HARD BLOW !

レジェンドが来た!ギレルモ・リゴンドー接近遭遇レポートin大阪天神ジム

IMGP1194_R.jpg

 
今回はギレルモ・リゴンドーのジムワークのレポートです。と普通に書き出していいもんなのか?さして読者がいるわけでもない当ブログでございますが、たまにゃこういうことがあってもいいでしょ!

 話は年末某日に遡ります。知人と前から見たかったバスケットボールのbjリーグの試合を勉強がてら見に行った帰り、当ブログでも馴染みの、日本ボクシング界一の自由人、山口賢一選手(大好評山口賢一選手のインタビューはこちらから)の後援会長が経営するお店にお邪魔することに。メニュー構成や常連客の振る舞いが自由すぎるお店の雰囲気にヤマケンイズムを感じつつ飲んでおりますと、話の流れで山口選手も呼びましょうということになってお店で合流。一緒に昨年ソン・ジョンオ選手のインタビューをアレンジした頂いた恩人で、今回リゴンドー招請の立役者となった国際マッチメイカーローレン・グッドマン氏も現れて、あれこれと四方山話に。

 山口選手が最近、ある元スター選手と出会った時のエピソードなどに爆笑しているうちに夜も更けたころ、ふいに山口選手から「そういえば明日ジムにリゴンドー練習に来ますよ」と言う衝撃発言が!
「えっ?こう言うたら失礼ですけどあの天神ジム(山口選手がオーナー)にですか?」
「そう」
「市場の二階のあそこに?」
「そうオモロイでしょ」
「えっ?見学行ってもいいですか?」
「いいですよ」
「記事にしたりしても?」
「ええんちゃいます」

 えええ~まさか天満にリゴンドーかい!ということでお伺いすると、ホンマに来たんですよ、シドニーとアテネで金メダルをとって、命がけでアメリカに亡命してプロになって、西岡利晃を一方的にKOしたドネアを完封したあのリゴンドーが!恐るべしヤマケン会長。

 10名くらいの軍団でドヤドヤと現れたリゴンドー一行。リゴンドーはすでにトランクスとシューズ着用で、高級ホテルのロビーをあの格好で歩いてきたのかなあ?と驚いていると、すぐにシャツを脱いでリングに上がる。一切無駄の無い上半身のフォルムに目を奪われるが、細身ながら背中の筋肉の盛り上がりも印象的。
IMGP1147_R.jpg
IMGP1179_R.jpg


 縄跳びをしたあと、リングにロープを対角に張ってシャドー。ロープの結び目を狙って軽くパンチを出して行きますが、とにかく動きがスムースでしなやか。

 続いてグローブをつけるとバッグ打ちへ。軽快なラテン音楽に乗ってリズミカルに体を揺らしながらポンポンとジャブから左につなげていきます。ジャブだけでなく右のボディも印象的。常にアクションの中でパンチが出てくるのが印象的です。
IMGP1243_R.jpg


IMGP1236_R.jpg

 
 それからいよいよ芸術的と言われているミット打ちへ。まずは卓球のラケットのようなハンドミットを狙いながらリズミカルにコンビを打ち込んでいきます。ハンドスピードは勿論ですが、即興性も印象的で、トレーナーがその場で要求する複雑なコンビネーションを次々と打ち込んで行きます。

IMGP1325_R.jpg
IMGP1272_R.jpg
 トレーナーがミットをパンチミットに持ち替えると、リゴンドーはパワーパンチを披露。ソリッドで力感溢れるパンチは、精度も抜群。ジャブを交わして、低い姿勢のままカウンターを入れる練習も入念に行っていましたが、この辺は長身の天笠対策でしょうか?ミット打ち全体を通して攻防の一体ぶりが印象に残りました。

IMGP1328_R.jpg

 その後ボディバッグ打ちではさらにパワーアップして、あらゆるアングルから打ち抜くような激しいボディショットを次々と突き上げて行きますが、とにかくパンチ力が印象的。正直パワーファイターの印象はなかったのでこれは予想外でした。かつてタッチボクシング等とも揶揄されたアマチュアボクシングのエリートであるリゴンドーですが、決してテクニックだけでなくパワーもあるのだと実感できました。

IMGP1366_R.jpg
IMGP1370_R.jpg

 ミットのあとはストレッチで終了。その後は見学者相手に気軽にサインや握手に応じ、気さくな一面を見せてくれました。そのカリスマ性に、一緒に見学した観戦仲間のMさん(当然男)は「もう抱かれてもええわ」と意識があらぬ方向に...。

IMGP1443_R.jpg
IMG_4547_R.jpg


 公設市場の二階という場所柄色んな人が通るので、スポーツ新聞の記事などでリゴンドーと気付くギャラリーも出現致しました。

IMGP1403_R.jpg

 その翌日も天神ジムでジムワークとのことでしたが、しかし年の瀬でそうそう家も空けていられない小市民である自分。
本来その日は家の掃除をしなければならないのですが...、ですが...これが行かずにおらりょうか!家人の目を避けるようにまたも天神ジムに。アメリカに亡命した時のリゴンドーもこういう危ない橋を渡ってきたのか...(適当)。

 この日は厳戒態勢とお聞きしたていたのですがジムの中での見学を許可していただきました。ただ見学者は必ずマスク着用。いよいよ臨戦態勢と言う感じであります。

 と、そこにはリゴンドーと同じ日に試合を控えた高山勝成選手の姿が。「なかなか見る機会もないので」ということでジムワークを見学する高山選手。ミット打ちの合間の会話でリゴンドーの印象を話してくれました。

 「思ってたよりパワーを感じますね。それと捨てパンチが少ないですね。全部のパンチ当てに行ってます。思い切りがいい。フェイントも少ないですね。強いて言えば足の動きは色々やってますが。常に立つ位置を変えて、頭も上体も動かしてるのも印象的ですね」

 とのこと。リゴンドーの練習を世界チャンピオンの解説付きで見れるなんて贅沢だな~と思っていると、そこにグッドマン氏が現れて

「東京で取材で来た内藤大助がちょっとミットもってたけど、『パンチが強い』って驚いてたよ。『タイミングでカウンターとって倒してると思ってたけどこれは違う。自分から倒せるパンチがある。切れるパンチだ』って」

 と教えてくれました。スピードとテクニックが印象的なリゴンドーですが、パンチ力もかなり強いと思われます。

IMG_2580_R.jpg


 この日は前日に比べれば軽めのメニューで終了。動きはさらに軽快で調整に抜かりはないと感じました。また陣営のリラックスした様子も印象的でありました。戦いなれているといいますか、必要以上に入れ込んでいないと言いますか。

 その後グッドマン氏のはからいでチームリゴンドーの一員Alex Bornote氏に少しお話を聞くことが出来ました。
IMG_2590_R.jpg
ローレン・グッドマンとチームリゴンドーのアドバイザーAlex Bornote氏

HB「これから階級を上げるというようなプランはありますか?」
Alex Bornote「まずはWBCのグリーンのベルトを統一したい。それからフェザーまでなら上げてもいいかなと思ってる。でもWBCのチャンプのサンタクルスはチキンだからリゴンドーから逃げ回っててなかなか試合を受けてくれない」
HB「サンタクルズと試合しても問題ないですか?」
Alex Bornote「全然!本当は1月17日にサンタクルスと試合するはずだったんだ。でも逃げられてしまった。こっちはこの試合の後1月17日にやったっていいくらいだよ」
HB「今後日本のボクサーにチャンスを与える用意はありますか?」
Alex Bornote「今回初めて日本に来たけどすごく気に入ったよ。日本のファンはボクシングをちゃんとスポーツとして見てくれるから。勿論日本で日本人と戦うのもOKですよ」

 ということで今回の接近遭遇は終了。至近距離でリゴンドーの練習を見てますます大晦日の試合が楽しみになりました。

 一方の天笠選手はこの試合に向けてYOUTUBEで情報発信していますが、これがまた面白い。なぜか石丸元章さんのディレクション。



 階級を落としてリゴンドーに挑む彼の勇気が、磐石のスーパーチャンピオンにどこまで通用するか?注目して見たいと思います。

 それにつけても今年は山口賢一選手にはインタビューや取材ですっかりお世話になりました。来年も日本のボクシング界に一石も二石も投じていただきたい!と思っております。

 リゴンドーがラテン音楽かけながら練習する姿がグッと来た(旧徳山と長谷川が好きです)

リゴンドウー ― ボクシングの普遍的価値の継承者

 かつてボクシングの世界タイトルマッチはその国の国民的行事であった。世界チャンピオンは8つの階級に一人ずつ。世界チャンピオンはそれだけで世界最強の称号であり得た。
 現代において世界チャンピオンは17階級に四人ずつ、計68人いる。それゆえ世界チャンピオンはそれだけでは世界最強の称号ではない。世界最強であるためにはそれ以上の何かが求められる。
 また現代において、世界チャンピオンであることは、世界最強であることを必ずしも要求されない。より正確に言えば、「世界チャンピオン」は世界最強であることを必ずしも追求しない。それはボクシングを職業とするものとしてお金を稼ぐために、より効率的な、より安全確実な道を選ぶことができるからである。
 ボクシングの世界チャンピオンの存在価値というものが現代においては多元化している。
 世界チャンピオンであるだけでは十分ではない。もっと言えば、強いだけでは十分ではない。観客を喜ばせる試合をしなければプロとして食っていけない。そういう価値観がある。
 一方で世界チャンピオンであるだけで、そのボクサーの試合が国民的行事となり得る、そういう価値観の世界もある。そこでは「強い」というだけで、勝利するだけで、ボクサーは賞賛と敬意と富を享けることができる。
 後者は伝統的もしくは古典的(クラシカル)な価値観と言えるかもしれない。
 リゴンドーはそういう価値観を継承するボクサーである。人気を得るために観客に媚びる試合はしない。ただ相手に勝利することのみに徹する。そういう姿勢を彼には感じる。
 リゴンドーが相手を選ばず最強のボクサーと闘い続けたノニト・ドネアを破って世界の頂点に君臨していることは象徴的だ。―ドネアの燃え尽きぶりは、この世界で最強と人気の双方を手にするリスクがいかに大きいかを物語る―。稀代のカリスマであるドネアに圧勝したことで、彼は最強の称号を手にした。しかし興行価値の点ではドネアには及ぶべくもない。
 しかし彼が継承する価値観は普遍的な、本質的なものであると私は思う。
 そのリゴンドーが日本で試合をする。世界最高の選手、世界最高のボクシングを見られることを、ボクシングファンとして幸せに思う。彼にはこれまで通りの試合を見せてほしい。

※ その姿勢の点においてリゴンドーと同じものを感じさせるナルバエスの試合も楽しみである。挑戦する井上選手にとって―彼もまた実力相応の評価を得ているとは言い難い―勝っても負けても貴重なキャリアとなるだろう。

by いやまじで

服部海斗選手について

 昨年末、高山勝成選手の世界戦に向けたスパーリングを見学させて頂いた際、パートーナーを勤めていた服部海斗選手。

IMG_2005.jpg

 スパー当時は16歳だった彼は再三鋭いストレートを世界チャンピオンの高山選手に巧打し、素晴らしい才能の片鱗を見せていました。練習後に熱心に高山選手にアドバイスを求めるに姿は、目標に向かって一心に努力する若者の真剣さが溢れていました。

 その服部選手は、現在急性骨髄性白血病で闘病中であり、先端医療による治療を必要としています。

 その為の費用を募る募金口座が、所属ジムである大成ジムの丸元大成会長などの呼びかけで作られました。

 当ブログも微力ながら情報拡散のお手伝いをさせて頂きます。

 ファンの皆様にも是非募金に対するご支援、ご協力をお願いしたいと思います。どうかよろしくお願い致します。

 以下丸元大成会長のブログより抜粋致します。

【海斗を救う会】募金振込先

みずほ銀行
阿倍野橋支店
店番号 516
口座番号 2397593(普通預金口座です)
口座名義【海斗を救う会】代表者 服部兼司

【窓口】大成ボクシングジム

兵庫県三田市中町4-1
079-562-2001

亀田プロモーション、ジム会長らがJBCを提訴!

Hard Blow!として亀田プロモーション、ならびに選手に取材を申し入れ、日程を調整している所に飛び込んで来たニュース。年末に動きがあるという情報をある筋からいち早く入手していたが、ここまで年の瀬も押し詰まっての事とは正直驚いた。

Yahoo!newsによれば
昨年12月のプロボクシング世界戦運営で混乱を招いた責任を問われ、亀田ジムの吉井会長と嶋マネジャーが事実上の資格剥奪処分を受けたのは不当として、亀田ジムは26日付で、日本ボクシングコミッション(JBC)を相手取り、地位確認を求める訴訟を東京地裁に起こした。27日に両氏が発表した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141227-00000082-jij-spo
とのこと。

複数の業界関係者によると「そもそもの処分に行き過ぎがあった」「資格剥奪はライセンスを盾にした脅しに近い」という意見もあった。
当初は記事にしたように今月中旬までに選手への直接取材を申し入れ日程調整をしていたが、こうした事で激震も予想された為に静観をしていた。
こちらも訴状を確認しなければ正確な事を伝えられないので、改めて取材したいと思います。

B.B

高山×ロドリゲスがSports Illustrated誌選出の年間最高試合に!

 タイトルの通りですが、どえらいクリスマスプレゼントが来たもんです。BWAAの記者投票ノミネーションで驚いていたら、なんといち早く別口での受賞の知らせが。しかも日本の記者投票ではなく、水着特集でもお馴染みの世界一有名と言っていい、アメリカ№1のスポーツ専門誌の賞であります。

 試合直後からファイトニュースで魔法のようなメキシコの一夜と絶賛され、ESPNのダンラファエルのツイッターでも「fight of the year」と言われてましたが、その通りの評価が広がっています。

 Sports Illustrated誌のウェブより、CHRIS MANNIX記者による今年のボクシングアウォードの記事
        ↓
SI's 2014 Boxing Awards

高山×ロドリゲスに触れた部分は以下の通りです

It’s a boxing axiom: The bigger you are, the more TV time you get. That’s why it was no surprise that the strawweight (105 pounds) unification fight between Rodriguez and Takayama didn’t get the premium network treatment. Too bad, because Rodriguez and Takayama produced in August the most action-packed fight of the year. For 36 minutes the diminutive brawlers went at it. Rodriguez buried savage body shots into Takayama’s midsection; Takayama responded by suffocating Rodriguez with overwhelming pressure. There was only one knockdown -- by Takayama, courtesy of a crushing Rodriguez uppercut -- but the violence was unparalleled by any fight in 2014. Rodriguez took the decision, but make no mistake: There were no losers in this one.

ざっくりと翻訳すると

体が大きければ大きいほど、テレビの放送時間も増える―これはボクシングの公理である。それだから、高山とロドリゲスのストロー級統一戦にプレミアムネットワークによる中継がつかなかったのは驚くべきことではないが、高山とロドリゲスは今年最もアクションが詰まった試合になったのだから(プレミアムネットワークによる中継が無かったのは)残念なことである。36分に渡って小柄な喧嘩屋は戦い続けた。ロドリゲスは野生的なボディ撃ちを高山にめり込ませ、それに対して高山は圧倒的なプレッシャーでロドリゲスを苦しめた。ノックダウンは、ロドリゲスのアッパーカットが高山に当たったことによる一度だけだったが、その荒々しさは2014年度の他のどんな試合も比肩するものはなかった。ロドリゲスが判定勝ちしたことは間違いないが、この試合には敗者はいない。

と言う感じですかね

外国の記者って粋なこと書きますね。

大晦日の試合に期待します。

この試合に対する海外での評価と日本国内の評価が違いすぎると感じる(旧徳山と長谷川が好きです)



 

 

異例の二団体統一戦へ! 高山勝成選手スパーリング短信

仲里ジムで行われた、大晦日の試合に向けた最終のスパーリングにお邪魔して見学して参りました。

寒波がありましたが、ウエイトコントロールは順調との事。

今週はずっとスパーリングだったそうですが、この日もインターバル40秒で12R。一週前の近畿大学のスパーリングに比べるとかなり動きも軽快に見えました。ロドリゲス戦の前にも入念に確認していた対角線のコンビ(左ボディーから右のヘッドハント)にくわえて、右のトリプルやコーナーまで追いかけて左ストレートで終わる連打などパンチのアングルや種類も多彩で未だに貪欲に技術の向上を追い求めていることが伝わってきます。この試合を含めてサウスポーが4試合続いていますが、ポジショニングも入念に確認していました。

対する大平選手は、元ジムメイトの小野心選手と対策を練っていると報道されていますが、果たしてどうなるか?好試合を期待します!

IMGP1115_R.jpg
IMGP0941_R.jpg
IMGP0978_R.jpg
IMGP1046_R.jpg
IMGP1081_R.jpg


高山×ロドリゲス戦がBWAA(アメリカボクシングライター協会)の年間最高試合候補に

ボクシングマスター様の記事で知りました。

最軽量級の試合でノミネートされたこと自体が快挙でしょう





 

 

異例の二団体同時決定戦へ!高山勝成インサイドレポート&スパーリングレポートin近畿大学

IMG_4264_R.jpg


 あれからもう一年か…。日本人としては21年ぶりに海外で世界タイトルを奪取し、国内復帰戦を迎えた高山勝成選手と中出博啓トレーナーにはじめてインタビューしたのは昨年の11月のことでした。12月の試合にワンサイドで判定勝利して、チャンピオンとして年を越した高山選手。中出トレーナーもエディ・タウンゼント賞を受賞して、苦難の道を歩いてきたチームにとって2013年はまさに大輪の花が咲いた年となりました。

 迎えた今年はまず五月に小野心選手との防衛戦となり、序盤苦戦しつつも後半に見せ場を作って判定勝ち。続いて8月にはメキシコでWBO王者フランシスコ・ロドリゲス選手との王座統一戦。完全アウェイでの歴史的な一戦は白熱の打撃戦となり、高山選手は判定で敗れはしましたが、海外のファンやジャーナリストからは二人のボクサーに対して惜しみない賛辞が注がれました。日本国内では試合中継すらない一方で、メキシコでは全国テレビ中継と1万8000人の観衆で、ファイトニュースやESPNの記者からも絶賛されるというこの状況は、まさに高山選手が歩いてきたボクシングロードを象徴するものと言えるでしょう。

 JBCライセンスを返上しフィリピン、南アフリカ、メキシコと流浪を繰り返して世界のベルトを追いかけた、高山選手のキャリアは日本のプロボクシングの先駆けであり、旧来的な日本のボクシングビジネスの枠をはみ出すものです。決して大所帯とは言えないチームが、海外の認定団体やプロモーターと直接コンタクトをとってチャンスを作っていくスタイルは、大手プロモーターやテレビ中継ありきで国内での挑戦を目指すか、あるいは海外で選択試合の声がかかるのを待つかというスタイルの日本のジム所属の大半の選手とは明らかに異質です。

 先ごろ話題となった和気慎吾選手陣営の世界戦出場を巡るトラブルも、マネジメントやテレビ放映の権利関係が錯綜した複雑怪奇な事情によるもので、「なんでそんなややこしいことになってるわけ?」と唖然とする世界。既得権の蜘蛛の巣が張り巡らされていて選手はがんじがらめと言う印象であります。テレビ局と特権的プロモーターにおなじみのマッチメイカー氏と言うトライアングルとそれを崇拝する旧態依然のマニアの皆さんが業界の均衡ある健全な発展を妨げていると思えてならないのであります。まあその辺の私感は項を改めてということで、今回はお馴染みの高山選手の試合直前レポートであります。

 まずはIBF決定戦がWBOとのダブルタイトルになった言う知らせを聞いて驚いた当方は、早速電話で中出マネージャー兼トレーナーに背景事情を伺いました。(中出氏、高山選手の発言が赤字です)

HB「ダブルタイトルの決定戦ということで驚いたんですが、これって前例があるんですか?」

中出「アントニオ・ターバーがやってるんですよ(筆者注;2003年のグリフィン戦)。IBFとWBCのダブルで」

HB「かなり珍しいケースなのは間違いないですね」

中出「みたいですね」

HB「このへんもイノベイターですね」

中出「ロドリゲスとの試合はお互いオプションがあったんです。だから最悪再戦は出来ると。でもロドリゲスのウエイトがキツイのは知ってたんで。返上するやろうなと思ってました。」                    

HB「まあ統一戦で接戦だったんだからIBFのランキングは下がらないですよね」

中出「だからIBFはチャンスがあれば当然行こうと言うつもりでした」

 案の定ロドリゲスはWBOタイトルは保持したまま、IBFのタイトルを即リリース。ところがIBFの決定戦の相手となるはずだった最上位ランカーのホセ・アルグメンド(メキシコ)がプロモーターとの二重契約のトラブルで対戦交渉が暗礁に乗り上げてしまいます。更に次位の原隆二選手が田中恒成選手に敗戦し、結局最上位の大平剛選手が対戦相手となりました。

中出「俺、最初英語のランキング表見てスタッフに『このゴー・オオデイラってどこの国の選手や』って聞いてしもて(笑) 『中出さん日本人ですよ。花形ジムですよって』言われてあーって。もちろん知ってたけど大平剛って言う漢字と英語のGo Odairaがなんか結びつかへんかったんよ。上位から声かけて対戦可能やったからやると。それだけですよ。」

HB「序盤苦戦した小野戦に続いてまたもサウスポーの日本人との対戦となりましたが?」

中出「でも純粋にミニマムの選手とやるのは本当に久しぶりですよ。小野はライトフライ、ロドリゲスもフライでもやる選手やし。だから対格差がないのはいい要素です」

 とここまでなら「なるほどね」で済む話ですが、この試合がなんとWBOとのダブル決定戦となってしまったという驚きのニュースが発表されました。果たして何があったのか?

HB「WBOの方はどういう経緯で?」
中出「高山と10月にWBOの総会に行って、メキシコで大差(11ポイント差)つけたWBOのジャッジの採点にクレームしたんです。それと併せて、ロドリゲスのバンデージがプラスチックで固めたような素材のものだったのでそれについても抗議して...。」

 ロドリゲス選手のバンデージが固い素材のものであったことは、中出氏のブログやメキシコに帯同した山口賢一選手か
らの話で当方も聞き及んではおりました。試合後に高山選手本人がロドリゲス選手から回収し、日本に持ち帰って陣営で色々と検証したようです

HB「バンデージの件は中出さんのブログでも書かれてましたがそんなに硬い素材だったんですか?」


中出「試合前のチェックの時にすでに硬かったから、ナックルのところを固めないように巻きなおしさせたんです。総会でも抗議して。それに試合内容も接戦やったんやしちゃんとランキングに反映してくれとリクエストしたら『ロドリゲスと接戦だったのだから上位の力はある』という返事がもらえたので一応納得して」


 自分からランキング委員会に乗り込んで自己主張して交渉する。これは本来当たり前のことなんですが、出来そうで出
来ないことでもあります。WBOにしても自分達のジャッジが明らかに偏向した採点をしたという負い目も正直あったのでしょう。この辺は駆け引きであります。
  
中出「それから日本に帰ってきて、11月にビジネスのお客さんと食事してたら着信が何件も何件も入ってくるんですよ。 『身内に不幸でもあったかな?』と思ってかけなおしたら全部マスコミの人で『中出さんWBOのランキングで高山が一位で大平が二位になってますよって!』って言われたから『エーッ!』ってなって」

HB「それは全く知らされてなかった」

中出「全く。上位に入ってるかなとは期待してたけど一位って。しかも二位が田中恒成やったら分かるけど大平。何があったんや?となって」

HB「大平に関しては何も言ってないんですよね」

中出「ないない。『高山には上位の力がある』としか聞いてないから」

 このランキングは中出氏も大変驚いたようです。ブログにも驚いている様子が綴られています

中出「でもふっと『これはWBOからのメッセージかな』と思ってメールで探り入れてみたのよ。『今度の試合WBOの決定戦にしてもええの?』って。そしたら『いい』と。それならと言うことでWBOから正式なレターとってダブルタイトルにしたろと。ところが今度はIBFが頑として認めへんわけ」

 IBFは自分達の組んだ試合に便乗するようなWBOの動きに難色を示します。

中出「だからこっちは急遽スタッフにニュージャージーのIBFに飛んで貰って。さっき言ったターバーの試合のこととか調べて理論武装して行ったんやけど、あっちは『あのターバーの試合はオフィシャルもスーパーバイザーもIBFしかいない試合で、WBCは試合結果を受けてチャンピオンと認定しただけや』と記録のファイルをだして言うて来るわけよ。やっぱりIBFはルールに厳格。WBOはそれに比べたら大分ゆるい(笑)」

 ここで知人の某関係者が言っていたメジャー4団体の比較論が面白かったのでちょっと引用します。

 「老舗の二団体というとWBAは金、WBCはコネ。儲かるなら暫定でもスーパーでもなんでも乱発するのがWBA。WBCは人脈支配ですね。権威主義とも言えますが信用を大事にする分運営は手堅くしっかりしています。で新興のIBFとWBOは差別化の為に違う特色を出してます。IBFは挑戦にいたるルールが明確でオープン。挑戦者決定戦が機能してるし入札も安いです。WBOは機を見るに便というかフットワークが軽い。新しいビジネスチャンスに貪欲に関与します。」

 このケースはWBOのフットワークの軽さがIBFの厳格さと衝突したというところでしょうか?中出氏はアメリカに渡ったスタッフとともに懸命にIBFを説得します。

中出「動画とってスマホで送って。『頼むチャンスやから今回はどうしてもやらせてくれ』って『IBFとの信頼関係は今後も続くから』って。日本人はサムライやから武士に二言はないとかなんとか言うて、高山にもメッセージしゃべらせてそれも動画で送って。そした最後には向こうも認めてくれてね」

 またも直接交渉で活路を開いた高山チーム。このチャンスが来た理由にはメキシコでの試合への好評が根底にあることは間違いありません。リスクを冒して敵地で挑んだ試合がハイレベルだったことが全ての原点であります。

 中出「こんな言うたらファンの人の中には抵抗感じる人もおるやろうけど目の前にチャンスがあったら俺らは行くよ、と。だって次いつ来るか分からんのやから。」
 HB「それは当然だと思います。自分はダブルになってよかったと思いますよ」

 8月の試合で評価を上げ、IBFの決定戦にいち早く出場の意思表示をして交渉をまとめ、WBO総会へ出席して自己主張するといった能動的なアクションを起こすことでチャンスを引き寄せたと言ってよい今回のダブル決定戦。それもこれも、陣営一丸でリスクを冒して攻めてきた結果得られた果実である、と自分は思います。
 
 最近は総会に参加する選手やプロモーターも増えて来ましたが、そうやって顔や名前を売って、掴んだチャンスを生かすことで今度は統括団体から働きかけが来る。これは好循環であって批判されるようなものではないと思います。はっきり言って『人脈のWBC』にはもはや日本の新興プロモーターには未踏地はないといえるでしょう。日本市場を狙うWBOやIBF、あるいは無節操だが認定料という金銭を介せば対等な待遇が受けられるWBAの方がチャンスはあるというのは自明であると思います。
 
 意思決定のスピードの速さも印象的ですが、それプラス高山陣営が海外にでも出向いていくと言う姿勢であることも重要ではないのか?と思えます。本来グローバルビジネスであるボクシング界で、チャンピオンが日本でしか試合をしないならそれだけで機会損失の原因となります。魅力的なオファーがあればどこにでも行って、誰とでもいい試合をする選手は統括団体にとっても魅力的ではないのかと思えます。

 とまあこの辺も項を改めるとしまして、「近畿大学でスパーリングがあるから見に来てもいいですよ」とまたもお招きを受けたので、あつかましくもお邪魔して来ました。

 IMG_4235_R.jpg
 体育会学生を鼓舞する横断幕が掲示された近畿大学
IMG_4242_R.jpg
 学内スポーツ新聞にも大物が登場

 五月の小野戦に続いて近畿大学での出稽古をメニューに取り入れた高山選手。約半年ぶりに訪れた近畿大学ボクシング部は、ご存知元WBAスーパーフライ級チャンピオン名城信夫ヘッドコーチと、青年監督浅井大貴さん(全日本社会人選手権優勝の現役選手でもあります)が、明るく厳しく選手を指導していて、以前にもまして活気溢れる雰囲気でございました。5月には学校ジャージみたいな服装でぎこちないシャドーをしていた学生さんも、服装も佇まいもすっかりボクサーになっていて感心。若者の成長と言うのは速いもんであります。キレキレの動きを見せる女子選手もいましたが聞けば先輩選手の紹介で参加している高校生なのだとか。マスやミット打ちも非常にこなれたといいますか、堂に入ったもの。一方練習相手を務める名城コーチも現役時代と変わらぬグッドシェイプで、試合に出れるんじゃないの?と思うようなキレのある動きでありました。
IMG_4391_R.jpg
精力的に指導する名城コーチ
 練習前に少し高山選手にお話を伺いました。

HB「ダブルタイトルマッチになりましたが」

高山「WBO総会で言うべきことを言った結果やと思います。正当な評価をして貰ったと思ってます」

HB「ロドリゲス戦の評価が海外で高かったことも大きかったですよね」

高山「それも関係してると思います。8月にあの舞台で出来たことでチャンスが広がったと思います」

HB「負けてもキャリアがつながっていくというのは日本のボクシングでは珍しいことですが」

高山「自分達からアクションを起こしたからこそチャンスが来たと思ってます」

 と自負心と覗かせる高山選手。

 この日は三人の学生選手(うち二人がサウスポー)相手にインターバル40秒で8ラウンド。スパーリング期間のド真ん中での、三日連続スパーリングの三日目ということ「疲れのピーク」(中出氏)という時機で正直高山選手の動きも少し重く感じられます。

 結構学生選手に打ち込まれるシーンは目立ちましたが、いつもながらスタミナは驚異的の一言。8ラウンド動き続けて息も乱れない。三人目のサウスポー選手は自分も五月のスパーリングでその高い技術に驚いた選手で、今回も彼が特徴的な軌道のアッパーを出すと、セコンドの名城コーチや浅井監督が思わず「うまいな~」と顔を見合わせるようなシーンも。一方の高山選手も春とは違う対応を見せ、変則的なタイミングを見越したような動きで対応。疲れている中でも、きっちりと押し返し貫禄を見せました。

IMG_4326_R.jpg
IMG_4349_R.jpg

 その後バッグ打ちとシャドーで練習は終了。パートナーを勤めた学生選手との技術交換も活発に行われました。二人目のパートナーを務めた長身選手と、「体格差のある選手とどう戦うか」ということを熱心に語り合う高山選手の姿に探究心の片鱗が見えました。また、こういう機会に一つでも吸収しようと言う学生選手の真面目な姿勢にも感心。このようなプロアマ(というかAIBAはアマチュアと言う呼称はもう使わないようです)の交流はもっと行われるべきだと感じました。

 終礼で浅井監督がされた「廃部になった時は練習すらままならなかったのに今は、こうやって普通に練習が出来ている。このことにまず感謝して。そしてここにいれば強くなれるという環境を作っていこう」という訓話が大変感動的でした。実際、若く清新な彼の人間性が部の明るい雰囲気に大いに貢献していると感じられます。澤谷コーチ、名城ヘッドコーチ、浅井監督と言う三世代が巧く作用しあっていい雰囲気が出来ているなと感じました。

 試合後にマスコミの囲み取材にも答えた高山選手は、学生選手に技術指導していたことについて聞かれて「教えるだけじゃなくこっちも、どこが悪かったとか教えてほしいんですよ」と答えていて、印象的でした。
IMG_4433_R.jpg
スパー後に感想を語り合う

 その後大阪市内に戻る車に便乗し、少しお話を伺いました。

HB「メキシコの試合は1万8000人入ったと言うことですが」

中出「あの声援がロドリゲスには力になっんとちがうかな。中盤でスタミナ切れかけてたけどもう一回復活したからね」

HB「ESPNのダン・ラファエルとかファイトニュースも好意的だったし、メキシコではかなり反響があったんじゃないですか?」

中出「メキシコではもう有名よ。カミカゼやサムライやっていわれて」

高山「南アフリカとかメキシコとか局地的に有名なんです(笑)」

HB「負けた後、引退と言う選択は考えましたか?」

高山「試合が終わった後はガッチリ高校に通って、ボクシング部で体を動かすくらいでボクシングから離れてましたが、や   りたいと言う気持ちは変わらなかったです。体はなんともないし、それやったらあとは気持ちだけでしょ。三団体って明   らかに中途半端やしねえ」

 というわけで現役続行には全く迷いはなかったという高山選手。

HB「試合後は高校に行ってたんですか?」

高山「二ヶ月みっちり通いました」

HB「学校ですが、実際通ってみて思ってたのと違いました?」

高山「というか最初はちょっと根詰めすぎましたね。課題の提出やレポートで三時四時まで起きてやってましたから。学校行ってる時は野球部の寮に泊まってるんですけど、朝方まで部屋の明かりがついてるから学校の人から『高山君、夜ちゃんと寝てないでしょ』と心配されたりして」

HB「山口賢一選手に話聞いたときに『高山は特待生みたいなもんだからそこまでやらなくてもいいのに真面目過ぎる』と言ってましたよ」

高山「そうですか(笑)。でも最初はどこまでやらなくていけないのか分からなくて...」

中出「それは山口が間違ってるわ。折角勉強の機会得たんやから一生懸命やったらええねん」

高山「今は大分落ち着いて来ました」

HB「文化祭にも参加したんですよね」

高山「しました。でも運動会と遠足はフィジカルのトレーニングやってたので参加できなくてあとで写真が来ました」

HB「病気で遠足に行けなかった子と一緒ですね(笑)」

高山「そうです。写真見たらアイススケートに行ってました。今はLINEでクラスのグループがあってそこで試合のこととか知らせたりしてます」

 つづいてちょっと前から聞きたかったことについて

HB「選手としては大晦日に試合するってどうなんですか?」

高山「うーん、一回一月五日に試合したことあるんですけどあれよりはいいですね。大晦日やったらまだ正月気分は味わえるでしょ。一月やとクリスマスも年末も正月もなしであれはちょっと最悪でしたねえ(笑)」

 ということで12月下旬の開催が選手のモチベーション的にはいいのではないか?とテレビ局の方にはご提案したいと思います。

 最後に大平戦の展望について

中出「彼は前に出てくる選手。だから小野より噛み合うと思います。上場企業のサラリーマンの地位を捨ててボクシングの世界に入ってきたんでしょ?今の若い人は正社員なるのが目標やって人も多いのに、ボクシングするために辞めた。言うたらドアホですよ。勝成とドッコイのドアホです。だから大晦日の試合はドアホ対決やと思いますよ。」

HB「ドアホ対決!でもなんか分かる気がします。花形ジムの花形進会長はご自身も負けが多いですけどジムの選手に対しても負け数が多くても我慢強くチャンスを作りますよね。福島学が最後に移籍してきたり。花形さんは高山君と一緒でメキシコでも有名みたいですね」

中出「ミゲル・カントとやってるからなあ。そうか花形ジムってそういうたらそうやなあ」

 今回も丁寧に取材対応していただきありがとうございました。色々異論はあるかと思いますが、是非勝って冒険の続きを見せて頂きたいと思います。

 ダブル決定戦について批判してるメデイアは当事者に取材するべきなんじゃないの?と感じる(旧徳山と長谷川が好きです)

分かっちゃいるけどやめられない 想像通りJBC様が労働裁判の判決を不服で控訴の巻

 栄光の一般財団法人日本ボクシングコミッション様が、安河内剛氏の解雇を無効とし、事務局長職への復帰も認めた全面敗訴の地裁判決を不服とし高裁へ控訴したとの報が、判決日に記者会見にもちゃんと来ていたまともな方の専門誌のニュースサイトが報じております。
  記事へのリンク
       ↓

 ボクシングニュース12月9日

 こういう労働裁判の控訴審はことのほか速く結審し、すぐに判決が出るそうです。もちろん新証拠が出ない限り判決は変わりません。判決を覆すような有力な証拠があれば一審で出しているでしょうから、まあ金と時間の無駄遣いとなる可能性が大であります。これまでも相当な金銭を使ってきていると思うのですが、単なる幹部連中のカラ意地でこの上まだ公金に類するお金を使ってしまうその体質には感心します。まあ自分の金じゃないからどうでもいいんでしょうね。

 しかしまあファンも業界の方も「違法か敗訴か知らんけど別に今のままでいいじゃん」と言う人が一杯いて呆れてしまいますね。法律に触れようが、何千万も無駄使いしようが、人権侵害をしようがボクシング続いていくならなんでもいいというこの退廃…。こういう人ってボクシングの何を見ているのでしょうか?不正義を放置しても平気な人が一方で競技の公正を言うのが不思議でなりません。まあなんも考えてないんでしょうね。

 それと秋山氏がぶち上げた『暴力排除の誓約書』を、素晴らしい試みだみたいに評価してる人がいますが、紙切れ一枚書いて暴力排除できるなら何の苦労があるでしょうか?Jリーグやプロ野球、大相撲ですら弁護士や警察関係者等を招いて強制参加の暴排講習を行い、内容についてのレポートも提出させています。内容もケーススタディやロールプレイを交えながら「身分を隠して近づく暴力団関係者をいかに見抜くか、付けこまれないか」を実践的に説いています。紙切れ一枚書いたら暴力団をシャットアウト出来ると秋山氏も、彼を支持するジャーナリストやファンも本気で考えているのでありましょうか?余りにも現実から遊離した空理空論を褒めてしまうような感性は、「法律に触れようが裁判に負けようが自分達が心地よければいいんだ」と言う閉じた感性に通じるもんがあるんでしょうかね?

 普段は普通に会社勤めしながら日常生活を送っているであろうファンが、ことボクシングになると「法律とか裁判なんかどうでもいいじゃん」と言っちゃう粗雑さが当方には信じられません。

 こういう人って自分が不当解雇に遭っても、裁判してる間に会社が回ってたら「自分が間違ってた」と思うんでしょうかね?

 暴排の紙切れと言い想像力の欠如が凄いですな。ああはなりたくないね。

 むしろボクシング界がファンも含めて暴力団的な結合組織なんじゃないの?と思えてきた(旧徳山と長谷川が好きです)



 

事件のその後

                        桜ノ宮 表紙

 面白い本を読んだのでちょっとご紹介を。その本はフリーライターの島沢優子さんがお書きになった『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実―そして少年は死ぬことに決めた』です。

 著者は高校、大学とバスケット部出身で大学では全国優勝という実績の持ち主。彼女の左の脛は高校時代に顧問に蹴られすぎて平たく変型しているのだそうです。人格否定の罵倒など(時には両親の悪口まで)も日常的だったそうです。

 そんな彼女が、様々な議論を巻き起こした桜宮高校バスケ部事件の経緯と現時点の顛末(顧問の刑事裁判の結果など)を詳細に取材してまとめた労作であります。

 ワイドショーなどで「昔は体罰が当たり前だった。今の子はひ弱ではないのか?」というような粗雑な体罰容認論を流布するコメンテイターがいましたが、それは少年の自殺という重い事実の前にはあまりに空疎な言葉でありました。しかし実際に「寛大な処置」を求める署名が1000筆以上集まったり、バスケットボール部員の一部の父母が自殺した少年の家庭に原因があるかのような嘘の情報を週刊誌に流すというような、顧問を守る動きが実際に多くあったのです。顧問の教師は自殺の数日後には少年宅を訪れて、「部活の指導に復帰しても良いか」と尋ねて両親を唖然とさせています。

 少年はキャプテンに抜擢されましたが、顧問に目の敵にされて体罰の標的になります。それはこの顧問の常套手段で、レギュラーの中でマジメで素直な選手を怒られ役にしてチームをまとめるという手法を従来からとっていたらしいということが取材から分かってきます。コーチの要望を先回りして読み取って動くという無理難題を日々要求される少年は、暴力と罵倒で磨り減っていき、たまりかねてキャプテンを辞めると申し出ると「それならレギュラーからも外す」と宣告されます。「キャプテンでなければ試合に出れない」という条件をつきつけられたことが自殺の直接の引き金になったと著者は分析しています。理不尽な暴力を一方的に受けた上に「お前はダメな奴だ」と毎日罵倒され、あげくバスケットボールすら取り上げようとした顧問。子供を相手に試合出場と暴力と言うアメとムチで支配した男は自分の行為の残酷さに無自覚だったようで、裁判では自分を舌鋒鋭く論難した少年の兄を睨みつけたりしています。

 実は周囲の生徒や運動部の部員、桜宮高校を目指していた受験生達にも、部活が出来ないことや入試が中止になったことに対する不満が相当あったようです。人が一人死んでいる事の重大さや、原因が顧問の教師にあるという重大性を理解できない、受け止められないという学校のありようは異様であり、入試中止の判断は正しかったと当時も思ったし今もそう思います。

 自殺した少年の人間性や両親、バスケット選手である兄との関係も詳細に書かれています。どちらかというとそちらがテーマかもとすら思えるほどです。

 終章では体罰する側の心理にすら踏み込んだ分析がなされます。

 大変示唆にとんだ内容ですので是非ご一読を。

 バスケ界の内紛も相当ひどいよなあと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)


 

奇妙な論理 

 ちょっとおかしな記事だと思われるものがあったので触れておきます。

 亀田大毅のベルトを巡る一連の騒動で、一貫してJBCの秋山氏のコメントを伝えて来たことでお馴染みの、YAHOOのニュースサイトTHE PAGEの本郷陽一記者。その本郷記者が書いた記事が、私からすると『ちょっとこれはないんじゃないの?』と思える内容なのであります。

 <ボクシング>異色のリーゼント王者が事実上の引退危機(←記事へのリンク)というこのヘンテコな記事、センセーショナルなタイトルとは裏腹に論旨は思いっきり不明瞭であります。活字媒体では本格スポーツ評論を志向されていた本郷記者も、すっかりネットメデイアの作法に染まり、「記事の内容よりもクリックさせるような派手な見出しが何より大事だ」という境地に達せられたのかも知れません。確かに『掴みはオッケー』と言う感じの見出しでございます。

 で記事を読み進んで行きますと、なんとも論旨が分かりにくい。要は何が言いたいのかサッパリ分からないのです。

 当初TBSが中継する大晦日興行でドネアに勝ったリゴンドー選手と戦うことを了承していたという和気選手ですが、すでに試合予定があった東洋戦のプロモーターと従来の中継局フジテレビから横槍が入り(というか『こっちが先約やろ』という話ですね)、結局和気選手は世界戦を辞退したと。その部分を引用させて頂きます(以下赤字で引用)

 だが、この動きに東洋太平洋戦をプロモートしていた関係者が意義を唱え、翌9日には古口会長の頭越しに、和気を呼び出し同伴させた上で、TBS側に「東洋戦を先に契約しているので、今回のリゴンドー戦は無効であり、やらない」と伝えた。そのボクシング関係者は、「和気は、フジテレビがここまで育てた選手。それを試合契約した後にTBSに鞍替えするのは、業界のルールに反するし、リゴンドーとやっても勝てないし意味がない。来年はフジテレビが世界戦を組むと言っている。JBCも、すでに認定した試合契約を破棄したらとんでもないことになる」と言って、和気を説得したようだが、和気のマネジメント権を持つ古口会長を通さずに、このような話を独断で進めたため、事態は最悪の展開となった。(引用以上)

 この部分だけ読んでも軽い眩暈を覚える箇所が何箇所かございます。

フジテレビが育てた?テレビ局はスポーツの試合を中継する立場じゃないの?ビジネスとしてやってるのに選手を育てたって思い上がりじゃないの?

勝てないから意味がない?勝てる相手を選んでやるのが世界戦なの?

来年は世界戦を組む?海外のチャンピオンの興行事情やスケジュールがあるのにそんなこと確約できるの?和気本人や相手が怪我したらどうなるの?

JBCも、すでに認定した試合契約を破棄したらとんでもないことになる?いや興行のキャンセルくらいあるでしょ。というか目の前にドネアを倒したスター選手と世界戦するチャンスがあるのに東洋戦しないとダメなの?

 この匿名の人物の発言内容がナゼの嵐であります。というか問題の元凶は、マネージャーでもないのに古口会長の頭越しに選手のスケジュールを切ってるこの人なんじゃないの?と思うのですが記事の論旨はドンドンあらぬ方向に行ってしまいます。

 ここで本郷記者は、このプロモーター氏の動きには批判は加えず、何故か和気の行動を批判し、選手個人に問題点を集約するするかのような論理を展開していきます。

 テレビの中継局を替えれば軋轢が生じるであろうことは充分想像できますし、東洋戦をキャンセルしなければならないことは自明の事。手当てが必要なのは最初から明らかであります。古口会長は頭越しで動かれてお気の毒ではありますが「今のままでは試合を組めない。今後どうするかは自分で考えなさい!」と突き放した。と言う対応はなんとも解せません。こういったトラブルは当然想定されているべきことです。未然に防ぐことは出来たはずです。

 とここで想像されるのは、古口ジムと和気選手をプロモートするチームがそもそも別々に動いてるんじゃないの?と言う疑念であります。古口会長にすれば和気選手本人が「TBSの中継でリゴンドーとやります」と了承したのだから、「自分のチームにはお前から説明しとけよ」と言う感じでいたら、行った先で和気選手が「テレビ局の壁ってそんな簡単なもんじゃないんだ」と説得されて翻意させられたと。これってファイター個人が責を負うような話でしょうか?

 選手本人は純粋に強くなって世界戦がしたいと思って練習しているのでしょうに、テレビ局の縛りやプロモーターとクラブオーナーの軋轢といった旧弊な商習慣に巻き込まれて「トップ選手との世界戦のチャンスがあるけど、東洋戦をやらなければならない」と言う奇天烈な運命を辿っている彼を、なんでここまで批判できるのでしょうか?明らかに問題があると思しきプロモーター氏は匿名扱いなのに…。

 ジョー小泉氏がファイトニュースに書いた真道選手の記事もそうですが、安易に選手を批判するような記事を書くジャーナリストが多すぎると思います。そうやっておけば波風が立たないと言う業界のあり方もおかしいです。ボクシング界の商習慣やテレビ中継を巡る縄張り争いの不毛さこそが批判されるべきなのに…。

 もう一つ言いたいことは大晦日中心の興行サイクルの危険性です。年末の世界戦は八試合。これは一見活況と映ります。しかし大晦日に総合格闘技のイベントが乱立していたのはほんの数年前の話です。そんな活況があっという間に破綻し、日本の総合格闘技は大幅に市場規模を縮小しました。

 大晦日興行にまつわる選手集めで、外人選手のファイトマネーも高騰していると言います。これは総合のイベントが破綻した主原因でもあります。ボクシングがテレビ局の要請にこたえることで疲弊してしまわないか心配だったのですが、今回の和気選手の事件がその予兆ではないかと考えるのはうがち過ぎでありましょうか?


 以前のように年始にやってもいいんじゃないの?と感じる(旧徳山と長谷川が好きです)