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HARD BLOW !

明けまして おめでとうございます。

年頭にあたり 皆さまのご健康と 益々のご活躍を 心よりお祈り申し上げます。

若いファンの純粋無垢な熱に、まだまだこれからだぞと励まされる今日この頃。
ボクシングにはやはり力がある!という認識を新たにしております。

本年もご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いいたします。

あらためて時代を変えるものは青雲の志しと熱であると思うB.B

謹賀新年 2017年

あけまして おめでとうございます!

旧年中は、皆様のご指導ご鞭撻を賜り 誠にありがとうございました。

ボクシング界にとって、また激動の年を迎える事になりますが、

私たちも初心を忘れることなく、活動して参りたいと思います。

年頭にあたり、

選手の健康とボクシングの発展、

そして皆様のご健勝を 心よりお祈り申し上げます。

本年も、どうぞよろしく お願いいたします。



HARD BLOW ! 一同






感想文「狂気に生き 第二部」vs「アンチェイン」

友人から一冊の本が送られてきたので読んでみました。「狂気に生き 第二部」(佐伯泰英・著、新潮社)。金平毒物オレンジ事件のルポです。

具志堅と二度戦ったリゴベルト・マルカノをベネズエラに訪問、帰国後元トレーナー氏へのインタビューと書簡の交換、協栄関係者とセキ・ジムへの取材、ジョー小泉の存在、そして裁判へ。

読み進めながら感じたことは、ボクサー達が戦うリング、その舞台裏で繰り広げられる様々な工作活動の存在である。噂やフィクションの世界で真偽定かならぬ出来事として語られてきたそれらが、ここでは事実として語られる。その生々しさに衝撃を受けました。

そして著者の周到で粘り強い取材。マルカノの敗北の瞬間を撮った著者が、なぜあの日ペレア(戦い)を撮れなかったのか。証言の錯綜、混迷。読み物としてサスペンスを湛えながら、事件の真相はあの日の疑問への答えとともにある一点に収斂していきます。この取材は著者の魂の旅、存在証明の旅でもあるのです。

旧徳さんは本書を「一瞬の夏」と並ぶ歴史的な一編として紹介していましたが、後者に比べて本書の知名度は低いと言えます。ボクシング界にとっては汚点であり、触れられたくない部分を扱っているからでしょう。ネット上の情報も、この事件に関しては極めて少ないように思います。事件自体がネットが普及する以前の古いものであるからということはあるでしょうが、事が事だけに関係者もファンも積極的に語りたくないということはあるでしょう。そうして情報自体が表に出てこなくなったということなのではないかと思います。

1982年、世間的にはJBCによる金平会長の永久追放で幕引きが行われたこの事件。当時でも臭い物に蓋的な対応で、真相究明は行われなかったことに不信感を持ったことを覚えています。そうして本書が刊行されたのは1986年。

そして今、実名で書かれている本書を取り上げることには、それなりに考えてしまうところがあるのも確かです。

しかし私は思うのです。ボクシング界の暗部を掬い取り、白日の下にさらすことは、一時的には不信と人気低迷につながるとしても、ボクシングに関わる人間達の誠実さと真実を求める心を証明する意味では大きな意味を持つのだと。

あってはあらないことがあったということ、そうして今もあるかもしれないということ。そのことを警鐘し続ける本であると思います。

凄い本だな、と思いました。

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同梱のDVD「アンチェイン」(映画)も見てみました。

4人のボクサー及びキックボクサーの運命の交錯を追ったドキュメント映画です。

人間はただ生きているだけでは満たされない。いつも何かを求めて戦わずにおれない。そういった4人を描いた作品です。

それにしても激しい。

彼らは自分たちのつながりを友情ではないという。おそらく言葉にするにはあまりに繊細なものであるのでしょう。

彼らの「間」に何かがあるとしたら、たとえ一勝もできなくてもボクサーにとってリングとは魂の解放区なのだいうこと、ただそのことだけなのかもしれません。

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仲間と集まり深夜に及んでボクシングのことで話し込んでいた時、ウチ猫さんが「こんな時間までおっさんたちがボクシング談義(12時間以上)してるってのは、頭オカシイっすよね!!」と言って一同大笑いしたことがありましたが、たしかにボクシングに関してはみんな狂気を抱えているのかもしれません。

by いやまじで

日本人はタイでダンスできるか? 佐藤vsシーサケット Preview

佐藤洋太の三度目の防衛戦はタイのシーサケット県で行われる。挑戦者シーサケットの地元故郷である。

日本人のタイでの初の防衛という記録より、タイで佐藤がどのように戦うかが見ものだ。

これまでタイの世界戦を見る限り、試合前のセレモニーが異様に長いという印象がある。30分はあるのかと思われる間、30℃を超すリング上でゴングを待つというのはアウェーの選手にはメンタル面での負担が大きいはずだ。もっとも、それ以外にも諸々の障害があるだろうが。

挑戦者のシーサケット(18勝(KO 17) 3敗(KO 2) 1分)はオーソドクスのボクサーファイター。

2012年1月のDondon Jimenea戦はこの選手の特徴が出ているように思われる。

ベタ足で前進、左リードを軸に、左右のコンビネーションを3発4発と連ねる。左はジャブ、ダブル、上下のフック、ワンツーの返し、アッパーと変化がある。右も上下に打ち分ける。軽いパンチ重いパンチの使い分けもする。軽く速いパンチで相手を崩し、機を見て強いパンチを織り交ぜる。スイッチする器用さも見せている。

同年7月のDuran戦


同年12月の Alvin Bais 戦では上にパンチを見せてボディ・ショットでKO。


踏込のスピードは速くないが、自分の距離になった時のパンチの回転と正確さはある。前進するファイターだが、相手を見ながら押し引きもできる。打ち終わりも狙ってくる。けっこうボディを打つ。あとは頭。佐藤相手であればこれまで以上に距離をつめる必要があるからバッティングには注意が必要である。

この選手の問題は全体のレベルで、佐藤とボクシングできるレベルにあるのかどうかということ。「当たれば」というパンチの強さもこのレベルでは未知数である。(だから逆に怖さもあるが。)近い距離でのコンビネーションには要注意である。

試合内容や戦績を見る限り佐藤の優位は動かないが(私の予想は佐藤の判定勝利)、試合がタイで行われるということで、佐藤がこれまで通りに戦うことができるかどうか。敵地ということが実力差を縮めることはある。とりわけ当地の空気は日本の会場のそれとは異なる。その中で挑発的なポーズやステップを見せるのか(別に見せなくてもいいが)。日本では「魅せる」ことも多分に意識するところがあろうが、敵地でもそれをやるのか。何かどうでもいいことのようで、彼の場合どうでもよくないような気がして、技術・戦術的なことを含めてなかなかに興味深いのである。

佐藤自身は「タイで遊んでくる」とコメントしていて、これは平常心で臨むための彼なりのメンタルトレーニンングであろうが、いずれにしてもタイで試合をやるには気を遣うということである。やはりリングでどこまで相手に集中できるか。それが双方にとって鍵である。

byいやまじで

海外日本人ボクサーの苦闘と充実

3月30日、海外で2人の日本人ボクサーが世界に挑む。

一人は既報の高山勝成選手(24(10)-6(1)-0)。南アの強豪ジョイ(南ア)からIBF世界ミニマム級タイトルを奪ったマリオ・ロドリゲス(メキシコ、15(11KO)-6(1)-4)に挑む。場所は敵地メキシコ、シナロア州グアサベ市。ロドリゲス選手の地元である。

高山選手と中出トレーナーのブログからは、順調な調整ぶり、30時間の移動、当地の暑さ(38°超?)、等々がうかがえる。
現地記者会見
中出トレーナーのブログ
グアサベ市は人口33万人の中都市、海岸平野地帯でメキシコの農業の中心地とされる。海抜27mと高地馴化の必要がないのはよいが、試合会場が野球場(Estadio de Beisbol)らしく、これは気温が心配である。
グアサベ市(wiki)
試合ポスター

ロドリゲスには初防衛と地元凱旋のプレッシャーがかかる。激しい戦いになると思うが、高山には冷静に戦ってベルトを奪い取ってきてほしい。

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もう一人が石田順裕選手(24(9KO)-8-2)。現在ミドル級でKO街道驀進中のGゴロフキンWBA世界ミドル級王者(26(22KO)-0-0)に挑戦である。

石田選手といえば、ベガスにおけるカークランド戦のアップセット以降、Pウィリアムス、ピログ(WBO世界戦)と、ビッグネームとの対戦が続いている。今回は1月にNYでのダニエル・ジェイコブス戦が決まりかけたようだが、2月にはいって一転モナコでのゴロフキン戦が決まった。

ゴロフキン…パンチの強さもそうだが、とにかく体全体の強さを感じる。低い重心でグイグイ前進しながら鋭く強いパンチを振るってくる。スピードもある。身長では石田選手が8cmほど上回るが、リーチにさほど差はなく、石田選手のアドバンテージは少ない。記者会見では石田選手こんなことも言っていたらしいが、ゴロフキン相手にどんな戦いをするのか。個人的にはゴロフキンの直線的な動きを石田選手がどこまでつけるかに注目したい。

もともとWBA暫定世界SW級王座に就いた石田選手だが、決定戦の経緯からその実力について私自身疑問視していた。しかしPウィリアム戦、Dピログ戦を見る限り、この階級で頂点にいるとは言えないにしても、ボクサーとしてのクオリティを証明し続けていると思う。これは素晴らしいことだ。

またモナコで行われるこの試合、ボクシングの聖地再建をもくろむ大がかりなイベントらしくアメリカでもPPVで放送される。
モナコ興行詳細
試合ポスター

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日本で引退届を出し、海外でフリーのボクサーとして活動する2人(石田は既にライセンス再交付を認められた)には、練習面でも経済面でも困難がつきまとうことがブログなどからうかがえる。しかしその一方で、彼らの活動を支える人たちの思いと、チャンスをつかみ世界の戦いの場に立つ彼らの心の充実も感じずにはおれない。

日本でIBFとWBOが解禁される直前の3月30日(高山選手にとってはちょうど一年前ジョイⅡを戦った日)、二人の日本人ボクサーが、海の向こうで勝利の雄叫びをあげることを期待したい。

by いやまじで

追記 ゴロフキンvs石田戦は4月1日WOWOWで放送予定である。高山の試合は何とかネット観戦しようと思う。