WBOフライ級タイトルマッチ
王 者 ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)
VS 同級1位 ミラン・メリンド(フィリピン)
7月27日にマカオで行われた世界戦。
比国のスタッフに依頼しておいた映像がやっと届いた。
僕はいまだに「ネット便」でなく飛行機便を開封する時のドキドキ感がたまらないアナログ派なのだ。だから気になっていた結果も今この時点では知らない。
これから色々とチェックしながら紹介したいと思う。
昨年11月、怪物ローマン・ゴンザレスの持つWBAライトフライ級王座に挑み敗れたものの“あわや!”のシーンを演出したメキシコの新星ファン・フランシスコ・エストラーダのその後が実に気になっていた。
怪物に勝っても負けても、適正階級に転級するはずと思われたエストラーダは予想通り戦場をフライ級に移した。しかしそれがいきなりの、復活して来たハワイアンパンチ、ブライアン・ビロリアの持つWBOタイトル挑戦とは驚いたものだった。しかも文句ない判定でWBAのスーパー王座まで奪ってしまったのだ。この試合前ビロリアの母国である比国でも若きメキシカンはアンダードッグとして紹介されたが、王者のキャリアの前に苦しめられたものの明確に新旧交代をアピールしたのだった。
強打、タフネスとスタミナ、スピードと手数、なによりあくなき闘志が魅力の23歳。技術が更に進化すれば、いつかゴンザレスへの雪辱も可能な逸材だ。
今回の相手は堅実なマッチメークで同級1位まで上がって来た無敗のミラン・メリンド。
これまでフィリピン国内でWBOアジアタイトル、インター王座、WBCユースタイトル獲得など大事に大事に育てられて来た。
一発は無いが固い防御とスピードが持ち味の25歳。すでに8年のキャリアがある。
しかし、勢いのあるエストラーダの前では敵ではないと予想する。
それではプレイボタンを押してみよう。
第一ラウンド開始。
互いにスピード感溢れる軽快な動きで、素早いジャブの交換から挨拶代わりのボディ打ち、左フックを上に返すなどいきなり白熱戦が予想される。メリンドの出足がすこぶる良い。初挑戦にも相手の強打を恐れず、逆にやや様子見のエストラーダを下がらせる。
この回終了間際、右ガードの僅かに下がった隙を逃さず左フックを痛打!タフな王者がロープ際よろめいた所でゴング。もちろん挑戦者のラウンド。
波乱の予感だ。
第二ラウンド開始ゴングを待つエストラーダは立って右足首を回しながら自分のダメージをチェックしていたが、ゴングが鳴っても初回の躍動感が無い。やはりまだ効いてるのだ。
ジャブの差し合いでも負ける。
自信を持ったメリンドはスピードを更に上げ、高速ジャブを上下に打ち分けてガードの隙を伺う。
しかし、ラウンド半ばに差し掛かると王者の体に再び力が甦って来た。
応戦して左フックをボディにめり込ませるとこの一発で今度は挑戦者の動きが落ちる。
メキシカンが完全に復調した。王者のラウンド。
第三ラウンド。
さすがにビラモア率いるメリンドのセコンドは歴戦の強者だ、ゲームの流れを良く知っている。
この回の王者の反撃を予想して機先を制する作戦だ。
強打で前に出ようとする王者を高速ジャブで突き放しインファイトを許さない。
軽いながらも素早いコンビネーションでこのラウンドは挑戦者。
緊張の序盤を過ぎるとポイントの振り分けが難しいラウンドが続く。
第四、五ラウンドはほぼイーブン、六ラウンドは中間距離からの攻撃が有効と見て挑戦者。七、八ラウンドは逆にインファイトで打ち勝った王者か。
しかし、明確にはどちらもペースを握ってはいない。
比国サイドの解説を聞いているせいか、ここまで自分の採点はやや挑戦者に流れているかも知れない。
音声を消すべきだったが、パンチの衝撃音も会場の歓声もボクシングの醍醐味の一つだから仕方が無い。アマチュアボクシングを観ている訳ではないのだ。
九ラウンドやや挑戦者で、いよいよ終盤を制した者がこの試合の勝者となるだろう。
おそらく挑戦者陣営もそれを察したか、十ラウンドにわかに試合が動く。
距離を詰め速く力強いコンビネーションで王者を攻める。
しかし、打ち合いなら馬力に勝るエストラーダに分がある。
左右フックから右のショートでメリンドを痛めつけた。
ここまで予想外なタフネスを見せ踏ん張って来た挑戦者。王者をここまで苦しめたハンドスピードもがっくりと落ち、絶妙なポジショニングを生んでいたフットワークも既に止まっていた。
十一ラウンド、残り僅かの所でまたもや王者の右ショートが顎をカウンターで捕えると、挑戦者はたまらずリングに落ちた。カウントアウトされてもおかしくない強打だったが、それでも良く立ってゴングに救われた。
最終回、コーナーを出た挑戦者の下半身はまだ揺れている。完全に足は止まったが、上体だけで必死に応戦。
残り三十秒ほど、王者の右ショートで腰が落ちたたらを踏む。
後は一方的に連打にさらされるが、最後までストップ負けを拒否した。
判定はジャッジ3名のうち118-109が二人、117-109が一人と大差で王者の初防衛成功。
終盤は一方的だったがここまで開いたとは思えなかった。
メリンドはこれまでのマッチメークから温室育ちの印象を持っていたが、それを確実に糧にして成長していた事が解った。登り竜の勢いのエストラーダ相手に大善戦。トップランカーとしての意地を見せた試合でもあった。
最後まで冷静だった王者は改めて底力を証明したが、最強王者への雪辱にはまだまだ課題が残った試合だった。
長くなったのでここまでと思ったが、セミファイナルに思いがけない選手の名前があったのでもう少し・・
WBOアジアパシフィックSバンタム級戦
ジェネシス・セルバニア(フィリピン)vsKONOSUKE TOMIYAMA
比国のALAプロモーションがミラン・メリンドに続く只今売り出し中の選手がこのセルバニアだ。ニックネームはアスゥカル(シュガー)に掛けてアズゥカル(サッカー)。まだまだ名前負けだが、スピードとカウンターが持ち味の好戦的なボクサーファイター。
これまで、ヘナロ・ガルシア(西岡が保持していた同級王座に挑むも12RTKO負け)やホルヘ・アルセに12R判定まで粘ったアンキー・アンコッタなどの世界ランカーに快勝。
国内で大事に育てられて来たが、この日はいよいよ世界に向けてのアピールの舞台。同じアジアとはいえ初の海外進出だ。
いや、思いがけなかったのは TOMIYAMAの名前を見つけたからだ。
映像を見ると間違いない、名城信男を苦しめたあの富山浩之介だった。
引退と復帰を繰り返し若手相手に勝ったり負けたりしていたので、終わってしまったかと勝手に思い込んでいたが、どっこいリングに生きていた。
しまったと思った。
試合開始30秒、セルバニア飛び込みざまの左フックで富山後方に吹っ飛ぶダウン!
2分過ぎ富山の左ジャブがタイミング良く、これで今度は比国人ホープがダウン!
残り10秒富山の右フックカウンター一閃、今度は正真正銘のダウンだ。
第2ラウンド富山の右鋭い、ストレートでセルバニアの眉間を切り裂く。
第3ラウンド2分30秒過ぎ今度は強烈なセルバニアの右ショートで富山がダウン!
何というめまぐるしい展開だろう。
追撃の左でふらつく富山だがこの回はゴングに救われた。
4回ジャブから立て直しを図る富山。
しかし、スピードに勝る比国人は富山の右ストレートに左アッパー、左には右アッパーを合わせるなど引き出しの多さを見せる。
この回終盤には右から左を二つ合わせると富山のダメージが更に明らかとなった。
中盤の4つのラウンド、ダメージを引きずる富山だが粘りを見せる。セルバニアのカウンター攻撃に怯まず良く打ち返し比国人をけしてリラックスさせない。
9回突如のエンディング。2分過ぎ偶然のバッティングでセルバニアは左まぶたから出血。
序盤には富山が得意の右で比国人の顔面を切り裂いていたが、この回この一度のチェックでリングドクターは熱戦の続行を許さなかった。
「パンチだ」とアピールする富山の映像が映ったが無念の負傷判定に。
1~最大5ポイント差、2-1の判定でセルバニアが無敗をキープした。
B.B
追記:ネット版 WBOアジアパシフィックSバンタム級タイトルマッチ
http://www.youtube.com/embed/MwxNvXKMxZcジェネシス・セルバニア(フィリピン)vsKONOSUKE TOMIYAMA
ここのところ、仕事の合間の間髪を縫って「楽しくも無い取材活動」に勤しんでた訳だが、やはりリングが恋しくなる。
選手の熱い戦い、そのリングこそが自分には唯一癒される時間と空間だ。
この日もまさに間髪を縫ってホールに向かった。
(間髪を縫ってなどと言うと、内情を知っている仲間うちから笑いが起こりそうだが、本人にとってはほんと必死なのだ)
当日にも関わらず主催者の方にご無理を言って、リングサイド二列目を確保して頂いた。
運悪くベンチシートだったなら、観戦に集中出来ない程の腰痛持ちで、しかも視力も弱い自分には大変有り難かった。
この場をお借りして心より御礼申し上げます。
だからという訳ではないが、しかしこの主催者の興行に対する姿勢とアイデアにはいつも感心させらる。大きく儲かっている大手ジムではないはずだが、渾身を傾けていると肌で感じるのだ。
「ORIENTAL BOXING NIGHT」6試合の日比タイの対抗戦だったが、アンダードッグはライアン・ビトの対戦者くらいだろうか。まさに生き残りを懸けた熱戦が繰り広げられた。
副題に「東洋拳闘家対決」とあるが、昭和40年代にはもう既に使われていなかったと思われる拳闘家という言葉に主催者のボクシングへの浪漫を感じる。
拳闘家とは即ち拳闘の道を極める為に精進する者らへの総称であり、また敬称でもあったのだ。
何故なら、戦争に打ちひしがれた多くの国民に夢と希望を与える職業であったからだ。
ボクシングという競技が一面、日本を支えたと言っても過言ではない。
プロレスと共に確かにそういう時代があったのだ。
八年も前の話しだが「恥ずかしながら」と前置きし、ある元ボクサーがひよっこの自分に語った。「ボクシングをこれからも厳しく見て頂きたいので・・」
ご健在なら、現在は齢八十にはなろう眉雪。しかし背筋の張った体躯も未だがっしりとして、自動車の運転も悠々とこなされていた。
「昭和40年代前半までは、所謂、出来試合が自分の他にもあった。無名選手だったがウェルターで選手権を目指した時期もある。3倍の報酬に目が眩みいつしか花形ボクサーの引き立て役に回った。試合が終われば堀之内でメインエベントを張ったものだった」
「理由は簡単だった。次に必ずチャンスを与える。その方がお客が喜ぶという甘言を信じた。脅しには屈しなかったが、それで一度だけ負けた。しかし後は悩みもしなかった」
衝撃的な話しではあるが、ボクシングの歴史を切り取ればそういった一面もあったのだと思う。
しかし、経済復興で皆が自信を取り戻し、実力で国際社会にも勝てるのだと確信した時に、その必要性も無くなったともいう。
西城が柴田が海外王座奪取を果たすと、ボクシングは再び黄金期を迎える。
この頃のボクシングは他の格闘技と明確に一線が画されていた。
大場政夫の事故死はリング上でなかったにも関わらず、その真剣試合と重なり伝説となって世に浸透した。
時代は更に大きく変わって人々のライフスタイルと共に機根も変わった。
拳闘からボクシングとなり、再び興行の色彩強く、やがて現在は娯楽や趣味の世界に変化した感がある。
リアルファイトと銘打たなければそれと区別出来ないほどになってしまった。
一抹どころか大きな寂しさと時に哀しみを覚える。
しかしだ。
少なくともリング上にはボクサーの拳闘の心は脈々と燃え続けている事を忘れてはならない。
昨晩の後楽園ホールのリングもそうだった。
帰路ふと思い出した。
「そういえば今夜は世界戦もあったな・・」
B.B
追記:
前回、座間キャンプ興行で日本デビュー戦を飾れなかったジョビー・カツマタ(比)は見違えるようなボクシングをした。闘志が戻り体躯も逞しくなり、鮮やかな打ち下ろしの右で試合を決めて見せた。
次の8回戦に登場した若松竜太(勝又)だが、タイ人相手に後手を踏み中々ペースを握れない。
ステープ・ソーポーロークルーンテープという9戦7勝の選手だったが愛嬌のある風貌に似合わず、曲者だった。
老獪なテクニックはムエタイで学んで来たのだろう。
アクシデントは3R開始直後に起こった。
突如「あっ、痛い!」と言って若松が倒れ込み中々立ち上がれない。
南側からはレフェリーが死角になって何があったのか、まったく判らなかった。
おびただしい出血にバッティングかと思ったが、主審は様子を伺っているのか戸惑ったようにも見えた。
すかさず若松自身が「ひじ!」と叫んでジャッジが協議に入り、主審が確認したという事なのだろう、全副審が認めたという裁定で3R24秒タイ人の失格負けとなった。
タイ人は多少の抗議アピールもしたが、確信犯だと観客は納得した。
文句を言うつもりではない。しかし、本当にジャッジ全員が確認できたのだろうか。
選手のアピールが無ければ果たしてこれ程素早い裁定が出来ただろうか?
もしもの為にビデオを活用すべきだと改めて感じた。
低迷するライアン・ビト(比)は10カ月ぶりのリング。
必死に踏ん張るヨーッセンゲン(タイ)相手に3RTKO勝利。元世界ランカーの実力を見せた。
セミは角海老宝石の那須 勇樹。
昨年12月、ロッキー・フェンテスの持つOPBFフライ級タイトルに挑むも完敗。
今夜は復活と生き残りを懸けた試合だったが、比国の中堅レネ・ダッケルの右で3Rにダウン。
その後、ボディを効かせ逆に追い込むも6R再びの右で上唇を大きく切り裂かれTKO負け。
メインは長井 祐太(勝又)の久々の爆発力を期待したが、まだ戻って来ない。
今夜の相手は相性も良くなかったのだろう。
長身からいきなり振って来るタイ人のロングはまさに突然で、得意のカウンターを取れない。
相手は器用ではないが、間合いを外す事に長けていた。
序盤を攻めあぐみポイントはタイ人に流れただろう。
最後は6R、左ボディ一ブロウ一発から連打をまとめレフェリーストップを呼び込んだのは流石だったが、かつての切れるパンチ、そして活きのいいボクシングを再び見たいと願う。
深刻な事件の前には、時として先触れと言いたくなるような予兆的な事件が起きる事があります。
自分の経験で恐縮ですが、JR福知山線の脱線事故が起きた時私はある予兆となる事故を思い出したものでした。その事故が起きたのは脱線事故から遡ること3年の2002年、人身事故の救命活動中の救急隊員を特急列車がはねるという考えられない事故でした。http://www.47news.jp/CN/200211/CN2002110701000435.html事故原因は「一刻も早く運転を復旧をしたい」というJR西の経営優先・安全軽視の姿勢にあることは明らかで、所轄の消防は激怒し「今後はJRから要請があっても出動しない」とまでコメントしたと記憶しています。JR西は当時競合私鉄とのスピード競争に血道をあげており、定時運行の為に発車時警告を「ドアが閉まります」から「ドアを閉めます」に変えたりもしていました(現在は戻している)。事故後にメデイアによってこのようなJR西の経営方針は遡って参照されましたが、それは余りにも遅い批判でありました。なぜその当時に「JRはおかしい。このままでは大事故が起きる」と警告出来なかったのかというと、それはJRがメディアにとって大スポンサー・広告主であったことも少なからず影響したのでしょう。JR批判が載った雑誌はKIOSKで販売しないというような言論封殺も当時行われていました。大事件・事故が起こって始めて批判が起きるではメディアの存在意義はないのではないでしょうか?
ボクシング界で今進行している、JBCの組織改変や制度変更、そして奇妙なメディアとの癒着関係への疑問の表明は、僭越ながら未だに当HARD BLOW! 以外ではトンと目にする事もありません。プールされた健保金がどこに行ったのか?安全対策はどうなるのか?大手ジムの会長がJBCに入って審判員の人選や採点面で競技の公正は確保されるのか?誰も疑問に思わないのでしょうか?業界人やファンの無関心は不気味ですらあります。
そんなJBCを巡ってまたも脱力するような情けない事件が起こりました。世界戦で来日するはずのボクサーが来日せずに、代役を立てたものの統括団体から世界戦の認可が下りなかったというのです。http://www.daily.co.jp/newsflash/ring/2013/07/17/0006167562.shtmlテレビでお馴染みの具志堅会長も「こんなことは初めて」と言う異常事態です。失礼ながら殿堂入りマッチメイカー氏が組んだ試合にしては余りにもオソマツな仕事ではないでしょうか?これはプロとして恥ずべき事態です。そして「一国一コミッション」を金科玉条として組織防衛のための組織防衛に汲々とする現JBCはもはや、「プロモーターが組んだ試合をただ機械的に管理運営すれば良い」と考えているのではないか?という疑問すら浮かびます。「日本国内では我々以外にはボクシング興行はさせない!」と言う自負心に比べて、管理能力の実態が伴っていないのではないでしょうか?まあ「英語が複雑で間違えました」で無実の人間に濡れ衣を着せちゃったJBCの能力では、海外の統括団体とのコミニケーションにトラブルが生じる事もやむを得ないのかも知れません。
現体制になって起こっている様々な『変化』が、今後ボクシング界に起きる重大な事件の予兆ではないかと思えてなりません。
緑の党だけには入れたらイカンと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)
今月もボクシング専門二誌は、分かっちゃいましたが見事に対照的な記事内容でした。
「まともな方の専門誌」ボクシングビート誌はボクシング界にとって喫緊の問題である『村田ルール』についての分析記事を掲載しました。アマプロ双方の言い分を丁寧にひろいつつ、AIBA・IOCとWBCとの代理戦争的な側面にまで言及した記事内容は専門誌らしい深く落ち着いた内容でありました。
一方「つまらない方の専門誌」ボクシングマガジンには、先月号の「日本ボクシング界の秩序を守るために」に続くトンデモ記事が掲載されております。さすがに今月はカネ出すのがバカバカしいので手元に雑誌自体はないのですが、その記事はJBCの通達によって「網膜はく離は即引退」というルールが変更になったことについての分析記事であります。これは重要なルール変更であり伝えること事態はとても有意義なことだし、医療技術の進歩や運用面の実態など取材もしてあるのですが、なんとその結論が「JBCが決定したルール変更は問題ないけど、なんか事故があったらそれは選手の自己責任だ」という物凄いものなのです。例えばプロモーターや所属ジム、テレビ局といった周囲の人間の思惑によって試合を受けたボクサーも失明すれば自己責任になっちゃうのでしょうか?というかそんな野蛮な制度設計で現在の社会でエンタテイメントとして存在出来るのでしょうか?健保金の改悪とシンクロするかのようなこの健康軽視+無責任感覚を批判するのでなく「選手の問題」と言ってしまうとは…。
実は二誌の報道姿勢は、その対照的な表紙に如実に現れています。ボクシングマガジンが先月は井上尚哉、今月は村田諒太の単独の写真であったのに対して、ボクシングビートの今月号は村田と柴田、井上と田口という対戦する4者の同じ大きさの写真を並べたものでした。テレビ局が推す『スター候補』を露骨にプッシュし対戦相手は『踏み台』扱いていると思しきマガジンに対して、ビートは注目選手を取り上げつつも試合そのものに焦点する極めてスポーツライクな目線であります。専門誌であればこそスター候補が現れたと世間と一緒にはしゃがずに、競技として扱うのが王道ではないでしょうか?表紙は雑誌の顔ですが、悪相なのはどっちかは一目瞭然だと私は思います。フジテレビや電通が運んでくるゼニのオコボレを虎視眈々と狙う顔付きが表紙に出てしまっていると言ったらうがち過ぎでしょうか?
マガジンって誰が読んでるの?と感じる(旧徳山と長谷川が好きです)
高山勝成選手へのJBCライセンス発給がアナウンスされ、ひとまず国内での試合開催が可能となる運びとなりました。才能あるボクサーの活躍が国内で見れることになったことは一ファンとして非常に嬉しく思います。高山選手には、久々の日本のリングでまた思いっきり暴れて欲しいと思います。
さてこの決定に対してJBCはどのようなアナウンスをしているのやら?とJBCのHPを開いてみれば、世界王者の復帰と言う大ニュースの告知はどこにもナシ!何らかの見解を示せば裁判での主張と必ず齟齬が生じるわけですから、何も言わない(言えない)ちゅうところでしょうがしかし放置と言うのはまともな大人のやってる組織とは思えません。一方で安河内氏の解職や林マッチメイカーの記者会見、大沢選手の処分、解雇職員にイヤミをぶつける森田事務局長談話についてはHPの目立つ位置にバッチリと「JBCからのお知らせ」が掲示されています。ファンにとって有益な情報は「お知らせ」せず、裁判がらみのネタだけ載せるという姿勢は分かりやすくて大変よいと思います(魚の死んだ目で)。
しかし今回の裁定は、JBCサイドの裁判での主張とは真っ向矛盾する事態と思われるのですが一体どうやって訴訟を継続するおつもりなのでありましょうか?
このところ「公益から一般法人への移行」「健保金の改悪」(協会の同様の制度は死亡時のみだそうなので、今回の改訂は明らかに安全軽視です)「大橋会長の理事入り」と矢継ぎ早にJBCの屋台骨を揺るがす制度変更が行われています。今までボクサーが納めてきた健保金のプールは一体どうなったのでしょうか?現事務局長である森田健氏の大学の後輩にして愛弟子の浦谷信彰氏が事務局長代行へと昇進し、権力の禅譲と見られるような動きも起こっています。一般法人に移行したのだからいかなる私物化も許されると言うわけではありません。ファンに納得のいく説明をして欲しいと思います。
そしてファンの皆様、業界内の皆様、選手・OBの皆様には、正義の名の下に行われた安河内氏の排除・一部職員の解雇後に「JBCやボクシング界は良くなったのか悪くなったのか?」を今一度冷徹な目で見て欲しいと思います。かつて安河内氏は亀田史郎氏の『テープ発言』を受けて亀田一家との癒着しているかのようなイメージを付与され、それがファンからもハシゴを外される遠因となりました。しかし安河内氏の排除後も亀田一家の試合の判定はおかしなままだし、和毅の海外挑戦が決定し大毅のIBF決定戦出場が噂されるなど、むしろ現体制になって亀田一家の勢いは増してはいないでしょうか?村田の公開プロテストと東洋・日本王者との六回戦デビュー、井上尚哉の急激なランキング上昇、名城信男の暫定王者戦など、何でもアリの無原則状態も促進しています。いまJBCで起こっていることは瓦解現象ではないのかと思えてなりません。
JBCからブレスリリースあり、本日の資格審査委員会で高山勝成選手の国内ライセンス再発行が認められたとのこと。
色々な問題も含んでおりますが、先ずは自分の力で道を切り開いた高山選手と陣営。
祝電の代わりに「おめでとう!そしてお見事でした!!」と伝えたい。
B.B
公益法人から一般法人に移行したJBCでは、今日(7月4日)になってもHP上ではなんら告示はありません。裁判がらみのネタはセッセとリリースしたりする割には、必要なアナウンスは無いというガバナンスの不在ぶりまでツッコミ出すと際限がないので辞めますが、さてひっそりと行われたそのリニューアルの内実に少し気になる点が、私にはございます。
これ結構デカい話だと思うのですが、日本プロボクシング協会の大橋秀行協会長がJBCの理事になっているのです。
http://www.jbc.or.jp/outline/officer.html
JBCはボクシング興行を管理・監督する立場の組織で、プロボクシング協会とは利益相反の関係であり、その両方に所属して活動することにはどう考えても矛盾があります。ランキングの移動に始まり、レフェリーやジャッジの人選、当該試合の判定結果について『邪推』を生む温床となる人事だと思います。原子力規制委員会に東電や関西電力の社長がいるようなもんであります。
大橋氏がガバナンス無き現状を憂慮して、火中の栗を拾わんとJBCに飛び込んだと言うならそりゃそれでイイ話のような気もしますが、どういう過程でこの様な異例の人事が行われたのかと言う説明があってしかるべきだと思うのですが。
思えば亀田一家のスキャンダルの原点にも、反則の見逃しと見られるレフェリングや不可解な採点がありました。いま業界を挙げて売り出している井上尚弥選手の試合でもし裁定や判定で程度問題はさておき大なり小なり疑惑が生ずれば「大橋がコミッションにいるんだからそりゃ贔屓するだろ」「レフェリーやジャッジの人選は大橋の意のままだ」というような意見が、事実関係は無視してネット論壇を駆け巡るでしょう。現状では「井上は亀田とは違う本物だからそんな心配ないよ」と言う感覚の方が多いと思いますが、テレビ局がソロバン勘定しながら先行投資しているという背景は亀田のケースと変らないわけで、彼らにとってはボクシングというスポーツの価値は二の次であるという冷徹な目線が必要だと思います。本物の才能だからこそ小細工なしに、厳格・公正にやって欲しいと願ってやみません。
プロ野球選手会のコミッショナー辞任を求める声明にグッと来た(旧徳山と長谷川が好きです)
ワイン樽などを外側から強く固定する為の金属の輪を「たが」と言います。
辞書を引くと「規律や束縛から逃れて,しまりをなくす。羽目を外す 」とありますが、現在の日本ボクシング界の現状がまさにこれだと思います。
箍を外し、浮かれまくっての結果がこれです。
コミッション理事に初めて協会長(興行サイドの人)が就任となりましたが、前代未聞であります。
これでJBCはルールの運営も管理も独自では出来ないほど「無能になった事を世間に証明してしまった」という見方があります。
7月1日にJBCは公益法人から一般に移行したそうですが、ボクシングという競技の公益性に固執する事無く、さっさとそれを捨て去ったという見方も出来ます。
八百長問題で国技としての存続さえ危ぶまれた角界でさえ、なりふり構わず、それこそ死に物狂いでそれだけは死守した。
ボクシング関係者は怒りを覚えないのでしょうか?
オリンピアンに特例のA級ライセンス発給でも、何の疑問も呈しない専門誌を含むボクシングを取り巻くメディアにも唖然としますが、興行サイドの言い也では最早他の格闘技団体と同列となってしまったと言っていいでしょう。
これまでも様々な問題はありましたが、それでも辛うじて日本ボクシングの伝統と誇りは保たれて来たはず。
数年前の亀田問題でも業界の中であれほど批判が起こったではないですか。
今や日本のエースとなった山中選手の王座決定戦でさえ、ファンや記者クラブからは疑問の声があったと聞きました。
今のボクシング界は筋も通らない滅茶苦茶な事が起こっても、誰も声を上げない。
どうしてこんな事になってしまったのか?
それはボクシング界の箍(たが)を外し去ってしまったからだと思います。
その役目を担っていた人物を排除した途端のこの惨状です。
果たして一部の愚かな人たちだけが「そうだ、そうだ!」とやったんでしょうか?
皆んな本当に無関心で(あるいはそれを装って)いられるのでしょうか?
先人達が丹念に育て守り抜いてきた樽の中身は無残にも捨て去られたと思います。
取り返しがつかない事に気付かないのか、それとも皆が諦めてしまったのでしょうか?
箍を外した樽は大変な作業でも、もう一度一から組み直さなければなりません。
こぼれたワインは元には戻りませんから、ここからまた酒造りを始めなければならないかも知れない。
こちらの方がよっぽど大変な作業だ。
しかし、強固な箍(たが)はやはり必要です。
B.B