HARD BLOW !

高山勝成×ロドリゲスjrがIBFのファイト・オブ・ザ・イヤーに

受賞について触れた中出トレーナーのブログ記事へのリンク
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次の目標は・・モントリオールへ

昨年末スポーツ・イラストレイテッドの同賞を受賞した時に中出氏と少しお話できましたが、その時確か「IBFのファイトオブザイヤーがとれたら嬉しいなあ」と仰っていたように記憶しております。受賞おめでとうございます。

海外では評価が高いですね。日本とは偉い違いやなあ。

メイとパックの試合がもうすぐなのにあんまり心が波立ってない(旧徳山と長谷川が好きです)

休憩地獄からの開放!意外とテンポが良かった高山×ファーラン、レベコ×井岡ダブルタイトルマッチレポート

 さて久々の世界戦生観戦は、大晦日以来の井岡興行。

 会場の大阪府立体育館では直近に山中慎介選手の防衛戦もあったのですが、しがない運送屋の自分はそうそう高いチケット代も出せずでして、純粋にカードからこちらの興行を選択いたしました。

 大晦日の体験からまたも客ギューギューの酸欠地獄&休憩と言う名の放置プレイ連発かと覚悟を決めて臨んだのですが、あにはからんや興行の進行もまあまあテンポ良くそこまでストレスをためずに試合を見ることができました。あれはやっぱりTBSの奇妙なテレビ中継の形式に原因があったんだよなあと再認識致しました。

 夕方五時過ぎに入場すると、丁度宮崎亮選手が試合中。相手のタイ人はダウンしてもすぐにピョコンと立ち上がり、KOされた後もキビキビと挨拶をしておりなんかこう色んな意味で複雑な心境になりました。宮崎は長身でスタイリッシュなテクニシャンが多い興国高校→井岡ジムという選手達の中にあってとても個性的なので、是非噛み合うような相手との打撃戦を期待したいと思います。

 休憩を挟んで楽しみにしていた石田匠×江藤大喜の日本タイトルマッチ。自分の予想では名前通りの『匠』という感じのテクニシャン石田選手が貫禄を見せて楽々防衛では?と予想していたのですが、蓋を開けてみると、タフで荒っぽい江藤のスタイルに手を焼いてチャンピオンは大苦戦。江藤選手は的確なヒットは少ないものの、石田の正確なジャブやカウンターにもひるむことなく前進し距離を潰してプレッシャーをかけまくる。対して石田は前半は持ち前のスピードと距離感で巧く対処したものの、後半になると江藤の前進の前にスタミナが切れたか失速気味。結果明確な差を見せることのないまま判定へ。的確性自体は圧倒的に石田ながら江藤のアグレッシブな姿勢も評価されたか判定結果は僅差の2-1。辛くも石田の防衛となりました。これはホープにとってはちょっとミソをつけてしまう試合となりました。技術があることは分かっているので、次はチャンピオンらしく試合を支配するところを見せて欲しいと感じました。一方の江藤については、タフネスや頑丈さは感じましたがパンチ自体は的確性に欠け、試合振りが荒っぽいなと感じました。それと採点について、江藤の前進する姿勢が評価されたのでしょうが、パンチが当たっていない選手を勝ちにするのってどうなの?と感じました。期待していたほど面白くなかったなというのが本音であります。

 そこから休憩を挟んで、まずは一つ目の世界戦、IBFミニマム級の高山勝成×ファーラン・サックリンjrの一戦。ファーランは宮崎亮や井上拓真と対戦していて、高山選手にとっては否応無く試合ぶりが比較される相手。その辺も注目している中ゴングが鳴るや、高山が猛ダッシュ!相手コーナーに飛び込んで挨拶代わりのパンチ。実はその時にファーランと足が交錯して怪我をしていたらしいですが、そんなことは微塵も感じさせぬ軽快なフットワークでその後も追撃。ファーランは明らかに出鼻を挫かれてペースを失います。高山がスピード充分の出入りでファーランのボディーを叩くと、ファーランは露骨に嫌な表情を浮かべます。この辺は若さか?
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 ただファーランは接近戦も意外にうまく、単発気味ながら高山に強いパンチ返し反撃。アッパーやフックもかなり正確で力強いと見受けられます。しかし徐々に高山がプレッシャーを強めて優位に立ち、ロープやコーナーに詰まったファーランに連打を浴びせ、ファーランは相打ち覚悟でカウンターをとる作戦に活路を求めます。近距離で両選手の夥しい数のパンチが交錯し、ファーランも打たれながらも何発か強いパンチを高山に返して必死の反撃を試みますが、いかんせんヒット数の差は歴然。
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 8Rは二分近くもコーナーに詰めての連打が続き、形成は一方的となってきますが、ファーランが時折繰り出すパンチもまだ力強い。スリルを残したまま9Rに入ったところで、バッテイングによって切れた高山選手の瞼にチェックが入り、一旦試合は再開されますがもう一回ドクターチェックが入ったところで試合はストップ。負傷判定となり3-0高山勝利。タイジャッジの1ポイント差はご愛嬌ですが、順当な結果となりました。ファーランの調子も良かったとは思いますが、高山選手がチャンピオンとして明確な差を見せました。IBFタイトルをとってからの選択試合の防衛戦は本当に安定感がありますね。今後はWBA王者ベッキー・ブドラーとの統一戦を目指すとのことですが、これは噛み合った良い試合になると思うので個人的にはとても見たい試合です。またこれからも楽しませて頂きたいと思います。大変お疲れ様でした。

 井岡興行としては短めの休憩(『メインイベントは九時頃から』と言うファジーなアナウンスには腰が砕けましたが)を挟んでメイン。選手の呼び込みをする俳優さんがレベコの名前を忘れると言うミステイクを後ろの看板を見ることで挽回したあたりの流れがなかなかスリリングでありました。
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ファンカルロス...誰だっけ...さん。有名俳優らしいが同行者全員誰も知らず...。
 入場してきたレベコはさすがに雰囲気充分、落ち着き払っていてさすがの貫禄であります。一方のチャレンジャー井岡はやや堅い表情ながらもこちらも気合十分という感じ。このカード本当に良いカードだと思うのですが、未だに「ローマンから逃げた井岡は亀田と同類で~」とか「統一チャンピオンがいるからレベコはチャンピオンとは言えず~」式の論理で躍起になって井岡のやることに難癖をつける向きが後を絶ちません。でも帝拳のチャンピオンだってここんところ決定戦ばっかりだよねえ?西岡も世界取ったのは顔が利くWBCの決定戦だよねえ。リナレスは三階級全部決定戦だよねえ。山中は挑戦者決定戦が突然王座決定戦になって、ドネアが『私はまだ返上してないのに』って抗議してたよねえ。村田のマッチメイクってカマセを凄い強敵みたいに宣伝してるよねえ。長谷川穂積は結局徳山ともサーシャとも試合しなかったよねえ。本田さんはあれこれ理由つけてたけど当時バッシングされたっけなあ?大体WBCタイトルへの挑戦を殆ど一プロモーターが独占してるほうが業界事情を歪めてない?というような本質的な業界への批評は「ローマンから逃げた」式の低脳ファンの口からほぼ聞かれません。

 政治力を使って相手を選んだり、マッチメイクの妙で世界王者になったりということは国内のプロモーターならどこでも大なり小なりやってることです。その中で叩きやすい対象を探して生贄化して、『そういう選手をたたくのが通だ』というような虚しい虚勢をはる一部ボクシングファンの姿は誠に見苦しく恥ずかしいものです。そして自分の目でボクサーの真贋や技術を見る目が無いのかしら?とも感じます。井岡一翔は日本のボクシングの歴史の中でも傑出した技術を持った努力型の技巧派選手です。一方のレベコは過去来日したボクサーの中でもトップクラスの本物の強豪です。この二人の試合が日本で見れることに一体何の異存があるのでしょうか?

 というわけで観戦の感想へと映ります。1ラウンドはさすがに両者様子見か、その中でも井岡のジャブの鋭さが予想以上だったかレベコは思うように距離を詰められず有効打を放てません。2ラウンド井岡は自信を深めたかジャブを中心に攻勢。距離感も良くレベコのジャブやフックを捌き終了間際には体を入れ替えるところで見栄えの良い左フックをヒット。この辺のテクニックはさすが井岡であります。またパンチの正確さも印象に残ります。
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試合後レベコも褒めていた井岡のジャブ
 井岡のスピードとテクニック、距離感とも冴え渡りこのままペースを握るかと思われましたが、さすがにレベコ相手にこのまま終わるはずもなし。経験豊富なレベコはここから怒涛の巻き返しを開始。プレスを強めると正確で力強いフックをふるって井岡を下がらせると、ジャブには果敢に踏み込んでカウンターを合わせて井岡のペースを乱します。印象的だったのはレベコのスピードで、日本人の中でもかなり速い井岡とも遜色なく、ハンドスピードに到っては井岡の軽打と同じくらいのスピードでバンバンとパワーパンチが出て来る。またのそのつなぎが速く、竜巻のような回転力を前にして井岡もやや腰が引けてパンチに力が入らなくなってくる。井岡は体格差を生かして得意のボディ打ちでレベコのスタミナを削りにかかりますが、レベコはスタミナも旺盛でスピードも連打の勢いも変わらぬまま、思い切った踏み込みで距離を潰して井岡に迫り、試合は一進一退。その中でも6、7Rはレベコがペースを掌握したと見えました。
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緊張感溢れる展開
 これでポイントの優位もなくなった、さあどうする井岡と言う展開で後半へ。ここで井岡はフットワークを使って距離を作って迎撃。長い距離からボディ打ちやアッパー、レベコが出て来れば打ち終わりにフック、ストレートを合わせて再びペースを掌握。レベコも6、7と飛ばしすぎたかやや打ち疲れの感があります。9Rもレベコを動かして井岡が迎え撃つ展開。レベコが休んでいる場面では積極的に先手も取って攻勢をアピール。しかしレベコも10Rには再びプレッシャーを強めまたも怒涛の連打で井岡に迫り、井岡は思ったように距離が作れない展開に。そこで井岡は場面場面で接近戦に応じ的確なボディ打ちでアピール。レベコ優勢ですが、井岡は打ち負けず食い下がります。後半2ラウンドはレベコが驚異的なスタミナを発揮し再び豪快な連打で井岡に迫り、井岡は距離をとりつつヒットを稼ぐ展開。この辺はポイントは大丈夫と言う読みがあったのか無理に打ち合いに応じることもなく、井岡らしいスタイルで試合は終了。一緒に観戦していた人の間でも「僅差で井岡かなあ?」「いやドローじゃない?」「いやレベコでもおかしくないよ」と意見が割れる中採点は2-0で井岡!手数とヒットは井岡ですがそのヒットを有効打と捉えるか?レベコの攻勢を評価するか?で採点は分かれると思いますが、井岡の顔はきれいなままで見栄えの良いヒットも明らかに多かったと思うので個人的には妥当な判定だと思います。

 試合が終わって印象的だったのは井岡の集中力。ミッションを達成するための我慢強さは勿論ですが、攻撃できるポイントを見つけ出し方法を選択する反応の速さも印象的でした。パンチの正確さもいつもどおり。特にボディ打ちは冴えわたっていました。ただフライ級では若干パワー不足なのかな?とも感じました。現状なら適正階級はやはりライトフライではないでしょうか?

 一方のレベコはパンチ力は勿論、スピードと体力も印象的でフィジカルの強靭さには驚嘆しました。また序盤の展開を挽回し中盤にペースを引き戻した戦略も見事。後半の頑張りも印象に残りました。彼のビッグパンチが流れの中で一つあたれば全く違った展開になった試合だと感じました。それをさせなかった井岡の防御技術と集中力もまた素晴らしかったと思います。

 息詰るような技術戦であり、またお互いの防御意識の高さも印象的でとてもレベルの高い好試合でした。個人的は再戦が見たい試合です。レベコサイドにはオプションがあるのではないでしょうか?期待して待ちたいと思います。

 井岡選手は試合後のインタビューで自分が「サラブレッドだ」と言われてきたことに言及してましたが、彼はどう見ても努力型・技術型の選手で天才肌とかハードパンチャーとかじゃないよなあと思います。自分は彼のボクシングが大好きなので、しょうもないイチャモンつける連中は無視して、今後も御自分の道を邁進して欲しいなと感じます。

 と言うわけで選手の皆さんお疲れ様でした。

アムナットもいいけどレベコとの再戦が見たいなと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)

安河内剛氏地位確認訴訟の高裁判決期日が確定 

氏のブログによると高裁の判決は6月17日。
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安河内氏のブログ

高裁での審理は一回で即日結審となり、JBC側の証人申請は全て却下だそうです。そんな証人がいるなら一審で出しとかんかいという至極当然の判断ですね。ほんとJBCの訴訟戦術は低レベルですね。

いよいよ確定判決となることが濃厚な判決が出ます。

安河内氏を陥れてまんまとその地位を手に入れた人、混乱に乗じてJBCの中枢に入り込んで好き勝手やった人、試合役員からJBC職員になった人、違法な手段を弄して他人を陥れて公器であるスポーツの統括団体を乗っ取った人は覚悟が出来ていますか?

背任横領や新コミッションの構想について煽った専門誌、ノンフィクションライター、ゴッシプライターの皆さん、判決に備えて心の準備は出来ていますか?あなた達のやった言論活動は厳しく検証させてもらいますよ。あなた達が陥れた人たち、分けてもキャリアに重大な影響を受けた選手にはきちんと謝罪してその損害を賠償してくださいね。

悪の亀田のライセンスを止めたから今のコミッションは良い体制だ、安河内は金をもらって辞めるべきだ、亀田はJBCの職員を監禁して暴行したに決まってる、火のないところに煙は立たないとブログやツイッターで書き散らしている単細胞のファンの皆さん、ド素人だからと言ってどんなことを書いても言ってもいいというわけじゃないことを分かってますか?

「プロレスについてしか知らない人はプロレスについて何も知らない」と言う格言がございますが、「ボクシングについてしか知らない人はボクシングについて何も知らない」ともいえると思います。

プロボクシング界という閉鎖社会は今回の判決で、実社会から試されることになります。みなさん準備は出来ていますか?

井岡×レベコの面白さが分からないやつは見る目が無いと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)

HARD BLOW!恒例 高山勝成選手ジムワークレポートin仲里ジム 

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バンデージを巻く高山選手とその後ろで野村健太選手を指導する中出トレーナー

 さてすっかり恒例となりました、高山勝成選手の試合直前調整の模様をお送りします。

 年末大平剛選手を倒して獲得したWBO王座は防衛せずに返上し、再びIBFの単独王者となった高山選手。返上したWBO王座については中部のホープ田中恒成選手が決定戦に進むことになりました。まあこの辺の経緯については批判的な向きもあろうかとは思いますが、田中選手が勝って知名度を上げたうえで機運が高まった場合再度統一戦をすれば良いのではないか?と個人的には感じます。

 というわけで今回の試合はIBF単独の選択防衛戦。対戦相手はタイのファーラン・サックリンjrとなりました。ファーランは減量失敗で計量時フラフラだった宮崎亮選手にKO勝ちし、井上拓真選手に判定負けしたと言う日本でもお馴染みの選手。本来はライトフライの選手でミニマムでのランキングは8位。宮崎戦はライトフライで井上拓真との試合は50キロ契約、今回はミニマムと長身ながら階級を選ばないと言う印象です。タイ人ながらボクシング専業でスタイルもアップライトのオーソドックスということで高山選手にすればやりにくい選手ではないと言う印象ですが、体格差が気になるところでございます。ということで仲里ジムにお邪魔して来ました。

 既報どおり、スパーリングは少なくしてジムワーク中心の調整ということでこの日の練習もスパーリングは無し。ただ仮想サックリンとして、ジムメイトで試合直前の野村健太選手(一戦一勝、身長175センチ)をパートナーにしたマスボクシングが3R行われました。中出トレーナーは高山選手がウォームアップしている間、野村選手相手にスタンスやジャブのフォームをチェックして、視野の取り方、フットワーク、実戦的なコンビネーション、フットワークからプレッシャーのかけ方など矢継ぎ早に指導。その言葉を目の前で実践して次々吸収していく野村選手の様子はまさにプロボクサーが作られていく現場と言う感じであります。

 さて高山選手のアップも整い、まずはシャドーから。練習前に高山選手に伺ったところによると「少し体が大きくなってますが、暖かくなってくると思うのでウエイトは大丈夫です」とのことで減量も順調なよう。フィジカルの調整は相変わらず抜かりなしと言う印象です。

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 その後野村選手がリングに呼び込まれ、サックリンを想定したマスへ。長身の野村選手の懐に入ってパンチをまとめるイメージですが、フットワークは軽快でジャブからのつなぎもスムース。長身選手への対策も抜かりなしと感じました。
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練習を見守る仲里義竜会長
 
 マス終了後、中出トレーナーに「小野→ロドリゲス→大平と変則の選手との対戦が続いていたので、今回のサックリンは比較的やりやすい相手じゃないですか?」とたずねると「うんそれはそうやなあ」という返答でした。

 その後は再びシャドーからバッグ打ちで練習は終了。バッグ打ちは相変わらず迫力充分で、野村選手も「圧倒されます」と言う感想を漏らしていました。

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 その後クールダウン中、メディカルチェックの話から高山選手が定期的に脳神経外科で検査を受けていると言う話になったのですが、ご本人によると「今年の検査で切れていた脳神経がまた延びているって言われたんですよ。これ多分高校で勉強してるのが関係していると思うんですよ」という驚きの発言が。その発言を受けて仲里義竜会長が「高山君はもう世界レベルでやって10年やろ。俺の同世代でアマでもプロでも世界のトップクラスに入ってやってたら体がどこかおかしくなるもんやけど、高山君は変わらんもんな~。凄いわ。」と感嘆していたのが印象的でした。定期的な脳の検査の重要性は元協栄→帝拳の佐々木基樹さんも言及していましたが、高校に通うことも安全管理に繋がると言うのは新鮮な見解でありました。

 練習後、高山選手に大平戦の展開について気になっていた点を一つ尋ねてみました。
HB「大平戦の4Rの最後にビッグパンチが入りましたがあれはダメージあったんですか?」
高山「あれは見えてたパンチなんですよ。見えたから咄嗟にスゥエーしたらパンチで飛ばされたように見えたみたいで」
HB「そうか~。大平選手コーナーに帰るときガッツポーズしてたけど5Rから高山さんがギア上がったからびっくりしたでしょうね」
高山「一回下げてあげました(笑)」

 試合成立の4Rまでは抑えて5Rから上げるというゲームプラン通りに戦えたと言うあの試合、4Rの最後のあのパンチで試合の興趣が上がったのは間違いないところでありましょう。

 というわけで今回のレポートはおしまいです。22日の試合を楽しみに待ちたいと思います。

まだコタツをしまっていない(旧徳山と長谷川が好きです)
 

安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART6

 判決文の検証も今回でひとまず完結とします。

 判決文中の原告とは安河内剛氏、被告とはJBCのことです。

 東日本大震災に際して世界中のボクサーから送られたチャリテイグッズが放置されていたという問題が読売新聞に報じられたことについて、JBCサイドは安河内氏から森田氏への引継ぎが無かったことが原因だと主張しますが、これまた裁判長からの身も蓋もない厳しいツッコミが浴びせられます。以下、判決文99~100ページから引用します。

安河内さん判決文 99
安河内さん判決文 100

原告と森田との間で本部事務局長職についての引継ぎが行われなかったこと(前記1(5))については争いがないところ,被告は,引継ぎが行われなかったのは専ら原告に原因があるかのように主張する。
 しかし,そもそも就業規則11条(事務引継)は,「異動を命ぜられた者は,速やかに,前任者よりその業務を引き継がなければならない。」として,基本的に後任者が前任者より業務の引継ぎを受けるべきものと定めているのであり,加えて,本件においては,平成23年6月28日の本件降格処分以降,原告は,本部事務所に事実上立ち入ることができない状況になっていた(前記1(4)及び5)のであるから,本件降格処分に伴う事務局長職の引継ぎについては,基本的に森田が原告から引継ぎを受けるべく対応すべきであると解されるところ,森田は,原告から引継ぎの連絡がない限り引き継がなくてもいいものと考え(証人森田・64頁),自ら引継ぎを求めなかったのみならず,前記1(5)のとおり,原告が平成23年12月7日及び同月8日に森田に対して業務の引継ぎ及びアドバイスをさせてもらいたい旨をメールで懇願したにもかかわらず,森田は,上記メールを読まず(証人森田・37,38頁),又は何ら対応をしなかったことが認められる。以上によれば,平成23年6月28日の事務局長交代に伴い事務局長職の引継ぎを怠っていたのはむしろ森田の方であると評価するのが相当であり


就業規則上、後任の森田氏が引継ぎを願い出るべきであるとJBCの主張をバッサリ。返す刀で、そもそも当時安河内氏はJBCの命令により新宿の事務所が勤務地で本部事務局への立ち入りも禁止の身であり、状況を鑑みても当然森田氏が引継ぎの対応をするべきと指摘します。のみならず、『(安河内氏は)森田に対して業務の引継ぎ及びアドバイスをさせてもらいたい旨をメールで懇願したにもかかわらず,森田は上記メールを読まず』と言う状態であったのに「自分達の責任じゃないよ」と言い切れるJBCは本当に勇気のある組織だと再認識しました。

 あとは相当チマチマした話なのですが、勤怠の問題点などが指摘されます。

 JBCは安河内氏が仕事中に「おびただしい回数の職務に関係ないメールの交信を行い,これに要する時間に相当する執務を懈怠した」と主張し就業規則に違反していると主張していたのですが...。以下判決文101ページから102ページかけて引用します。

安河内さん判決文 101
安河内さん判決文 102
被告が指摘する原告によるメールの送受信は,送信は1か月に平均約8回程度,受信は1か月に平均約13回程度であるが,これらのメールには被告の業務に関連する内容のものも含まれているからすべてが職務外のメールの送受信であるとは限らず,また,受信のうち3分の2程度は受信したままであるから,当該メールの受信が必ずしも原告の職務遂行を妨げているとはいえないというべきである。

一ヶ月に送信が8回で受信が13回ということですが、これって仕事を妨げるほど「おびただしい」ですかね?しかも業務に関係するメールもあるというし。こんなこと言い出したら舞台裏のトラブルをせっせとゴッシプライターにメールしてるあの人はどうなるの?と思うのですが。

しかしこういうしょうもないことにでも律儀に回数をカウントして判定を下さなければならない裁判官と言うのも本当に大変な仕事だと思います。

裁判長は職務専念義務についてもJBCサイドにまたも厳しいツッコミを入れています。以下判決文107ページより引用します。

安河内さん判決文 107

羽生ら他の職員についても,乙4の怪文書が本部事務所に送付された直後や平成23年5月31日及び同年6月23日の各記者会見の直前に,記者会見の準備等に追われて本来の職務を懈怠していたと評価し得る実態があったと認め得るところ,羽生らの職務懈怠について被告内で問題にされた様子はうかがわれないことに照らせば,原告が就業時間中に業務と無関係なメールをやり取りしたことがあるとの事実のみをもって,直ちに原告に職務専念義務違反が認められるとの評価をすることは相当でないというべきである。

あなた達も怪文書騒動の時はやれフグの領収書で公益通報だ、新コミッションだと記者会見やってたけど、あれの準備してたのも就労時間中でしょ?あれは問題になってないよね?じゃメールはなんで解雇理由になるの?と見事なブーメランが命中。

『新コミッション』『公益通報』という二つのブーメランが刺さったままのJBCにさらにキツイ追い討ちとなりました。

というわけで、まともな知性をお持ちの方であれば、判決文を通してJBCが殆どの争点において負けていることがご理解いただけたことと思います。

この敗訴はそんじょそこらの敗訴とは違うボロ負け、惨敗であります。この期に及んでなお控訴する神経が信じられません。立証方針においても社会規範を逸脱したような主張が散見されます。またこの訴訟で消尽されたJBCの予算も相当莫大な金額です。

ことここに至ってなお「亀田を排除したから今のJBCは良い体制だ」と言う人は、もはやボクシングに害をなす存在だと私は思います。

というわけでファンの皆様におかれましては、今後は遠くない判決確定とその後に向けて心の準備をしていただきたいと思います。

判決文読み込んだら無駄使いされた時間と金とエネルギーを思って悲しくなった(旧徳山と長谷川が好きです)

安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART5

 さて判決文検証もいよいよラストスパートへと入って参りました。

 亀田興毅選手がブログで当方の記事に触れた影響もありまして、アクセスも増加しております。

 少しでも多くの方に実際の判決文に触れて考えて頂ければと思います。

 判決文中の原告とは安河内剛氏のこと、被告とはJBCのことです。

 さて続いてはJBCが裁判が始まってから追加した解雇理由について、これまた裁判長から厳しいツッコミが...。以下判決文95ページより引用します。

安河内さん判決文 95

就業規則52条2項は,懲戒処分の手続について,「関係協議の上,処分を決定する。」旨定めているところ(甲9の1),第二次懲戒解雇処分の決定手続について,秋山及び森田は,「秋山,森田及び浦谷の三者で協議した。」旨述べる一方(被告代表者秋山本人・23,52頁,森田・63頁),浦谷は,「代理人弁護士に任せていた。内部での協議には,私は入っていない。協議があったかなかったかはわからない。」旨,上記秋山及び森田と矛盾する内容の証言をしている(証人浦谷・64頁)ことからすると,第二次懲戒解雇処分の実施に当たっては,上記就業規則の定めに従いしかるべき者による関係協議が行われなかった可能性が高いと考えざるを得ない。
以上によれば,第二次懲戒解雇処分は,その手続上,予め原告に弁解の機会を与えることなく,また,就業規則の定めに従った協議を行わずに実施されたという重大な瑕疵が存する蓋然性が高いというべきである。


 JBCの幹部連中が裁判長に『JBCの就業規則はこうなってますよ』と教えてもらうというこの状況も大概だと言う気がしますが、なんとびっくり解雇処分を決定した状況について秋山氏、森田氏と浦谷氏三者の証言が矛盾してると言うのです。しかも浦谷氏に至っては「代理人弁護士に任せていた。内部での協議には,私は入っていない。協議があったかなかったかはわからない。」という思わず腰が砕けるようなお話しぶり。就業規則にあるような手続きは踏まずに、トップが「コイツはクビだ!」と独断で決めてるような状況だとあっけらかんと認めてしまってるようなもんであります。

 これはもちろん倫理的には問題なわけですが、それ以上にJBCの内部統制にも大きな疑問が湧きます。ふつう裁判で証言に立つようなときは、きちんと組織の訴訟戦術にあわせた準備をするものだと思うのですが、こんな初歩的な齟齬を放置してるJBCの緊張感の無さが脱力を誘います。さらに代理人弁護士の能力にも疑問が湧きます。

 解雇された職員が行った公益通報が解雇理由になっていることについても厳しい言及がなされています。

以下判決文97ページより引用します

安河内さん判決文 97

そもそも第9号公益通報及び第10号公益通報のいずれもいわゆる内部通報であるところ,平成23年5月31日に羽生らがマスコミ等に対して行った,「原告,P49ら4名の飲食代1万7180円を被告の経費として処理した行為が背任罪に当たる。」旨の外部公益通報(前記1(3)キ(ウ))においてさえ,何ら被告事務所内の風紀の乱れや被告の損害について問題にされていないのであるから,第9号公益通報や第10号公益通報のような内部通報によって被告事務所内の風紀が乱れ,又は被告に損害が生じたとは考え難いのであり,本件全証拠によっても,P6によるこれらの公益通報によって被告に風紀の乱れや損害が生じたことをうかがわせる事情は認められない。

17180円の飲食代の外部公益通報とは、あの敏腕ジャーナリストが「これだけじゃない」と思わせぶりに言ったわりには何の続報も無かったあのフグ屋の領収書を巡る記者会見のことであります。要は外部に向けておおっぴらに「この飲食は背任だ!」とぶち上げたけど背任でもなんでもなかったという人がお咎めなしで働いてるのに、一方のそれも内部通報を問題視して解雇するのはおかしいよね?というこれまた至極当然のお話であります。この論理展開どっかで見たなと思ったら『新コミッション』と同じ構造でした。

 自分達は新コミッションをぶち上げて記者会見まで開いておいて「新コミッションを画策したから安河内はクビ」、自分達は適正な経費の支出を記者会見まで開いて「背任だ!」とぶち上げておいて「安河内は内部通報をしたからクビ」。驚くような厚顔無恥ぶりであります。

 また公益通報と言うのは組織の不正を正すためのものであり、本来その権利は厳重に担保されるべきものです。公益通報したからクビと言う論理展開には、ちょっと現代の組織としてどうかしてると言う根本的な問題も感じます。
 
 ちなみにこの公益通報に対する裁判長の評価はどうだったのか?少し飛びますが104ページより引用します

安河内さん判決文 104

本件降格処分以降,解雇権限を持たない森田及び羽生が正当な理由もなく谷川を解雇したり(前記1(6)),経理内規に従って処理すべきボクシングの試合の放送承認料やテレビ局の中継の承認料が経理担当者への事前の相談もなく勝手に決定される事態が頻発したりし(乙44,証人  ・12頁),また,本部事務局では,森田が事務局長になって以降,事務局全体のミーティングが行われなくなり,森田は週に2,3日,各数時間程度出勤するのみであったため,職員が誰の指示で何をすればよいか,業務の報告を誰にすればよいか明確でない状態となっており(甲66・4,5頁,乙208,証人森田・20頁,証人羽生・16,34頁),さらに,指定暴力団員の観戦等,被告の対外的な対応にも問題が生じていたことがうかがわれる(前記1(8),甲13,59,乙121)。本件降格処分以降の上記のような状況や,原告が本部事務局長在任中に被告の組織体制の改革や反社会的勢力の排除等に積極的に取り組んでいたこと(甲44・4頁,証人斉藤・46頁)に照らせば,原告が「被告のガバナンスが機能を喪失しており,これを正すには林代表に現状を認識してもらう必要がある。」と考え,林代表にその現状を認識してもらうため,客観的な資料を集め,  らによる公益通報等にも積極的に協力していたという原告の上記説明にも十分に合理性があると認められる 

ざっと整理しましょう
・森田氏と羽入氏が解雇する権限もないのに谷川俊規氏をクビにした
・経理内規に従って処理すべきボクシングの試合の放送承認料やテレビ局の中継の承認料が経理担当者への事前の相談もなく勝手に決定される事態が頻発した
・森田が事務局長になって以降,事務局全体のミーティングが行われなくなり,森田は週に2,3日,各数時間程度出勤するのみであったため,職員が誰の指示で何をすればよいか,業務の報告を誰にすればよいか明確でない状態となった
・指定暴力団員の観戦等,被告の対外的な対応にも問題が生じていた

だから内部告発・公益通報には充分な理由があるという認定であります。これらの問題が一万幾らのフグ屋の領収書とどっちが重大問題かはもとより自明でありましょう。実際に安河内氏が辞任後JBCは赤字経営となっています。

亀田を排除すればボクシング界は安泰と信じて疑わぬ皆様は、こうした事態の進行をどのように感じられるのでしょうか?次回で本検証は最終回とします。(この項続く)

荒川仁人選手のワタナベジム移籍に驚いた(旧徳山と長谷川が好きです)

安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART4


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安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART1
安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART2
安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART3 新コミッション画策編

入り方はどうであれ、一人でも多くの方にJBC裁判の実態を知っていただきたいと願っております。

さて検証の続きです。判決文中の原告とは安河内剛氏のこと、被告とはJBCのことです。

81ページの下段部分に戻って、安河内氏の労務管理の問題点についてまたも厳しいツッコミが...。以下に引用します。
地裁判決_12_R

森田及び羽生が権限を有しないにもかかわらず正当な理由なく谷川に対し解雇を通知した行為については,被告は森田及び羽生に対し口頭で注意するのみで終わらせているのであるから,森田及び羽生に対する被告のこのような態度に照らせば,上記の労務管理に関する2点を主たる理由として本件降格処分をすることは,著しく不均衡であり,重きに失するというほかない。

ここは少し補足がいるところですが、谷川とはJBC関西事務局長に雇用され、後懲戒解雇され、裁判闘争を通じて懲戒解雇撤回・円満退職で和解した谷川俊規氏のことです。(詳しくはこちらから→もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合)。谷川氏はJBC関西事務局と雇用関係にあったにも関わらず、JBCの東京事務局が彼に解雇を通知し、後に解雇権限が無い命令であることが発覚し謝罪するという世にもマヌケな事件がありまして、裁判長がここで言及しているのはそのことです。「お前はクビだ!」→「いや間違いでしたスンマセン」という事件の当事者である森田氏と羽生氏が口頭注意だけで、安河内氏はいきなり降格ってそりゃおかしいでしょというこれまた至極当然の指摘であります。

 裁判長は一連の降格処分とそれに続く配置転換は違法であるので慰謝料30万円を支払えとの判断を下します。判決文85ページより引用します。
安河内さん判決文 85


本件降格処分,本件減給処分及び本件配転命令は,いずれも人事権の濫用であり無効であるから不法行為に該当するというべきであるところ,本件降格処分や本件配転命令に至る経緯が前記2(4)ウ及び4のとおりであること,松戸公産の新宿事務所(筆者注:安河内氏配転先)における執務環境や本件降格処分後の本部事務局における原告の待遇が前記1(4)のとおりであるところ,これらに対して被告が何らかの対処をしたといった事情は全くうかがわれないこと,本件配転命令後の平成23年7月6日から原告が精神科に継続的に通院して投薬治療を受け(甲43の1及び2),平成24年5月9日にはうつ病と診断されていること(甲16)並びに原告及び  の各陳述(甲44・16,17頁,甲45・16頁)などを総合考慮すれば,本件降格処分に引き続く本件配転命令等により原告が精神的損害を被ったものと認めることができ,これに対する慰謝料は30万円とするのが相当である。

安河内氏はパワハラが目に余る!と言ってた側が逆に、不法行為で慰謝料を30万円も取られてしまうとは...。そして安河内氏にパワハラされたと主張していた人が「選手の命に関わる試合管理業務に対する意識の低さもうかがわれるところであり」「叱責などの意味を理解しないまま,又は理解しようとせず、原告に対する不満等を募らせていたものと推認することができる。」と裁判長に言われちゃうような、割とかわいそうな感じの人だということは覚えておいて頂きたいと思います。

 降格や配置転換が違法なわけですから、その後に起こる解雇が適法ってことは普通はありえないわけですが、一応解雇の理由についても検討していきましょう。

 先述の通り「新コミッション」については、他ならぬ森田氏と浦谷氏が新コミッション設立を盾に安河内氏を排除してJBCの実権を握ったと裁判で認定されてるわけですから、その時点で論理として説得力を失っています。自分達は新団体設立を記者会見まで開いてぶち上げてお咎めなしで安河内氏や谷川氏は解雇というのはありえない話です。

 もう一つの解雇理由として余り知られていませんが、情報漏えいというものがあります。

 判決文の91ページより以下に引用いたします。

安河内さん判決文 91



被告は,原告が  らと共謀して,ボクサーの個人情報や戦績など,被告の内部情報を第三者に開示したとして,これが就業規則55条6号の懲戒解雇事由に該当する旨主張する。
 前記1(9)アによれば,  が  のボクサーの健康状態に関する情報を  に提供したのは,  が同ジムの東京地区におけるマネジメントの代理人であったためと認められるから,無関係な第三者に対する内部情報の漏洩であったとは認められないというべきである。また,前記1(9)イ及びウによれば, が  に対してボクサー数人の戦績を開示したことが認められるが,  が開示した情報と同様の情報が,一般公開されている「Japan Boxing YearBook Professional Edition」にも記載されていること(甲31)や証人 の証言(証人P6・43頁)に照らせば,  が開示した情報が就業規則55- 91 -条6号の「業務上の重大な秘密」に該当するとは考えにくい。


 一般公開されている情報を開示したら『秘密の漏洩』と言う論理は明らかにどうかしていると私も思います。そもそもボクサーの戦績なんてネットでも簡単に照会できるものであり、むしろ選手の側からすればマッチメイクの為に積極的に開示されるべきもので「業務上の重大な秘密」などでないことは明らかな筈です。

 情報漏えいを言うなら、世界戦のバックステージで起こったトラブルを胡散臭いゴッシプライターに何でもかんでも伝えてしまうおしゃべりなリングアナウンサーのほうがもっと問題だと自分は思います。まあ彼も裁判で事の重大さを知ることになるとは思いますが...。

 それともう一つの解雇事由として、「当時の森田事務局長に報告せず独断で仕事をしたという」と言う小ネタ(笑)もあるのですが、これにからんで驚くべき当時のJBCの実態が分かります。判決文の92ページより

安河内さん判決文 92


森田が本部事務所に出勤するのは週に3日で,かつ,滞在時間は,数十分から長くて2,3時間程度であった

本部事務局長とは名誉職ではありません。高い給料や賞与をもらっている立場です。いや名誉職や一般企業の顧問の人でももう少し熱心に仕事してるんじゃないでしょうか?これで職員に「独断で仕事をするな」と言っても土台無理な話ではないでしょうか?

さて解雇にまつわる部分の裁判長の結論を見てみましょう。判決文の93ページから94ページ

地裁判決_24_R
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平成24年6月12日に実施された聞き取り調査において,原告は,LLCやJAC(筆者注:安河内氏が設立を画策したとされる新コミッションの名称)の設立等,被告が懲戒解雇事由に当たると評価する重要な事項に関し,被告の認識が間違っている旨を具体的に理由を述べて反論していることが認められる一方,被告においては基本的にこれを聞き流す態度であったことがうかがわれるのであり,

本件に現れた事情を総合考慮すれば,被告は,当初から懲戒解雇相当という結論ありきで原告に対する聞き取り調査を行っていたものと考えられるのであり,懲戒解雇事由について十分かつ慎重な調査を欠いていたといわざるを得ない。

裁判長は、JBCは安河内氏の話を「聞き流す態度」で「当初から懲戒解雇相当という結論ありきで原告に対する聞き取り調査を行っていたものと考えられる」と結論付けます。要は解雇の為にあれこれと理由を後付で作ってるようなもんだと認定してるわけです。

気に入らない人間を排除するためなら手段を選ばない、そんな印象が否応無く浮かびます。

裁判長はこの後さらにふみこんでJBCのガバナンスの問題点を指摘していきます。(この項続く)

ついに一般紙もJBC裁判を取り上げたことに状況の変化を感じる(旧徳山と長谷川が好きです)

 

安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART3 新コミッション画策編

 さて怪文書を利用して、試合役員や一部プロモーターを焚きつけて組織を揺さぶった反安河内派の皆様でありますが、JBCの理事連中が「ちゃんと調査をして真偽を確かめてから」みたいな眠たい対応をしたものでしたものですから、それじゃイカンとばかりにぶち上げたのが『新コミッション』でありました。以下引用します。引用文中の原告とは安河内剛氏、被告とはJBCのことです。

以下判決文80ページより地裁判決_11_R


平成23年6月23日には,森田及び浦谷らがマスコミ向けの記者会見を開き,被告に代わって国内試合を統括する新団体の設立等の意向を表明した結果,分裂の危機との報道がされるに至っている(前記1(3)ケ(エ))。なお,上記の新団体設立について,浦谷は,あくまで試合運営のための暫定的なものであるなどと縷々述べる(証人浦谷・10,12,57,- 80 -58頁)が,試合役員各位にあてた浦谷名義の平成23年6月23日付の文書(乙23の1)に「斉藤及び原告の排除を条件に被告体制堅持の要請があれば,現行の被告体制を維持することについて検討をする。」旨明記されている以上,斉藤及び原告が被告から排除されない限り,被告とは別の新組織体制を維持していく意向であったことは明らかであるから,浦谷の上記証言は採用できない。

安河内と斉藤(当時のJBC理事)を排除することがJBCに戻る条件だ、と言ってるわけですからこりゃどう見ても分裂行為です。『(新団体は)あくまで試合運営のための暫定的なものである』という現事務局長の浦谷氏の証言は、裁判長によって『採用できない』と当然のように一刀両断...。なんだか羽生氏といい現JBCの皆さんについての判決文中の描写を読んでいると切ない気分になってきます。

裁判長はこの新団体のぶち上げこそが安河内氏の降格の引き金となったと分析し、違法であると断じます。以下判決文の82ページ『小括』より。

地裁判決_13_R

本件降格処分は,浦谷らによる新団体の設立を盾にした要求に対し,被告が分裂を回避するために,浦谷らの要求を受け入れ,原告を被告から実質的に排除することを主たる目的として行ったものと認めるのが相当であり,人事権の適切な行使によるものとは認められないというべきである。よって,本件降格処分は,被告の人事権の濫用に当たると認めるのが相当であり,違法,無効である。

 裁判長は安河内氏の降格は怪文書に書かれたような氏による組織の私物化や不正経理が原因ではなく、浦谷氏ら反安河内派の『安河内を排除しないとJBCを分裂するぞ』という脅しに屈した形で行われたものであり、適正な人事権の行使ではなく違法だ、と結論づけます。

 私個人的にはゴッシプライターや怪文書を利用し、さらに試合を人質にとるような方法で強引に組織を掌握するような人に、果たしてボクシングに対する愛情があると言えるのかしら?と大変疑問であります。

 とここで賢明な読者はお気付きでありましょう。他ならぬ「新コミッションの設立構想」こそ安河内氏の解雇理由であったことを、であります。浦谷氏や森田氏が記者会見まで開いてぶち上げた新コミッション構想は不問で、安河内氏の新コミッション構想(この真実性についても後々検証します)はなぜ解雇理由になるのか?当然裁判長もそこの所に言及しております。

少し飛びますが判決文90~91ページにかけての小括部分を以下に引用します。
安河内さん判決文 90
安河内さん判決文 91



 ところで,前記1(3)ケ(エ)において認定したとおり,森田,浦谷及び羽生らは,平成23年6月23日,マスコミ向けの記者会見を開き,被告に代わって国内試合を統括する新団体設立の意向を表明するとともに,原告を被告から排除する内容の処分が被告の理事会で出れば被告に再合流することを示唆し,その結果,被告の分裂の危機との報道がされるに至っているところ,上記森田,浦谷及び羽生らによる行動は,まさに被告とは別のコミッションの設立を企図したものと評価し得るにもかかわらず,被告は,森田らの上記行動に対して何らの処分もしていないのであるから,原告についてのみ,記(ア)ないし(ウ)において検討したような断片的な事象を根拠に別組織の設立を企図したものとして原告につき懲戒解雇事由に当たるとするのは,明らかに均衡を欠き,平等原則にも反するというべきである。なお,森田,浦谷らによる上記新団体の設立に関し,あくまで暫定的なものである旨浦谷が述べていること(証人浦谷・10,12,57,58頁)に理由がないのは,前記2(4)ウ(ア)において述べたとおりである。

浦谷氏や羽入氏は記者会見までして「新団体設立」をぶち上げて公然と分裂を画策したのにお咎めなしで、一方の安河内氏は真偽不明の断片的な情報だけで「JBCを分裂させようとしたからクビ」というのは『明らかに均衡を欠き,平等原則にも反する』と結論しています。まあ実際そうですよね...。さらに浦谷氏の『あくまで暫定的なもの』と言う主張に改めてダメ押し...。

 こうやって実社会の物差しで村社会の論理を否定されることでボクシング界は変わることは出来るのでしょうか?

 判決確定後の業界関係者やメデイアの方の反応に期待するばかりです。(この項続く)

 前川龍斗選手と協栄ジムのトラブルについての週刊誌報道にゲンナリした(旧徳山と長谷川が好きです)

安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART2

 引き続き判決文の検証を続けていきます。

 獨協大学ボクシング部の先輩である森田健氏の後釜としてJBC事務局長に上り詰めるというサクセスストーリーを体現する浦谷信彰氏は、安河内氏の退職を求めていた当時は試合役員のトップという立場でした。彼が、誰が書いたとも知れない怪しからん怪文書を試合役員に回覧し「安河内は(事務局長を)辞めるべきだ」と扇動するかのようなやり方をとったことについて、裁判長がその手法を批判したというところまでは前項でふれました。

 さらに試合役員有志が提出したという通告書についての判決文での説明がちょっと驚くようなものでありました。以下に引用します。判決文78ページより

『その作成名義である「JBC東京試合役員・事務局員合同調査委員会」が架空のものであること(原告本人・4頁),通告書の作成経緯について,浦谷が「中身に異論を挟むことはないので了承した。」旨述べ(証人浦谷・7頁),羽生が「林コミッショナーに会わせてもらえなかったので,文書にしてわかってもらおうと思い,本部事務局職員5名で作成した。」旨述べていること(証人羽生・10頁)からすれば,その作成名義にかかわらず,主として羽生ら本部事務局職員5名で作成し,浦谷が上記名称の使用を認めたに過ぎないものであり,必ずしも東京試合役員会の大半の認識を反映したものとは認められないというべきである。』
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 なんと通告書の主体となる組織が「架空」で、のみならず試合役員が作成した文書ですらないと言うじゃないですか。怪文書を利用する手法といい、なんという謀略体質でありましょう。安河内氏を排斥出来るなら手段は選ばないと言うところでしょうか?

 さらに試合役員が提出した連判状について

この連判状は,「告発文で指摘された疑惑について徹底した真相究明を行うこと」,「全ての疑いが晴らされない限り,安河内事務局長を解任すること」として,真相の究明と疑いが晴れない場合の原告の解任を求める内容であるから,この連判状に署名したことをもって,直ちに,従前の原告の行状から原告が本部事務局長としてふさわしくないと署名の時点で判断していたと認めることはできない。


と総括しています。「疑惑が事実であった場合には解任」と言う表現になってるだけで、解任を求める署名ではないですよと、これも極めて論理的で冷静な結論です。

 さらに一部プロモーターから安河内氏の試合会場への立ち入りを禁止するという書面が提出されたことについても

原告の試合会場への立入りを禁ずる旨の書面を提出しているものの,同書面に「協会より要望書に返答あるまで」と手書きで追記していることから,原告を拒否する態度が確定的なものであったとは必ずしもいえないというべきである。

ここでも、あくまで出入り禁止は怪文書で指摘された疑惑についての事実関係の調査が前提となるという結論です。

「安河内解任はJBC職員、試合役員、ボクシング協会の総意である」というJBCサイドの主張・立証の根拠は裁判長によって悉く否定されていきます。

 出所不明の怪文書が根拠なのですから調査をして事実関係を確かめるのはむしろ当然の話であります。ところがあくまで安河内排斥を目指す勢力はその調査の結果などどうでもいいというような態度をとります

 判決文79ページ後半より80ページにかけて引用します
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地裁判決_11_R

このように通告書や連判状でも求められていた「真相究明」のための調査が被告において実施されることになったにもかかわらず,浦谷や羽生らは,被告による調査を踏まえた判断には必ずしも従わない態度を示し,試合役員のライセンス返上の可能性を示唆しつつ原告に対して辞任を自ら決めるよう迫り(前記1(3)オ),続いて,被告の対応が中立性を欠くとする書面や原告の従来の言動を批判する書面等を各方面に提出するなどし(前記1(3)キ(ア),(イ),(オ)ないし(ク))さらに,平成23年5月31日には,本件調査委員会による調査や原告の不正経理問題についての意見表明をマスコミ等に対して行い(前記1(3)キ(ウ)(エ)),加えて,平成23年6月10日には,休職期間が明けた原告に対して事務局長代行補佐を命ずる旨の示達が林代表から出されたにもかかわらず,これに羽生らが強く反発し,結局,休職期間が明けても原告が出勤できない状態を継続させている(前記1(3)ク)。以上の事実経過によれば,当時の被告においては,通告書や連判状の要望を受けて手続を踏んで問題の解決を図ろうとしたものの,手続を無視した,浦谷や羽生らの原告排除へ向けた強硬な態度を適切に制することが全くできていない状況に陥っていたものと認められる。

真相究明をするべきという名目で試合役員名義の通告書や連判状を作成しておきながら、いざ調査による事実解明が始まるとライセンス返上をにおわせながらあくまで安河内氏の解任を求める彼ら...。

『本件調査委員会による調査や原告の不正経理問題についての意見表明をマスコミ等に対して行い』というのはあの「フグの領収書」についての記者会見のことであります。あれだけ大騒ぎしたのに結局あれはなんのことはない適正な支出でした。あの時「自分が追っているのはたかだか一万幾らのレシートじゃない」とばかり大見得切ってたあの人は一体何をしているのでしょうか?まあぶち上げるだけなのはいつものことで特段驚きも無いわけですが...。

 結局、調査を経ても安河内氏による不正経理や組織の私物化の証拠は何も見つからず、退職の根拠は何ら無くなってしまいます。そこで反安河内派の考えた手法が「新コミッション」の設立でありました。この話は次項で詳しく分析していきます。(この項続く)

 週末の雨で花見が出来そうも無い(旧徳山と長谷川が好きです)

 

安河内判決を読む 司法判断で何が語られたのか?PART1

 さてさて判決文も公開されいよいよ大詰めを迎えつつある、いわゆる「安河内裁判」。

 裁判をずっと追いかけて来た我々にすれば至極当然な判決が下り、確定しようとしているだけなのですが、読者の皆様におかれましては実際に判決文の原本を読むことで事の次第をはじめて理解された向きも多いかと思います。

 私が実際に判決文を読んでみて驚いたのは、非常に踏み込んだ表現でのJBC批判が多々あることです。

 「裁判の判決文なんて無味乾燥なものなんだろうなあ」と勝手に思っていたのですがあにはからんや、非常に温度のある正義感に貫かれたものでありました。それプラス『怒り』と言っていいような、個人名を挙げての辛辣な表現すらありました。

 これから判決文の具体的な内容に踏み込んで考察を加えていこうかと思います。

 今回安河内氏のブログで公開されたのは、判決の主文と結論部分です。安河内氏とJBCサイドがともに事実だと認めた部分について、裁判長がどのように解釈しどのように考えて判断を下したか?という一番大切なところと言えます。

 まず主文から

 判決文1P目

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 この部分は要するに「安河内氏の解雇も配置転換も降格も無効であり、未だに事務局長職にありますよ」「従って降格した時点から遡って、未払いの賃金や減給分に年利5%の利子をつけて支払いなさいよ」ということです。

 谷川氏へ和解の際に支払われた金銭や、安河内氏と他の解雇職員にこれから支払われる未払い賃金を合わせれば恐らく何千万円単位。そこに年利5%という破格の利子がつきます。これは同時に、「安河内氏降格後に事務局長となった人、解雇職員に代わってJBC職員になった人には法的な正当性はなく、支払われた給与は不要な支出であった」ということでもあると思います。

 続いて裁判長の結論部分について考察していきます。75ページの後半部分

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 安河内氏の解雇理由とされた部下へのパワハラですが、安河内氏の降格に先駆けたJBCの内部調査でも「パワハラではない」と認定されているわけで、そういう判断を下したJBCが降格理由にしていることがそもそもおかしいわけですが、裁判長はさらに踏み込んで当時の部下によるパワハラの主張は「選手の命に関わる試合管理業務に対する意識の低さもうかがわれるところであり」「叱責などの意味を理解しないまま,又は理解しようとせず、原告に対する不満等を募らせていたものと推認することができる。」と断じて居ます。要は言われて当然のことを言われただけなのに、真摯に反省せず逆ギレしてるようなもんだというところですね。公の裁判でこんな風に無能者であるかのように認定をされるなんて本当に酷なことでお気の毒だと思います。

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 さらにアルバイトや試合役員についての言動についても、一方の言い分だけを聞いただけで客観性が無く、また叱責された試合役員の勤務態度にも従前から怠業の問題があったことが示唆されます。要は注意されるような理由があったということです。さらに怪文書と言う客観性が乏しい文書を根拠に『不祥事だ』と断じる拙速さにも疑問が呈されます。

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 ここから現在事務局長へと『出世』された浦谷信彰氏の怪文書への対応について、裁判長からこれでもかとツッコミが入ります。

 浦谷氏は「(試合役員)の総意として,信頼できない事務局長の下で試合運営をすることはできないとされた旨述べる」のですが、裁判長は「決議がとられたわけではない」から総意とは認められないと一刀両断。さらに、もし賛成が多数だったとしても「怪文書のコピーが全員に配布され」た状態で試合役員会のトップとして影響力の強かった浦谷氏が「(安河内氏は)辞めるべきだ」と繰り返し主張していた状態では、試合役員は「客観的な状況の把握が必ずしも容易ではなかった」とこれまた至極当然の指摘をします。要するに、真偽不明の怪文書を回覧し、『安河内は辞めるべきだ』と盛んに煽って意思決定を迫るようなやりかたは違法だという認定を裁判で受けたということです。
 
 こうなるとこの怪文書がどういう意図で作成されたものなのか?と言う疑問が湧いてきます。

 この怪文書によって利益を得た人は誰なのか?この怪文書に乗じてJBCを乗っ取った人は誰なのか?

 それを考えれば結論はおのずと出るような気がします。(この項続く)

 敦賀気比の春夏連覇が楽しみになった(旧徳山と長谷川が好きです)

安河内剛氏がJBCに勝訴した地位確認訴訟の判決文を転載します


少し長いですが、安河内剛氏のブログより転載いたします。

読者各位の検証のお役に立てれば幸いであります。

判決文1P目

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安河内さん判決文 85
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