東京国際フォーラムで行われたWBC世界SFe級タイトルマッチ、粟生隆寛vsガマリエル・ディアスの試合は、3-0のUDで挑戦者ディアスが新チャンピオンとなった。(TV観戦)
それにしても、
「もうー、何やってんだよ、粟生!!」
と、言いたい気分である。
この日の粟生を見ていて感じたのは、
〇流れが悪い時にリズムを変えて、ペースを引き寄せること。
〇相手の動きを待つのではなく、自分の動きで相手を動かすこと。
こういったことができなかったということだ。
今日の粟生は、極力前に出てディアスの突進を制し、近い距離でパンチを当ててダメージを与え、その結果のKO勝利、というのがファイトプランだったろう。戦いぶりを見る限りそう思える。しかし、ディアスもさるもの、もともとよく伸びる右を長短・強弱・上下左右、と変化をつけて使い、粟生にタイミングをつかませなかった。これに対して粟生は新な対応策を見出せなかった。もちろんディアスを研究して、それに応じたトレーニングもしてきただろうが、実際に戦って作戦が功を奏さなかった時、次に何をすべきかを見いだせなかったようである。あるいは、帰るべき自分のボクシングを見失ったのかもしれない。いたずらに前に出るもののパンチが出ず自分は被弾する。被弾するからますます手が出なくなる。カットし、スタミナロスし、ポイントをリードされ、終盤逆転KOを狙うしかなくなるというのは、粟生の試合ではない。
査定マッチという文脈が粟生の戦い方に影響はしただろうが、それは言い訳にならない。勝利(防衛)という最低限の結果を残せなかたことは、プロとしての能力の一つ(危機管理能力)の欠如を表すのだから。
この試合は粟生にとってキャリアの転換点、飛躍へのステップとなるべき試合だった。しかし、粟生は敗れた。その事実は誰よりも粟生自身に重くのしかかっていることだろう。
試合内容から見て、粟生はディアスより弱かった。とすれば、粟生がすべきことは何か。この事実(たんに敗戦ということでなく「弱かった」ということ)を正面から受け止めること。そうしてもっと強くなること。それだけである。粟生選手、もっともっと強くなって帰ってきてくれ!!
by いやまじで
付記 ちなみに今日の中継は、解説・実況ともに粟生に過度に肩入れしていなくて安心して見ることができた。(解説は飯田・セレス・内山)
旧徳さんとコンタクトが取れたとなると、当然ボク愛さんも会いたくなるのは人情です。しかし旧徳さんが来る目的が、一応は「市民団体(笑)のメンバーと会うこと」であり、そこを除名されたばかりの身である自分が行くと問題がある、ということでボク愛さんは辞退しました。
その代わりに、榎さんから預かった、対ガルサ戦のDVDを「ぜひ旧徳さんにも」と託されたので、私がそれをお渡ししました。その後、旧徳さんは映像関係に強いということから、「今後あの映像を色んな人に見てもらうにあたり、試合全部を見るのは大変だから、要所要所だけ拾ってダイジェスト版みたいのを作れますか?」という厚かましいお願いをしたところ、ソッコーで作ってくれたのが、あのYouTubeにあがっている検証映像です。
さあ、今度の日曜は旧徳さんが来るぞ、ってのはいいんですが、その前にボク愛さん除名発表がありましたね。これも、私といやまじでさんとNさんの3人は、4時起き氏とボク愛さんの話し合いで決まったものと思ってましたが、実情は私の「回顧録5」やボク愛回想録にある通りです。
ちょっとわかりづらいかもしれませんので要約すると「私は除名でけっこうです。しかし代表が決まってこれから組織として活動する以上、こうしたことは全員の決を取りましょう」というボク愛さんの提案に対し、「決を取るのはいいけど、もし除名反対の声が多かったら私が代表降ります」という投げやり宣言がここで炸裂。そこで「反対する人が出てもめても困るので、(ボク愛は除名にするという)根回しは、私自身がやりますから」という流れがありました。
これからクビにされるという人の方が、その組織のことを気遣った発言をしてるという奇妙な構図です。
しかし蓋を開けてみれば、代表様が、(今は亡き)会の掲示板と拳論上で「会の代表としてボク愛氏を除名します」と高らかに宣言しちゃった挙句に、その後各メンバーに「私の決めた処分は除名ですが、その可否を返答してください」と、これまたおかしなことを言いだしました。
いや、だって…代表の権限で除名なんでしょ?と突っ込みたくなるんですが、代表が除名と言っちゃった以上、皆戸惑いながらも賛成票を投じました。ボク愛さんの「決を取る」が気に食わなくてツルの一声で決めたというならいいですよ。だったらその後に敢えて下々の声をお聞きになるのは何の意味があるんでしょうか?そこで仮に反対が多かったら、今度こそ「じゃあ俺やーめた」ですかね。。
どうもこの方、海外が長かったせいか日本語がチグハグな時がありますが、こういうのは国語の能力の問題じゃなく、単に「人の話を聞いていない」というだけでしょう。真剣に話をしてる相手に対して、まったくふざけた態度です。
ボク愛さんの「問題発言」以降、K記者と4時起き氏に対する違和感はジワジワ大きくなっていきましたが、まだこの時点では、上記のようなボク愛さんと4時起き氏のやり取りも知らなかったし、ボク愛さん自身が「とにかく今は、せっかくの火種を消さないように」と、会の存続を第一とした話をするのみでしたので、私も雑念は振り払うようにしておりました。
そして7月17日(日)、いよいよ御大・旧徳さんの登場です。新宿で待ち合わせし、不当に高いアイスコーヒーを出す喫茶店で3~4時間お話ししました。私は途中から腹が減って来て、こんな店じゃなく「つぼ八」にでも行けば良かった…と後悔しましたが、楽しい時間が過ごせました。
旧徳さんの印象はほぼ予想していた通りで、まあとにかく頭の回転が速い(お世辞じゃないですよ)。貯蔵してる知識の絶対量もケタ違いではあるんですが、そこから適切なものを、より速くピックアップできるんだと思います。もう私とでは、スーパーコンピュータとゲームウォッチくらいの差があります。
この日は、私たちも市民団体(笑)のメンバーとして会ってますから、メンバー募集に応じて集まり、最初の会合があり…と、まずは順を追って経緯をお話しました。当然その流れでボク愛さん除名のことも話しましたし、よせばいいのに、4時起き氏直伝のスブドネタまで披露してしまいました。ああもう、本当にあれは消したい過去ですね。改めてちゃんと聞いたことないですが、あのスブド関係の話しをした時、旧徳さんはどう思ってたんでしょうね?昔の同級生に呼びだされて会いに行ってみたらア●ウェイの説明会だった…みたいな感じでしょうか。今度教えてください(笑)。
帰り際には勿論、互いの連絡先を交換して別れたんですが、その後旧徳さんからは、観戦した試合の感想や、亀ちゃんブラザースの面白広告映像等が送られてきたりして、メールでの交流が続き、翌月にはいよいよ、こちらから大阪に乗り込んで行くことに…となるんですが、これはまた別途お話します。
そしてこの日から一週間と経たないうちに、私ウチ猫が市民団体(笑)から離れる決意をしたことが起こるんですが、次回はそこから書いていきます。
WBC世界SFe級王者、粟生隆寛(23-2-1,10KO)が明日27日Gディアスと4度目の防衛戦を行う。粟生選手と言えば、私にとってWガルシア戦が思い出される。2010年4月30日日本武道館、長谷川vsモンティエル、西岡vsバンヤゴン戦のアンダーである。
2008年4月に榎洋之とのWBAFe級エリミネーター戦で引き分けた後、2009年3月老兵ラリオスから2度目の挑戦でWBCFe級世界王座を奪うものの、その年7月の初防衛戦でEロハスにタイトルを奪われる。階級をSFeに上げた再起戦でFビロリアに判定勝ち。ビロリアはこの3ケ月前にWBOSFe級王者Rマルチネスに挑戦し9RKOで敗れているので、粟生にとっていきなりの査定マッチだったが危なげないUD勝利。Wガルシアは、2006年にEバレロに1RKO敗、2008年にJリナレスに5RKO敗(WBASFe決定戦)、2009年Yガンボアに4RKO敗(WBAFe世界戦)と、ビッグネームとの対戦が目立つ強豪。
私は生観戦したが、階級アップしたためか序盤力みの目立つ粟生を見ていて、非常にイライラした。ついに「アオー!!、楽に打て、楽に!!」と静かな会場内の2階席から大声でアドバイスを飛ばしたものだ。そのかいあって?粟生は回転を重視した軽打を増やし始め、8Rストップ勝利を収めた。直後の粟生は号泣していた。比較対象の多いガルシアにはどうしてもKOで勝ちたかった。判定ではだめだ。そんな思いがあったのではないだろうか。
このようにいろんな勘違いもあってファンとしては楽しい生観戦の思い出がある私にとっての粟生選手。その後2010年11月、アテネ五輪銅メダルのアマエリートVタイベルトに見事なカウンターを決めてダウンを奪い、WBCSFe王座戴冠。2011年4月の初防衛戦では元暫定王者Hグティエレスを文句のないKOで退ける。ここまではよかった。同年11月、Dボスキエロ戦は苦戦のスプリット判定防衛。というか、代々木第2でのこの試合、生観戦した私の目からは粟生の負けである。たしか戦前に粟生は最新医学技術も導入してコンディショニングに励んでいたのだが、なぜか試合中にガス欠状態になったようで、苦戦の原因は調整の失敗ということにされ、本田会長からは厳しい言葉がとんだとの情報もあった。ボスキエロが攻撃的でタフな好選手であったことは確かだが、中盤からのヘロヘロ粟生の海外なら暴動もののなりふり構わぬクリンチ攻撃はちょっと異常だった。(結局この試合の苦戦の原因が何であったのかはいまだ分からず、私にはちょっと引っかかっている。)
2012年4月、タイの実力者ターサク・ゴーキャットジムにUD勝利。こちらは粟生が序盤にターサクのパンチを見切り、力を技で制した一戦だった。
こうしてキャリアを積んできた粟生だが、この試合は再度査定マッチになるようだ。内山との統一戦が話題になり、粟生自身も意欲的だったが、本田会長からは海外進出を示唆する発言が出ている。
http://www.nikkansports.com/battle/news/p-bt-tp0-20121026-1037859.html
指名試合の無視などしようと思えばいくらでもできるはずだし、仮に行うにしても日本開催は不可能ではないはずだから、積極的に世界進出しようという意志表明であろう。粟生自身は「会長の言うとおり」としかならないだろうが、いずれにしても試合前のこの手の取らぬ狸の皮算用的情報にはヒヤヒヤする。もっとも、プロである以上こういう情報のさ中にあっても目前の試合に集中して結果を出さなければならないこともまた確か。そういう意味でも査定マッチになるだろう。
査定の相手Gディアス(36-9-2,17KO)であるが、31歳のメキシカン・ファイター。名のある選手との対戦はこれだけある。
2005年12月 Rゲレーロ:SD勝(NABFFe戦)
2006年06月 Rゲレーロ:6RKO敗(NABFFe戦)
2007年 7月 Eロハス:SD勝(WBCFe挑戦者決定戦)
2007年12月 Jリナレス:8RKO敗(WBCFe戦)
2008年10月 Uソト:11RTKO敗(WBC暫定SFe戦)
2009年 4月 Zマラーリ:判定敗(IBOSFe戦)
Rゲレーロは現在WBC暫定We級王者。この11月にはアンドレ・ベルトとの防衛戦を控える3階級制覇王者(暫定がつくが)。このゲレーロとの2戦が興味深い。1では距離をとって戦おうとするゲレーロが、前へ出るディアスの攻撃をコントロールできず僅差判定に敗れている。ディアスは前へ出て踏み込んでのパンチに威力があるとともに、踏み込んだ後の打ち終わりを相手が打ち返す際、スウェイでかわし、間髪おかず返しをコンビで打つというパターンが有効だった。ゲレーロは自身も前へ出るが、ディアスも前に出てくるために距離が合わず、有効なパンチを決められない。これが第1戦だった。
2ではゲレーロが初回から積極的というより猛然と前へ出て左を打ち込んでいく。しかも出てくる相手に対して、腕をたたんでそこから打ち抜くことで効かせるパンチを打っていた。初回にダウンを奪うとその後も攻勢を緩めず6Rに強烈なボディを1発決めて試合を終わらせている。ゲレーロの試合はこの2試合しか見ていないが見事に変貌しているのが見て取れる。(ファイター化…この2試合だけかもしれないが。1Rを見比べただけでよく分かる。)
Gamaliel Diaz vs Robert Guerrero 1
Gamaliel Diaz vs Robert Guerrero 2
このゲレーロの戦い方にディアス戦のヒントがあるのではないか。ディアスはとにかく前に出て、自分のウェイトを預けながらパンチを出してくる。遠い距離からのパンチの伸びも良いし、相手の返しに対する反応も速い(というか彼のパターンである)。これを後ろに下がって捌こうとするとゲレーロとの1戦目になる可能性が高い。ある程度前へ出て、短い距離で相手の突進を止める、というより、先に前に出て短い距離でコンパクトにパンチを効かせることが必要になってくる。粟生の場合は、これにもっと左右の動きを入れてもいいかもしれない。
KOしようと思わずこちらの攻撃で相手の攻撃を封じながらダメージを与える。そうすれば粟生のカウンターが決まるチャンスも多くなるだろう。「勝つと思うな思えば負けよ」的あるいは「急がば回れ」的ではあるが、圧倒的なパンチ力があるわけではないボクサーの場合これが一番大事である。
明日の試合は、岩佐vsDデラモラ(亀田興毅に判定敗、モレノにKO敗)、三浦vs三垣も、査定試合という意味で興味深い。岩佐と山中が再び相まみえる日が来るであろうか。
最近3年間は13連勝のディアスだが、目立った強豪との試合はない。しかし年齢的に極端な衰えがあるとも思えない。ビッグチャンスと燃えているだろうし、一発を狙ってくることだろう。粟生にはとにかく集中して戦ってほしいと思う。
粟生の後半KO勝利を予想する。粟生にはKOを狙わずにKOすることを望む。試合内容はハードな打撃戦になるのではないか。
byいやまじで
付記1
Rマルチネスが2012年9月にMベルトランJrとの決定戦をコントロバーシャルな判定で制し王座に返り咲いたことは記憶に新しい。
付記2
Rゲレーロはその後サリド、リツォー、階級上げながら、ジョルダン、クラッセン、カサマヨル、カティディスと強豪を撃破してゆく。
付記3
生観戦したターサク戦、会場の東京国際フォーラムはボクシングの試合は初めてとのことだったが、なかなか微妙な会場である。有楽町から徒歩5分はアクセスがよく周囲に繁華街もあり至便である。ただ観戦するには席によって見にくい場所があるようだ。私は客席のちょうど中央付近(同列に長谷川穂積の家族がいた)で見たが、ステージ上のリングをほぼ水平に見ることができ、距離もそれほどなく、まずまず見やすかった。1階席・2階席の後方はかなり遠いのだが、それ以上にステージ下最前列は、ステージ高+リング高で見あげる形になるので、こちらの方が見にくいのではないかと思った。前の席だからそれなりにチケットは高額だろうに、それでこうならちょっと、というところである。私が行った時は、動画撮影を防ぐためかテレビ映りを良くするためか、ステージ上方から客席に向けて強いライトが当てられていた。これは客席からリングを見るにはかなり妨げになるので勘弁してほしいものだ。要は一長一短であるが、音響や映像設備は良いし、あとは問題点を改善してほしいところである。


追記 2012/10/26 16:25
石田順裕選手のブログを拝見しました。世界のトップと戦い続け敗戦が続いていますが、プロボクサーとして充実ぶりがよく分かります。
すっかりご無沙汰している我が回顧録ですが、もうその存在すら忘れ去られている気がしないでもないですね。しかし、始めた以上は最後まで書きたいと思います。
「ウチ猫さんの回顧録を読みたい人も(たぶん全国に3人くらいは)いますよ!」と激励してくださる方もいるので、頑張ってやっていきましょうか。
※本稿では混乱を避ける為、「BB」さんではなく、当時の「ボク愛」さんで表記します。
前回は、ボク愛さんの拳論でのコメントが紛糾の種になり(といっても、4時起き氏が一人で勝手に紛糾してただけだと思いますが)、結果、除名にまで発展したというところまでお話ししました。このくだりはボク愛回想録「市民団体の続き…除名処分」でも詳述されてますのでご参照いただきたいのですが、この時期、4時起き氏とボク愛さんの間では、かなり頻繁にメールや電話でのやり取りがあったんです。
ボク愛さんからすれば、ただでさえクソ忙しくて寝る間もないのに、何とかこの会を成功させたいとあれこれ準備もしてたわけですから、「あの発言が問題になること自体は不本意ながら、紛糾させたなら責任を取ります。除名もやむなし。なんなら拳論に謝罪もします。ですからこのファンの会については…」と、立て直しに向けて建設的な意見を出すんですが、当の代表様が、いつまでもグチグチと「K記者の顔を潰した」だの、「そんなら私が代表降ります」だの、何の役にも立たない御託を並べる始末。まさに「いやまじで」さんが言うところの「一人でもやる、ではなく、一人でやりたい」のではないか、という部分が見えてきます。まあその後の顛末を見れば、一人になっても何にもやってなさそうですが。
一方、会合から数日後の7月12日、後楽園ホールでは、日本スーパーライト級王座決定戦が行われたのですが、この日は私にとって忘れられない日となりました。
この試合は元々、市民団体(笑)のメンバー4人で観戦する予定だったのですが、仕事の都合でボク愛さんが欠席し、行ったのは私と「いやまじで」さん、あとのお一人はNさんとしておきますが、その3人でした。ボク愛さん不在は残念ながら、会のメンバーとの初観戦ですから楽しみにしていたところ、突如ボク愛さん除名の報が入りました。
実は私、この知らせを、除名した方かされた方か、どちらから聞いたか忘れてしまったんですが(汗)、残念な思いはあったものの、ここ数日の流れからすれば予想はできたことでした。
代表様からは、今日、会のメンバーと会うのなら、ボク愛さん除名の件を伝えておいてください、とのご指示がありましたので、興行終了後、いやまじでさんとNさんを食事にお誘いし、事の成り行きをお話ししました。
このお二人も、いきなりの除名に驚いてはいましたが、せっかく知り合えたんだから、会とは関係なく、今後もお付き合いする分にはなんら差し支えないという考えで安心しました(まあ当たり前ですけどね)。
そしてもう一つ、この日が忘れられない日となった理由があります。
まさにこの3人で食事してる最中だったと記憶してますが、4時起き氏からメールがあり、そこには、あの関西の重鎮・旧徳さんからアプローチがあったと書かれていました。
なんでも、数日後に震災の復興ボランティアで被災地へ行き、その帰りに東京を経由するので、できたら市民団体(笑)の方とお会いして話を聞きたい、ということだったようです。しかし、4時起き氏は多忙で都合がつかないので「ウチ猫君ならヒマ人だから会えるかもよ。訊いときましょうか?」と応えたところ、旧徳さんから「では私のメールアドレスを教えますので連絡をください」と返事があった、とのことでした。
これには一瞬、(申し訳ないですがボク愛さん除名の件も忘れて)テンションが上がりましたね。旧徳さんのコメントといえば、勿論キレもコクもあるんですが、基本姿勢に一本筋が入っててまったくブレがないというところが何より凄い。それでいてカタブツではなく、たまに変な匿名クンといつまでも遊んでたりするし(笑)、とにかく魅力的で興味深いキャラクター、という印象で、いつかお会いして話をしてみたいと思っておりました。
早速その場でいやまじでさんとNさんにもそのことを話すと、当然この二人も乗り気で、では4人で会いましょう、ということになりました。
私は神仏は信じてないんですが、今振り返るとこの時のタイミングには「天に感謝」という気分になります。ご承知の通り、このあとほどなくしてボク愛さんや私は市民団体(笑)から離れていく…というか、団体自体が消滅同然になったんですが(ですよね?まだやってんのかな?)、旧徳さんからのアプローチがもう少し遅かったら、会う機会がなかったかもしれないですからね。
実際、私たちが市民団体(笑)から離れて今に至るまでの間、たくさんの方々とお話をしました。それはあくまで、自分たちの見た・聞いた・考えたことをきちんと伝えておきたい、という意味であり、決して「仲間を増やそう」とか「あいつをこっちに引き込もう」といったくだらない理由からではありません。
そうして話をしてる中で、もし一緒にいろいろ(たとえば榎さんの件等)やっていただけるのならお願いしましょう、という風になることもあれば、「我関せず」の立場を崩さない方もいます。
。いやまじでさんの場合もご本人の寄稿にある通り、どちらの言い分も公平に聞くというスタンスでしたからね。その後4時起き氏が珍妙なメールを出して勝手に自爆しましたが。
正直なところ、話を聞いてもらいさえすれば、「どちらにつくか」なんていう低俗なことは抜きにして、私たちの真意は理解してもらえるという自信はありました。だって何ひとつやましいことはしてないですからね。しかし中には、その「話を聞いてもらうだけ」というハードルが、思いのほか高い人もいまして。
街中で見ず知らずの人に話しかけてるわけじゃなく、何らかの形でリアルに接点がある人たちにアプローチしているのにも関わらず、まるで無反応というケースが二、三ありました。
自分たちの感覚でいえば、「話があるなら聞きましょう、それを受けてこちらも意見を言いましょう」となるのが普通で、話し合った上で「賛同できない」というならいいんですが、まったくレスポンスがないとなると、どうにもなりません。まるで「理屈を並べても無駄だから無視が一番」と、振り込め詐欺か架空請求の業者にでもなった気分です(苦笑)。
単に話をするだけなのに、なぜそんなに怖がられるのか、最初はけっこう気にしたりしたんですが、今はそれに固執することはしないようにしています。どんな理由であれ、私たちの話を聞きたくないというなら仕方ない。信用を得られなかったのはこちらの責任です。いつかひょんなところでまたお近づきになる機会もあるかもしれませんし、それまでは自然体でいこうかと思ってます。
そんなことが多々あったので、本当にこの旧徳さんとの出会いが実現したことは最高のタイミングでした。
ドネアvs西岡戦の同日、フィリピンのベンゲットではもう一つの日本人の戦いがありました。IBF・ミニフライ級の挑戦者決定戦。高山勝成選手(24-5-0,10KO)はハンディグ・シンワンチャ選手(比,13-5-0,7KO)と対戦し、僅差スプリット・デシジョンで敗れました。Boxingsceneがアップ・セットとして報じています。
http://www.boxingscene.com/singwangcha-upsets-takayama-ibf-final-eliminator--58161
パンチ力のあるシンワンチャと、フットワークとハンドスピードの高山という構図で、序盤2Rをシンワンチャが取ると、3Rはアジャストした高山が取り、その後一進一退の攻防に。
高山は3Rに相手パンチで眉をカット、11Rにはシャンワンチャも偶然のバッティングで右眉をカット。再三のプッシング注意の後、6Rに減点された高山は、終盤スタミナの切れたシンワンチャを追う。選手のみならずリングサイドのスペクテーターも選手の血飛沫を浴び続けるというノンストップの激しい打撃戦だったようです。
スコアは2者が114-113でシンワンチャ、1者が115-112で高山。6Rの減点がなければマジョリティ・ドロー。高山としては減点が決定的な敗因となった形です。
実際の試合の様子は見ていないので何とも言えないところもありますが、減点が勝負を分ける要因になったことはたしかなようです。
4団体制覇を目指して海外でのファイトを選択した高山選手。IBFは今年3月にジョイに判定で敗れ、この試合はジョイからタイトルを奪ったマリオ・ロドリゲス(メキシコ)への挑戦権を賭けたものでした。
ジョイvs高山Ⅱ
ジョイ戦ではパンチの回転は良いもののパワー不足を感じましたが、この試合も序盤2Rをシンワンチャ選手のパワーに押されてポイントをとられた模様。スピードディな連打は高山の持ち味ですが、三度目の戴冠に向けては相手のパワーへの対処が課題なのでしょうか。あるいは彼自身のパワー強化が必要なのでしょうか。そんなことを考えました。(と思ったら、高山はジョイ戦の負傷が尾を引いていたようです。↓)
中出トレーナーのブログ
中出トレーナーの名状しがたい思いが滲んでいます。日本国内ではIBFとWBOを認可する動きが進んでいますが、JBCに引退届を出した高山選手は今後どのような動きをするのでしょうか。その位置づけの変化とともに興味深く見守っていきたいと思います。
(by いやまじで)
アメリカ(カリフォルニア州カーソン、ホーム・デポ・センター)で、ノニト・ドネア(比)選手とWBO、WBCダイモンド、リングマガジンのベルトをかけて戦った西岡利晃選手は、6Rにドネア選手の左アッパーでダウン、9Rには攻め込んだところを右ストレートで再びダウン、この2度目のダウンはダメージが大きく、セコンドがストップ。西岡の海外3度目、そして最大のビッグマッチの勝利はならなかった。
試合後のインタビューで西岡自身が語ったように、前半はフレッシュなドネアに対して無理をせず、後半勝負を狙った。私は6Rまでは、いわばこの「待機戦法」を続けるだろうと思ったが、その最後の6Rにドネアの左のアッパーをカウンター気味に喰いダウン。大きなダメージはなかったが、これが試合の分岐点になった。
6回までデフェンス重視といっても決して下がり放し打たれっ放しではなかった。自身も前に出つつパンチを繰り出すタミンングを測り続けた。圧倒的に手数が少ないためにポイントを奪われるのは想定内であったろうし、おそらく中盤までにダウンを奪われるケースも想定してシミュレーションしていただろう。これで前に出なければいけないことははっきりした。
西岡はこの回、畳み掛けてくるドネアに対して自身もパンチを返しながらを何とか凌ぐと、7回以降前へ出る。
7R、西岡は手数を増やしながらも、ダウンのダメージもあり、冷静に攻勢へと切り替えていく。ドネアはスピードが衰えず、こちらも冷静に速射砲を連射。ペースを渡さない。
8R、前半にドネアが西岡に小さく速いパンチを決めるが、後半は西岡が攻勢に出て、中間距離から何度か左をヒット。両者のパンチの交換が激しくなる。
9R、西岡がますます攻勢を強め、必殺の左を繰り出し続ける。ドネアは下がりながらもカウンターでこれに応戦。中間距離から近距離での激しいパンチの交換に。ロープ際の攻防、ドネアを押し込んだ西岡に、ドネアのノーモーションの右が炸裂、西岡2度目のダウン。これはかなりダメージがあったようだ。西岡は意識はあるが、足もとはややおぼつかない。レフェリーは続行させるがセコンドがリング・インして試合をストップ。試合はドネアの9RKO勝利に終わった。
前半、西岡がドネアの良さを消す作戦を取ったため、静かな展開となったが、西岡のデフェンス・マスターぶりは見事だった。そしてダウンをとられ攻勢に出てからは西岡の左は何度もドネアをとらえた。しかし6Rのドネアの左アッパーは、西岡の左フック対策のダッキングに対してカウンターとなり、9Rの右ストレートは、西岡の「左アッパーを警戒してのスウェー」(ドネア)の瞬間をとらえたものだ。結論を言えば6Rの西岡のミスが勝敗の帰趨を決したと言っていい。西岡の完敗と言っていいだろう。ドネアは強かった。
西岡は敗れた。散った。しかし、彼は勝利のための自分の戦いを貫いた。ドネア相手に高い技術とボクシングするハートを見せてくれた。立派な戦いだったと思う。
◆ ◆ ◆ ◆
(以下2012/10/14/17:15追記)
※ 選手コメント(海外速報記事から)
西 岡「スピードが大きく違った」
ドネア「リゴンドーはもっとエキサイティングな試合を重ねる必要がある」
→http://espn.go.com/boxing/story/_/id/8502028/nonito-donaire-dominates-tentative-toshiaki-nishioka-ninth-round-tko
ドネアvs西岡(日本時間10月14日昼)が迫ってきた。
この試合の持つ意味は一言では言い尽くせない。日本のボクサーがパウンドフォーパウンド・トップ10選手と対戦すること、WBO、IBF、WBCダイアモンド、リング誌と4つのベルトが賭けられること、何よりも現在この階級でトップと目され世界的にパッキャオの跡を継ぐスーパースター候補と言われる選手と戦うのだから、香川照之氏ならずとも「実現しただけで快挙」と言いたくなる。しかも、西岡自身がSバンタムでは最も実績を残す階級第一人者であること、ドネアにとって西岡を倒すことが階級第一人者の称号を得ることになる(リゴンドーとかマレスとかいますが)のだから、この試合の価値はいやがうえにも上がるというものだ。
少なくとも私にとっては長谷川vsモンティエル戦以来のビッグマッチである。それはやはり、応援している日本のボクサーが世界の頂点に触れ合う稀有な機会であるからだ。西岡としてはジョニゴン、Rマルケス戦以来の、しかも海外での3度目のビッグマッチ+世界戦である。
この試合の成立過程は、ドネアvsアルセの交渉がまとまらなかった結果、かねてからのオファーにドネアサイドがサインしたものだが、西岡にとっては「ドネアしかいない」と言い続けてきた相手だけに、まさにモーチベーション満点ではないだろうか。彼は最近のインタビューで「ドネア以外とやっても、じゃあドネアとやったらどうなんだって結局言われちゃうじゃないですか」と言い、インタビュー記事でも「世界チャンピオンになりたいんです。日本のチャンピオンではなく」と発言しているので、かつての「世界チャンピオン願望」は実質的に「統一チャンピオン願望」になっていることが分かる。たしかに私が生観戦した試合のインタビューでもカバレロやファンマの名前を出して、対戦希望を公言していた。とにかく強い奴と戦いたいということをストレートに発信できる西岡という男に、私は非常に好感を持つし、すべてのボクサーにこうであってほしいと思うのである。そしてそれが実現したことに本当に興奮するのである。(これは時代もありますね。こういう時代ですから。)
それはともかく、実際のところ試合はどうなるのか。前評判では圧倒的にドネア有利だが、私なりにドネアと西岡を心技体の面から比較考察しておく。
心…
西岡は前述の通りモーチベーション満点である。海外での試合も彼は好んでいるのでプラスとしてはたらく。ただ直近のインタビューではやや緊張が感じられた。厳しい質問が多いことから多少ナーバスになっているのかもしれない。情報面からドネアの力を重圧として感じている節もある。しかし彼の最大の武器は4度の世界挑戦失敗でも諦めなかった徹底した粘り強さ。その意味で重圧も自分のパワーに変えてしまう強さを彼は持っている。精神的に崩れることはないだろう。
ドネアはモンティエル戦2RKOのセンセーショナルなHBOデビュー後、Sバンタムに階級を上げてから3戦連続してKOがないことから、スーパースターへの道を足踏みしているとのメディア評が目立つ。これはドネアvsモンティエル戦でモンティエルが抱えていた問題と似ている。しかし本人は「プレッシャーはない」と言う。たしかにこの男、強い相手、大試合には滅法強い。ハートの強さにおいても、試合中の冷静さにおいても問題は生じないであろう。試合前に西岡にVADAのドーピングテストを要求し、西岡が即諾したことから西岡をリスペクトすると言っているが、試合になれば非情になれる男である。
技 …
西岡は攻防のスキルに長けた左強打のサウスポーのボクサー・ファイター。最近は相手の動きを読んだディフェンス技術が目立つが、やはり武器は何と言っても左。これをどうやってドネアに決めることができるかに尽きる。そのためのボクシングの組み立て・読みの速さ(クイックネス)・深さがドネア戦では最大の強みである。右のリードと微妙な足さばきでいかに距離をつくるかが鍵になる。
ドネアはアマチュア出身なのでもちろんボクシングはできる。しかし一番の特徴はそのスピードであろう。どこから来るか分からない閃光の左フック、そして右ストレートも強く速い。攻防ともに身体能力の高さからくるスピードに依存している選手であるように思う。
体 …
西岡はスタミナ、筋力ともに十分だが、昨年のマルケス戦では反応の遅さを感じることがあった。その面で加齢による衰えは多少あるだろう。コンディションは過去最高だそうで、たしかに動きは良さそうだ。一年ぶりの試合であるが、ブランクは精神面の充実から見て問題にならないと見る。
ドネアについては西岡戦に向けてこれまでないほどハードなトレーニングを積んだとのこと。おそらくフィジカルに一層磨きをかけ、その面のアドバンテージを大きくする狙いと、戦術上の必要からであろう。こちらもコンディションに問題はない。(西岡を応援する立場としてはフィジカルをそんなに鍛えられると困るのだが…。)
因みにSバンタム級における二人の実力的な位置づけであるが、私は1位ドネア、2位は西岡・リゴンドー・マレスが三つ巴であると考えている。西岡はリゴンドーに勝つがマレスに負け、リゴンドーは西岡に負けるがマレスに勝つ。マレスは若さで西岡に勝てるのではないか。そのように見ている。
両者の戦略であるが、西岡はドネアのスピードをどうやって消すか、そして得意の左をどうやって当てるかを考えるであろう。そのため、慎重な立ち上がりを選択、まず相手の出方を見てから次の作戦を決めると見る。
ドネアは、最近ウォードの試合(vsドーソン)を見て、自身のルーツに回帰すると言っていた。つまり最近3試合でのパワー重視の戦い方から、スピード・手数重視の戦い方に戻るという。フィジカル強化はそのためにも必要だったのだろう。ドネアは最近3試合について「実験的なもの」と言っているが、私は「パワー強化」のための「実験」だと見ている。(パワー=力×スピードであるから、スピードが増せばパワーも増す。ドネアの実験とは正確には「筋力強化」もしくは「力強い打ち方のトレーニング」だったのであろう。)
またドネアは、「私は西岡よりスピードでかなり勝っている」としながら「スピードは完璧なタイミングによって中和される」とも言っている。スピードに溺れて西岡に裏をとられることを警戒しているのである。
試合展開は、西岡の慎重な立ち上がりに対してドネアも慎重ながらスピードを生かした攻撃でポイントを奪う作戦であろう。西岡が前に出ざるを得ないような状況を作る、そこまでいかなくても、徐々にダメージを与え、最後に止めを刺す。スピードに劣る西岡は、いかに技術でドネアのスピードを「中和」するかだが、決して不用意な仕掛けはしないだろう。(西岡はドネアvsモンティエル戦の解説で「ドネアに対して僕ならあの捨てパンチは打たない」と言っていた。ドネアの攻勢が緩んだと見て出たモンティエルだが、あれはドネアの罠であった。)仕掛けるとしたら、かなり思い切った攻撃になるだろう。そのためには前半から中盤にかけて勝負どころになる。疲労・ダメージが蓄積してからでは、体の強いドネアと勝負にならない可能性が高い。
最終的にどんな結末になるか、結果予想に関して言えば、私は西岡の中盤KO勝利を予想する。もちろんこれは希望的観測込みである。事前の戦力分析はいかに的確であろうと、それはどちらが勝つ可能性(確率)が高いかを算出する材料になるだけであって、それによって結果が分かるわけではない。このレベルの試合になれば、勝負はいつ終わって不思議ではない。どちらも互いが分かっている同士の戦いである。
どちらも「グレート」で「エキサイティング」な戦いを望んでいる。やはり中盤にオープンな打ち合いが見られるのではないか。いずれにしてもこの二人の戦いを純粋に見たい。私が語るより、両者のコメントで締め括ろう。
ドネアはモンティエル戦に向けて数か月前から2RKOを周囲に約束していたそうだ。それは決死の覚悟のプランであっただろう。今回のドネアはどんなプランをもつのか。ドネアは言う。「この相手に乱れがあってはいけない。すべての面で集中しなければならない。最近の試合で皆さんに見せた隙は今回はないだろう。実験段階は終わったんだ。」
西岡は言う。「僕たちはどちらもカウンター・パンチャーだし、試合はおそらくチェス・マッチになるでしょう。しかしそれはファンには見逃せないエキサイティングなチェスマッチになるでしょう。」
「アメリカのファンが僕を見た時、僕はこう言ってもらいたいんです。これこそボクシングだと。」
◆ ◆ ◆ ◆
資料(印象に残った海外記事等)
1 アメリカでの囲み取材(西岡)
2 リング誌の西岡記事
3 ドネアvs西岡:パワーvsスピード(クイックネスは心にあり、スピードは体にある。)
4 「スピードはパーフェクトなタイミングによって中和される」(ドネア)
5 ウォードにインスパイアされたドネア 「昔のドネアに帰る」
6 「少しずつ相手をばらばらにして、最後にKOする」(ドネア)
7 「日本ではダイアモンドやエメリタスはレギュラーより価値があると思われているがアメリカでは正反対である」
「HARD BLOW!の原点」記事で紹介した反則検証の続きです。
私たちも問題とされるその試合映像の1Rから最終ラウンドまでをすべて時間をかけて検証してきました。
当初は何故執拗にそこまで抗議するのか?という疑問や、選手自身の感情の問題が大きいのではないのか?との印象を抱いていた時期もありましたが、検証を進めて行った結果はやはり審判のレフェリングに問題ありとの結論に至りました。
映像を是非もう一度ご覧になって下さい。度重なる反則(肘打ち、後頭部への打撃)とそれを見逃している事が確認できるはずです。
正当な抗議行動を行った選手が謂われない批判を浴び、そして孤立しながらも戦って来た過程を私たちは無視出来ないと考えます。
私たちファンはこれまで、選手たちの不幸を幾度も目撃し心を痛めてきました。
ボクサーは闘犬ではないし、ボクシングは命のやり取りを見るものでもない。
どんなに言葉で繕ったとしても、選手にも人格とリングの中にも人権がある事を認めなければプロボクシングは永遠にスポーツとはならないでしょう。
今こそ、「ボクシングとは」「選手とは何か」から始めなければならない時だと思います。
また選手たち自身もその事を自覚しなければならないと思います。
まったくこれは個人的感傷ですが、「プロボクサーを目指したい」と自分の子供たちが言った時、果たして命を預けられる環境にあるのか?と多くの人が臆してしまう事でしょう。
それでも私たちはボクシングを観ているのです。
byB.B
以下、榎洋之さんが昨年、JBC試合役員に対し試合映像と共に直接提出された抗議文です。(一部氏名は伏せてあります)
◇ ガルサの肘打ち箇所、およびレフリングの疑問箇所
1Rのガルサ選手のパンチの打ち方をしっかり覚えておいて
ください。
< 1R >
◎終了間際
*ガルサは榎のことをしっかり見て肘打ちしている。
*レフリーはしっかり見れる位置にいる。
*榎は後ろ向きなため、何をもらったかわからない。
*肘をもらった直後、榎が振り返ってみているので、それが効い
たことがわかる。
※B審判さんは、この時点で「オレだったら、ここで注意する」
と言った。
< 2R >
◎0:20
*榎の頭が右にいっているにもかかわらず、ガルサが肘を当てよ
うとする。
*榎が見えないところから肘
*レフリーは見えない位置にいる。
*これは何のパンチ?右ストレートではない。
◎1:10
*榎のあごにガルサの肘
*その直後、榎の右フック系のパンチが入る。榎は肘打ちに
気付いていない。
◎1:30
*榎の頭が下がったところに肘打ち。肘が突き出てくる。
*これを流れで押さえつけただけとするなら、なぜ肘が前に
出る?
<3R >
◎0:30
*一番強い肘打ち。これが致命傷。
*この時、レフリーがガルサ選手に対して、何か注意をして
いる。「脇をしめろ?」
*観客も気付いた人がいる。ビデオに「あ~」という声が
入っている。
※この肘打ちをもらったことにより、榎はダメージを隠す
ため本能で下がり始める。この時点で三半規管が壊れ、
フラフラの状態。
◎1:20
*レフリー、審判見えるはず。榎は見える角度ではない。
*観客は遠いのに見える。
< 4R >
◎0:15
*肘が当たってはいないが、ガルサがパンチを当てにいく
瞬間、榎の顔をしっかり見ているのに、グローブの位置
がとんでもないところにある。何のパンチを打とうとした?
※これ以後4Rは、ガルサは普通の打ち方に戻っている。
これがガルサの本来の打ち方。クセではないことがわかる。
※4Rにガルサのボディーをもらったことにより榎がおかしく
なったという意見があるが、その前にすでに、フラフラに
なっている。(ビデオで)
< 5R >
◎0:23
*流れとされていい榎のパンチ。ガルサの頭上を通っていく。
◎1:53
*レフリーしっかり見える位置で。
< 6R >
◎2:05
*榎が動いてない時、ガルサと榎が近い状態で、ガルサが明ら
かに右肘を当てにいっている。これは何のパンチ?
*レフリー横からしっかり見える位置で。
◎2:25
*ガルサが榎の後頭部を叩く。
*レフリーしっかり見える位置にいるのに、気付かない。
◎2:40
*レフリーしっかり見てる。
< 7R >
◎0:25
*榎の頭が動いてないのに、ガルサは何のパンチ?レフリー
しっかり見える位置に。
◎0:50
*明らかに肘が入っている。レフリーしっかり見える位置に
いるのに、気付かない。とても危ない。審判も見えるはず。
< 8R >
◎2:00
*右肘をしっかり上げている。これに榎の頭が当たったら
危ない。
(カットした後)*レフリーしっかり見える位置に。
◎終了間際
*左肘。(スローじゃないほうが分かりやすい)
*レフリーしっかり見える位置に。
< 9R >
◎0:25
*ガルサのグローブが上を向いている。
*肘が当たった瞬間、音もなっているのがかわる。
◎ストップ前
*ガルサが榎をしっかり見ながら、右肘を当てている。
*レフリーもしっかり見ている。
◇試合後、こめかみの部分が特に痛かった。
この痛さは試合後1週間経っても、最後まで残っていて、朝起き
ると揺れていた。(試合直後の脳の検査は異常なし)
もちろん今までパンチをもらい、試合後腫れや痛みがあったこと
はあるが、今までとは明らかに違う痛みで初めてのことだった。
普通ボクシングはグローブをつけ、こぶしで殴る。一時的に三半
規管も揺れるが、グローブにはクッションがあるので、そんなに
簡単には壊れない。肘は「肘鉄(肘鉄砲)」という言葉があるよ
うに、鉄で殴られたような衝撃がある。 直接、三半規管を壊し、
脳も揺れる。
◇ガルサの肘打ちは1R終了間際から始まっていて、榎は3Rから
フラフラの状態。では、榎は3Rまでに、これほどまで早い段階
からフラフラになるほどのガルサのパンチをもらったか。
榎の打たれ強さは、皆さんご存じの通り。また「スタミナがない」
と言われたこともない。徹底的に体の勉強をし、体幹トレーニン
グも行い、筋肉量が増したことで以前より疲れにくい体を作り上
げた。今回のスパーリングでもほとんどダメージが残るパンチは
もらっていない。普段から節制し、プラス2,3キロをキープし、
減量も2日ほどで終わり、減量の影響は考えられない。
◇なぜ試合中に榎自身が気付かなかったのか。
1R終了間際のガルサの肘打ちで、榎は明らかに「この野郎」と
いう表情をしている。
肘打ちをもらう時は、榎は横を向いているか、下を向いているか
で、ガルサのパンチ(肘打ち)の軌道を見ていない。レフリーは、
かなり見える位置にいる。
3R(0:30)の榎に致命的なダメージを与えた肘打ち以降、
榎はそのダメージを隠すために必死。この直後から本能で下が
り始める。この時点で三半規管が壊されフラフラの状態。そし
て、当たり前だが勝つために必死。
6/2、B審判さんにビデオを見ていただいた際にも、B審判さ
んから「どうして自分で気付かなかったのか。」と言われた。
そんなことを審判、レフリーである立場の方が言っていいのか。
もちろん、榎自身、ジムトレーナーが気付き、レフリー、審判に
アピール出来ていたら良かったと思うが、反則や危険行為を
見極めるのもレフリー・審判の仕事ではないのか。
戦っている選手は必死。興奮もしている。それを冷静に判断すべ
き人がレフリー・審判なのではないか。
ただ採点をつけるだけなら、レフリーは必要ない。
1Rのガルサの肘打ちをビデオで見て、「肘が当たっているね。
俺だったら注意する」とも言っていた。
ガルサの肘が榎に入っていることを認めたということになる。
反則は反則。しかるべき措置を。
◇ガルサの肘打ちが必然的に行っていることについて
B審判さんは、「メキシコ人は肘でパンチを打つだろ」と言って
いた。しかし、ガルサは1R、4Rは普通の打ち方をしている。
日本人と同じように、右ストレート、フックを打っている。
普通パンチを打つ時は、グローブの前を見るが、ガルサが肘を
当てる際は、必ず肘が当たる前を見ている。ということは、肘を
当てたこともわかっていて、その後ガルサは肘を当てて自らも痛
いので、肘を何回も振っている。
なぜ肘の前に目線があるのか。よくグローブと肘が偶然当たる
時があるが、肘が当たることを想定していないので、肘がしび
れることがある。
そのため、ガルサは肘を当てる時、肘を見て力を入れている。
意図的に行っているとしか思えない。
また何のパンチ?と思えるパンチを何度も出しています。
ストレート、フック、アッパーのパンチの軌道とは考えられ
ないパンチを出している。それが肘打ちを狙っているパンチ。
< 2R(0:20)4R(0:15)6R(2:05)
7R(0:25) >
ガルサの肘打ちを「流れ」とするなら、なぜ肘が突き出て
くるのか。「流れ」とするなら、右ストレートでいうと、5R
の(0:23)、榎がガルサに右ストレートを当てようとする
が、その瞬間ガルサが素早く左に踏み、ガルサの頭が左に下が
ったので、榎のパンチが右にいき、榎の肘がガルサに当たりそ
うになった。
これが「流れ」として説明がつく。パンチが流れたので、榎の
目線はパンチの前にある。
◇レフリングの不備について
偶然のバッティングに例えると、左ボクサーと右ボクサーが戦
った場合、同じところに踏み込むから偶然が生まれる。また右
ボクサー同士が戦った場合でも、踏み込むタイミング、頭の低
さ、頭から突っ込むなどからバッティングが偶然生まれる。
もし、故意ではなく偶然に発生したとしても、レフリーから注
意されるべき。榎も「頭からいかないように」と注意されたこ
とがある。
これは肘でも同じで、偶然であろうが、必然であろうが、レフ
リーは危ない行為として注意すべき。
今回の試合でガルサの肘打ちは17回(当たったのが14回、
未遂が3回)、これほどまでに乱発している状況をなぜ一番近
くで見ているレフリー、審判は気付かなかったのか。観客で気
付いている人がいるというのに。
ガルサの肘打ちを見れなかったことに加えて、
1)4Rの終了ゴングがなっているのに、それに気付かない選手を
割って止めに入らない。「ラウンド終了ゴングがなっているよ」
と仕草はしているが、なぜ止めにはいらないのか。
結局、選手が気付きコーナーに戻るが、その数秒間で、榎は
ガルサのパンチをもらっている。
採点には響かないとしても、榎のダメージは蓄積される。
2)6R(2:25)ガルサが榎の後頭部を叩いたのに、レフリー
は気付かない。しっかり見える位置にいる。
どう考えても、今回の試合のレフリングには疑問があります。
反則を全く見れない。とっさの判断が鈍い。
選手はプロとして闘っています。レフリーや審判もプロです。
選手はリングで人生と命をかけて戦っています。
その試合を裁くのが、レフリーと審判です。その重みとプロ
意識が低いと思います。裁く試合数が多いからと、ただこなす
だけになっていないでしょうか。
もっと1試合1試合、選手一人一人の想い、夢、人生、命が
かかっている試合を裁くのだという意識をもってください。
以上。
9月は海外ビッグマッチが多かったのでその観戦記を。
●IBF世界バンタム級タイトルマッチ(2012/09/15,於:米)
レオ・サンタクルス(墨) vs エリック・モレル(プ)
サンタクルスは一発一発のパンチが力強くコンパクト。インパクトの瞬間に力をこめるが引きも速いのでコンビネーションが繰り出せる。しかも相手を見ながらそのつどパターンに変化をつけている。
モレルは相手を過小評価してか打ち合いを挑み、予想以上のパンチの強さに1Rから劣勢を強いられる。5Rに足を使いはじめるがダメージの蓄積でもはや体が言うことを聞かず、勝利の可能性が見いだせず気持ちが切れたようだ。
5R終了後、モレルがギブアップ。サンタクルスはなかなか良い選手だ。
●WBC世界フェザー級タイトルマッチ(2012/09/15,於:米)
ジョニー・ゴンザレス(墨) vs ダニエル・ポンセ・デ・レオン(墨)
ジョニゴンは慎重な立ち上がり。デ・レオンは踏み込んで左を伸ばす。手数で押すデ・レオンに対しジョニゴンは自分のパンンチを合わせられない。デ・レオンペースのまま6Rにデ・レオンの左フックが顎にヒットしジョニゴンがダウン。その後ジョニゴンも盛り返すが、8R偶然のバッティングでジョニゴンがカットし試合がストップ。負傷判定でデ・レオン勝利。
デ・レオンは細かいフットワークで微妙に距離調節しており、左のパンチはスピードはないが異なるタイミングと角度で変化をつけている(おそらく感覚的)。見た目以上に対応が難しいようである。
ジョニゴンはサウスポーは鬼門のようである。デ・レオンはファンマ戦での衝撃1RKO敗で終わったと思ったが復活して再戴冠。メキシカン恐るべし。
●WBO世界Sウェルター級タイトルマッチ(2012/09/15,於:米)
サウル・アルバレス(墨) vs ホセシト・ロペス(米)
アルバレスのパンチは力強いが引きが速いので高速コンビネーションも可能。デフェンスも良いので相手のパンチもあまりもらわない。それにしてもパワーが図抜けている。
激闘型のロペスだが1Rから押される。ボディでダウンを繰り返したが顔に苦悶の表情が浮かばないのは不思議。パンチの強烈さが人間の意識を超えていたのか、ロペスの精神力が苦痛を超えていたのか。
前に出る戦いを最後まで通そうとギブ・アップしなかった姿に好感を覚えるのは、モレルの試合を見た反動からではなくジョー小泉からサイドストーリーを聞いてしまったからである。
今後ビッグマッチはカネロを中心に回るんでしょうね。
●WBC世界ミドル級タイトルマッチ(2012/09/15,於:米)
セルヒオ・マルチネス(亜) vs フリオ・セザール・チャベスJr(墨)
チャベスJrはマルチネスの左を徹底警戒して時計回りを繰り返す序盤。
マルチネスは4RまでにチャベスJrの動きを見切りペースを掌握。
スピードとテクニックでは圧倒的にマルチネスが勝る。パワーでは圧倒的にチャベスJrが勝る。
この試合マルチネスはチャベスJrを叩き続けた。さながら象に挑む人間のように。
マルチネスがチャベスJrの顎を打ち抜きポール・ウィリアムスのように昏倒させていたら、マルチネス伝説は完成していただろう。だがそうはならなかった。
マルチネスペースが続き最終R。凡戦のまま終わるのかとの思いがちらつき、一方でチャベスJrの体の緩みの無さに緊張を覚える。そして、突如といっていいマルチネスのダウンシーンが訪れる。
自分よりも強いと感じた相手に対して、無謀な攻撃をしかけてしまうとしたら、それは勇敢さからではなく臆病さからである。
チャベスJrが凡庸な選手だったら、圧倒的に技術に勝るマルチネスに対してもっと破れかぶれの攻撃に出たかもしれない。実際トレーナーのフレディ・ローチももっと攻撃的になるよう発破をかけていた。しかしチャベスJrは相手を見ながら自分の劣勢を知りつつ、「自分の時」が来るのを待っていた。おそらくその戦い方を戦前から決めていたのであろう。それを最後まで貫いた。その結果のダウンシーンである。
もしチャベスJrが最終Rにダウンを奪うこともできず「凡戦だった」「勇気がなかった」と批判されていたとしても、私はチャベスJrを評価する。自分の力を最後まで信じ、自分の勝利を徹底的に追求した結果だからだ。
そしてこの日敗れたにもかかわらず、チャベスJrが心なしか清々しい表情を見せていたのは、彼がフリオ・セザール・チャベスのJrではなく、フリオ・セザール・チャベスJrになることのできた日だからである。今後チャベスJrがどれだけのボクサーになるのかは分からないし、彼は逆転の遺伝子を受け継いでいるかもしれないとしても、そのことだけはたしかである。
ボクシングを見る楽しみには、こういう瞬間を見ることができるところにもある。
付記1
戦後に判明した負傷(拳の骨折、膝の靭帯損傷)から、マルチネスにとってあの戦いがいかに過酷なものであったのか、言い換えれば、チャベスJrの圧力がいかに強力であったのか、あらためて痛感する次第。
付記2
この日の試合は他にR.マルチネス vs M.ベルトラン、G.リゴンドーvsR.マロキン戦も観た。マルチネスは完全に負けていると思い結果発表のシーンを見ず、後で映像編集の際に勝利を知りびっくり。リゴンドーの危ないシーンは直前の試合中止騒動の影響もあるのでは。
●OPBFフライ級タイトルマッチ(2012/09/23,於:比)
ロッキー・フェンテス(比) vs 李明浩(大阪帝拳)
フェンテスは5度目の防衛戦。李はOPBF4位、日本フライ級1位にランクされている。
フェンテスはオーソドクスのボクサーファイター。テクニックで相手をコントロールするタイプに見える。前半ペースをつかみポイントをリード。
李は前半ほとんど手を出さず、右が当たる距離・タイミングが何度もあるにもかかわらず警戒してか自重してか手を出さない。6Rに一発もらい7Rからようやく反撃。
やや乱戦気味になるもフェンテスがポイントアウト。フェンテスの防衛成功だが、世界を狙うにはスピードとパンチ力に欠けるように思う。李選手は敵地でハートの強さを見せたが決定的な武器に欠けていた。
●WBOインター、フライ級タイトルマッチ(2012/09/23,於:比)
ミラン・メリンド(比)vsフアン・ピエロ・ペレス(ベ)
メリンドは前WBOLフライ王者のヘスス・ゲーレを4RKOで破りタイトル獲得。ペレスはヘスス・ヒメネスを破りWBAフライ級暫定王座に就き、初防衛戦でレベコに奪われている。
メリンドはコンパクトだが力強いパンチをコンビでまとめて打つ。防御がしっかりしており、目がよいのでカウンターもとれる。スナッピーなジャブも使える。7Rまでに相手を見切り8Rに仕留めに行って雑になり、カットしてスローダウンしたがポイントアウト。課題は勝負勘かもしれない。
ペレスはスピード・パンチ力ともに無くオープン・ブローが多く(掌底も注意された)デフェンスもそれほどよくない。よくこれで世界王者になれたかと思う選手(前WBA暫定フライ王者)。劣勢ながら最終Rまで戦ったのでスタミナと精神力はある。
メリンドのボクシングはフライ級ながらパワフルかつ小気味良く、メンタルもしっかりしている。また見たいと思える選手である。五十嵐選手とやったら勝つのではないか。