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HARD BLOW !

熱戦!WBFアジアタイトルマッチ 後藤心大×チェ・ヨンドゥ 観戦記

 ボクシングに貴賎なし!もはやその辺の関西のジムよりよっぽどコンスタントに興行を打ってる、山口賢一会長率いる大阪天神ジムの非JBC興行のレポートです。井上×ドネアの情報はその辺の新聞・テレビ、ネットニュースやファンのブログ、SNSで子細に分かりますが、非JBCのボクシング興行について詳細に読めるのはHARD BLOW!だけ!というわけでもないんですが、今回もレポートしたいと思います。

 今回の興行が行われたのは11月4日。まずは前日の計量とフェイスオフから見学して参りました。今回の興行のメインはWBFアジアのSフェザー級タイトルマッチ後藤心大とチェ・ヨンドゥ選手の試合です。今回の試合はスーパーバイザーが韓国のKBAから来日しており、ウエイトもキッチリとチェックしていました。

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 個人的に楽しみだったのは60キロ契約のSHINSUKE×小澤大将戦。SHINSUKE選手はキックボクサーとの兼業選手で、6月の天神ジム興行でデビューし勝利しています。タイでの試合やボクシングにも積極的に挑戦する逞しい選手です。一方の小澤選手は元JBCのA級ボクサーで、天神ジム興行ではお馴染みの選手。九州からクレイジーキム会長と一緒に現れた小澤選手は、秤の前で服を脱ぐと39歳とは思えない切れ切れの身体で500グラムアンダーで計量クリア。
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 小澤選手は撮影用のフェイスオフでSHINSUKE選手に「顔くっつけてやりませんか?」と言われて「いやいや、それは明日試合でするから」といなすも、その後「なんだよアイツ?何に憧れてんだ?」と少し頭に来ていた様子。この経緯が翌日の試合への伏線でありました。

 明けて翌日、会場に向かうと名古屋から『ボクシング選手名鑑』の管理人せきちゃんが登場。わざわざ大阪まで非JBC興行チェックしに来るとは相当なスキモノであります。会場に入ってみるとスタッフは音響や会場のチェックに走り回っており、『破天荒ボクサー』の武田倫和の姿も。

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 ジャッジの元WBCフライ級王者マルコム・ツニャカオさんもリングロープ調整を手伝っております。この辺の『手作り感』は良さでもありますが、ハッキリ言って不手際の温床でもあり、今回も音響が聞こえなかったり、選手が入場の導線を間違えたり、暗転が暗すぎてリングアナが字が読めなかったりと興行としては宜しくないことも多々ありました。この辺は課題ではあると思います。

 ただ孤軍奮闘、一本独鈷でJBCの向こうを張って行われる独立ボクシング興行は、それ自体が既存の価値観との戦いであり、権威主義のボクシングファンのように冷笑していては決して分からない魅力や輝きがあるのです。

 そして肝心の試合のクオリティは今回も本当に素晴らしかったのです。

 まずはSHINSUKE×小澤大将の60キロ契約4回戦。不敵な笑顔で入場してきた小澤は、リング上でも不穏な空気を発散し、仕掛ける気満々という感じ。

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一方のSHINNSUKEは好青年風のキャラクターで、「アウェイのリングで専業のボクサーを食ってやろう」という自信にあふれています。緊張感の中でゴングがなると、開始数秒で数発ジャブの交換があった後、SHINNSUKEがジャブをかわして不用意にコーナーに下がったところに小澤の右強打が爆発!SHINSUKEは糸が切れた人形のようにバッタリとリングに倒れ伏し、レフェリーは瞬間的に手を振ってストップ。小澤は倒れたSHINNSUKEを見下ろしながら「これがボクシングだよ!ボクシング舐めんなよ!」とリング上で絶叫。スポーツライクなボクシングとは対極の怖いシーンでしたが、こういうヒリヒリした感情むき出しの試合もプロならではとも言えます。

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 他流試合だったことでお互いの選手の感情を引き出した面が確実にあったと思います。この辺がJBCの興行では決して見れない要素であります。

 この試合で会場の空気は一気にピリッとしましたが、メインの後藤心大×チェ・ヨンドウのWBFアジアSフェザー級タイトルマッチがこれまた素晴らしい好試合。後藤は天神ジム期待の選手ですが、自分は前回興行は観戦できなかったので、WBFアジアのベルトをとった試合は見ていません。一方のチェの試合は二年前に見ていますが(その試合のレポート→JBCだけがプロボクシングにあらず 5.3観戦記)、その時はうまくサイドステップを使って戦う曲者という感じで「面白い選手だな」という印象でした。果たして二年間でどれくらい変化しているか?

 試合が始まるとすぐに、チェが長い右を立て続けに当ててペースを掌握。距離が合わない後藤は先手をとられて序盤から顔を腫らして行きます。チェはジャブやステップで後藤の距離を外して、インサイドとオーバーハンドを使い分けて大きな右を再三ヒット。チェのボクシングは以前私が感じた変則のイメージはなく、堂々たる王道のスタイル。一方後藤は距離が遠く、中々頭へのパンチが当たらず苦戦気味。それを見たセコンドの山口会長は「ボディを狙え」と指示。後藤は展開を変えようと、強引にくっついて回転が良く強い連打でチェに対抗。一方のチェはあくまでジャブからの右強打で後藤を削っていき、顔へのパンチを浴び続けた後藤は4Rに入ると目が塞がった影響か反応が落ちてくる。するとチェは右を警戒する後藤の裏をかいて、飛び込むような左ボディでダウンを奪取。展開もポイントもチェの優勢は決定的となる。

 天神ジム興行の小さいリングはファイター寄りの後藤に有利なはずだが、チェはガードとフットワークで的確に後藤のパンチを外して隙を見せない。その後チェはジャブに、ダウンをとったボディを織り交ぜながら後藤の耐久力を計るような攻め。後がなくなった後藤は6Rに入ると被弾覚悟で強引に接近し、捨て身の連打。ダメージがあるはずだが連打は止まらず、勢いに飲まれたチェはガードしきれずに下がりながら一瞬棒立ちに。このまま奇跡の逆転KOか?と思わせた矢先、チェが乾坤一擲の右ストレートで後藤をぐらつかせると一気にラッシュ。ロープに詰めさらに大きな右を当ててぐらつかせたところでレフェリーが割って入ってストップ。ダウンはありませんでしたが、タイミングの良いレフェリングでした。

 最後の後藤のラッシュからフィニッシュまでの一連のシーンは、なかなか見られない激しいパンチの交換で、客席もかなり盛り上がりました。私の横で見ていた、兼業選手の応援に来た普段はキックや総合しか見ていないであろう若者グループが「ボクシング面白いなあ」と興奮気味に語り合っていました。

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 試合後はリングでスーパーバイザーから認定証が渡され、チェがリング下でベルトをもって撮影大会。WBFのことをやれマイナータイトルのなんのとクサす根暗で権威主義のマニアがいますが、あんたらそもそも試合見てないじゃん。ハッキリいって日本タイトルやOPBFタイトルでこれよりつまらん試合沢山あるよ。

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 試合後はラウンドガールも一体になって後片付け。確かに仕切りが拙い面はありますが、こういう参加意識に満ちた一体感がある興行はなかなかございません。素晴らしい余韻を抱いて会場を後にしたのでした。皆さんも悪いこと言わんから一回見た方がいいですよ。

新人王に行けなかった(旧徳山と長谷川が好きです)

 

『努力の天才』高山勝成選手の冒険が終わるとき 全日本選手権東海地区予選レポート


 残念無念!

 2013年以来当ブログでおいかけて来た高山勝成選手が、去る8月31日に岐阜県で行われたボクシング全日本選手権東海予選で敗退し、目指していた東京五輪への出場は夢と終わりました。この東海予選にはライトフライ級で全日本四連覇し昨年フライ級で三位の実績を持つ自衛隊の坪井智也選手もエントリーしていたことから、プロアマトップ同士の異次元対戦が実現するか?と期待されましたが、高山選手は初日の抽選で宇津輝選手と対戦することになり、坪井選手とグローブを交える前に敗退しました。

 まずは試合当日の振り返りから…。

 高山選手は軽量級で試合順が早いと言うことで、当方も競技開始一時間前に会場の岐阜工業高校に到着し(笠松競馬場に寄り道したので裏口から…)、学生さんに道を聞いてアップスペースにたどり着くと高山選手はフィジカルトレーナーのケビン山崎氏とアップ中。鉄棒のような大きな機材を持ち込んでストレッチをする高山選手の周りは報道陣やプロ時代からの応援団が取り巻いています。

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 一方高山選手以外の選手たちはアップスペースの反対側に陣取ってお互いにミットを持ったり、シャドーをしたり、話したりしながらリラックスした様子で競技開始を待っています。広大なアップスペース二分する両陣営の様子を見る限りは、高山選手とアマ出身選手との交わりはまさに異文化の衝突という趣でありますが、それもこれも第一歩。高山選手が扉をこじ開けたことで発生している現実であります。

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 高山選手をサポートする山口賢一氏やトレーナーの中出博啓氏にもご挨拶して少しお話を伺いましたが、調子はとても良いとのこと。7月の愛知県予選でも動きはプロ時代と遜色なく、色んな意味でそのブレなさに驚かせてもらいましたが、経験豊富なチームらしく「やることはやった」という落ち着きが感じられます。

 高山選手の試合は二試合目で、会場の半分は高山応援団で埋め尽くされており大きな声援が飛びます。

 3ラウンドダッシュのアマスタイルへのスタイルチェンジは果たして更に進化しているのか?対戦相手の宇津選手はサウスポーの現役大学生。高山選手との年齢差は実に16歳。親子でもおかしくない対決であります。

 ゴングが鳴ると高山選手は前戦のサークリングするスタイルではなく、サウスポーに正面で対峙してプレッシャーをかけてジャブからボディを狙いますが、宇津選手は速いステップとハンドスピードを生かして高山選手の打ち終わりに左を合わせて攻勢。高山選手は宇津選手のスピードについていけず苦しい立ち上がりとなります。

 2Rは序盤に宇津選手が立て続けに見栄えのいい左を当てて、高山選手の頭を跳ね上げて明確にリード。高山選手はスピードと距離勘の良さに手を焼いてなかなか頭に届くパンチが打てず、ボディを打ちに行けば頭の低さを注意される苦しい展開。しかし諦めずにかけ続けたプレッシャーが徐々に効いて、2Rの後半からしつこいボディうちが奏功。宇津選手のフットワークが目に見えて鈍くなる。

 3Rも高山選手は愚直に前進し、ボディに左右のパンチをふるって前進。宇津選手はみるみる失速し、手数も足も鈍くなります。しかしフィジカルとスタミナとメンタルの強さで底なしの『高山地獄』に飲み込むには3Rはいかにも短すぎたか。序盤許したリードは致命的で、宇津選手を仕留めきれず試合は終了。

 判定はジャッジ三者とも1と2Rを宇津選手、3Rを高山選手にふって2-1で宇津選手の勝利。試合後高山選手の応援団がかなり不服さをアピールしていましたが(ああいうのは選手のイメージが下がるので良くない)、判定は妥当であったと思います。

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 試合後の取材で潔く敗北を認めたという高山選手。3Rの試合形式の難しさを率直に認めたのはきっと本心であったと思います。実際プロ時代はあのままラウンドを重ねて相手を飲み込んでいくのが高山選手の恒例のスタイルで、スパーでも序盤は元気な相手にやられても、プレッシャーと手数で気持ちを折っていくのがいつものことでした。日本ボクシング連盟やAIBAの不合理な方針によって競技参加が遅くなり、ぶっつけ本番で全日本選手権のワンチャンスにかける形になりましたが、もう少し準備期間があり3Rの試合に順応できていればまだまだやれたのに、と思わずにいられませんでした。

 高山選手がプロアマの間にあった重い扉をこじ開け、全日本選手権予選のリングに上がって未経験のルールで二勝を上げたことは、ほんの数年前には想像も出来なかったような非現実的な『事件』でありました。高山選手と彼のチームは、ずっとそうやって一見荒唐無稽なことに挑んで、前人未踏のキャリアを切り開いて来ました。ミニマム級の小さなボクサーが、「やりたい」と言う一念で突き進んだことで実際に何度も歴史を変えてきたのです。

 思えば高山選手のキャリアは挑戦の繰り返しでした。キャリア当初からジム移籍を繰り返して世界のベルト追いかけ、その後JBCのライセンスを返上して海外を転戦して当時未公認だったIBFのベルトを敵地メキシコで戴冠し、国内復帰後はまたも敵地で統一戦に挑んで敗れたもののIBFとスポーツイラストレイテッドの年間最高試合に選ばれ、同一階級での4団体制覇を実現し、なぜか高校に入学して学生ボクサーになり、そのまま大学に進学したと思ったら東京オリンピック出場をぶちあげて本当にアマのリングに上がってしまった。

 クラブ制度の日本のプロボクシングではタブーとされてきたことを繰り返してきたキャリアは、時にワガママでエキセントリックだと映ることもあったでしょう。彼が閉鎖的なムラ社会で波風を立てながらもキャリアを全うできたのは、実際に行動を起こしたとき常に『結果』を出してきたからです。そういう点で彼は紛れもないプロでした。コンデイショニングや練習態度、試合に臨む姿勢は常にマジメ一徹でムラがなく、苦しい試合でも決して諦めない強靭なメンタルをもっていました。だからこそ周囲の人も彼に賭けることが出来た。公私に渡って彼を支えて来た山口賢一氏は高山選手を評して「努力の天才」と言いましたが本当にその通りだと思います。

 私が思う高山勝成の人物像は『好き勝手にやるために、徹底的にマジメに生きた人』というものです。彼のマジメで決して手を抜かない人間性があったからこそ、世界を転戦して最終的にオリンピックを目指すというところまで物心両面でそれが出来る環境を維持できたのだと思うのです。

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 高山選手が近畿大学に出稽古に行ったときのこと、自分の練習を終えたあと初心者の新入生にジャブの撃ち方から教えている姿を見て「自分の練習に来てるのに、なんでそんなことするんですか?」と尋ねたことがあります。そのとき高山選手は「自分も海外でジムにいたときひとりぼっちだったから、ああやって一人で鏡に向かってる子の気持ちがなんか分かるんですよ。だから『良かったらなんか一緒にやろうよ』っていうそれだけなんですよ」と答えてくれました。彼はいつも偉ぶらない人でしたが、一方で試合前の追い込みになると、普段の優しくて穏やかな姿とは全く違う鬼気迫るような集中力を見せ、その豹変振りに何度も驚かされました。

 名もない少年だった高山選手の才能を見出し、20年以上に渡ってチャレンジを支えて来た中出博啓氏は、日本のボクシング界では極めて異端的なフリーランスと言っていいトレーナーでした。会社経営をしながら南アフリカやメキシコを転戦してきた中出氏のスタンスは日本のボクシング界のムラ社会文化とは断絶しており、軋轢もありましたが結果的にその独特の立ち位置故に高山選手の自由なチャレンジを支えることが出来たと思います。その時々の対戦相手に対する中出氏の分析や試合展開予想はいつも驚くほど的確で、その会話の中で私はボクシングの見方を何度も学ばせて頂きました。

 当方が関わったのは高山選手のキャリアの晩年ではありますが、現場での生の体験を通じて大変有意義な勉強をさせて頂き、より深くボクシングを学ぶことが出来ました。今一度感謝させて頂きたいと思います。山根明氏の問題を追及して来たのも、高山選手のオリンピック出場の一助になればと言う思いでやっていたことは間違いありません。オリンピック挑戦のリングに立つ高山選手が見れたことは何よりの喜びでした。

 高山勝成と彼のチームが長い旅を通じて成し遂げたことは、今後日本のボクシング界に多大な影響を与えて、改めて評価される日がきっとくると思います。

 本当にお疲れ様でした。

 坪井選手の対戦が見たかった(旧徳山と長谷川が好きです)

高山勝成がアマのリングで歴史的勝利 

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 山が動いたと言いましょうか、2019年7月6日と7日、ついに高山勝成選手がアマのリングに上がりました。

 「東京五輪に出場して金メダルを目指したい」

 高山選手が2017年にぶちあげたその目標は、当初完全な絵空事と捉えられていました。ファンも関係者もその実現可能性を真剣に受け止めた人は多くなかったでしょう。当時オリンピックボクシングを統括していたAIBA(国際ボクシング協会)はプロ選手の出場に資格制限を設けており、日本ボクシング連盟(以下日連)もプロの参加に否定的でした。山根明氏の一般的な知名度も、ほぼ皆無に近かったと思います。ファンやメデイアの中には、「高山選手の行動はワガママで自分勝手だ」というような論調すらありました。

 その当時の中出博啓トレーナーのインタビューはこちらから
          ↓
 『高校卒業→大学入学』からの『世界王者のままプロボクシング引退!』からの『東京オリンピック挑戦宣言!』 中出博啓マネージャー兼トレーナーに聞いた、展開がダイナミックすぎる高山勝成選手の今までとこれから PART1

『高校卒業→大学入学』からの『世界王者のままプロボクシング引退!』からの『東京オリンピック挑戦宣言!』 中出博啓マネージャー兼トレーナーに聞いた、展開がダイナミックすぎる高山勝成選手の今までとこれから PART2


 オリンピックの主催者であるIOCはあらゆる競技でプロ選手の参加を奨励しており、本来なら高山選手の参加意思表明は歓迎すべきものです。高山陣営は署名活動やIOCやJOCやAIBAへの陳情、スポーツ調停の申し立てなどあらゆる手段を通じて競技参加への道を探り、プロアマの間に横たわる時代遅れな厚い壁を破ろうともがいて来ましたが、日連やAIBAの反応は極めて鈍いものでした。

 このまま時間だけが過ぎていくのか?と思われたおよそ一年前、皆様の記憶にも新しい山根明氏のスキャンダルが起こります。一連の内紛は『奈良判定』などの不正が発覚したことで社会問題となるほど大きな騒動を呼び、結果的に山根氏は失脚しました。一方国際組織のAIBAも、ガフール・ラヒモフ会長の麻薬犯罪との関わり(どんな組織やねん...)や競技における判定や審判の問題などから今年5月にIOCによって五輪競技からの排除を勧告されます。高山選手の競技参加を阻害していた勢力は自滅に近い形でボクシング界から去り、あれよあれよという間に視界が開けました。

 そして7月にはもう、高山選手は予選のリングに立ちました。プロで四団体のベルトを奪取して頂点を極めた男が、30代の半ばを過ぎてもう一度違う目標の為に、地方予選から戦いを始めたのです。わりと当たり前に受け止められていますが、これはかなり奇跡的なことです。

 高山選手が出場した試合の会場は、名古屋の住宅街の中にある専門学校の体育館でした。会場の入り口には来場者の靴が溢れんばかりに乱雑に脱いであり、観客も大半は同日行われた少年の部の試合の関係者や父兄です。華やかとは言えませんが、これまでも南アフリカやフィリピン、メキシコと未知のリングに裸一貫で上がって道を切り開いてきた高山選手にはかえってふさわしい舞台にも思えます。

 個人的には 「プロアマの壁を壊して世界チャンピオンがリングに上がる歴史的な試合が無料で観覧できるのに、あんまりファンは関心ないんだなあ」と少し寂しく思いましたが、報道の関心はかなり高く、記者席は満杯でその後ろにはテレビカメラの三脚が並んでいました。

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 少年の部の試合が15試合続いた後、そのまま成年一試合目の高山選手がリングに入場。リング下には中出博啓トレーナーやケビン山崎氏、山口賢一氏も集まってプロ時代さながらの臨戦態勢。緊張が高まります。

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 自分が一番注目していたのは、実戦は三年ぶりという高山選手の試合勘でした。まして彼の年齢はもう36歳。ハードワークでスピード命のスタイルが身上の高山選手にとって、加齢という残酷な事実を突きつけられる可能性もあります。

 当然プロのようなコールもなく、淡々と試合は始まりました。高山選手はプロの時代と変わらない上から吊られているような体軸のぶれないフットワークに、旺盛な手数で攻め立てて相手のパンチへの反応も良く上々の立ち上がり。捨てパンチを生かしたコンビネーションやフェイントからのビッグパンチなどテクニックも以前のままでした。対戦相手は中央大学の藤原幹也選手。序盤はサークリングしてパンチを当ててくる高山選手を攻めあぐねていましたが、徐々に圧力を強めて接近し打ち合いに持ち込んで捕まえにかかります。藤原選手は高山選手のストレートの軌道にも徐々に対応してパンチを返していきます。2Rでは高山選手が前進を受け損なって背中を向けて注意を受ける場面もあり、パンチを貰っても苦にせず前進してくる藤原選手が攻勢をアピール。ヒットは高山選手が多いものの、藤原選手は下がらずに手を出し続けて前進し、最後は打ち合いになって会場は両者の応援が入り乱れてやんやの歓声となりました。

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 終わった時点では高山選手がとったかな?と感じましたが判定結果は割れて2-1で高山選手の勝利。負けた藤原選手は大きくのけぞって悔しさを滲ませました。3Rの中に展開があり面白い試合でした
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 一者がフルマークで藤原選手という採点結果を見た瞬間、リング下にいた中出トレーナーは「えーっ一人フルマーク?」と驚きの声を上げていました。3Rでここまで採点結果が真逆になるというのは私も疑問でした。藤原選手が勝っていたという感想を持っておられる方も結構いたので、勝ち残るためには3Rという短いラウンドで圧倒的な差を見せる必要を感じました。

 試合後に中出氏に少しお話を伺うと、4月に視察したアジア選手権の採点傾向も分析したうえで、採点基準への対応の必要性を力説されていました。高山選手の仕上がりについては「アジャスト出来とったでしょ?サークリングしてパンチを当てていくのはエディジムに居たころの昔のスタイルに近いと思う」とのこと。

 試合が終わってみれば高山選手の力量はプロ時代から維持されており、さらにトーナメントの連戦に併せた調整法、採点基準に順応することで上がり目はあると感じました。ただフィジカルの強いトップ選手と当たった時に、今のサークリングして交わすスタイルでは難しいとも思います。実際試合後藤原選手は「手数は凄いけどプロ選手特有の一撃のパンチ力は感じなかった」旨のコメントをされていました。プロアマのトップ同士の対戦はまさに未知の世界であり、何とかそこまで勝ち上がって試合を見せて欲しいなと一ファンとして思います。
 
 東海予選も観戦に行きたい(旧徳山と長谷川が好きです)

世界ランカー返り咲き 再び世界を目指す大沢宏晋スパーリングレポート

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 当ブログではすっかりおなじみの、大沢宏晋選手の試合が近づいてきました。

→ 大沢宏晋選手についての過去記事

 4月7日堺市産業振興振興センターで行われる試合の相手は、インドネシアのアーマド・ラヒザブ選手(昨年中澤奨選手に3RTKO負け)で、階級はスーパーフェザーで行われます。試合間隔を空けないための調整試合的なマッチメイクと言えるでしょう。

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 昨年末世界ランカーをKOで下して再び世界ランク(現在WBA5位)に返り咲いた大沢選手は次戦で44戦目。ここ数年タイトルマッチで破れたベテランボクサーが試合枯れの末にキャリアを閉じていくケースが多いですが、大沢選手は何度も挫折を乗り越えて逞しく再起し、現在も若いボクサーと同じペースで積極的に試合をこなしています。

 去る3月28日に大沢選手のロングスパーリングを見学してきたので、その様子をお伝えします。

 この日のスパーはインターバル30秒でパートナーを変えながら3人×3Rの9R。

 最初の相手はライト級の石川耕平選手。

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 二人目はスーパーフライ級の岩崎圭祐選手

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 最後はスーパーライト級の高橋良季選手

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 インターバル30秒で切れ目なく9ラウンドでしたが、最終ラウンドまで足が良く動き鍵となるジャブも上下に良く出て、昨年末の試合時の好調をキープしている象でした。以前は見られた疲れで足が止まった時に強引に右で打開しようとするような場面もなく、ボクシングがもう一度若返った印象で、ジャブがテンポよく当たることで長いオーバーハンドストレートや密着時のアッパーもより効果的になったと思います。

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 練習後少しお話を伺いました(大沢選手のお話は赤文字
HARD BLOW!(以下HB) 「昨年末のプレシアド戦ですが、かなりパンチがあったという話ですが」
大沢「パンチは強かったですね。効いたときに距離とるのも巧くて捕まえにくい相手でしたが、そういう選手を倒しきれたのは良かったと思います」
HB「KOの場面、世界ランカーのプレシアドを誘い出して動かしておいてから狙って倒せたところが価値があったと思います」
大沢「相手を動かして、出口を塞いでいって倒すことが出来ました」
HB「構えるときに手の位置を下げたことの影響がかなり大きかったようですね」
大沢「手の位置が高いとジャブが出にくいだけじゃなく、背筋にも力が入ってて結果的に足も出なくなってたんですよ。それが解消されてスタミナの持ちも良くなりました」

 大沢選手は久保隼選手に判定負けした後、再起するに当たって過去の自分の試合のビデオ映像を何度も見返して手の位置を修正し、スランプを脱して世界ランキングに返り咲きました。プレシアド戦の直前には、相当に手ごたえを感じていたのか「『久保戦で大沢は終わった』と言った人達に、もう一度世界で戦える力があることを見せる」と宣言し、有言実行してくれました。現在WBA五位で再びの世界戦が視野に入って来ました。恐らく年齢的にも最後のチャンスとなるであろう試合は実現するのか?今年も彼のことを追いかけていこうと思っています。

 四月五月の興行集中の意味が分からない(旧徳山と長谷川が好きです)

大沢宏晋が世界7位をKOして再起 再び世界へ

大沢宏晋選手についての過去記事はこちらから 
       ↓
大沢宏晋選手過去記事へのリンク

詳しくは過去記事をご参照いただきたいですが、2012年にJBCの内部抗争に巻き込まれてライセンスを止められた大沢選手は、明らかに不当な処分にも腐ることなくキャリアを積み上げて、何度も這い上がって道を切り開いてきました。

今年四月の元世界チャンピオン久保隼選手とのサバイバルマッチに敗れて、引退も囁かれましたが試合内容が不完全燃焼だったことから再起を決意。今回早いタイミングでコロンビアの世界ランカー、ベルマー・プレシアド選手との再起戦が組まれました。

とはいえ大沢選手の年齢はもう33歳。久保戦のもどかしい試合内容から年齢的衰えを指摘する声はあります。43戦という試合数や復帰から約5年に渡ってほぼランカーやチャンピオンクラスとしか試合しかしていないことからくる目に見えないダメージの蓄積も心配です。まだ活躍を見たい、しかし果たしてまだ力は残っているのか?正直ファンの側も、試合が始まるまで確証をもてない状態であったと思います。

さらに今回の試合前には、12月11日の最終仕上げのスパーリングで腰を痛めるというアクシデントが実はあったのです。二日連続で8Rと6Rというロングスパーの予定だった大沢選手は、二日目の最初のラウンドでパンチを放った際に腰をひねって結局予定の6ラウンドを5ラウンドに短縮して最終スパーを終了。私はその日たまたま見学に行っていたので、腰の痛みから苦悶の表情でジムの床に横たわる大沢選手の様子を間近で見ていました。翌日ご本人から「少し痛めただけで回復できます」という連絡は貰っていたものの、心配なことに変わりはありません。メニューをこなした後だったことが不幸中の幸いで、調整中に怪我をした場合に比べれば影響は少ないですが、ファンの目線からすれば不安がよぎります。

大沢選手はしきりに「今回は調子が良い、スランプから抜けました」と言っていたのに、こんなタイミングの怪我で歯車が狂ってなければいいが…。

そんなこんなで多少不安を持って会場に行ったのですが、結論から言うと皆さんご存知のとおり心配は杞憂に終わりました。
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大沢選手は序盤からジャブが良く出て、接近時の避け勘もよく、ボディで弱らせて上で仕留めるという王道の組み立てから、終盤に強打をまとめて二度ダウンを奪ってタオル投入でKOする完勝。プレシアド選手は出入りが速く当て勘もある好選手でしたが引き出しの差が出た内容だったと思います。

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大沢選手は9Rに強烈なワンツーを当ててプレシアドをギブアップさせるとコーナーに駆け上がって、溜まっていた鬱憤を晴らすかのように喜びを爆発させました。世界7位に明確な差をつけて完勝。再び世界を狙える力を見せてくれました。

右のパンチ力がついたことで決定力に頼ってやや強引になっていたのを、ガードの位置を少し下げてジャブの出をスムースにしつつ視界も確保するスタイルにチェンジしたことでバランスが良くなり、それにプラスしてベテランらしい駆け引きと左右のパンチをバランスよく出せる引き出しの多さも加わって、更に強くなったなと感じさせる内容でした。接近時のボディ撃ちにもかなり進境が見られたと思います。

とはいえ中盤は昨年から久保戦まで続いていた密着で膠着する場面も多く、今後フェザー級のフィジカルが強い選手と当たった時は課題になるなとも感じました。中間距離を嫌って密着してくる相手を、ジャブで突き放すのか相手を引き出して足を使って得意な距離を作るのか、そこがポイントになってくると思います。

試合前大沢選手は何度も「『大沢は終わった』と言ってる人たちに、世界で戦える力があることを見せます」と言っていましたが、まさに有言実行。来年以降も更に楽しみになる試合でした。

それとメインを務めた辰吉寿以輝選手。回転の良い連打を反応良くガードの間に打ち込む小気味良いボクシングを見せての圧倒的なTKO勝ちで、自分にとっては期待を遥かに上回る素晴らしい内容。

「男子、三日会わざれば刮目して見よ」というのを地で行く成長振りで、こちらも来年以降が楽しみになりました。

来年も会場に行く楽しみができて、良い気分で会場を後にすることが出来ました。大沢選手には来年世界のチャンスがあるといいですね。

OPBFのラウンド4分インターバル2分問題を取材中の(旧徳山と長谷川が好きです)