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HARD BLOW !

本日深夜『彷徨う拳 密着2000日 プロボクサー高山勝成』 が放送されます

テレビ大阪の番組ホームページ
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彷徨う拳 密着2000日 プロボクサー高山勝成

 テレビの業界ではよく密着ドキュメントと言う惹句が使われますが、テレビ大阪制作の高山勝成選手の一連のドキュメント『彷徨う拳』は本当・本物、密着の名に相応しい番組です。

 自分も何度か高山選手の練習やスパーリングにお邪魔しましたが、そこには常にテレビ大阪のクルーがいました。

 高山選手とチームがJBCライセンスを返上し徒手空拳で世界の海に漕ぎ出した時も、海外にまで帯同しずっとカメラを回し続けてきたテレビ大阪。これは本当に損得抜き、なかなかできることではないと思います。ボクシングの映像ドキュメントでここまでやっているクルーは世界的にも珍しいと思います。

 番組は30分ですが、その背後では膨大な時間と労力が費やされていることと思います。

 いやほんと映画にして欲しいくらいです。明日の放送を楽しみに待ちます。

ボクシングはドキュメンタリー向けのスポーツだと思う(旧徳山と長谷川が好きです)

受験生必読!JBCの文書で、陥りがちな英作文のミスを学ぼうの巻

JBC 添削_R

 お約束していたJBCがWBAへ送った英文レターの添削をお届けします。

 知人を介して、ネィテイブの英語の先生にお願いしたところ、「いいよ~」と言う感じで、弁当食べながらやってくれたそうです(笑)。同じ学校にいるフィリピン系でパッキャオファンのボクシングに詳しい先生にお願いしようと思っていたのですが、その人は休みだったそうで、ボクシングにはあんまり詳しくない方にやってもらいました。滞日10年以上で日本語はペラペラだそうです。

 「beforeを使いたいなら、before everythingだな~。throw question は『疑問を投げかける』の直訳かな?こういう表現は使わないな~。なんか全体に自動翻訳っぽいね」と終始苦笑いしながら、しかし優しく添削してくれたそうです。さすがプロの英語教師、親身の指導であります。

 で赤が入っているところは、時制の間違いや、定冠詞・不定冠詞があったりなかったり、三単現のsがないなどありがちなミスのオンパレードであります。まあ私の英語力だって正直似たようなもんでありますが、公式文書と言っていいレターを送る場合はちゃんとプロに添削してもらうもんなんじゃないでしょうか?国際的なスポーツの統括団体が使う英語としては間違いなく失格であると思います。

 かえすがえすも、アメリカ放浪時代に現地の法人で支社長をしていたという妄想ゴッシプライターになんで添削を頼まなかったのかと悔やまれてなりません。自分みたいな運送屋でも英語の添削頼める人の一人や二人いるのにねえ。

 こんな英語力で海外とやり取りしてるかと思うと心配であります。

 というかこの文章、語彙の間違い以前に全体に言いたいことが分からないんだよねえと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)
 

まるで怪文書?JBCがWBAに送ったレターで拙い英語力がバレてしまった件

 河野と亀田の対戦命令に何かとアヤつけてるJBCが、対戦命令や入札に対してWBAに再三文書で抗議していることは報道されて来ました。一体どんなこと書いてるのかなあ?、と私も訝しんでおったのですが、このたびJBCがWBAに対して送った抗議のレターの具体的内容が、思わぬところで公開されました。その舞台となったのは、世界中のボクシング関係者・メデイア関係者・ファンが読んでる、多分世界でも一二を争うような有名格闘技サイト『Fightnews.com』様。

 これで『JBCの威厳に満ち、理路整然とした抗議に、腐敗したWBAがタジタジに』となれば、そりゃめでたい話なのですが、肝心の文面はなんだか凄く残念なシロモノでして...。なんというか、その、ぶっちゃけ凄く拙い英語なのであります。以下その文面をご紹介致しましょう。

 記事へのリンク
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Japan Boxing Commission protests WBA’s manda、tory Kono-Kameda bout

 物事ははじめが肝心と申しますがBefore of all, we, Japanese Boxing Commission (JBC) should NOT mention と言う書き出しからボロボロ。『Before of all』というのは「まず最初に」というつもりのようですが、英語にはこのような言い回しはありません。『First of all』でいいのではないでしょうか?続いて『Japanese Boxing Commission (JBC)』という眩暈がするような誤訳が追い討ち。JBCはJapan Boxing Commissionです。自分達の組織名も正しく理解していないのでありましょうか?一際目立つ大文字のNOTがもはやどうでも良く感じます。

 続くAt first, we JBC NEVER ever recognize で『Never ever』(またナゾの大文字...)という海外の統括団体へ送るレターには似つかわしくない口語的表現が炸裂。親愛の情を表すためにあえてとった表現でありましょうか?

 このレターは、At first→Secondly→Thirdlyと文章が展開していくのですが(ここのat firstもちょっとおかしいのですがきりが無いので飛ばします)、事例を列挙してるのかと思ったら第三段階でいきなり結論が来る構成であんまりうまくない上に、内容も何が言いたいのか判然としません。そもそも書き出しで「WBAの方針にあれこれ言う気はございませんが」みたいなこと書いてるけど、思いっきりあれこれ言う内容なのもおかしいです。

 そして結論部分で唐突に「WBAの信義と公正に期待して信じております」みたいな文章が出てくるのですが、WBAってもうかなり前からチャンピオンの乱立状態が続いてるんだけどなあ。もともとそういう団体だったじゃ無いですか?指名挑戦者の基準がわからないなんて言ってますが、WBCやWBOもランキングの基準はハッキリしないことがあるけど...。

 WBAにほんとに「脱退も辞さず」みたいなレターを送ってるのはまあある意味見上げた根性ですが、それにふさわしい書式や表現を備えた文章でなければ、それこそ恥を晒すだけではないでしょうか?

 こんなレターを世界中の格闘技関係者が読むサイトに上げられてしまったJBC様はお気の毒としか言い様がありません。こんなことなら、質より量を追求することでお馴染みのリングアナウンサー様と昵懇の仲の、アメリカで支社長していたという華麗なる経歴を有するライター様の添削を受けていれば良かったのに...。私はそれが残念でなりません。

 この文章は、知り合いのネイティブの方に添削して頂きます。続報をお待ち下さい。

 清水智信選手の休養王者認めてたのにWBA批判ってご都合主義じゃないのと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)

 

 

安河内剛氏の地位確認裁判が本日結審 判決は11月21日

 本日の東京地裁といえば、世間的にはASKA被告の判決日でございますが、一部好事家の皆さんにとっては安河内剛氏がJBCを相手に地位確認を求めていた裁判の結審の日でもありました。

 この事案は和解で終わった谷川俊規氏の場合と違い、判決を迎えることになりました。判決は11月21日の午後です。

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 最初はノリノリで安河内氏による組織の私物化・不正経理を匂わせて指弾し、適格性を論じていたあの人はその後の続報を全然報じないですね。自分の裁判でそれどころじゃないのかな?やりっぱなし、書きっぱなしはいつものことで驚きゃしないですが、判決次第で彼の書いた記事は当然その当否が問われ、責任を負うことになります。ジャーナリストを自称してるんだからマア分かってるとは思いますが。こっちのケースでも「ブログだから裏取りが甘くてもいい」みたいな主張をするのかな?

 そして、その彼氏と抜き差しなら無い関係で何でもかんでもリークしてる、リングの上でもリング降りてもお喋りなあの人のパブリックイメージとは随分違うやり口もきっと問題になるでしょう。

 ボクシングマガジンとそのライター陣も同様であります。

 そして安河内氏や谷川氏らを排除してその地位を奪った皆さんの適格性・正当性も当然問題になります。

 答えは11月に出ます。注目してお待ち下さい。当方も色々な情報を伝えていく予定です。

 しかし裁判って時間かかるよねと溜息が出る(旧徳山と長谷川が好きです)

河野×亀田入札指令でJBCが思考停止を超えて機能停止?

 かねてより対戦命令が出ていた、河野公平×亀田興毅の指名試合。思考停止したJBCが亀田興毅の処遇を放置してる間に時間はダラダラと過ぎ、ついにWBAから入札指令が出ました。まあこりゃ当たり前ですね。入札は9月17日に行われます。

 WBAのウエブサイト上の入札告知

 ことここに至って河野陣営は応札する構えで、3000万円を用意したなんて報道もあります。しかし入札って金額を明らかにしちゃうと不利なんじゃないでしょうか?心配であります。亀田サイドには海千山千のアル・ヘイモンがいるしWBAともツーカーでしょうからねえ。

 最近は秋山大本営の広報機関という感じも漂う、The Pageの本郷記者の記事で、秋山理事長のご見解はタップリと読むことが出来ます。
 記事のリンク
    ↓
<ボクシング>最悪、WBA脱退も JBCが「河野 vs 亀田」のWBA入札に異例の物言い

 記事中秋山専務理事はWBA脱退まで示唆しちゃって、まあ穏やかじゃない。いま話題の暴走老○というヤツでしょうか?

 具体的な善後策としては「(亀田は)移籍への努力をする必要がある」なんて抽象的なアドヴァイスをするにとどまっており、もはや思考停止を超えて機能停止と言っていい状態に…。この人ここまでこじれた問題を解決する気があるのでしょうか?

 (お知らせ ; 記事をアップした時点ではこの部分でボクシングマスター様の記事に触れておりましたが、ボクシングマスター様が当該記事を非公開設定?削除?されましたので、ボクシングマスター様に触れた文章は削除とさせて頂きます。悪しからずご了承下さい。浦谷氏の発言については違うソースに準拠して触れさせて頂きます)

 一方谷川俊規氏の裁判の傍聴席で、一際ダンディーな存在感を放っていた(でもJBCが主張する懲戒解雇は認められずちょっと可哀相だった) 浦谷事務局長代行のコメントはより深い混迷を感じさせます。

 記事のリンク
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WBAから入札指令「河野VS興毅」日本開催ならJBC非公認も

記事からコメントを引用いたします(引用は赤字)

「ライセンスのないボクサーは管理できないが、試合をやるなとは言っていない。JBCが認定するかどうか」

 JBCの中の人が「JBCが認定するかどうか」と言ってる図は、なんだか不条理劇を見るようで心配になって来ます。自分で自分がわからない...。日々の激務や一連の裁判で、疲労困憊になっておられるのでしょうか?メジャースポーツの最前線で働く、エリートのストレスはきっと底なしなのでしょう。

 とはいえもはやJBCは公益も取れてただの任意団体と同じ扱い。ボクシング興行を独占する大義名分もありません。そんな境遇を知ってか知らずか、問題の次元が深くなるところからは慎重に距離を置かれているのやも知れません。

 というか彼らにはそもそも混み入ったトラブル解決する力量が無く、すっかりこじれてしまった事態を前に呆然とする以外に手が無いのかな?とも思えます。それは実は一連の裁判の過程でもずっと感じられたことでもあります。

 三年前、対立する職員を追い出してJBCの実権を握った時に見せた集中力や行動力を思い出して、トラブルに真剣に向かい合って頂きたいものです。嘘ですけど。

 この問題に関しJBCの浦谷信彰事務局長代行は、「ライセンスのないボクサーは管理できないが、試合をやるなとは言っていない。JBCが認定するかどうか」との見解を示しているが、これはいよいよ禅問答で、一般ファンには極めてわかりにくい。

  9月15日追記:あれ!ボクマスさんの記事が復活してる!というわけでそちらも引用させて頂きます。

 ボクマスさん記事へのリンク
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 JBC 河野vs興毅 「国内開催」関与せず! 

 この問題に関しJBCの浦谷信彰事務局長代行は、「ライセンスのないボクサーは管理できないが、試合をやるなとは言っていない。JBCが認定するかどうか」との見解を示しているが、これはいよいよ禅問答で、一般ファンには極めてわかりにくい。

 禅問答...。ボクマスさんが仰るように、理解できる人はいないと思います。

 でも亀田の試合って海外での商品価値はないよなあと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)
 


 

スポーツ団体のガバナンスを考える 5 ガバナンスって何?と言う感じのJBCについて

 パート1はこちらから
 パート2はこちらから
 パート3はこちらから
 パート4はこちらから

 『Japanese only横断幕事件』は世間に対して様々なテーマを投げかけました。スポーツは社会の中でどうあるべきなのか?東京五輪に向けていかに差別問題を啓発するか?短絡的なゼノフォビア(外国人忌避)を克服するには?

 大阪弁護士会や人権博物館といった主催者の皆さんからすればメインテーマは当然差別問題であります。自分も路上のヘイトスピーチなどには、前から個人的に関心があったので大変有意義な話しが聞けて参加して良かったと感じました。

 それプラス、自分はずっとJBCの問題を取り上げるブログをやってきた関係上、Jリーグ機構のトラブル対応を通してJBCのガバナンスについて考えざるを得ませんでした。

 まずJリーグにはトラブルの際、参照すべき理念やルールがちゃんとあるということです。差別横断幕事件の無観客試合と言う処分も、Fマリノスサポーターがバナナを投げ込んだ事件の罰金500万円と言う処分も、過去の処分と照らして整合性がありルール上も説明出来る根拠があります。

 一方JBCが下した大沢選手や亀田ジムに対する処分は、ルール上の根拠も曖昧で過去の事例とのバランスも極めて悪い。のみならず御用メデイアが選手に対するネガティブキャンペーンまでしています。自己都合で処分し、ネガキャンで貶める。これがスポーツの統括団体のやることでしょうか?
 
 一方トップや職員の能力や人間性の問題も重要なファクターです。
 
 村井満氏とJリーグのかかわりの原点は、リクルートのサラリーマンだった時代の、サッカー選手のセカンドキャリア対策だったそうです。いまJリーグは新たな収益源として、アジアでの放映権ビジネスを志向しており、それに向けた人材を求めていたと言うサッカー協会にとって、面識のあった村井氏がリクルートのアジア法人のトップにまでなったいたのは僥倖であったのでありましょう。一方村井氏にとってもサッカーリーグのトップと言うのは、非常に魅力的なポジションだったことでしょう。

 要はトップの人選が適格だったということと、そのトップの意欲が高かったということということが迅速な解決につながったと言うことです。

 省みてわがボクシング界を取り仕切るJBCはどうでありましょうか?言うちゃあれですが、亀田問題でダメだしを続けてる秋山弘志専務理事の出身企業である松戸公産株式会社は競輪場や場外車券売り場、商業ビル管理をする会社で、ボクシングとは完全な畑違い。なんのことはない東京ドームの100%子会社と言う縁で、来たというのは明らかであります。

 実務方のトップである森田健氏は、そりゃーレフェリーとしては実績のある方で業界への貢献もあるのでしょうが、だからといってトップができると言うものでもございません。事務局長職というポストもご自分のビジネスとの兼業だそうで、労働裁判では「私には自分のビジネスがあるから、ボクシングにばかり関わってはいられない」とあっけらかんと証言してしまう始末。根本的な問題として兼業で出来るような仕事なのか?という事以外に、「そもそも意欲が低いんじゃないの?」と感じざるを得ません。事務局長は名誉職ではなく高額な給与が出ています。このような責任感でいいのかと言う疑問が湧きます。

 そもそも失礼ながら、お二人ともかなりのご高齢。名誉職ならいざ知らず、競技団体のトップとして辣腕を振るうのは少々無理があるのではないか?と感じます。

 では浦谷氏以下の職員の皆さんはどうか?それは一連の労働裁判や健保金問題、公益法人格の放棄や亀田とのスラップ訴訟(笑)を見れば明らか。一度は自分達が画策した「第二コミッション」を理由に気に入らない職員を排除した上に東洋チャンピオンや世界ランカーに濡れ衣を着せたり、放漫経営で年間2千万円の赤字を出して選手が積み立てた医療費に手をつけたり、先人の遺産である公益法人格をあっさり手放したり、胡散臭いライターと癒着してなんでもかんでも内部情報を漏らしたり、試合運営でボクサーとトラブルになったらボクサーを告訴したり(敬語で抗議されただけで恐怖で動けなくなったらしいです。この時点で試合管理する能力が無いのではないでしょうか?)。
 
 こんなデタラメな団体でも亀田を排除すれば「JBC良くやった」「JBCがんばれ」「JBCもっとやれ」とタコ踊りしちゃうボクシングファンも、言うちゃアレですがもはや同罪。『亀田が諸悪の根源』と言う極端に単純化された分析で思考停止して、乗せられるままバッシングして溜飲を下げてしまう。失礼ながら他のスポーツのファンはこんな短絡じゃないです。

 低レベルな亀田問題で一喜一憂してるうちにJBCは財政破綻にむけてひた走っています。一連の労働裁判で使った裁判費用も、恐らく莫大な金額となります。その金は全て協会員の負担であり、つまり全国のボクサーや練習生が負担した金です。協会はそのような支出を認めるのでしょうか?

 9ヶ月前の試合のトラブルを未だに放置し、自らの責任も省みないJBCと、たった五日で差別事件と言う難題に対する処分を発表したJリーグの差を見れば、ガバナンスが天と地ほど違うことは明らかでありましょう。いやJBCにはガバナンスは存在しないということが明らかになったと言うべきか。

 一ボクシングファンとして、JBCが一刻も早くまともな職能のある人の運営によって正常化することを望みます。

 明日のアナウンスはきっと長くなるぞと覚悟している(旧徳山と長谷川が好きです)

 

 

読者投稿 WBO・IBF承認から1年半過ぎて 

読者投稿を一本掲載します。こういうフィードバックがあるのは楽しいですね。
こういう面白い投稿は歓迎いたします。原稿料は出ません(笑)

WBCのスーパーフェザーから下は八重樫・井上以外、帝拳とメキシコ人しかいないんですね。帝拳でメキシコ人の人もいますが(笑)。

大相撲の八百長問題の時に「ヤバい経済学」と言う本が話題になりましたが、これらの現象にはどのような動機付けが働いているのでありましょうか?

と言うわけで以下より本文をお楽しみ下さい。(旧徳山と長谷川が好きです)
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検証Ⅰ WBO・IBF承認から1年半過ぎて 

2013年4月1日よりJBCがWBO・IBFを承認し、約17か月過ぎつつある。国際化の名のもと、やや性急に議論もなく行われた4団体加盟はどのような結果をもたらしたのか、一度整理して検証すべきではなかろうか。個人的には現在のファンや関係者のWBO・IBFの承認の印象と、現実には大きな乖離があるのではなかろうかと感じている。IBFチャンピオン高山選手の敗北と、JBCによるWBOチャンピオン亀田和穀選手のJBCランキングからの消去をもって、男子のJBC傘下のWBO・IBF世界王者はいなくなってしまった現在こそ、検証するにちょうど良い時期かもしれない。

まず始めに、先日hardbrow内に書き込まれたコメントから引用を始めようかと思う。
以下は8/1のとっくめい氏の書き込みである。


 IBFやWBOを認可したのだって世界的な趨勢に合わせて統一戦などのビッグマッチ実現に近付ければという期待があったけど、今や穴王者狙いの意図が見え見えだし、業界寄りに意見したって展望なんか見えやしない。 

何故このコメントを引用したのか。業界よりかどうかはともかく、恐らくは“穴王者狙いの意図が見え見え”の部分は現在も多くの方が持っている印象ではないでしょうか。一時期は世界チャンピオンが8人も並立し、ベルトの権威と価値が低下した事にWBO・IBFの承認が大きく影響したと感じてしまうのは時期的に一見もっともに見えるのだが、果たして事実はどうでしょうか。


検証Ⅱ WBO・IBF承認の印象と実際
 さてもしお読みの皆さんも“穴王者狙いの意図が見え見え”の印象をお持ちであれば、その印象は何によってもたらされたのでしょうか。おそらくは両団体の承認後最初の王者がその要因ではないかと推察します。
 その両団体の王者ですが、
 WBOは 2013年8月1日、亀田家の三男和穀選手がバンタム級で日本人初のチャンピオンを獲得し、
 IBFは 2013年9月3日、亀田家の次男大穀選手がスーパーフライ級でJBC承認後初のチャンピオンを決定戦で獲得しています。
 亀田3兄弟のこれまでの印象と評価がみなさんご承知の通りであり、さらに大穀選手が決定戦であったことからもWBO・IBFも亀田家の影響を受ける団体との印象が浸透し、両団体への期待が失望に変わったのではないでしょうか。最初の王者が亀田家から誕生したことで、亀田家の印象をも背負ってしまった感があります。しかしながら、両団体のベルトは穴王者狙いと言われるほど政治力で簡単に獲得できるものなのでしょうか。


検証Ⅲ IBFの実際
 それにはまず、この17か月の軌跡を追ってみる事で簡単にわかります。
IBFは承認後5人挑戦し、獲得は亀田大穀選手のみです。(承認前の高山選手除く)
高山、亀田大穀選手がチャンピオンとして活動し、日本人対決の高山vs小野戦を両カウントし、3勝6敗です。
 2013.9.3  ○ Sフライ決定戦 亀田大穀 vs ロドリゴ ゲレーロ 判定
 2013.12.3 ○ ミニマム 高山勝成 vs ビルヒリオ シルバノ 判定
2013.12.3 × Sフライ統一 亀田大穀 vs リボリオ ソリス 判定
 2014.4.23 × Sバンタム 長谷川穂積 vs キコ マルチネス 7RTKO
 2014.5.7 ミニマム 高山勝成vs 小野心 判定
 2014.5.7 × フライ 井岡一翔 vs アムナット 判定
2014.7.18 × Sフライ決定戦 帝里木下 vs ゾラニ テテ 判定
 2014.8. 9 × ミニマム統一 高山勝成 vsフランシスコ ロドリゲス 判定
 
 IBFには世界戦以外に、挑戦者決定戦もあります。
2014.4.4  ×  バンタム 大場浩平 vs ランディ カバジェロ 8RTKO
2014.5.31 × Sバンタム 石本康隆 vs クリス アヴァロス 8RTKO
2戦2敗です。IBFには世界、挑戦者決定戦計7人挑戦し、井岡選手や長谷川選手等の実績のある選手を含み6人失敗しています。統一戦の高山―ロドリゲス及び石本選手を除き、日本での試合です。ここで気になるのは3勝のうち高山選手のシルバノ戦、小野戦は挑戦者選択試合で、残りの試合の対戦相手は敗戦試合も含め、日本側が選んだ選手ではない、ということです。

検証Ⅳ WBOの実際
WBOは承認後17か月で、高山選手の統一選を含み4人の選手が挑戦し、獲得したのは亀田和穀選手1人のみです。和穀選手が防衛戦を含み3戦し、全6戦3勝3敗です。
 2013.7.13 × Sミドル 清田祐三 vs ロバート スティグリッツ 10RTKO
2013.8.1 ○ バンタム 亀田和穀 vs パウルス アンブンダ 判定
 2013.8.24 × Sフライ 久高寛之 vs オマール ナルバエス 10RTKO
 2013.12.3 ○ バンタム 亀田和穀 vs イマヌエル ナイジャラ 判定
 2014.7.12 ○ バンタム 亀田和穀 vsプンルアン ソーシンユー7RKO
2014.8. 9 × ミニマム統一 高山勝成 vsフランシスコ ロドリゲス 判定
ビックプロモーター傘下の強いチャンピオンが揃ったWBOには、挑戦の機会すら少ないのが現実です。12月3日の和穀選手以外の5試合は海外です。
 この間、参考までにWBAは亀田興穀、宮崎、井岡、内山、河野選手がチャンピオンとして在籍し、WBCは山中、八重樫、井上、三浦、佐藤洋太、五十嵐選手がチャンピオンとして在籍し、戦績12勝6敗。6敗は向井、荒川、角谷、佐藤洋太選手がいずれも敵地で、残り2敗はツニャカオ、五十嵐選手の日本ジム対決。両団体は承認以前のチャンピオンが多いですが、IBFと違い敗退はほとんど敵地です。つまり、呼んだ外国人相手にはすべて勝っています。

さて、WBO・IBFに穴王者狙いは通じたでしょうか。亀田家は成功しましたが、次男の大穀選手はホームでしっかりと判定で敗れています。IBFは多くの国内トップ選手がホームで敗れ、WBOに至っては挑戦の機会すら少ないのが現実です。そして8月現在、遂に両団体の王者がJBCランキングから消えました。

この現実をどのように捉えるかは個々の皆様の解釈の自由だと考えます。しかしながら、WBO・IBFの承認が穴王者の量産に繋がったといえるのかははっきりしたと思います。しかも現在の世界の趨勢は世界チャンピオンの上に統一王者やスーパースターが君臨をしています。マニー・パッキャオが試合をする際、どの世界タイトルがかかっているかを重要視する方は少ないかと思います。この状況の中でWBO・IBFに限れば世界タイトルの奪取すら苦労している事実は、増えているとともに価値の低下をひきおこしている世界チャンピオンのイメージとは真逆ではないでしょうか。OやFであれば必ず強いというわけではありませんが、現状の認識は現実と乖離しているのではないでしょうか。

文責:LS

亀田和毅のwikipediaがなんだか凄い編集を受けていることについて

 本日夕方某人より教えて頂いた小ネタです。

 「なんか亀田和毅のwikiが凄い変なんですよ。一回見て下さい」と言われたので見てみたら…、こりゃ確かに変だ!

 『2.3 プロボクシング』と言う章でプロキャリアが時系列で書いてあるのですが、その2014年2月7日の部分が凄いことになっているのです。ちょっと引用しましょう。(以下引用)

2014年2月7日、2013年に行われた亀田大毅とロドリゴ・ゲレロとの間で行われたIBF世界スーパーフライ級王座決定戦の試合前記者会見後、ゲレロ陣営が日本製のグローブではなくカナダ製のグローブの使用を決めたことに不満を持った長兄でこの試合が行われた当時WBA世界バンタム級王者だった元世界3階級制覇王者の亀田興毅、WBO世界バンタム級王者の和毅と亀田ジム関係者2人がJBC職員が会見室から退室するのを妨害し、報道関係者を会場外に出し、JBC職員3人を残して全ての扉を閉め、興毅から「おかしいじゃないか」と脅され、外に出ようとしたところ和毅から首などを数回小突かれるといった暴行や恫喝をされて精神的苦痛を受けたなどとして興毅、和毅、亀田ジム関係者2人の計4人を相手取り、会見室から退室するのを妨害されたJBC職員3人のうちの1人のJBC職員の男性が1000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に同月6日付で提訴したことを記者会見を開き明らかにした。「すごいプレッシャーを感じ、怖かった」と述べるも「正義を貫くために訴訟に踏み切った」と話した。尚、試合で使用するグローブは亀田大毅、ロドリゴ・ゲレロの双方が「それぞれが選べる」という契約内容だったとのこと。[20][21][22][23][24][25]。同日、JBCは記者会見を開き、吉井慎次会長の持つクラブオーナーライセンスと嶋聡マネージャーのマネージャーライセンスの更新を認めないと発表した。吉井と嶋は2013年12月31日にライセンスの更新を行っていない為、現在はライセンスが失効中で、JBCの慣例では遅れての更新も認められるのだが、吉井のクラブオーナーライセンスの更新が認められず、嶋のマネージャーライセンスの更新も認められない為、事実上の資格剥奪処分となった。この処分で亀田ジムは活動停止となり、興行を開催できないだけでなく、選手のライセンスはジムを通してしか申請出来ない為、亀田興毅、大毅、和毅が保持するボクサーライセンスも実質的に失効となり、事実上の追放処分となった。亀田興毅、大毅、和毅が国内で試合をするためには、新たに会長、マネージャーを置くか、他ジムへの移籍などの措置が必要になる為、亀田興毅、大毅、和毅がジム移籍を申請した場合、JBCは書類のみでは許可せず、本人らを厳格に審査して可否を判断するとのこと[26][27][28][29][30][31]。
2014年4月21日、東日本ボクシング協会は理事会を開き、2013年12月3日のWBA・IBF世界スーパーフライ級王座統一戦に敗れながらも亀田大毅がIBF王座を保持し混乱を招いた件で、吉井慎次会長がクラブオーナーライセンスを持つジムの会長としては名義貸しの状態で、ジム運営に携わっていない点や、ジム所属選手の海外での試合を報告せず安全管理を怠った点などの理由で吉井慎次会長を全会一致で除名処分とした[32][33][34]。亀田三兄弟が国内で試合をすることも可能にする為の一時的な措置として亀田三兄弟を「協会預かり」にすることに関して、東日本ボクシング協会の大橋秀行会長は「無い」と断言した[35]。同月25日、JBCは資格審査委員会並びに倫理委員会を開き、上述の吉井慎次会長の持つクラブオーナーライセンスと嶋聡マネージャーのマネージャーライセンスの更新を認めず事実上の資格剥奪処分となった件に関し、処分取り消しを求めた亀田ジム側が提出した証拠に再審議が必要と判断するものが無かった為、亀田ジム側の再審議請求を退けた[36][37]。
(引用以上)

 この項だけ異常に詳細&ボクシングキャリアじゃないし和毅の情報じゃないことが相当入ってる&文章も相当悪意に満ちており、亀田ジムのライセンス停止が高松の『暴行事件』(笑)に由来するようなセコ~い印象操作が為されております。

 だれがこんなイカれた編集したんでしょうね。まあ世の中にはヒマな人がいるもんですね。

 以上小ネタでした

 興毅のwikiでも似たような印象操作を見てなんかゲンナリした(旧徳山と長谷川が好きです)

スポーツ団体のガバナンスを考える 4 スポーツと差別を巡るシンポジウム 実践編

パート1はこちらから
パート2はこちらから
パート3はこちらから

 引き続き 「SAY NO TO RACISM-人種差別にレッドカード-」シンポジウムについてのレポートの様子です

 現状分析や実際起こった事件についての論評に続いて、議論は「いかにサッカーは差別と対峙し、これを克服するか」と言う方向に進んで行きます。

  Japanese Only事件が発生した直後、当のレッズでプレイする槙野智章選手がツイッター上で差別横断幕を批判したことが、この事件の周知と批判の広がりの大きな原因となったことは間違いありません。以下にそのときのつぶやきを引用します。(以下引用)

『今日の試合負けた以上にもっと残念な事があった…。
浦和という看板を背負い、袖を通して一生懸命闘い、誇りをもってこのチームで闘う選手に対してこれはない。
こういう事をしているようでは、選手とサポーターが一つになれないし、結果も出ない…』


 日本代表に選出されたこともある槙野の、この至極まっとうな嘆きが『拡散』されたことで、この事件への批判は爆発的に広がったとも言えます。現場にいたプレイヤー自身が発言することで、差別事件に対する大衆の関心を惹起するとともに、差別事件は恥ずべきことだと言う前提が共有される。これは理想的なサイクルと言えます。

 また現場にいたサポーターが、会場で警備担当者に「この横断幕はまずいよ、外さないとダメだよ」と注意したのに試合が終了するまで掲出されていた、などの細かい状況が、これもツイッターを通じてどんどん伝播していきます。

 この選手やサポーターの自主的な情報発信が契機となったというところに、サッカー界の希望があるのではないか?というのがパネラー陣の分析でありました。

 まずは宮本氏が「海外ではサッカー選手のステイタスは高いので、発信力は非常に強い。ソーシャルメディアがあるので情報の広がりも速い。」と発言。そして高校時代にローマに遠征行った時に、選手バスに投石された経験から、マイノリティの目線から差別の構造を想像することが出来たという具体例を話し、「サッカーは相手を選べないスポーツなのに、外国人を排斥するという意味が分からない」と疑問を呈します。

 村井チェアマンは槙野のツイッター上での情報発信について「選手から発言があったことは大賛成」と手放しで賞賛し、子供がなりたい職業No1であるサッカー選手はロールモデルであるという自負心を持って欲しいと要求します。サッカーのスタジアムは同質性を要求しがちで、そこに危険性があるのでどうやって多様性を担保するかが重要という見解を述べます。これは基調講演での「女性や子供が外国人がゴール裏に来れるのが、Jリーグのブランドだ』という話に通じるテーマであります。
 
 木村氏は先ほど上映されたバルカンのサッカー事情を踏まえて、民族の分断状況においてこそサッカーが絆になりうると言うことを実例をあげて説明します。オシムの母国であるボスニア・ヘルツェゴビナのサッカー協会は、内戦以降民族対立を理由に三民族の代表がそれぞれ会長を出す実質的な分裂状態にあり、FIFAから会長職の一本化を勧告されていました。しかし結局FIFAが区切った日限までに組織改変が出来ずに、2011年に加盟資格の剥奪という処分を受けます。その処分を受けて、FIFAが事態の収拾を託したのがボスニア出身のオシムでした。オシムは対立する三民族のサッカー界の代表や政治家(ファシストまがいの民族主義者もいた)を尋ねて説得に当たります。その動機となったのは「このままボスニアがサッカーを失ってしまったら、民族融和の最後のチャンスも失くすことになる」という彼の信念でした。
 
 彼が主導した正常化委員会の説得は勿論ですが、「国際試合に出れないのは困る」という切実な理由も手伝って、ボスニアのサッカー協会は会長の一本化を決め、FIFAの制裁は解除されました。その後W杯ブラジル大会にボスニア・ヘルツェゴビナ代表が出場したことはご存知の通りです。

 パート1で触れた「スポーツが差別をあぶりだす」という機能から、更に踏み込んで「スポーツは差別を超え、融和に向かう媒介にもなる」という実例であると思います。

 宮本氏は自身が受講するFIFAマスター(FIFAが運営するスポーツ学の大学院のようなものだそうです)の研究の中の差別解消の実験についての体験談を話します。宮本氏の行った研究は、ボスニアでスポーツアカデミーを作ってU12くらいの子供を集めて指導をしたら、彼らが大人になったときに民族対立の状況は改善しているだろうか?というテーマだったそうです。宮本氏らのグループは「効果があるだろう」と言う結論に達し、FIFAは今その事業の実現に向けて準備作業を行っているそうです。実際にボスニアで子供にサッカーを教えたという宮本氏は「ボールを蹴っているときは憎悪の感情もないし、それが当たり前だとなっていけばいい」と展望を語りました。私はFIFAはここまでやってるんだなあと、単純に驚きました。

 村井氏はUEFAが差別に対して「ゼロトレランス」(意図のあるなしに関わらず、差別行為は全て処罰すると言う方針)を発表したことを踏まえ、差別には厳しく望むと宣言。しかしリーグがクラブを規制・管理するのでは息苦しくなるばかりなので、一緒に差別をなくしていくという協力関係を作るべきだと提言。厳しい規律を持って望まなくとも、リーグとクラブとサポーターが良好な関係を作れば、良いアイデアや自主性が生まれるはずと説きます。その関係性の上でJリーグが行っている年間4000回の地域活動の中で差別反対の啓発活動を盛り込み、そこでサポーターとも連携していくという計画を語ります。

 木村氏は、今回の事案への対応が、サッカー界が一般社会の法律でも規制できない差別表現に対して正しいメッセージを発した上で、規制し収拾したことを高く評価し、「社会に対して範を示している」と説きます。逆にサッカー界からの啓発によって、実社会の差別への対応が変わる、ボスニアで起きたことを未然に防ぐようなことも出来るのではないかと期待を寄せます。
 
 それを受けて宮本氏は「サッカー選手が夢を語るだけでなく、差別などについても積極的に発言することが大事」と説き、サッカー選手の社会的自覚を促します。

 村井氏は最後に、今夏Jリーグユースの14歳世代のチームが、スウェーデンのイエテボリの国際大会に遠征したエピソードを語りました。208カ国が集まったこの大会で、U15世代に混じって見事優勝した(決勝は0-2からの逆転勝ち)という彼ら。帰国したら報道陣が一杯いると思ったら、出迎えは村井チェアマンだけで拍子抜けしてたそうですが(スウェーデンではパレードまであったらしい)その彼らの語る大会の様子が、大変興味深かったというのです。

 「選手の宿舎は全て夏休み中の中学校の校舎でいろんな国が集まっている。男子は奇数階、女子は偶数階という感じに別れて、教室にマットを引いて寝て、食事も食堂に集まってみんなで食べる。こういういろんな国の人と交わるような大会を、日本でも出来れば子供達の交流を見て親も色々なことを考えるようになると思うんです。」と。

 香港をベースに中国やインドや東南アジアを飛び回るビジネスマンだった村井氏は、「海外に行き実態を知り、現地の人と友人になったことが、自身の人権感覚の根拠だ」と言います。村井氏は「私はグローバル人材なんかじゃない」と謙遜してましたが、「そんな事言ったら英語も分からないのに、統括団体の総会に行ってるJBCの人はどうなるのよ」と思いました。サッカー協会が村井氏をヘッドハントしたのもアジア戦略、グローバル戦略あってのものだろうと、深く納得いたしました。

 というわけで次回は、JBCの現状からガバナンスのあり方をもう一度考えてみたいと思います。

 サッカーを巡るトラブルのレベルが低すぎて脱力してる(旧徳山と長谷川が好きです)

スポーツ団体のガバナンスを考える 3 スポーツと差別を巡るシンポジウム 対話編

 パートワンはこちらから
 パート2はこちらから

 「SAY NO TO RACISM-人種差別にレッドカード-」シンポジウムについてのレポートの続きです

 村井チェアマンの基調講演に続いて、大阪弁護士会の相川大輔弁護士による「差別に関する法的整理」と言うテーマの、差別表現を規制する法的な根拠についてのレクチャーが行われました。先般行われた国連人権委員会で日本政府に対して多くの勧告が為されましたが、その根拠となった人種差別撤廃条約についてや、日本国憲法14条、FIFAや日本サッカー協会、Jリーグの規約などの実際の条文を紹介しながら、差別表現規制の現状について分かりやすい説明がありました。

 その後ノンフィクションライター兼ビデオジャーナリストである木村元彦氏が製作したテレビドキュメンタリーを抜粋したDVDの上映へと移ります。この日上映された映像は旧ユーゴ・バルカン半島のサッカー事情を描いたもの。セルビア系住民が応援するチームとムスリム系住人が応援するチームが対戦した時に、セルビア側のサポーターが民族浄化を肯定する横断幕を掲示した事件の映像に続いて、クロアチア系とムスリム系を完全に分離して授業をしているクロアチアの学校が紹介されます。教育現場で憎悪感情が育まれ、対立の種が撒かれていることが分かります。

 当地のサッカーリーグの試合の映像では、暴力的な衝突を避けるためにアウェイのサポーターが徹底隔離された、異様なスタンドの様子が映し出されます。ゴールに興奮したサポーターがフェンスを越えるとすぐさま警官隊が彼らを強制排除し、試合が行われてる街からパトカーの先導で強制帰宅。恐ろしく殺伐としたスポーツ観戦で、およそレジャーというイメージとは程遠いものがあります。

 木村氏の書いた「オシムの言葉」でも、イタリアW杯当時の旧ユーゴの民族対立がサッカーにいかに影響し、選考や采配を捻じ曲げようとしたかが詳述されています。PK戦に縺れ込んだアルゼンチン戦では、選手達はストイコビッチを含む9人中7人がPKを蹴ることを拒否します。当時内戦前夜だったユーゴにおいては、それぞれのPKの成否が民族対立を煽るマスコミの書き方次第でどのように政治利用され、その結果それぞれの出身民族の運命にどのような影響を与えるかが分からなかったからです。オシムが「あれはくじ引きみたいなもの」、とPK戦という決着方法を否定するのはこのときの体験がもとになっていると言われています。その後起こった内戦で旧ユーゴは崩壊し、民族浄化の名の下ムスリム系住人の虐殺が起こったのはご存知の通りです。

 木村氏は上映の前に「バルカンのサッカーの現状を反面教師として見て欲しい」と言いました。偏狭な民族主義・自民族優越主義・他民族蔑視主義を放置するとどうなるのか?ゼノフォビアが台頭する日本も他人事ではないと思えてなりませんでした。

 短い休憩を挟んでいよいよメインのシンポジウムへ。ここでやっと、会場前方を埋め尽くす女性軍団がお目当ての、ツネ様こと宮本恒靖氏が登場し会場も一際熱気を帯びる。この日の進行役は、大阪弁護士会の相川大輔弁護士。実はこの人は元Jリーガーで、試合出場経験もあるという変り種。司会進行にしては話しぶりは『もっちゃり』としていて、ダイスケつながりじゃないですが、どことなく内藤大助を思わせる。


(今回のシンポジウムのテーマとなった『Japanese Only 横断幕事件』については詳しくご存じない方は、浦和レッズHP内の経緯説明のリンクをご参照下さい。)
         ↓
3月8日Jリーグ浦和レッズ対サガン鳥栖におけるサポーターによるコンコース入場ゲートでの横断幕掲出について

 まずは横断幕を掲出した当事者周辺にも取材したと言う木村氏の発言からスタート。当時サラエボにいた木村氏はオシムと食事中にこの事件を知り、オシムに起こったことを伝えると「彼は本当に寂しそうな様子だった」と言います。地獄のユーゴ内戦を経験しているオシムにとって、日本は差別が無い国と言う認識だったのだから、そのショックはひとしおであったのだろうと。

 レッズのサポーターを取材をしていく過程で、木村氏はこの横断幕はレッズに所属する李忠成選手に対するメッセージであることを確信します。実はこのことはソーシャルメデイア上でも事件直後から公然と指摘されていたことでした。特定のサポーター集団が補強で入団した李を『韓国系である』という理由をもって忌避しているという気が滅入るような話であります。

 アジアカップの決勝戦で途中交代で入って、ロスタイムに芸術的なボレーシュートを決めて日本を優勝に導くという、日本のサッカー史に残るような活躍をした李選手。こんな貢献をしても韓国系であるという事をもって差別するようなバカがいるんだなあと私も驚いたものでしたが、木村氏は「この差別のグロテスクさと向き合うことが大事」と指摘し、「日本にいてアパルトヘイトを批判するのは簡単。自分達の足下の問題、隣人にこそ向き合わねばならない」と訴えます。しかし同時にこの横断幕に対する指摘がサポーターからあったことの重要さも指摘し、「サポーターの自浄作用に期待したい」と発言。このシンポジウムの直前に起こった、Fマリノスサポーターによる、黒人選手へのバナナ挑発事件にも言及し、事件後すぐにFマリノスサポーターがアンケートを実施し調査に乗り出したことも紹介しました。

 話を引き継いだ村井チェアマンは、「最初は『日本人だけ』ってどういう意味だろう?」と、掲出した側の意図をはかりかねたことを述べ、続いて「海外駐在の経験から違和感はあった」と感想を述べます。ここで事件収束に向けて意思決定の連続になるのですが、「意図はどうあれ外国人の気分を害することは間違いないし、例えば日本人が香川見たさにオールドトラフォードに高いチケット買って入って『イギリス人以外お断り』と言う掲示があったらどんな気分になるか想像すれば分かること。そう考えれば処分に対する迷いは無かった」ときっぱり断言。しかしいざ意思決定をするのは勇気が要ったのではないか?と感じますがそこについては

 「会社の社長をした経験の中で強烈に反省したことだが、ビジネスのシーンでも自信の無い時ほどジャッジに時間がかかってトラブルが大きくなった。もっと調査しろ、もっと事例を当たれと言って時間稼ぎをしてるときは自分に自信が無い時だった。今回は自分の違和感とアンチレイシズムの指針を機軸に自信を持って事の収束に当たれた」

と言う旨の意思決定が迅速だった理由も説明されました。

 いつまでたっても亀田の処遇が決められない皆さんは正座して聞いたほうがいい話であります。いやそんなポンコツ組織と比較すること自体失礼か。

 無観客試合と言う裁定を下した根拠については「レッズは仙台でもサポーターが一度差別事件を起こしており(この時の対象は韓国人選手)累犯と言うことで厳しい処分になった。ただ処分についてもFIFAに明確な基準がある。罰金の次の段階は無観客試合か勝ち点剥奪と言う指針が示されていたので、指針どおりの裁定を下した。試合当日サポーターから『この横断幕はまずいんじゃないか?』と言う指摘があったのに対応が遅かったということでそこも処分の対象になった」と納得のいく説明がありました。

 つづいてツネ様は無観客試合について、W杯予選での北朝鮮戦で無観客試合を戦った経験の感想を披露。今回の事件をJリーグの理事会で選手から反差別のメッセージを発するように提案したことに触れ、選手を通してメッセージを発する必要を説きます。

 続いて村井チェアマンが意思決定の過程を説明。「速かったと言われるけれど、自分としては時間が止まったようにもどかしかった」と回想。那覇に飛行機で着くまで事件を知らせなかったスタッフを叱責したことについて、なぜか時代劇の『銭型平次』を引用し「あれは始まって五分くらいで八五郎が『親分!ていへんだ~ていへんだ~』って来るでしょ。緊急事態ははあれでいいんですよ。もう立場とか稟議だなんだはすっ飛ばして伝えることを優先しないと」と、迅速な連絡体制の必要をイマイチしっくりこない(でも面白い)例えで訴え、続けて「99パーセントの罪の無い観客の楽しみを奪うのはどうなのか?」と無観客試合に対する葛藤があったことも回想。
 
 春休みでレジャーの予定に観戦を組み込んでいる人も多く、ホテルや交通機関を抑えているアウェイのサポータに至っては純粋な被害者です。しかし結局ここでも決断は揺るぐことは無く「差別はそれくらい大きな問題だということをクラブ側に認識して欲しいし、Jリーグとしてもメッセージしなければならない」ということで処分決定となったとのこと。

  続いて木村氏が今回の処分は「妥当なものである」と評価したものの、メデイアの報道姿勢に疑問を呈し、「観客がいないスタジアムの虚しさを情緒的に描写するのでなく、『何故こうなった?』という原因について論評するべき」と言う至極まっとうな批判を加えた上で、「あれこれ理由をつけて先延ばしせず、初期衝動を大事にして意思決定したところが素晴らしい」とチェアマンの姿勢を高く評価しました。

 ゆるぎない理念と厳格なルールに則りつつ、見識と決断力を併せ持つトップが、スピード溢れる意思決定をするという今回の対応を見るにつけ、サッカー協会の組織としての強さが伝わってきます。

 懲戒解雇を連発したあげく裁判で撤回し、選手が払ってきた医療費目的の積立金に手をつけ、職員の権力闘争に選手を巻き込み、競技でトラブルが起きてもかれこれ9ヶ月放置しているJBC.。トップである事務局長が「私も仕事があるのでボクシングのことばかりやってられない」と法廷で証言しちゃうJBC。それでも事情を知らぬ世間の人はサッカー協会のようなきちんとした団体だと美しき誤解をしています。せめて事情を知ってるファンくらいは、他のスポーツの事情とも比較しながらもうちょっとこの問題に向き合ってもいいのではないでしょうか?

 サッカー界のトップや選手、ファンが共有している問題意識、例えば社会問題への取り組みや、国際的なレベル向上への課題、Jリーグの未来へのビジョン、地域密着のあり方などなどの高度さに比べ、JBCとボクシングファンが夢中でやってる「亀田追い出せ。そうすりゃボクシング村は平和になるぞワッショイ」というタコ踊りは明らかに低レベルです。言うたら大人の悩みと子供の悩みくらい差があると、私は思います。

 というわけで次回、サッカーの差別解消への取り組みへと話は進みます。

 ボクシング界のトラブルの質や対応が幼稚すぎて悲しくなった(旧徳山と長谷川が好きです)