HARD BLOW !

乗松優著「ボクシングと大東亜 東洋選手権と戦後アジア外交」

 最近面白いボクシング本がないなあ、とお嘆きの貴兄にお勧めの一冊でございます。
ボクシングと大東亜 表紙_R

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ボクシングと大東亜 東洋選手権と戦後アジア外交

 この本の著者は『スポーツ社会学者』の乗松優さん。ともすれば情念が先走りがちなボクシングノンフィクションの世界にあって、学者らしく冷静な筆致と実証的な調査で、戦後のアジアボクシングの歩みを鳥瞰する優れた内容となっております。と言うのも偉そうです、本当に面白いです。

 本書のメインテーマは「戦後の日比関係とプロボクシングがいかに関連していたか?」ということですが、その他にも戦後の混乱期のボクシング興行事情や日本でテレビ中継が始まった経緯、後楽園スタジアムがなぜボクシング興行に関与するようになったのか?OPBFタイトルはなぜ生まれたのか?アジア主義者や岸信介がボクシング東洋選手権にどのように関与したのか?などなど、興味深い題材が数珠繋ぎ。

 その時代の東洋選手権を戦った日本の名ボクサー達、金子繁治氏、矢尾板貞夫氏、勝又行雄氏や、当時を良く知るトレーナーのスタンレー・イトウ氏などから、著者が直接聞き出した当時の体験談も興味深いことこの上なし。大変貴重なオーラルヒストリーが満載であります。

 一族から二人の大統領を生んだベニグノ・アキノ上院議員が、ひいきのボクサーの敗戦直後にショック死したエピソードなど、掲載されている事実の面白さや、分析の鋭さ・深さにも感服。ジャーナリズムやアカデミズム界隈で話題になった理由が良く分かる歯ごたえのある良書でございました。

 ちょいちょいボクシングネタを入れてくることでおなじみ、TBSラジオの『荻上チキ セッション22』でも、荻上さんと乗松さんの対談が放送されましたがそれも大変興味深かったですねえ。こちらから聞けます。
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来週末は天草に行く(旧徳山と長谷川が好きです)

WBOミニマム級暫定王座決定戦に福原辰弥選手も名乗り!


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11月23日付け熊本日日新聞掲載記事より引用

ボクシングの日本ミニマム級王者福原辰弥(本田フィットネスジム)が22日までに世界ボクシング機構(WBO)ミニマム級暫定王座戦への参戦を表明した。福原は現在WBOランキング2位。実現すれば、同一位のモイセス カジェロス(メキシコ)との対戦が濃厚となる。暫定王座戦は現王者の高山勝成(仲里)の負傷によるもの。10月にプエルトリコで開かれたWBO総会で決定した。本田フィットネスジムの本田憲哉会長によると、WBOルールでは暫定王座戦は上位ランカー同士で争うとしており、順当にいけば福原とカジWBOの正式決定を待ち、開催地を含めてカジェロス側と交渉に入る予定。ェロスが対戦することになるという。試合時期について、本田会長は来年初めとみており、「待ちに待ったチャンス。何とか熊本でタイトルマッチができるよう尽力したい」と話している。27歳の福原は2015年11月に日本王者になり、これまで三度の防衛に成功している。


なんかおかしいぞ?と感じていた案件で動きがありました。記事が掲載されたのが熊本の地方紙のみということで、殆ど話題になっていおりませんが…。

正規王者高山勝成選手が試合で受傷したことによって、暫定チャンピオンが設置される、と言うことはすでに総会でアナウンスされておりました。賢明な一部のファンにおかれましては「あれ?その総会で、ジョー小泉氏がすでに暫定タイトルマッチのカードを発表していたんじゃなかったのかい?」とご記憶の向きもあるかと思います。

信頼と信用のボクシングブログ、『ボクシングマスター』様で、件の総会の様子は紹介されております
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WBO総会 井上vs河野・田中vsフェンテス・山中vsカイェロス
 
以下記事より引用いたします

すかさず小泉氏は、山中竜也(真正)選手と1位モイセス・カジェロス(メキシコ)が日本での対戦に合意済みで、この一戦を暫定王座決定戦にすることを要請し、認められた。試合は来年2月までに行うことになっている。(引用以上)

この時点で山中選手はOPBFタイトルマッチを控えた身。確か国内での世界挑戦には、日本かOPBFタイトルを獲得しなければならない、という内規があったと思うのですが…。その後山中選手がOPBFタイトルを獲得するのですが、結果オーライ問題なしちゅうことになるんでしょうかね?

タイトルの権威がナンタラ、業界の秩序がウンタラと、うわごとのように言ってたボクシングマガジンあたりはこういうマッチメイクをちゃんと批判してるんでしょうかね~?

そもそも国内にはミニマムやライトフライの有力ランカーがひしめいておりまして、こういう手法で抜け駆け的に世界戦を決めてしまえば禍根をのこすんじゃないの?と思ってたら、案の定日本チャンピオンでランキングも山中選手より上の福原選手が対戦の意志を鮮明にし、暫定王座戦の争奪戦が起こりそうな気配であります。

対戦の意志があるならランキング上位の選手が優先されるのは当たり前なんじゃないの?と個人的には思いますが。

成り行きを見守りたいと思いますが、熊本の地方ジムから世界を目指す福原選手を個人的には応援したいな~。

というわけで久々の更新でした。

どうでもいいですが六島の五大タイトルマッチ見に行ったら、『亀田がJBC職員を恫喝して暴行するのを見た』と捏造ライター片岡亮氏に電話で言ったという関西事務局の職員がジャッジしてて驚いちゃいましたよ。幻覚見るようなやつに採点が出来るんですかね?心配であります。

大晦日はテレビで観戦しようかと思っている(旧徳山と長谷川が好きです)

井岡一法トレーナーの巨額脱税疑惑に思う

 タイトルのとおりですが、9月21日発売の週刊新潮に、WBAフライ級チャンピオン井岡一翔選手の実父にしてトレーナーにしてマネージャーである井岡一法氏の巨額脱税疑惑が報じられています。

 新潮社掲載の短信へのリンク
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 3階級制覇・井岡一翔の“金箔御殿”にマルサが動いた 5億円以上の巨額脱税疑惑

 いわゆる「税務当局との見解の相違があった。すでに納付を済ましており今後は気をつける。」というようなよくある修正申告とかなんとかいう次元の話では無い、明白な所得隠し・脱税ではないか?という内容の記事でございます。

 もし報道が事実なら、テレビ放送の継続すら危ぶまれるような悪質な違法行為であり、一法氏は今後絶対に井岡選手のマネジメントに関与するべきではないではありません。(記事アップ時は井岡一翔選手は井岡弘樹ジム所属と記述しておりましたが、井岡一翔選手は井岡ジム所属であり、井岡弘樹ジム所属ではありませんでした。事実誤認の部分については削除いたしました。お詫びして訂正いたします。

 そして一翔選手も当事者として見解の表明が必要であると思います。

 思えば一法氏は過去に、世界戦の調印式で対戦相手の陣営と口論を始めて、記者会見が中止になったりといったトラブルの原因となったこともございます。はっきりいって選手の足を引っ張ってるようにしか見えません。

 テニスのグラフや、サッカーのメッシなど肉親が関与した脱税事件はスポーツ界にも数多ございますが、新潮の記事を見る限り今回の事件は非常に無防備と言いますか、メデイアを通じての金満ぶりアピールが仇になったという脱力するような話。

 しかし健文トーレスのライセンス交付といい、新人王戦の会場で渡辺二郎氏が選手と記念撮影をしていたことといい、関西のボクシング界のユルユルぶりにはため息しか出ません。

 JBCも協会もグダグダです。これじゃ若者が夢をもって飛び込める世界にならんですよ。

 無かったことにしたらいかんです。

 金銭の流れが不透明なプロスポーツにはまともなスポンサーはつかないと思う(旧徳山と長谷川が好きです)
 

Abema TV 格闘技ストリーミング中継の衝撃

 先日読者の方より教えて頂いて、立ち技格闘技のKrushの興行のストリーミング中継を見る機会がございました。

 中継をやっていたのはテレビ朝日とサイバーエージェントの出資で設立された、ネットストリーミングサーヴィスのAbema TV。

 Abema TVへのリンク
    ↓
 https://abema.tv/

 有料のネット配信業者が続々と参入する昨今ではありますが、Abema TVはテレビ局とネットベンチャーが組んだTV放送のような形式と無料が売り。通常の番組はCMが入りますが、Krushの中継は何時間にも渡ってノーCMで次々と試合が流れ、普段キックの興行を見ない自分には、選手は誰が誰やら分からないながら、大変新鮮で面白かったです。

 先週末にはこれも立ち技のK1や総合のDEEPの中継が連日放送され、「格闘技のストリーミングにかなり力を入れているな」という印象を持ちました。DEEPではUFC帰りの菊野選手の試合が見れたりと、これもなかなか面白かったです。

 有料配信大手のHULUでは、日本テレビ傘下になったことで、NPBの巨人戦のネット中継が始まったりしております。コンテンツを求める有料配信業者が、今後スポーツ中継に食指を伸ばしてくるのは確実と思われます。

 ボクシングは相変わらず地上波テレビ中継一辺倒のビジネスモデルですが、キックや総合勢の柔軟さを見習う必要もあるのでは?と感じたのでありました。

 改めてボクシング以外の格闘技も面白いなと感じた(旧徳山と長谷川が好きです)

「ウルボ 泣き虫ボクシング部」を見た



ウルボ〜泣き虫ボクシング部〜(A Crybaby Boxing Club) 日本公式ホームページ

 この映画はボクシングの強豪校として知られる、東京朝鮮高級学校のボクシング部を舞台にしたドキュメンタリー映画です。東京朝高と言えば日本プロボクシング史上最高のテクニシャンである徳山昌守を育んだ場所であります。徳山選手もOBとして出演しています。

 この映画が生まれた背景には、今日本で大きな社会問題となっている在日韓国朝鮮人に向けられたヘイトスピーチがあります。

 いわゆるネット上での差別言動をやってたバカが、実際に路上や実社会に出て、憂さ晴らしにしか見えない差別言動をデモと自称して大々的に始めたのは2010年前後でしょうか?

 今年の5月にヘイトスピーチ対策法が成立、ようやくああいう低脳の類の振る舞いを規制する法的根拠が出来ました。余りにも遅かったとはいえ、ようやく日本も先進国並みの倫理基準を目指そうかという道についたところであります。

 高校生達のインターハイを目指した闘いは勿論、朝鮮高校出身者同士の日本タイトルマッチなどプロボクシングの試合も取り上げられています。

 モハメド・アリの死に際して、スポーツと政治や社会との関わりが大きく取り上げられていましたが、日本にだって似たような問題はあるのです。マイノリテイが自己実現の手段としてスポーツを選ぶということは、どこの社会でもある現象です。

 本作に登場する東京朝校出身の日本ランカー尹文鉉選手(ドリームジム)は「どこにも属さない、属せない」という寄る辺ない自分の心情を率直に語ります。

 監督は韓国出身で滞日十年というイ・イルハ氏。実は在日ではない韓国人は朝鮮高校に入るのは違法らしく、最初は迷いもあったそうですが、韓国人の目から見た朝鮮学校の状況や在日の歴史など大変興味深いものでありました。

 単純に今まであまり紹介されてこなかった朝鮮高校の内部が見れると言う面だけとっても、貴重なドキュメントであると思います。

 ここ数年ボクシング映画は力作が続いておりますが、本作も良い映画であったと思います。

 劇場公開の予定がないということが大変残念な(旧徳山と長谷川が好きです)