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MBSドキュメンタリー 『あるボクサーの死 ~精神医療を問う父の闘い』を見た

 先だって日曜日の深夜に関西地区で地上波放送されたテレビドキュメンタリー『あるボクサーの死 ~精神医療を問う父の闘い』を見ました。

毎日放送の番組HP
 
 大阪の堺市にある勝輝ジムのプロ第一号だったプロボクサー武藤通隆選手が自殺した事件について、精神医療のあり方を問うという大変に重いテーマを扱った内容でした。

 武藤さんは大阪教育大学を卒業後、高校で数学の非常勤講師をしながらプロボクサーをしていたという異色の選手でした。

 ボクシングの練習後に精神の不調を訴えて訪れた精神科で統合失調症の診断を受けて入院した武藤選手は、身体拘束や向精神薬の注射が必要な状態であるにもかかわらず病院を退院させられて、その後自殺をするにいたりました。その背景には国の精神科の診療報酬についての制度変更の影響があったのではないか?という指摘が番組中なされます。

 男手一つで武藤選手を育てたという父親の浩隆さんは病院を相手取った裁判を闘いつつ、同時に精神医療のあり方についても国に対して積極的に提言をされています。

 統合失調症の発症とボクシング競技には直接の因果関係は無いのかも知れませんが、頭部を打撃することや過酷な減量、試合の恐怖や敗戦の心理的ダメージなどのボクシングにつきものの極限状態が精神にもたらす影響については分からないことだらけです。ボクシングというスポーツを考える上でも様々な示唆にとんだ内容であると思います。

 関西ローカルの番組ですがMBSの有料動画サイトで今後見れるようになると思います→MBS動画イズム 「映像シリーズ」

 ボクシングファンには是非見ていただきたい内容だったので、ご紹介させて頂きました。

 文責 旧徳山と長谷川が好きです

色々はっきりさせておきましょう

再戦を主導してきたのは、帝拳の本田会長です。山中選手には再戦か引退かと言う選択肢しか提示されていなかった。

ネリのドーピング違反を不問にしたのはWBCです。タイトルも剥奪しませんでした。

再戦に当たって何の規制もしなかったのはJBCです。

大和トレーナーの何の問題もないタオル投入を非難した本田会長の姿勢を容認したのはメデイアです。再戦に当たってもドーピングを「悪役ネリのキャラクターの一部」くらいの煽りネタとして消費して、真摯な検証はありませんでした。

35歳の山中は一昨年辺りから目に見えて打たれ脆くなってきています。パンチの貰い方も若い頃に比べれば良くない。一方減量苦の無かった若いネリは、明日はバッチリリバウンドして来るでしょう。なんなら更に巧妙なドーピングをしているかも知れません。


明日事故があれば誰の責任ですか?

2010年代の日本のプロボクシングを支えてきたスターがなんでキャリアの最後にこんなリングに引き出されないといかんのですが?

帝拳の浜田代表は大和トレーナーのタオル投入を批判して「(事故があれば)責任は俺がとる」と言いました。でも事故に責任なんかとれないでしょ。

現行のクラブ制度の下では、選手に自由に試合を選ぶ権利はありません。世界チャンピオンですらそうです。山中選手ですらこんな酷い試合をしなきゃならんわけです。

この試合を組みたかったのは誰ですか?この試合を見たかったのは誰ですか?

責任があるのはそいつらでしょう。

もし試合が無事に終わっても、もし山中選手が勝ったとしても。なんも解決してません。

なんでこんな試合が組まれたのか分からない(旧徳山と長谷川が好きです)

ドーピング違反についての基礎知識が学べる映画のご紹介

山中慎介×ルイス・ネリ戦におけるドーピング違反や本田明彦氏によるタオル投入批判、不可解な井岡引退に象徴される奴隷契約トラブル問題など、今年も日本のプロボクシング界は問題山積。一方アマチュア側に目を転じてみれば、日本ボクシング連盟のガバナンス不全と組織の私物化は半ば公然となっているにも関わらず、自浄作用はなんら働いていません。

相撲協会のスキャンダルが日夜メディアを騒がせていますが、隠蔽体質や人脈支配の酷さは、正直ボクシング界もドッコイドッコイ。マイナースポーツゆえに社会の注目が低く、批判が起きていないだけであります。

そんなボクシング界ではありますが、年頭から早くも新たな問題が発生。

ラスベガスで殊勲の敵地戴冠を果たしたIBFフェザー級チャンピオンの尾川賢一選手が、なんと当地で受けたドーピング検査で陽性判定となるという事件が発生。昨年ルイス・ネリのドーピング違反への対応で大騒動に見舞われた帝拳プロモーションですが、今度は一転疑惑の目を向けられる立場になってしまいました。

時あたかも漕艇競技において、オリンピック代表クラスの選手がライバルに違反薬物を飲ませて陥れるという事件が発覚したばかり。尾川の事案も、事実関係については虚虚実実の観測が飛び交っています。

日本のファンの中には、根拠もなく「日本人はドーピング違反なんて卑怯なことはしない!」と断言しちゃうような風潮もありますが、現状はあくまでグレイであり、一般論として一番確率が高いのは運動能力を向上させる為に本人が意図的に摂取したケースです。『悪意がないから大丈夫。裁定は覆る』みたいなチョーチン記事書いてるおめでたい人もいますが(三浦勝夫氏による帝拳援護射撃?記事→米国で世界王座獲得の尾川堅一に薬物反応。But、裁定は覆る?)、意図的かどうかなどということが配慮されたら検査の意味がありません。シャラポアみたいな大スターでもWADAの検査でサスペンドされてるわけで、口先で誤魔化せるような次元の話ではありません。あらゆる予断を排して、事の成り行きを見守る必要があります。

WADAが実施しているオリンピック方式のドーピング検査と言うのは大変厳しいもんで、抜き打ち検査はいつ何時でも拒否できず、尿道から尿が出ている様子も検査官によって目視で確認されます。女子も例外ではありません。

アテネ五輪で室伏広治選手が繰り上げで金メダルを獲得した際に一位失格となったアドリアン・アヌシュ選手は、他人の尿をカテーテルで膀胱に入れて検査を逃れようとまでしました。尿道にカテーテル挿し込んで、他人のションベンを膀胱に入れるという『痛い&汚い苦行』をしてでも勝ちたい!というのがアスリートの本能なのでありましょうか。

ドーピング違反については参考になる映画が二本ございます。まずはアマゾンプライムで見れる『疑惑のチャンピオン』
  ↓
アマゾンプライム 『疑惑のチャンピオン(字幕版)』


この作品は2000年代の自転車ロードレースで大スターだったランス・アームストロングの伝記映画。ツール・ド・フランスを7連覇して生きる伝説となった彼が、ドーピング違反の発覚で堕ちたヒーローとなり、永久追放されるまでの過程を描いています。キャリアの初期に癌に罹患したアームスロングは、生存率50パーセントを宣告されながら辛い治療を乗り越えて完治し、復帰後破竹の連勝を続けることで癌サバイバーの希望の星となります。ヨーロッパが主だった自転車ロードレースの市場をアメリカに広めた功績で、業界での地位も不動のものとなり、その特権的な存在感によってマスコミによる批判が及び腰になった結果、問題の発覚が遅れたということも劇中言及されています。ドーピングを請け負う怪しい医者や、ヨーロッパで国境を越えて薬物を買いにいくシーン、検査逃れのドタバタぶりなどもユーモラスに描写されており、ドーピング違反の実態が良く分かる映画となっております。スティーブン・フリアーズ監督なので映画としても普通に面白いです。

もう一本はNETFLIXで見れる『イカロス』
   ↓
NETFLIX『イカロス』


こちらはドキュメンタリー映画。映画監督で、自転車ロードレースのハイ・アマチュアでもあるブライアン・フォーゲルは「自分自身を実験台にしてドーピングの効果を確かめたら面白いんじゃないか?」と言うどうかしてるアイデイアを思いつき、ロシアからドーピングの専門家ロドチェンコフ氏を呼びよせる。フォーゲルはロドチェンコフの指導の下『検査でもばれないドーピング』を試みるが、映画製作中に、ソチ五輪でのロシアによる組織ぐるみのドーピング違反が発覚。ロドチェンコフはロシア政府から口封じで抹殺されのを恐れて、フォーゲルに国外逃亡の手助けを求めてくる。フォーゲルの手引きでアメリカに逃亡したロドチェンコフは、捜査機関を通じてロシアのドーピング手法を赤裸々に証言。フォーゲルが個人的な動機で始めた映画は、ロシアの国家的陰謀を告発する映画へと巨大化していく。

その後のオリンピック本大会でのロシア選手団の追放にまで発展した大問題となるこの事件の成り行きや、当事者の口から語られるソチ五輪で行われた不正行為の実行方法、ロシアとアメリカの政治的な暗闘など見所も多く、また当事者であるロドチェンコフさんの明るくひょうきんなキャラクターも最高でありました。

上記二本の映画はネット配信で気軽に見れて、スポーツ界に蔓延するドーピングについて楽しんで学べます。是非見てみてください。

大沢×久保が楽しみな(旧徳山と長谷川が好きです)

井岡ファミリーの確執を見て、映画の「ザ・ファイター」を思い出した件

 いやー井岡一翔選手のタイトル返上を巡る報道はほんと酷いっすねえ~。なぜか一翔選手の美人妻、谷村奈南さんがベルト返上の原因であるかのように、スポーツ紙から寄ってたかって印象操作され、アホなネット民が公共空間で谷村さんにセクハラしまくるという地獄絵図。あんまりこういう言い方はしたくないですが、民度が低すぎますね。そこに便乗してる、アンチ井岡のゴミボクシングマニアがこれまた酷い。ボクシングという素晴らしいスポーツから何も学んでいない連中ですね。

逆ギレ?_R

100%セクハラのゴミ発言にも誠実に答える谷村さんだが...


デイリー_R


デイリースポーツはなぜか『けんか腰反論』の見出し!セクハラキチガイツイートを全肯定するデイリーさん!



 そもそも「運動選手が結婚したら成績が下がる」っていう信仰はなんなのでしょうか?むしろ結婚せずに夜遊びしてるほうが、よっぽど成績に響くと思いますけどね。高校生の時から常に日本のトップクラスを走り続けて、三階級を制覇するまで休みなくボクシングに打ち込んできた井岡一翔君が、人気歌手として活動する、自立した美しい女性と出会って結婚することの、何が一体問題だというのでしょうか?反対してる奴バカ?

 まあ、こういうバッシングの根底には「いい女と結婚しやがって!」という嫉妬があるわけですが、有名税というにはちと理不尽が過ぎる気がしますね。

 井岡選手のベルト返上はどう考えても井岡一法会長の巨額脱税疑惑(←クリックすると記事に飛びます)が原因であり、一法氏の記者会見での一連の発言は『本当の原因から目を逸らしたい&嫁を排除して以前のように一翔君をコントロールしたい』という本音がバレバレ。はっきり言ってボクシング関係者の間じゃ、一法会長と一翔君の確執はすでに公然の秘密で、原因だってみんな察しがついてるのです。スポーツ紙や専門誌の記者だって本当は分かっているはずです。

 脱税事件が週刊誌報道の通りなら、莫大な重加算税,が課されているはずです。今まで自分が命を削って稼いで来た金が、肉親の脱税のせいで融けて無くなってしまった上に、自由意志で出来るはずの結婚にまであれこれと口出しをしてくるとあっては、確執が生まれて当然でありましょう。

 私はこの一連の井岡ファミリーの揉め事を眺めていて、デビッド・O・ラッセル監督の傑作ボクシング映画『ザ・ファイター』を思い出したのでありました。この映画、現在の井岡ファミリーの状況となかなか似ているのです。



 この映画は、90年代にアルツロ・ガッティとの三度の死闘で有名になったミッキー・ウォードの半生を描いた実録映画で、ミッキーを演じるのはマーク・ウォルバーグ。母親アリス役を演じたメリッサ・レオと、トレーナーで種違いの兄のデイッキー・エイクランドを演じたクリスチャン・ベールはアカデミー賞の助演賞をダブル受賞しております。

 ミッキーの一家はヤンキー丸出しの女系大家族で、全員が勤労意欲に乏しく、ミッキーの稼ぐファイトマネーにタカって暮らしてる。母親のアリスはマネージャー役だがアル中気味で、目先の金に釣られて無謀なマッチメイクばかりしてはミッキーの命を危険に晒している。トレーナーの兄デイッキーは当時大流行していたクラック中毒で、一日中クラックハウスに入り浸りで、まともにボクシング指導も出来ない。このデイッキーはかつては才能溢れるスター候補で、レナードと対戦したこともあり『レナードからダウンを奪った』ということを唯一の心のよりどころにしているのだが、VTR映像ではスリップにしか見えない。

実際の試合映像
   ↓


 肝心のマネージャーとトレーナーがアル中とヤク中では、勝てる試合も負けようってものだが、心優しいミッキーは家族をクビにすることが出来ない。というか、しがらみで雁字がらめなのか。
 そんなうだつの上がらない生活の中で、ミッキーはバーテンのシャーリーン(エイミー・アダムス)と恋に落ちる。彼女と出会ったことで、家族に言いたいことも言えなかったミッキーが変わり始めると、ミッキーのファイトマネーにたかって生活している家族からすりゃ彼女の存在が邪魔になる。『女と家族のどっちが大事なんじゃい!』と詰められて、板ばさみになるミッキーだが、シャーリーンの方もやたらと気が強く、ヤンキー一家のバカ女兄弟相手にたった一人で一歩も引かぬバトルを展開!体を張ってミッキーを守る。

 ところがデイッキーがついに御用となってしまい、逮捕される時にパンチをふるって警察に抵抗したもんだから、ミッキーが慌てて仲裁に入るとミッキーは警官に警棒でナックルを潰されてしまう。商売道具の両の拳を潰されて、やっとミッキーは気付く。「家族と一緒にやってたら俺がダメになる」と。

 そこからの展開は是非映画本編を見ていただきたいのですが、井岡ファミリー問題との類似点はお分かりいただけたでしょうか?整理すると...

・もともとボクシング一家で、家族がマネジメントをしている
・元選手の近親者がトレーナーもしている
・家族が選手のファイトマネーに依存している
・恋人が出来たことで、選手が家族との関係を一歩引いて見るようになる
・選手が家族の違法行為(麻薬・脱税など)により活動に支障をきたす
・恋人の存在が原因で家族と確執が起きる
・恋人は家族の理不尽な要求から選手を守る
・恋人はインテリで家族は不良性感度抜群


 どうです、似てるでしょ?

 ついでにデイッキーとミッキーの「ボクシングをあきらめた兄が弟に夢を託す」という関係は、一法氏と弘樹氏の井岡兄弟の関係にも似ています。

 劇中描かれるミッキーのアイルランド系大家族のコテコテ家族愛も、亀田ファミリーや井岡ファミリーを想起させます。

 というわけで井岡問題を早分かりするには「ザ・ファイター」を見るのが一番!NETFLIXでも見れますよ。

 スポーツ紙や実話誌のセクハラ上等姿勢に驚いている(旧徳山と長谷川が好きです)



良くぞ言ってくれましたの土屋修平インタビュー+ ネリドーピング問題

 若い皆さんは御存知ないかも分かりませんが、サッカーが企業スポーツの日本リーグから、プロのJリーグになる時は「日本では野球があるから、プロサッカーは定着しない」「人口の少ない地方都市にスタジアムやプロチームを作っても財政的に破綻する」てな否定的意見が散々言われておりました。Jリーグが地域社会に定着した今では、考えられないような『妄言』であります。そうした否定的意見に対してJリーグの初代チェアマン川淵三郎氏は「時期尚早と言う人間は、 100年経っても時期尚早と言う。前例がないと言う人間は、 200年経っても前例がないと言う」と反論したそうです。

 そもそも企業名を冠しないプロスポーツチームというのが想像の埒外と言う時代。日本テレビ系のニュース番組はJリーグ発足後も「今日はトヨタがパナソニックに2-1で勝ちました」なんてやってて、企業名の表記を巡ってJリーグとモメまくり。東京ドームに無理やりコマ切れの天然芝を敷き詰めて試合して、芝がボコボコでわやくちゃになったと言う珍事件もありました。結局読売のドン・ナベツネは、プロ野球のように私物化できないサッカーに興味を失って、ヴェルディに金をかけるのをやめてしまいました。

 Jリーグは、今年から10年間の試合放映権を、ネット配信のDAZNに2100億円で売却して、巨額の手元資金を得ました。これは放映権をリーグが一括管理するという優れた制度設計があってこそ可能になったことです。さらにTOTOの売り上げから、様々な競技団体に分配される強化目的の助成金も莫大な金額にのぼります。Jリーグが他の競技団体も支えているわけです。NHKでやってただけだったワールドカップは、オリンピックのような巨大コンテンツになり、日本社会に莫大な経済効果をもたらしています。サッカーの競技人口はプロ化で劇的に増加しました。
 
 もし 「プロサッカーは日本に定着しない!」と言う人が議論の主導権を握って、Jリーグ構想を潰していたらこのような世界は存在していませんでした。

 Jリーグ発足から10年チョイ経過した2004年に、今度はプロ野球の一リーグ化騒動と言うのが起こります。近鉄バファローズの球団売却に絡んで、球団を10チームに再編し一リーグにするという構想を、一部球団オーナーが画策していることが突如発覚。選手会やファンの反発を受けた黒幕ナベツネは交渉を求める選手会に対して「たかが選手が」と放言して総スカンになります。

 当時はまだ「強い巨人を、その他のチームが倒そうと努力するのがプロ野球の醍醐味で...」的なオヤジ目線の人がマスコミやファンにも多くいて、オーナー連中とて「巨人と試合が出来れば儲かる」と信じていた時代。地上波での巨人戦中継がなくなった現在では想像すら出来ないですな。

 しかし選手会とファンの反対で2リーグ制は堅持され、その後パ・リーグの動員は営業努力で飛躍的に伸び、セリーグと伍するまでになりました。ソフトバンクや楽天やDeNAと言ったIT系の新興企業の参入によって、球団経営やファンサーヴィスとマネタイズの手法も洗練され、さらに地方都市への進出によって重厚な観戦文化が育っています。巨人中心のイビツな運営モデルも改善され、チームの実力も伯仲し、ファンも応援しがいがあろうというものです。これもまた、選手会とファンの運動の成果であり、一リーグ化が無理押しされていれば存在してない世界のお話であります。

 バスケットボールは協会の内紛でガタガタになったことを奇貨として、逆に思い切ったプロ化に成功し、着々と人気を積み上げています。バスケットボールは実は競技人口が多く、潜在需要は計り知れません。野球とサッカーがオフの冬季に、暖かい環境で観戦できるインドアスポーツの強みを生かせばまだまだ集客は伸びると思われます。

 ラグビーは2018年のワールドカップ自国開催を睨んでスーパーラグビーに参入し、さらに選手会を発足させました。その背景には、東芝の巨額赤字問題などの影響で企業スポーツからの脱却を志向せざるを得ないという、強い危機感があります。

 どの競技も生き残りをかけて組織や運営手法を刷新し、外部の人材を求め、ファンの嗜好を掴もうと躍起になっています。また選手が業界の将来を考えて、意見発信をしたり選手会を作ったしています。
 
 一方ボクシングはどうでしょうか?ビジネスモデルは昭和のまま停滞し、ファンサーヴィスの観念は微塵も無く、女性や若年層を新規獲得しようというようなキャンペーンも無い。

 そもそもプロもアマもおかしな人脈支配と運営組織の腐敗が明らかでありながら、内部からの自浄作用がまるで働いていません。メデイアは大手ジムの提灯記事と「麗しい師弟愛」や「勝った・負けた」の情報だけ。現状打開策も「人気選手が出てきたら変わる」というスター待望論のみ。サッカーや野球で見られるような業界に対する厳しい批判や提言もありません。大手ジムの縦割りになっている地上波テレビ中継が『上がり』でそこから先の、ビジネスが全く構想されておらず、日本チャンピオンや世界チャンピオンでもチケットは手売りだったりバイトしてたり。少子化とスポーツの多様化で、競技人口は頭打ちになり、どう見ても将来は暗い。にもかかわらず何の対策も論じられていなかったボクシング界。

 そこに突然現れたのが元日本ライト級チャンピオンの土屋修平氏のアジテーションでありました。土屋氏は以前からツイッター上で、積極的に業界への提言を行っていました。その発信力に注目した格闘技ポータルサイトのQueelさんがインタビューを慣行し、ロッキング・オンのようなド長尺インタビューが掲載されました。こういう自由度はネットメデイアならではのフットワークですねえ。プラスボクシング情報だけやってるサイトでは出来ない感覚です。

インタビューは以下のリンクからお読みください。

 ボクシングはなぜ稼げないのか?"ボクシング界の異端者"土屋修平が語るその真意とは。【土屋修平ロングインタビュー前編】

練習で強くなるより営業の方が稼げる?ボクサーの手売りの実態とは。 "ボクシング界の異端者"土屋修平インタビュー後編

 ここで土屋氏の言われてることは至極まっとうな事ばかり。娯楽が多様化した中で、いかに観戦の動機付けをしていくか?というのは、ボクシング以外のあらゆるプロスポーツがやっていることです。チケット価格で比較した時に、プロ野球やJリーグ、はたまた映画やコンサート、演劇なんかと同等の満足が得られているか?ということは送り手なら真剣に考慮するのが当たり前のことです。

 私も、井岡ジムの食い物も飲み物も無い環境なのに出入り禁止という監禁興行スタイルを過去批判して来ましたが、なんだかんだ言って試合が良ければ、なんか有耶無耶にしちゃうんですよね。だからボクシングを偏愛してる人の意見は参考にならんわけです。興味がない人、見たことがない人をいかに動員するか?話のタネに来た人、つれてこられた人をいかにリピーターにするか?を、業界の人は真剣に考えないといかんわけです。

 あとは選手が客席をウロウロしてる、逆に客が控え室に入れるというゾーニングの適当さや、「指定席にヤカラが座ってる問題」「試合中に挨拶に来た選手が邪魔で試合が見えない問題」などは、まさに『生観戦あるある』。IMPホールなどは客の振る舞いが問題で借りられなくなったと聞いておりますし、観戦マナーや会場の仕切りの正常化は、一見さんや女性客が安心して観戦する為には不可欠な要素であります。

 選手の待遇、チケットの手売りについても体験をもとに言及されており非常に具体的。選手のSNSなどを見れば分かりますが、こまめに後援者の元に顔を出し、ポスターを持参し、一緒に写真をとってSNSで感謝の意を表明してはじめて、チケットが売れて、ガウンやトランクスに広告のロゴが入る。その現実を公にしたことは大変大きいと思います。

 日本ではよく「初防衛が難しい」と言われますが、実はチャンピオンになったら挨拶回りが大変で、色んなところに顔出してたら練習時間が無くなった、又は疲れて練習できなかったというのが原因と思えるケースが結構あるんですよね。後援者にすれば激励のつもりで、選手だって応援されて食事も食べさせてもらえば嬉しい。でもそれがファイターの仕事なのでしょうか?

 ポスターを貼ったり、チケットを売ったりというのは本来プロモーターの職分です。ある選手はツイッターで「チケットの精算でミスをして自腹になるとことだった」というような体験談を書いていましたが、なんで命がけで戦った選手が会計まで責任追わなきゃいけないの?ちゅう話であります。そもそもこういう形式はアマチュアバンドや小劇場の演劇と同じで、これでプロスポーツと言えるんでしょうかね?「チケット渡しの方が結果的に選手の身入りも増える」と言う向きもありますが、額面以下で流通することを前提でシステムを組んでるならチケット価格を下げるべきです。そしてプロモーターが自分で宣伝してチケットを売って選手に現金で渡すべきです。

 土屋氏がこのように俯瞰的な視野を持てるのは、もともとキックボクシングの選手だったからでありましょう。そしてボクシング業界で生きる必要がないから自由に発言できる。OBでも業界にしがらみがある人や、業界にとどまろうと言う人はなかなか批判的なことは言えないものであります。

 インタビューで一つ気になったのは、Knockoutとボクシングの興行を比較しているところ。Knockoutはキックの中では特別な興行であり、ジムがやってる普通の興行と単純比較するのはちょっとかわいそうじゃない?とは思いました。とはいえチケットの価格水準は一緒なんだから観客目線で見れば仕方の無いことではありますが。

 私が思うのは「ラウンド制限を撤廃して、やる気の無いタイ人が出ないいい試合を三試合くらいやって二時間以内に終わる興行を夜からやってくれたらいいのに」ということ。逆に4回戦の選手はお客がいるところに出かけていく。4回戦の試合を地方都市のお祭りやイベントに組み込んでもらったりしてやるとか。そこにはチャンピオンクラスの選手や元チャンピオンを帯同させて、サイン会やミット打ちをやったり。あとは福祉大相撲みたいなイベントを地方でやったり。色々と工夫の余地はあると思うな~。

 土屋氏のインタビューは、ボクシング関連記事では異例の注目を集めたようです。村田選手の世界戦や亀田興毅氏の一千万企画でも分かったことですが、一般層にもボクシングへの関心はあるわけです。だからこそ偏屈なマニアの意見ばかり聞かずに、一般の人を動員できるような柔軟な施策をとって、生き残りをはかって欲しいと思います。いやほんま。

 もう一つはルイス・ネリのドーピング問題。

 ネリのドーピングが発覚したしことで、大和心トレーナーの冷静な判断の正しさと、本田会長の大人気ないキレっぷりの理不尽さが、より一段と鮮明になった格好です。不正をしたインチキ野郎から山中選手の命を守った大和トレーナーを叱り飛ばし、エンダム×村田の一戦目でジャッジの判定に怒り狂って抗議しまくるなど、最近怒りの沸点が低くなっている本田会長ですから、この試合に関してもプンプンかと思いきや、スポニチの記事によりますと

「山中にタイトルが戻るということはない。WBOのルールだと(薬物疑惑の対戦相手が) クロならタイトルは戻るけど、WBCがそういう判定をしてもウチ(帝拳ジム)は拒否する。 負けたんだから」
 
となぜかドーピング違反に怒るどころか、全力でスルー。「負けたんだから」ってアンタ...。さらに返す刀で
 
ネリとの再戦でなければやらない。(ネリが)3カ月や6カ月なら まだいいが、1年のサスペンド(出場停止処分)なら終わり」との方針を示した。

と、ドーピングの前科モノであるネリとの早期再戦をアピール!なんでだよ!

 インチキ野郎に自分の選手を潰されかけたのに、怒ったのは立場の弱いトレーナーだけ。インチキの当事者には「では再戦しましょう」とすりよる卑屈ぶり。一体どうしたのセニョール?!

 どーもこの煮え切らない&筋も通らない対応の裏には、政治的な駆け引きの匂いがプンプンしているのであります。

 性格の悪い私が邪推するに...

・ネリ陣営の政治力が強すぎて勝負にならない。
・山中は全国中継でノックアウトされた印象が残ってるので、商品価値を見限った。
・山中はあと何年も稼げないので次世代の選手で政治的な配慮をしてもらった方が得だと考えている。
・村田の試合でWBAの試合を国内でやったのでWBCとの関係がギクシャクしている
・「大和がタオル投げなきゃ勝てたのに!」と未だに思っている。

 などの理由が浮かびますが、所詮シロウトの戯言であります。とはいえ山中選手のキャリアがこんな妙な形で終わるのは余りに勿体無い。納得の行く裁定を望みます。

 それとWBCのフニャフニャ姿勢は確かに大いに問題なのですが、逆に言うと

「ドーピング検査をやってるだけマシ」


 とも言えるわけです。他の団体は検査自体ないわけですから。オープンスコアリングの導入や、ビッグマッチがあれば勝手にベルトを作って人気選手に贈呈しようとしたりするなど、WBCは結構ボクシングが世間からどう見られてるか?に敏感なところがあり目端が利く。ドーピング検査自体はいいことすから、芽を摘まずむしろ奨励するべきであり、本田会長みたいに「半年以内にネリと再戦を」とか言っちゃうのはまずいんだけどな~。

 とはいえこの度のトラブルは、磐石と思えた帝拳とWBCの関係に綻びが生じてるとも取れるわけで、4団体時代がもたらした変化なのかも知れません。

 しかし再戦はいかんよな~。

 土屋さんには今後も発信を続けて欲しいなと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)