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HARD BLOW !

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合14

 谷川氏への取材無しに悪意の記事を書いた上に、トンチンカンな説教までかましたボクシングマガジン誌(以下BM誌)の記者氏はなぜにそこまでJBCにベッタリの取材姿勢なのでしょうか?現在訴訟が進行しているという事実を踏まえれば、一方的な視点で記事を書くことはメディアにとっては本来リスキーなはずですが、BM誌の中ではきっと司法の判断を待つまでも無くJBCの正しさは立証されているのでありましょう。

 社会常識をフライングするハードルが異常に低い、刺激に満ち溢れたBM誌の過激さに、こちらも負けてはおれません。緻密な取材をしているであろうBM誌の執筆陣の皆様に一歩でも近づくべく、私も現在まで知りえた事を前提にここまでに至る背景を推理してみたいと思います。素人探偵の憶測ではありますが、座興と思ってお付き合い下さい。

 昨年6月、谷川氏の解雇理由となった新コミッションの構想に絡んで、高山勝成が夕刊紙上で事実でない「新団体のエース報道」をされました。谷川氏の解雇を正当化するべくJBC中枢と近い御用記者が撃った援護射撃だと私は睨んでいます。ライセンスを返上している高山はJBCにとっては部外者であり、その時点ではまさか認可前にIBFのタイトルを取るとは予想されていなかった選手。叩いたところでJBCは痛くも痒くもないはずでした(結果的には高山がIBFタイトルとってJBCは大失態になりましたが…)。高山陣営は谷川氏とも旧知であり表面上は説得力もあります。しかしそれに対して高山陣営が反論し、JBCサイドは谷川氏の解雇理由を失います。事実でない事を堂々と書けば、反論を受けるのは当り前とは思うのですが、この辺の見通しの甘さは不可解ですらあります。高山とIBFのラインが解雇理由としては根拠薄弱となり、困ったJBCが解雇の正当性を維持するための新たないけにえにしたのが大沢陣営ではないか?と私は推察します。大沢陣営に対してJBCはライセンスの発給という生殺与奪権を握っており、非常に強い立場にあります。過去に類似した事例があるとは言え大沢サイドが未承認タイトルを保持していたというのは事実であり、徹底抗戦してJBCに睨まれるのは得策ではないという判断も働く。しかし一年のライセンス停止という処分は余りに過去の事例と整合性がない。とはいえ軽い処分では、「谷川氏が解雇に足る悪事を働いた」と法廷で主張する論拠とならない。谷川氏の解雇を正当化するためには、大沢陣営のやったことは悪質でなければならず、処分は重くなければならないのです。そこでBM誌が大沢陣営に対するサスペンドを正当化する世論形成(まああくまでボクシング村内の世論ですが)をするべく、「大沢は谷川氏の新コミッション構想に巻き込まれた」と問題職員と自称マッチメイカーの悪質さを強調する援護射撃を行った、とこういう筋書きを私は想像します。さらに係争中の谷川氏が選挙に出ると聞けば、子飼いのゴシップライターを使っての妨害工作で出馬を潰して、対立している相手の人生を徹底妨害し裁判を側面支援までする。これらの事例におけるマスコミとの華麗な連携振りはさすがと言うほかありません。ただこういう手法は総会屋の発行する機関紙とか、極左の中傷ビラのようなセンスであり、商業誌に掲載される報道記事としていささか志が低いのではないでしょうか?

 BM誌の記者として大沢問題を取材してる記者の中には、日本で一番権威のあるノンフィクションの賞の候補になった方がいるということも、私は聞き及んでおります。そのような実績のある方が平気でイエロージャーナリズムのような手法を使っていると知った時は、文筆の世界に少なからぬ幻想を持っていた私には大変ショックでありました。(この項続く)

 当連載は連休明けまで休載いたします。再開までしばらくお待ちください。

 連休は家族をほったらかして遊んでくる(旧徳山と長谷川が好きです)

 
 

まだ終わらない・・ボクサーの心

4月26日 神戸市立体育館

56.2kg契約10回戦
長谷川穂積vsウィラポン・ソーンチャンドラシット(タイ)

年内の世界タイトル再挑戦を計画している長谷川選手だが、フェザー級でジョニー・ゴンザレスに痛烈な敗北を喫して以来連勝で世界前哨戦と銘打たれたリングに臨んだ。
減量苦から二階級上げてフェザー級世界王者となったがこのクラスではかつての輝きは見せられなかったと思う。
結局バンタム級からの転向は短期間でフェザー級に対応する体が作れなかったか。
あるいは持ち味であるスピード瞬発力に衰えが見えたという声もある。
歴戦のダメージはあるだろう。32歳という年齢も老けこむ歳ではないがこれは個人差がある。
今回は目指すスーパーバンタム級より約1kg重い契約の試合だったが、それでも減量にはかなり苦戦したようで計量前日は眠れなかったらしい。
練習でもモチベーションが上がらなかったか好調の二文字は見当たらない。
それでも長谷川選手がリングに執着するのは何故だろう。

「自分が一番強い事をもう一度証明したい。自分の為だけに戦う」という長谷川選手。
しかし、自分をそしてファンを納得させるかつての輝きの片りんでも今夜こそ見せられるだろうか。

初回、長身の広いスタンスからオーソドックスの大振りな右の一発を狙うウィラポン。
下からすくい上げるようなフックだが、ジョニー・ゴンザレスに打ち倒されたあの右と同じような軌道だ。
格下のアンダードッグだが元王者のウィークポイントを研究して来たのだろうか。これを一発二発と喰らう。
不調時の真っ直ぐ下がる癖と相変わらず戻りの遅い左ガードは直っていなかった。
長谷川選手特有の探り針である右から左のカウンターを狙うが、リズムに乗れない。
3ラウンド、それでも最後は打たれ脆いタイ人を強引に連打で仕留めた。

結果だけで言えば圧勝だったが、試合後のコメントは歯切れが悪かった。

「相手が相手なんでまぁ・・。試合勘を忘れないようにしたかった」
「体も重かったし足も動かなかった」
「何故か相手の右が見えづらかった」

良い材料は正直全く見えなかったが、テレビのインタビューでは最後にこう語った。

「リゴンドーとやって見たい。1パーセントも勝てる見込みは無いと思いますけど、自分の力を引き出してくれると思うので」

テレビに何度も映し出される長谷川選手の過去の快進撃は、彼の引退後には胸の透くシーンとして心も熱くなっただろう。
しかし、今夜だけは哀しくて悲しくて仕方が無い。
ボクサーの心は終わらないのだ。
そう思う事自体が長谷川選手に失礼なのかも知れない。

試合前「もう一度証明したい。自分の為だけに戦う」と言った長谷川選手だが、本当に理解して奇跡の復活を信じているのは長谷川穂積自身だけなのかも知れない。
そして、ファンを会場を熱狂させたあの興奮とかつての輝きをもう一度見たいと一番に願うのは、彼自身なのだろう。

それは長谷川選手だけでは無い。
そうしたボクサーは何人も見て来た。

僕らはただ心の中で見守るしかない。
そう思ったファンも多かったのではないだろうか。

B.B

徳山昌守逮捕の報を聞いて感じた事

 一言で言うとかなりビックリしたわけですが、プロで頂点を極めた人が殺傷力を秘めた拳で一般人を殴るなどとは一言で言って論外の愚行であります。被害者の方に誠実に謝罪し、円満な解決をはかって頂きたいと切に願います。

 梶原一騎の自伝「反逆世代への遺言」の中に、彼が編集者への暴行で逮捕されて留置された時の様子を描写した印象的なシーンがあります。留置中の梶原を若い看守が「先生、先生」と呼び敬語で接してくる。「君ネ。私は今八五〇号なんだから、先生なんて言うのは止めてくれよ。」という梶原に、若い看守は「いや、自分達は先生の作品を読み育ってきましたから、今急に呼び捨てなんかできません」と答える。「逆になんだか惨めな気分になってしまった」という梶原氏は、同書でこの若い看守の態度を「私の引き起こした事件の最も痛烈な批判者だった、と思う。」と振り返っています。この本自体は強がりや言い訳も多くて、歯切れが悪い部分も多々あるのですが、このシーンの描写は真に迫ったものであったと思います。痛烈な批判者となるようなファンを持てたのも、また梶原の作品の力であり、もう一度創作の世界に帰る原動力だったのであろうと。

徳山にとって最も痛烈な批判者となりえるのは、私のようなファンではなく報道では事件の原因となったと言われている幼い娘さんではないかと思います。お父さんが自分が原因で逮捕・勾留されたと知ったらきっと悲しむでしょう。アホな事をしたらアカンよチャンプ。

 今でも徳山が好きです(旧徳山と長谷川が好きです)

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合13

 ネット上に悪評を流布されるという逆風の中での求職の末、政党の職員(維新の会ではありません)と言う新しい職を得て働き始めた谷川氏に、ボクシングマガジン誌(以下BM誌)の取材記者を名乗る関西在住のフリーライターから同誌3月号発売前日の夜(2月14日)、突然電話が入ります。電話の主旨は大沢のサスペンド問題を取材なく掲載したことの報告と「新コミッション」画策についての取材依頼でした。谷川氏はBM誌のこの電話に困惑しました。好意なく書かれていることが明らかな記事の事後承認を求める上に、一方的に大沢問題も含め谷川氏に疑惑を向ける報道姿勢に対応の方法がなかったのです。そもそも係争中の事案について当事者がマスコミ相手に話したがらないことは普通の想像力があればわかるはずです。谷川氏は質問を制して、この取材記者に尋ねました「あなたは一体何がしたいのですか?」と。

 このライター氏の返答は驚くべきものでした。彼は今回の事案に全く縁もゆかりもない、リングで重大事故にあったボクサーの個人名を上げて以下の主旨の発言をしたのだといいます。

 「彼のようなボクサーが命がけで積み上げたコミッションの内部留保をあなたはJBC相手の裁判で消費している。彼の家族がどれだけ苦労しているか考えた事があるのか?あなたの裁判はボクサーに仇なす行為だ」と。

 胡散臭いルポライターが、取材対象を挑発し怒らせて暴れる写真を撮ったり暴言を引き出したりするシーンがありますが、件のライター氏も前夜にそういう安もんの二時間ドラマでも見て「この手があったか!」と即実行されたのかも知れません。しかしこういう取材手法で書かれた原稿が「調査報道」や「検証」の名に値するとは私には到底思えません。

 谷川氏はライター氏の話の余りの飛躍振りに絶句しました。「一体何の関係があるんだ?」頭が混乱します。そして、はたと思ったのだといいます「こいつらは俺が抹殺に値するような極悪人だと思ってるんだ」と。

 先入観を排して双方の言い分を聞き、事実を持って検証するのがジャーナリズムのイロハのイではないでしょうか?このライター氏の歪んだ正義感というか岡っ引き根性は一体なんなのでしょう?いみじくもスポーツの専門誌が事実関係の検証報道の名目でやっている取材なのですから、実話雑誌やスキャンダル雑誌まがいでは看板が泣くと言うものでしょう。ベースボールマガジン社の名刺を切ってこういう取材をしてると言うライター氏の度胸にただただ感服しますが、記事の質については問うだけヤボと言うものでしょう。専門誌がつまらない理由が痛烈に分かりました。(この項続く)

徳山昌守逮捕の報に心底ビックリした(旧徳山と長谷川が好きです)

日韓親善対抗試合 キム×岩渕

三度防衛した日本スーパーライト級王座を返上し、東洋のベルトに狙いを定めた岩渕真也(草加有沢)。21勝中17KOという破格の強打が魅力だが、対するチャンピオンのキム・ミヌク(韓国)も、デビュー戦で黒星を喫して以来9連勝中(7KO)。
KO決着必至のこのカードは、今回で三回目となる「日韓親善対抗試合」のメインとして組まれた。

新人王戦の予選二試合の後、全出場選手がリングに上がってのセレモニー。「ソナギ」こと柳明佑氏等も登場してなかなか華やか。
しかし、現在の韓国ボクシング界の状況を詳しく知っているわけではないが、かつての強豪国のイメージを失って久しい現状では、メイン以外の試合は、果たして内容として盛り上がるかどうか…という懸念もあったが、結果的には意外な展開となっていった。

日韓戦セレモニー

日韓戦としての第一試合、冨田正俊×キム・イェジュンのスーパーフライ級4回戦は、オープニングカードとしてこれ以上ない劇的な幕切れとなった。
客席の冨田応援団から「相手はウェイトオーバーしてるんだから腹から行け!」と声が飛んでいたが、確かにキムは調整を失敗したようだ。

3分のうちまともに動けるのは30秒から長くて1分。それ以外の時間は大きくリングを回って休んだりくっついて休んだり。初回のみ、その元気な時間帯の連打で(私の採点では)ポイントを取ったが、2回3回は、冨田の細かい攻撃とスタミナロスで一気にスローダウン。
最終4回も冨田優勢。自身初のKO勝ちに向けて怒涛のラッシュを仕掛けるが、もう残りは数秒。うーん残念、判定勝ちか…と思った瞬間、打ち合いの中で放った、破れかぶれ気味にも見えたキムの左フックがジャストミート!ガクッと腰を落とした冨田に右フックを追加し、冨田がキャンバスに膝をついたと同時にゴング!

カウント内には立ちあがったものの、4回戦でダウンの「-2点」は非常に大きい。
結果は、38-38が一者、38-37(私もこのスコア)が二者で、キムの大逆転勝利となった。
かつて、「クレイジー」と名乗っていたキムという選手が、最終回残り1秒で逆転KO負けを喫したことがあったが、今回のダウンもほぼゴングと同時。あの試合ほどではないにしろ、ドラマチックな逆転劇であった。

次は珍しいヘビー級の4回戦。
大和藤中(金子)に対するは、韓国クルーザー級6位というイ・ギョンハク。
何年も前のことだが、小堀佑介がモーゼスに負けた時のアンダーで、翁長と韓国1位のランカーとの試合を見た時、その韓国選手の技術の無さに驚いた記憶がある。

その韓国ランキングで6位かぁ、っていうか、クルーザー級に少なくとも6人の選手がいること自体がすごいな、と思いながら見たこの試合は、2-0でイのへばり負け。
大和も、もう少しでダウンを取れそうな場面もあったが、上背で上回る相手と押し合いへしあいでこちらもへばったか。

第三試合は、2012年全日本新人王でフライ級12位にランクされている長嶺克則と、韓国スーパーフライ級2位のシン・ヒョンジェとのフライ級6回戦。
これは7戦全勝4KOの長嶺の完勝。シンは苦しいながらも決定打は許さなかったが、4回のラッシュでシンの抵抗力が弱ったところでストップ。

第四試合。ガーナ出身のクウエ・ピーター(KG大和)は、一力ジムの椎名との試合を観戦したことがある。ビルドアップされた褐色の肉体を見ると、無条件にメッチャ強く見えてしまうが、そこはまだ6回戦選手。
ちょっと動きが固いかな、と思った瞬間、キム・ジンスの左ストレートでピーターダウン!

ピーターの背中側から見ていたかぎりでは、試合が終わるほどのパンチには見えなかったが、立とうとして足がもつれ…を二回繰り返し、どうにかこうにかカウント8で立ったものの、レフェリーは両腕を交差。
続行可能を訴えるピーターに、自分の目を指差しながら話しかけていたところをみると、視線が定まっていなかったのだろう。

こうして、なんだかんだいいながら2勝2敗、大将戦で決着をつける、というお膳立てが整った。
予想した通り、総じて技術では日本人選手がかなり優っているものの、それだけで勝負が決まらないのがボクシングであり、他の競技でも白熱する日韓戦ならば尚のことである。

ここでメインの前に月刊表彰の発表、その後に、先日五十嵐を破ってフライ級王座を獲得した八重樫東へのベルト授与式が取り行われた。

八重樫東

インタビューで、「フライでもライトフライでもいいから、井岡選手にリベンジしたい」と話し観衆を沸かせた八重樫。日韓戦についても「僕は先日の試合、コリアンスタイルで王座を獲りました。日韓それぞれいいところを伸ばして、お互いが強くなるようになれば」とコメントしたが、相変わらず人の良さがにじみ出てる感がある。


そしていよいよメインのOPBFタイトルマッチ。
岩渕のパンチがまともに当たればチャンピオンも無事では済まないが、逆もまた同じことが言えそうだ。
初回は両者とも慎重に入り、静かな立ち上がり。

岩渕×キム

サウスポーの岩渕、この試合全体を通じて、右のジャブは終始キムの顔面を捉えていたが、そこから左の大砲へがなかなかつながらない。
対するキムは、直近4試合がすべて2回KOという結果ほどには「超強打者」とは感じない。むしろ、よくまとまった選手というイメージで、この試合でも、深いダメージを与えた強烈なクリーンヒットというものはほとんどなかったように思うが、初回から右のタイミングは合っており、岩渕の苦戦が予想された。
2回に岩渕の左が当たり、一瞬相手を止まらせるシーンもあったが、最初の4回はやや王者ペース。
公開採点も40-38、39-37、38-37で王者リード(私の採点は39-37で王者)。

12ラウンドあるといいながらも岩渕は挑戦者なので、この採点の結果を受けて、まずは8回終了までに五分以上には持ち込みたいところ。
一方のキムは、ここまでの戦いで真っ正面からのぶつかり合いは危険と読んだのか、変わらず右、右で来るが、強弱やタイミングの緩急をつけて、岩渕に先手を取らせない。
私が見た中でいえば、(右と左が逆であるが)沼田康司と中川大資の試合がこれに近いか。
それでも個人採点は、8回終了で76-76と並んだが、ジャッジ三者は79-74、79-75、78-75で王者支持。
うーん、王者リードはわかるが、二者が79(王者は1ラウンドしか落としてない)とつけているのはちょっと疑問。

さすがにもう焦らなければならないラウンドになってきた。岩渕は9回のゴングと同時に飛び出す。
しかしキムも流石に王者。明らかに攻勢を強めてきた岩渕に対し、下がって捌くのではなく、こちらも前に出て迎え撃つ。ビッグパンチはないものの、空転させられ、細かくパンチを食っている岩渕もキツい。ここが正念場。

迎えた10回、打ち合いの中でついに岩渕の左がクリーンヒット。さらに返しの右までフォローし、明らかに王者の動きが止まった。この時点で多分、時間は1分以上はあったと思うが、嵩にかかって攻める岩渕に対して必死に凌ぐ王者。
ここでダウンが取れれば、2点分詰めたという勢いを得て、精神的にも残り2ラウンドを優位に戦えたと思うのだが、さらなる追撃が出来ないまま10回終了。

11回。一般的に最終回はどちらも死力を尽くすので、ここで踏ん張った方が勝ちに近づくというが、まだ10回のダメージを少し引きずっていたように見えた王者に対し、岩渕も疲労の色が見える。
単発で右のジャブ、アッパー等は当たるものの、序・中盤のように見合う時間が長い。
10回後半とこの11回で詰め切れず、回復を許してしまったことが最終的な敗着であろうか。
最終回はキムも王者のプライドを見せ、流すことなく打ち合いに応じて試合終了。
117-115、116-114、116-113の3-0でチャンピオンの防衛となった。

私の採点は、少し岩渕に辛くしたつもりだったが、計算したら114-114。しかし2、3ポイントで王者は妥当な採点だろう。
岩渕としては、序盤にゆっくり入ったまま、ほぼ前半まるまるギアが上げられなかったことと、10回の後半から試合終了までの7、8分間に力を爆発させられなかったことが敗因だと思う。
日本王座を返上し、あとは上だけを見続けてこの試合に挑んだこととは思うが、結果は結果として受け止めなければならない。
何と言ってもあのパンチは魅力的であるだけに、まずは体が無事なこと、そしてこの試合で何か得たものがあると感じられたなら、またリングに帰ってきて欲しい選手である。

(ウチ猫)

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合12

 3日開いただけでも随分ご無沙汰した気になる当連載ですが、おかげさまで谷川さんの名前で検索をかけて辿りつかれる方もチラホラと出て参りました。まあ大した読者数じゃありませんが、コツコツと書いてきた甲斐が少しはあったのでしょうか?

 「ボクシングの統括機関を懲戒解雇された問題人物である」という悪意ある報道によって、谷川氏は一旦は表明した立候補を取り消し出馬を断念しました。地方組織が無いに等しい新興政党の落下傘候補であった谷川氏にとって、このネガティブキャンペーンは致命的なものであったのでしょう。ボクシング界から叩き出すだけでなく次のキャリアへの道まで閉ざすという、この蛇のような執念深さは一体どんな動機から生じているのでしょうか?想像すると薄ら寒くなります。まさか公益法人がゴシップ記者を番犬代わりに飼っていて、敵対者をマスコミやネットの匿名掲示板やブログのコメント欄を使って中傷しているなんてことは、よもやないとは思うのですが…。公益法人であり厳格な組織であるべきJBC様におかれましては、このような疑惑が生じる余地はくれぐれも惹起しないようにして頂きたいものです。特に件のゴシップライターと親密な交際が噂される、王子様のようないでたちでお馴染みの試合役員氏は大丈夫だろうかと心配になります。このような脱法行為は色んな意味で氏にはタブーだと思うのですが…。

 読者の皆様におかれましては「本当に、そんなにひどいことがあるのかい?」とお思いでしょうが、谷川氏の受難はこれにとどまりません。出馬取りやめの後に、更なる報道被害が彼を襲います。今までは夕刊フジやサイゾーのWEB版というある意味イエローと言っちゃ失礼ですが、ぶっちゃけ報道機関としてはイマイチのグレードの媒体でのネタ記事に過ぎなかった氏にまつわる中傷が、今度はついにボクシングの専門誌にまで登場してしまいます。それはボクシングマガジン(以下BM)の今年三月号に掲載された「大沢宏晋に東洋太平洋王座剥奪、ライセンス一年間停止処分」という仰々しいタイトルのわりに中身は薄いという記事。近年のBM誌の低空飛行を体現するかのように目次と実際の掲載ページが違うのはご愛嬌としても、係争中の事案である谷川氏の解雇を「懲戒解雇」と元気一杯断定した上に、検証内容も「控え室に問題職員がいたから大沢も怪しいんじゃねえ?」というOLが給湯室でやってる噂話のようなレベル。記事中一番の脱力ポイントは『本誌は控え室での異変を記事にする事を検討したが、当時は「JBCの対応を待って書く」と判断した。今振り返ると猛省するしかないが』というBM誌のなんだか分からない言い訳部分。「問題だと思ったならそんとき記事にしろよ!」と言うツッコミ対策とはいえ余りに白々しい後付けぶり。ページ左下のカコミには非公認タイトルについての講釈も書いてありますが、後楽園のリング上で非公認タイトルのベルトを何本もかけてたクレイジーキム選手や承認前にWBOのタイトルマッチをやった西岡利晃選手については言及はなし。同じカコミ内で過去の未承認タイトルマッチを「JBCはノンタイトル海外遠征として対戦を容認しており」と注釈つけてるのに、記事本文では大沢が遠征届にノンタイトル10回戦と書いといて実際にはタイトルマッチやったのは「悪質な隠蔽工作」とあって、同じページに矛盾する見解が並立する異空間に…。読者は困惑せざるを得ません。事実関係の検証も、過去の事例との比較もおよそプロの仕事とは思えない粗雑なものですが、私が何より問題だと思うのは、一年という時間を奪われた大沢選手の無念にたいする想像力の欠如です。

 記事の最後は大沢選手のしおらしいコメントでしめられていますが、世界ランクを順調に上げて挑戦の機会を待っていたであろう彼の無念を想像すれば、それが対外的な社交辞令的コメントであることは容易に分かるはずです。そのようの表向きのコメントの背後にあるボクサーの本音を引き出すことこそ取材記者の仕事ではないでしょうか?JBCの立場を代弁して、明らかに整合性を欠く不当な処分を肯定する提灯記事を書いた上に、ボクサーの思いを踏みにじったBM誌にはもはやジャーナリズムは不在であると思います。

 この記事が書かれた時点では谷川氏への取材は行われていませんでしたが、掲載誌の発売後に後追い記事を書くつもりなのか谷川氏の元にボクシングマガジンの取材を名乗る電話がかかってきます。果たして谷川氏から伺ったこの時のBM誌のライターの取材手法もまた呆れかえるようなレベルのシロモノでした。(この項続く)

 ボクシングマガジン大丈夫?(旧徳山と長谷川が好きです)

村田のプロ入りに思う。

友人に頼んでおいたDVDが今日届いた。

村田諒太選手(ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級金メダリスト)が、4月16日に行われたA級ライセンスのプロテストに合格したんだって?
この日のプロテストの模様をフジテレビが独占生中継していたが、見逃したのだ。

仕事を終え早速観ると、筆記試験の様子なども流されていたのが驚きだった。
三迫ジム所属で、トレーニング環境とマッチメークは帝拳が用意するというのもジム制度の改革か?とも思われたが、フジテレビと電通が介入しているとの事で村田選手の要望に応えたための措置だろうか。
なにしろ48年振りの、しかもミドル級金メダリストのプロ入りだ。
ボクシングファンとしても、二度とないかも知れない日本人初の快挙(金メダル獲得から世界王者誕生)に夢は膨らむ。多少の優遇措置はあって然るべきと思う。
A級プロテスト受験~即日合格発表、しかもリング上テレビカメラの前で合格証の授与式とはなんと斬新な企画だろう。

ん?ちょっと待てよ・・
プロテストってB級ライセンスまでだったはず・・

日刊スポーツによると、なるほど「極めて異例な」とあるが、コミッション発表も「特例」だそうだ。
頭の固そうなコミッション事務局長も粋な計らいをしたものだ。
関係修復に向かっていたはずのプロアマだが、今後おそらく再び軋轢を生む事であろうアマ連サイドへの配慮なのか、「アマの大功労者は特別待遇でお預かりします。絶対に世界王者にします。見て下さいこの受け入れ態勢を!」と精一杯アピールしているように見えたのは僕だけだろうか?
それとも興行サイドにねじ伏せられたのだろうか?
「ごーかくですっ!」と元気一杯発声した森田事務局長の珍しい?大声も半ばやけっぱちに見えたが・・

冗談はさておき、またもや特例だ。
過去にもアマスターの池山伊佐巳が異例の10回戦デビューしたが、プロライセンス取得時はB級だったはず。
鳴り物入りでのデビュー戦。相手は激闘男の中西清明。
昭和20年代、興行という側面が色濃く残る時代の話しだ(この辺りを知っている古参マニアの方いますか?)。
直近ではご存知の通り、井上尚弥選手がB級取得で8回戦(A級)デビューしている。
そう、こうした前例はあるがA級プロテストはルールには無い。
しかし、誰が誰の為に、何故こうも先を急ぐのだろうか?

違和感が捨て切れない。
興行主導で日本のプロボクシングに本当に未来があるのだろうか?

村田選手の実力を疑うのではない。
プロライセンスはプロボクサーの根幹に関わる問題なのだ。
特例は前例となり、やがて慣例となる。
ライセンス発行はJBCの最大の威厳でもあったはずだ。
昨日今日旗揚げした格闘技団体でもあるまいし、日本プロボクシングコミッションの誇りは一体何処に行ってしまったのか?


昨年の8月下旬、帰国して間もなくの村田選手は都内某所で語った。
今後の進路について触れた時、プロ入りの可能性は無いと答えていた。

「スポーツマネジメント等の勉強をして、そういう方面で貢献していきたいのが第一希望です。」
「プロ入りはゼロです。悩みますけど、第一希望でない、ということは成功しないと思いますので。」


アマチュアボクシングの頂点とプロの世界タイトルについても自らの価値観を語っていた。
男だなぁと思った。

それだけにプロ表明の一報は意外だったし、正直あの時の言葉は何だったのか?とも思う。
まるで女と別れるときに「あの時は本気だった」と言い訳しているようにも見える。
契約金がン億とも聞くと、金メダルを天秤にかけたのか?と邪推してしまう。
ぶっちゃけ村田は男を下げたと思う。

しかし、だ。
公開プロテストの模様を見れば、ファンとしてはやはり痺れてしまう。
コンビネーションもこれまでの中重量級の日本人には無いものだ。
回転力もパワーも申し分ない。
プロとしても世界で充分にやっていける可能性があると思う。
本人が言う通り、伸びしろもまだまだあるだろうし、華もある。
有言実行でプロの世界タイトル、王者の頂点に登り詰めて欲しい。

そして僕のようなくされファンの鼻を明かして欲しいと思います。


B.B

※4月21日早朝、加筆しました。

三谷ジムスパー大会 第15回戦気杯

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4月14日(日)、今回で15回目となる三谷ジム主催のスパー大会「戦気杯」が行われました。
今大会、会場は三谷ジム内ではなく、八千代台駅前のショッピングセンター「ユアエルム八千代台店」の、屋上駐車場スペースを借りての開催。

やや風が強いものの天気には恵まれたのですが、ジム以外でやるとなると、リングの設置を始め様々な準備が必要となります。
以前に他の場所を会場としていた時は、三谷会長が母校のボクシング部廃部に伴って譲り受けたというリングを使用していたと思いますが(記憶違いだったらすいません)、大会終了後に解体するのにもけっこうな人数でけっこうな時間がかかった為、当然組み上げる時はもっと時間がかかることが予想されます。
今回私は、会場の準備のお手伝いの為に7時過ぎ頃馳せ参じましたが、「まあある程度は昨晩のうちに業者の方がやっているんだろう」と思って到着してみると、見事に何もなし(笑)。

いやだとか大変だとか以前に、開始時間に間に合うのだろうかと不安になりましたが、今回のはレンタル業者から借りたようです。
いつものリングは、相当数のネジや釘も使用するものでしたが、今回のリングは一つも工具を使わずに出来る簡単なもの。キャンバスが柔らかくバンバンと大きな音がするので、主にプロレス等に使われているものじゃないかと思います。筒状に丸められた緑色のマットを運ぼうとしたら「あ、それはリングの周囲に敷くんですが、今日は使わないと思いますよ。場外乱闘はしないでしょ?」なんて言われたり(笑)。
ともかく、業者の方二人の指示に従いながら、10人程度の人間で1時間かからずにほぼ完成したのには驚きました。

メインディッシュのリング設置が終わり、客席用のパイプ椅子と本部席のテーブルを並べている頃に、選手たちが続々と到着してきました。
毎回思うことですが、参加者の皆さんの意識の高さは素晴らしいですね。リング横のイベント用スペースが、選手たちの待機場所兼当日の計量・検温をする場所でもあったのですが、進行がスムーズにいくようにテキパキと準備・運営に協力してくれます。

また、この大会には多くのちびっこボクサーが参加しますが、彼らがこれまた大変元気で、礼儀正しいのが気持ちいいですね。朝の「おはようございます!」に始まり、グロービングの際の「お願いします」「ありがとうございました」といった挨拶は、ほとんどすべての子どもがしっかりできていました。
毎回、開会式で今岡会長が大会モラルについて話をするんですが、「会場や施設は好意で貸していただいている」「多くの人が大会準備の為に働いてくれた」「何か事故や迷惑行為があれば次回開催ができない可能性もある」「だからマナーやモラルをしっかり守ってください」と、ほぼ同じことを毎回お話しされるので、参加者全員の意識に浸透してきているんだと思います。

そしていよいよ開会。
最初は「高校生の部」ですので、しょっぱなからスピード・パワーともにハイレベルな試合が期待されます。
第一試合からして、前回最優秀賞の三谷ジム・大網選手と、こちらも何度も賞に絡んでいる中村利樹選手(戸高)との対戦で、この勝者が即MVPかという期待のできる試合でした。
が、どうやら大網選手は、今回は不参加の予定だったのですが、中村選手の相手が棄権してしまった為に急遽埋め合わせで参加することになったようです。練習もほとんど出来ていなかった状態では、中村選手に敵わないのは仕方のないところ。
非常にセンスを感じるアウトボクサーですので、ぜひ次回は万全な状態で参加して欲しいと思います。

今回も中村選手は優秀賞(銀メダル)を獲得しましたが、金メダルは、前回大会で別記事を作りご紹介した三谷ジムのホープ、梅津奨利選手です。
実は彼、まだ中学生らしいのですが、釣り合う対戦相手が同級生の中にはいない為、「飛び級参加」での金メダル獲得となりました。

相変わらず手も足も速いし、力もついてきていますが、彼はアマよりプロでこそ真価を発揮するタイプだと思います。
松信トレーナーも指摘していましたが、頭を低くして潜り込んだり、体を使っての押し合い等、アマチュアでは技術として評価されない(むしろ注意を受ける、反則を取られかねない)ような戦い方に滅法強い。
そして前回も書きましたが、一発当たったところからの詰めの鋭さ等を見ると、プロとしても客を呼べる選手になるのではないかと期待してしまいます。
表彰インタビューで、なかば強制的に(笑)「斉藤司選手を越えます!」と宣言していた(させられていた?)梅津選手ですが、その可能性も大いにありますので、これからも更に期待しています。

オヤジの部では、前回記念すべき初勝利を挙げた勝谷誠彦さんが今回も登場。なんだかんだいっても、多忙な中で皆勤賞を続けているのは凄いです。
アナウンスによって読み上げられる「今日の意気込み」では、「番組は降りてもリングからは下りません!」と、つい最近のご自身のトラブルをネタにするあたりも流石(笑)。
試合の方は、前回降した高橋選手(三谷)と再戦し、リベンジを許す結果となってしまいましたが、試合後に今岡会長やトレーナーさんたちと敗因について真剣に話している姿を見ると、本当にボクシングが大好きなんだなぁと感じます。

その後、中学生の部があり、昼休みを挟んで小学生の部と続きますが、ここは実力が拮抗していて非常に見応えがありました。当然選手の頑張りがあってこそなんですが、マッチメイクの妙も感じましたね。極端な実力差の試合はごく僅かだったので、勝った選手も負けた選手も得るものが多かったと思います。

そして次の女子の部で、私は一人の選手に注目していました。
その選手はまだ小学生の女の子なんですが、私の記憶では前々回にRSC負け。次の前回大会で、「今回は最後まで頑張りたいです」という意気込みが読み上げられ試合に挑みましたが、これも初回にストップ負け。
技術どうこうの前に、一つ打たれると怯んでしまい、相手の波状攻撃が始まるともう、なす術もなく打ちこまれてしまう、というパターンです。

その子が今回も参加してきたので、心の中で応援しながら見ていたのですが、今回も最初にもらってから連打を許し最初のダウン(スタンディング)。レフェリーも、安全の為にダウンは早めに取っても、せっかくの試合なのでストップにはなかなかしないのですが、再開後も下がることしか出来ず、結局今回も、初回でRSCになってしまいました。
当然、涙を流しながらリングを下りてくるわけですが、こちらもなんとも言えない気分になりまして。
しかし凄いのは、これだけやられてて次の大会にまた参加しよう、というその心意気です。
女の子ですから、まさか「リングママ」や「リングパパ」が強制的にやらせてることはないでしょう。毎回一方的に殴られてるんですし。となると、本人が「今度こそは!」と思ってやってるんでしょうが、であるならば何としても頑張って欲しいと思います。
ボクシングを通じての人間形成とかなんとか、そういう難しいことは抜きにして、とにかく「相手に一発当てた」でも何でもいいから、何か成果を勝ち取る経験をさせてあげたいですね。

そしてもう一人の注目選手が、一般(31~50歳)の部に出場した、とあるオジサンです。
その人は、「等々力酸素魚雷」のHNで当ブログにも何度かコメントをもらったことのある、まあ要するに身内の選手なんですが、本格的なボクシングの練習は高校生の時以来20数年ぶり、という無謀なチャレンジです(笑)。
三谷ジムに所属の形で、林涼樹選手を参謀トレーナーに据えての参戦ですが、都内在住の為、普段は自宅近くのサンドバッグがぶら下がったガレージで自主トレをしていました。

結果からいえば、見事に判定で勝利したのですが、そこに至るまでの道程や減量の話、また、某元日本トップランカー(松信さんじゃないですよ)に協力してもらったり、ちょっと面白い話になりそうなので、今「スパー大会手記」を依頼しています。
こちらもいつか掲載できるかもしれません。

いつもにも増してダラダラと書いてきましたが、何度参加してもこの大会はいいですねぇ。
私の筆力では魅力の10分の1も伝わりませんので、ぜひ皆さん、観戦にきていただければと思います。
選手の皆さん、関係者の皆さん、お疲れ様でした。次回大会でまたお会いしましょう!

(ウチ猫)

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合11

 『インターネット検索大手グーグルの「サジェスト機能」で犯罪への関与を連想させる単語が表示され、名誉が傷つけられたとして、日本人男性が米国のグーグル本社に表示の差し止めなどを求めた訴訟の判決が15日、東京地裁であった。小林久起裁判長は名誉毀損を認め、表示差し止めと30万円の賠償を命じた。(産経新聞)』

 つい先日出た判決を報じるニュースです。一度インターネット上に悪評が広まれば、事実関係でどうであれ他人の人生に重大な損害を与える事が出来ます。複数の人格を自在に使い分けるという斬新な執筆スタイルで幾多の名文を残してきたライター氏も、「2ちゃんねるの神」を自称されるくらいですから、さぞこの手のやり口には精通されているのだろうとご想像申し上げます。

 谷川氏の場合は検索ウインドウに名前を入れると、私のスマホだと『懲戒解雇』という検索候補が表示されます。このことが生活する上でいかに迷惑か、少しでも想像力があれば分かると思います。

 その肝心の懲戒解雇ですが、既に谷川氏がご自身のブログで法的には会社都合の通常解雇であることは画像つきで証明されています。懲戒解雇どころか通常解雇ですら、行うには非常に厳しい要件があることは既に述べました。そして解雇が相当か不当か以前に、法的には『通常解雇』であるものを『懲戒解雇』と周知することは非常にアンフェアな行為です。それを知ってか知らずか、先般JBCのWEB上に出された森田事務局長命のIBF承認・加盟(どっちやねん)に際してのコメントにもなぜか『懲戒解雇』の文字が…。なんでIBFについてのアナウンスのついでに、辞めさせた職員にチョッカイ出すような余計な文章入れるのか理解に苦しみますが、奇妙な文章なのでちょっと引用してみましょう。(以下引用)

『またJBC職員でありながら一部の職員が(後に懲戒解雇等)独断で未承認団体と接触するなどの諸問題が発生しておりました。

 今後はJBCライセンスを所有するボクサーの皆さんが、何の心配も無く世界に羽ばたける事は JBCにとっても喜ばしい限りであり、JBCは今後ともボクシング界の更なる発展のために尽くしていく所存でありますので ご指導、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。』(引用以上)

 一時現実から逃避したいという悲しい心理の表れなのでしょうが、訴訟をしている相手の印象を、法的には間違っている表現を使ってでも貶めようというのは感心しかねます。JBCは『まだ一応』公益法人なのですから法律にのっとった正しい表現をしていただきたいものです。中小企業のワンマン社長が、行きつけのスナックでホステス相手に「あのヤローは働きが悪いからクビにしてやったぜガッハッハ」なんてやってるような絵が浮かんで悲しくなりますから。『まだ一応』公益法人なのだという誇りと矜持をもった文章表現をして頂きたい、という『ご指導』を僭越ながら私から差し上げたいと思います。(この項続く)

 GOOGLEの敗訴で訴訟が頻発するのではないかと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合10

 例えば板前でも大工でもいいですが、特殊な因習を帯びた世界にいた人が、その内部の必ずしも社会通念上合理的ともいえないような不文律に背いたことでその世界を追われる事はあるかもしれません。しかしその人が全く畑違いの世界に次の人生を見出した場合に、わざわざその世界に出張って行って悪評を広げたりするでしょうか?ヤクザでも破門状を回すのは稼業の中だけです。谷川氏の退職後の姿は、さながら白土三平が描いた抜け忍のようです。
 
 そもそも谷川氏のケースは現在係争中であり、当連載の初回で触れたように相撲協会の事例などと比較してもかなり判断が微妙となるケースです。一見中立的な報道を装って作為ある悪評を広げるような手法は卑怯者のすることだとしか私には思えません。
 
 人間の真価はどういう局面ではかれるのか?谷川氏の出馬に際して、メディアを使って足をひっぱる事に汲々としている人間とは対極の対応を見せた一人の男がいます。その人は2000年代の日本ボクシング界を代表する名王者、徳山昌守チャンピオンです。谷川氏の選挙区での第一声の場に駆けつけた徳山さんはその様子をブログに書いています(2012年11月25日の日記)。外国籍であることを公言されてリングに上がっていた徳山さんには衆議院選挙の投票権がないことは周知のことであり、また石原慎太郎が共同代表をしている維新の会の候補を応援する事は同胞の中でも軋轢がきっとあるだろうことも想像できます。そんな中でも縁があった人の門出に駆けつけずにはおれない徳山さんの生き方は、現役時代と同じく一貫しているとファンとしては嬉しくなります。良い時も悪い時も友人に寄り添える人は、人からもきっと信用されるだろうと私は思います。人を陥れるという利害で結びついている人たちはきっとこういう本物の人間関係は持ち得ないのでしょう。(この項続く)

ドネアvsリゴンドー 衝撃の結末!!

これまでのキャリア(対戦相手)比較や、リゴンドーが時折見せる脳の揺れやすさを考えれば(左フックで二度よろめかされたマロクィン戦が当日ウエィト128lb×134lbだったにしても)、5Rまでにドネアが倒すであろうという私の予想は常識的ではあるが妥当だったと思う。

リゴンドーが勝つパターンとしては徹底的なヒット&アウェーでドネアに打たせないこと。しかもこれまで最もパンプ・アップし好コンディションであったRラモス戦以上の仕上がりと、12R一瞬たりとも揺るがぬ奇跡のような緊張の持続を要してである。仮にそれが可能だとしてもパワーレスのリゴンドーがドネアから12R逃げおおせることはできまい。まして試合前のコメント通り前に出て打ち合えば早いRでのKOは必至…

だからリゴンドーは出ないだろう。モンティエルのようには。と思っていた。

しかしリゴンドーは出た。少なくとも1Rは。そしてポイントを確信すると相手を迎え撃つ従来の自分の戦いに戻した。1Rは勝つために必要なリスクをしっかりとり(とはいえ1Rのスピード勝負には絶対の自信を持っていただろう)、そして自分のボクシングにドネアをはめた。

さらに驚いたのはリゴンドーのタフネス。スタミナもドネア相手に最後まで落ちなかった。10Rのダウンはパワーで飛ばされたもので、体の芯に喰ったものではないが(踏ん張ればダメージを負うことを瞬時に予測して敢えてダウンを選択したか)、それにしてもダメージが少なかった。逆に試合全体で受けたダメージ総量は明らかにドネアの方が大きかった。

ドネアの完敗であろう。

ドネアも私と同じ予想をしていたのではないか。少なくとも対戦待望論が出た時にはリゴンドーに対してプロキャリア、戦い方(人気)の点で低評価だった。直前になって持ち上げていたが盛り上げのためだろう。本気には見えなかった。

ドネアが「持ってる」のは相手を心底「畏怖」した時。そうであればこそ彼のフラッシュ(閃き)は発揮される。その緊迫が今回のドネアには感じられなかった。結果論だが今回の相手は畏怖すべき相手だった。

ところで私は塩な選手が好きで、観衆のブーイング無視のボクサーも大好きだが(リゴンドーには本当はモレノとの塩vs塩対決を先にしてほしかった)、今日のリゴンドーは面白くなかった。離れて戦い過ぎたからではない。巧過ぎて速過ぎるからだ。(私がドネアを応援していたからとういうのもある。)ジョーさんは「ボクシングの人気」の点からリゴンドーのスタイルに懸念を示していたが、人気が下がるのはリゴンドーだけでボクシングではないだろう。リゴンドーがウィナー・テイクス・オールとならなかっただけのことである。それがリゴンドーだ。

それにしても今日の試合を見る限り、再戦してドネアがリゴンドーに勝てるとは思えない。デュランに乱戦でしてやられたレナードが2戦目は足を使って明確に勝ったような、相手を上回れる明確なアドバンテージが見つからない。そしてこれまで自分がしてきたこと(スピードで相手を翻弄)を自分がされてしまったことは極めて屈辱的でその心理的ダメージも心配だ。

もっともリゴンドーもドネア相手にこのテンションで再度戦い続けられるのかは未知数だ。

少なくともドネアはこの階級に留まるだろう。リゴンドーはどうするのか。どちらもまだ証明しなければならないものを残している。

byいやまじで

P.S.
村田諒太の予想はよく当たる。

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合9

 『ご存知かもしれませんが、私が今回の衆議院選挙で日本維新の会公認の徳島2区選出候補として出馬することが決まり、発表された上、会見も各種行われてます。』
 
 2012年11月末の谷川氏から頂いたメールの書き出し部分です。大阪市に住んでいる私は、日々テレビを通じて橋下大阪市長が代表を務める日本維新の会についての膨大な情報に触れてはいましたが、まさか谷川氏が出馬するとは夢にも思っていませんでした。しかも保守地盤である徳島への落下傘候補としてです。私が見たところ失礼ながら谷川氏は弁舌が巧みと言うタイプとは思えず、大衆が維新の会に期待するキャラクター像と些か乖離があるのでは?とも正直思いました。供託金・運動資金は持ち出しではないのか?選挙組織はあるのか?様々な懸念が頭に浮かびますが、それは所詮外野の意見。百家争鳴の政局論議ばかりで一向に進捗しない政治状況の中で、選挙参謀的な立場でなく自分で立つ決断されたことは単純に凄いと思いました。この人は評論家ではないコミットメントの人だなと。維新の会の政治的、思想的な評価は置いといて、この人は個人的に応援しようと思いました。しかしこのメールの文面は単なる出馬報告ではありませんでした。ネット上に出た谷川氏の経歴に関する記事が、選挙活動の障害になっていると言う報告だったのです。

 動物には優しいけれど、人間には結構ヒドいことを平気ですることで人気のライター氏が書いた原稿を時々載せることでお馴染みのサイゾーのWEB版にその記事は掲載されていました。「ボクシング界の問題人物」という見出しに、「追放」「懲戒解雇」という扇情的な単語、谷川氏の退職金の金額(当然推定)というもっともらしいディティールに「民事裁判の最中に出馬するとは」と眉をひそめる都内ジム会長(誰やねん)のリアクションまでまさに『ためにする批判』という一語に尽きるこの記事。その独特の『憶測を事実に偽装しつつ決して断言しない文体』から無署名なのに「あああの人が書いたんだな」と推測できるという極めて香ばしいブツでありました。谷川氏側の抗議を受けて今は削除されてしまったこの記事は、しかしアンチ維新の皆さんの力であっという間にコピー&拡散され今でもネット上で簡単に読むことが出来ます。

 勿論出馬を表明した時点で谷川氏は公人であり、有権者に人物像を伝えることは公益性の面からも報道の自由の範囲内です。ただそれには事実に基づいていることが必要条件となります。記事が削除されているという事実を見れば記事中の事実関係の問題性は明らかです。実在もあやしからん『都内ジム会長』のコメントを引いての「民事訴訟中だから出馬するな」という論理も変です。解雇が不当だと思えば訴訟を提起することは個人の当然の権利であり、まして立候補してはいけないというような意見は根本的に間違っています。民事訴訟を戦っている事を刑事被告人であるかのように印象操作する手法も汚いやり方です。

 確かに谷川氏はボクシング界に波風は立てたかも知れませんが、そのことで被選挙権を制限するべしというような論理はおかしなものです。しかしそのような誤謬に無自覚なのか確信犯なのか、谷川氏の悪評を広めるという目的はまんまと達成されてしまいました。一体どこの誰が、何の目的を持ってやったのか?なんでもアリの姿勢で敵対者の人生を徹底妨害するその姿勢には恐怖すら覚えます。(この項続く)

ワシントン州とコロラド州の販売も含めた大麻合法化に時代の変化を感じる(旧徳山と長谷川が好きです)
 
 

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合8

 遅くなりましたが、時系列にも合ってるのでここらへんで谷川氏と私(旧徳山と長谷川が好きです)の出会いの経緯について触れておきます。そもそもの発端は私から読者の方への「(2012年9月1日の)名城信男の世界戦の観戦に来られる人がいたら、その後お会いしませんか」という呼びかけでした。それは安河内事務局長の解任騒動時のボクシングファンによるJBCへの抗議行動にはどのような背景・実態があったかということを知りたい方に知りえる範囲でご説明差し上げようと言う主旨でした。その問いかけに対し、ファンの方からの反響は見事にゼロ!でしたが元JBC職員だという谷川氏(当初の接触はペンネームでした)からメールを頂けたというのが氏との交流の始まりでした。その時は東京メンバーが安河内氏にお会いする以前であり、林マッチメイカーのサスペンドと記者会見という事件もあって、正直当初は色々と背景について邪推したものでした。読者の方におかれましても「そんな偶然あるのかい?」と訝られる向きもあるかと思いますが、東京メンバーが安河内氏にお会いできたのはある人を介してご紹介を頂いた結果であります。他ならぬJBCに解雇された二人の当事者に直接取材できたことで、今までは見えなかったJBCの内紛の全体像についてようやく理解できるようになって来ました。
 一方の谷川氏もまた我々の背景や知りえた情報をどうするつもりなのか?当等、色々と不安があられたと思います。しかしそれでも、扇動に乗せられた形で虚偽の告発の片棒を担いでいた我々に胸襟を開いてお話を聞かせてくださったことには今一度感謝したいと思います。
 しかし我々のようなドシロウトが会って取材し、裁判について調べれば分かる事をなぜプロの記者が調べないのか?それは未だに不可解です。相撲協会や柔道連盟のように事件化した後では全てが手遅れだと思うのですが。

 さて本題に戻ります。2012年末谷川氏からのメールを見た私は仰天しました。仕事を失い裁判を抱えるという困難の中で、氏は新しい人生についての構想を具体化していたのでした(この項続く)

 
  昨日淡路島にいた(旧徳山と長谷川が好きです)

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合7

 高山勝成選手が言われ無き報道被害を被っていたことはこの連載のパート6に書いたとおりであります。しかしそれにしてもJBCと一部ライターの皆様の連携の緻密さは驚くばかりです。内紛や事件が起こるとなぜか絶妙のタイミングでJBCを援護射撃するかのような記事が夕刊紙や専門誌に出るというこの不思議。卵が先か、ニワトリが先か、はたまた卵がニワトリなのか?この不可思議な『偶然』が典型的なもう一つの事例についても筆を進めようかと思います。

 谷川氏の解雇理由である「新コミッションの画策」には高山選手とIBFという事例以外に、もう一つの事例が挙げられています。それは昨年末にライセンス停止処分を受けた大星ジムの大沢宏晋選手とWBOのケースです。大沢選手の処分のおかしさについては私も一度記事化しましたが、それにしても奇奇怪怪なこの事件。未承認・未公認タイトルを戦った選手は過去にも沢山いるにもかかわらず何故か一人だけ非常に重い処分受けた大沢選手。承認前にWBOの地域タイトルマッチをしたのが問題ならば、同じく承認前にWBOの世界戦をした西岡利晃選手はどうなるねんと思いますが、JBCはそういった整合性はハナから気にもしていないのでありましょう。谷川氏の語るその処分に至る経緯も不可解この上ないものです。

 問題とされる試合は2012年4月30日に大阪の堺で行われた大沢宏晋×ロバート・コパ・パルエ戦。OPBF王者であった大沢選手にとっては防衛戦ですが、チャレンジャーのコパ・パルエ選手にとっても彼が保持するWBOのアジア・パシフィックタイトル防衛戦でもありました。白熱の打撃戦となったこの試合は大沢選手が9回にコパ・パルエ選手をTKOで下しOPBFタイトルの防衛成功、WBOアジアパシフィック王座も移動ということになりました。この未承認タイトル移動に「新コミッション」を画策する谷川氏が関与していたというのがJBCサイドの主張なのですが、果たして実態はどうだったのでしょうか?

 谷川氏によるとこの試合WBOのスーパーバイザーが出席することはこの興行の関係者には周知の事実だったのだと言います。ただ当時のJBCがWBO及び下部タイトルを承認していないために彼をリングに上げることは出来ない旨を告げ、スーパーバイザー氏は観客席での観戦となり、試合後もリングでベルトを受け渡す事は出来ませんでした。谷川氏はJBC職員として会場にいたのですが、この興行でたまたま起こった一部観客のヤジを原因とするイザコザに対処していて試合観戦どころではありませんでした。序盤1Rからダウンの応酬となった肝心の試合序盤を観戦できていなかった谷川氏は、広報に載せる観戦記の取材の目的で大沢選手の控え室へと向かいます。するとそこではWBOのスーパーバイザーが新王者となった大沢選手にベルトを授与している最中でした。谷川氏はそのやりとりを傍らで見ながら取材が出来る状態になるのを待ちました。

 これが全てです。

 えっ?と思われるやも知れませんが、JBCが新コミッションの画策の根拠としているのは「ベルト授与の現場に谷川氏がいた」ということだけなのです。ですがJBCの職員が勝った選手の控え室にいるなんてことは特段不思議でもないですし、まして広報に観戦記を書く必要がある谷川氏となれば事後のコメント取材に控え室に入るのはごく自然なことです。得にこの日は肝心要の試合序盤を見れなかったので尚のこと「選手の肉声を聞く必要があった」(谷川氏談)のだと言います。

 ここで問題となるのは、谷川氏の解雇理由の論拠が薄弱なことと同時に、一年間のライセンス停止となった大沢選手の不当に重すぎる処分の背景です。人間が出来ていない私はついつい邪推してしまうのです。過去の事例と比べて明らかにバランスを欠いた彼のサスペンドは、谷川氏の解雇を正当化せんがために過剰に悪質さが強調された結果ではないか?と。 JBCの内紛に一選手を巻き込んで未来を閉ざすようなことがもしあったとすれば、それはJBCの存在意義すら否定する事態です。しかし高山選手が巻き込まれた不可解な報道被害を見れば、この事例の背景にもキナ臭いものがあるのではと思えてならないのです。それはこの後起こる谷川氏や大沢選手が被る報道被害におけるメディアとJBCの出来すぎた連係プレーを見ても感じることなのです。(この項続く)

 中島岳志先生の秋葉原事件ルポが大変面白かった(旧徳山と長谷川が好きです)

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合6

 ヌコシナチ・ジョイ×高山勝成の再戦は、一戦目から実に一年二ヶ月が経過した2012年3月に、南アフリカ・イーストロンドン行われました。危うく流れかけた試合の命脈を保ったのは谷川氏を含む関係者の尽力の賜物であったのであろうと私は思います。高山選手は残念ながら判定で破れ、この時点でのタイトル獲得はなりませんでしたが、この困難な試合を実現し戦った経験が先般のタイトル獲得という偉業につながったのであろうことは想像に難くありません。さてここで今一度「過去に眼を閉ざす者は、未来に対してもやはり盲目となる」と言う警句を参照したいと思います。「高山くんIBFのチャンピオンになったらしいけど、JBCもIBFを承認加盟(どっちやねん)したからまたライセンス申請したら認めてあげんわけじゃないよ」と言うならば、その高山のタイトル獲得に至るボクシングロードを理不尽な形で行き止まりにさせないために、勤務外の時間を用いて無償で知恵を貸した人を解雇したということとの整合性は一体どうなるのでしょうか?というかそもそも、当の高山選手が新コミッション構想に直接関与しているかのように名指ししたことをもう忘れてしまったのでしょうか?

 ことはジョイ×高山の再戦から約三ヶ月後の2012年6月下旬に突然起こります。日々秘密結社と戦っていることで有名なライター氏の連載が読めることでお馴染みの某オレンジ色のニクイ夕刊紙に唐突に高山選手が登場したのです。なんでも高山選手は新ボクシング団体のエースであり、渡米してIBFの会長とも会見しているというではないですか。高山のトレーナー兼マネージャーである中出博啓氏のブログを覗いてみると当時の氏の心境が伝わって来ます。少し引用させて頂きましょう。まずは2012年6月23日の「なんじゃこりゃ」というタイトルからして困惑気味の日記(以下引用)

 昨日、取引先から夕刊フジに高山でてるでと云う連絡があり「あ、そう 見とくわ!」と・・。新団体のエースですか?カツナリがねぇ・・。(笑)俺はジョイ戦のつけで仕事に追われカツナリは日本におらんぞ。そんな中でいきなり何じゃこれ・・の話です。はっきりさせときます。JBCには引退届を出していますしこの国で行われてるボクシングには興味ありません。少なくとも一人のプロのボクサーが、真の強者を求めて団体を超えた挑戦をしています。その事ではなく関係の無い内紛問題で本人の知らない所で記事にされるのは不本意です。第一 誰からも取材も問いあわせも無いままに憶測で記事にされてもね。
(中略)JBCも揉めている場合では無いと思いますが・・。本当にプロスポーツとしてレベルの高い面白い試合創る工夫をしないとどんどん衰退するんとちゃいます?
(引用以上)

 困惑とともにJBCの内紛にも苦言を呈する至極まっとうなご意見と私は思います。それから一ヵ月後の7月24日の「リングの外で」というタイトルの日記では(以下引用)

夕刊フジに先頃 掲載された内容に関しても取材すら無かったのですが事実としては、先頃のジョイ戦の延期が繰り返された事により俺がボクシングの興業や入札の仕組み 指名期限等の重要性等に関する情報に関してJBCの職員に情報を求めた経緯はありますが新団体設立の謀議などはありません。更に今回は、職員の解雇理由に高山の名前がある事の驚きました。彼がこの件でJBC職員と接触する事自体ありません。入手した文書では高山自身がニュージャージ州まで出向きこの件に関しIBFのトップと会談した等とご丁寧に日付まで記入されています。???高山のパスポートでは出国の記録さえ無いのに・・。改めて、こんなに簡単な事実確認さえせずに主語 述語 日付まで明確に記入した事務局長印のある文書を出すのかと不信感を覚えると同時に大きな驚きです。(引用以上)

 中出氏の「謀議はない」という見解と経緯説明は谷川氏のお話と概ね合致する内容です。高山選手の名前をいい加減な事実認定で文書に記載したことへの怒りと呆れの感情も垣間見えます。裏も取らずに「高山がアメリカに行ってIBFのトップに会った」というウソを解雇理由にされたらそりゃ頭に来るとも思います。

 当の高山選手もブログに当時の心境を綴っています。こちらも少し引用させて頂きます。2012年7月26日の「皆さんへの報告」というタイトルの日記から(以下引用)

少し前にJBC問題に高山が新団体を作るのに関わっているんじゃないか?と匂わす記事が世の中に流れてますが本音で言わせてもらいます。

僕はJBCに対して新団体設立に関わった事はないです。
正直びっくりしました。
更に今回は、職員の解雇理由に自分の名前があると聞いてます。
とても残念です。

僕はJBCに対して迷惑をお掛けするような事はしていませんしJBCからこの様な誤解を受ける覚えもないです。
JBCには感謝していたのに残念です。
(引用以上)

事実でない事で名前を出された上に、それが一個人の解雇に関わっているとなれば困惑するのは無理からぬことと思います。谷川氏の件には関係ない内容ですが興味深い記事もあります。「総会」というタイトルのIBF総会についての日記から(以下引用)

僕がJBCに引退届けを出してワールドチャレンジした瞬間にWBA&WBCの世界ランキングから僕の名前が消えた事・・・(中略)
僕らの邪魔されてる方々ぜひやめて欲しいですね
(笑)

いろんな事が解って総会に参加して良かったです!
(引用以上)

 職員を解雇するために裏取りもせず名前を利用していたJBCが、いざベルトを獲ったらコロッと態度を変えた姿は高山陣営にはどう映っているのでしょうか?その時々の時流・状況にあわせて得する方につく人間が信用も尊敬もされないのはどこの世界でも同じだと思います。JBCは高山陣営に秋波を送る前にまずやることがあるのではないかと思えてなりません。(この項続く)

山中慎介はリリー・フランキーに似てると感じる(旧徳山と長谷川が好きです)

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合5

 「試合に勝ってもJBCのライセンスを持っていないので王者として認めない」(サンケイスポーツより

 歴史的勝利に終わったロドリゲス×高山戦の一週間ほど前に、高山勝利の場合の対応を尋ねられたJBCの秋山専務理事によるありがたいお言葉です。まあまさか勝つとは思っていなかったのでしょうがそれにしても横柄な物言いではありますまいか。苦難の末に敵地でタイトルを勝ちとった世界王者を「JBCにあらずばボクサーにあらず」といわんばかりの、高飛車な態度で一刀両断する姿勢もさることながら、試合前は「復帰を申請すれば、資格審査委員会で検討する」(前出秋山氏のコメント)という話だったのが高山が勝利すると、一転森田健事務局長が「今後、ボクサーライセンスの申請をすれば、資格審査委員会を開いてJBC として世界王者として認めることになる」とカメレオンよろしく『柔軟な』対応を見せるあたり、たのもしきJBCの確かなガバナンスを感じる事が出来ます。フットワークが軽くていいのはリングの中だけ!統括団体のトップに相応しい、帝拳じゃなかった定見を持って事に当たって頂きたいものです。高山陣営を巡るJBCサイドの処遇がなぜかくも迷走するのか?JBCになびいてこない彼らを面白く思っていないのは事実でしょう。それにプラスしてJBCが谷川氏の解雇理由に高山のIBF挑戦を関連させているのが原因では無いかと私は見ています。

 それを踏まえて本題の続きです。南アフリカの現地コミッションの内紛が長引いた事で、ジョイ×高山の再戦命令自体が無効化する可能性が現実味を帯びてきました。IBFの指名試合の期限は9ヶ月。いつ終わるかもしれない南アフリカサイドの内紛の沈静化を待っていたら、対戦命令の効力がなくなってしまいます。必死で辿りついた指名試合が消化不良で終わった上に、再戦命令が死んでしまえば高山陣営の苦労は全て水泡に帰します。そうしないためにも、窮余の策としてあらゆる選択肢を検討する必要が生じてきました。南アフリカでの開催が出来ないケースに備えて、高山の海外拠点であるフィリピンでの開催も模索しましたが、さすがに中立地での開催はビジネスとして成り立ちません。そうなるとあとは高山のホーム日本です。ですが未承認のIBFタイトルマッチがJBCの管轄下でできるはずもありません。であるならJBCの管轄外でボクシング興行をする道はないか?その手法を検討する過程で合議の末「キックボクシングの興行と合体する形で出来るのではないか」と言うアイデアが出されます。これは勿論、本命の南アフリカ開催が出来ない場合に備えた次善の緊急策であり、事実として再戦は紆余曲折を経て南アフリカで無事挙行されました。しかしこの実現の可能性が極めて低い『もしもの場合に備えたアイデア』が「新コミッションの画策」と見なされ谷川氏の解雇理由となったのです。
 
 ですが、そもそもJBCにはIBFの興行をすることは不可能であり、またJBCを離脱した高山陣営がIBFの興行を計画する事自体は何の問題もない行為です。JBCの業務時間外とはいえ職員と言う立場での谷川氏の振る舞いは軽率だったと言えるかもしれませんが、さりとて解雇に値するような悪質なことでしょうか?IBFを承認していないのはJBCの自己判断であり、日本国内でIBFがビジネスをしたところでそれはJBCの運営判断が招来したものです。というかそもそもこの興行案はなんら具体化しなかったのです。逆立ちしてもJBCが関与できなかったビジネスについて職員を解雇するのは、世界タイトルを持っている選手を「チャンピオンと認めない」と言い切るのと同じ倒錯ではないのか?と私は思います。(この項続く)

 ツニャカオの頑張りが泣けた(旧徳山と長谷川が好きです)

トリプル世界戦 The Real17

やっと仕事も落ち着いてきたこの時期、注目のカード三つが揃ったこの試合を、いつもの仲間とテレビ観戦でもしようかと思って調べてみると、なんと地上波で放送するのはメインのみ。
ならばということで、当日券で観戦するべく両国まで行ってまいりました。

アンダーカードが終わり、最初に登場する三浦選手の試合の前に、世界戦のセレモニーがありました。
今回のタイトルマッチはすべてWBCですから、オフィシャルやスーパーバイザーなどをまとめて紹介するのはいいんですが、ちょっといただけないと思ったのが国歌吹奏です。

どういうことかというと、リング上でスレイマンさんやら林有厚さんやらを紹介した後、まだ選手が入場してもいないのに国歌吹奏を始めるというのです。しかも、最初の試合の登場選手の国歌(日本とメキシコ)だけでなく、その日のタイトルマッチ出場選手のすべての国歌を連チャンで流すというから驚きました。
といっても三か国しかないのですが、メキシコ、フィリピン、日本、の順で演奏されました。

テレビ放送で国歌のシーンが映らないのが普通になってきていますが、実際に現地ではこんなマヌケな段取りで進行してるんでしょうか?
タイの選手のように、国を背負ってきている覚悟で国歌を歌ってる選手もいれば、じっと目を閉じ集中力を高めているような選手もいて、その音楽の流れている間の表情を見るのも楽しみの一つだったりするわけですが、こんな形で流されても、何の感慨もありません。
オリンピックの表彰式で、誰もいない状態の競技場で金メダルの選手の国歌だけ流して、いざ選手が入ってきてメダル授与の時には何も流さない、というのと同じことだと思います。
「めんどくさいけど、やんなきゃなんないらしいから、最初にまとめてやっちゃえ」ってことだったら、いっそのこと省いたらどうですかね?
この日も毎度の如く、ちょこちょこ時間調整の休憩がありましたが、競技の本質的な部分には無関係なこととはいえ、益々タイトルマッチの価値が薄まっていくような感覚になります。

試合の方は、またのちほど。

(ウチ猫)

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合4

 消化不良のノーコンテストで終わったジョイ×高山戦は本来であれば速やかに再戦が組まれるべきケースです。ところ高山陣営の意に反して、現実はそう簡単にいきませんでした。一旦は南アフリカでの開催がアナウンスされたジョイ×高山の再戦の試合日程が二転三転し、ズルズルと延期されていった過程をご記憶のボクシングファンも多いかと思います。そのゴタゴタの原因は南アフリカのボクシングコミッションの人種間対立からくる機能不全にありました。アパルトヘイト政策の終焉から20年を経ても当地の人種対立は未だに深刻であり、黒人の英雄でありながら白人のマネージャーがついているジョイはコミッションの内部対立の板挟みとなっていたようです。対戦相手の事情で対戦命令が出ているのに試合が出来ないという不条理に巻き込まれ高山陣営は困り果てます。高山陣営の深刻な窮状は当時既に時事通信を退職しJBCの職員となっていた谷川氏も伝え聞くところとなります。根っからのボクシングファンでもある谷川氏は、南アフリカで見たヌコシナチ・ジョイの鬼神のような強さにめっぽう惚れていたこともあり「高山陣営を助けたいというのと、ジョイを日本のファンにも知って欲しい、という気持ちが交叉した」(谷川氏談)と言うファン気質も手伝った状態から、高山陣営とともにジョイ×高山戦がどうやれば開催可能かを模索し始めます。JBCの仕事が終わった後に旧知の仲である高山陣営の為に、対戦命令が出ている世界戦を潰さないための善後策の相談に乗ることはさして問題だとは谷川氏には思えませんでした。ですがその一連の話し合いが結果的に「新コミッションへの策動」の一つと見なされ谷川氏は職場を追われる事になります。その過程でなんと当の高山選手本人にまで思わぬ矢が飛んでくる事にもなります。

 無邪気に「今後、ボクサーライセンスの申請をすれば、資格審査委員会を開いてJBCとして世界王者として認めることになる」と言う森田健事務局長は、わずか数ヶ月前に言われ無き疑惑で高山選手を名指ししたことをもう忘れてしまったのでしょうか?(この項続く)

4.6 キャンプ座間 遠足日記

昨日は神奈川県座間市にある在日米軍基地内で行われたOPBFスーパーウェルター級タイトルマッチがメインの興行に行って来た。

主催者後援会のご厚意で用意されたマイクロバスに同乗させて頂いたのだが、貸切バスに乗るなんて何年振りだろう?
米国陸軍が地域との交流を深める為に行われる例年行事のひとつ、桜祭りとのジョイントだが興行は今回が2回目。
主催者の信念と情熱が実を結んだこれまで誰にも出来なかった一大イベントの実現だ。
翌日の朝日新聞神奈川版には「ジム会長・大佐の絆が縁」と報道されたが並大抵の苦労では無かったはずだ。

今回一般客の入場は無料で経費のほとんどをこのイベント主旨に賛同した企業の協賛金で賄ったという。
そんな水面下の苦労も知らない遠足気分の僕は嬉々として友人とバスに乗り込んだのだった。

20130406 座間 屋台

20130406 座間 桜

20130406 座間 ヘリ

午前8時過ぎにバスに乗り込みボクシング談義であっという間にベースに到着。
IDと荷物のチェックを終え基地の中に入ると、各国の屋台ブースが並び、BBQやホットドッグの焼き上がりの匂いに誘われて客が長蛇の列。
あいにくの天気にも関わらずどこも盛況だ。
14時からの試合まで3時間ほどあるので暇つぶしに苦労するかと思ったが、僕とI君はアメリカンビール片手に散策。コンサートやヘリコプターの浮上を楽しんだ。
異国の空気はビールが二杯三杯とすすむ。

基地内のいたる所に見る迷彩柄は自分にとっては戦争カラーだ。
祖父の戦争体験を聞いて育ったせいかアジアの緊迫を煽るマスコミ報道にもいささか辟易とする訳だが、基地問題も含めて平和とは何か?を積極的に議論をしようという前向きな姿勢には共感を覚える。要は対話だ。
深刻な少子化問題やエネルギー問題を抱える日本は30年後、50年後、アジアのいや、世界の中の後進国になるやもしれない。新たに国家100年の計を迫られている。
相反する主義主張の対立を対話と現実の中の歩み寄りによって解決の糸口を探す作業も並大抵ではない。
一つの運動とこうしたイベントの合流は後世には発明と呼ばれる可能性すら感じるのだ。

普段ホールなどの試合では滅多にアルコールを口にしないのだが、しかし今日はフィエスタ。
主催者、関係者の「思想を超えて」という想いを知れば、なおそれで良いのだと思った。

20130406 座間 YANO FITNESS CENTER

さて、第一試合4回戦は定刻をやや過ぎて始まった。
注目していた三谷ジムのミドル級、古川善広のデビュー戦。
長身細身のスラッガーは僕の好みだが、将来そのように成長する可能性を秘めた逸材だ。
開始1分早くも強打が火を噴いた。金子直也(山上)のテンプルに右フックを決めなぎ倒した。
かろうじて立ち上がった金子に襲いかかる古川。
ところがまたしてもガードの開いた所に金子の左フック一閃、起死回生の一撃に今度は古川がダウン。
「またしても」とは斉藤司を含むここのところの三谷ジム勢の流れだ。
立ち上がった古川だが相手もまだ効いている。
ここは冷静にと思ったが4回戦、互いにもう一度得意のパンチを決めればそこで試合は終わる。
左右の強打を振って賭けに出たのは古川だったが、逆に金子の同じ角度の左フックを浴びて決着がついた。
試合後悪びれず「やっちゃいました」と客席に挨拶していた古川だが、なかなか太い男だ。
試合前のスパーでは評判がすこぶる良かった。デビュー戦はほろ苦いものだったが練習では学べない事もある。
次戦、必ず復活する。

第二試合6回戦は鈴木悠介(八王子中屋)対澤田京介(JBスポーツ)

日大出身、澤田はデビュー戦。
明大出身の鈴木はプロ第二戦で共に豊富なアマチュアキャリアがあるが、インターハイ準優勝の澤田がどんな技術を見せるか期待した。
しかし、終始落ち着いた試合運びの鈴木は澤田の攻撃を見極め要所要所で的確に有効打を決めた。
3-0判定で鈴木。
デビュー戦で実力を発揮出来なかった澤田だが巻き返しに期待。

第三試合、勝又ジム期待の輸入ボクサー、ジョビー・カツマタの日本デビュー戦。
予定されていたコーチ義人が怪我の為、対戦者が変わった。
相手は昨年の東日本Sバンタム級新人王久野伸弘(オサム)で二階級上の選手。
正直、酷なマッチメークと思われたが滑り出しは上々。
左がまえからのスピードに乗ったストレートからつなげる比国人特有の左アッパーにはキレがあった。
しかし、これまで経験した事の無い曲者久野の変則的なリズムは若い比国人を体格差でも徐々に圧倒して行く。
クリンチの際に相手の肩を叩いてブレークをアピールしながら、すかさずパンチを叩きこむ久野のやり方は再三に渡りフェアでは無いと感じたが、これもレフェリーの介入が無いのだから仕方が無い。
冷静さを欠いたところにパンチを貰ってしまいダメージを蓄積していく。
3Rについにダウンで良く立ち上がったが、回復の余地は無い。4R開始早々連打から詰められ棒立ちに。
タオル投入のタイミングかと思われたが、左フックで再びダウン。
レフェリーがノーカウントで試合を止めたが、もう少し早く止めてあげて良かった。
試合後のダメージを心配したが、「パッキャオだって負けて強くなった。また頑張る」と言ったジョビーはまだ少年の面影残る19歳。
ミンダナオの田舎から首都マニラよりもさらに遠いジャパンへ。
常にリスクを負ったハードなマッチメークを課す勝又会長だが、次はこのボーイに少し自信をつけさせてあげて下さい。

第四試合は連敗中の関本純太(勝又)再々起戦.
二年前の座間興行ではTKOで敗れ、再起戦では格下の林涼樹(三谷)にダウンを奪われど根性で巻き返しを計るも判定負け。
ここまで負けが込んでも後援会が離れないのは関本の真面目な人柄からだろう。
ファンが選手に求めるものは勝ち負けだけではないのだ。
しかし、この試合だけは絶対に負けられない。
そんな決意が初回から見られる。
韓国フェザー級5位ハン・イクスー相手に様子見も無くボディ、顔面へと攻撃を仕掛ける。
ペースを握るかと見えたが、カウンターを浴びて早くもダウン。
3Rにも仕掛けたところに再びカウンターでダウン、ここまでかと思われた。
しかし、関本はあきらめず下から上へと執拗に韓国人を攻め続け、6Rついに連打でレフェリーストップを呼び込んだその瞬間会場が大きく湧いた。
かつての新人王技能賞に輝いた関本だが不屈の闘志が今の彼を支えている。

メインイベントの前にスペシャルカードと銘打たれた女子4回戦が組まれていた。
女子ボクシングに興味の無い僕はいつもなら喫煙室で一服の時間だ。
しかしI君の下調べでこの試合ばかりは見てみようと思った。
高野人母美(たかの・ともみ)のデビュー戦だ。

見てみよう、いや見たい!と思ったのは奇跡の9等身と言われた現役モデルのプロボクシングデビューという触れ込みだからではない。
そんな話題先行に自称ボクシングファン歴40年を誇る中年が騙されるわけがないだろう。
スレンダーな美人が好みという個人的な趣味だからでもない。断じてない!!
あくまでもI君が調べた高野のプロフィールから興味が湧いただけだ。
小学生時代はサッカー、卒業してキックなどの格闘技を経験し、天笠尚の試合を観て山上ジムに入門したという経緯は天笠ファンとしても無視できないわけだ。

対戦相手はアルファジム所属の大空ヒカル。女子ボクサーらしい選手でこちらもデビュー戦。
腹を決めてこの世界に入った。意地でも負けたくないだろう。

初回、身長差からか大空は慎重な立ち上がりで高野のジャブを良くブロッキングして反撃の様子を伺う。
高野はかまわずジャブからワンツーとつなげる。
177cmのスーパーフライ級の体躯はいかにも華奢だが、攻めは実にシャープ。
長身から放たれるストレートが意外にキレる。
基本通りのワンツー主体の攻撃だが大空の固いブロッキングを次第に突き破り始めた。
迫力がある。
左右のストレート・フックを3連打して最後の右で痛烈なダウンを奪った。
からくも立ち上がった大空に再び強烈なパンチを浴びせレフェリーが割って入る。
わずか32秒の出来事だったが、男子顔負けの強打だ。
なるほど天笠に憧れてと言うだけの事がある。
正直驚いた。
試合後、高野は「聖地である後楽園ホールで試合をしたい」と語ったが、次の彼女の試合も是非観たいと思った。
くどいようだが、彼女の美貌に惚れ込んだわけではない。絶対に無い・・
彼女の記事だけが特別に長いのはあくまでも偶然だ。


さて、メインイベントはいよいよOPBFスーパーウエルター級戦。
20130406 座間 国歌

チャーリー太田(八王子中屋)の7度目の防衛戦。相手は同級9位のカク・キュンスク。
王者はスムースな動きでコリアンファイターの攻撃を捌きながら、軽いながらもボディ顔面に的確なパンチを決める。
粘る挑戦者だが試合の行く末が見え始めた6R、ついに王者の右でダウン。
決着がついたと思ったが、ここから韓国人が喰い下がる。

試合前のセレモニー国歌斉唱で思わぬハプニングがあった。
アメリカ、日本の国旗が掲揚されたが韓国国旗が無いのだ。
主催者発表では韓国国旗が間に合わなかったとの事だが、まさか政治的背景などは無いだろう。
しかし韓国人歌手は国旗の無い試合会場での国歌斉唱を拒んだのだろうか、異例とも言える韓国民謡に差し替えられた。

これが韓国人挑戦者の闘志にさらに火を付けた訳ではあるまいが、得意の左強打を振い続け王者の攻撃を単発に終わらせる。ナショナリズムは日本ではもはや精神論になりつつあるが、逃げ場の無いリングでは最大の効果をもたらす事がある。
試合の流れが一気にひっくり返るような強打だった。
しかし王者は冷静だ。
終盤はまるでサンドバッグを打っているかのような力のこもった王者のパンチが挑戦者の顔面にボディにとめり込んだ。
しかし、驚異的なタフネスを見せる韓国人の闘志がついに最終ゴングを打ち鳴らせた。

大差の判定勝利で防衛テープを伸ばしたチャーリー。安定感がさらに増して来た。
このクラスで世界照準の米国人には欲を言えば、連打をまとめてストップしてもらいたかったが、試合終了と同時に会場は大喝采だった。

この日は何も考えずに楽しもうと気ままにしていたが、ボクシングの力にあらためて秘めたものがあると感じた。
興行の大成功はこうした可能性に賭けた主催関係者、物品販売などの売り上げを協賛金として計上されたIジム会長、また協賛企業の熱と尽力の賜だ。
利害を超えた、主義主張を超えた、こうした大イベントには心から大声援を送りたい。

来年の春も是非参加したいです。

B.B

追記:
下記のリンクから試合の模様が見られます。
PACIFIC BOXING SHOWDOWN IN CAMP
※高野人母美選手の試合は56分過ぎ

ハワイアン・パンチ不発!  in Macao

4月6日から8日にかけては好カード目白押しですが、6日のマカオ興行ではビロリアとバスケスJrが敗れる波乱。

バスケスJrを破ったのは日本の石本康隆選手(帝拳)。8Rにダウンを奪っての2-0判定勝利です。昨年芹江選手の日本王座に挑み敗れた石本選手ですが、世界のビッグネームを破って今後が期待されます。
帝拳HPより
「獲得濃厚」は「挑戦濃厚」の誤りかと思われますが、いずれにしてもドネアvsリゴンドー後、いかなる展開になるのか。

一方、ブライアン・ビロリア。エルナン・マルケスとの統一戦を制してこの階級のトップに立ち、安定王者への道、ロマゴンとのビッグ・マッチが期待されていたが、思わぬ敗戦。

2013-04-06 Brian Viloria vs Juan Francisco Estrada 投稿者 sweetboxing10

映像を見る限り、挑戦者のフアン・フランシスコ・エストラーダが的確な距離調節でビロリアの強打を空転させ、自身のコンビネーションをヒットし続けた印象。そしてこのエストラーダは昨年11月にローマン・ゴンザレスのライト・フライ級王座に挑戦して善戦した選手。私の目からはロマゴンがサイズ差に苦しんだ試合(転級に備えてフライを主戦場にするエストラーダを相手に選んだと思われる)だったが、エストラーダ自体も実力のある選手ではないかと思われた。ビロリアとの試合は、ロマゴンとビロリアとの実力比較だけでなく、エストラーダの実力把握の意味でも興味深かった。ビロリアが敗れたことでフライ級世界戦線はやや混沌としてきた。日本の五十嵐選手(八重樫選手との防衛戦を控える)がいるこの階級、現状の最強はMムサラネか。Jエストラーダ、Eマルケス、Bビロリアがそれに続くように思う。五十嵐選手やこの日勝利したミラン・メリンド(比)がどう絡んでくるか。

またビロリアの敗戦は、井岡戦に続いてビッグ・マッチを失った意味でロマゴンにとっても痛いのではないでしょうか。それとも軽量級王国メキシコの選手が勝ったことでオイシイのでしょうか。私個人はビロリアvsロマゴンを楽しみしていただけにビロリア敗戦は残念です。

それにしてもビロリアは浮き沈みが激しいですね。

byいやまじで


追記(2013/04/08)

バスケスJrvs 石本の動画も貼っておきます。

もうひとつのJBC裁判 谷川俊規氏の場合3

 ヌコシナチ・ジョイ対高山勝成の一戦目が行われた2011年1月時点では谷川俊規氏は時事通信編集委員でした。南アフリカへの帯同は業務ではなく有給休暇をとっての自費参加でしたが、ペンネームで観戦記を書く媒体があっての渡航でした。もし時事通信がJBCのような組織なら「業務以外で執筆活動をして、会社の利益を毀損した」と言う理由で懲戒解雇されたやも知れません。が、幸いにも観戦記などは無事ボクシング・ビート誌に掲載され、結果的には時事通信の原稿としても配信されYAHOOニュースなどにも使用されることとなりました。序盤のバッティングによるノーコンテストという消化不良の結果に終わったその試合の取材過程で、谷川氏はIBFのダリル・ピープルズ会長を取材するチャンスに恵まれます。ライセンスを返上した日本人ボクサーが南アフリカのリングに上がって日本未公認の状態でタイトルを戦うというその状況でIBFの会長に日本市場についての関心も含めて取材をかけるというのはボクシング記者としてきわめて自然な感情であり、またそうした勘がなければ取材記者としても失格でしょう。ましてJBCとIBFの間には「日本IBF」というトラウマが存在します。果たしてトップからはどのような見解が述べられるのか?取材に対してピープルズ会長は「日本に進出するに当たってはJBC以外を窓口とする気は無い」という主旨の発言をし、そのコメントもまた「会長へのインタビュー」と言う形でボクシング・ビート誌に掲載されました。
 
 他ならぬ谷川氏がIBFの会長から引き出した「JBC以外を窓口とする気は無い」という見解はJBCにとってはこの上ない満額回答であったはずです。実際にJBCによる『承認加盟』が行われてもいます。それが何ゆえ谷川氏はJBC中枢に敵視されるにいたるのか?それにはジョイ×高山の再戦が大きく関与しているのです。(この項続く)

 南アフリカにも一回行ってみたい(旧徳山と長谷川が好きです)

ロドリゲス×高山の動画

 ロドリゲス×高山戦のフルラウンド動画 です リングアナが判定結果を伝えるコールを「ショウシャー」と日本語で読み上げる粋な演出も

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合2

 現在JBCに対して「解雇無効・地位保全」の訴訟を提起して係争中の谷川俊規氏は私のような半可通から見ればドのつくボクシングマニアでもあります。アラフィフといえば昭和のボクシング黄金時代をリアルタイムで通過出来た世代。それゆえ氏には年季の入った知識や見識があります。かく言う私もファイテイング原田の不当判定を契機としたWBC加盟の経緯や日本IBF騒動当時の公正取引委員会の見解などを淀みなく説明して頂き大変勉強になったことを覚えています。また元運動記者という経歴から関西のジムに所属する選手との交流も数多く現場にも精通しています。取材記者でありマニアでもあったというすこし特殊な立場から夢を持って飛び込んだであろうJBCと言う場所で、谷川氏は経歴を生かしてJBCが発行するボクシング広報の巻頭言や観戦記の執筆を担当していました。またその広報に女子プロボクサー全員の戦歴一覧を載せるといった試みも行っていました。「マッチメイクの助けになると女子の試合を組むプロモーターから好評だった」(谷川氏談)そうですが谷川氏の退職後そのページは広報から消えてしまったようです。

 愛するボクシングに関われる夢の職場、好きが高じて飛び込んだそのJBCから、何ゆえ谷川氏は石持て追われる様に解雇されてしまったのでしょうか?JBC側から主な解雇事由として挙げられているのは安河内氏と同じ「新コミッション」―当時未承認だったIBFやWBOの関係者に接触して新しいボクシング統括団体の設立を画策し「一国一コミッション」という秩序を破壊しようとしたという理由です。賢明なファン各位におかれましては「はて『新コミッション』といえば、安河内氏を告発したJBC試合役員がやろうとしてたやつじゃないのかい?」と不思議に思われるやも知れませんが、ここでいう「新コミッション」とはアレじゃありません。現在のJBC中枢幹部がやる分には何の問題無かったらしい「新コミッション」が何ゆえ安河内氏や谷川氏の場合は『懲戒解雇』(JBCが使うこの表現についても後々検証を加えて行きます)となるのでしょうか?

 実は谷川氏の解雇には、JBCによる承認・加盟のわずか2日前に敵地での歴史的勝利でIBFタイトルを奪取した高山勝成選手とその陣営が深く大きく関わっています。JBCライセンスを返上し常に逆境の中で針の穴を通すような道程を歩んで歴史に名を刻んだ高山選手。JBCは早くも過去の経緯を一切忘却したかのように高山陣営に秋波を送っていますが、ことはそう単純ではありません。「過去に眼を閉ざす者は、未来に対してもやはり盲目となる」というヴァイツゼッカーの銘言ではございませんが、私は正しい検証の為にもまずは2011年1月の南アフリカ共和国ブラクパンでのヌコシナチ・ジョイ対高山勝成のIBFミニマム級タイトルマッチに時計の針を戻そうかと思います。まだ時事通信の記者だった谷川氏は高山陣営に帯同してその場所にいたのです。(この項続く)

安楽投手の連投についての報道が美談仕立てになってて部活での体罰問題が何も生かされていないと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)

もう一つのJBC裁判 谷川俊規氏の場合

 安河内剛元JBC事務局長の裁判についてはHARD BLOW!メンバー自身が当事者に直接取材をすることと裁判の証拠を調べることで現在も検証を進めています。出所も事実認定も不確かな怪文書に端を発する告発によって、地位も名誉も奪われた氏に対する理不尽とも言える仕打ちについては、やがて法廷で真実が明らかになると思います。ですが巻き込まれる形でこのような係争に時間や労力を取られる市井の個人の負担たるや、顧問弁護士を抱える法人とは比べ物にならないであろうことは想像に難くありません。

 さて、先日奇しくもボクシングと同じ格闘技の世界で、安河内氏と同様の『解雇無効・地位保全』を求める訴訟の判決が大きな話題となりました。丁度JBCの人事抗争と同時期に発覚した大相撲の八百長事件で解雇された蒼国来が相撲協会に勝訴したのです。法廷では『中盆』恵那司が蒼国来の八百長取組を証言し判決文でも「関与がうかがえる」としながらも証拠不十分とする判決でした。解雇要件を満たさず安易な解雇を乱発した事で、相撲協会は新弟子リンチ事件に続いて社会常識・人権意識の欠如を満天下に晒す事になりました。そして警察情報発の『八百長報道』に踊ったマスメディアも巨視的な相撲観を持つことなくスキャンダラスな「八百長野郎」の人定に狂奔し、「そもそも年間90日も真剣勝負が可能なのか?」と言う根本的な問いを発することはついにありませんでした。

 民間企業であっても従業員を懲戒解雇をするには非常に高いハードルがあります。多額の横領や悪質な刑事犯罪への連座などがなければそうそう懲戒解雇となりません。まして相撲協会やJBCは公益法人であり民間企業以上に公正な運営が求められる存在であります。もし仮にJBCの現体制の中枢を担う人物達が気に入らない人間についての悪評を捏造しマスコミを使って流布することで解雇に導くような手法をとっていたとすればそれ自体が人権侵害事件であり筆禍事件です。

 JBCの解雇を巡る裁判を闘っているのは安河内氏だけではありません。JBCの関西事務所を解雇されたある人物もまたJBCを相手に訴訟を闘っています。そしてその方もまた安河内氏と同様に解雇によって生活権を侵害されただけでなく、不可解な報道被害によって二重三重の痛苦を受けています。その報道被害によってネット上では安河内氏以上に有名かも知れません。

 その人物とは時事通信編集委員からJBCの職員へと転進し、解雇された谷川俊規氏です。(この項続く)
                  
     済美の安楽くんの連投を心配するダルビッシュはさすが(旧徳山と長谷川が好きです)