HARD BLOW !

大沢宏晋が世界ランカーに苦闘判定勝ち 12・24 大阪東和薬品RACTABドーム

大沢宏晋選手についての過去記事はこちらから→大沢宏晋

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 さる12月24日クリスマスイブに、東和薬品RACTABドームというやたら長い名前に変わった、大阪府立門真スポーツセンターで行われた大沢宏晋選手対アレクサンドル・メヒア選手の試合レポートをお送りします。大沢宏晋選手は現在WBAフェザー級11位で、一方はるばるニカラグアからやってきたアレクサンドル・メヒア選手は、WBAスーパーバンタム級12位。最近は国内じゃめっきりなくなった世界ランカー同士のノンタイトル戦であります。

 不景気風が吹き荒れる関西のボクシング興行事情を考えれば、中南米の世界ランカーを一年に二人呼んで試合した大沢陣営の路線は、極めて異彩を放っています。ファイトマネーはもとより渡航費だけでも相当な出費だと思われますが、金銭面以外でも選手の情報も乏しく、対戦そのものがかなりリスキーであります。

 中南米の世界ランカーとのノンタイトル戦といえば、当HARD BLOW!的に忘れられないのは、2010年に行われた、大沢選手と同じフェザー級の榎洋之選手とアルベルト・ガルサ選手の試合。榎選手はガルサの巧妙な反則ヒジうちの餌食となりTKO負けし、結局これが最後の試合になりました。当ブログは榎さんから提供していただいた映像素材を使って反則検証も行いました。以下はそのときの記事です。
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HARD BLOW!の原点
 ガルサ選手の反則ヒジ打ちを使ったダーティーなスタイルは、アウェイで勝つ為には手段を選ばない中南米選手の気質の一面を表していると思います。実際今回の大沢選手の試合も、メヒア選手の手段を選ばぬ勝利への執念に大いに霍乱される内容となりました。

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メヒア陣営はよく声が出てました。
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大沢陣営はロマンサの田中会長、金井選手、中島トレーナーのいつもの布陣。


 メヒア選手はYOUTUBEの試合映像では前後の出入りが速く、テンポのいいボクシングをするな、という印象。スピードはありますが、スタイル自体は正攻法かなというイメージでした。

 1Rは大沢得意のハードジャブが何発か当たり、距離が詰まればボディと言う定石どおりの攻めでよい滑り出し。メヒアの入り方はビデオ映像のとおり直線的でしたが、ただ上体の動きは良く、避ける技術は独特なものがあります。2Rには戦意旺盛なメヒアに強い左ボディが当たって効いたように見えました。

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 この時点では「このままボディ削っていけば、じきにメヒアの足が止まるかな」と楽観していましたが、メヒアは頭を低くしてもぐりこみ、ジャブとボディを避けながらの乱戦に作戦変更。ひたすら密着しての押し合いに持ち込んで、体力勝負の展開になります。大沢もフィジカルは強い選手なので、一階級下のメヒアのこの戦略は自殺行為ではないか?と思いきや、メヒアが押し勝つ場面が多く、大沢はロープを背負う場面が増える。ロープ際での左ボディでメヒアが失速する場面もあるのですが、すぐに回復し低い姿勢で接近してはしつこく連打を出してきます。

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メヒアの頭の低さをレフェリーにアピールする場面も

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 大沢がロープに詰まると、セコンドからは「押し返せ!」「回って広いところに出ろ!」と言う指示が出るのですが、メヒアのしつこい連打と旺盛なスタミナでなかなか思うような場面が作れず我慢の展開。大沢がいいレバーブローを当てても、メヒアは返しの頭へのパンチを上体の動きで交わして密着をキープし距離を潰す執念を見せる。この泥臭いファイトスタイルはビデオ映像とは全く違うもので、メヒアの試合を投げない勝利への執念と、近距離のデイフェンス技術、戦術の引き出しも見事。試合としては膠着していますが、両者の勝利への執念がぶつかり合う激しい展開となります。

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 12Rの最後大沢がラッシュを見せて見せ場を作って終了。判定は僅差2-0(96-96、97-96、96-95)で辛くも大沢の勝利となりました。メヒアの手数が評価された厳しい判定となりましたが、私の目にはメヒアの作戦は序盤のジャブとボディを受けての、苦し紛れのスタイル変更に見えました。あの作戦を、再三ボディを打たれながら10R完遂した執念と体力は凄いですが、勝ちはないと思います。

 メヒア陣営はセコンドもやる気充分で、「どんな手段を使っても勝つ」という勝利への執念を存分に見せてくれました。やはり勝負はこうでないといけません。大沢選手にとっては、意欲のある世界ランカーとの試合を辛くも勝ち残ったことで得たものは、かなりあったと思います。

 この勝利でランキング上昇は確実で、来年は勝負の年になります。ランカーと試合してなくてもランキングが上がっていく選手や、試合してなくてランキングが落ちない選手とは違う路線で再起ロードを駆け上がる大沢選手に、当方は来年も注目して行きます。ご期待ください。
 
 あメインの辰吉寿以輝選手は勝ちました!詳細についてはスポーツ紙や専門誌をごらんください。

 今年の生観戦は12回だった(旧徳山と長谷川が好きです)

JBCだけがボクシングにあらず 11/5 WBFアジアタイトルマッチ

 11月5日に行われた、JBC傘下でないプロボクシング興行のレポートです。5月の興行の様子はこちらのリンクから→JBCだけがプロボクシングにあらず 5.3観戦記


 大阪ですっかり定着してきたこの興行を手がけているのは、日本ボクシング界の異端児にして革命児、山口賢一氏。

 山口賢一についての過去記事はこちらから→山口賢一

 世界戦をするためにJBCライセンスを返納して日本を飛び出して、オーストラリア、メキシコ、フィリピン、と転戦。世界戦を含む様々なタイトルマッチを戦いながら、ジムを経営し、興行をプロモートし、選手のマネージャーも勤めるなど、日本では前例の無い活動をしてきました。これらは全てJBC傘下の選手では決して出来ないことです。

 長らく国内の市場を独占してきたJBCとJPBAにすれば、徒手空拳で活動する山口氏などは、当初歯牙にもかけぬ存在であったことでしょう。しかし山口氏は持ち前のバイタリティで次々と業界の商慣行に風穴をあけ、気がつけばボクシング興行もシリーズ化しすっかり定着。ライセンスがなくてもプロボクシングが出来るという山口氏の活動方式は、ジワジワと浸透し山口氏の通った道を辿って、JBCに所属せずアジアに遠征して戦う選手も確実に増えて来ました。


 興行前日、計量がある大阪天神ジムには様々な選手が大勢集まっており、活気溢れるムードが漂っております。
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メインはWBFの地域タイトルマッチということでゴールドバーグ会長も南アフリカから来日。

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山口賢一氏と天神ジムの石角悠起選手。

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ゴールドバーグ会長もウエイトをチェック。

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メインを戦う赤堀亮選手とルシミン・アユブ選手(レコードはこちら→Rusmin Kie Raha)

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 今回の興行は7試合。様々なバックグラウンドをもったファイターが集まっていますが、天神ジム生え抜きで、山口賢一の一番弟子として行動をともにしてきた石角悠起選手に少しお話を伺いました。ラジャダムナンスタジアムの国際式ボクシングタイトルや、WBFの地域王座などのタイトルを獲得してきた石角選手は、海外経験も豊富。タフなキャリアを歩んできています。

HB「海外はどこで試合をしてますか?」
石角「中国とタイとフィリピンですね」
HB「海外での試合は日本とはどう違いますか?」
石角「やっぱり行くと『アウェイやな』と。中国は特に凄いです。まあ、もう馴れましたけど最初は驚きましたね。」
HB「そもそもフリーで活動するようになったきっかけはなんですか?」
石角「大阪帝拳を辞めたあと、一年くらいブラブラしてるときに、ボクシングの記事見てたら山口さんがオーストラリアでビリー・ディブとやるというのを見て、山口さんに『頑張ってください』って電話して、それがきっかけですね。」
HB「なぜ一度ボクシングを辞めてたんですか?」
石角「それは、負けてたからで(笑)。ただ山口さんに連絡取ったことで、もう一回ボクシングやりたくなって。」

HB「それまで山口さんとは交流はあったんですか?」
石角「山口さんが大阪帝拳にいた時はメインイベンターで、今と違ってもっとピリピリしてて話しかけれるような雰囲気じゃなかったんですけど、ロッカーとかで一言二言『がんばっとんのか?』とか『どうや?』とかそういう声かけられるだけで、こっちは嬉しかった。」
HB「山口さんがオーストラリアで試合すると知って、自分ももう一回やりたくなった、と。」
石角「そういう感じですね。」
HB「その頃はまだジムもなかった」
石角「無かったですね。」
HB「山口さんとずっと行動を共にしてるのはどうしてですか?」
石角「チャンスも作ってもらってるし、なんていうか...人間味があるじゃないですか(笑)」
HB「JBCのジムでは担当トレーナーが居ますが、天神ジムは練習は自分で考えてするんですか?」
石角「そうですね。基本的には自分で考えて。山口さんからも『アドバイスはするけどやるやらんはオマエの自由やからな』と言われてます。」
HB「海外でのマッチメイクとか過酷に感じることはないですか?」
石角「なかなか出来ない経験をさせてもらってると思ってます。」
HB「強くなっているという実感はありますか?」
石角「それは、あります。」

石角選手は言葉を選びながら、訥々と話してくれました。バイタリティ溢れる山口会長とは対照的なキャラクターですが、だからこそ一緒にいられるのかな?と感じました。

 試合当日は三田市で大沢宏晋選手の試合の観戦後、三田市から大急ぎで移動してなんとか試合開始に滑り込みで間に合いました。
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 会場では高山勝成選手がアマ選手登録の嘆願署名集めをしており、リング上で挨拶もされました。

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 石角選手はセミセミの大阪天神タイトルマッチ7回戦に登場。ドローが出にくいように奇数ラウンドが導入されています。対戦相手は5月の興行にも出場した猪窪利光選手。

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 序盤は石角が回転の良い手数で先制しペースを掌握。猪窪は単発気味ながら強打で対抗。序盤ポイントは石角か?3ラウンドに入ると猪窪は左フックで反撃。ガードが低い石角の顔面を何度も左フックが捕らえると、大きなアッパーや右ストレートも当たり出す。

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 終盤は石角がポジショニングを修正し、左右の動きを織り交ぜて左フックを外して手数も復活。逆に猪窪は疲れが出たか、手数が落ちる。7Rは打ち合いになりましたが、有効打は石角優勢で結局2~5ポイント差で3-0で石角勝利。ペースの取り合いが見応えのある試合でした。

 セミはこのシリーズの興行ではお馴染みの、アジアで何度も地域タイトルマッチ戦ってきた中村優也選手と、2008年度新人王トーナメントの西軍代表だった越智大輔選手の対戦。

 この試合は開始早々、越智選手が全開でスパートしたことで、いきなりノーガードの打ち合いに

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序盤からバチバチの展開に、会場はやんやの大歓声。ところが、もみ合った時に越智選手がバッテイングでカットし、ドクターチェック。再開後はクールダウンするかと思いきや、またもノーガードの打ち合い。

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 このあと二回チェックが入り、結局続行不可能でドロー。

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 越智選手の仕掛けで盛り上がった試合でしたが、消化不良な結果になりました。残念。

 メインの赤堀亮選手対ルシミン・アユブ選手はWBFアジアタイトルマッチで10回戦。赤堀も韓国やタイで戦績を重ねて来ています。対するアユブはインドネシアの元国内王者。

 ゴングが鳴ると、赤堀は細かい連打で積極的に攻勢に出るも、アユブはガードが固くクリーンヒットをなかなか許さない。長い手から投げるように放たれる強打も、単発でスピードはないが重くて強い。ガードの上からでもダメージがありそう。
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 赤堀はコツコツとパンチを当ててアユブを削っていくが、パンチを当てる為にくっつくとアユブは手が長くボディ打ちが低いので、ローブローになって何度も試合が中断してしまう。

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 赤堀は我慢強く連打で対抗。アユブはしぶとくガードを保って、なかなか戦意が衰えない。

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 試合は泥臭い我慢比べになりましたが、有効打は明らかに赤堀。さらに9Rに、アユブがついにローブローで減点されてポイント的には完全に赤堀優勢。最終ラウンドは、バテたアユブを赤堀が攻め立てて終了。判定は大差で3-0赤堀勝利で新チャンピオンとなりました。

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 会場は暖かい祝福のムードとなりました。

 フルラウンドの動画
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 昼間から延べ10試合以上を見て大変疲れましたが。二つの興行をハシゴして様々な発見がありました。

 やれマイナータイトルだ草試合だと薄暗い批判をする人もいますが、私からすればどっちもプロボクシング。今の時代状況に全くあっていないクラブ制度と地上波テレビ中継中心のビジネスモデルでは、プロボクシングが持つはずがありません。そして、業界のトップは高齢者ばかりです。時代は近い将来必ず変わります。そのとき順応して生き残れるのは一体誰なのでしょうか?

 今週は久田選手の日本タイトルマッチに行こうと思っている(旧徳山と長谷川が好きです)

11.5三田 大沢宏晋選手がインドネシアチャンピオンに大差判定勝ちも内容は低調

 11月5日は、珍しく興行をハシゴして参りました。まずは昼の部、兵庫県三田市の三田ホテルで行われた大成ジムの興行にて、WBA11位の大沢宏晋選手の試合を観戦。  

大沢宏晋←大沢選手についての過去記事はこちらから)

 会場はニュータウンの中にある瀟洒な雰囲気の三田ホテルさん。シャンデリアもまぶしい素晴らしい雰囲気でしたが、こんなゴージャスな会場なのになんと中学生以下は立ち見無料!ヤングボクサーが多い大成ジムらしい、粋な施策でございました。以前、某業界関係者にボクシング人気復活に必要な施策を伺ったところ「少なくとも中学生以下は無料にしなきゃダメだよ」とおっしゃってましたが、なかなか出来そうでできないことですね。

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 アンダーカードで目を引いたのは、まずは4回戦に出場していた真正ジムの大橋哲朗選手。スタイリッシュなサウスポーで、スピードもテクニックも素晴らしかったです。4Rのボディ打ちは凄かったなあ~。対戦相手の新井一颯選手も海外デビュー済みで、U15日本チャンピオンと言う有望選手でしたが、この相手に4回戦で全てのラウンドを支配した判定勝ちは凄いですよ。

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 もう一試合注目だった無敗の東洋ランカー秋月楓大選手でしたが、大鵬ジムの木久健次選手に3RTKO負け。木久選手は初の8回戦で、見事東洋ランキングを手に入れました。

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セミで登場した大沢宏晋選手は、インドネシアチャンピオンのエリック・デストロイヤー選手と対戦。大沢選手は序盤からなぜか手数が出ず、もどかしい展開。

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持ち味のハードジャブは鳴りを潜めて、ボディ打ちに終始し、4Rになんとか顔面に右の強打をヒットしてマウスピースを飛ばし、その後連打でダウンを奪い奪いますが、見せ場はそこだけ。展開の無い試合に、会場の観客からは「大沢ってこんなもんかい」という不満の声も聞かれました。正直、私の目から見ても、かみ合わない変な試合でした。
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 デストロイヤーというには余りに消極的な対戦相手の姿勢にも原因はあったかと思いますが、世界ランカーなら自分から展開を作って、倒しきって欲しかったところ。試合後のインタビューでも、大沢選手からは「折角来て頂いたのにすみません」と反省の弁だけが...。

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 消化不良の内容でしたが、年末には世界ランカーとの試合が控えているとのこと。もともとは10月の試合が11月になったことで、試合間隔は縮まりましたが、ダメージのあるような試合ではなかったので12月の試合で挽回していただきたいと思います。

 このあと大阪市内の天神ジム+ABC(アジアボクシングコミッション)の興行を見るためにメインは見ずに中座させて頂きました。大変失礼いたしました。

 同じ日に行われた大沢選手の僚友、金井隆明選手の試合は金井選手が1RTKO勝ちし、連敗を脱出しました。おめでとうございます!

 年末はメキシカンの世界ランカーと対戦ということで楽しみな(旧徳山と長谷川が好きです)

2016年べストファイト

2016年私的ベストファイトを挙げてみた。試合数が4なのには特に意味がない。

第4位
セルゲイ・コバレフ vs アンドレ・ウォード
(20161119 WBO/IBF/WBA世界L.ヘビー級タイトルマッチ)
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実力者同士の無敗対決の緊張感が最高度に感じられた一戦。序盤にいきなりコバレフがダウンを奪う展開。ウォードがコバレスの予想以上の速さに戦い方を変えたその対応力。接戦は判定にもちこまれ、結果は物議を醸しているが、試合内容は極めて上質なのもの。敗けがつくことが切ない一戦だった。


第3位
ジョナタン・グスマンvs小國以載
(20161231 IBF世界Sバンタム級タイトルマッチ)
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 世界チャンピオンになるためには世界チャンピオンの体をつくる必要がある。
 小國選手の体を見て、その細身にこれが世界チャンピオンになれる体かと心配になった。しかし、ラウンドを進むごとにそれが杞憂であることがわかった。
 おそらく秘策であったろう左ボディは、グスマンの強打を封じた。的確な距離感、フットワーク、多彩な左、パンチが交錯する際に相手を見切る目の良さ、予測と反応の鋭さによるカウンター、相手の虚をつく洞察力、判断力。相手の嫌がることを続けられる戦術眼。
 そして強いメンタル。世界初挑戦のケースでは、王者の力を最大限に想定するため、最大限に緊張し、それが必要以上のスタミナロスにつながったり、ピンチに陥った際チャンピオンに対する過度の恐怖感となって増大し体の自由を奪うことがある。
 この日の小國にそれはなかった。グスマンの手を変え品を変えの戦法に対し、一瞬不意をつかれることはあっても、怯むことなく冷静に対処した。そして機を見て反撃を見せた。時には大胆と思えるほどの右の長いパンチを何度も放った。
 王者の側に小國選手を舐めていたところはたしかにあるだろう。だから彼の真価はこれから試されるだろう。
 それでも、小國選手がここまでみずからのボクシングをハイレベルなものに高めてきたことに感動させられた。そして世界チャンピオンの体をつくってきたことに、敬意を表せずにはいられない。


第2位
山中慎介 vs アンセルモ・モレノ
(20160916 WBC世界バンタム級タイトルマッチ)
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 あまり説明の必要はないだろう。長らくWBAのバンタム級王者として君臨したディフェンス・マスターのモレノを、ダウンの応酬の末KOで破った試合は、見る者にとってはエキサイティングであると同時にエクスタティッシュでもあった。判定では勝てないとみて打ってでたモレノという面はあるが、山中が至近距離で左を当てるという進化を見せたことがこの試合を新鮮な驚きあるものにした。



第1位
ワシル・ロマチェンコvsニコラス・ウォータース
(20161126 WBO世界Sフェザー級タイトルマッチ)
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アマチュア・スーパー・エリートのプロ入り後のボクシングはとてつもなく速くて巧いが好きにはなれないものだった。だがそれが変わったのはローマン・マルチネスを超高速逆ワンツーで失神KOさせてからだ。そこにはプロとしての武器となった彼のパンチがあった。対するニコラス・ウォータース。体重超過や不当判定(?)とごたごた続きだが、ドネアを破った元フェザー級の実力者がロマチェンコとどのような戦いを見せるのか楽しみだった。スピードとテクニックに優るロマチェンコが主導権を握るのは想定の範囲内。ドネア戦で被弾後に立て直してきた得体のしれない復元力がこの試合でどう発揮されるのか。しかし、ウォータースにできたのはなるべくパンチをもらわないようにすることだけだった。自分のパンチを当てる工夫はできなかった。ロマチェンコがそれを許さなかった。そうである以上、自分はパンチを浴び続け、自分のパンチは相手に当たらない、ただそれが続くだけだった。
プロならばギブアップすべきではないという向きもあるが、剣の達人同士が立会中に「参った」をすることはある。両者が技の限りを尽くした好試合として、そしてボクシング技術がいかに相手を征圧するかを示した試合として、最も印象に残った試合である。





特別試合1
オスカー・バルデス vs 大沢宏晋
(20161105 WBO世界フェザー級タイトルマッチ)
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すでに旧徳さんの一連の記事で書かれているので詳しく語ることはない。日本人としてベガスのビッグマッチのリングに上がったこと、そしてそこで堂々たる戦いを見せたことは、多くの日本人ボクサーに勇気を与えたであろう、それは私自身もそうであった。サッカーのクラブ・ワールド・カップ決勝で鹿島アントラーズが世界中の小さな町のクラブに与えたものと同質のものだと思う。


特別試合2
ウーゴ・ルイス vs 長谷川穂積
(20160916 WBC世界Sバンタム級タイトルマッチ)
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長谷川穂積選手はキコ・マルチネス戦で既に私の中では終わっていた。この試合を取り上げるのは、彼が勝った、あるいは、三階級を制覇したからではない。キコ戦ですっかり動けなくなっていることを露呈した彼が、その後肉体改造に取り組み、この日のような試合のできる体に仕上げてきたからだ。9Rの打ち合いで相手の動きを見切れたのも、その体の強さがあったからこそ。自らを高めることを止めなかった彼に敬意を表したい。


さて、2017年の楽しみはまずは3月のダニー・ガルシアvsキース・サーマン戦である。井上vsロマゴン? 実現すればそれだけで井上は歴史に残るボクサーになるだろう。

BY いやまじで

井岡は技術で快勝!和気には世界の洗礼! 7・20 エディオンアリーナ大阪

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今回は酸欠状態でもなく、休憩も少なかったです

接近戦はスリルありました

今でも「ボディメーカー」と言ってるファンや関係者が多いエディオンアリーナ大阪。エディオンさんの広告効果が心配になって来ますが、そんなことはさておき、大晦日以来の井岡興行観戦でございます。

井岡興行と言えばお馴染みの『休憩』と『酸欠』の二大地獄への対応が必須ですが、今回はアンダーカードでのタイ人の頑張りとほどほどの集客で、標準的な興行となり拍子抜けすることとなりました。

アンダーカードではグローブチェックのサインを忘れててて、リング上でグローブのバンデージにマジックでサインするシーンが見られたりと相変わらずバタバタ感でJBCの試合管理が心配でございました。

で、それよりも問題と思われたのは、第一試合で安達陸仁選手とウエルター級の4回戦を戦う予定だった太田領選手が、なんと7キログラムの体重超過というデタラメぶりで失格し、試合自体が中止となった事件。

太田選手が試合中止決定後に、ツイッターに上げた悪態なども晒されておりますが、ここまで確信的なウエイトオーバーとなると、「最初から逃げる気だったんじゃないの?」という気すらして参ります。7キロとなると、本人もさることながら、周囲の人間の責任も大きいなと感じました。普段から接してて、計量前に体型見てたらウエイトが落ちてないの分かるでしょ。不思議であります。

というわけで、ただでさえ休憩が長い井岡興行で、一試合飛んだことで恐々としてたわけですが、この日はアンダーカードのタイ人がどうしたことか意欲が高く、やれば出来るじゃないの!という感じの大善戦。特にアダチジムから井岡ジムに移籍した好選手、金泰秀(金山テスから改名)の試合は判定まで行って、大変驚いたのでありました。ムエタイばりのレスリング行為まで繰り出して、悪あがきしたリングマナーはともかくとして、無名タイ人選手が「爪あとを残そう」と言う姿勢でリングに上がるのは結構な話だと思います。日本ランカーの橋詰選手の対戦相手もよく粘って善戦しておりました。

第三試合終了後、短い休憩をはさんで、ここからOPBFタイトルが二試合。まずは、昨年末井岡ジムに移籍した大ベテラン、野中悠樹選手対丸木凌介選手のウエルター級タイトルマッチ。私、古川、音田、新井、と連破した3試合を当時生観戦しておりますが、あの時すでにベテランだったのに、日本人のウエルターとは思えないスピード溢れる華のあるスタイルや、中盤以降スタミナが切れるスリリングな試合振りが魅力的だった野中選手。最近はさすがに加齢の影響かすこしスピードにかげりを感じますが、逆につみ上がった経験やテクニックを駆使して安定感は増しており、一回り年齢が違うような20代の選手相手でも、引けをとらぬ強さを見せています。

この日の野中選手は序盤は、かつてのようなスピードを見せて見事にペースを握りましたが、意外にも中間採点ではドローが一者の2-0野中と拮抗。後半はやはり疲れが出たか、丸木凌介選手の攻勢が目立ち、「まあ僅差で野中勝利かな」と思ったらポイント差が開いていて3-0という結果に????この採点の推移は個人的には謎でありました。

続いてはバンタム級の山本隆寛チャンピオンの防衛戦。対戦相手はフィリピンのレックス・ワオ選手。どんな選手かな?と分析する前に、1R序盤で山本選手の左ボディーで悶絶ダウンすると、もう一発ボディーを叩かれアッサリとテンカウント。なかなか立ち上げれずリングに担架が運び込まれ、なんとか自力でリングをおりましたが辛そうだったな~。これで山本選手は、二試合連続序盤KO。かなり自信になったんじゃないでしょうかね?こういう選手が、意外と大化けしたりするもんであります。今後とも好戦的なスタイルで序盤からバチバチ行っていただきたい。

そこから予備カードを消化して、井岡興行としては破格に短い休憩を挟んでいよいよダブルメインの世界戦。まずは和気慎吾選手×ジョナタン・グスマンのIBFスーパーバンタム級決定戦。

2014年の大晦日リゴンドー戦のオファーを受けながら、陣営の路線対立から対戦を回避した和気選手ですが、その後IBFの挑戦者決定戦に勝って世界戦の権利を手に入れ、この決定戦へと辿り着きました。

対戦相手のグスマンは21勝21KOのパーフェクトレコード。入場時の態度も、ゆっくりと花道を歩いていて憎らしいくらい落ち着いておりました。和気の入場曲に合わせてステップを踏む余裕も。

一方の和気も余裕綽綽といいますか、場の雰囲気を楽しむように笑顔で入場。スター性といいますか、独特の華を感じさせる選手であります。

和気は髪型などで不良的なキャラクターを前面に押し出していますが、ボクシング自体はテクニカルできれいなスタイル。一方のグスマンは強引な詰めが持ち味の強打者です。和気はサウスポーの利点を生かして、打たせず打つスタイルで勝負したいところでしたが...。

結論から言うとグスマンの大胆な踏み込みと強打は今までの対戦相手とは次元が違ったと言うことでしょうか?グスマンは距離のつめ方が鋭く、サウスポー相手ということがなんの関係もないかのように接近して、常に強打を振るってきます。和気は2Rにはバッテイングの直後に少し不運なダウンを喫すると一気にペースを奪われ、終盤にワンツーをクリーンヒットされて二度目のダウン。グスマンはボディストレートの鋭さも印象的で、相手をよく観察しているところもさすが。接近戦での回転力も相当なものです。

今までの対戦相手とは次元が違うということか?展開は一方的となります。グスマンは、3Rと5Rにもダウンを追加して、ポイントで圧倒的にリード。和気は、早くも倒すしかない状況に追い込まれます。中盤以降和気は驚異的な粘りを発揮してストップを拒否し、時折左をクリーンヒットしますが、ダメージは明らか。

和気が圧倒的な不利な状況のまま試合は終盤に。和気の顔面の腫れはかなりひどくなり、再三ドクターチェックが入っております。グスマンは、なんぼアウェイでもポイント差はついていることは分かっているので深追いはせず、パンチを当てながらあわよくばKOという戦術。そして迎えた11R、グスマンのパンチがヒットしたところでレフェリーが試合をストップ。グスマンがTKOで圧勝となりました。バッテイングをアピールしているところを攻められたり、ダウン後に加撃があったりと不運なところもありましたが、正直実力差があったと思います。

グスマンは試合が止まった瞬間の喜びに、この試合に対する思いが溢れていました。後半は確実に勝つための戦略が感じられました。強打だけで勝って来たわけではなく、頭の良い選手なんだなという印象です。踏み込みの良さも印象的でした。

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和気の肩を抱いてリングを一周するグスマン 

そしていよいよ井岡が登場。技術の有無を自分で判断出来ない自称マニアから「ロマゴンが~」とバカのひとつ覚えみたな中傷されてる不幸な彼氏でありますが、彼の技術が日本の歴代最高レベルであることは明らか。テクニックのみならず、対応力や展開を作る能力も特筆モノで、まあはっきり言って彼の試合の面白さが分からん奴は単にみる目がないだけだと思います。

この日の試合も、まさに圧巻で、しつこい手数攻めが身上のファイター相手にあえて接近戦を挑んで、出口を塞いでいくような試合振りはまさに達人の境地。コンビネーションのバリエーションや、会場から自然と拍手が沸いた華麗な防御技術も圧巻でありました。多彩なボディーで弱らせてストレートで倒すという詰め将棋のような戦略も見事。これが分からん奴は頭悪いだけでしょ。

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スポニチの記事では徳山昌守、内藤大助、元チャンピオンが井岡選手の技術を絶賛しています

http://www.sponichi.co.jp/battle/news/2016/07/21/kiji/K20160721013005920.html

 ▼内藤大助氏(元WBC世界フライ級王者)井岡はまるで精密機械のように正確だった。負けるイメージがない。

 ▼徳山昌守氏(元WBC世界スーパーフライ級王者)打たせながらカウンターで合わせ、上を打つと見せて左の強烈なボディーでスタミナを奪った。相手の力を100%出させた上で、その上を行く横綱相撲の試合を見せてもらった。


大味なKOしか分からないアホなファンはほっといて今後ともこのスタイルを極めて欲しいと思います。年末はどんな試合が組まれるのか楽しみに待ちたいと思います。

しかし、本当ボクシングファンってしょうもない感情の吊りに簡単に引っかかるようになりましたね。

JBCが一億円溶かしたことより内藤大助のテレビ解説や井岡の試合の悪口言うことに夢中なんだもんな~。

ガキしかいねーのかな?

ボクシングファンの精神年齢が心配な(旧徳山と長谷川が好きです)