBF統一戦の勝者に対して休養王者リゴンドーとの対戦を義務付けました。

クイッグvsフランプトン、WBAが勝者にリゴ戦指令

リゴンドーは休養王者ちゅうことになってますが、これは明らかにビジネス上の都合で実質はスーパー王者に据え置かれている状態。でクイッグは正規王者ですが統一戦をするそうです。

亀田和毅の時は「スーパー王者がいる階級で統一戦をするのはルール違反で許しがたいぞウガー」と吹き上がっていた低脳ボクシングマニアも海の向こうのイギリス人がやる分にには随分寛容なようでなんとも微笑ましい。メイウエザーが差別と呼んでいたのもこういう感情バイアスに支配された不公正であろうと思われます。

イギリスは今ボクシングバブルで、世界戦ともなればサッカー場で試合やって万単位の動員があるのだとか。映画の『クリード』もクライマックスはリバプールのサッカースタジアムでしたね。

リゴンドーのマネジメントがロックネイションスポーツに移っていきなり政治力(というか資金力)を使ってWBAに対戦命令を出させることに成功とは余りに分かりやすい顛末。まあ傭兵のローマン使って帝拳がやった井岡潰しと同じ構図ですな。

今後はイギリスのファイターの戦いに食い込んで稼ぐか!と言う算段のようですが、勝者との交渉がまとまらなければ入札と言うことになるそうで、イギリス人ファイターとすればどっちが勝っても悩ましい対応を迫られそうです。ロックネイションが幾ら出すか次第でしょうが。

更に悩ましいのがIBFタイトルの扱いで、IBFは勝者に対して90日以内に指名戦をするように義務つけています。この指名挑戦者が日本の和気真吾選手。統一戦の勝者は

WBAタイトルを保持すればリゴンドーとの対戦義務が生じ、IBFの指名期限は守れないのでIBFタイトルをリリース。

IBFタイトルを保持すればリゴンドーとの対戦義務が消化出来ずWBAタイトルをリリース。

という選択を迫られることになんのでしょうか?WBAの方は「ちょっとIBFの指名試合終わるまで待ってくれ」と言ったら金次第で待ってくれそうですが…。

とうのとっくに指名挑戦権を得ていながらお預けを食わされている和気選手が不憫です。マネージャーに交渉力がないとこのまま人気選手のエゴに振り回され続けることになるような気がしますな。

やっぱりスーパーバンタムあたりになると海外の事情に翻弄されるねと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)




今年も休憩は長かった…大晦日 井岡、高山ダブル世界戦観戦記

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やっぱり今回も休憩は長かった!ただし試合は面白かった!というわけで大晦日の生観戦記であります。

前回は世界戦二試合と井岡のノンタイトル戦がテレビ中継のタイムスケジュールにあわせてとびとびで挙行された為か進行が見事にグダグダになり、不可解な休憩の連発に会場の空気もダレまくりなうえ、途中退場禁止なのに食べ物も飲みものも売り切れてまさに監禁状態といったストレスフルな観戦体験となりました。まあメインのリゴンドー×天笠が良かったのが救いですが。

今年は大雑把なタイムスケジュールは事前に入手していたので、昨年ほど酷くないことはわかっちゃおりましたが、食料と飲み物は確保した上で(持ち込み禁止らしいですが確実に売り切れるので。禁止するならちゃんと量を確保した上で禁止してほしいものです)一応の覚悟はして会場に突入したのでありました。

入場した時は丁度橋詰将義×タイ人の試合中。今回のアンダーは日本・東洋タイトルマッチ以外全て井岡ジム×無名タイ人という潔い構成。橋詰の相手のタイ人は早々に『お仕事』を終えてリングを降りましたが、その次の宮崎亮選手と試合したタイ人はなかなかやる気があり、レスリングで宮崎を転ばして挑発したりとふてぶてしいところも見せてお仕事では終わらぬ健闘ぶりでありました。とはいえ最後は宮崎のビッグパンチを浴びてKO負け。ここで早くも一つ目の予備カードが投入されますがこれも序盤KO。この時点で、午後五時過ぎですが早くも一回目の休憩であります。

休憩明けは山本隆寛選手×ストロング小林祐樹選手の東洋バンタム級タイトルマッチ。8月に川口裕選手とのダイレクトリマッチを制して戴冠した山本選手の初防衛戦ですが、これも小林選手の固さが取れない序盤で山本選手がのびのびと強打を打ち込んで圧倒し、4度のダウンを奪って2回TKO勝ち。

井岡ジムが公開している山本×小林の試合動画
タイトルマッチも序盤KOとなって、ここで二試合目の予備カード投入。ですがこれも1RKOでここで二度目の休憩。

休憩明けは石田匠選手×大塚隆太選手の日本スーパーフライ級タイトルマッチ。無敗のテクニシャン石田は、ここ二試合はちょっと精彩を欠くといいますかもどかしい試合が続いていましたが、この日は目の覚めるようなデキでありました。生命線のジャブは切れているし、スピード差も明らか。1R二分過ぎにリングの中央で右ストレートを当てると早くも大塚の腰が落ち、ロープ際に追い込んで右を追加すると大塚はダウン。2Rも序盤にジャブでコーナーに詰めると大きな右ストレートを当てて二度目のダウンを奪取。石田はジャブで試合を支配し展開は一方的になります。4Rに入って石田選手が一方的にパンチを浴びせ大塚選手の手が出なくなるとレフェリーが試合をストップ。同時にセコンドからもタオルが投入されて石田選手のTKO勝ちとなりました。

この日は石田選手の良いところだけが出た完勝でありました。私個人的にテクニカルなジャバーが大好きでして、石田選手のボクシングは超好み。サーシャのようだと言ったら褒め過ぎでしょうかね?スーパーフライは激戦区ですがこのまま強くなって頂きたいと思います。

それにしても、アンダーカードの動画をこうしてジムサイドがアップしてくださるの素晴らしいファンサーヴィスだと思います。

これで予備カードも含めてアンダーカードが全て序盤KOで終わって、時刻は6時20分くらい。世界戦の開始は8時前で一時間半の空き時間がございます。ここから井岡ジム興行恒例のなが~い休憩のスタート。観戦仲間とダラダラ雑談すること90分。心の準備もあって昨年より苦痛は少なめでしたが、なんかこうほんとどうなかならんすかこれ?大晦日に無為な90分は心理的にも時間をドブに捨てた感大であります。エントランスに外車をずらっと並べるような意味不明なサーヴィスはいいんで、入退場できるようにしてくれないですかね?マジで。

まあなんだかんだ久々再会した観戦仲間とウダウダと話しているうちに、会場の明かりが落ちてセミの高山勝成選手×ホセ・アルグメド戦となりました。ちなみにこの日はアンダーの東洋タイトルマッチも日本タイトルマッチも『君が代』は無し。世界戦で初めて国歌が流れました。

今回の試合前は恒例になっている練習の見学も当方の都合で出来ず、ノースパー調整であると言う情報をマスコミ経由で知りました。切れやすくなっている瞼を調整過程で切るリスクを排除することが一番の目的なのでしょうが、ヴェテランの域に入った高山選手の選手生命を考えても、不要なリスクを排除することは、私には合理的な選択と思えましまた。前戦の原隆二戦では調整過程でウエイトが思ったように落ちなかったということを考えても、調整方針は毎回ある程度手探りの試行錯誤にならざるを得ないのであろうと思えます。

対戦相手のアルグメドは昨年末指名試合の対戦相手として名前が出ていましたが(当時最上位の3位)契約トラブルで交渉ができなかった選手であります。その後試合枯れでランキングは落ちましたが、実績はある選手です。事前情報は乏しかったですが、ラフなファイターでかなり荒っぽい選手だということ。

とはいえメキシカンとの対戦経験も豊富な高山選手が捌ききるだろうと楽観していたのですが…。

1R序盤は高山選手のフットワークも良く、軽快な出入りでテンポ良くパンチを当てて順調に見えました。ただアルグメドはパンチの伸びや、反応の良さといったいわゆる天性の部分に強さを感じさせる好選手で、攻撃姿勢も良く、手数を出して応戦します。2R心配されていたバッテイングで高山選手の瞼が切れると、高山選手の戦略が狂ったのか、打ち合う場面が増え、アグレシッブなアルグメドがペース握り高山選手の顔面に再三好打を打ち込みます。高山選手もボディ打ちで応戦しますが、アルグメドは高山選手のプレスと手数攻めにひるまず変則的なフォームで荒々しく攻め続けポイントをピックアップ。フィジカルが自慢の高山選手に見劣りしないくらいスタミナも旺盛で、なかなかペースが落ちません。高山選手は距離が中途半端で戦略が定まっていない印象ですが、それ以上にアルグメドの気迫と攻撃力が良く目立ちます。また個人的には印象的だったのは避け勘で、高山選手の連打をまともに喰らわない巧さがあり、ただの攻撃型の選手ではないなという印象でした。

私がいた二階席からは出血具合は良く分からなかったのですが、9Rのドクターチェックを受けてレフェリーが試合を止めて負傷判定2-1でアルグメド。レフェリーが日本人だったので「高山選手の勝ちになればもめるかな?」と思いましたが、その心配はなくなりました。アルグメドは人口百人ほどの村の出身ということで、そういうところも含めてラバナレスに似てるなと思いました。スタミナや手数で高山選手に拮抗して打ち勝ったというところは驚きでした。また気迫やフィジカルの強さも見事であったと思います。

高山選手は後半型なので惜しいところで試合が止まって残念でしたが、とにかくこう毎回瞼が切れていては不確定的な要素が強すぎるよなと感じました。厳しい試合をしてきた結果であり仕方が無いのですが、まだまだ体は動くのに瞼が仇になってベストなパフォーマンスがなかなか出来ないと言うのは悩ましい、勿体無いなと思います。

とはいえ海外行脚から国内復帰までずっと走り続けて来た高山選手とチームの皆さんにはまずはゆっくりと休んでいただいて、今後の方針はジックリと考えていただきたいと思います。大変お疲れ様でした。アルグメド選手はおめでとうございます。

ここからまたもお馴染み休憩タイム。今度は30分ほどなので、感覚が麻痺してる身には短く感じます。

メインは井岡×レベコの再戦ですが、自分としては再戦が見たかったので願っても無いカードでありました。

亀田引退後のバッシング対象をさがしたい、というさもしい動機を持った偏狭・低脳ボクシングマニアに、何やってもケチつけられる井岡一翔ですが、日本の歴代ボクサーの中でも有数のテクニシャンであることはまともな見識があるスポーツファンには明らか。分かりやすいKOでないと面白さが分からない感性が鈍磨したファンにはその真価は分からんのやも知れませんが、私は彼の惚れ惚れするようなテクニックが大好きであります。あの技術は生半可な努力で身に付くものでないことは明らかでありましょう。しょうもない揚げ足取りは無視して、今後とも我が道を行ってほしいものであります。

前回の対戦ではレベコのプレッシャーにひるむような場面も多々見られ、また勝ちに徹した結果か、ややパンチに力が感じられなかった井岡。一方のレベコは勇気のある踏み込みや、パワフルで切れのあるパンチで井岡のテクニックに対抗し拮抗した試合を演出しました。今回はその決着戦であります。井岡がレベコに引導を渡すか?レベコが井岡を粉砕するか?

試合の趨勢は1Rで明らかになりました。井岡のシャープなジャブが三度、四度とレベコの頭を跳ね上げ成長を印象付けます。一度対戦したことで上積みがあったことは明らか。またジャブが当たることで、得意のボディ打ちも生きてきます。3Rにはボディでレベコの体を曲げて、ダメージを印象付けます。この日の井岡はとにかくパンチが的確で手を出せば当たるという感じ。前回はレベコのプレッシャーに押されて体重が乗っていないと感じられたパンチも、今回はしっかりと打ち抜かれていると言う印象です。レベコもアグレッシブさを印象付けるものの有効打の差は歴然。井岡はいつもの『打たせず打つ』スタイルながら、明らかにパワーアップしており「本当のフライ級になったな」という印象。多彩なパンチでレベコの出口を塞ぐかのように追い詰めていく姿は詰め将棋のようであります。迎えた11R、かなりダメージが蓄積したと思しきレベコにまたもボディアッパーが突き刺さり(しっかり左フックも返しておりました)、ついにレベコがダウン。積み重なるダメージをプライドだけでこらえていたかのようなレベコの気持ちが切れたのが伝わる、印象的なダウンでありました。レベコが倒れたままレフェリーが試合を止めてTKO。井岡の完勝でありました。レベコ優勢につけていたジャッジがいたことが信じられません。

井岡はジリジリと確実に成長している印象で、本当に努力型の選手なんだなと再認識しました。

一方のレベコは前回の試合後は控え室に篭城したり、今回は試合前にグローブにクレームしたり、という感じだったので「ローブローだ」とかなんとか負け惜しみでも言うかと思いきや、潔く負けを認めて井岡を称え一流選手らしい振る舞いを見せてくれました。試合後ずっとコーナーにへたり込んでいる姿が気の毒だったなあ。KO負けは初めてでかなりショックだったようです。

というわけで休憩は長かったですが試合は面白く満足した観戦となりました。今年も出来る範囲で会場に通おうかと思っております。

記事にしてないけど結構試合も見に行ってる(旧徳山と長谷川が好きです)

2015年回顧と2016年展望

 2015年の私的ベストファイトを選んでみた。

 第3位 フロイド・メイウェザー・JR vs マニー・パッキャオ

 冷めたご馳走感はあるが冷めてもご馳走。待望の一戦の実現である。
 興味は言うまでもなくパッキャオの強打がメイウェザーを捕らえるのか、メイウェザーの超ディフェンスがパッキャオをかわし切るのか、の一点。
 試合展開は、前半パッキャオがメイウェザーに効かせる場面を作るものの、メイウェザーがパッキャオの動きをインプットしパッキャオの強打をかわす。中盤からはカウンターでポイントを稼ぎ、そのまま判定勝利。これまでの挑戦者の負けパターンにパッキャオを嵌めてみせた。
 試合展開としては想定の範囲内で意外性はなかったが、二人の生ける伝説ボクサー同士の対決、その頂上レベルのファイトを十分堪能できた。
 パッキャオはラストマッチの相手にクロフォードが噂されているが、個人的にはダニー・ガルシアあたりと戦ってほしいが、まあ、ないであろう。

第2位 山中慎介 vs アンセルモ・モレノ

 現在のバンタム級の頂上対決。モレノはこの時点で無冠とはいえ高いディフェンステクニック、12度防衛の実績。山中も8度防衛の安定政権を構築。個人的には統一戦気分の観戦である。
 モレノは2階級制覇を目指したマレス戦、王座陥落のパヤノ戦と、ワイルドでトリッキーな攻め(ゲリラ戦)に弱点を見せた格好で、山中がどのような戦い方を見せるか興味深かった。
 試合は立ち上がりからジャブの差し合い、静かな間の取り合いの感が強く、これはどちらかというとモレノの得意とする土俵。中盤まで山中がやや苦しんでいる印象。6Rから山中が足を使い、相手の間合いの取り方を壊すように自分のリズムでパンチを繰り出し始める。山中は流れを呼び寄せたように見えた。最後まで拮抗した戦いだったがリズムよくヒット数も多かった山中の判定勝利で妥当だったと思う。
 セコンドワークが大きかったようだが、試合の流れをコントロールするための工夫が生きた試合だった。
 実力者同士の拮抗した戦い、緊張感溢れる試合だった。 

第1位 ローマン・ゴンザレス vs ブライアン・ビロリア

 ビロリアは浮き沈みのある選手で、この階級でもエストラーダに敗れているが、よい時の彼は手がつけらないほど強い。この日の彼は素晴らしいコンディションで臨んでいたように見えた。スピード、体の切れ、力強さ、すべてにおいてベストだったと思う。

 そのビロリアに対してゴンザレスがどんなリアクションをするか注目していたが、押し込まれることも怯むこともなく、いつもとほとんど同じ彼であった。

 身体をローリングさせながら攻撃と防御とが一体となったような前進ファイト。相手のパンチの勢いを逸らしながらその力をパンチの力に変えていく。絶好調に見えたビロリアが徐々に、しかし確実に消耗していく。

 この日のビロリアの圧力もかなりのものがあったはずで、ゴンザレスもそれは感じたはずだが、それでも顔色一つ変えず対応してみせた。その意味でこの日もゴンザレスは底を見せなかった。
 この驚異の強さが印象的な試合だった。

◆◆◆

 2016年の展望、というか希望であるが、実現してほしいカードを挙げておく。

 ①ローマン・ゴンザレス vs フアン・フランシスコ・エストラーダ
 フライ級統一戦。実力的にはゴンザレスとエストラーダの間にはけっこう差がついたのではないかと思われるがどうか。これに井岡が絡むようだと非常に面白い。

 ②ギジェルモ・リゴンドー vs ヴァシル・ロマチェンコ
 超絶テクニック対決。夢です。最近変なショーマンシップに目覚めて変な試合をしているゴロフキンのようにならず、打ち合い大好きファンを無視した面白い試合をしてほしい。

 ③内山高志 s ニコラス・ウォルタース
 海外戦は時期を逸したとの声もあるが、本人に気持ちがあるなら是非やってほしい。ただ海外で初の防衛戦、いろいろなハンディを考えると結果については難しい。ウォルタースが実力的に勝てる相手だとしても(私はそうは思わないが)。ポジティブ要素は技術の成熟とここ数年で初めて負傷がないコンディション。いや、単純にウォルタースとの試合を見てみたい。

 和氣選手のフランプトンorクイッグへの挑戦、井上尚弥選手の海外進出と、その他にもいろいろと楽しみであるが、個人的にはローマン・ゴンザレス選手の動向、フライ級統一戦線、井上尚弥選手との絡みがあるのかどうかが最も気になるところである。

by いやまじで

  

2015年に見たボクシング関連映像 CHAMPS 20160103

最初に言っておきますと、本日午前8時25分よりWOWOWで再々放送される番組ですので、録画セットされる方はお早目にどうぞです。(オンデマンドで見られるかどうかは未確認→2017年7月4日まで配信中〔当日追記〕。〔オリジナル版は動画サイトにあるかもしれません。(1月4日追記)〕)

邦題「マイク・タイソン チャンピオンたちの生き様」
ボクシングの伝説と真実(WOWOW 2015年7月、10月放映、2016年1月3日08:25放映予定)

(原題:CHAMPS, WRITTEN AND DIRECTED BY BERT MARCUS, BERT MARCUS PRODUCTION 〔オリジナル版は動画サイトにあるかもしれません。(1月4日追記)〕)

※プロデューサーに5名がクレジットされているがその中にマイク・タイソンの名もある。


 タイトルを見て、過去の世界チャンピオンの栄光と挫折をセンチメンタルにつづった番組なのであろうと高をくくっていたが、そうではなかった。
 ボクシングの社会との関わり、社会における位置づけ、役割といったものをよく分析し、問題点を洗い出し、それへの対応策を提示しようとしている番組であった。
 とりわけこれからのボクシングを選手の生活、すなわち健康や人生設計やそのための人間教育といった面から再考しようとする声や活動を拾っている点が、まだ業界内部からのものは少ないにしても強く印象に残った。
 野球ではマイナーリーグですら最低年俸が保障され、NFLは脳障害に悩む元選手に毎年数億ドルのお金を支払っている。
 ボクシングでは利益が選手に十分還元されていないのではないか、健康面でのサポートがあまりに薄いのではないか。

 番組中のコメントを少し拾ってみよう。

タイソン
「どんな裕福な連中も
貧困の存在を忘れないでほしい
貧しさは人に
一生消えない傷を与える」

ジョージ・ウィルス(スポーツ・ライター/コラムニスト)
「食い物にされる業界だ
私生活で自分自身や
お金を守る方法を―
ほとんどのボクサーが教わらない」

ホリフィールド
「金を奪われたことでなく
無知に付け込まれたことが悔しい」

ルー・ディベラ(ディベラ・エンターテイメント代表/プロモーター)
「安全や健康に関して
国としての統一基準がない
不条理だ」

フランシスコ・アギラー(ネバダ州アスレチック委員会 委員長)
「国家レベルの規制が統一が必要です」
「他のスポーツでは
専門家が時間をかけて
丁寧に選手をサポートします」

ホプキンス
「ボクサーは会計士を雇い―
弁護士を雇うべきだ」


 邦題はタイソンオンリーの印象を与えるが原題CHAMPS の通り、3人のスラム育ちのチャンピオン達の足跡を追う形で番組は進む。タイソンとホリフィールドは数億ドルの稼ぎから一文無しになった点が共通し、そして3人いずれも立場は異なるが自らの経験を生かして活動している。




 ダグラス戦以降タイソンを見ていなかった私としては彼の変貌ぶりに驚きと安堵を覚えざるを得ない。
 WOWOWで1月3日(本日)朝8:25より再々放送される(オンデマンドでPCやモバイルでの視聴については未確認→確認したところメンバーズオンデマンドで2017年7月4日まで配信中 〔当日追記〕)。ボクシングの未来を考える上で貴重なプログラムと思う。是非ご覧になることをお薦めする。

BY いやまじで

※ 登場するその他コメンテーターを挙げておく。

・アル・バースタイン(スポーツキャスター)
・50セント/カーティス・ジャクソン(ミュージシャン/ボクシングプロモーター)
・ジョン・パフ(フォーダム大学ロールスクール法学教授)
・スパイク・リー(映画監督)
・ダルトン・コンリー(ニューヨーク大学社会学教授)
・デビッド・J・レナード(ワシントン州立大学 批判的人種学)
・ナジーム・リチャードソン(ホプキンスのトレーナー)
・ラリー・スローマン(タイソンの伝記の著者)
・マーク・ウォルバーグ(映画俳優)
・ミッキー・ウォード(元WBUウェルター級王者)
・メアリー・J・ブライジ(R&Bシンガー)

年末世界戦7試合、録画観戦記 20160101

明けましておめでとうございます。年明け早々ですが年末世界戦7試合、録画観戦記です。

12月31日

田中 vs サルダール(WBO‌世界ミニマム級)
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(読者の方より会場写真を頂きましたので貼っておきます。試合中は撮影禁止だったとのこと。会場は8割以上埋まっていたということです。-旧徳山と長谷川が好きです)


 田中選手、危なかった。
 相手も強かったが、田中選手の出来が悪かった。相手の前で立ち止まって動かないのだからそれは打たれる。
 しかしそれでも一発KOとは…。普通なら陥落しているところ。やはりただ者ではない。

高山 vs アルグメド(IBF世界ミニマム級)
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 高山選手、試合前の報道で前戦の負傷が癒えず、ノー・スパー調整と聞いて心配していたが、懸念していたように動きがよくなかった。眼の負傷防止のために動きが制約されたか。
 相手はかなり雑な選手であるにも関わらず、もらい過ぎた。
 次はしっかり治療して戻ってきてほしい。

井岡 vs レベコ(WBA世界フライ級)
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 井岡選手、完勝と言っていい。1R時点でコンディションの良さ、心技体すべての面でのレベルアップを感じた。抜群の距離感、見切り、読み、完璧な防御、冷静さ、集中力、勝負勘。
 警戒すべきはレベコの左で、右ガードを下げない用意が必要だった。序盤から左の特にボディが有効で、7、8Rあたりからは右でもボディを攻め始めた。この時右を下げるので左をもらう危険が高まったが、相手が左を出せないタイミングを狙い被弾を最小限にとどめた。
 体がフライの体になった。それでいて体重移動がこの上なくスムースだった。この日の井岡選手のボクシングには「美」さえ感じられた。(レベコがボディでKOに沈む姿は想像できなかった。)

田口 vs デラローサ(WBAライト・フライ級)
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 田口選手、表情はヌボーッとしているが、なかなか芯が強い。序盤力攻めのデラロサに苦戦するも、あわてず戦い方を調整してきた。技術面で内山選手からかなり吸収しているようだ。パンチを打ち込む時のスナップの利かせ方、パンチの多彩さ、体捌き…。スマートさも内山選手から学んだか。見事な戦いだったと思う。

内山 vs フローレス (WBA世界スーパー・フェザー級)
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 フローレスの半身サウスポー姿勢を見てモレノ(パナマ)を思い出したが、こちらはそれほどディフェンスが上手くはなく身体も柔らかくなかった。彼がどんな選手かが分かる前に試合が終わってしまった。内山選手のツボに入った時のパンチ力は凄まじい。アメリカでウォーターズと対戦交渉中との情報もあるが、実現するのか。

大晦日は5試合中4試合でボディ攻撃が勝利のファクターとなった。高山選手ももっとボディをしつこく攻めてほしかった。

◆◆◆

12月29日の試合

八重樫 vs メンドサ(IBF世界ライト・フライ級)
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 相手はスピードはないがタフで荒々しくエネルギッシュな選手。序盤に八重樫選手の被弾が目立つが、中盤以降足を使ってリズムを作り、終盤はパンチを打つことで動きもよくなる好循環でディフェンスもよく、逆転勝利。3階級制覇は立派。
 ただし序盤での被弾の多さ、試合後のインタビューで言葉が途切れたところなど、ダメージの蓄積が懸念されるところ。もう少し試合間隔を空けた方がよいのではないか。


井上 vs パレナス(WBOスーパー・フライ級)
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 ナルバエス戦でもそうだったが、ガードの上からあれほどパンチが効く選手というのは見たことがない。ナルバエス戦ではかすっただけでダウンというのもあった。レナードvsラロンデ戦以来だったが。
 もしかしたらガードの上から効く、かすっただけで効くパンチの打ち方を研究しているのではないか(たぶんしていると思うが)。そう思えるほど彼のパンチには威力がある。
 実際パンチ力というのは、単純に筋力という物理的なパワーだけでは説明できないものであろう。それにしてもあれだけのスピードで打ち、しかもすぐ次の動作に移れるという流れの中で、相手にあれだけのダメージを与えられるというのは驚異というほかない。
 ところで将来のローマン・ゴンザレス選手との対戦が期待される井上選手だが、私はまだ準備が整ったとは思わない。
 パレナス選手(ウォーズ懐かしい)は打たれ強い選手ではないし、昨年戦ったナルバエス選手も井上戦の前の試合はフィジカル面の劣化を感じさせるものだった。(だからナルバエス本人はコンディショニングの成否が勝負を分けるとコメントしていた。)
 もう少しタフな相手と2度ぐらいは防衛戦を重ねる必要があると思う。 
 
by いやまじで