HARD BLOW !

B・Bの気まぐれ日記  

4月30日(水曜日)朝
昨夜からの雨がいまだそぼ降る日比谷公園を散策した。
日比谷地下駐車場に車を止めて地上に出ると、そこはもう日比谷通りに面した公園入り口だ。

ここを訪れるとほっとして落ち着きを取り戻す。
八年前に亡くなった母との想い出が甦る。
父を早くに亡くした為にずっと母一人子一人の生活だったが、母は栄養士、調理師の資格を取り病院などを掛け持ちで働きながら自分を育ててくれた。
とはいえ女性が独立して生計を立てるにはまだ厳しい時代であったから生活は困窮する事も度々で、僕の年代では当時はもうあまり食卓には上がらなかったであろう「すいとん」をよく食べさせられた。
母の給料日の次の休日には銀座や有楽町に映画を観に連れて来られた。
二人が唯一の贅沢を許される日だったので、普段は母に反抗ばかりしていた自分もこの日だけは待ち遠しかった。
初めての記憶に残るのは「チキチキバンバン」や「クリスマスキャロル」などミュージカル映画だったが、その後はきまってこの日比谷公園まで足をのばす。
お目当てはこの公園の中にある松本楼のハヤシライスだ。

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デモ隊の火炎瓶でこの建物は焼失し、しばらく母とのデートは中断したが再建されるとまた度々訪れた。
このレストランの由来や兵隊さんに占拠されたと言う戦中の話しを聞かされた。
震災や時代に翻弄されながらもやがて人の情や善意で復興したと言う話しで、当時小学生だった自分には理解出来なかったが、今思えば、この時子に教えるべき母のテーマは再生と希望だったのかもしれない。
そうか、今気付いたが二人で観た映画もそんな事がテーマだった。
最後に一緒に観た映画は松本清張原作の「砂の器」で人間の業を描く重厚なものだったが、
劇中の親子が巡礼するシーンで母は自分の人生を重ねたのか、ポロポロと泣いていた。
男勝りで気性の激しい人だったが、誰に対しても慈愛に溢れる人だった。

そんな事を思い出しながら、野外音楽堂やイベントの設営で忙しい大噴水を右手に見ながら曲がりくねった小道を行くと松本楼、さらにガーデンウエディングで人気の高い日比谷パレス。そしてあっという間にもう公園を抜け霞門の交差点に出る。
今日の目的は想い出の散策ではなく、ある民事裁判の傍聴が目的だ。
霞門交差点を公園から直進し、次が霞が関1丁目の交差点でここを右に折れるとすぐに東京地方裁判所の入口だ。
公園からここまで徒歩1,2分の距離。
地下鉄霞が関駅からだと地上に出たところがもう目の前だ。

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数年前ならここを訪れるなんて想像も出来なかったが、この日僕にはどうしても「この目で確かめなければならない」という理由があった。

あくまでも個人的動機によるものだが。

続く

高山勝成公開スパーリングin 近畿大学ボクシング部レポート

 シルバノ戦前の高山選手インタビュー記事は→こちらから

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                  高山選手と中出トレーナー
             
 当HARD BLOW!でもお馴染みIBFミニマム級チャンピオン高山勝成選手の国内復帰第二戦がいよいよ近づいて参りました。日本国内のライセンスを返上し海外で未承認タイトルを狙うという高山選手とその陣営のチャレンジは、日本人ボクサーとして21年ぶりの海外奪取という偉業となって結実し、昨年末大阪で国内復帰戦となる指名試合も完勝でクリア,高山選手のトレーナー・マネージャーを勤める中出博啓氏は2013年度のエディ・タウンゼント賞を受賞しました。一見無謀と見える針の穴を通すようなチャレンジを勝ち抜き、国内ボクシングシーンに復帰した彼らは、果たして2014年にはどのような冒険を見せてくれるのでしょうか?

 高山選手の今年の初戦は、当初内藤大助からダウンを奪った試合で日本でもお馴染みの熊朝忠選手とIBF・WBCの統一戦を戦うと見られていました。ところが熊選手が2月にWBC王座から陥落したことで統一戦のプランもご破算となり、IBF同級10位の小野心選手(ワタナベジム)との防衛戦が発表されました。日本人との対戦は2007年の新井田豊戦以来となります。

 このマッチメイクを受けて、ファンもメデイアも圧倒的に高山有利と言う分析が主流ですが、当の中出トレーナーがブログで表明された見解を見ると決して楽観的では無いようです。果たしてその真意は?ということでスパーリングの舞台である近畿大学ボクシング部に向かう車に便乗させて頂き、まずは中出トレーナーのお話を伺いました。

HB「ブログで苦戦予想をされてましたが…」

中出「みんな高山有利やと言ってるでしょ?」

HB「ファンもメディアもほぼそういう感じですね」

中出「これは盛り上げようとかそういう意味じゃなくてほんとにね、嫌な相手やと思うんですよ。一見すると特徴が無いんやけどそれでいてずっと世界ランクを維持してるでしょ。まず戦い方が崩れない」

HB「スタイルが崩れないということですか?」

中出「スタイルと言うより自分が出来るボクシングを真面目にやる選手なんやろうなっていうこと。離れてるときはアップライトやけど、接近してくると全然違うスタイルになるからバッテイングも心配やし。それとまっすぐ下がらないのも厄介やね。見た目よりもパンチを当てにくい選手やと思います」

HB「そういえばそうですね。キムウェリ戦でも大きいパンチもらってるようで意外とダメージを感じさせない」

中出「パンチをまともにもらわない選手なんですよ。逃がし方と言うかもらい方というか…。でも対策は考えたんでそれをやっていきます」

続いて熊朝忠の陥落について伺いました

HB「熊が負けたときは中国の試合会場にいたんですよね」

中出「熊にはCCTV(中国中央電視台)がついてて放送契約もあって、次は高山と統一戦する予定やったんですよ。俺らも招待で行ってるからね。で俺らの座ってる席にテレビカメラが何回も来て『勝てば次はこの高山とやる』って中継で盛り上げてるわけ。でカメラに向けてサービスしようと思って、笑って手振ったりしてたんやけど、その手を振ってる後ろで熊がボッコンボッコンに殴られてて(笑)。いやこんなことしてる場合ちゃうやろと。」

HB「予定が狂いましたね」

中出「統一戦は全部のチャンピオンに打診してるんですよ。これからも交渉はして行きます」

続いて大学のボクシング部での公開スパーと言う試みについて…

HB「近畿大学でスパーというのは小野選手への対策の意味があるのですか?」


中出「それはあります」

HB「アマとの交流と言うのは面白い試みですね」

中出「でもプロアマの規定とか細かいこと知らんかったから、最初は『ホンマに行ってええんやろか?』と思ってたんやけど、向こう(近大)の方は『いや気にせんと来てください』と言う感じで」

 その後年末の興行での『亀田トラブル』についての見解などを伺っているうちに車は近畿大学に到着。ボクシング部は柔道場や剣道場や土俵、レスリング場等々体育会の練習場だけが入っている雑居ビルのような凄い建物の中にありました。

 「近畿大学のボクシング部って『花の応援団』みたいな感じなんじゃ…」というベタな先入観を持ったまま恐る恐る引き戸を開けて中に入ると、予想に反して中にいた部員たちは今時の礼儀正しい学生ばかり。すでに到着し鏡の前でアップ中の高山選手を発見し「高校入学おめでとうございます」と声をかけると照れながら笑うチャンピオン。広いジムの中にはAIBAの公式リングがデンと据えられており、公開スパーリングと言うこと報道関係者や大学の広報の方の姿も見える。

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                    活気溢れる練習風景

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                 高山チャンプも学生に混じってバッグ打ち

 名門と言われた近畿大学ボクシング部は2009年に所属部員が路上強盗で逮捕されると言う不祥事で一度廃部になりましたが、部員やOBの地道な活動・嘆願によって2012年に赤井秀和総監督という新体制で復活し、この春からは元WBAスーパーフライ級チャンピオン名城信夫さんをヘッドコーチに迎えています。名城コーチにご挨拶をさせて頂いて少しお話を伺いました。

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                      名城信夫ヘッドコーチ

HB「ヘッドコーチと言うことですが練習は毎日見ておられるんですか?」

名城「毎日見てます」

HB「アマの指導者になられると言う選択には驚いたのですが」

名城「前々からやりたい、これしかないと思っていたので」

HB「アマチュアの指導者になりたかったということですか?」

名城「いやアマチュアとかじゃなく、ボクシングを教えることがしたかったということです」

HB「ボクシングを教えたいと思っていたところにOBだった近大さんから話があったと」

名城「そういう感じです」

HB[「コーチに就任された時の報道で『その人に合わせた指導がしたい』と言っておられましたが?」

名城「画一的な指導じゃなくそれぞれの人の個性に合わせた指導をしていきたいです」

HB「世界チャンピオンだった人が大学のボクシング部のコーチになると言う選択はファンとして名城さんらしいな、ぴったりだなと思いました」

名城「そうですか。ありがとうございます」

とファン丸出しで色々伺いましたが、お忙しい中お答え頂きありがとうございました名城コーチ!

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                 熱血指導中の名城コーチ

 本日の高山選手のスパーリングは三人のパートナー相手に8ラウンド。最後の一人が小野選手と同じサウスポーとなります。学生達にとっては世界チャンピオンに胸を借りるまたとないチャンスとあって気合充分にチャンピオンに挑みます。
 青年監督の浅井さんが高山コーナーに来て「もっと攻めてくれていいですよ!」と要望し、学生たちには鬼の形相で「弱気になるな!」と発破を飛ばせば、名城コーチは学生がいいパンチを入れればセコンドから積極的に「いいねー」と声をかけて選手を鼓舞。プロのジムとはちょっと違うこの部活感が新鮮、なんですが学生選手はスピードがあってパンチも正確で実力はほんと侮れない。
 最後にリングに上がったサウスポーの選手はトリッキーな動きと独特の当て勘を持っている好選手。意外なアングルからパンチを出してくるアマらしからぬ曲者タイプで、仮想小野にはうってつけか?打たれてもひるまない気の強さもあるし、サイドへの俊敏な動きやタイミングの良いアッパーもいい。
 ただフレッシュな状態では打ち合えていてもラウンドを重ねれば高山選手のプレッシャーに飲み込まれて、最後は失速。ロープに詰めてのボディ打ちで手数も止まってしまう。リングを降りた彼の口からは「プレッシャーが凄くて体力がどんどん減っていく」と言う感想が漏れました。

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 スパー終えた高山選手はパートナーを勤めた三人に感想も交えて技術指導した後は、縄跳びの跳び方から教わっているような初心者の新入生にジャブやワンツーの打ち方を懇切丁寧に教えたりと部活に積極参加。
 学生に溶け込みすぎて、終礼の円陣ではちゃんと並んでるのにコーチから「高山チャンピオンはどこ行ったんや?」と探されると言うプチハプニングも起きました。
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           高山チャンプが初心者部員にジャブ・ワンツーをコーチする一幕も

 プロアマの関係が決して良いとはいえない日本ボクシング界ではありますが、東京五輪もあることですしお互いわだかまりを捨てて大同団結して欲しいと願わずにはいられません。現場レベルでの人的な交流はもはや規制のしようがないわけですからね。
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                 豪華な2ショット

 帰りは高山選手も同乗した車でさらにお話を伺いました。

HB「昨年末の試合(シルバノ戦)ですが、ご本人の評価はどうですか?」

高山「(かなり長く考えて)あそこまで押してたんやから倒したかったなと…」

HB「僕らもそういう感想を中出さんにメールで送ったんですけど、そしたら中出さんから『厳しいなあ』と。『八分の力で怪我もせず完勝したと言うところを評価して欲しい』と言われて。確かにそう言う視点はなかったなあと思いました」

中出「怪我しないで明確に勝つことがテーマやったからあれはあれでいいんですよ。1Rにビッグパンチ当てたことで相手が一気に消極的になったのもあったし…。やっぱりファンには技術をもっと見て欲しいんですよ。防御とか駆け引きも楽しんで欲しいというか」

HB「『KOなら良い試合』という価値観は確かに違いますよね」


この日の前日に朝のワイドショーで紹介された高校入学についても質問してみました

HB「高校入学と言うニュースには大変驚きました。名城さんの大学コーチ就任と併せて『関西のボクサーの動きは予測がつかんな』と」

高山「みんなそれぞれ自由にやってていいでしょ(笑)」

HB「ブレザー姿で完全に溶け込んでましたね」

高山「今日も学生に溶け込みすぎてコーチに見失われましたけど(笑)」

HB「もともと学業をしたいという志向はあったんですか?」

高山「二十歳のころは定時制や通信制の高校を探したこともあったんです。ただ試合が決まっていくし、なかなか予定が立たない仕事ですから難しくて」

HB「菊華高校は全日制ですか?」

高山「そうです。スポーツアクトコースというのがあってそれやったら通えるかなと」

HB「どういう経緯で入学が決まったんですか?」

高山「それは山口賢一さん(インタビュー参照→こちら)がその高校のボクシング部の顧問になると言う話を聞いて『自分も勉強したいから』ということでお願いして…」

HB「じゃ山口さんが発端なんですね」

中出「野球部と一緒に練習したり昔から交流がある学校なんですよ」

HB「ちなみに中学までは勉強は好きだったんですか?」

高山「そんなもん大嫌いですよ(笑)」

中出「俺は『勉強せい!勉強せい!』て言ってたんですけど、全然せえへんかった(笑)」
  
HB「今日も学生に指導してましたが教えるのは好きですか?」

高山「いや、なんかそういうわけではないんですけど…」

HB「『教員免許を取って指導者になりたい』と言うコメントを報道で読みましたけど」

高山「それね…僕言ってないんですよ」

HB「そうなんですか?」

高山「なんか僕の引退後とかを考えて学校の人が提案として言ってくれたことがいつの間にか僕が言ったことになってて…。まだ高校に入ったとこで教員免許とかそんな先のことは…。こういう仕事だから何があるか分からないですし」

中出「マスコミの人ってウケる方向に話を持って行きたがる傾向はあるからな。中田とか野茂みたいな考え方のぶれへん選手は、本人の想いと違ったニュアンスで報道されたりとかもあったし、正確に伝える必要あるわな」

 というわけで高山選手はまずは高校卒業を目標に頑張っていかれる由、了解致しました!

HB「今日初心者の新入生にジャブとかワンツーの打ち方教えてましたけど、高山さんって人に対してフラットですよね」

高山「それは自分が海外で一人の時があったからだと思います。彼らもね今日むっちゃ居場所が無くて暇やったと思うんですよ。自分もスパー終わって時間あったから、そやったら一緒になんかやろかというだけなんです」

HB「新入生で世界チャンピオンから直接ワンツー習えることなんかなかなかないですよ」

高山「初心者の時ってね自分がやってることの意味が分からないんですよ。だから今やってる練習はこういう意味があってって教えてあげることで少しでもやる気が出たらええなと思って」

お疲れのところ色々な話を聞かせていただきありがとうございました。関西は世界戦の興行が続きますが、高山選手にはインパクトのある勝利を期待したいと思います。

 近畿大学の皆様大変お世話になりました(旧徳山と長谷川が好きです)

イズム全開 山口賢一インタビュー&スパーリングレポートpart3

イズム全開 山口賢一インタビュー&スパーリングレポートPart1は→こちらから
イズム全開 山口賢一インタビュー&スパーリングレポートPart2は→こちらから

 神のイタズラのような偶然の助けもあって、念願の世界戦にたどり着いた山口選手。
 
 それまで長谷川、名城、粟生、山中、下田等々国内の様々なワールドクラスの選手とスパーリングしても『これはどうにもならんな』と思ったことは一度も無かったという山口選手をして、『殺される』と思わせたサリド。そのサリドと実際グローブを合わせた時、彼は何を思ったのでしょうか?

Ⅶ.甲子園のライトスタンドの中での試合

山口「自分の親にも『まあ、6Rまでは最低持てよ』って言われとったからね、6R終わったときにヨッシャーってなって。オヤジが言うてたんよりまだいけるわと」

HB「半分は行けと。それは逆に発奮して良かったですね」

山口「まあ色んな要素ありますわ。元おったジムにとっても出たやつが世界タイトルやれば顔が立つじゃないですか。それまでは『お前アホやな。そのまま辞めんとおったら日本タイトル、東洋タイトル出来たのにって』言われてましたよ。でもあのままおったらあそこで世界戦は絶対出来てなかったと思います」

HB「実際サリドと戦ってみたらyoutubeで見てたのとどれくらい開きがありました?」

山口「いろんな記者とかにも『どうでした?』って聞かれたんですけど、『いや思ったより弱かったですよ』って言うて。それ言うたら絶対爆笑されるんですけど。こっちは『殺される』と思ってましたからね」

HB「メキシコの雰囲気は異様と言う話でしたが、フィリピンやオーストラリアとも違うわけですか?」

山口「それはもう全然違います。控え室におる時から地面が震えるくらいの声援なんですよ。言うたら甲子園のライトスタンドの真ん中で試合してるようなもんです」

地鳴りのような声援が響くアウェイの地でリングに上がった山口選手は1Rからカエル跳びを出すなど奮闘、3Rに嵐のような連打を受けてダウンを取られつつも、そこから持ち直して11Rまで粘りましたが、そこでまたも連打を浴びてストップ負けとなりました。サリドとすればファンマとのリマッチの前に調整もかねて地元で顔見世試合でもこなしておこうという試合であり、対戦相手の山口は下の階級のKO勝ちも少ない選手で、しかも準備期間は10日足らず。まさか11Rまでやることになるとは思っていなかったでしょう。

山口「どうやったらパンチ当たるかなあと思って考えたんが、カエル跳びやったんですよ。それで練習して」

HB「練習したんですか?」

山口「練習してたら段々当たるようになってくるんですよ」

この試合の契約書には勝者が次戦でファンマ・ロペスと戦うという条項も盛り込まれていた

山口「勝った時のファンマとの試合のファイトマネーが契約書に書いてあって見たら、200万ドルですよ。『凄いなー二億やで。宝くじみたいなもんやな』とか言ってたんですけど、負けた後に『やっぱり二億は無理やったな。でもエエ夢見たわ』って言うて」

HB「でも二億に指の先くらいはかかったということですね」

山口「そう。目の前まで行ったんですよ」



カエル跳びは9分35秒付近です!

Ⅷ.恐怖の入院体験とカルデロンのもてなし

山口「僕は海外の方がなんか力が全部出せるんですよね」

HB「水があってるということですかね」

山口「まあ向き不向きはあるでしょうね。でも海外でおるとやっぱり色々ありますわ」

とここからは面白いでは済まされない針の振り切れた海外体験エピソードへ

山口「オーストラリアのパースでの試合でまぶたが結構大きく切れて、試合の後病院に行ったんですよ。そしたら『その日は手術できる医者がおらんから、明日来るから今晩一晩入院してくれ』って言われて。付き添いの人は祝勝会に行くって言うて帰ってもうて一人にされて」

HB「勝った当人がいない状態で祝勝会(笑)」

山口「まあそれは怪我したから仕方が無いんで、出てくる書類に色々サインして。そん時に向こうが英語でなんか説明してたんですけど、分からんから「オッケーオッケー」言うて。それでここで寝てくださいて言うベッドに連れて行かれて『もうはよ寝よ』て言う感じで横になったんですよ。でもなんかなかなか寝付かれへんで起きてたら、真夜中にいきなり横のベッドにおったオバハンが『ギャー!』って叫びだして」

HB「急変ですか?」

山口「こっちは怖いから慌てて呼び出しのボタンあるじゃないですか、あれ押して。そしたら看護師が何人も飛んできたから、こっちは身振り手振りで『この人が叫んでる!』って説明するんやけど、なぜか看護師は全員でこっちを押さえこんでくるんですよ!『違う!違う!俺やない!』って言うても言葉通じへんし」

HB「錯乱してると思われたんですか?」

山口「後で聞いたらそこは精神科の病棟で、さっきの長かった説明はどうも『今日の夜は精神科のベッドしか空いてないけどそこでええか?』って聞いてたみたいで」

結局恐怖の中で一夜を過ごした山口選手は翌朝やっと縫合手術を受けられたのですが…

山口「麻酔が全身麻酔やったんですよ」

HB「まぶた縫うだけで全身麻酔ですか?」

山口「そんなんもこっちは知らんから、マスクつけたら意識がなくなって、起きたらもういきなり手術が終わってるんですよ」

HB「それも怖いですね」

山口「でもオーストラリアの医者ってすごい大雑把で、鏡見たら凄い適当に縫ってて眉毛がズレて段違いになってるんですよ!」

HB「(爆笑)」

山口「ホンマはもう二、三日入院していけって言われたんやけど『イヤや』って言うてすぐ帰って日本の医者で縫い直しましたけどね」

HB「そういう話は沢山ありそうですね」

山口「そうそう、プエルトリコ行った時にねカルデロン(ミニマム・ライトフライ二階級王者)の家でメシ食ってたんですよ。そん時にあっちが色々話しかけてくるんやけど、でも向こうはスペイン語でしょ。なかなか話してることが分からへんのですわ。そしたら片言の英語で話してきて、どうも『トゥモローは何がエエ?』みたいなことを聞いてるみたいなんですわ。『明日のメシは何がいい?』って言うことやろと思って、魚が食いたかったから『フィッシュやフィッシュや』って言うたんですけど『フィッシュ』が通じへんのですよ。で、こう(体をクネクネさせて)魚が泳ぐマネとかしたら、カルデロンが『オー』言うて、こう釣竿持ってリールを巻く仕草をして」

HB「やっと通じた」

山口「でその場は分かった分かった言うことになってその晩は寝て、次の日の朝の6時くらいにいきなり部屋のドアが開いて見知らぬオッサンが入ってきたんですよ」

HB「いきなりですか?」

山口「で『一緒に来い』って言われるまま車に乗せられて。『なんやこれ、このままさらわれるちゃうか?』って不安になってたら、海辺に連れて行かれて、そのままそのプエルトリコ人の初対面のオッサンと二人で釣りですよ」

 どうもカルデロンは前夜の会話で『ヤマグチは釣りに行きたがっている』と勘違いしたらしく、知人に釣りに連れて行くように頼んでくれたらしい

HB「カルデロンは?」

山口「おらんのですよ!しゃあないから見ず知らずのプエルトリコのオッサンと二人で釣りすることになって」

HB「釣れました?(笑)」

山口「それが全然釣れんのですよ。こんなちっさいフグみたいなんが一匹釣れただけで」

HB「ボウズみたいなもんですね」

山口「そのオッサンに『ここは場所が悪いから昼から場所を変えよう』って言われたけど、さすがに断って午前中で帰ってきました(笑)」

うーん第三回でも終わらない。というわけで次回最終回です!

山口選手の連載が好評で嬉しい(旧徳山と長谷川が好きです)

大阪城ホールで考えたこと

 チケットは完売との煽りもありましたが蓋を開けてみたら結構空席もあったこの日の大阪城ホール。ボクシングに不向きで使用料も高いこんな会場わざわざ使わんでもええのになあとも思いますが、まあそりゃやる方の勝手ですね、そうですねすいません。会場内に入ると白い法被を着た山中応援団の善男善女の皆様の姿がとてもよく目立ちます。地元への凱旋(まあ滋賀なんですけど)ということでファンの側も気合が入っています。地べたで酒盛りしてたりする長閑な感じも、ボクシング会場らしくなくなんだかほっとしてきます。
 
 この日は撮影禁止ということで画像もありません。しかし今日日撮影禁止ってねえ。最近は外タレのライブなんか動画も写真も撮り放題、録音もし放題なんですけどね。

 スタンドに入ると丁度粟生選手の名前がコールされているところ。対戦相手はマルコ・アントニオ・ロペスというパッと見には名チャンピオンみたいな名前の人で、パンフレットによると23勝3敗とのことですが、かなりモッサリした選手。「この戦跡ホンマかいな」と思いつつ観戦するが、粟生が一方的に攻撃するもののロペスは打たれ強くダウンを奪えない。結局さしたる起伏も無いままゴングで3-0粟生。ただジャッジの原田さんが1ポイント差だったのは一体…。東京のボクサーに関西ジャッジがアウェイの洗礼を浴びせたのでしょうか?一体何の意味が…。

 なんとそこからいきなり長谷川の世界戦。まだ6時半だよ。ド平日なんだからまだ間に合ってない人もいるでしょうに。7時から生中継じゃダメなのかなあ…。まあ私は間に合ってるからいいんですけどね…。

 会場が暗くなってリングアナに呼び込まれた長谷川は、すぐに花道に登場。最近テーマ曲がJポップみたいになったのが不満だったのですが、歩いている長谷川を見ているとなぜか涙が溢れて来ました。これは自分でも全く予想外でした。ブルゴス戦でバーンアウトして、それ以降は抜け殻のようだったという長谷川。もうあの高速連打や自在なフットワーク、神がかりなタイミングの打ち抜くカウンターが戻ってくることはないのか?メカ二クスが狂っているのか?モチベーションが上がらないのか?フィジカルが衰えたのか?

 試合前の調整時や記者会見の時の様子も、念願の世界戦のはずなのにどこか達観したような雰囲気でどうにも覇気が感じられないし、コメントも「僕自身が納得いく試合をする」という非常に精神的なもの。そして試合翌日の長谷川選手のお父上の「前日電話で話したときに息子は呂律が回っていなかった」というコメントも併せても、最初から12R戦える状態ではなかったのではないか?と言う疑念が浮かびます。

 実際の試合も1ラウンドは全盛時の動きを彷彿とさせたものの、2R早々には足が止まり打ち合いに付き合うしかない状況になってしまう。ダウンシーンもサイドに逃げないのが不可解でしたが、あれは「ムキになって打ち合った」というより、単に「体調が悪く足が動かなかった」だけなのではないか?と思えました。あるいはもはや以前のような勝利への意欲が無かったのか?その後も打ち合いの中で時折鋭いカウンターやハンドスピードに溢れる連打は見せるものの(ボディは効いていたと思います)、余りにも足が動かない。これだと必然、打ち合いの中で一発にかける確率の低い玉砕戦法になってしまわざるをえません。実際、眼窩底と鼻骨を骨折していたと言う事実を見ても長谷川が払った代償は明らかです。

 試合前に様々な方に勝敗予想を聞きましたが、やはり皆さん一様に「打ち合いに付き合わず、スピードを生かしてボクシングすること」を勝利の条件に挙げておられました。私もそうでした。ところが試合は序盤から全く別の展開で長谷川は分の悪い打ち合いの中でマルチネスの重いパンチを浴び続けて消耗し、最後は崩れるように倒れました。

 会場からは暖かい拍手が起こり「ありがとう」と言う声援が飛び交いました。自分はなぜか「ありがとう」と言う気分にはなりませんでした。うーん「ありがとう」か?「お疲れ様」も違うな?なんだろうこの感じ?枯れ切った長谷川の佇まいにただただ戸惑いました。

 長谷川との二戦目に敗れたウイラポンが人目もはばからず号泣しているのを見たとき、いつも冷静沈着で無表情で『デスマスク』と呼ばれた男がこんな風に泣くんだなと驚いたことを思い出しました。ウイラポンはデスマスクの下にこんな熱情を持っていたんだなとあの時感じたように、長谷川は即興的で華麗なスタイルだったけどこういう玉砕覚悟の狂気を秘めていたんだなと思い至ったといいますか。

 長谷川はかつて自身にとってのボクシングの定義を聞かれて「大人になってからも続いている青春だ」と答えていました。その言葉通り彼は老成を拒否して自身のスタイルに殉じたのかもしれません。まあこれもちょっと精神的に捕らえすぎかも知れませんね。頭でっかちなんですいません。

 自分は全盛期の長谷川選手の試合を会場で沢山見ました。2009年は三回神戸の会場に通ってうち二回が1RKO、合計6Rしか見れなかったもんなあ。ハンドスピードが速すぎて肉眼で見えず、会場のモニターでコンビネーションの確認をしたもんでした。

 ジョニゴン戦は津波の後の復旧作業で仙台空港に行った後天童市のホテルのテレビで見て、KOがショックで自棄酒して夜中に三回吐いたなあ。と自分のことも色々思い出しました。

 長谷川選手はまずは怪我を治して、それからゆっくりと心のままに生きて頂きたいと思います。

 青春が終わった後はどういう大人になるのでしょうか?

 山中選手の衝撃的な勝利はさながら世代交代を思わせましたが、実は長谷川と二歳しか違わないですよね。しかしパンチであんな風に人が吹っ飛ぶとは。気孔のデモンストレーションみたいでした。まさしく規格外。今回はジャモエ君が単調すぎて引き出しを開ける必要が無いという感じでしたが、もう少し本気にさせる相手との試合が次は見たいですね。日本人なら岩佐か和気で。

 余談ですが「前戦負けたジャモエが3位っておかしくない?」という声が複数の方からありました。私もそう思いました。ホンマランキングっていい加減ですね。

 ところで真正ジムは大場、長谷川と連敗しキツイ状況になって来ましたね。これって帝拳の毒見役としてIBFの試合を連戦した帰結だと言うのはうがち過ぎでしょうか?

 帝拳本体はあくまでWBCで、マカオなどではWBOも触り、傭兵のロマゴンはWBA、村田は三迫をトンネル会社にしてトップランクともパイプを保持、そしてIBFは真正ジムに一回やらせて見て…とまさに全方位外交じゃないの。この寡占状態は果たして業界にとって良いことなのでしょうか?他のプロモーターの皆様の奮起を…とかそういう次元もとうのとっくに超えてる感じですね。

 観戦後まる徳に行ったら徳山さんはおらずガッカリしてたら、辰吉さんが焼肉食ってて嬉しかった(旧徳山と長谷川が好きです)

イズム全開 山口賢一インタビュー&スパーリングレポートPart2 


 イズム全開 山口賢一インタビュー&スパーリングレポートPart1は→こちら

 シドニーでのビリー・ディブ戦は一旦山口選手のTKO負けが宣されましたが、フィニッシュは明らかにダウン後の加撃であり、テレビ中継されたこともあって裁定への批判が起こります。当時山口選手はオーストラリア現地で「亀田との第一戦のランダエタ状態」だったという報道もあり(Box-On2009年7月17日の記事)大いに話題を集めたであろうことが伺えます。その後山口サイドの正式な抗議を受けて裁定が覆り、山口選手の海外初戦は勝敗なしのノーコンテストとなりました。この騒動で注目が集まったことですぐに次戦のチャンスが訪れます。ディブ戦から4ヵ月後の11月にオーストラリアのパースでロベルト・レリオ(オーストラリア)と対戦した山口選手は判定勝利し、WBOの地域タイトルを獲得。世界戦への足がかりを掴みました。

 当時JBCライセンスを返上して引退状態にあった高山勝成選手がこの試合を現地観戦をしたことで海外進出を決意したという意味でもエポックな試合でありました。

  いよいよ運命の世界戦へ。その道のりはまさにヤマケンイズム全開の珍道中でありました。

Ⅳ 高山勝成がベルトを踏んで世界戦へ?

山口「セブで試合した時にね(2011年3月のマージョン・ヤップ戦)セコンドにおった高山がWBOの地域タイトルのベルト踏んで潰しよったんですよ!」

HB「踏んだ?どうして?」

山口「なんか知らんけど下に置いてたのをリングから降りる時にバリーンって踏んだみたいなんですよ。で試合終わってベルト見たら(表面の装飾が)粉々になってるんですよ」

HB「粉々(笑)」

山口「おいー!思たけど、勝ってるしまあ仕方ないエエかちゅうことで、WBOアジアの人に『修理してくれ』って頼んだんですよ。英語できる人にやりとり頼んでたんですけど、それがちょっとややこしいことになって、修理代が5万やなんやから始まって、送ってんのに届けへんやら、いや領収書あるぞとかのやりとりの合間にいきなり『世界タイトルあるけどやるか?』ってメールが来て」

HB「じゃ高山選手がベルトを踏んだからオファーがあったんですか?」

山口「そう!あれのおかげで話が来たと思いますよ」

HB「イイ話ですね」

山口「だから後から高山に『お前のおかげで世界戦できたわ』って。でも全部つながってるんですよ。アイツそれでメキシコ行ったからメキシコの雰囲気が分かってね。最初はテンパってましたから。でも一回メキシコ行ってるから現地の雰囲気分かってるからね。自分の世界戦の時はイメージできてるから楽やった思いますよ」

Ⅴ.『死んだらゴメンな』

ベルト修理の為のメールのやり取りの過程で偶然舞い込んで来たのはオルランド・サリドとの対戦オファーだった。

山口「その知らせ聞いたのが試合の10日前くらいですわ。僕その時ラーメン食ってビール飲んでましたからね」

HB「(爆笑)」

山口「でその話聞いた時に『サリド?知らんな~?誰や?』ってなったんですけど」

HB「ディブの時と一緒ですね(笑)」

山口「『まあエエわ、世界タイトルやろ?やるわやるわ!』ってそんなノリですよ。でラーメン屋に『世界タイトル決まりそうやし取り敢えず練習してくるわ』言うてすぐ走りに行ったんですよ。ほんで大阪城公園一時間くらい走って家かえって、『えーと確かサリドやったかな』ってYOUTUBEで調べたら、オイめっちゃ強いやないかコイツ!ファンマにこないだ勝ってる奴やんけ!なんじゃこりゃ!これホンマもんや!って」

HB「ホンマもん!(笑)」

山口「これは強いわと思いましたからね。一瞬、『試合潰れへんかな~』ってなりました。で嫁に初めて『俺死ぬかも分からんけど死んだらゴメンな』って」

HB「謝られても(笑)」

山口「二日くらい寝られんかったですよ」


Ⅵ.『メキシコにカンチョーは無かった』

メキシコ現地でも『楽しむだけ』という姿勢で徹底的に自由に振舞うヤマケンがスターボクサーに恐るべき狼藉を!その真相とは?!
 
山口「公開計量であっち側にサリドがおって、で体重計があって、こっちに僕がおってカメラマンが撮影しとったんですよ。そしたらそこにファンマ(ロペス)がパーって入ってきて。アイツ、サリドには挨拶して僕には挨拶せんと僕の前に立って手振ってるんですよ。そしたら僕はカメラもテレビも写らんじゃないですか。だからちょっと向こう行けよと思とったんですよ」

二階級を制したスター、ファンマ・ロペスはこの試合の勝者と対戦する契約になっていた

山口「中出さん(このとき帯同していた、高山勝成のマネージャー兼トレーナー中出博啓氏)が横におったから『コイツ邪魔ですわ~。僕テレビ全然写りませんやん。コイツにカンチョーしていいですか?』って言うたら『おう、出来るもんならやってみろや』みたいな感じやったら『分かりました~』いうてカンチョーしたら、ファンマが『オマエなんしとんじゃ~コラ~!」いう感じでエラい勢いで怒り出して。あれ多分メキシコにはああいうねカンチョーっていうものがないんですよ」

HB「メキシコにはカンチョーが無い!(爆笑)」

山口「中出さんの方パッと見たら全然違うとこ見てて助けてくれへんし」

HB「助けようがないでしょ(笑)」

山口「トップランクの人がブワーって走ってきて『アカン!アカン!』って止められて。でも会場におった人は全員大爆笑ですよ。ブワーって笑いが起きたんでそん時に『あ、カンチョーって世界共通やな』って思ってそれからメキシコではカンチョーしまくってましたからね」

HB「味をしめて(笑)」

山口「いけるな~思って。あとプレスが顔近づけてメンチ切ってくれって言うじゃないですか」

HB「フェイスオフですね」

山口「そん時に後ろにめちゃくちゃ可愛いラウンドガールがおったから、パッと振り向いてチューしようとしたりね、あとサリドがベルト持ってるのを記者が写真撮影してたから横に行ってベルト引っ張って取ろうとしたりしてね」

HB「その時のサリドはどういう感じなんですか?」

山口「『なんやねんコイツ!』みたいな感じですよ。でも最後はとらせてくれて。『よっしゃー取ったったー』ってやってね」

HB「エエ人じゃないですか」

山口「エエ奴です。でもそん時はなんか苦笑いしてましたわ」

HB「苦笑い(笑)」

山口「ちょっとして、僕のこと知ってる日本人の人がサリドに会った時に『山口どうやった?』って聞いたらサリドが『アイツはロコ(loco)や!』って言ってたらしいですわ。ロコってどういう意味やって聞いたらスペイン語で『キ○ガイ』のことやでって。」

HB「でも印象に残ってるのはいいことですよね」

というわけでとても二回では収まらないので第三回に続きます

大阪城ホールで長谷川選手の入場に感涙した(旧徳山と長谷川が好きです)

やりきった  ―長谷川穂積の戦い―

20140423 長谷川穂積
◆IBF世界Sバンタム級タイトルマッチ  20140423◆
 キコ・マルチネス vs 長谷川穂積

6R終了後のインターバルで、山下会長が「足使わんでいい、中入っていい」とアドバイスするのを聞いて、長谷川は足が使えないのだと思った。

7R、ストップしたレフェリーに安堵のまじった笑みを見せた時、こみあげるものがあった。

ダウンをとられた後の数Rは、かつての攻防兼備のボクシングを見せてくれた。相手の呼吸を読んだ当意即妙の動きを見せてくれた。

しかし続かなかった。

試合の組み立てができていなかった。

……

燃え尽きた。

しかし、これほどきれいに完全燃焼できたボクサーはいただろうか。

素晴らしいものを見せてくれた長谷川穂積に言うべき言葉は一つしかない。

ありがとう。

この日の戦いをもって、長谷川穂積は私にとって尊敬すべきボクサーになった。


by いやまじで

PS 報道によれば眼窩底骨折と鼻骨骨折とのこと。お大事になさってください。

イズム全開 山口賢一インタビュー&スパーリングレポートPart1

 ボクサーの生き方はボクサーの数だけあると思いますが、私の地元大阪に日本の中では飛びぬけて例外的なライフスタイルで生きている山口賢一というボクサーがいます。彼は現役選手でありながら、ジムのオーナーと言う経営者でもあり、自分自身とジムに所属する選手のトレーナー・マネージャーでもあり、興行を行うプロモーターでもあります。2009年に日本国内でのプロボクサーライセンスを返上したあとは、オファーがあればどこにでも出向くと言うスタイルでオーストラリア、フィリピン、メキシコと海外で地域タイトルマッチや世界タイトルマッチを戦って来ました。

 5月10日にフィリピンでのWBOアジアパシフィックのスーパーバンタム級タイトルマッチが決まり、調整のピッチも上がる山口選手。氏が経営する大阪天神ジムにお邪魔してスパーリングを見学させて頂き、その後色々とお話を伺って来ました。いかにしてこの個性的なボクサーが生まれたのか?その来歴は、日本のボクシングにとっても多くのヒントを含んでいると思います。

 山口選手がオーナーを勤める大阪天神ジムは大阪駅から環状線で一駅の天満駅前。飲食店が軒を連ねる路地を抜けて公設市場の二階に上がるというアクセス経路は、減量中のボクサーにとっては地獄の道のりでありましょう。

                  ジム風景
                    トレーニング機材も充実している天神ジム
                 

                  市場
   ジムの一階は安くて新鮮な魚や野菜が揃う市場 筆者も独身時代は近所に住んでてお世話になりました




 開始時間の少し前にジムに到着し、階下の青果店で買った陣中見舞いのバナナを手渡すと「バナナですか!すいません。フィリピン行ったら『嫌がらせか!』言うくらい貰えるんですけどね」と快活に笑う山口選手。

 この日は次戦の対戦相手を想定して、パートナーにサウスポー三人をそろえた8Rのスパーリング。スイッチも交えながら隙あらば強打を叩き込もうという変則的かつアグレッシブなファイトスタイルは、アウェイでの戦いを通して鍛えられた戦法なのだろうなあと感じました。

スパーリング3スパーリング2



 最後のパートナーを勤めた石角悠起選手は天神ジムの所属選手でタイのラジャダムナンスタジアムのスーパーフェザー級チャンピオン。若い所属選手達も中国やタイといった海外で積極的にローカルタイトルや下部タイトルに挑戦しています。良い悪いでなく、現実としてJBCに加盟しているジムとは明らかに違うカルチャーを持ったジムが存在し、プロボクサーを生んでいるという事実を読者の皆様はどう感じられるでしょうか?

                     石角選手


 スパーリング終了後「ゆっくり話せるところがええでしょ」と誘われるまま、ジムの近くのレストランに移動すると、山口選手はテーブルの上にファイルを開いて何やらメモ書きをチェックし記入していく。練習前に課題を書き出したメモ書きを練習後チェックしてファイルに書き込んでいくというこの方法で試合に向けた調整を行っているそうです。
山口賢二 近影 メモ

目が開いている画像がありませんでいた 山口さんスイマセン   『企業秘密』だというメモ

Ⅰ.ボクサー、トレーナー、マネージャー、経営者

HB「毎日そうやって自分でチェックしているんですか?」

山口「スパーリングの動画も撮ってるのでそれも後でチェックします」

HB「山口さんはまずファイターであると同時に自分自身のトレーナーでもあり、また自分を売り込んで試合を決めていくマネージャーでもあり、自分が練習するジムのオーナーでもあり、所属選手にとってのマネージャーでもあります。こういう何でも自分でやると言うスタイルは昔から志向があったのですか?」

山口「ないですないです。それはホンマ手さぐりで自然にですよ」

HB「次々起こることに対応してたら今の形になったという感じですか?」

山口「僕は世界チャンピオンなりたいだけで、ジムの会長なんかホンマは今もしたくないんです。でも世界タイトルマッチしようと思たらお金いるでしょ?その為にはジムの経営せなアカンのです。
 例えばスポンサー集めようと思って企業行っても、ジムやってなかったら社長と社長の話が出来ないんですよ。『お金出すのはええけどこっちになんのメリットあるねん』って言われたら、じゃあなたのところの従業員の方は自由にジム使ってもらっていいですとか提案が出来る。あと興行するときにコーナーポストに広告出しますわとか。」

HB「話してみて『キミも経営者として苦労しとるねんな』と思ってもらえたら通じ合えるものもあるでしょうね」

山口「そういうこともありますね。あとジムの会員さんですよね。自分にとったらジムの会員さんが個人のスポンサーみたいなもんです。月謝払うことでスポンサーになる」

HB「チケット買ったり、祝儀渡したりという関係とは違うスポンサーですね」

山口「よく『応援したいけど何やったらええねん』って逆に聞かれるんですよ。そういう時は『ジム来てください』て言うんです」

HB「ジムに通って、尚且つタイトルマッチするようなボクサーの応援を通して日常で出来ないような面白い体験も出来ると」

山口「会員さんのミット持ったりして関わっていくことで、自然と『応援しようか』ってなるんですよ。試合の時だけ『応援してください』『チケット買って下さい』っていうのとは違うお互いにメリットがある関係を作れるんです」

HB「普段から人間関係があってその延長でって言う形ですよね」

山口「本来それが自然ですよね。でもそれって狙ってやったわけじゃなくて、全部ジムをやってみてあとから分かったことです」
  
話はプロ意識に及ぶ

山口「今のJBCのルールでプロや言うてもみんなアルバイトしてるでしょ?でも僕はボクシングだけで食べてる。これがホンマのプロボクサーやと思います。」

HB「どうやってボクシングだけで生活するかを考えた結果こうなったと。」

山口「そういうことです。海外行って見て分かったのは、みんな自分で考えてますわ。パッキャオでもね、ローチじゃないんです。ローチは雇われてる立場なんです。パッキャオ本人が頭ええんです」

HB「選手本人が自分をどういう風に見せて高く売るかを考えてるということですか?」

山口「それが世界では普通なんです。プエルトリコでカルデロン(ミニマム、ライトフライで二階級制覇)にも会いましたけど、あいつも自分でトレーナーとかスタッフ雇ってやってますからね。『ファイトマネーなんぼやねん?』って聞いたら十何回防衛して一番ええ時ミニマムやのに二億ですよ!」

Ⅱ.会長室で「やめますわ」

HB「もともとは関西では大きなジムにいましたよね?なんで辞めたんですか」

山口「僕ずーっと日本タイトルマッチがやりたくて、会長に言うとったんですよ。でも僕がいたところってとにかく年功序列で、古いもんから順番なんですわ。それと池原さん、国重さん、中村さん、福山さん、みんな一位になっての指名試合でしょ。要するに選択試合で金使いたくないんですよ」

HB「自分は2008年に名古屋で大場浩平と三谷将之の日本タイトルマッチ見に行ってたんですけど、あの時『この試合の勝者に山口賢一選手から挑戦状が届いています』っていうアナウンスがあって、リングにも上がってましたよね?」

山口「あれ見に行ってたんですか。三谷とは何回もスパーリングしてて自信あったし、勝ったほうとやりたいってアピールしに行ったんですよ。でもあれ挑戦状の挑の字の手偏と木偏間違えて『ももせんじょう(桃戦状)』ってなってたんですよ(笑)。ネタやなくて本気で間違えててあれは泣きそうなりましたわ。あれリングに勝手に上がったんですよね」

HB「そうなんですか?よく上げてくれましたね」

山口「自分のジムにも何にも言わんと行ってたから、あとで会長からメチャクチャ怒られましたわ」

HB「結局挑戦できなかったですね」

山口「出来なかった。それで会長に『それやったら最強後楽園に出してくれ』って言うて、そしたら『分かった』って言うたから、こっちは気合入れようと思ってセブ島に練習行ったんです。それで帰ってきてみたら、自分の名前が最強後楽園じゃなくて自分とこの興行の予定に書いてあるんですよ。」

HB「最強後楽園にはエントリーは…」

山口「してなかった。会長に聞いたら『いやお前には声かからんかったで』とかなんかわけの分からんこと言うてて。僕は最強後楽園は自分からエントリーせな出られへんって、選手を出したことがあるジムの会長から聞いて知ってたからなんやこれ?ってなって。結局ね僕が結構チケット売るんで、会長にしたら自分とこの興行に出したいんですよ」

HB「最強後楽園とか出られてもジムに旨みが無いと…」

山口「昔からずっとそうなんですよ。日本ランカーとやる時は『50万チケット売ったらやらせたる』東洋ランカーのタイのチャンピオンの時は『150万売ったらやらしたる』。売りましたけどね。
 『次勝ったら日本タイトルや』ってジムの会長の言うてるのを信じて、僕の後援会長も頑張ってチケット売ってくれてたんですけど、さすがにそう言い続けて二年くらい経ってるしチケット買ってくれてる人からも「いつまで経ってもタイトルマッチやれへんやん。話が違う」っていう感じでプレッシャーかかって来るしで…。それで後援会長が『ジムの会長と話する』っていうて直談判に行ったんですけど、会長室から出てきたら泣きそうな顔で僕のとこ来て、話聞いたらジムの会長は『俺そんなこと言うたかな?』ってとぼけてて全然やる気ないんですよ。そんな風に後援会長が俺のせいで悪者みたいになるのはひどいし、それですぐ会長の部屋行って『いやもうタイトルマッチできへんのやったらやめますわ~』っていうてその場で辞めたんですよ」

HB「いきなりですか?」

山口「いきなり」

HB「引き止められなかったんですか?」

山口「別に…。トレーナーとかはちょっと止めてくれましたけど」

Ⅲ.オーストラリア

HB「ライセンスを返上したあと、どうするつもりだったんですか?」

山口「いやどないしよかなと思って、後援会長も『お前どないするねん?』って言うてくるし。でもボクシング日本だけちゃうでしょ、なんとかなるやろって。海外でチャンピオンなるのもおもろいなーくらいの感じで」

HB「オーストラリアでのビリー・ディブとのWBOアジアパシフィックタイトルマッチは、どういう経緯で試合が決まったんですか?」

山口「海外の色んな知り合いの奴に『なんか試合ないか?』『行くわ』『行くわ』いうて電話してたんですよ。その中に同じジムにおった外国人トレーナーでオーストラリア人のジャステイン言うのがおって、そいつに『久しぶりやなー俺ジムやめたけどなんか試合ないか?』いうて電話したら、『オッケーオッケー』言うて、その次の日にエラい興奮して電話してきて『ビッグマッチや!ビッグマッチや!』言うから『なんやねん』って聞いたら『ビリー・ディブ!ビリー・ディブ!』って叫んでて」

HB「ビリー・ディブ(後のIBFフェザー級王者)は知らなかったんですか?」

山口「全く知らんかった。なんやコイツ?誰やねん!ちゅう感じで。最初は世界タイトルマッチやったんですよIBOの。でも僕がIBOの世界ランキング入ってないからWBOアジアパシフィックのタイトルに変わったんですけど。ファイトマネーなんぼやって聞いたら5000ドルやって。50万ですよ。日本では毎回5万円くらいしか貰ってなかったからいきなりその十倍ですよ」

HB「日本から出たらいきなりタイトルマッチ出来てファイトマネーは十倍になってそりゃやるでしょと」

山口「ただ一つだけ難点があった。それは階級がフェザー級やったんですよ。フェザーは未知の世界ですわ。でも後援会長にタイトルマッチも見せたいし、ボロ負けしたら引退したらええわくらいの勢いで、イチかバチかで『まあええわ、やるわ』って」

HB「その場で即答ですか?」

山口「でも結果的にそれが良かったんですわ。海外では『ちょっと考えさせてくれ』『明日まで待ってくれ』って言うてたら、すぐ他の奴に決まってまうんですよ」

HB「じゃビリー・デイブが何者かも知らぬまま試合を決めたと」

山口「そう。ファイトマネーもええしね。ただそのファイトマネーがね、オーストラリアのホテルでテレビ見てたら、試合のことガンガンやってて自分が写ってるんですよ。嬉しいからその画面とか携帯で撮影したやつ日本の友達に送ってたらあとで携帯料金の請求が30万くらい来て」

HB「ファイトマネーの5分の3!」

山口「何やっとることやら分からんですよ」

このディブ戦のオープニングで山口選手が奪ったダウンとその後の反則騒動が、結果的に彼の海外でのキャリアを切り開くこととなりました。メキシコでのサリド戦、ボクサー山口の原点、また高山勝成選手の高校入学の裏話などなど、さらにヤマケンイズムが炸裂する次回にご期待ください!



 実物の山口さんはこの百倍面白いと知っている(旧徳山と長谷川が好きです)


長谷川穂積の最終章‐はじまりか終わりか‐



 明日4月23日、大阪城ホールで長谷川穂積が3階級制覇をかけてIBF世界Sバンタム級王者キコ・マルティネスと相見える。

 3年前にジョニー・ゴンサレスに敗れてフェザー級世界王座から陥落。その後ノンタイトル戦を重ねながら世界への道を探ってきた。
 モンティエル戦での敗北以降、キレのあるタイトな戦いぶりが見られなくなっているとの印象を持っていた。
 長谷川自身、ブルゴス戦での勝利(フェザー級戴冠)以降、精神的に抜け殻だったと言う。
 モンティエル戦以降の変化については、モーチベーションの他に、自身の戦い方そのものにも理由があるように思われる。
 モンティエル戦までの彼のボクシングは、山下会長との二人三脚、長谷川選手の能力と、山下会長の戦術・戦略の共同作業、文字通り彼ら二人の合作だった。大橋会長が長谷川選手を「山下会長のロボットのようだった」とコメントをしていたが、良い意味で相即不離が2人の間には存在した。
 それがモンティエルの勝負勘、ある線を超えた感性によって打ち砕かれた。それが長谷川をして自立したファイターへの変貌を目指させたように思えてならない。時としてセコンドの指示を無視して戦う彼の姿を見ると、そう思わざるを得ない。
 モーチベーションに関して言うなら、彼はドネアを破った直後のリゴンドーと戦いたいと言ったことがある。いろいろな意味で現実性を欠いたその話に周囲にさしたる反応はなかったが、実際彼を必死にさせる相手、自分の能力を最大限引き出せる相手と(彼が)思えるのは、リゴンドーぐらいしかいないのであろう。その意味ではやらせてみたいと私は思う。

 明日の相手はキコ・マルティネス。短躯のファイターとの印象はかつてのバーナード・ダン戦(2007年、1RKO勝利)や、後に西岡に挑戦したムンロー戦(2008、2009年、共に判定負け)を見た時のものだが、今彼の年齢が28歳と知り、当時の彼がまだかなり若かったことに驚いている。2013年8月にジョナサン・ロメロを6RKO、スペイン人として初めてSバンタム級王座に就き、同年12月にはジェフリー・マセブラを9RKOで初防衛に成功している。(マセブラは2012年にドネアとの統一戦に判定で敗れてIBF王座を失ったが、その後ヌドゥルヴを破ってマルティネスに挑戦している。)試合を見る限り、相変わらず好戦的ではあるが、戦い方が一本調子ではなくなり、出入りがかなり巧妙になっているように見える。それとヨーロッパの選手にしばしば見られるスタミナと打たれ強さが感じられる。
 ネームバリューがさほどないことから穴王者的な見方をされているかもしれないが、時の勢いも得ており、今の長谷川選手にとっては負けてもおかしくない相手と見る。
 あまり選手のコメントを気にすべきでないのは分かっているが、長谷川選手には「感動させる」試合などではなく、勝利のために最善を尽くした、死力を尽くした戦いをしてほしい。そうした試合にこそ感動はあるのだから。
 長谷川選手の「冷静な判定勝利」を予想(というか「期待」)します。 

by いやまじで

PS
 当日のメインは山中選手で、こちらも大好きなんですが、すみません、今回はどうしても長谷川選手のことが気になって、山中選手まで手が回りません。山中選手の勝利を願っていることを付け加えておきます。

※ 動画追加(20140423)

JBC問題概観(年表付) 20140420

 ここで私がJBC問題と呼ぶのは、2011年4月JBC事務局に送られてきた怪文書に端を発したJBC安河内事務局長に対する疑惑問題である。
今その問題について概観してみる。
◆◆◆◆
 事の発端は、2011年4月某日、JBC(日本ボクシングコミッション)各事務局と全国のボクシングジムに送られてきた「怪文書」である。
 そこにはJBC本部事務局長である安河内氏に関して、
①不正経理
②情実による人事採用
③パワハラ
④不倫
⑤職場放棄
などの疑惑を書き連ねた文書及び証拠とされる写真が同封されていた。
 JBCは当初内部調査によってこれを処理しようとしたが、東京試合役員会(審判及びリングアナウンサー)と本部事務局職員の有志が反発。5月10日に合同調査委員会名義で「調査報告書」と「連判状」をJBCに提出。
 これを受けJBCは5月16日に調査委員会を設置。
 5月31日、試合役員及び職員の有志が公益通報の会見を行い、安河内事務局長の解任を求めた。
 6月10日、斉藤専務理事が安河内氏を「事務局長代行補佐」とするコミッショナー示達を公表。特別調査委員会の中間報告で問題が認められないことから、事実上の安河内事務局長続投を示唆。
 6月23日、試合役員が第2JBCを設立すると発表。東日本ボクシング協会も支持を表明。
 6月28日、JBCは調査委員会の調査結果を発表。安河内事務局長に不正は認められなかったが、部下への接し方の行き過ぎ、職員への不十分な説明に基づく雇用契約の不利益変更が不相当だったなどとし安河内氏は事務局長から降格。森田健氏が事務局長に就任した。
 安河内氏は別会社での勤務と、本部事務局及びボクシング会場への立入禁止を命じられる。

 翌平成24年5月24日、安河内氏が降格処分の無効を求めてJBCを提訴。
 同年6月15日、JBCが安河内氏に懲戒解雇処分を下す。
 同年6月20日、安河内氏が懲戒解雇の無効の申し立てを行う。(後に地位確認の訴えと統合。)

 安河内氏がJBCに対して起こした裁判は現在も進行中である。
◆◆◆◆
 上記内容については、より詳しい経緯を時系列に並べ、出典とともに下に記した。
なおこれらはいずれもマスコミで報道された範囲内で私たちが知り得ることである。言い換えれば、報道されていない諸々の事実があるということでもある。
 この「報道されていない諸々の事実」をこれまでの取材を基に示していきたい。
 
 私がJBC問題についてその諸事実をたずね、これを記録するのは、この問題について考えることが、このスポーツの将来 ― 公益法人化、4団体化、AIBAプロ、東京五輪、スポーツ庁設置を控え変革期にあるはずのボクシング界 ― について考える一助になると考えるからである。

by いやまじで


■■■■
<JBC問題 年表>

 以下にJBC問題の事実経過を時系列に整理してみた。出典はマスコミ記事(一般紙、スポーツ紙、ボクシング雑誌、およびそれらのウェブサイト)と公文書に限定した。「裁判記録」については除外した。また報道内容には、裁判で事実関係が争われている事柄もあるが、報道された内容のまま引用していることをお断りしておく。この年表自体が完璧と言い難いので、出典と事実関係について補足すべきは情報なりご意見なりを賜りたい。

2011/04/某日 怪文書の送付(*1)
2011/05/10 JBC事務局長が1カ月休職(*2)
2011/05/16 JBC調査委員会の設置が決定(*3)
2011/05/19 東京試合役員会の浦谷信彰会長が調査委員会委員に対し、公正な調査を申し入れ。(*4)
2011/05/31 JBC試合役員による公益通報(記者会見) (*5)
2011/06/10 安河内氏が「事務局長代行補佐」で復職 (JBCの調査委員会の調査状況についての斉藤専務理事の発言)(*6)
2011/06/13 東日本ボクシング協会 収拾求める要請書提出(*7)
2011/06/23 JBC試合役員による辞表提出と新団体立ち上げ発言、東日本協会も第2コミッション設立支持を決議(*8)
2011/06/24 JBC森田健事務局長代行 ボクシング界の分裂回避を示唆(*9)
2011/06/28 JBCの調査委員会の調査報告… JBCが安河内氏の事務局長降格と森田健氏の事務局長就任を発表。斎藤慎一専     務理事(82)が専務理事を辞任、秋山弘志理事(72)の専務理事就任が決まった。(*10)
~~~~~
2012/04/12 JBCが本部事務局職員を懲戒解雇(*11)
2012/05/24 安河内氏が降格処分無効を求めJBCを提訴(*12)
2012/06/15 JBCが安河内氏を懲戒解雇(*13)
2012/06/16 JBCが本部事務局職員を解雇。(*14)
2012/06/16 JBCが関西事務局職員を懲戒解雇(*15)
2012/06/22 安河内氏 懲戒解雇は無効とJBCを提訴(*16)
2012/10/13 IBF・WBO加盟へ 国内ボクシング、4団体公認に(*17)
2012/11/16 林隆治マッチメーカーがスポーツ仲裁機構にJBCの処分撤回を求める申し立て(*18)
2012/11/26 JBC スポーツ仲裁に不合意(*19)
2012/12/24 2団体への加盟 協会内規を決定(*20)
2013/06/15 ボクシング・マガジン誌が新コミッション設立疑惑と高山選手との関連についての記事を掲載。(*21)
2013/06/27 大橋秀行協会会長がJBC理事に就任(*22)
2013/07/15 ボクシング・マガジン誌が、JBCの網膜剥離からの復帰容認決定に関する記事を掲載(*23)
2013/09/22 積立金の使い道めぐり議論紛糾 日本プロボクシング協会(*24)

◆◆◆◆出典◆◆◆◆
(*1)スポニチannex 2011年6月23日記事「JBC前事務局長、名誉毀損で被害届」による
http://www.nikkansports.com/battle/news/f-bt-tp0-20110623-794526.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0326-1849-02/www.nikkansports.com/battle/news/f-bt-tp0-20110623-794526.html
cf.ネットオヤジのぼやき録 2011年04月28日記事「JBCにお家騒動? -役員会で安河内事務局長に辞任要求-」
http://wams.jp/kei/blog2011/archives/58.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0313-1959-07/wams.jp/kei/blog2011/archives/58.html
(*2) スポニチannex 2011年5月16日付記事「JBC事務局長が1カ月休職」による
http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2011/05/16/kiji/K20110516000834630.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0920-1807-18/www.sponichi.co.jp/battle/news/2011/05/16/kiji/K20110516000834630.html
(*3) スポニチannex 2011年5月18日付記事「JBC 不正経理などに関する調査委員会設置」 による
http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2011/05/18/kiji/K20110518000841810.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0918-1910-44/www.sponichi.co.jp/battle/news/2011/05/18/kiji/K20110518000841810.html
(*4) スポニチannex 2011年5月20日付記事「“疑惑”のJBC事務局長休職で公正調査を申し入れ」による
http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2011/05/20/kiji/K20110520000854060.html
(以下引用)
 東京試合役員会の浦谷信彰会長(52)が19日、同問題の調査委員会委員に対し、公正な調査を申し入れたと発表した。
 同役員会とJBC職員の数人は今月中旬、不正経理などの疑惑がある安河内氏に関する独自の調査報告書をコミッショナーに提出。一方でJBCの斎藤慎一専務理事(82)が調査委員会立ち上げの際に「個人の調査では問題はない」としたため、この行動に出たと説明した。独自報告書の内容は「言えない」という。
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0310-1007-38/www.sponichi.co.jp/battle/news/2011/05/20/kiji/K20110520000854060.html
(*5) スポニチannex 2011年6月1日付記事「JBC事務局長休職問題…職員「不安」で公益通報」による
http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2011/06/01/kiji/K20110601000932030.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0920-1752-38/www.sponichi.co.jp/battle/news/2011/06/01/kiji/K20110601000932030.html
(*6)box-on 2013年6月11日付記事「安河内氏は「事務局長代行補佐」で復職 JBC」による
http://boxingnewsboxon.blogspot.jp/2011/06/blog-post_11.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0310-1002-44/boxingnewsboxon.blogspot.jp/2011/06/blog-post_11.html
cf.週間BOXING TOPICS(6/12) - 馬球1964(2011年6月12日)
http://blog.goo.ne.jp/umauma1964/e/e9d6eb669a2f272e68fb2364316ff596
(以下引用)
 日本ボクシングコミッション(JBC)の林有厚コミッショナー(81)は10日、斉藤慎一専務理事(82)が当面は事務局長を代行し、安河内剛事務局長(50)が同代行を補佐すると発表した。同日付で期間は未定。事務局長代行は斎藤専務自身が兼務している。
 不正経理疑惑などが一部で報じられた安河内氏について、JBCは調査委員会で調査を継続中で、現時点で不正はみつかっていないという。… (SANSPO.COMより)
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0310-0923-06/blog.goo.ne.jp/umauma1964/e/e9d6eb669a2f272e68fb2364316ff596
(*7) スポニチannex 2011年6月13日付「東日本ボクシング協会 収拾求める要請書提出」による
http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2011/06/13/kiji/K20110613001012800.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0920-1750-09/www.sponichi.co.jp/battle/news/2011/06/13/kiji/K20110613001012800.html
cf.2011年5月17日付ボクマスさんのブログ記事「JBC安河内事務局長vs 調査委員会 朝日、毎日報道!」
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0913-1616-56/ameblo.jp/stanbox7/entry-10894296934.html
cf.引用されたzakzak記事(片岡亮 署名記事)
http://www.zakzak.co.jp/sports/etc_sports/news/20110423/spo1104231601007-n1.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0913-1618-41/www.zakzak.co.jp/sports/etc_sports/news/20110423/spo1104231601007-n1.htm
cf.引用されたzakzak記事(片岡亮 署名記事 格闘技裏通信)
http://www.zakzak.co.jp/sports/etc_sports/news/20110513/spo1105131130000-n1.htm
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0913-1620-02/www.zakzak.co.jp/sports/etc_sports/news/20110513/spo1105131130000-n1.htm
※毎日と朝日はリンク切れ
cf.山田一公についてのヒゲゲさんのブログ 2011/06/23
http://ameblo.jp/higege91/entry-10932033437.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0310-0925-23/ameblo.jp/higege91/entry-10932033437.html
(*8) 共同通信2011年6月24日付記事「日本ボクシング分裂の可能性も 新団体設立へ代行が辞意」による
http://www.47news.jp/CN/201106/CN2011062401001025.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0310-0926-40/www.47news.jp/CN/201106/CN2011062401001025.html
Box-on 2011年6月24日付記事による
http://boxingnewsboxon.blogspot.jp/2011/06/blog-post_24.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0310-0953-09/boxingnewsboxon.blogspot.jp/2011/06/blog-post_24.html
cf.朝日新聞2011年6月24日付朝刊 記事「ボクシング界 分裂危機」
cf. ブログ「ネットオヤジのぼやき録」「JBCスキャンダル・攻防は最終段階に -丸2ヶ月かかってようやく決着へ-」
http://wams.jp/kei/blog2011/archives/83.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0310-0927-42/wams.jp/kei/blog2011/archives/83.html
cf.JBC調査委が結果を提出 分裂騒動さらに混乱か(スポニチannex 2011年6月27日付)
http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2011/06/27/kiji/K20110627001101190.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0310-0928-39/www.sponichi.co.jp/battle/news/2011/06/27/kiji/K20110627001101190.html
(*9)2011年6月25日付朝日新聞朝刊による
(*10)Box-on 2011年6月29日付記事「“JBC騒動”で専務理事辞任、事務局長降格」による
http://boxingnewsboxon.blogspot.jp/2011/06/blog-post_29.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0310-0929-49/boxingnewsboxon.blogspot.jp/2011/06/blog-post_29.html
ニッカンスポーツ.com 2011年6月28日付「背任行為なかったが…前事務局長を降格」による
http://www.nikkansports.com/battle/news/f-bt-tp0-20110628-796905.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0326-1948-09/www.nikkansports.com/battle/news/f-bt-tp0-20110628-796905.html
cf.紹介していたボクマスさんのブログ記事
http://ameblo.jp/stanbox7/entry-10937569312.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0913-1603-31/ameblo.jp/stanbox7/entry-10937569312.html
cf.朝日新聞 2011年6月29日付朝刊記事「 JBC局長降格 パワハラ理由に」
(*11)東京都労働委員会2013年11月28日「N事件命令書交付について」による
http://www.toroui.metro.tokyo.jp/meirei/2013/meirei24-38.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0326-1959-31/www.toroui.metro.tokyo.jp/meirei/2013/meirei24-38.html
cf.東京都労働委員会 命令等概要 平成25年交付分
http://www.toroui.metro.tokyo.jp/meirei-2013.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0326-2001-31/www.toroui.metro.tokyo.jp/meirei-2013.html
(*12)ニッカンスポーツ.com 2012年5月24日「前JBC事務局長が降格処分不当と提訴」による
http://www.nikkansports.com/battle/news/f-bt-tp0-20120524-956212.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0420-1926-23/www.nikkansports.com/battle/news/f-bt-tp0-20120524-956212.html
スポニチannex 2012年5月25日付記事「前JBC事務局長の安河内氏が提訴 降格処分の無効求める」による
http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2012/05/25/kiji/K20120525003320360.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0920-1801-29/www.sponichi.co.jp/battle/news/2012/05/25/kiji/K20120525003320360.html
cf.ヒゲゲさんのブログ記事より
http://ameblo.jp/higege91/entry-11259931052.html
日本ボクシングコミッションを前事務局長が提訴 部下への高圧発言で降格処分 産経新聞
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0310-0930-43/ameblo.jp/higege91/entry-11259931052.html
(以下引用)>誤った事実認定に基づく降格処分は不当として、財団法人日本ボクシングコミッション(JBC、東京)の前事務局長、安河内剛氏(51)が24日、JBCを相手取り、処分の無効確認や慰謝料500万円の支払いなどを求める訴えを東京地裁に…
※当該の産経新聞web記事はリンク切れ
(*13)毎日新聞 2012年6月22日付 website記事「ボクシング:JBC 安河内前事務局長を懲戒解雇」による
http://mainichi.jp/sports/news/20120623k0000m050073000c.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0409-1731-30/mainichi.jp/sports/news/20120623k0000m050073000c.html
(*14) 東京都労働委員会2013年11月28日「N事件命令書交付について」による
http://www.toroui.metro.tokyo.jp/meirei/2013/meirei24-38.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0326-1959-31/www.toroui.metro.tokyo.jp/meirei/2013/meirei24-38.html
(*15)谷川俊規ブログ(2012/11/30)による
http://plaza.rakuten.co.jp/shunki31/diary/201211300000/
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0921-2113-24/plaza.rakuten.co.jp/shunki31/diary/201211300000/
cf.同上(2012/12/29)
http://plaza.rakuten.co.jp/shunki31/diary/201212290000/
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0921-2110-15/plaza.rakuten.co.jp/shunki31/diary/201212290000/
(*16)スポニチannex 2012年6月22日付記事「JBC元事務局長 懲戒解雇は無効と提訴」による
http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2012/06/22/kiji/K20120622003521980.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0920-1756-51/www.sponichi.co.jp/battle/news/2012/06/22/kiji/K20120622003521980.html
(*17)朝日新聞2012年10月13日付朝刊による
(*18)朝日新聞2012年11月17日付朝刊記事「資格停止処分のマッチメーカー 仲裁機構に撤回申し立て プロボクシングで初」による
(*19)朝日新聞2012年11月27日付朝刊記事「JBC スポーツ仲裁に不合意」による
cf.「仲裁のリング 逃げるな」朝日新聞2012年11月30日付朝刊 スポーツ面コラム「自由自在」
(以下引用)
「仲裁が成立しなければ、林氏は提訴するという。時間も費用もかかる訴訟がさらに増えることになる。JBCは、迅速に結果が出る仲裁の「リング」に上がるべきだ。」(近藤幸夫)
(*20)朝日新聞2012年12月25日付朝刊による
(*21)ボクシング・マガジン2013年7月号「日本ボクシング界の秩序を守るために」94-95頁による
(*22)ニッカンスポーツ.com 2013年6月28日付記事「大橋秀行協会会長がJBC理事に就任」による
http://www.nikkansports.com/battle/news/p-bt-tp0-20130628-1148919.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2014-0310-0955-36/www.nikkansports.com/battle/news/p-bt-tp0-20130628-1148919.html
(*23) ボクシング・マガジン2013年8月号「特集 網膜剥離 規制緩和と責任と」80-84頁による。
(*24) 朝日新聞DIGITAL 2013年9月21日付記事「 積立金の使い道めぐり議論紛糾 日本プロボクシング協会」による
http://www.asahi.com/sports/update/0921/TKY201309210386.html
上記魚拓
http://megalodon.jp/2013-0922-1155-41/www.asahi.com/sports/update/0921/TKY201309210386.html

■■■■

以上

JBC裁判傍聴記 20140411

 はじめに。
 平成24年3月頃、安河内氏復権の噂を聞いた時、いいようのない不快感を覚えたことを私は思い出す。
◆◆◆◆
 4月11日、午前10時、東京地裁にて、原告側証人尋問が行われた。安河内氏、安田氏、鮫島氏の順で、個別に行われた。各人冒頭、真実を述べる旨の宣誓を行った。
 以下は各人の証言内容である。

■■■■
 安河内氏。
 (証人に対して、被告側弁護人、原告側弁護人、裁判官の順で質問。)
 まず降格問題について。
 平成23年4月の怪文書送付後、5月12日、JBCの調査委員会の設置が伝えられると、某職員は「自分たちの疑惑の指摘だけで十分ではないか」と難色を示し、某試合役員は安河内氏に対し「おまえが決めろ、今やめろ」と2時間に渡りテーブルを叩きながら激しい口調で、試合のボイコットをちらつかせながら、私(安河内氏)に退職を迫った。〔因みにこの発言は裁判記録の中に録音テープの反訳がある。〕。
 怪文書は個人の家庭の事情なども含まれていたことから、内部の人間によって書かれたものと考えられた。
 6月10日、コミッショナー示達で代行補佐として復職するが、某理事と出勤すると、某職員がエレベーターホールでロックアウト。出勤ができない。
 6月23日、試合役員と職員の有志が会見を開く。騒動を大きくしてプレッシャーを強めようとした。ブラフである。
 6月28日、事務局長降格が発表されるが、既に27日に示達の内容は伝えられていた。有無を言わさぬ態度に、反論すれば解雇されると感じた。解雇されれば内部で改革を行うことはできないと思い、従った。他の職場への配転はやめるよう要請した。
 経理の一本化など改革の実績の自負もあったので徹底調査を望み、実際、調査報告書では不正は認められなかった。しかし問題は怪文書の疑惑から雇用契約問題等へとすり変わっていた。
 被告が挙げるような信頼喪失は存在しない。あるとしたら怪文書の事実でない疑惑によるものである。

 懲戒解雇について。
〔JBCは鮫島氏が使用していたJBCのパソコンからメールを入手。その内容から、安河内氏、鮫島氏、安田氏他数名の共謀によるJACなる第2コミッション設立の画策を事由に懲戒解雇ないしは解雇を行った。〕
 各メールは異なる場面・状況のものである。
 某マッチメーカーが第2JBC設立を望んだことはあるかもしれないが、自分は難しいと思っていた。メールからはJACなる団体の立ち上げの具体的な事実は認められない。JACについて原告はビジョンはあったが設立を試みることは考えていなかったし、その事実も認められない。
 メールで3名が「共謀」しているとのことだが、排除・疎外されていることもあり、「仲間意識」から、また情報共有のために、メールをCCで送信していた。
 鮫島氏の公益通報はガバナンスの崩壊したJBCに対して、組織を慮る気持ち、組織に対する問題提起が動機である。メールもそれに関するものであるから業務に関係する。問題提起してもコミッショナーに届いているのかどうか疑問だった。
 IBF会長との電話(スカイプ)は数分、挨拶程度のもので、込み入った重要な話ができるような状況ではなかった。また新コミッション設立に言及したとのJBCに対する同会長からの書面回答は、前提となる質問が提出されていないため意味が確定しない。質問を提出・明示してほしい。
◆◆◆◆
 午後。安田氏。(経理担当)
 怪文書を見て、経理に関する記述があったので、経理を担当する自分は、内部の人が書いたものという印象を持った。
 これまでも怪文書はあったが、写真が添付されたものは初めてだった。また試合役員や職員が騒ぐこと自体初めてだった。彼らは会議室に籠もって出てこず、電話があるたびに呼びにいかなければならなかった。
 日頃「ボクサーのために」という安河内氏の考えを大切にしていたので、試合ボイコットというボクサーを盾にする行為は考えられない、やってはいけないことだと思った。
 厚労省所属の人がレフェリーをしていた問題では、JBC内のパソコンの経歴が改ざんされていたことを確認。しかし事務局からは何も説明がなかった。それで公益通報を行った。
 安河内氏が事務局長降格になってからは、職場が乱れ、事務局長に諸問題について直訴するが「安河内の気持ちがわかる」と言うだけで具体的な対応を取ってもらえなかった。某関係者からは「ふつうの会社だったらみんなクビだよ」と言われた。
 安河内氏については信頼は損なわれていないと感じた。
(安河内氏のキス写真についてどう思うかと問われ)個人のプライベートの問題なのでどうでもいいと思った。(「気にならなかった?!」)気にならなかった。
 新しい経理の方が入ってきた。某試合役員から「これから仕事がすごく楽になるよ」と言われ、業務の説明をしたが、その数時間後に自宅待機を命じられショックを受けた。数日後解雇された。
 賞与の査定規準はない。組織としては毎年収入が一定していた。
◆◆◆◆
 鮫島氏。(経理担当)
 (ワタナベジムからの安河内事務局長の試合会場立入拒否の文書について)前日計量の際、某職員が渡辺会長に既にできあがった文書を渡しサインを促した。あらかじめ渡辺会長の名前が入っている文書で、それにあらためて渡辺会長のサインを入れさせようとした。渡辺会長は怪訝な顔をしつつ、「事態が改善しない限り」との但し書きを付けてサインした。
 某職員は有給申請しなかった。繁忙期に無断欠勤して他の職員からも不満が出ていた。本人も休み明けに謝罪していた。
 某職員の契約変更は更新が前提だった。退職金積み立てが継続していたことからもそれは明らか。
 安河内氏降格について説明はなかった。谷川氏への解雇通告(本部事務局長には関西事務局職員の解雇権がないことから後に撤回)から不安を覚え、また7月6日以降の試合会場への立入禁止(従来業務から除外)等、職場で疎外されていると感じ、改善を訴えていた。
 4月12日解雇される。1,2回の遅刻とパソコンの持ち出し、公益通報を繰り返したことが理由だった。公益通報は客観的資料に基づく文書による組織に対する問題提起だった。認められたものもあった(実際に組織内の不正が見つかった)が、当該人物に対して就業規則に沿った処分は行われず口頭注意で終わった。安河内氏への処分に比べ軽いと思った。
 JBCの弁護士も鮫島氏がガバナンスを慮ったことを認めた。(公益通報9、10)。
 安河内氏の1回目の解雇後、自分もクビになるかもしれないと不安だったので、キックのコミッション参加は少し考えた。
 メールに毒~、ハゲ、うすら、等の侮辱的なあだ名を使ったのは安河内氏からも度々注意されていたが、よくなかったと反省している。
 意見具申では解雇されるおそれがあったので公益通報という手段をとった。
 安河内氏から事務局長への業務の引き継ぎについては、安河内氏から指示されていたが、10月に事務局長から電話で「引き継ぎは次の事務局長としてもらう」と断られた。
◆◆◆◆
 筆者から見たJBC側の弁護士。
 安河内氏が某職員の有給休暇問題について、休んだ後でも有給休暇を申請できる期間があり就業規則にも明記されているが、申請は行われず、社労士にも相談の上で欠勤扱いにしたと説明すると、JBC側弁護士は、「その社労士は誰ですか」と問う。安河内氏は 「JBCが契約している社労士です。今も契約しているはずですよ」
 安田氏が某職員の勤務状況についてドームの食堂〔社員食堂?〕で昼寝をしているところを写真にとったという話について、JBC側弁護士が「盗撮したんですか!?」と訊く。安田氏は「一日だけなく連日、椅子を並べて、JBCのジャンパーを着て昼寝をするのは、場所をお借りしている立場としてひどいと思った。問題として報告するにも客観的資料として必要だったから撮影した。それ以前に他の人も面白がって撮影していた。」と答え他の職員の名前を挙げた。
 JBC側弁護士が安田氏に質問。あなたは某職員が「職場に盗聴器がしかけられているかもしれない」と騒いだ時に、「自分がそういうことを考えているから他の人もそうすると考えてしまうのだろう」と〔陳述書で?〕書いているが、メールの中で事務局長との話し合いの録音を考えているとあるけれど、これはどういうことなのか。(あなたも同じこと考えているのではないか。)これに対して安田氏は「後で言った言わないの話になるのはいやだったので、事務局長に了解をとって録音しようと考えた。しかし結局録音はしなかった。」
 またJBC側弁護士は、高山選手を「IBF所属ボクサー」と紹介し、「所属というのとはちがうと思う。」と安田氏に言い返され、安田氏から説明を受けるが得心がいかないようすだった。
 被告組織やボクシング界についてどこまで理解された上で被告の弁護を担当されているのか疑問だった。
◆◆◆◆
 安河内氏の説明の中では、降格直後から3か月程公益法人関係の仕事をほとんどしなかったと指摘された点についてあまり合理的に、あるいはわかりやすく説明ができていなかった。降格の理不尽さや組織自体が方向性を決めないと動きようがない等の事情は理解できた。
 安田氏は全く問題のない人(純然たる被害者)に思えた。嫌疑を次々に却下していた。
 鮫島氏は声が小さかったが主張すべきところはしっかり主張していた。後半「権限外の行為」については答えにくそうなようすに見えた。
◆◆◆◆
 原告側は降格について、調査委員会が調査すると言っているのにもかかわらず、とにかく辞めさせようとする試合役員、職員の行動の不可解さを重点的に指摘した。
 懲戒解雇については、一連のメールが組織への問題提起を動機とするものであるとの正論を軸に回答していた。 
 被告側弁護士は、状況証拠(不正を疑われる事実)を積み重ね、最後にドーンと何かを主張するのかと思いきや、最後まで何もなかったように思えた。言葉尻を捉えて矛盾を突くのが精一杯に見えた。
 傍聴席にJBC関係者の姿が見られないことは不審だった。JBCはこの裁判で勝つつもりがどこまであるのか疑問に感じられた。
 裁判官が組織内の状況をより詳細に聞き出そうとしていたのが印象的だった。
◆◆◆◆
 17時終了予定で、私は16時50分に退席。その時点でJBC側の尋問は続いていた。
■■■■
以上

by いやまじで

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合 傍聴編

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というわけでやって来ました大阪地方裁判所。

我々も記事で触れた関係上「あれって一体どうなったの?」と聞かれることも多い、解雇職員によるJBCに対する地位保全訴訟でありますが、現在も東京と大阪の各地裁で審理は継続しています。いよいよ結審が近づく中、4月11日に東京地裁で、4月14日に大阪地裁でそれぞれ公判が行われました。私はそのうちの大阪の方、原告の谷川俊規氏と被告側証人のJBC関西事務局の職員に対する尋問を傍聴して参りましたので読者の皆様に報告したいと思います。

 世間では裁判の傍聴を趣味にされている方というのも結構いらっしゃるようでございますが、私にとっては初めての体験。開廷時間とともに法廷内に足を踏み入れると、そこは二時間ドラマで見るようなイメージどおりの法廷で、「裁判長ってほんとにマント着てるんだな」なんて感心しつつ当の谷川氏を探すと、原告席ではなく傍聴席でスタンバイしているが見るからにナーバスな様子。一方のJBCサイド、被告席には4人の弁護士(公判中話していたのはほぼお一人で四人もいるんかいなと思いました)がデンと控えている。「東京から多分グリーン車だよなあ。4人で来てプラス出廷の日当に、前泊だとしたらホテル代もいるよなあ。それも東横インとかスーパーホテルじゃねえよなあ。一体幾ら使ってるんだろう?」と下世話な想いがムクムクと…。年間二千万の赤字や健保金の話が否応無く想起されます。「ではそろそろ」という雰囲気ながら、自分の後ろの傍聴席のドアが開きっぱなしなのだが…。「いやこれって裁判が開かれたものだからきっと敢て開けたままにするもんなんだ!うんきっとそうだ!」と一人で納得してると、裁判長が「あドアが開いてますね。誰か閉めてください」と指示するのを聞いて気持ちのドアも一緒に閉まる。ほんと世の中知らないことだらけですね!

まずは被告側証人のJBC職員氏に対する証人尋問からスタート。原告の谷川氏はパワハラやJBCの労務管理の問題点を指摘し、逆にJBC側は谷川氏の職能の無さや問題行動と思われる行為(『勝手に同僚の業務用のPCの電源を入れて盗み見しようとした』『仕事中の会話を録音しようとした』などの疑惑モロモロ)を指摘。双方が質問を終えると裁判長が証人に不明点を尋ねるというのが一連の流れのようで、裁判長の「事務からクレームと言うのは具体的にどういうことですか?ああ事務じゃなくてボクシングのジムね。すいません分かりました」という小ボケがあって終了。この部分で個人的に気になったのはJBC職員がしきりに「自分は谷川氏の上司ではなく同格の職員だ」ということを強調していたところ。自分にとっては不可解だったのであとで尋ねると「上司と部下と言う関係じゃないからパワハラじゃないといいたいんじゃないか」という分析でありました。でも当時ほぼ二人っきりの部署で向き合って仕事して先輩後輩ならそりゃ肩書きはあんまり意味無いんじゃねえ?と思いました。それと谷川氏が「(JBC職員の)指示を守らない」ということしきりに指摘するのですが、命令出来るなら上司じゃないの?と言う疑問も湧きました。谷川氏が担当していた広報誌の記事作成業務についても「選手へのコメント取材はいらない」ということをしきりに言うのですが、それって業務上の個人的な裁量の範囲内じゃないのかいな?大体命令する職権がないんじゃなかったっけ?とまたも疑問が…。谷川氏の勤怠部分の指摘では「昼飯の時に12時52分に出て1時56分に帰って来た(注:4分遅いから時間にルーズと言う趣旨)」などの指摘がなぜか異常に詳細に記されていて、原告弁護人が「なぜこんなに詳細なのか?」と尋ねると「その場でメモを取ってあとで日記のように記録していた」と言う返答でこれもうーん。高松での亀田の録画や谷川氏の録音(をしていたと言う疑惑)に対しては随分過敏なのに逐一メモを取るのはいいのか…???一体何が違うんだ???とナゼの嵐。勿論これは谷川氏を支援してきた私の感想であり被告人の立場から見ればなんら問題ないことなのかも分かりません。読者の皆様もそこはご留意下さいませ。

さて休憩を挟んで今度は谷川氏の本人尋問。従前より「(証人の)JBC職員に会うと、在職当時の息が詰まるような感じを思い出してきっと体調がおかしくなる」と言っていた谷川氏ですが、休憩中も廊下に座り込んで緊張を隠し切れない。しかし意を決して法廷に戻ると宣誓して尋問スタート。まずは谷川氏側弁護人がパワハラの経緯や新コミッション構想への関与が無いこと、就業中に私用のPCを使ったかどうかなどを質問し、続いてJBC弁護士による反対尋問がスタート。JBCサイドは東京事務所で解雇された職員とのメールのやり取りから谷川氏の新コミッション構想への関与を追及。またIBFやWBOへの働きかけの証拠として、ジョイとの二戦目の対戦交渉時の高山陣営の居酒屋でのミーテイングの会話記録を読み上げて谷川氏を追及します。反対尋問では谷川氏はやや感情的で時として吐き捨てるような返答もしていましたが、ある質問によって思わず声を荒げます。

某ジムで脳内に出血が見つかりプロになる道を閉ざされた選手がジムを移籍して名前も変えてデビューしようとしていることを知った谷川氏は東京事務所の元職員(東京地裁側の地位保全訴訟の原告の一人)と連携を取り、当時そのジムの実質的な責任者だった人物に対して「その選手はデビューさせませんよ。事故が起きたらどうするのですか?」と警告することでプロテストを断念させたと言う事件がありました。解雇された職員同士のメールのやり取りから発覚したその事件について、JBCサイドの弁護士が「外部の人間である『実質的責任者』に選手の情報を伝えたことが情報漏えいに当たるのではないか?」と質問したその時、谷川氏は感情をあらわにし「あなたは何を言ってるんだ!どうなってたと思っているんだ!」と答えました。これは「安全のためにやっていることじゃないか。放置して事故になったらどうするんだ」という当然の感情の発露であります。その時傍聴席の逆サイドから低く笑う声が聞こえました。そちらを見ると傍聴席にいた証人とは別のJBC職員が声を荒げた谷川氏の様子を見て笑っていました。「法廷で感情的になって仕方が無いやつだな」と思ったのかも知れませんが、少なくともにやつくような話題ではないだろうと思いました。

先立って行われた4月11日の東京地裁の公判では、JBC側の弁護士が安河内事務局長の資質を問う為なのか「安河内の解任を求めた試合役員はボイコットまで考えたそうですよ。そんな人望が無い人にトップの資質がありますか?」という趣旨の質問をしたそうです。それに対して原告の元職員は「選手は厳しい練習をして、減量をして試合に備えています。それが分かっていれば試合を人質にとるようなことは出来ないはずです」と返答したそうです。こうした一連の質問姿勢について個人的に感じるのは、JBC側が組織防衛を優先するあまり、ボクシング競技がどうあるべきかと言う視点が欠けているのではないかということです。安全管理や試合の開催という一番大事な部分すら闘争・攻撃材料とするような姿勢には疑問を感じました。

勿論谷川氏の返答も歯切れが良いとは言え無い部分も多々あり、事実関係については不明な点が多いです。反対尋問の後、裁判長から個人所有のPCから送信されたメールについて送信時の状況や文面の表現についてかなり細かい質問も飛びました。解雇職員同士のメールのやり取りに何か関心があるのではないかという印象を自分は受けました。

それも踏まえた上でファンの皆さんにも是非生の情報に触れて、自分の感覚でこの一連のJBCの内紛について考えていただきたいと思います。

5月28日には東京地裁で森田健事務局長と斉藤慎一元専務理事の証人尋問が行われます。ファンの皆様も是非実際に法廷に足を運んで傍聴していただきたいと思います。

 裁判の傍聴が大変勉強になった(旧徳山と長谷川が好きです)

2014/4/14 大阪 徳山昌守復帰戦?!+日本バンタム級王者決定戦!

徳山昌守が再びリングに!と一部好事家の間では盛り上がっていると噂されたこの日の興行。関西で長らくランキングボクサーとして活躍し、44戦と言う長いキャリアを閉じてこのたび引退する村井勇希選手が、引退セレモニーでのスパーリングのパートナーとして徳山昌守チャンプを指名し、この度のリング復帰が実現しました。

夜の興行と言うことで7時前にIMPホールにつくと会場は超のつく満員。会場に入れない人波がロビーに溢れ椅子も立ち見もビッシリの盛況。世界戦でもないのにここまでの満員はちょっと記憶にありません。会場で偶然知人の元プロの方と遭遇し、お話を伺うとその人も徳山のスパーリング目当てで来場されたということでありました。

この日はアンダーカードも熱戦続きで、不利な展開をワンパンチでひっくり返した大田選手、高校選抜優勝・国体三位で三戦三KOの与那覇に完勝した奥本選手、1Rのダウンから盛り返し日本ランクを守った石崎選手(なぜか2-1の判定で会場からもジャッジがおかしいの声多数)など印象的な試合ばかり。

会場がいい感じで暖まったところで、いよいよ個人的お目当ての徳山チャンプスパーであります。お馴染みの入場テーマ『海岸砲兵の歌』を聞いたチビッ子が「仮面ライダー出てくるの?」と勘違いしている中登場した徳山チャンプは遠目にはスーパーミドル級くらいのボディ。そんな徳山チャンプがコールを受けて黒いTシャツを脱ぐと現役時代をしのぐ見事な肉体に会場から溜息が…ってTシャツやん!

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『魔太郎がくる』で主人公が着ていたのと同じ筋肉Tシャツに身を包んだ徳山チャンプの雄姿

熟れ切ったボディを筋肉Tシャツに包むという丁寧なネタを仕込んでサーヴィス精神を発揮する徳山チャンプ。現役時代と変わらぬグッドシェイプの村井選手には色々と複雑な感情が去来しているかもしれませんが(注:筆者の想像です)2Rのスパーリングは滞りなく行われ、二人のボクサーは健闘を称えあったのでした

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レフェリーは池原信遂さん!

予想をかなりこえるほのぼのとしたスパーリングが終わったところでいよいよメインの日本バンタム級王者決定戦であります。実は丸元大成選手以来、もう7年もチャンピオンが出ていないのだというグリーンツダジム。そんな悩める名門の復活を託されたのはランキング一位の川口裕選手。奇しくもこの日は不慮の事故で亡くなったジムの先輩小松則幸選手の御命日でもあり、気合が充実していることは想像に難くありません。

対するのはランキング2位の益田健太郎選手。2012年に一度岩佐選手の日本タイトルにアタックしていますがその時はTKO負け。敵地に乗り込んで念願のタイトルを掴むことが出来るか?敵地のリングでも見るからにふてぶてしく落ち着いており、セコンドと「まあいけるやろ」と雑談する様子は豪胆な一面を覗かせます。

ゴングが鳴ると軽快に飛び出したのは益田選手。サークリングしながらジャブを打って手堅く攻勢をアピール。川口選手は様子見か余りに手を出さず、益田は密着時に反則気味にラビットパンチを打ったりと川口を苛立たせるかのような仕掛けも見せます。2Rになって手を出し始めた川口に対して益田は打ち終わりに右をあわせたり、川口が休めば中間距離での正確なコンビネーションでヒットを稼ぐ。益田のコンビはかなり正確。コンパクトに力まず回転の良い連打をセンターに集めて川口にペースを渡さない。川口は益田の回転力を意識してか手が出しづらい風で、時折いいパンチを当てるもののなかなか連打が当たらない。益田はいきなりの右や飛び込んでの左ボディで見栄えのいいヒットもおりまぜて確実にポイントを拾っていく。接近時のイライラ作戦も有効で川口は5Rに再三注意されていたホールドで減点されてしまう。


5R終了時の3-0で益田という中間採点を受けて川口は6Rからペースアップ。積極的にプレスをかけて強いパンチを当てて益田を下がらせるが、益田も喰らいついてペースを死守。しかし益田もさすがに疲れが見える。7Rに今度はラビットパンチで益田が減点。ホームの観客席は一気に盛り上がる。益田もすぐさま連打を見せて巧みにペースを引き寄せるが、川口もリングの中央で連打を決めて明確なダメージを与え益田は苦し紛れにクリンチ。川口にとっては大チャンスでしたがここで不運にもバッテイングで右目の上をカット。この傷が結局ゲームの帰趨を決定します。

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益田は軽快な連打で再びペースを掴み、手数が減った川口を攻め立て確実にポイントを稼ぐ。一方の川口は再三傷のチェックを受けて攻撃のテンポが上がらない。結局最終10Rに流血がひどくなったところで続行不可能となり試合はストップ。負傷判定ですが、益田は結果を聞く前に勝利を確信しガッツポーズ。その予感どおり96-92が二者と96-93という3-0の判定で益田の負傷判定勝ちとなりました。

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お子さんを抱いた益田選手の後姿

益田は初めてちゃんと見ましたが、とにかく正確な連打が印象的。打ち合いの中で大振りにならずコンパクトで正確なパンチを出しているところが印象的でした。冷静な試合運びと勝負どころでの集中打、中間距離での強さも印象的でした。川口にとっては勝負どころでのカットが余りに不運でした。パンチ力では益田を上回っていたと思いますが、益田のうまさの前で手数が出なかった。またサイドに動く益田についていけなかった面もありました。ただそんなに差がある試合ではなかったと思います。

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小松選手の写真を背に勝利者インタビュー「大阪の皆さん勝ってすいません」と新チャンピオン

徳山さんがハチミツ二郎に見えた(旧徳山と長谷川が好きです)

二人のリベンジ ブラッドリー vs パッキャオ Ⅱ 20140413

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序盤2-5Rは双方とも前に出て打ち合った。

パッキャオが強いパンチを出すのはいつものことだが、ブラッドリーがこれほど強振するのは予想外。

予想外と言えばパッキャオの圧力に対してブラッドリーが拮抗した戦いを見せたのも予想外。彼のフィジカルの強さと耐久性は本物だった。パッキャオはブラッドリーのスピードを警戒してか、接近するとクリンチを多用した。

パッキャオは運動量は多いものの効果的な攻撃はできていなかった。連打も力みからかキレが感じられない。パッキャオ自身の衰えもあるだろうが、ブラッドリーの圧力、パワーが強かった結果でもあろう。試合を通じてブラッドリーに対して明確に効いたパンチはなかったように思う。

4Rブラッドリーの強い右を喰ってから、パッキャオは打ち終わりの被弾を警戒した戦い方になる。深くは踏み込まず、打っては右に回り込み、ブラッドリーの右をかわして、次の攻撃につなげる。(あまりつながってなかったが。)

ブラッドリーは右足を負傷したのか6R後半あたりからほとんど前に出られない。負傷の原因は分からないが、序盤に打撃戦を挑んだことは彼にとってイレギュラーなことであるから、誘因にはなっているであろう。

(後で見直すと2Rにパッキャオのパンチに何度かバランスを崩した際に捻挫かなにかしているように見える。その後の前のめりの戦いもそこに起因しているようだ。)

どちらかというと安全運転に徹したパッキャオが3-0判定でブラッドリーから勝利をもぎとった。

試合後、パッキャオのインタビューにブラッドリーが割り込み、いっしょにコメントするシーンはなかなかよかった。ブラッドリーは足の負傷については一切口にせず「明日からジムに行ってもっと強くなるだけだ」とコメントした。パッキャオにとってのみならず彼にとってもこの試合はリベンジだったはずだ。そして、敗れはしたが、それは成功したのである。

by いやまじで

2014・4.4 IBF世界バンタム級指名挑戦者決定戦 ランディ・カバジェロ×大場浩平 

写真 (1)
少しさびしい入りだった神戸中央体育館

当日の朝になって世界タイトル戦になるかも、という驚愕のニュースが流れたこの試合。すったもんだの末(?)予定通り挑戦者決定戦となったようですが、プロモーターの引き回しに起因するトラブルは今年も色々ありそうであります。

もともと仕事が早く終われば出向こうと思っていた興行ではありましたが、昼休みの休憩中に「世界戦になるかも」という報を目にした私は、ますます「見ておかねばなるまい」という野次馬根性が高まりました。

春らしい陽気から、一転花冷えになったこの日の関西地方。薄着で家をでてしまった私は、会場に向かう道すがら寒さに耐えかねて尼崎のショッピングモールで安もんのパーカーを購入。その場で袋をバリバリ破って着ていると中学生の集団に笑われて、みっともないたらありゃしないですが、とにかく急ぎ足で神戸中央体育館を目指す。

一番安い3000円の当日券を買って会場に入ると、セミセミの女子の東洋戦あたり。しかし女子の東洋戦って要りますかね…。まあいいんですけど。試合自体は実力差が大きく緊張感はありませんでした。

セミは東洋ランカーの久保隼選手がタイ人相手に順当に勝って、ごくあっさりとメインに到達。この客入りはアンダーカードの弱さも一因だと思えてなりません。カバジェロ選手はもちろんオフィシャルの招請費用や認定料等かなりの経費がかかっている興行だと思いますが…。まあ私が心配するようなことでもないのですけど。テレビ中継はお珍しやフジ系の関西テレビ。ローカル・深夜とはいえ関西の興行で地上波がついているのは珍しいですね。

軽快なラテンミュージックで入場したカバジェロ選手は全米アマを制しながらも年齢制限で北京五輪出場はならなかったという若き実力者。クロウト筋の評判も高いものがあります。アメリカ国籍でありながらラテンルーツを意識して星条旗とニカラグア国旗を携えて颯爽とリングイン。

一方の大場はチャゲアスで入場。チャゲアスなんか嫌いなつもりだったけど、真剣な顔つきで入ってきた大場の様子見てたら凄くいい曲に感じて、なんだか泣けてくる。自分は彼の試合を生で見るのは2008年名古屋での三谷将之との日本タイトルマッチ以来。注目のホープ同士だった両者の対決は、スピードと自在な攻撃を存分にアピールして勝利した大場、伸びる右ストレートで見せ場を作り敵地で存在感を見せた三谷(当時無茶苦茶ハードなマッチメイクだった)、双方が輝いたクリーンな好試合でありました。小さなジムから現れた「名古屋のメイウェザー」と呼ばれた才気あふれる青年は、東京や大阪のファンも巻き込んで大いに注目を集めましたが、なぜか世界につながる肝心の試合では負けてしまう。そのことがあってか、二度戦って歯が立たなかったマルコム・ツニャカオのいる真正ジムに移籍し、再び日本チャンピオンの座につくものの、気がつけば三十路前。自慢のスピードにはやや陰りはみえますが、39戦の濃厚なキャリアはカバジェロにはないものでありましょう。ホームの利とキャリアを生かしてホープの鼻をへし折ることが出来るか?

1Rのゴングが鳴ると大場は半身に構えてショルダーブロックと目でパンチを避けるメイウエザースタイル。やっぱりこだわりがあるんだなあと様子を見るも出だしは悪くない。一方のカバジェロは大場のスピードを測りつつ敵地ということも意識してか積極的に手を出す。でそのパンチがとにかくバカみたいに速い速い!単純にハンドスピードが凄いのである。踏み込みにおいても、日本人選手の中で最速クラスと言える大場をしのぐキレのある動きを披露。カバジェロのスピードあふれる攻撃に戸惑い気味の大場。ラウンド終盤リング中央で低い姿勢で向き合った体勢でカバジェロのコンパクトな右カウンターがヒット。大場が後ろに倒れる形でダウン。カウントエイトで試合が再開したところで1R終了。やはり前評判通りカバジェロはすばらしいテクニックの持ち主ですが、私にはそれ以上にクイックネスが印象的。大場がスローに見えるくらい速いのである。さてこの圧倒的なスピードを前に大場に策はあるか?

2Rに入ると、大場はスピード勝負は不利と見たのか、距離を潰して打ち合いに持ち込む作戦に方針転換。密着してのボディー打ちに活路を求める。実際レバーブローは力感たっぷりで有効に見える。一方のカバジェロは大場の密着作戦に対して、あえて距離はとらずに打ち合いに応じる気迫を見せる。回転のいい右ストレートとボディアッパーで迎撃し、ボディはあえて打たせて頭はしっかりカバー。3R以降は多彩なアングルでアッパーを集めて大場の頭を何度も跳ね上げ、大場のダメージは明らか。カバジェロはパンチもかなり強い。大場はなかなか頭を打たせて貰えない。

大場はベテランらしく感情のブレを見せない愚直なファイトでカバジェロに食い下がり決死の反撃も、手数もパンチの強さも明らかにカバジェロでポイントは一方的に流れていく。だがカバジェロも前進をやめない大場を不気味に感じたが6Rには思わずプッシングで大場を倒してしまう。感情のぶれに付け入るスキはあるか?と思われましたがそれ以降もカバジェロの的確さは相変わらず。エグい角度のアッパーを何発も打ち込んで大場を痛めつける。大場も中盤に入ってやっと頭にパンチが当たり出すが、それ以上にパンチを返すカバジェロの前に何度も棒立ちになる危険な状態。大場のダメージは明らかだが、手も出しているので少し止めにくい戦いぶりで事故が起きないか心配になって来る。そして迎えた8R、ダメージが明らかな大場は被弾する一方でレフェリーも何度も表情を覗き込みストップのタイミングを伺う。被弾したままコーナーに下がった大場はもみ合いの中で崩れるようにダウン。二階の貧乏席から見えなかったですがアッパーだったようです。このダウンからなんとか立ち上がったものの、セコンドからすぐにタオルが投入されてカバジェロのTKO勝ち。8R1分54秒でありました。このタオル投入は良いタイミングであったと思います。私にはかなり危険な試合に見えました。

下馬評どおりの強さを見せたカバジェロはなるほどかなりの強豪で、スターの素養充分と感じました。スピードとパンチ力を備えた華のある選手だと思います。次世代のスター候補が見れて大変満足いたしました。

大場浩平は気迫は見せましたが実力差は明らかでありました。カバジェロの強さが彼の予想をはるかに超えていたのではないか?と感じました。

試合中の写真はありません。夢中で見てたもんですいません!

コタツをいつしまうか思案中の(旧徳山と長谷川が好きです)
写真 (3)

ファンの要望に応えて気軽に撮影に応じるハンサムなカバジェロ君 スター特有の華がございました