HARD BLOW !

高山圧勝 井岡磐石 9・27生観戦雑感



 いや井岡はやっぱり客入るな~。アリーナも後ろまで椅子ビッチリ。

 今回は休憩地獄も無くテンポの良い興行でございました。

 まずは石田匠×木村隼人の日本スーパーフライ級タイトルマッチ。

 木村選手は15歳でタイでデビューし、韓国でライセンスを取って、その後日本、フィリピン、タイと色々な国でキャリアを積んできたという、雑草タイプの変り種。高山勝成選手や山口賢一選手と同じく、脱国境的な活躍をする異色のボクサーで、まだ26歳なのにキャリアは31戦。ベテランの域であります。豊富なキャリアを生かしてテクニシャン石田に迫れるか?

 一方の石田選手は、前回防衛戦で、江藤大喜選手の強引なボクシングに苦戦し、キャリアに思わぬミソをつけました。果たして今回はいかに?

 序盤は木村選手が前回の江藤選手が効果を上げた戦術を踏襲するかのように、大きなパンチでプレッシャーをかけて石田選手の緻密なボクシングのバランスを崩しにかかりますが、今回の石田選手は強引な攻めにも動じることなく、得意のアウトボックスで応戦。遠い距離からワンツーを的確に決めて、中盤には江藤選手の目を塞ぐと、その後はペースを握って危なげなく中差の3-0判定で快勝。やはり石田は巧い、速い。

 井岡ジムの選手はみんな勝負強いですね。その一方で観戦仲間からは試合スタイルが堅実すぎて面白みが無いという評も聞かれます。こうなると井岡ジムでは珍しいパンチャータイプの宮崎亮選手のタイトルマッチも見たいですねえ。

 この日のアンダーカードでは金山テス選手対元日本ランカー伊波ファンカステイーヨの試合がなかなか印象的でした。テス選手ペースを掌握しながら、痛恨のダウンで負けてしまいましたが、きっと今後上がってくる選手だと思います。

 ここで早くもこの日の私的メインイベント、高山勝成×原隆二のIBFミニマム級タイトルマッチ。

 ファンやメデイアの戦前予想では原有利の予想が意外なほど多く、大変驚いたわけですが、こちらとしては個人的に知ってるとかなんとかそういう次元でなく、なんだかんだ言って高山選手の方が全てにおいて上であろうと思っておりました。

 ただ今回は調整過程での不調情報があり、また関東のファンを中心に原の評価が高かったことも相俟って、予断を捨ててゴングを聞いたのでありますが...。結果的に心配は杞憂でありました。

 序盤は原選手がボディやオーバーハンドの強打で高山選手を下がらせて巧く距離をコントロールしているように見えましたが、バッテイングでのカットを境に高山選手が距離を潰しだすと、途端に原選手の戦法が通用しなくなり...。高山選手はフットワークで原選手をロープ際やコーナーに追い込んで得意のラッシュで見せ場を作りペースを掌握。序盤は通用していた原選手の強打も、徐々に見切られ打ち終わりを狙われてダメージを蓄積させていく。

 高山選手の速い出入りと手数攻めの前にスタミナを消耗し防戦一方となった原選手は7Rの後半渾身のカウンターで応戦するも、ラウンドの最後には足がもつれるようにリングに倒れる(裁定はスリップ)。迎えた8R、ロープ際で猛烈なラッシュを浴びている原を見たレフェリーが試合をストップし、高山選手が圧巻のTKO勝利。終わってみれば横綱相撲でした。

 高山選手のスパーリングでパートナーの方がよく言われるのが、「高山選手と向かい合うとスタミナが削られていく」ということ。いわゆる思考能力も含めて、プレッシャーの強い選手と相対するということは、予想外に消耗するということでありましょう。6R以降の原選手のへばり様は、パンチのダメージだけでなく未体験のプレッシャーがもたらしたものではないのか?と思わずにはいられません。揃いの法被を着た、原選手の大応援団も中盤以降は沈黙気味で、少し気の毒でありました。しかし彼はまだ若い。高山選手も「イーグルに敗れた時にフィジカルの重要性に気付いた」と、かつて仰っていました。敗戦を受けて原選手がどのように変わるか?注目したいと思います。、

 試合後は高校の同級生の声援に応えたあと、リングに田中恒成選手を呼び込み統一戦をよびかけた高山選手。しかしお互い敬語なのでなんだかほのぼのした感じで、ヒートするというのとは少し違う空気が生まれてましたが、まあ対戦の機運が盛り上がったのは間違いないでしょう。

 というわけで高山チャンピオン防衛おめでとうございます。早くも大晦日に田中戦という情報もありますが、個人的には高山選手は指名試合、田中選手は防衛戦をこなした上で、文句の出ない形での統一戦を期待したいと思います。

 その後女子の東洋戦をはさんでメインの井岡一翔選手。今回はレベコのオプションを使って同国人である、アルゼンチンのロベルト・ドミンゴ・ソーサ選手が来日。まあ対戦相手としては勝って当然、勝ち方が問われると言うレベルの選手であります。ですが相手は世界ランカーで戦績も良い選手ですから油断は禁物。

 そもそも井岡選手はちょっと昇級を急ぎすぎていた感があり、まだフライ級になりきっていないのではないか?と思えます。

 先のレベコ戦も、持ち前のテクニックでヒットは取れるもののダメージングブローを打ち込むには至らず、少しパワーレスな印象がございました。レベコのプレッシャーが強く、防御を優先したことで踏み込みが多少甘くなったのかも知れませんが、「フィジカルをフライ級にするにはまだ少し時間がかかるのかな?」と感じました。そういう意味でも、レベコとの再戦に向けてちょうど良いマッチメイクでは無いか?と思えます。

 とその辺に注目しながら観戦したのですが...。

 もうとにかくテクニックは凄いの一言。美しい糸を引くような軌道のストレート、ジャブ。ピンポイントで着弾するアッパー。距離が詰まっても安心して見ていられるボディワーク。今回は特に上半身の動きが印象的でした。得意のボディ打ちも相変わらず絶妙。これは生半可な反復練習で身についた技術じゃないよなあと感じました。全てが教科書的で、少年ボクサーは井岡選手をお手本にしたらいいんじゃないのと思った次第。

 試合結果はフルマーク一人、10点差二人という大差で、当然のように3-0で井岡。

  ボクサーにはいろんなタイプがいるから面白いのですが、この日の観客にもやっぱり倒しきれない試合振りをもどかしく感じた人が結構いたらしく、アリーナでは罵声も飛んでいたようです。有料入場者のご意見ですからそりゃあまあ聞くべきは聞かんとイカンとは思いますが、しかしこのレベルの技術ってなかなか見れないっすよ!フルマークの判定勝ちってKOより難しいかも知れないですよ!と罵声飛ばしてる人には言ってあげたいなあ。

 いやせめてボクシングファンくらい、彼の素晴らしい技術を理解して評価してあげてもいいんじゃないの?いつまでもお題目みたいに「ローマンが~ローマンが~」言うて無いでさ。彼は速くて巧い良いボクサーで、マッチメイクも全然ぬるくないじゃない。調子に乗ってるなんて言われるけど、どう見ても努力型のテクニシャンじゃないの。調子に乗ってる人間にあんな試合が出来ますか?と。

 そもそも判定試合を「見せ場が無い」とか言っちゃう人は、なんのことはない「見る目が無い」んじゃないの?と思います。

 見せ場は沢山ありましたよ。そして年末のレベコとの再戦が更に楽しみになりました。

 というわけでなかなか心地よい余韻の興行でありました。

 写真が無くて申し訳ない(旧徳山と長谷川が好きです)
 
 
 
 

本当のところはどうなんだ? 高山勝成ジムワークレポートin仲里ジム

 陣営のご協力で恒例となっております、高山勝成選手の世界戦直前レポートでございます。

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 IBFタイトル防衛戦となるこの試合の対戦相手は、大橋ボクシングジム所属の元日本・東洋王者、原隆二選手となり、井岡一翔選手の防衛戦と同じ興行で、9月27日にエディオン・アリーナ=大阪府立体育館において行われます。

 この試合の公式なアナウンスがあったのは試合まで一ヶ月をきった8月28日。世界戦では異例のかなりギリギリでの発表と成りました。

 前回の防衛戦、タイのファーラン・サックリンjr戦での負傷判定の原因となった瞼のカットに対して、タイ側から「パンチによるカットでファーランのTKO勝ちではないのか?」とクレームが付き、IBF総会で再戦命令が出たことで、高山サイドは対応を迫られ、その結果正式発表に時間がかかったようであります。

 中出トレーナーによると、あの試合でレフェリーを務めたJBCの中村レフェリーはバッテイング直後にIBFのインスペクターに、カットの原因はバッテイングであることを伝えていたそうなのですが、IBF総会では当のインスペクターの記憶が曖昧であった(おいおい)ということで一旦は再戦命令が宣されてしまったということ。

 そもそも件の試合自体、筆者から見てもファーランは待機戦術一辺倒・防戦一方であり、再戦には興行的にも競技的にもさしたる意義やメリットがあるとは思えないものでした。

 「再戦すること自体にはなんも問題ないけど、こちらとしてはもっとやりたいことがあるから」(中出トレーナー)ということで、テレビの中継映像を検証してバッテイングによるカットであるとの証拠映像を探し出し、IBFに提出することで再戦命令を撤回されましたが、高山陣営この交渉でかなりの時間とエネルギーをとられてしまったとのこと。昨年末の統一選に続いて、タフな交渉となったようであります。

 これは個人的見解ですが、レフェリーが日本人であったことが、タイサイドに付け入る隙を与えたしまったのでは?と思えます。ルール上は認められているし、中村氏のレフェリング自体に問題はなかったということは踏まえた上で、やはり外国人とのタイトルマッチの際にはレフェリーは中立国から招請するべきではないのかと思います。

 勿論、中立国のジャッジ・レフェリーにもプロモーターに阿った裁定をするものは多々いるわけで、試合の公正の担保については、「これでよい」と言う結論は無く、常に検証が必要であると思います。

 というわけで本題。今回の対戦相手の原選手はオーソドックスで体格的にも高山選手より小さい選手。ここ2年ほど変則・サウスポー・体格差のある相手とばかり試合してきた高山選手にすれば比較的やりやすい相手ではないのかと思えたのですが...。

 正式発表を受けて中出博啓トレーナーに電話してみると、試合三週前の時点で、どうも調子が上がってこないと言うじゃないですか。

 いつもと違ってウエイトも思ったように落ちないし、動きも重い、と。中出氏の話を裏付けるように、恒例の近畿大学のスパーリングでも、精彩を欠いたという報道も出ており、どうも本調子には遠いと言う風であります。
 
 ケビン山崎氏とのフィジカルトレーニングで筋肉が付いたことでウエイトが落ちにくくなっているのではないか?年齢的なものが原因なのか?

 「調整方法を工夫して上げて行きます」(中出氏)ということでしたが、果たしてどうなったのか?ということで去る9月12日に、仲里ジムを訪ねてジムワークを見学させて頂きました。

 ジムについてみると高山選手はすでに到着していて着替え中。 

 現場にいらしたチーム高山のスタッフの方によると、この日は午前中は近畿大学でスパーリングして午後はジムワークと二本立ての構成とのこと。疲労のピークは超えて、調子はかなり回復しているとのことでしたが、実際午前・午後練習が出来るということは体調は持ち直していると見てよいでしょう。

 そうこうしているうちに中出トレーナーが現れて練習がスタート。シャドー中心にバッグ打ちもたっぷりと、というメニューです。

 9月上旬はかなり重かったという動きも、実際見てみるとかなり軽快で、本調子にかなり近いと言う印象。体はかなりシルエットが細くなり、ギュッとつまったという印象。この筋肉が今回の減量において不確定要素になったようですが、ウエイトもいつものペースと変わらない水準になっており、練習後はしゃぶしゃぶやステーキを食べているとのこと。肉体改造や年齢といった要素が今後どのように作用してくるのかは不透明ですが、今回は巧く乗り切れたと言う印象です。

 原選手とは体格差がなく、構えもオーソドックスということでジャブとワンツーという基本の動きをみっちりと確認していましたが、右ストレートはモーションが小さくシャープで、有効な武器になると見えました。

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 ミット打ちでも、従来の対角線のコンビに加えてコンパクトなワンツーを織り交ぜて多彩なパンチを披露。ファーランやロドリゲスjrとやったときのように、アングルをつけなくても頭が狙える相手ということで、パンチのつなぎもかなりスムースに見えました。このあと、珍しくパンチングボールも。ボールをスピードのある原選手のヘッドに見立てて軽くワンツーを当てていく高山選手。原選手とすればいかに高山選手のプレッシャーをいなして、スピードで上回るかが鍵になるかと思います。

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 シャドーのあとは中出氏がボディを撃って、ストレッチをして終了。動きは自分が見せてもらった過去の練習と大差なく、好調と見えました。

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カメラにサーヴィスしてくれる高山選手

 少しだけ高山選手にお話を伺いました。

 HB「今回はかなり減量がきつく、調子がよくなかったと聞いていたのですが」
 高山「そうですね。先週は疲労もピークで我慢の時でした」
 HB「ピークを超えたら調子も上がってきたと」
 高山「そうですね。でも悪い状態の中でどう対処するかということが経験が出来たので、良かったです」
 HB「調子が上がってこない中でも、あせりは無かったというか、調子が上がってくるだろうと思っていましたか?」
 高山「それは分かってました」
 HB「経験上ということですか」
 高山「そうです」
 HB「今回の原選手は自分より小さい相手ということですが」
 高山「自分より小さい選手とやったのは5戦くらいですね。特に苦手とか得意とかいうことは無いです」
 HB「原選手とはスパーリングしたことはないんですか?」
 高山「ないんです」
 HB「田中恒成選手と原選手の試合にはどういう感想をもたれましたか?」
 高山「紙一重ですね。どっちが勝ってもおかしくない試合だったと思います。原選手のモチベーションやコンデイションも良かったと思います」

 まずは指名試合をクリアする必要があるようですが、来年は田中恒成選手との対戦を期待したいと思います。

 と、ここから余談ですが、たまたま練習に来られていた仲里ジムの会員の方が、以前関東におられて三谷大和ジムの会員だったということが発覚!「いや自分の友人がスパーリング大会とか手伝ってるんですよ」などと挨拶をさせていただいたのですが、「原選手はJRAの競馬学校時代、ボクシングがやりたくなったときは三谷ジムに来ていたんですよ」と聞いてビックリ。

 全寮制で休日もほとんどない競馬学校でも、ボクシングジムに顔を出していたのだという原選手の様子について「多分ボクシングが忘れられなかったんでしょうね~」と感慨深げにおっしゃっていました。とてもイイ話ですね。

 原選手のプロ入り以前のエピソードも伺ってますます試合が楽しみになって来ました。

 スピード溢れる好試合を期待します。

 山中×モレノの採点に少し疑問がある(旧徳山と長谷川が好きです)