HARD BLOW !

ボンクラ台北紀行

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21世紀台北のシンボル『台北101』

 というわけでGWは家族も仕事も居並ぶボクシングのビッグマッチもほっぽりだして台湾にいた『旧徳山と長谷川が好きです』です。実は台湾は20ウン年前の大学時代に一度訪問した事があります。海賊版のマンガや洋楽カセット(CDはあんまりなかった)、ゲームソフトを買いあさるという青春を無駄使いするような旅をしていたあの頃…。当時は「地球の歩き方」片手に海外に自由旅行に行くというカルチャーが大学生に定着し出した時期でした。一ドルは180円くらいだったと思いますが、バブル景気に浮かされた男女が沢山海を渡って行きました。当時の女子は随分外国人男性に貞操を捧げたことでしょう(遠い目)。10代、20代の皆さんはお母さんに「ところで初めての人は外国人?」と聞いてみてください。怒り出したら怪しいです。

 まあ昔話は置いといて、ひょんなことから今回は副業でやってる映像作家として某音楽家のライブツアーに映像効果担当兼、記録撮影要員として参加する運びとなり慌しく今話題のLCCでチケットを手配し関空からの機中の人となりました。さて、その運賃ときたらGW中にも関わらず格安の往復大三枚也。ところが早々に競合LCC会社のチケットを取ったミュージシャン氏は往復大二枚だと言うから驚くばかり。シーズンオフなら高速バスで名古屋に行くくらいの運賃で台北やソウル、上海に行けると言うんだからエライ時代になったもんです。今回の一行はミュージシャン、パフォーマー、映像作家の自分という中年三人旅。他人様から見れば完全にエロ親父の一団に見えたことでしょうが、ちょっと待ってください!売春が厳罰化された上に物価が上昇した台北はもはや、中小企業の社員旅行が群がった往時の中年の天国じゃないんです!実際のところ20ウン年ぶりの台北の印象といえば、とにかく清潔、ハイテク、オシャレ!四人家族が一台に乗って爆走していた原付、街中に落ちていた檳榔のカスやオヤジの痰ツバやタバコの吸殻、見るからに不衛生な屋台、海賊版しかなかったマンガ本や音楽・ゲームソフト、日本人のオヤジと年の離れた女性のカップル、みんなどこに行ったの!バイクはみんなヘルメット着用で信号も停止線も守る!ゴミは清潔員がきれいに清掃!タバコはどこもかしこも禁煙!檳榔売ってるけど年寄りしか買ってない!屋台はセブンとファミマにやられて激減!マンガやソフトは全部正規版で日本より高い!地下鉄もバスもピカピカ!中国語圏なのにみんな行列守る!公共の場所で静か!怒鳴り合いもなし!どこもかしこもWI-FIだらけ!大規模開発で町並みきれい!街行く女性は日本の都市部の女子のようなゆるふわファッション!男連中はチャラチャラ!でも年寄りには席譲る!(これは昔から)20年でここまで変るもんかとただただ驚いたわけですが、それもこれも民主化による数々の政治的な自由化とアジア通貨危機をほぼノーダメージで乗り切った見事な経済運営の結果でありましょう。こういう変化を寂しく感じない訳ではありませんが、所詮それはたまにやってくる無責任な外野の意見。社会の健全な発展は総体としてはとても眩しいものです。台湾社会もまた新卒学生の就職難や少子高齢化など日本と同じ問題を抱えており、丁度滞在時は年金改革の方針に対するハンストが連日ニュースで報道されていました。それとマレーシアの総選挙も注目の的。聞けば中国本土から来た国民党の残党が政治や経済の中枢を握っているという相似性が関心の理由なのだとか。中共の動向も併せて華人の影響力の大きさが地元民の反感を相当買っているようです。とはいえ民主化後は愛国教育は退潮し、映画上映前の国家吹奏ももうなくなっていました。

 今回のツアーは台湾の某インディレーベルの仕切りで、我々の面倒見てくれたのは日本に長期留学していたFくん。彼は単なる裏方でなくミュージシャン・パフォーマー・デザイナーをこなす才人で、我々にとっては台湾アングラシーンの水先案内人でもあります。中学生くらいから日本のマンガにハマり、宮沢りえの「サンタフェ」に股間を熱くし、最近は『TENGA』にもハマった(TENGAのケースを楽器にすることもアリ)というボンクラ具合が嬉しい彼は35歳。日々積極的に仲間とイベントを打ち、台北のカルチャーシーンをかき回すそんなFくんの導きでステージをこなしていったのですが、とにかく現地のスタッフも出演者も客も日本文化大好き野郎ばかり。「台湾は親日的だよ」という情報くらいは知ってましたが、「日本のサブカルチャーやファッション大好き!」という表層から見える以上に深く浸透した日本文化のありようは「そこまで知ってなくてもいいんじゃねえ?」と心配になるレベル。80~90年代のノイズ音楽シーンのレコードやカセット、VHSを持参して嬉々として話しかけてくる濃ゆ~いマニアが連夜来場し、友人になった台湾ヤングに聞いたメールアドレスはと言えば日本の若モンには一切縁の無い80年代のノイズバンドや70年代のアングラ演劇にオマージュを捧げた文字列ばかり。「スラムダンクが好き」とか「AKBが好きとか」という水深から何千メートルも潜った水域に深海魚がウヨウヨ生息しているのです。当のミュージシャン氏が「俺も忘れてたよ。良く知ってるな~」と感心するようなブツを次々持参するマニアの存在を知ったことはこの旅の一番の収穫であり、また驚きでもありました。

 最後の公演が終わった夜、打ち上げがてら当地の呑み助が「面白い店に連れて行ってやるよ」と誘ってくれたのは中国南部の郷土料理とロックのレコードが楽しめる飲み屋。高齢のマスターは雲南出身でビルマ育ちで、少年時代に国共内戦に敗北した国民党軍と一緒に台湾に敗走してきた人。タイ・ビルマの国境地帯で麻薬王国を作って実効支配していたクンサーも雲南出身の国民党軍の残党だという話ですがまっことこの辺の話も興味がつきません。マスターは台湾ビールやアルコール度58%の高粱酒ドバドバと開栓し、「日本人が来たから」とフィンガーファイブや谷村新二のレコードをひっぱり出してきたかと思えば、70年代のマレーシア産特濃ロックのコンピレーションや物凄く貴重な台湾の放浪歌手の史料価値の高いレコードなど激レア版を聞かせてくれたりの最高のもてなしでありました。ひばり
マスター所有のひばりのレコード

58度
アルコール分58度 でも飲みやすい 悪魔のようなヤツ

 大都会台北にずっといても面白くないのでツアーの合間ちょっと地方に足を伸ばそうかいなと台北駅から衝動的に汽車に乗ってみると、どうも様子が変なもんで掃除のオバちゃんに切符を見せると「あらまー」と驚いて車掌さんを呼んで来てくれる。車掌さんは英語で「アンタ次は終点だよ何やってんの?」と呆れ気味。するとそこに日本語がペラペラのサービス係が現れ「この電車はあと二時間はとまらないっすよ」とグリーン車的な車両に通される。軽率な自分は「どうもすいません。適当に乗ったもんで。お金は払いますけん」と平謝りすると「なんか車掌さんは『面倒くさいからもういいよ』って言ってます。まあ折角なんで景色を楽しんで行ってください」と余りにも優しいお言葉。嗚呼恥ずかしい日本人。同胞の皆さんすいません。終点の地方駅の手前でもう一度さっきの日本語が出来るスタッフが現れ「みんな心配してますけど台北まで帰れますか?一応列車の時間書いておきました」と手書きの時刻表まで渡される始末。初めてのお使い状態!あなはずかしや、ほうほうの体で下車し精算所で乗り越し清算しようとするとそこでも「面倒くさいからとっとと出ろ」と改札のオジサンにジェスチャーで促されまんまと改札の外へ。折角なのでイイ味の地方都市を散策し台北まで折り返しましたが台湾の方のビッグハートにオンブにダッコの小旅行となりました。

地方都市の犬
地方都市の駅

マーロン・ブランド
ゲーセンの壁のマーロン・ブランド
 
 折角台湾まで来たのですからプロスポーツでもという事で台湾プロ野球=職棒を観戦。ちなみにプロバスケは職籃だそうです。近年は元タイガースの悪童中込が逮捕されたことでもお馴染みの八百長スキャンダルで人気も低迷しているということですが、WBCではなかなか骨っぽい強さを見せたりと侮れないリーグであります。野球賭博報道
野球賭博挿絵

八百長グループの主犯が殺されてドラム缶詰めにされたという事件を報じる記事

私が行った台北に至近の新荘球場は椰子の木がお出迎えするアプローチもイイ味出してるなかなかのボールパーク。那覇のセルラー球場にちょっと似てる。
新荘 1
南国情緒溢れるスタンドへのアプローチ

入場料はネット裏でも千円程度。プレイの方はと言えば正直NPBに比べればレベルは高くないですが、八百長スキャンダルを受けて本当に好きな人だけが残っているであろう球場の雰囲気は熱くピースフル。拡声器と太鼓のリズミカルなチャントに耳を傾けながらビール片手に五月の夜風に吹かれれば気分は最高。球場をぶらぶらと散策しているとネット裏に乳飲み子を二人連れた白人女性が。多分その日の先発だった外国人ピッチャーの妻であろう彼女は子供をあやしながらグランドを見つめていました。野球が出来る場所を求めて遠い極東の南の島にやって来たであろう彼らの運命を思うと不思議な気分になりました。今後も台湾の市民の憩いの場として職棒がしぶとく生き残ってくれんことを祈るばかりです。
新荘 2
若い娘も熱烈応援する中華職棒

 気に入ったのでまた近々行きたいと思います 

 台湾ビールの飲みすぎでゲロ吐いたダメ人間の(旧徳山と長谷川が好きです