HARD BLOW !

沈黙は金?

 はてさて安河内氏完全勝訴の判決から一週間が過ぎました。

 「判決文が届いていないのでコメントできない」と言っていたJBCからは未だ何の発表もございません。英語力どころか国語力も心もとない彼らには長大な判決文を読み込むのは重荷なのやもしれません。ですが、亀田とのトラブルでは、御用記者を通して聞かれてもいないことを元気一杯発表していたJBC様が、この問題では一週間も沈黙を守っており余りに不可解。

 違法の判決が下ったのに何の発表も無いということは異常なことであり、社会常識も逸脱しております。他人様のガバナンスを云々する資格はない対応といえましょう。

 沈黙を守っているのは何もJBCだけではございません。亀田との揉め事では一貫して秋山理事を取材してJBCの言い分を垂れ流し伝えてきたTHE PAGEの本郷記者も、この判決についてはガン無視!なんでもTHE PAGEの原稿料はページビューと連動してるらしく、亀田イジメは受けるけどJBC批判は受けないという判断が働いているんじゃなんて邪推もチラホラ聞かれます。ネット上の単細胞な吹き上がりに迎合しないと食べていけないのだとしたら、大変なお仕事であります。一時はスポーツ評論の気鋭といわれた彼も、食べていく為に題材を『厳選』しているのでしょうか?なんであれジャーナリズムとは程遠い姿勢であります。

 しかしまあ本郷記者はまだマシな方であります。問題は判決前にまことしやかに安河内氏が懲戒解雇に値するような悪事を働いていたと書きたてた連中であります。

 お喋りリングアナウンサーとツーカーの自称ジャーナリストは「真相はこれから書きます」と言い続けてはや三年。結局安河内氏の悪事の『証拠』は、嘘ついて貰って来たと天真爛漫に言ってしまった紙っぺら一枚だけでした。その後彼が散々におわせた不正は、裁判では悉く否定されなんの証拠も無い捏造だということが分かりました。何のことは無い横領も不正経理も幻だったのです。

 他人が犯罪をしたかのように書き立てて、仕事まで奪ってしまったが裁判でそれらが嘘だと立証されたら、まともなジャーナリストなら当然何らかのリアクションをするはずです。それが「記者会見に入れなかった」と意味不明の言い訳をして「これから書きます」と逃げ回るだけ。人間としての誠実さに欠けると言わざるを得ません。

 まあ彼はまだ、夕刊紙と実話雑誌専門の胡散臭いライターなので世間もそんなもんだろうと見ているのでしょう。

 問題は専門誌とそこに執筆していたノンフィクションライターです。彼らは大手出版社から著書も出していて、ノンフィクション賞の候補にもなったような著名人です。そんな人間が自分達が関与した原稿で、判決と全く相違する内容の疑惑を書きたて、それを専門誌である「ボクシングマガジン」が掲載し、結果沈黙しているのです。

 ボクシングマガジンは安河内氏の記者会見にも記者を派遣していなかったそうです。もう一誌のボクシングビートが記者を派遣し、WEBでも速報で報じていたのとは余りにもかけ離れた対応といえましょう。疑惑を書きたてJBCサイドから裁判を援護射撃したボクシングマガジンは敗訴に際してきちんとコメントを発する義務があると思います。

 以下、ボクシングマガジンの2013年7月号の『日本ボクシング界の秩序を守るために』から引用いたします。(引用赤字)

 言うまでもなく、JBC職員に支払われる給与は、過去現在の有名無名のボクサー、あるいは練習生たちが直接、間接にJBCに支払った金の集積にものである。

 
 今回JBCが完全敗訴した裁判で消尽した費用もそうなのですが、ボクシングマガジン編集部はそれをどう考えるのでしょうか?更に引用します

 JBC職員の地位を捨てないまま、新コミッション設立に動いた行為を看過するわけにはいかない。

 判決では現在のJBC中枢職員が、安河内氏を排除する為に新コミッションを構想したことにも言及し厳しい批判が加えられているそうですが、そちらはなぜに『看過』されたのでしょうか?

 その他にも判決文との齟齬が多数あるというという記事を撤回・謝罪し、執筆者と編集権者の責任をハッキリさせる必要があるのではないかと思います。

 まさかページビュー稼ぎのネットニュースのように「受けないから取り上げない」とか、自称ジャーナリストのゴッシプライターのように「いつになるか分かりませんが、これから書いていきます」みたいな対応はしないですよね?

  専門誌の責任は大きいと考える (旧徳山と長谷川が好きです)
 

判決は何を意味しているのか?

 さてさて判決から4日が経過し、連休も明けましたが未だJBCサイドからは、判決に関して何らアナウンスはございません。自分達が属する組織が違法行為をしたと司法に認定されたのに随分とノンビリした眠たい対応で、もうこの辺からまともな組織とは思えない感じがビンビンですな。不正経理や背任を散々におわせてバッシングを誘導したゴシップライター氏もすっかり他人事で「記者会見に入れ無かった」なんて呑気に言い放つ始末。クラブ加盟社のジャーナリストでもなんでもない、HARDBLOW!の東京地裁担当(笑)いやまじでさんが記者会見に入れているのにジャーナリストを自称するゴッシプライター氏がなんで記者会見に「入れなかった」のでありましょうか?裁判所の入り口に結界の存在でも感じたのでしょうか?あるいは裁判所に行く電車賃がなかったとか...。読者の募金で裁判を闘おうというごっちゃん体質窮乏状態だという彼氏ならありえない話でもありません。

 と余談はここまで。この連休は、今回の判決の意味をつらつらと考えていたのですが、その私なりの総括を以下に書いてみたいと思います。

以下は原告側が地裁での記者会見で配布した資料です。ご参考までに。

 20141121 安河内vsJBC裁判 記者会見資料_01_R
20141121 安河内vsJBC裁判 記者会見資料_02_R

 安河内氏が事務局長としての地位確認を認められたということは何を意味するのでしょうか?私が感じたのは、違法な手段をもって行われたトップの放逐によって組織の権力を掌握した森田健氏は法的には事務局長とは言えない立場なのではないか?ということです。そのトップが決定した人事についてもその正当性は厳しく問われると思います。

 地位確認に付随して、解雇後の未払いの賃金に加えて降格に際して行われた減給分の賃金も補償されます。今回の判決では安河内氏ともう一人の地位確認も認められましたので、その方の分もです。安河内氏や解雇された職員に代わってその地位を埋めた人たちにはすでに賃金が支払われています。したがって同じ期間で事務局長と職員の一人分の給与が二重に発生することになります。これらの支出は全て違法な解雇によって生じた余分なコストです。今回の判決か鑑みるに、先に和解した谷川俊規氏にも相当額の和解金が支払われていることが推測されます。それプラス弁護士費用も訴訟が長期にわたった為、恐らく莫大な金額です。全国のジムから集められたJBCの財産が違法行為によって失われた責任は一体誰がとるのでしょうか?

 さらにおそらく一連の裁判を有利に進める為に、高山勝成選手が「アメリカでIBFのトップと接触した」などのデマで中傷されたり、大沢宏晋選手と所属ジム・トレーナーに明らかにバランスを欠いた異常に厳しい処分が下ったりといった、職員の抗争に選手を巻き込むというあってはならない事件が起きました。彼らに対して行われた、言われ無き批判や不当なサスペンドについて速やかに被害の回復を行うべきではないでしょうか?

 ことここにいたっても、マニアを自称するファンの一部が未だに「亀田に厳しいから今の体制がいい」みたいな子供じみた寝言を言っております。実際に司法の場で違法の判断が下り、JBCに何千万と言う金銭的な被害が起こっているのに「亀田を冷遇することが日本のボクシングの正しいあり方」という一点でしかJBCを評価できない。悪いけどボクシングファンは野球やサッカーのファンに比べてかなり幼稚で世間知がないと思います。もしプロ野球やJリーグでトップの人事抗争に違法の判断が下ったら当然責任論が出ますよ。「俺達の嫌いな選手を冷遇してるから、法律を破ろうが、大金を失おうが応援するぞ」みたいなリアクションはちょっと社会人としてありえないのではないかと心配になって参ります。世の中の人から笑われる前に、ええ加減目を覚ましてください。

JBCと彼を陥れたライター達は早く意見発信しようねと考える(旧徳山と長谷川が好きです)

まず自分が法律を守ろう

 昨日は非常に順当な判決が出てまずは一安心。

 この裁判をずっと見てきた我々にとっては当然の判決でありましたが、一部ボクシングファンの皆様には意外な結果だったようで、驚いて問い合わせをくれた人もいました。この裁判は知人の会社経営をなさっている方も「労働裁判であんなん勝てるわけないで」と呆れていたような事案でありまして、『ボクシング界の常識は世間の非常識!』とならぬよう祈るのみであります。

 判決文の主文も読ませて頂きましたが、安河内氏にとってはほぼ完全勝訴、満額回答と言ってよい結果であります。

 彼をボクシング界を騒がせた極悪人であるかのように報道してきた、専門誌や夕刊紙の記事はいわば壮大な『虚報』でありました。逆に怪文書やヨタ記事で彼を貶めてきた人々の『意図』がこれから問題になります。

 物書きとしての責任感・矜持があるなら、当然判決に際して一言あってしかるべきなんですが今のところなんらコメントは無いですね。書き飛ばしで逃げるつもりなんでしょうかね?

 それともう一つ。先ごろJBCが『暴力団等反社会勢力ではないこと等に関する表明・確約書』の提出をライセンス保持者に義務付ける旨報じられましたが、不当解雇で慰謝料を取られちゃうような皆さんが他人に『法令を遵守せよ』と命じる資格が果たしてあるのでありましょうか?

 ことここに及んでも未だに「森田や秋山は亀田に厳しいから良い」みたいなことを信じてるファンがいて、ほんと脱力しちゃうのですが、一人の人間の仕事を不当に取り上げて苦しめてきたと言う人権侵害にはなんら想像が及ばない人が多くて呆れてしまいます。

 でもボクシングファンにとっては『悪の亀田を懲らしめたらいい人』なんだよなあ。裁判の判決よりも身内の論理を優先するってなんだかヤクザみたいな感性ですね。 『ボクシング界の常識は世間の非常識』をファンまで共有してるみたいです。もし自分に身にこんなことが起こったらと少しは想像したらいかがでしょうか?これは冤罪で人を陥れた脱法行為であり、亀田がブログに嘘を書いたとかなんとかいうしょうもない事案とは次元が違う問題です。

 それとJBCはデタラメな裁判に大金をつぎ込んだ上に、安河内氏や他の地位確認が認められた職員に対して未払いの賃金や慰謝料も払わねばなりません。ただでさえ財政状態が良くないというJBCにそのような余裕があるのでしょうか?組織を私物化して、経費を無駄使いしてるのは一体どっちなのか?と思わざる得ません。これから控訴審となればさらに訴訟費用がかかります。JBCを支える全国のジムの皆様はこのような支出をお認めになるのでありましょうか?

 ボクシング界が世間からどう見られているか?考える必要があると思います。

 JBCサイドでデタラメを拡散したメデイアやライターの責任も厳しく問われるべきだと思います。いや問うて行きます。

 未だ亀田のライセンス問題に夢中で視野狭窄に陥ってるファンの皆様とて同じことです。裁判の判決というものをどう考えるのか?いつまでも亀田の批判してれば満足と言う次元で言論・批評状態が停滞していていいのでしょうか?

  最後に、安河内氏の地位確認が認められたということは、逆に言えば森田健氏の事務局長就任には正統性が無いということであります。違法な手段で権力を握った人が今JBCを運営しているということです。そういう人が選手やジムに「ルールを守ろう」と言ってる図はさしずめ悪夢のようであります。

 判決は始まりに過ぎないと考える(旧徳山と長谷川が好きです)

安河内氏 記者会見 20141121

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 判決を受け15時より司法記者クラブにて原告側の記者会見が行われ、判決内容について次のような説明があった。

(1) 判決の概要
 東京地裁は安河内氏の主張をほぼ全面的に認めた上で、降格処分は、一部職員による新団体設立を盾にした要求に対し、被告が分裂を回避するためにこれを受け入れ、原告を被告から排除することを主たる目的としたもので、人事権の適切な行使とは認められないとした。降格処分、減給処分、配置転換、懲戒解雇処分はいずれも正当な理由を欠き、無効とした。

(2) 争点に関する判断
 降格処分、減給処分、配転命令は、人事権の濫用にあたり、違法、無効であるとした。
 本部事務局及びボクシング会場への立ち入り禁止は、業務命令の存在自体を認めることができないので、原告側の請求が理由がないとした。なお原告側の請求で全面的に退けられたのはこの点だけであるとのこと。
 第1回懲戒解雇、第2回の懲戒解雇についても、被告主張の懲戒解雇事由が認められないことから無効とした。
 降格処分と配転命令により原告が精神的損害を被ったと認められることから慰謝料〇〇万円が相当とされた。なお、この種の労働裁判で慰謝料が認められる例は多くないとのことである。
 またJBC側からの安河内氏に対する損害賠償請求の反訴は、損害が発生していないとして棄却された。  

 判決文は122頁の大部となり、プレスリリースに間に合わなかったため、主文および概要のみの説明となった。よって詳細の検証は次の機会を待ちたい。

 質疑応答で安河内氏は現在の心境について、次のように語った。



 JBCと安河内氏の話し合いが行われることを希望します。

以上

by いやまじで


追記:以下は記者会見で配布された資料です 

20141121 安河内vsJBC裁判 記者会見資料_01_R
20141121 安河内vsJBC裁判 記者会見資料_02_R
20141121 安河内vsJBC裁判 記者会見資料_03_R


安河内vsJBC裁判 判決主文 20141121

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 既報の通り、平成26年11月21日13時10分、東京地方裁判所636法廷にて、原告安河内氏の被告JBCに対する地位確認裁判の判決が、被告欠席の下言い渡された。

 その内容は原告の主張をほぼ全面的に認めたものであり、とくに懲戒解雇処分の取り消しのみならず、本部事務局長降格処分の取り消しをも認めた点で踏み込んだ判決となった。
 なお同法廷では別の職員1名への判決言い渡しも行われ、解雇処分は無効であるとの判決が下された。

 以下は主文の要旨である。

****

1 原告が被告に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。〔懲戒解雇処分の違法、無効〕

2 原告が被告に対し、本部事務局長であり、かつ月額〇〇円の支払いを受ける地位にあることを確認する。〔降格の違法、無効〕

3 原告が他会社に勤務する雇用契約上の義務のないことを確認する。〔配転命令の無効〕

4,5 被告に対して、原告が本来受け取るべき給与の支払いを命じる。

6 被告に対して、原告への損害賠償金〇〇万円の支払いを命じる。

7 原告のその他の請求及び被告の請求をいずれも棄却する。

8 訴訟費用の全体の1/5を原告、残りを被告の負担すること。

9 当判決は4、5及び6に限り仮に執行することができること。

****

以上

速報!!JBC前事務局長 安河内剛氏 全面勝訴!

東京地裁より現地取材班からの速報です。

只今判決の言い渡しが終わりました。
安河内氏JBC前事務局長、1.雇用契約上の地位確認、2.本部事務局長としての地位確認、その他が認められました。

15時から司法記者クラブにて記者会見が行われる模様。

一つの結果が出る日

明日、安河内剛氏がJBCを訴えた裁判の一審判決が出ます。判決後に記者会見も行われます。

注目してお待ち下さい。

安河内剛氏インタビューPART2

安河内剛氏のインタビュー第二弾です。

今回は網膜はく離になった選手の引退条件が緩和されたことについて。『自己責任』と報じたメデイアもありましたが、議論は尽くされたのか?意思決定の過程は開示されているか?選手への説明は充分なのか?と言う疑問が呈されます。そこから安全管理におけるジム制度の利点などに話は進んでいきます。

新機軸だよ映像企画!安河内剛氏インタヴューPART1

 さていきなり本題ですが今回は新機軸。いよいよJBCとの裁判の判決が迫ってきた、安河内剛氏の肉声を映像つきでお送りいたします。

 

 私の個人的な感想ですが、安河内さんと言う方まあ~ルールや制度について半端じゃないくらい造詣が深いです。コミッションの事務局長だったんだから当たり前なんですが。

 そんな氏のボクシング観、コミッション観、これからのボクシングなどざっくばんらんに語ってもらいました。

 まあなにぶん作ってる側がシロウトなもんで映像にはお見苦しい点、お聞き苦しい点などあるかとは思いますが、今後クオリティは上げて行く所存でございます。

 今回はパイロット版と言うことで録画素材をYOUTUBEにアップしております。

 安河内氏は、お喋りレフェリーのお友達の安もんのライターに極悪人のような印象操作をされてそれっきりになってますが、もちろん鬼でも悪魔でも極悪人でもなく、普通の市井に生きてるオジサンであります。彼らが当初言い立てた不正経理や私物化については裁判では何一つ証明されていません。

 実物に触れること、実像を見ること以上に雄弁なことはないと思います。お忙しいこととは存じますが是非ご一覧下さいませ。

 底辺の拡大、女子ボクシング、プロアマの関係はどうあるべきか?、体重超過問題への見解、ルールミーテイングのありかた、健康問題・安全管理、などなど多岐にわたる質問に順次答えて頂いております。

 安河内さんへの質問も随時募集いたします。コメントでもメールフォームからでもお気軽にお送り下さい。

 テープ起こしより映像の編集の方が手っ取り早いなと感じた(旧徳山と長谷川が好きです)
 

JBC問題のまとめ 20141109

 安河内氏とJBCの裁判の結審を受け、JBC問題についてここでいったん経緯と私の見解をまとめておこうと思う。
 私が基にするのは、マスコミ報道、裁判記録(注★)、証人尋問の傍聴、当事者への取材、である。

注★…裁判記録要約の記事は当分中断となる。これは現在裁判官が判決文作成のため裁判記録を使用しているため要約文の最終的な内容確認が不可能な状態にあるからである。裁判資料の閲覧が可能になり次第、再開する予定である。

■■■■

【1 経緯】
(詳細→JBC問題概観(年表付) 20140420
http://boxing2012.blog.fc2.com/blog-entry-289.html )

 平成23年4月、JBC及び全国のボクシングジムに怪文書が届いた。安河内本部事務局長の不正疑惑に関する文書に写真を添付したものだった。安河内氏のタイ出張中の出来事であった。
 試合役員会が反応し安河内氏の退任を求める。
 JBCが調査を実施。
 東日本協会が第2JBC設立を表明。
 JBCが安河内氏の降格を決定。(同年6月)

 この後、安河内氏は、新宿区内の別職場への勤務を命じられ、ほぼ一年後の平成24年5月に地位確認と損害賠償を求めて提訴。JBCが彼を懲戒解雇。安河内氏の訴えにはその取り消し要求も追加された。

 裁判において原告の安河内氏が求めているのはJBC本部事務局長としての「地位確認」と「懲戒解雇の取り消し」であり、ここではその2点に絞って話を進める。

【2 裁判についての私見】
 裁判で争われている件について、私の見解をはじめに述べておく。

①降格
 理由がないことから処分は無効であり取り消されるべきである。
 JBCが示した降格理由は、
 ①部下への接し方に行き過ぎが認められる
 ②職員の有給休暇を認めなかった
 ③職員の契約の不利益変更
の三つであるが、①については具体的な内容が明らかでなく、②③については内容上も手続き上も問題がないことが安河内氏側から示された。
 その後JBCは安河内氏に対する不信感が降格理由に含まれると主張することになるが、根拠となる具体的客観的事実が示されることがないため、たんなる上司に対する不満と区別のないものになっている。
 また怪文書やそれにまつわる報道の影響も含めて生じた不信感については、不信感の原因である怪文書の内容をJBC自身が調査報告書によって明確に否定しており、それゆえJBCにとって不信感は根拠のないものになっているはずであるから、JBCがこれを降格の理由にすることはありえない話である。
 また、JBCは怪文書やそれにまつわる報道を安河内氏自身の責に帰しているが、疑惑を流布した責はそれを流した者に帰するのが当然であるから(もしそうでなければ、疑惑を流布することによって人を陥れることが法的に許されることになるだろう)、JBCの主張は理のないものである。
 因みに、もしJBCが上記を事由として安河内氏を降格させるのであれば、人事権がないことを承知しながら谷川氏に解雇通知を送った(後に撤回)森田事務局長も、当然降格以上の厳しい処分を受けなければならないだろう。

②懲戒解雇
 懲戒解雇されるべき事由が存在しないことから無効であり取り消されるべきである。
 JBCは安河内氏らのメールを基に、安河内氏が新団体設立を具体化し組織に損害を与えたとするが、メール以外の客観的証拠を欠くうえ、実際に生じた損害等を具体的に証するものは何も示されていない。
 JBCの主張は、メールを基にしているとはいえ、関係が明確ではない複数のメールを憶測に基づいて関連づけているため、懲戒解雇事由を客観的に証拠づけるものにはなっていない(注★1)。率直な感想を言えば、探偵小説もどき、まともな大人がまじめに考えたものとは思えない。被告の裁判記録要約で、私がたびたび原文表示したのは、私〔要約者〕が原文を歪曲・捏造しているのではないかと疑われることを恐れたからである。それほど被告準備書面の内容は憶測・飛躍が激しいと感じられる。(注★2)
 全体の枠組みも、高山選手の関与が後に同選手のJBCライセンス回復によって事実上否定されたことにより崩壊している。
 安河内氏らのメールの中で、ボクシング界の今後や将来について、格闘技全体を統括する団体が話題になったことは確かだが、それが具体化されたとはとても言い難い。ボクシング関係者から安河内氏に新団体設立の要請があったのは事実だが、その現実化を示すものはおろか本人が承諾したとのメールすら存在しない。JBCがメールを重要な証拠と主張する以上、承諾に関するメールもしくはそれに匹敵する証拠が必須になるはずだが、それが全く存在しない。
  また鮫島氏の公益通報にしても、基本的に内部に向けてのものであり、またJBC自身の検討の結果、処分の対象となるものではないことが結論づけられている。
 安河内氏らのメールについてJBC側は業務外の内容としている。たしかに業務には直接当たらないものが多数あるが、そもそもこれらのメールはボクシングに関係するものである点では間接的に業務に関係しているのであって、業界内外との交流・情報交換・情報収集・自主的研究という意味では非難されるには当たらず、むしろ積極的に評価されてしかるべき内容である。鮫島氏が言葉遣いに品を欠いた点を除いて、処分されるべき内容とは言えない。また上司や組織に対する批判が含まれていたとしても、それらは組織の機能向上・改善を目的であり、処分の理由となることではない。
  私の見るところ、この懲戒解雇処分は、その経緯から見て、安河内氏の提訴に対するJBCの報復的な処分、JBCの現体制が安河内氏を組織から排除するためのもので、メールはその口実に利用されたにすぎない。
 以上のように、JBCの挙げる懲戒解雇事由には内容的にもその後の経緯からみても客観性・妥当性が認められない。したがって懲戒解雇は違法かつ不当であり、取り消されるべきである。
 因みに、もしJBCが上記の事由をもって安河内氏を懲戒解雇するならば、第2JBC設立を現実に図った現在の試合役員・職員は懲戒解雇以上の処分を受けなければならないであろう。 

(注★1)
 「憶測」をまじえていることは、JBC自身が準備書面で認めている。「憶測」とは「当て推量、自分勝手な考え、いいかげんな考え」という意味であり、それを自認するのは奇妙であるが、おそらく「推測」と言いたかったところを言葉の意味の確認を失念し「憶測」としてしまったものと考えられる。
(注★2)
 ある事実からはあることを推測することができる。しかしその推測が「事実」なり「真実」と呼ばれうるにはもう一つの事実が必要になる。それが証拠である。そして証拠を欠いたままの推測はいつまでも推測に留まる。しかしそれを「事実」「真実」と言い張る時、それは憶測と呼ばれるのではないか。JBCはたしかに事実を基に推測しているが、その推測を別の確証されていない推測を証拠(根拠)とすることによって「事実」「真実」だと主張している。JBC側の準備書面は「~思われる」「~かもしれない」を積み重ねた後に「~に相違ない」と結論づけるが、確からしさが低い推測をいくら積み重ねても、その確からしさは低下するばかりであることは、1/2にいくら1/2を掛け合わせてもそれが真である値は1/2より低下するばかりであるという単純に確率的な観点から考えても理解できる。ある事実からは複数のことが推測されうるが、もしそれらの推測のある一つが「正しい」「真である」、と主張するためには、その必然性が理解されうる事実が必要なのである。それなしに、複数の可能性のうちの一つをいくつ集めて組み合わせても、恣意的な推理にしかならない。特に、相手に不利になる推測をかき集めた場合、それは悪魔の証明を突きつけ、人を陥れることにしかならない。これが冤罪につながるのである。

【3 事態の推移と問題点】
●判断主体の交代もしくは二重化
 JBCの調査報告書作成の段階で、JBCが安河内氏を退任させる理由はなくなっていた。

 しかし、試合役員と職員の大半が辞表を提出、東日本協会が主導して第2JBCを設立して独自に試合を運営することを決定した。しかし、試合を運営するには、コミッションのデータ等が必要であり、第2JBC単独の試合運営(興行実施)は不可能であると判明。

 そこで協会とコミッションの間で調整が行われ、安河内氏をポストから外すことで一時的に事態を収拾したというのが実際のところだろう(分裂回避・興行開催の可能化)。

いわば安河内氏に泥を飲んでもらう形で、しかし復職の可能性を残し、事態が沈静化した後に安河内氏の復帰を図る。JBC幹部の考えはそんなところではなかったか。

 一方、安河内氏からすれば、いわれのない嫌疑により、しかも調査結果はシロであるにもかかわらず、有無を言わせぬ形で降格処分を通告され、地位ばかりか給与を三分の一カット(これは「大人の知恵」としては明らかにやり過ぎである)、さらには他会社の事務所での勤務を命じられ、ボクシングとは全く関係のない会社で、周囲からの奇異の目に耐えながら一人部外者として一日を過ごし、事務局にも試合会場にも出入りを禁じられ、組織との接触を絶たれる形となった。

 この処分は正式発表の前日に一方的に通告されている。反論すれば解雇されるかもしれない雰囲気を感じ、内部から改革は不可能になるとの恐れもあって、従わざるを得なかったようである。

 JBCサイドも、先々安河内氏の処遇をあらためて決めようという考えはあったであろう。実際、一年間の冷却期間が必要との発言がJBCサイドからはあった。JBC側から安河内氏に対して復職について何らかの話が直接あったかどうかは不明だが、仮になかったとしても、阿吽の呼吸で感じとることを要求するものはあったと思われ、安河内氏自身も、内部の自浄作用がはたらいて事態が好転する可能性を期待していたようである。 
 
 しかしその後7か月間、事態は悪化の一途をたどる。

 安河内氏は新宿の某会社の事務所に一人隔離されたままになる。JBC幹部は、現場の混乱を懸念して安河内氏の事務所への立ち入りを禁じ、安河内氏の就業環境改善の訴えに耳を貸さず、接触自体を極力避けた。その間にもJBC内部で、ボクシング界で、種々の問題が起き、鮫島氏が度々公益通報を行い組織内の問題を指摘、改善を訴えた。
 
 しかし平成23年7月1日以降、JBCの現場トップは、安河内氏の徹底排除を強硬に主張していた森田氏と浦谷氏となっており、種々の問題に対応するのは、この2名と理事の秋山氏となっていた。本業のためボクシングの仕事ばかりやっていられないと事務局出勤は週2、3回、1、2時間程度という森田事務局長、実務経験のない浦谷代行、業界の事情に通じているとは言い難い秋山氏。彼らが組織を運営するのは無理があるように私には思われる。実際、JBCはボクシング界での問題に対して適切な対応ができなくなっていた。

 孤立を深めるとともに、三月末の人事刷新で組織図から疎外され、内部で改革を図っていた鮫島氏がこれまで注意されたことのない事柄を理由に解雇処分を受ける(平成24年4月)。ここに至って、もはやこれ以上組織を現状のまま放置することはできない、内部からの改革はもはや不可能である、そのような思いに立ち至った結果安河内氏がとったのが裁判という手段だった。

 JBC幹部には先々安河内氏を復帰させる意思はあったであろう。それゆえ安河内氏の提訴は驚きであったろうし「裏切り」と感じられたであろう。

 安河内氏の提訴後、JBCは安河内氏を懲戒解雇処分とし、現在へとつらなるわけだが、なぜこのようなこじれた事態になったのか。

 怪文書の到着後に安河内事務局長が事実上業務を行えなくなり(判断主体の不在)、斎藤専務理事及びJBC調査委員会による調査期間(斎藤専務理事による暫定的運営)を経て、現場トップが森田氏・浦谷氏・秋山氏に代わる(判断主体の交代)。この交代以降、JBC幹部と現場トップとの間に、安河内氏の処遇をめぐる齟齬もしくは意思疎通の欠如が生じ、安河内氏とJBC幹部の間のすれちがいとねじれにつながっていると思われる。

 とにかくほとぼりをさましてから安河内氏については処遇したいとするJBC幹部に対して、現場トップにはその意思がないため安河内氏とその支持者と見られる職員の徹底排除を進める。それに対して孤立感を深めた安河内氏の状況認識と危機感は、JBC幹部とのそれとは乖離していった。

このような状況下での安河内氏の提訴により、JBC幹部は組織に対して敵対的な行動をとったとして安河内氏の排除を決断、現場トップと間でも安河内氏排除の一点で意思統一がなされる結果となったのである。

●空気について
 「火の無いところに煙は立たぬ」という諺がある。「まったく根拠がなければうわさは立たない。うわさが立つからには、なんらかの根拠があるはずだ」(デジタル大辞泉)という意味だ。

 怪文書とその中の写真、たとえば妻以外の女性と思われる人物と、その女性が住むと思われるマンションから出てきて、その女性の飼っていると思われる犬のリードを手に、その女性と連れだって散歩する安河内氏と思われる人物の写真を見て、安河内氏に対して不倫をはたらいているのではと疑いを持った人は当然いたであろう。

 「なぜ事務局長にしているんだ」

 それは協会幹部の声でもあれば、JBC試合役員や職員の、全国のジム関係者のそれでもあり、そうして関係者の動きや反応にマスコミが接し、その報道を見たファンがまた安河内氏に対して不信感を抱く。

 さらにJBC東京試合役員会と職員らの安河内氏に対する拒否反応(バリケードを築いて事務所への立ち入りを妨害など)は、周囲に対して「あれだけ騒ぐからには何かあるにちがいない」という思いを抱かせたであろう。

 JBCが調査委員会を立ち上げる。しかし斎藤専務理事の「個人の調査では問題はない」との発言に試合役員会と職員らが反発。JBCは公正な調査を行っていないのではないか、形だけの調査を行って事を済まそうとしているのではないかと。これについては私自身も 「内輪の調査」では不十分、完全な第三者による調査委員会が必要と考えたほどだ。(注★その考えは今も変わっていない。しかし問題が司法の場に移されたことにより、現在はこれが完全な第三者による調査を代理するものだと考えている。)

 ネット上でも安河内氏に対する疑惑が取りざたされる。怪文書の疑惑というより、安河内氏についての根も葉もない噂、やがては彼がしかじかの犯罪行為を行った」という話までが、「疑惑」として、つまり、「まだ証拠づけられていないだけで真実かもしれない話」という形で、アガり始めた。そうして安河内氏が不正行為や犯罪行為を行った「かもしれない」という「疑惑」だけが、「事実」として残されていく。

 それらの情報に接して、ある者はそこから「かもしれない」の一語を飛ばして読むかもしれない。正しく読んだとしてもこう思うかもしれない。「李下に冠を正さず」と。

 李(すもも)の木の下で冠(帽子)を手で直した人を遠くから見た人が、すもも泥棒とまちがえたことから、「人から誤解を受けるような行いをするものではない」という教えを説いた故事成語である。

 斎藤専務理事の「個人の調査」発言に、東日本協会の対応が追い打ちをかける。第2JBC設立支持を理事会で決議。事実上の安河内追放の決議である。

 すでに安河内氏への疑惑と不信は、JBCへの疑惑・不信へと広がっていた。JBCが安河内氏を擁護するのは、安河内氏に不正があるからではないか。JBCは隠蔽しているのではないか。そしてJBCが事態を収拾できないなら、協会がそれに当たるしかないではないかと。何より「このままでは選手の生命・身体の安全に万全を期すことができない」(東日本協会)のだからと。「協会の決定は妥当ではないか」。

 怪文書によって流布された疑惑と醸成された空気とに流され、JBCは怪文書の疑惑を否定しながら一方で安河内氏を更迭するという矛盾した結論を下す。そして東日本協会はそれを助長した。それは怪文書の仕掛けた罠に嵌ることでもあった。

●誤りのはじまり
 JBCは調査報告書の内容を示した上で、試合役員会を説得すべきであった。それに従わないとしたら、組織壊乱のかどで懲戒解雇し、損害賠償請求するなどの意思を示すとして毅然とした態度で対応すべきだった。それが適切で適法な労務管理ではなかったか。

 協会の第2JBC設立支持の決議は、実際の運営を考えない場当たり的な対応であり、JBCの組織壊乱を助長し、ボクシング界全体のガバナンスを大きく損なった。

 協会がJBCの混乱で、試合・興行の開催、ボクサーの安全確保に支障をきたすことを恐れたことは理解できる。だからといって理不尽な要求を通すことは社会的に許されることではない。森田健氏に「(第2JBCのまとめ役を)お前やれ!」と命じる前に、JBC支援を決められなかったのか。そこには怪文書の疑惑とそれによって醸成された空気に流された面がなかっただろうか。

 こうして下された誤った判断の後、JBCに諸々の不祥事・裁判沙汰が起こる。現在のJBCが抱える諸問題は、この誤った判断が根本原因ではないか。そして忘れがちだが、最も問題なのは怪文書(=疑惑の名を借りた限りなく虚偽情報に近いもの)であり、これを作成・送付した人物である。しかしそれは判明していない。しかし、いや、それがために、人は騒動の原因を求める。今回は安河内氏に求めた。一種の集団ヒステリー状態といえる。

 怪文書、試合役員・職員の壊乱行為、JBCの不適切な対応、協会の助長、メディア・ファン・業界の無関心、これらが降格という誤った判断へと導き、JBCがその後の組織において失策を重ね、裁判において筋の通らぬ主張を繰り返さざる得なくなるという不幸な状況を招いたのではないか。降格処分がその最大の原因ではないだろうか。

●再び空気について
 注意しなければならないのは、空気の醸成は、人の評判を下げるために意図的に行われうるということだ。「火のないところに…」「李下に冠を…」の心理を利用し、「かもしれない」をつけてさえいれば断定したことにならない、だから法に触れない、名誉棄損にはならない、人を騙すことにならない…。そういう形で、メディアで、ネット上で印象操作が行われることがあるということだ。

 そういうことがあることを知っておかなければならない。ネットに限らず情報に引っ張られないためには、情報を鵜呑みにしないことが必要だ。情報の確度を確かめる、つまり、常にソースを確認する(情報の信頼性・信憑性の確認)、、異なる角度から情報を得て比較検討する、そして事実と解釈(判断)を区別するといった情報への接し方(リテラシー)が必要だ。

 自分が信頼している人や組織がそういう印象操作を行っているとしたらどうか。しかしそもそも人は信頼している人間にしか騙されないものである。人を騙すということは、騙される側が騙す側を信用しているからである。信用できないと思っている人の話など、誰も初めから聞かない。信用しているからこそ騙されるのだ。(信用している相手は親しい場合も多いので、親しい人を失う恐れから、疑うことを避ける心理がはたらき、余計に騙されやすい。)だから、信用しているからといって相手の言うことを鵜呑みにしてはならない。常に情報の確度を確認し続けることが大切だ。

●証人尋問
 証人尋問における被告JBCサイドの証言について、私の心証に影響があったものを私の意見とともに挙げておく。 

①羽生氏「本来やるべきことができていないと執拗に注意された。」
… 安河内氏のパワハラ問題についての証言。安河内事務局長時代のミーティングの状況について裁判官の尋問に答えたものである。
 通常「本来やるべきこと」をやっていない場合、「注意」「叱責」を受けるのは当然のことであるが、それを羽生氏はどう考えているのか。羽生氏が言いたかったことは安河内氏の「執拗さ」であろうが、裁判官が「たとえば?」と問うと、

羽生氏「とるに足らない話がいろいろありすぎて、すぐに思い出せない。ちょっとした連絡ミスで数十分、数時間も叱責された。」
裁判官「叱責される理由はなかったのか」
羽生氏「理由があるとしたら私を辞めさせたいから。」

 具体的客観的な内容を求められるとほとんど何も答えていない。大事な裁判を前に時間はあったはずなのに「すぐに思い出せない」というのは通らないのではないか。
 もっとも、叱責の中で「やめろ」と何度も言われた点は、事実であれば言い過ぎであり問題であろう。ただし、役職降格に価するものかどうかについてはどうか。「何時間も叱責された」についてもそうだが、ミスの内容や程度によるのではないか。羽生氏が具体的状況について証言しない以上、これについて判断することはできないのではないか。

②浦谷氏「それが調査ということ。」
 これは試合役員会と事務局職員の合同調査委員会による「報告書」(JBCが作成した調査報告とは異なり、内容的には怪文書の挙げる疑惑を採録し調査の必要性を訴えるものである)に、JBCの関連会社から安河内氏に毎月20万円の振込があったとの疑惑が挙げられているが、調査はしたのかとの原告側弁護人の尋問に答えたものである。これに対して、

浦谷氏「そのような話を前から聞いたことがある。」
原告弁護人「それが調査か」
浦谷氏「それが調査ということ。」

 彼にとって「そのような話を前から聞いたことがある」ことが「調査」に当たるとのことだ。ふつう「調査」というものは、何か分からないことがあって、それについて人から話を聞いたり資料を検証したりして調べ分析して、何かが分かったり分からなかったりすることだと思うが、浦谷氏は怪文書で挙げられている疑惑を、「前から聞いたことがある」というだけで「調査」したとしているのである。私はこの言葉を聞いた時には、彼は「言葉」について理解していないか、意図的に「言葉」を理解していないふりをしているのかのどちらかであると思った。彼は「ゆっくりと、自信たっぷりに答えた」ように私には見えた。それだけに奇異な印象を受けた。

③森田氏 
(ⅰ)「自分の仕事をほっぽりだしてボクシングの仕事をするわけにはいかない。」
…安河内氏退任を要求する試合役員・職員に対して「(安河内氏と)まとまってやろうという話は審判たちにしたか」という原告弁護人の尋問に答えたものである。

森田氏「していない。…ひまがない。自分の仕事で忙しい。自分の仕事をほっぽりだしてボクシングの仕事をするわけにはいかない。」

森田氏は長年ボクシング界に貢献された方であり、ボクシングへの愛情も深い方だと思う。だからここでの発言もそれを否定するものではないと思う。しかしこの発言は現実問題として森田氏の事務局長としての勤務に無理があることを示している。名誉職化しているのである。後の訪問記でも感じたことだが、彼は無理な仕事を背負わされた面はあると思う。

(ⅱ)「おこられた」
 谷川氏に対して人事権がないことを知りながら解雇通知を送付した件(異議を受け直後に撤回)について、裁判官に経緯を説明した中での証言である。3か月の試用期間内なら(解雇して)かまわないと思ってやったら「(秋山氏から)おこられた。」と答えている。
 ちょっと悪さをして叱られた子供のような言いぐさだったので、少しあきれてしまった。本人としてはそれほど悪気はなかったということらしいが、そのような認識で人事権を行使する人間が上に立つべきではない。

(ⅲ)「はい」
 東日本ボクシング協会の理事会に呼び出された森田氏が、理事らから「お前、事務局長やれ」と言われたのに対して答えたもの。この理事会はJBCの理事会に先立って行われており、この時森田氏は既にJBC本部事務局長代行の任に就いている。森田氏が記者会見で第2JBC設立を表明し、協会が支持を表明するのはこの直後である。
 森田氏が自身の立場をわきまえなかったことについては、ボクシング界の先輩方に逆らえないといった事情があったかと思うが、この辺りを見るに、彼の責任能力自体に問題があると思わざるをえない。もっともボクシング界の体質についても疑問を禁じ得ないが。 

④秋山氏「試合役員・職員による調査報告書や連判状などだ。」
 秋山氏が安河内氏の降格処分の理由について裁判官の尋問に答えたものである。

裁判官「降格理由は①有給休暇を認めなかった件と②不利益契約変更の件でよいか」
秋山氏「他に雑誌に出たこともある。それと多方面からの不信感だ。」
裁判官「それらの具体的な根拠は何か」
秋山氏「根拠は試合役員及び事務局職員による調査報告書や連判状などがそうだ。」
裁判官「それらはJBCの調査報告書で事実として認められなかったのではないか」
秋山氏「それ以外に業界全体に不信感があった。
裁判官「その不信感の根拠は何か」
秋山氏「試合役員・職員による調査報告書や連判状などだ。」

 秋山氏は業界全体の不信感の根拠に「試合役員会・職員による調査報告書や連判状」を挙げているが、それらに挙げられた疑惑はJBCが自らの調査報告書によって否定している。自らが否定した内容を根拠とする不信感を、降格の理由にすることは明らかに錯誤である。
 秋山氏については、長く林有厚氏に仕え、その信任厚い人物である。実際、信義に厚く正義感の強い方でもあると見受けられる。しかし、組織の正当化のために矛盾を冒していることに気づいていない。これはたんなる理屈の問題ではなく、実際にJBCが下した処分の本質の問題である。秋山氏がJBCの現場に入ったのは2011年7月以降、すなわち、安河内氏更迭後のことであり、それまでの職場事情については現在の職員からの情報しかないであろう。弁護士とどのような打ち合わせをしているのか、首をかしげざるをえないところである。

cf.浦谷氏、羽生氏、秋山氏の証人尋問→JBC裁判傍聴記 20140430

cf.森田氏の証人尋問→JBC裁判傍聴記 20140528

【4 あらためて問題点】
●JBC組織の閉鎖性
 試合役員、職員には責められない面ももちろんある。当時の状況ではJBCの調査が十分なものであるかどうか私自身にも疑問があった。斎藤専務理事の「個人の調査では問題はない」という発言は、調査がセレモニーに過ぎないのではないのかという懸念を抱かせた。おそらく斎藤氏本人に悪意はなく、安河内氏への逆風の風向きを変えたいという思いから出た言葉かと思われるが、結果的に逆効果であった。真摯に疑惑追及を求めた者(何が何でも安河内退任ではなく)にとっては、不公正さが感じられたであろう。
 しかし、問題が法廷に移され、偽証が許されない状況になってなお、JBCからは安河内氏の不正を示す証拠は示されなかった。このことから、JBCの調査報告書による疑惑の否定は正しかったことが明らかになったと言っていい。不正は存在しなかったのである。
 ところでJBCはあの時怪文書と調査報告書の内容を公開したであろうか。私は裁判資料として初めてそれらを見たが、もっと早くにその内容を見ていれば、安河内氏への疑惑はだいぶ和らいでいたのではないかと思った。それほど怪文書の内容は「怪」しかった。JBCの調査報告書でも「なぜこのような疑惑が生じるのか、首をひねらざるを得ない」という趣旨のコメントがたびたび付されるほどだった。それほどその内容は奇妙で稚拙であった。
疑惑は報告書において客観的な証拠のもとに否定されるか反対内容の証言により否定されているのであるが、それら公にすることは、疑惑がいかにいかがわしいものであることが伝えるに役だったであろう。
 情報公開の不十分さ、組織の透明度を高める努力の不足が、問題を悪化させた面があるのではないか。またそういう体質は今も続いているのではないか。いずれにしてもこれからの時代においては、組織の意思決定過程を含めて情報公開を進め、透明性を高める必要があるであろう。

●無責任体制の悪循環 
 組織の判断主体は、安河内氏の降格以降、変わってしまった。安河内氏排除にこり固まった、この世界での実務経験のない人物が現場トップに就いた結果、JBCの機能は低下し、それを問題視する人間は排除されるという悪循環が生じた。
 またJBCは安河内氏の責任は問うたが組織としての自らの責任は問わない。
 元々この組織はトップが名誉職化しており、基本的に泥をかぶらないようになっている。しかし現在は現場トップ(事務局長)までも名誉職化している(本業があるため事務局へは週二、三日の出勤、1,2時間の滞留)。そうして、不祥事があっても誰も責任をとらない。だから改善もされない。そうしてますます機能が低下する。そういう悪循環も生じている。
 JBCはそういう組織になっている。そのことが世間一般の人が知ったらどうだろう。ボクシングというものを絶対に信用しないだろう。それでなくとも危険が多く、また関係者の不祥事で対外的イメージが良いと言えないスポーツである。現在のJBCの有り方は、ボクシング界のプレゼンスにとって決してプラスになっていないはずである。

●ボクシング界の人権意識
 ボクシング界のためなら個人の一生を台無しにしてよいと考えるならば、ボクシング業界は法令順守(コンプライアンス)の意識が希薄なだけでなく、人権意識そのものを欠いている。
 そのような人たちが、はたしてボクサーを、ボクシングを守れるだろうか。私にはそうは思えない。

●公益問題と健保金問題の前に
 この二つの問題を論じるに当たって、見解をうかがうため私は二度JBCを訪問した。次の二つの文章はその時の感想を記したものである。

●JBC訪問記
 2013年8月06日火曜日の午後、東京水道橋にあるJBC(日本ボクシングコミッション)に行ってきた。

 東京ドームシティ内の黄色いビル内の隠し部屋のようなところにあるJBC本部事務局。入口にQ氏の姿を認め、ルールブック購入希望の旨を伝えると、Q氏は入口近くの席のZ氏に対応を指示。

 購入を済ませた私はそのままZ氏にJBCのホームページに掲載された健康管理金について質問をしてみる。あくまで一ファンとして。
Z氏は、
「メディアの方ですか?…ファンの方は試合の内容や技術的なことに興味があるもんだと思いましたが…」
と訝しがりつつ、
「ファイトマネーの3%を納付して、…あとはこのルールブックに書いてあります」
私が、
「具体的にくわしく書いてあるんですね」
と念を押すと、
「はい」
(実際には26条に「3%」の件と、69条に「診療費の補助」の簡単な説明があるのみ。)

 次に一般財団法人への移行について質問してみた。
「なぜ公益ではなかったのか?」
通りがかったG氏が、
「公益性がないんだよ。」
と言い放つ。自嘲のような投げやりのような。
「公益はハードルが高い」
とも。

 私が、
「将来公益を目指すということを表明しているが(これは裁判記録が元。引っかける意図はない)、そういう方向で進んでいるのか」
と問うと、
Z「ああ、そうですか。」
私「組織のトップが一般への移行や今後について説明の機会を作ること、あるいは、要請に応じることはありますか」
Z「一般のファンに対してはないですね」
私「誰に対してならありますか」
Z「……?」

Z氏が言葉に詰まったところを、通りがかったP氏が引き取って説明を始めた。
「法改正があった」
「公益か一般かまで5年しかない」
「公益はハードルが高い」
「提出する書類も桁違い」
「■検も■予報士も■検査団体も一般」
「一般だから公益性がなくなったわけではない」
「将来については何も言えない、決まっていない」

 要は、公益認定は非常に難しく、だから一般だった、そしてそれはボクシングに限ったことではない、という趣旨。

 P氏の丁寧な説明に感謝を述べ?事務所を辞去。20分ほどの滞在だった。

 たまたま外出するW事務局長とエレベーターで2人きりになる。

 1ファンという私の質問のようすをチラ見していたらしい彼の方から話しかけてきた。JBCの入っているビルにはかつてスケート場があり、そこで東京五倫で桜井選手が金メダルをとり、それを彼が目撃したことなどの回顧話。

 私が、
「事務局長になられてお忙しいですか」
と尋ねると、声を裏返して、
「いやぁ、お話にならないですよ! …もう私は78ですよっ…」
なるほど。私の父は81で死んでいる。
「お体に気を付けてがんばってください。」
と声をかけ、2Fエレベーター前で別れた。

 今回の訪問で次のことが分かった。

 一つは、健康管理金問題にしろ公益性にしろ、高度な判断を要する問題について、彼らは考えることができないし、考える立場にないし、考える意欲がない、ということ。

 二つ目は、そういった彼らに合わせて、上層部は彼らの就業環境をデザインしてきたのであろうということ。

 三つ目は、本部事務局長以下、職員・役員の職域の限定化と、理解力・説明能力の欠如とによって、組織としての意志決定の過程がますますブラックボックス化したということである。

 狭く雑然とした事務所内で7-8名が資料に埋もれながらPCに向かっているようすに、日本のボクシングの試合の管理・運営をするには随分と規模が小さいと感じた。職員の一生懸命さは感じたが、ミスが生じても不思議ではない余裕の無さも感じた。

 今回はあくまで1ファンとして話を聞いたので(彼らが私を信頼して話してくれたこともあるので)、これをそのまま記事にするつもりはないが、いつか1ファンの体験・エピソードとして書くことはあると思う。

 健康管理金についてはまだ詳細を訊かなければならないし、なぜ「見舞金」へと変わったのかについても質問しなければならない。向こうが答えるかどうか別にして、質問しておかなければならない。

 できれば「現在、S氏をどう思っているのか」についても。

 そういうわけで、近々もう一度訪問する予定である。

●JBC再訪記
 2013年8月29日、JBC(日本ボクシングコミッション)を再度訪れた。前回十分に聞き取れなかった健康管理金制度について訊くためである。

 まず入口を入るとG氏と出くわし、「あっ」という顔をされる。

 受付のZ氏にBOXING広報の購入を申し込み、500円を支払うと、「前にいらっしゃいましたね」と覚えているようす。

 早速、健康管理金制度についてルールブックに詳細な説明がないゆえ再度の説明を求めると、「私はわからないので」と言って、事務所にもう一名残っていたJ氏なる人物を呼び、説明させる。

 J氏に「健康管理金制度」について、また「健康管理見舞金制度」とのちがいについて尋ねると、次のような説明をしてくれた。

 従来の制度は、ファイト・マネーの3%を選手に納めさせ、試合による負傷と認められた場合に、医療費の健康保険以外の自己負担分を、申請すればJBCが支払っていた、というもの。その際、支払金に特に上限はなかった。ただし、先進医療などで高額になる場合、高額医療費という国の制度によって自己負担分が軽減されるので、JBCが支払う金額がそう高額になることはなかった。

 次に、公益法人法が平成18年に改正になり、その際従来の制度は保険業法上は保険業務に当たるので問題があるとの指摘を金融庁から受けた。さらに、公益か一般かが決定するまでは黙認できるが、一般財団へ移行する場合には従来の制度は認められないとも。そこで、タイムリミットとなる平成25年11月の前、一般財団へ移行の7月をもって、この制度も改めた次第。

 ファイトマネーの3%というのはファイトネーが仮に3000万円の選手であれば、納入金額が90万円となる。これは完全に保険業に当たる。納入金額を2%に抑えたのにはそういう理由もある。

 見舞金の額は、「見舞金」というものを常識で考えた際の上限額であろうとのこと。

 私が、「金融庁の指摘は公益法人法の改正時になされたものですか」と尋ねると、「そのように聞いています」。

 また、「今後制度をさらに改善していこうとの考えはありますか」と尋ねると、「はい。少なくとも現在の制度が最善だとは考えていない」。

 私としては、「なぜ「見舞金」にしたのか?」という点について問うべきであったかもしれない。(「支払額が高額になれば保険業に当たる」という回答が返ってくれかもしれない。)

 また、一般の保険会社が引き受けてくれないものを、JBCがやることの意味を考えれば、保険業との競合は考えにくい。その意味で保険業法に触れるとしても、存続できるのではないかとの疑問も残った。これもつっこむべきだった。

 ともあれ今回の回答は、基本的に「健康管理金制度」は一般財団法人ではできないというのが主旨。

 これには二つの疑問が生じる。一つは、それではなぜ「公益」にしなかったのかということ。もう一つは、一般財団でも従来の制度はできるのではないかということ。

 一つ目については、前回の訪問の際に、「公益性がない」「ハードルが高い」という答えをいただいている。また、二つめについては、前回の会合でTさん(元職員)に質問した際「できます」との回答を得ている。

 今回答えてくださったJ氏なる人物が金融庁の指摘の内容と時期について「そのように聞いている」としているように、今回の回答はJBCのオフィシャルな回答ではないであろう。ただし、健康管理金制度の変更について、JBCがどのように理由を説明しようとしているかはおおよそ分かったと言えます。

 この後私は、ボクシング・マガジン5月号と8月号を携え、JBCからほど近いベースボール・マガジン社を訪問。受付が不在で、内線で同社のM氏、R氏を呼び出すも応答がないので、「休みか」と建物を記念に撮影し、これまた一駅とほど近い帝拳ジムに見学に行き、葛西トレーナーや、今回JBCが何も説明しなかった場合にこの件で話をうかがおうと思っていたハルさんの健在な姿(以前西岡選手のチケットを購入する際に電話で話して無愛想なオバサンに応対されたどっかにコメントしたという縁がある?)、「祝村田諒大デビュー戦勝利!!」というWOWOWから贈られたスタンド花を見て家路に就いたのである。

 なお、プチ情報として、あの辺に行くと愛用していたマクドナルド水道橋西口店が9月1日(日)18:00をもって閉店だそうである。

●公益問題と健保金問題
 公益問題と健保金問題は関連している。健保金の一般収入化(平成20年度)は、文科省の指導によるものだが、その趣旨は公益法人化に向けての経理の透明化(キャッシュ・フローの明確化)にあるのであって、決して経費等への使途拡大にあるのではない。これは公益法人化の意味を理解している方にはお分かりいただけることと思う。 
しかし、JBCは一般法人への道を選択したため、公益法人時代の収益を一定期間内に消却しなければならなくなった。
(cf.公益目的支出計画…http://korome.net/wp-content/uploads/002-1.pdf)。
そのためJBCは健保金を一般的な経費(人件費)にも使い始めたのである。
健保金制度は公益法人化していればもちろんその公益性の観点から維持できたはずだが、一般財団となっても基金創設などの形をとって維持できたはずなのだ。(その例として山岳保険が挙げられる。)
 保険業法の改正により、保険業法への規制は強化されたため健保金制度はそのままで維持することは難しいことはたしかだ。しかし公益性の高いものについてはグレーゾーンとして存続しているのが実情だ。役所は立場上これを「黙認」という形ですら「認める」ことはないが、しかし手は付けないのである。
 JBCの健保金問題は、協会有志の抗議を受けおよそ一億円の積立金のうち五千万を協会に移管しているが、その後進展は見られない。
双方で研究し知恵を出し合い、本来の主旨に沿った使い方がなされるべきである。

注★…その後、健保金制度については、日本プロボクシング協会が運営していく方向で動いているとの情報があるが、未確認である。

●組織の体質
 JBCはその歴史的経緯から協会(JPBA 日本プロボクシング協会)の付属機関的性格をもっているが、今後ボクシングがスポーツとして社会に存在し続けるためには、統括機関としての組織の公正性・中立性・透明性を高めなければならないはずである。そしてそのためには協会からの独立性を高める必要があるだろう。しかし、今はその逆の方向を向いていないだろうか。

 公益法人化は社会の中で信頼を得ると同時に、統括機関・組織としての内的充実を得るためにも必要だった。公益法人となれば、組織運営においても競技統轄においても不適正な点が厳しくチェックされ、是正されるからである。しかしJBCは公益法人化を見送った。

 理事には利益相反の関係にある日本プロボクシング協会会長が名を連ねている。

 本来は管理対象である元・現レフェリーが現場トップに就いている。しかも彼らのうちの一人は本業のためボクシングの仕事ばかりやってられないと公言し、一人は実務経験がない。

 暴排対策は後退し、数々の不祥事に対して対策をとらず、身内に対しては責任を問う処分もない。

 あるレフェリーは最近では試合で「ボックス」も「ファイト」も言わなくなった。
 
 試合役員に同調しなかった職員に対するパワハラ、不当な解雇処分によって生活の糧と生きがいを奪った。

 複数の裁判を起こされ、財政は裁判費用で逼迫、それを再建する計画も立っていない。

 組織はしばしば理不尽な(違法な解雇処分等)を行うことがある。そこには、「どうせ裁判を起こすことはあるまい。起こされたら起こされたでその時対応すればよい」といった高をくくった意識が組織の側にあるのだろう。実際、時間も金もかかる裁判を前にたじろぎ、泣き寝入りする者は多いと聞く。それを見て組織はますます個人に対して高圧的になる。企業内弁護士がそれと気づきつつ組織の言いなりになり、冷や汗をかきながら違法処分の片棒を担いでいるのを私は見たことがある。

 JBC組織の個人に対する対応にも、同様のことを感じる。コンプライアンス意識の欠如、人権意識の希薄さ。

 そのような組織がいかにしてボクサー、ボクシングを守れるのか。

 上記のような事情から考えて、JBCは競技の統轄機関としての実質的機能、いや体裁すら失いつつあると言えるのではないか。日本のプロボクシングは名実ともにマイナースポーツ、たんなるモンキー・ビジネスの世界へと転げ落ちつつあるのではないか。

 そのように危惧しないではいられない。

【4最後に ― どうすべきか】
 JBCは安河内氏に対する降格処分と懲戒解雇処分を取り消し、復職させるべきである。そして、日本のボクシング界のために尽力させ、その能力を発揮させるべきである。

 現体制の能力の問題と安河内氏の問題とは別問題である。現体制の組織運営能力が低いから、能力の高いと思われる安河内氏を復職させるべきだというのではない。安河内氏の問題とは別に、JBCは現場トップに他の適任者を据えるべきなのである。なぜなら、今こうしている間にも、ボクサーたちはリングの内外で戦っており、そこには様々な危険が存在するからである。JBCは試合の正常な運営を通して、ボクシングに関わる全ての人々を危険から護る責務を負っており、現在の現場トップがその任に堪えないことがこの3年間の実績(暴力団観戦問題、谷川氏解雇撤回問題、公益法人化問題、健保金問題、亀田vsソリス統一戦ルール問題)から明らかである以上、また、組織の構造上誤った構成をとっている以上、これを全うするのに適した人材をあらためて配置すべきなのである。

 そしてその適任者の候補の中に安河内氏がいることを私は希望するのである。

 いや、それももうどうでもいいのかもしれない。

 判決をもってノーサイド、和解・融和に進むと考えるほど私も楽天家ではない。

 JBCの裁判における主張は、もはや裁判に勝つことよりも、安河内氏がいかに非道の人であるかを印象付け、そして今後共に仕事をすることは決してできないという意思表示のために行われていると言っていい。

 安河内氏の訴えを全面的に認める判決が出たとしても、JBCは控訴し裁判を続けることができるし、仮に安河内氏を復職させたとしても、再度解雇を言い渡す、あるいは処分を下して飼い殺すこともできる。

 しかし、それとは別に現在のJBCは誤った方向に向かっている。そのまちがった方向への歩みを止め、もう一度考え直すべきなのだ。

 そのことは安河内氏の最も望んでいることである。彼が裁判を提起した核心的な理由もそこにある。

 彼は陳述書において、林コミッショナーに暴排への協力を上申した際、「社会の要請だね。…おやりなさい」と後押しされたことを明かし、JBCに対する変わらぬ感謝の念を示している。そして裁判は「この組織が、そしてひいては日本のボクシング界がおかしな方向に行かないための最後の手段でした」と述べている。

 日本のプロボクシングは前に進まなければならない。そのためなら誰でもよいのである。

 私はそのことをひたすら祈るばかりである。

■■■

●後記 ―私の動機―

 私が安河内氏の不正疑惑を中心としたJBC問題に関心をもったのは、ボクシングを安心して見たいというファンとしての欲求からである。公正・中立な環境でボクサーが戦う姿をみたい。時としてそれが成り立たないのがある種のドラマを生むことは否定しないが、しかしそれは公正性・中立性への努力が最大限に払われた上での話である。試合を運営・管理する者が公正性・中立性を欠くならば、ボクシングは見るに価しない。

 そのような思いからこれまでJBC問題を見てきた。

 その中でスポーツとしてのボクシングの将来のあり方について考えさせられることが多かった。組織のあり方がどうあるべきかについても勉強させられることがあった。

 できればこんな面倒なことに関わりたくはなかった。本来ならばもっと有能な、この世界に通じた人物が扱うべき仕事である。メディアが取り上げるべき問題でもあった。しかし誰もやらない。だからやったまでである。問題の一端をお伝えできたら幸いである。

 ぜひとも業界の皆さんには、こんな1ファンの思いを理解していただき、多くの人が感動しあこがれるボクシング界にしてほしいと思う。

■■■■
以上

(2014年11月12日追記  本文中に袴田支援関係者の方に対する誹謗中傷に当たる表現がありました。関係者の皆さまにお詫び致します。また当該部分を撤回致します。)

(2014年12月2日追記 証人尋問の項の末尾に、当該の証人尋問記事をリンクしました。)

By いやまじで

「いかがなものか」ねえ

 亀田和毅選手、縁もゆかりも無いシカゴでの試合で勝利しサヴァイヴしたようであります。これで次戦もアメリカで、IBF王者との統一戦とか。アル・ヘイモン恐るべしであります。なんだかんだ言って中学を出てすぐ単身メキシコ移住してやってきたということで、海外だからと物怖じすることはないのでありましょう。

 ポンコツJBCの責任転嫁でとばっちりを食った形の彼(彼は体重超過事件とその後のゴタゴタには何の関係も無いですからね)ではありますが、結果的にミリオンダラーファイターの可能性すら見えてきたというこの皮肉。テレビ中継を前提にした旧弊なビジネスモデルから脱却できない日本のボクシング業界を尻目に着々と地歩を築いているように見えます。

 さて昨年来の体重超過事件以降、一連の騒動についてJBCサイドからのリーク、じゃなかった取材でせっせと名文をモノされてきた、THE PAGEの本郷陽一記者がまたも、JBCサイドの言い分を垂れ流し、いや伝えてくれています。

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亀田兄弟の試合はなぜ日本で放映されないのか?

 以下記事中の『JBC関係者』(JBC職員じゃないの?)のコメントを引用したします。(引用赤字)

 JBC(日本ボクシングコミッション)の関係者は、「我々がテレビ局側に『中継を控えて欲しい』などと言ったことはない。ライセンスを持たない選手の試合を放送することに対してのコンプライアンスと、社会的な影響を考えての自粛でしょう。ルール上、海外の試合そのものを止めることはできないが、本来は、国内のローカルコミッションがライセンスを許可していない選手が海外で試合をすることはいかがなものかとは考えている」という。

 生きていくためには試合をしないといけない選手に対して「試合するのはいかがなものか?」と発言することは生活権の侵害だと思うのですが、そういった人権侵害的横槍を本郷記者は是認されるのでありましょうか?そもそも「いかがなものか」ってどういう意味でしょうかね?「それどういう意味ですか?」と聞くのがジャーナリストの仕事だと思うのですが...。当該事件の当事者であるJBCがライセンスの発給を握っていることは、利益相反でありおかしいという当たり前の指摘がなぜできないのでしょうか?

 THE PAGEは原稿料がページビューに連動してるらしいので、間違っても亀田を持ち上げるような表現は出来ないのでしょうが、一年近く問題を放置しているJBCの言い分を、価値判断なしに垂れ流すのはそれこそ『いかがなもの』でありしょうか?

 困った時の怪文書と言うワンパターンぶりに笑ってしまう(旧徳山と長谷川が好きです)