HARD BLOW !

大沢宏晋選手帰国後初インタビュー ラスベガスで掴んだ自信と課題 PART3

今回で最終回です
第一回はこちらから→大沢宏晋選手帰国後初インタビュー ラスベガスで掴んだ自信と課題 PART1
第二回はこちらから→大沢宏晋選手帰国後初インタビュー ラスベガスで掴んだ自信と課題 PART2

HARD BLOW!(以下HB) 「試合終わったあとすぐ再起するという宣言があったじゃないですか。あれは迷いは無かったですか?」

大沢選手 「試合前は会長にも言ってたんですけど勝っても負けても辞めようかなという気持ちもあったんです。試合前はベガスに来たことで、正直満足してたんかな?でも終わってみたら『俺何を調子に乗って、終わったとか言うてるねん』と思って。そういうところもちょっと自分自身あかんかったんかな?と。」

HB 「試合前は引退するつもりで、負けた後に意欲が出るって珍しいですよね(笑)」

大沢選手 「あのベガスの興奮を見たら『もう一回この場所にもどってこやなあかんな』と思いますよ。すごいですよ二万人って。ゲートから入場してきたらすり鉢みたいになってるスタンドの上からみんな手を伸ばして来て、上見たらでっかい電光掲示板にバルデスVS大沢って書いてあって。実際海の向こう行ってみて、高山勝成君ね、同郷(生野区)の先輩で大尊敬してますけど、右も左もわからん国行って自分から仕掛けてきたというの本当に偉大やなと。」

HB 「日本国内の世界戦では、お金出してチャンピオン呼んで、挑戦する選手はファイトマネー無しとか下手したら持ち出しとかいうケースもあると聞きますけど、オファーがあって呼ばれてファイトマネー貰って試合するというのが本来ですよね。」

大沢選手 「勝つ奴はどこでやっても勝つんやから、やっぱり出ていかなダメですよ。」

HB 「アメリカで長期滞在して練習したいというお話はありましたけど、今後のプランはどう考えてますか?」

大沢選手 「アメリカに爪あとは残せてきたと思うんで、あとはそれをどう広げていけるかなんで。」

HB 「注目度の高い試合なら、負けたら負けたでオファーが来るといいますよね。」

大沢選手 「中島さんからも『来年は海外のプロモーターから来る話も多なると思うから、舞台変わるかも分からんけど楽しんで行こうや』という風に言われてるんで。」

HB 「海外で練習して、海外で試合してという方針で行きたいと。」

大沢選手 「(バルデスの)レベルが違いすぎて、正直今までやってたことはなんやったんやろうと思いましたね。」

HB 「それだけ差を感じてもやりたい」

大沢選手 「俺まだいけるよな、やれるよな、じゃあ行くべきやんなって」

HB 「まだ強くなれるという確信があるんですね。」

大沢選手 「体も何にも悪いところないし、衰えも感じないし」

HB 「肉体改造も始めてるんですよね?」

大沢選手 「いまパーソナルで心拍数ガチガチに上げるというのを始めて。今まで仕事との両立というのを意識して来ましたけど、今後はボクシング一本に集中してやろうかなと。」

HB 「年齢もありますしね。やっぱり悔いが無いようにと…」

大沢選手 「来年一回は日本で復帰戦しようと思ってるので、注目される中でどれだけ出来るかですね。」

HB 「海外に出て行く選手というと山口賢一選手のサリド戦から始まって、高山選手に大沢選手みんな関西で、意志が強いというか我が強いというか。(笑)」

大沢選手 「今上げた人たちも僕も我はメッチャ強いと思います。自分が『これや!』って思ったことを信じてやってるから迷いもないし。自分を疑ってしまったら、誰が自分を信じてくれるねん、と。」

HB 「そういう性格は試合にも出るじゃないですか。」

大沢選手 「だから僕も『バルデス来いや!とことん殴りあったるぞ!』と思ってやって、僕の方が先に倒されましたけど(笑)」

HB 「バルデスともう一回やりたいですか?」

大沢選手 「それはやりたいですけど、あっちが登っていくと思うんで…。試合の後一緒に写真とったんですけど、バルデスが僕の胸に手を当ててるでしょ。これはメキシカンにとっては最上級の敬意の意味らしくて。『今までの相手でお前が一番強かった。お前に敬意を表するって』って言って来て、そこでうるっと来てしたね、悔しいなって。」

HB 「ええ奴ですね」

大沢選手 「めっちゃええ奴です。『またアメリカで待ってるから這い上がって来い。試合しよう』って言われて、自分はあと長くて2~3年、短くて1年やな、婚約もして守るもんも出来たからめっちゃ頑張らんとなと思って。」

HB 「階級はフェザーのままですか?」

大沢選手 「そうですね。ただチャンスがあればスーパーバンタムでも。」

HB 「今回の試合は小さいジムの選手にとっては、工夫次第であそこまで行けるんやという希望になったと思うんですけど。」

大沢選手 「ただ僕らの場合は周りにいる人が凄かったという強みがあって、その力も大きかったですね。僕はロマンサ選んでホンマ良かったと思います。」

HB 「コンベンションも行ったり海外とコネクション作る努力をして、言葉も覚えて、やっていけばチャンスは開けてくるということだと思うんですけど。」

大沢選手 「結局やるか?やらんか?なんですよ。」

やるか、やらんか。この上なくシンプルな結論ですが、これ以上の答えはないでしょう。我々は来年も自分から仕掛ける意欲のあるボクサーたちに注目していきたいと思います!

大沢選手のおかげでこちらも勉強になった(旧徳山と長谷川が好きです)

大沢宏晋選手帰国後初インタビュー ラスベガスで掴んだ自信と課題 PART2

前回の続きです。PART1は以下のリンクから。
               ↓
大沢宏晋選手帰国後初インタビュー ラスベガスで掴んだ自信と課題 PART1
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 この記事の写真は全て大沢宏晋選手から提供した頂いたものです。ありがとうございます!
大沢選手がリングで相対したオスカル・バルデスは、今まで戦った誰とも違う異次元の強さを持ったボクサーでした。

HARD BLOW!(以下HB) 「コンデイションも万全で落ち着いてたし、テレビで見た限りでは一ラウンドは巧く戦っていいスタートが切れたように見えました。バルデスの強さもイメージどおり。ジャブも巧くてフッカーで色んな軌道のパンチが打てると。戦前の作戦では中島さんはそこにショートカウンターを合わせると。大沢さんご本人はジャブがポイントやろうと。それがなぜ巧く行かなかったと思いますか?

大沢選手 「ジャブは一発目がバーンと当たったら二発目打つ前に距離を微妙に変えるんですよ。」
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ジャブから連打を当てるのは至難だった

HB 「それはステップが巧いということですか?」

大沢選手 「位置取りがうまいです。バルデスはオリンピック出てますけど、プロ向きのタイプやったんやと思いました。やっぱり一線級のオリンピアン(17歳で北京五輪・21歳でロンドン五輪出場、2009年世界選手権銅メダル)は凄い。ロマチェンコとやったら多分僕グチャグチャにされてたと思います。」

HB 「日本では体験したことのないテクニックでしたか?」

大沢選手 「それはもうアジア人にはおらんテクニックやと思います。あいつメキシカンでも最近よくいるタイプじゃなくて、アマのスタイルとメキシカンのスタイルを巧く合わせた、ニューメキシカンスタイルという感じやないですかね。」

HB 「ステップワークとかはアマのいいところを取り入れつつ、メキシカンの攻撃的なスタイルも残しつつという感じですね。」

大沢選手 「パンチ力はそんなに感じなかったんですよ。ただ当て勘はむちゃくちゃいい。ピンポイントでどこ狙ってどこ当てるかという精度が無茶苦茶高い。」

HB 「左フックの印象が強かったんですけど。」

大沢選手 「一発一発じゃなくて、やっぱり削って来ますね。後は詰めですね。最後の嗅覚はすごいなと思いました。一線級の選手です。」

HB 「ストップのタイミングにも納得してますか?」

大沢選手 「止められたときには『えーっ?』と思って、映像でもそういう顔写ってると思います。でも後で映像で見たら『これは止められるわ』と思いました。」

HB 「客観的に見たら納得ですか」

大沢選手 「余裕でアウトです。」

敗れたとはいえ、本場のリングで素晴らしい選手と戦えたことは何物にも変えがたい経験だったようです。完敗となった試合後、大沢選手にさらなる驚きの体験が訪れます。

大沢選手 「見た人からは『相手が悪かった』とか言われるんですけど、アイツと渡り合えたことが嬉しいというか。」

HB 「退場の時にメイウェザーに声かけられたという話ですけど」

大沢選手 「びっくりしましたよ」

HB 「見に来てる事は知ってたんですか?」

大沢選手 「知らなかったんですよ。退場の時に『終わってもうたな』と思って歩いてたら中島さんが 『大沢!大沢!』って呼ぶから見たらメイウェザーがシュっと立ってて。メイウェザーが手招きするからそばに行ったら、腕もたれて肩さすられて『You are very t
ough!』って『お前はタフで勇敢や。よう逃げずに戦ったな』みたいに言われて。そしたら周りの観客の人もめちゃ賞賛してくれて。もうそこで『目の前におるのメイウエザーやんな...』って何がなにやら分からなくなって。」

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 『ザ・マネー』メイウェザーと大沢選手 耳うちで通訳しているのが中島マネージャー

HB 「やっぱり正面からバチっと行って戦術的に逃げるようなこともなかったというのにメイウェザーが何か感じたんですかね?」

大沢選手 「そういうところが目に留まったのかも分からないですね。アジア人嫌いやって聞いてたからそこも意外で。」

HB 「そう言ったらそうですね。憧れの選手でスタイルを真似たりしてたんですよね?」

大沢選手 「昔はしてたんですけど、あれはあの人にしか出来ないスタイルですよね。あっちは黒人こっちはアジア人で、やりたいことと自分に合ってることは違うよなと思って。自分の売りはやっぱりハートのタフさフィジカルのタフさで、メキシカンのスタイル、
マルケス、ジョニゴンとかあの辺がめっちゃ好きやから意識して練習するようになって。」

HB 「勝敗についてはやるだけのことはやった、納得してるという感じですか。」

大沢選手 「それはもう、バルデスは強かったと素直に認めるべきやと思います。ただ僕が弱かっただけです。」

HB 「足りないと感じた部分はどこですか?」

大沢選手 「オフェンスですね。もっと連打で打てるような。スタミナは問題ないんですけど、アグレッシブに展開を作っていける癖をつけたいなと。だから今後は一ヶ月とかの期間でアメリカに拠点置いて。アメリカの人間がどういうトレーニングしてるのかを実際に肌で感じてオフェンスを強化したいなと思ってます。今しか出来ないですから。」

HB 「今回行ったことでアメリカのボクシングに興味がわいたんですね。」

大沢選手 「思い描いてた通りやな、やっぱり本場は面白いなと。」

HB 「アメリカですごした時間は選手冥利尽きるという感じでしたか?」

大沢選手 「やっぱりロマンサにおったから、中島さんが海外で顔が広いから出来たというのは確実にありますね。」

HB 「やっぱり向こうで歓待されたりとかありましたか?」

大沢選手 「いや、中島さんと田中会長の凄さアメリカ行って改めて分かりましたよ(笑)。パッキャオとかブラッドリー、ロデル・マヨール、マイダナとか普通に来るんですよ。」

HB 「そういうところも華やかですよね。松原の小さいジムがそういうリングに繋がってるんですね。」

大沢選手 「違う国やけど同じ地球の上やんという、そういうところもアメリカは新鮮で楽しかったですね。」

負けはしましたが、負けた相手を称え次のステップを語る大沢選手の姿にはやるだけのことはやったという清清しさを感じました。

というわけでPART3に続きます。

亀田との裁判でJBCが展開してる主張内容を聞いて眩暈がした(旧徳山と長谷川が好きです)

大沢宏晋選手帰国後初インタビュー ラスベガスで掴んだ自信と課題 PART1

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この記事で使われている写真は全て大沢宏晋選手より提供していただいたものです。大変ありがとうございます。


 大変長らくお待たせしました。ラスベガスでのバルデス戦の敗戦からおよそ一ヶ月、大沢宏晋選手にお話を聞くことが出来ました。あいさつ回りなども落ち着いて、練習も再開しているという大沢選手。帰国後は福島県に炊き出しに行ったり、プライベートでも婚約を発表されたりと忙しくすごして来られたようです。ラスベガスの大舞台を経験して感じたこと、試合のこと、これからのことなど率直に語って頂きました。

 まずは時系列に沿って、試合前の話から。

HARD BLOW!(以下HB) 「まず試合前の話から伺います。記者会見があって、フェイスオフがあって、計量があって、グローブチェックがあってという流れがありますが、日本との違いはありましたか?」

大沢選手 「基本的にはあまり変わりないですけど、何かと盛大にやりますよね。」

HB 「ショーアップというか…。」

大沢選手 「そうですね。実際にそういう本場の舞台にたった時は『自分が追い求めてた場所にやっときたんやな』と思いました。ただスーパースターが試合する場所も、裏側から見たら『意外と普通やな』とも感じましたね。」

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                   記者会見の様子

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           減量は順調でコンデイションも良かったという計量時

HB 「日本国内の試合と流れ自体は一緒ですか?」

大沢選手 「それは変わりないです。全然コンディションも問題なかったですし」

HB 「あっちで体動かしたりは出来たんですか?」

大沢選手 「それはもう全然。ホテルのスポーツジムあったし。カード一枚持って行けば、営業時間中は使い放題でなんの問題もなく。」

HB 「じゃ減量もうまいこと行って、コンディションは万全だったと。」

大沢選手 「そうですね。最後の日なんか、食べながら動いてるのに700アンダーとかになってしまって。」

HB 「ちょっと落としすぎたくらい(笑)」

大沢選手 「口の渇きもないのに計ってみたら落ちすぎてて『えーっ?』てなって。夜は結構でかい炭酸一本飲んでも全くしんどくもならず。向こうではコロンビアのトゥト・サバラっていう、一位のミゲル・マリアガのマネージャーがおって。」

HB 「勝った方がやるという契約になってた選手のマネージャーですね」

大沢選手 「その人です。その人が今回はサポートしてくれて、色々やってくれて。」

ところがメディカルチェックでちょっとしたトラブルがあったそうです。

大沢選手 「(コミッションに提出する)CTスキャナーの写真が日本で撮ったやつがダメだと言われて。」

HB 「そうなんですか?」

大沢選手 「英語の表記がないからアカン、撮り直しやって言われて。」

HB 「あーなるほど、日本語じゃ本当に本人の写真か確認できんがなと。」

大沢選手 「そうですそうです。それで病院連れて行かれて。」

HB 「面倒ですけど、それくらい厳密にやってるということですよね。」

大沢 「それはもうめっちゃしっかりしてます、ネバダのコミッションは。うちの中島(利光)マネージャーが一二を争うほど厳しいと言うてたんで。」

HB 「試合順がなかなか確定しなかったじゃないですか。テレビ中継があるんかないんかとか。決まったのは直前ですか?」

大沢選手 「試合の前日ですよ。日本のスポンサーにも『まだちょっと分かりません』とか連絡して、試合直前やのになんでこんなことで気が散らなアカンねんと思ったんですけど(笑)。結局ドネアの後やってなって。トップランクはバルデスを売り出したかったんですよね。」

 続いては実際に体験したラスベガスのトップランク興行のスケールはどうだったのか?グローブを交えたオスカル・バルデスは一体どんな選手だったのか?試合当日の話を伺いました。

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              控え室の様子
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   スタンド上部から見下ろしたトーマス&マックセンター

HB 「トップランクの興行というのは体験してみてどうでした?」

大沢選手 「それはもう全てにおいて違いすぎますね。パッキャオ、ドネアというカードの本物のトップランクの興行に立てたということが、他の日本の選手色々いますけど、多分一生かかっても出来んようなことが出来たんとちゃうかな?と思いましたね。」

HB 「まあ間違いなく日本初ですよね。」

大沢選手 「これで自分のボクシング人生の扉って大分開けたやろうなと、まあそれが早いか遅いかと言われたら分からないですけど、このタイミングで開ける時が来たんかなと。本当は勝ってというのが理想ですけど、バルデスは頭三つ四つ抜けてるチャンピオンやったなと」

HB 「僕もあの強さはビックリしましたね。」

大沢選手 「映像見る限りは振り回し系かな?と思ったんですけど、実際対戦してみたら、アイツ角度変えるのめちゃめちゃ巧いですよ。感覚が掴めないというか。普通やったら癖とか見て読んでいくんですけど、バルデスはちょっと読めなかったですね。」

HB 「あれ上体が立ってて堅く見えるけど、軸回転のためには理に適ってるんですよね」

大沢選手 「それプラスね当てるところで曲げてくるんですよ。映像見てもらったら分かりますけど、ガードしてる内側に入ってくるんですよ。なんやねんコイツと思って。」

HB 「反応も速いわけですね。相手のリアクション見てパンチの軌道も変えて…」

大沢選手 「そうです、そうです。順応性がメチャクチャ凄いんですよ。こっちがやったことに二歩三歩先を読んできてるんですよ。ただね僕あれだけパンチもらったのにダメージ全く無かったんですよ。僕首が太いから、壊れるような打たれ方はしなかったですね。」

HB 「グラドビッチとかルエダは一方的にやられてましたからね」

大沢選手 「最後あれ左フックでグラついてやられたように見えたでしょ?」

HB 「違うんですか?」

大沢選手 「あれね、フックの前のパンチなんですよ。みんなレバーってまっすぐ打つでしょ?あいつ裏殴ってきたんですよ。あれで腹が効いたところに顎にもらって、そこで一気に詰められて。」

HB 「4Rでダウンとられた後に、5R入ってワンツーで立て直そうとしたじゃないですか?」

大沢選手 「はいはい」

HB 「そしたらバルデスがスイッチしてきたじゃないですか。あれ見て『ああこいつ頭いいな。引き出し多いな』と思ったんですけど。」

大沢選手 「アイツ賢いですね。瞬間瞬間で冷静な判断できるんで。あれがトップ選手ですよね。ただ後で聞いたんですけど、中島マネージャーが『あいつ鼻の腫れ方が変やったからやってるかもな。でも骨折の腫れ方じゃないな』って言うてたんですけども、あとで海外の記事読んだら、あんまり聞かないんですけど鼻の骨を脱臼してたらしくて。」

 ダウンの原因となったレバーブローは大沢選手にとって、未知の技術だったようです。また、バルデスは技術だけでなく、クレバーさも兼ね備えていました。次回引き続き、大沢選手が試合で体験して感じたこと、試合後の反響、今後の想定されるプランなどをお伝えします。

 試合後も話を聞けて理解が深まったと感じる(旧徳山と長谷川が好きです)


スパーリング打ち上げ!大沢宏晋ベガス渡航直前リポート

大沢選手とロマンサジムのご協力により、あしかけ約一ヶ月続いた当方のレポートも今回が最終回であります。いよいよ本番へ残すところ2週間弱となった10月25日、最終のスパーリングを見学させて頂きました。

ジムに伺うと試合で着用するチームジャージも完成しており、いよいよ臨戦ムード。
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試合を想定した長いスパーリングは先週で終わり、この日は防御などの確認として4R程度のスパーとのこと。

最終のロングスパーではインターバルを30秒から本番と同じ1分にしたところ、回復が格段に違い、最後までしっかり動けたとのこと。

「スタミナは何の問題もないです」(以下大沢選手の発言は全て赤文字

という力強いコメントが出ました。KO必至と言われる試合ですが、判定になるような展開でも12R戦う体は出来ているようです。

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ウエイトはリミットまで3キロ台ですが、食べながら落とせておりこちらも順調。シャドーなど見る限り体も絞れて、動きは3週前あたりの疲れのピーク時から見れば、軽快でありました。スパーでかけた負荷が効いて、試合では重石がとれて軽くなるというのが狙いだと言うことですが、中島トレーナーはオーバーワークにならないように慎重にスパーリングのラウンド数など調整してるようでありました。もともと10月当たりに試合を計画していたということで8月あたりからスパーも積んでいたところに、9月にトップランクからオファーが来たと言う経緯があり、結果的に100ラウンド以上のスパーをこなしたとのことです。

減量中ということもあり防御の確認など、仕上げの意味を込めた4ラウンドの短いスパーでしたが、打ち合い自体はいつものバチバチで、大変激しいパンチのやり取りがありました。大きいグローブでもジャブやインサイドからのパンチも当たっており、試合本番では果たしてジャブやカウンターがどこまでバルデスにヒットするか、大変楽しみであります。
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スパーを見てきて感じたのは、距離がつまった場面で不完全な体勢でも強い連打を出せるのが、大沢選手の強みだということ。下半身や体幹の強さを感じました。小さいスイングで、姿勢が悪くても強いパンチが打てるというのは本番で必ず武器になると思います。

大沢選手がポイントに上げていたジャブ、中島トレーナーが勝負の分かれ目と分析したショートカウンターは果たしてバルデスに通用するのか?興味が尽きません。
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バルデスはレコードどおりスピードもパンチ力も図抜けており、オリンピアンということで技術も申し分なし。フック系のパンチが目立ちますが、ジャブもパンチを散らすのも巧く、必要がないので引き出しを開けずに勝っているだけで、まだ出していない技術があるのでは?とすら思えます。トップランクが期待をかけるだけはある、素晴らしい選手です。ただフェザーとしては小柄。大沢選手はもともとライト級ですから、リーチと身長の差を生かして、得意のジャブを印象付けつつ、接近戦で多少やられても打ち負けずやり合えるか?が鍵になると思います。

日本人の海外挑戦では「何も出来ず負ける」というケースがままあります。「記念挑戦だ」なんて揶揄されるような試合でなくとも、例えば西岡利晃選手のノニト・ドネア戦などもそうした範疇に入る試合であったと思います。実際日本のファンの方でも、今回の試合は勝ち目のないミスマッチだと言うような評価をされている方もいます。ですが、自分は大沢選手はそういうタイプではなく、強敵相手であっても試合を作れる選手であると思っています。メンタルも図太いし、パンチ力やフィジカルの強さという武器もあるし、試合展開を作れる強引さも持っていると思います。世界中のファンが注目する舞台で勝敗を超えたエキサイテイングな試合をして、世界を驚かせて、キャリアを切り開いてほしいと切に願います。そして閉鎖的な日本のプロボクシングに革命を起こしてほしいと思います。

練習後大沢選手に少しだけお話を伺いました。

バルデスとは体格差がありますが、小さい選手にはやりにくさは感じないですか?

「特にないです。インファイトでも腕たたんで、アッパーとかやり方はいくらでもあります」

ジムワークのない日はウエイトなどをやっているみたいですが?

「ウエイトじゃなくて加圧トレーニングですね。筋肉つけるとかはどうでもいいんですよ。加圧で筋持久力つけて、心拍数が上がってても動ける体を作るのが狙いです。」

こんなに楽しみな世界戦は久しぶりです。全くどうなるか分からない。

「練習は一切妥協なくやってきたんで、なんの不安もないです。バルデスが勝ったら相手が俺より強かったというだけのことで。勝った方が強いと言うことです。」

この日もダイエットコースの見学に来た方に親切に対応したり、出稽古に来た大学生をいじって談笑したりと、過剰に入れ込んだりピリピリしたりすることもなく普段通りだった大沢選手。リラックスして自然態のまま試合にいけそうでありました。

理不尽なライセンスの停止を経て、精神的にも肉体的にも更に逞しく強くなった大沢選手。彼の身に降りかかった全てのことが、報われるように願ってやみません。あとはもう暴れてもらうだけです。彼ならきっと臆することなく大きな仕事をやってくれると思います。期待して試合の日を迎えたいと思います。

最後になりましたが、ロマンサジムの皆様のご協力に、今一度感謝致します。大変お世話になりました。ありがとうございました。

ロマンサジムの雰囲気に新しい息吹を感じた(旧徳山と長谷川が好きです)


ベガスへ向けていよいよ追い込み 大沢宏晋選手ロングスパーレポート

いよいよ試合を見越した調整に入ってきたチーム大沢でありますが、昨夜はロングスパーが行われましたので、またもロマンサジムにお邪魔してきました。

そのスパーの模様をお伝えする前に、大沢選手のインタビュー記事のご紹介を。HARDESTというWEBマガジンに掲載されています。
          
                記事へのリンク
                    ↓
ボクサー“大沢宏晋”その強靭な生き様とファイトマネーの行方
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私今までHARDESTさんの存在を知らなかったのですが、覗かせていただくと、ラッパーやXスポーツの選手の記事が多数掲載されているという、名前に恥じぬ大変ハードなサイトでございました。インタビュー自体は、大沢選手の内面に着目した、非常にパーソナルな内容。いわゆるボクシング専門誌やスポーツ新聞のお決まり・無味乾燥なインタビューとは違う、書き手の体温が伝わる文章で、尚且つスポーツ選手もミュージシャンや俳優と同じくカルチャーの担い手なんだということも分かる良記事でございます。大沢選手の地元、生野で撮影されたポートレイトも味わい深いです。是非ご一読を。

さて、ここから本題です。

今週から試合を想定したロングスパーへと移行するということで、またしてもジムにお邪魔して見学させて頂きました。

本日はスパー前に中島利光トレーナーに少しお話を伺うことが出来ました。中島氏は、この日もずっとセコンドに立ちキッズボクサーから新人王トーナメントに挑む選手、大沢選手まで満遍なく指導するというマルチタスクぶりで、当方は「よく頭が混乱しないな」と感嘆。聖徳太子のようでありました。

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 セコンドからスパーを見守る中島トレーナー

(中島トレーナーの発言は赤字です)
 
「先日の記者会見で『日本人は海外選手を見上げすぎている』というような趣旨のことをお話されていたと思いますが」

「自分も最初ベガスでセコンドついた時は『すごいな~』って思ったんですけど、二回目からなれたらそうでもないなと。テレビの映像って速く見えるんですけど、実際現場で見てみたら日本人が見劣りしてるとは思えないんです。」

「WBOやIBFが認可されて海外の世界戦やタイトルマッチに出る選手が増えてきましたが、なかなか勝てない。原因はどこにあると思われますか?」

「やっぱり入れ込みすぎとか構えすぎと違うでしょうかね?力んで普段どおりの精神状態で出来ていない面があるんじゃないですか?だから大沢にも『(相手を)スターやとか思うなよ』って言ってるんです。」

「海外の強豪選手は日本に来ても落ち着いてますよね。」

「海外は『世界戦で負けたら引退』とかいう考え方もないからその違いもあるでしょうね。」

ということでした。ロマンサジムのリラックスした自然態の雰囲気も全て試合で勝つためということなのでありましょう。

夜も深まって続々と3人のパートナーが集合したところで、スパースタート。この日は試合本番を想定した3人×3Rの9Rという長丁場。ロングスパーでも、今までと同じくプレッシャーをかけまくるバチバチのスタイルであります。現在ロマンサジムは試合を控えた選手が6人と言う状態で、その選手達の調整も兼ねたスパーとなっております。

先週はキレキレの日もあったということですか、その後の調子は一進一退とのこと。この日も押し込まれる場面が再々あり、良いボディーを食らって動きが鈍るシーンも。ただその中でも、中島トレーナーは苦しい局面でいかに連打を出すか?ということを9R間にわたって、何度も何度もセコンドからハッパをかけて指示し、大沢選手も必死で食らいつくという展開。ブロックからの返しのパンチと、当たった後の追撃が特に強調されていました。ロマンサジムのリングは小さく、逃げ場がないので、常にアクションが求められるタフなスパーとなります。

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先週から常にスパーで最後のパートナーを勤めているのは、ジムメイトで昨年度西日本新人王の金井隆明選手。背格好が近いということで仮想バルデス役でもあるそうですが、大沢選手にとっては同い年で仲がよく、協力して対策を立案したりする参謀役でもあるとのこと。金井選手も試合が近く、スパーは白熱いたしました。

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ラスト近くは中島トレーナーがラッシュを指示して、連打を出し切って終了となりました。

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スパーが終わると、さっきまでバチバチに殴り合ってた金井選手がすぐに頭をアイシングして、その後はボディ打ち。信頼関係が現れる一コマでした。

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ジムではみんなからタカと呼ばれる金井選手。

金井選手にもお話を伺いました(金井選手の発言は赤字

「大沢選手の練習ではいつもスパー相手なんですか?」

「ずっとそうです」

「今までと比較して今回の調子はどうですか」

「いいと思いますよ」

「かわりなく?」

「というかやっぱり気持ちはいつもより乗ってると思います。」

「大沢選手が金井さんのことを参謀役と言ってたことがありましたけど」

「年が同じなんで親しいんですよ。だから一緒に作戦や対策を考えたりしてます」

「同い年なのに昨年新人王なんですか?デビューが遅かった?」

「デビューは27です。ずっと働きながらアマで試合はしてたんですけど、大学とかに入ってたわけじゃないんで公式戦は7試合くらいですね」

「27でプロ入りって覚悟が要ったんじゃないですか?」

「いや自分は整備士で手に職を持ってやっているし、職場の方も信頼して応援もしてくれてるので全然不安はなかったです。」

「ロマンサジムは本当に自然態というか、リラックスしたジムですよね」

「(壁に貼られた海外ビッグマッチのポスターを指差して)中島さんがああいう世界を知ってる人やから、信頼出来て僕らも落ち着いていられるんです。」

ヘルパーボクサーと整備士ボクサーが協力して世界を目指す、というのもいかにも自立した大人の話であります。金井選手ありがとうございました。

大沢選手はジムメイトにスパーの感想など確認しながら、途中で貰った効いたボディの対策を話し合ったりと、徐々に試合に向けたモードに入ってきた印象。アメリカ行きは試合の5日前ということで、日本にいるのはあと二週間弱。ここからがチームの腕の見せ所であります。

このまま自然態で走りきってベガスで大仕事をして欲しいと思います。まだまだレポートは続きます。

HARDESTみたいな記事がなぜ専門誌に書けないのか?と思う(旧徳山と長谷川が好きです)