FC2ブログ

HARD BLOW !

OPBFバンタム級タイトルマッチにおける計時ミス事件の背景を考える

明けましておめでとうございます。本年もHARD BLOW!をよろしくお願い致します。

というわけで今年も早速本題です。

昨年末12月24日に大阪市の住吉区民センターで行われたOPBFバンタム級王者決定戦、栗原慶太VSストロング小林祐樹戦において、6ラウンドの時間が4分になりその後の6Rと7Rの間のインターバルが2分になるという信じられない計時ミスが起こりました。

試合における時間管理は言うまでもJBCの責務であり、当然ながら検証と当該責任者の処分とその後の対策が必要になります。

今回のケースでは、栗原選手が所属する一力ジムサイドの関係者が試合直後からブログやSNS上でこの問題を告発する異議申し立てを行ったことで、試合映像が見れない状態でファン・関係者にいち早く情報拡散が行われた結果多くの議論を呼んでいます。その一方で、本来ならいち早く当事者から事実関係を取材して記事化するべき専門誌やスポーツ紙と言ったメデイアはほぼ黙殺状態といいますか見事なダンマリぶりであります。

というわけで当HARD BLOW!は試合役員や関係者に取材しました。今回は我々なりの観測を記事にして皆様のご検討を仰ごうかと思います。

そもそも今回のトラブルがファンや関係者の注目を浴びたのは、舞台がタイトルマッチであった上に、六島ジムのストロング小林祐樹選手がすべて異なるラウンドで実に4度もダウンしていながら、採点結果がジャッジ三者とも113-111の僅差であったということが大きな理由になっています。文字情報だけを見ればダウンだけで8点差がつくはずで、スコアが僅差になりようがない試合展開のはずなのに結果は僅か2点差。しかも試合の舞台は勝った栗原選手にとってはアウェイの関西であり、ファンがヒートしやすい東西対決という部分でも憶測や邪推を生みやすい下地がありました。勝った一力ジムサイドが積極的に情報発信しているのも、「アウェイでおかしな試合運営をされた」という不信感が根底にあるのだと思います。

しかし、私は六島ジムサイドがあたかも不正を働いたかのように主張する向きには「ちょっと待って」と言いたいのであります。

ラウンド時間やインターバルが長くなれば当事者は勿論、関係者や観戦していたファンが黙っているはずもなく、そのような不正に有効性があるとは皆目思えません。議論を呼んでいる採点も、関東の福地氏を含むジャッジ三者がすべてのラウンドで全く同じスコアをつけるという珍しい結果で、こちらも「不正ならこんな露骨なことするかな?」と感じます。

s_スコア


(スコア画像はツイッターより拝借致しました→https://twitter.com/5910boxing/status/1077121918879227904)

試合をした当事者である栗原選手も自身のブログで

『動画を見れる方は見て頂けるとわかるはずですが採点は完全に事実です(笑)/ジャッジも東京から来て頂いてる方もいたので完全に公平です。/ダウンをとったラウンド以外は9R以外全て取られました。』

とはっきりと書いています。以下のリンクをご参照ください。
         ↓
栗原慶太のブログ 試合結果ご報告

「ダウンをとったラウンド以外すべてをとられるなんてことあるの?」という疑問を持っておられる方は、現在配信サイトで公開されている試合映像をみて検証されると良いと思います。
    ↓
ボクシングレイズ 栗原慶太VSストロング小林祐樹

この動画で6ラウンドが4分であったことは確認できます。また筆者は6Rと7R間のインターバルが二分であったことも別の動画で確認しています。

また栗原慶太選手のセコンドについていた萩原篤トレーナーはFacebook上で真相究明を求める投稿を行っています。
      ↓
萩原篤トレーナーのFacebook

また萩原氏のブログにも栗原選手コーナーから見た当日の経緯が詳細に書いてあります。
      ↓
ラスト30秒の奇跡! 栗原 東洋太平洋王座獲得‼

萩原氏は「5Rの大詰めに栗原選手が奪ったダウンで試合を止めるべきだったのではないか?」という旨の主張をされていますが、ダウンはラウンドの最終局面であり、カウント中に立ち上がった小林選手がインターバルで回復することは十分予測できる場面でした。むしろあそこで試合をストップしたほうが後々禍根を残していたと思います。

そもそも大前提として、試合の時間管理をするのはJBCの責務であり『アウェイの洗礼』だなんだという前に試合時間がおかしければ第一義的にJBCに責任があります。当事者が疑心暗鬼になるのは分かりますが、試合を見てもいないファンや関係者が原因も定かならないうちから、プロモーターの意向で意図的に時間が延ばされたかのように騒ぎ立てるのは短絡であると思います。


筆者が今回のトラブルの原因と考えているのは、あくまでJBCの内部統制の問題であり、単にJBC組織内部の混乱から現場力が低下した結果、考えられないほど低レベルのトラブルが起きているに過ぎないのではないか?ということです。

計時ミスの経緯を試合映像をもとに振り返ってみます。

5R終了間際に栗原選手が放ったカウンターの右ストレートがヒットし小林選手は崩れ落ちるようにダウン。栗原選手のセコンドについていた前出萩原篤トレーナーのブログ記事より以下引用いたします(引用部分は青文字)。

元記事へのリンク→『ラスト30秒の奇跡! 栗原 東洋太平洋王座獲得‼

5ラウンド その悪い流れを断ち切るように
終了間際 左フックで強烈なダウンを奪う!
もう3分は過ぎている でも相手の足元はグラグラ
しかしレフリーは試合続行を指示

『おい! こんな状態でやらせるのかよ!』
 レフリーに叫ぶもこっちを見ようともしない
やはりここは敵地大阪
(引用以上)

栗原選手サイドにとってはTKOが望ましいわけでストップしてほしいという気持ちは分かりますが、先述したようにこの裁定はさほどおかしいものとは思えません。現に小林選手は最終ラウンドまで戦い抜き、判定が僅差になるまで栗原選手を追い詰めているのです。

問題はこの後です。

映像を元に再現します。まず栗原選手サイドのセコンドがレフェリーに何かアピール。これは萩原氏のブログにもある通り「なぜストップしないのか」ということを伝えたのでしょう。それに対してレフェリーは対応せず黙殺します。すると今度は、小林選手のセコンドについていた六島ジムの枝川孝会長がレフェリーに何事か訴えますが、こちらもレフェリーは無視。すると枝川氏はエプロンづたいに本部席の上まで移動して、本部席の役員やインスペクター(西部日本事務局の小池幸弘氏)に大声で抗議を始めます。一体何が起こったのでしょう?

筆者が話を聞いた試合役員A氏はこう証言します。(発言部分は赤文字

「枝川会長は『さっきのダウンはゴング後の加撃で反則じゃないのか?』とアピールしたのにレフェリーに黙殺されたので、本部席の試合役員やJBC職員に向かって抗議を始めたのです」
 
ラウンド終了直後に枝川氏がレフェリーを手招きして何か伝えようとしている姿は試合映像にも写っています。ただその前に栗原選手のセコンドのアピールも受け流されており、レフェリーにすれば一方のアピールだけに対応するわけにはいかなかったのかも知れません。この辺はあくまで推測です。

プロモーターである枝川氏の抗議を黙殺するわけにもいかず、本部席は対応に追われて混乱。結局インターバルの終盤に、本部席にいたJBC職員からレフェリーに対して『パンチがゴング後かジャッジに確認せよ』という指示が出て、レフェリーが各ジャッジに確認して問題なしという判断が出て、枝川会長も試合が再開するということでコーナーに戻って抗議は一旦収束しました。

栗原選手サイドが試合をストップしないレフェリーの裁定に不満を抱いたように、小林選手サイドのセコンドもレフェリングに疑問を呈していたわけです。こうしたアピールは試合ではよくある事であり、特にタイトルマッチとなれば常にレフェリーやスーパーバイザーは両陣営のアピールに対して身構えて、勝敗に影響が生じないよう鋭敏に対処する必要があります。

先述の試合役員A氏は当時の対応の問題点を以下のように分析しました。
 「レフェリーがアピールに対応しないなら、混乱が大きくなる前に経験のあるジャッジがその場でレフェリーに呼び掛けてゴング後の加撃かどうかジャッジに確認させて、結果を小林側のセコンドに伝えるべきでした。ジャッジもレフェリーへの補佐が出来ていなかった。そもそも5Rの最後小林選手が立ち上がってボックスがかかってからゴングが鳴るのがすでに遅かった。もうあの時点でタイムキーパーはおかしかったんです」

A氏によると、この日現場の歯車がうまく機能しなかったのにはある事情があったのだといいます。

「この日のスーパーバイザーは本当は東京本部の浦谷信彰事務局長でした。ところが前日になって急用(筆者注:その事情も大変問題なのですが現在は詳細が分かっていないので割愛します)で来阪できなくなり、西部日本の小池さんに急遽お願いして来てもらっていたのです。本来は本部席にセコンドが抗議に来たら、スーパーバイザーが『ジャッジに確認するからコーナーに帰りなさい』と言わなきゃいけないのですが、連携が悪くてうまく対応出来なかったのでしょう」

スーパーバイザーが九州から前日に急遽呼ばれて来た人なので、ぶっつけ本番で馴染みのないセコンドや試合役員との意思疎通が円滑にいかなかったのではないか?というのです。

さらに本部席のJBCの陣容に根本的な問題がありました。

「この日のタイムキーパーが新人だった上に補佐役がいなかったのです」(試合役員A氏)

経験の少ない新人タイムキーパーがなぜかタイトルマッチに登用されていた上に一人で時間管理をしていたというのです。なぜこんな杜撰なことが起きたのでしょうか?

「岡根英信氏が(関西事務局長を)解任された後、実質的に現場を統括している関西事務局のJBC職員S氏が、経費削減というという名目でタイムキーパーを二人から一人にしてしまったのです」(試合役員A氏)

いうまでもなく1ラウンド三分問というのは小学生でも知ってるボクシングの基本中の基本ルール。そこがゆるがせになっては競技の根幹が揺らいでしまいます。新人タイムキーパーが登用されたのは、あの日たまたま興業が重複していたから仕方がないという意見もあるかも知れませんが、西日本であれば同日に3つの興行が重複することもままあります。もしそれで試合管理が手薄になりミスが起きるならJBCの組織に根本的な問題があるということです。

「本来はタイトルマッチのほうに経験のあるタイムキーパーを持ってくるべきなのに、新人をタイトルマッチにつけた結果今回のトラブルが起こっている。ミスした本人を処分して済ますつもりなのかも知れませんが、責任があるのは新人を登用した側です。試合役員の構成はJBC本部の承認を得ているわけですから関西事務局だけの問題でもないんです。S氏は『タイムキーパーが足りないなら手の空いてるレフェリーやジャッジがやったらいい』と言うんですが、適正なレフェリングや採点をするには集中力がいります。休みなく仕事に追われていたら集中力が持ちません。タイムキーパーだって漫然とやれる仕事じゃない。経験がいるんですよ」(試合役員A氏)

亀田ジムとの泥沼裁判の判決を控えてますます財政がひっ迫しているとも言われるJBCですが、貧すれば鈍すで現場軽視に陥ってるとすれば命がかかっている選手は安心してリングに上がれません。

どうか専門誌やスポーツ記者の皆さんで今回の事件の経緯をより詳細に取材し、原因を明らかにして頂きたいと思います。

新ペンネームを考案中の(旧徳山と長谷川が好きです)

大沢宏晋が世界7位をKOして再起 再び世界へ

大沢宏晋選手についての過去記事はこちらから 
       ↓
大沢宏晋選手過去記事へのリンク

詳しくは過去記事をご参照いただきたいですが、2012年にJBCの内部抗争に巻き込まれてライセンスを止められた大沢選手は、明らかに不当な処分にも腐ることなくキャリアを積み上げて、何度も這い上がって道を切り開いてきました。

今年四月の元世界チャンピオン久保隼選手とのサバイバルマッチに敗れて、引退も囁かれましたが試合内容が不完全燃焼だったことから再起を決意。今回早いタイミングでコロンビアの世界ランカー、ベルマー・プレシアド選手との再起戦が組まれました。

とはいえ大沢選手の年齢はもう33歳。久保戦のもどかしい試合内容から年齢的衰えを指摘する声はあります。43戦という試合数や復帰から約5年に渡ってほぼランカーやチャンピオンクラスとしか試合しかしていないことからくる目に見えないダメージの蓄積も心配です。まだ活躍を見たい、しかし果たしてまだ力は残っているのか?正直ファンの側も、試合が始まるまで確証をもてない状態であったと思います。

さらに今回の試合前には、12月11日の最終仕上げのスパーリングで腰を痛めるというアクシデントが実はあったのです。二日連続で8Rと6Rというロングスパーの予定だった大沢選手は、二日目の最初のラウンドでパンチを放った際に腰をひねって結局予定の6ラウンドを5ラウンドに短縮して最終スパーを終了。私はその日たまたま見学に行っていたので、腰の痛みから苦悶の表情でジムの床に横たわる大沢選手の様子を間近で見ていました。翌日ご本人から「少し痛めただけで回復できます」という連絡は貰っていたものの、心配なことに変わりはありません。メニューをこなした後だったことが不幸中の幸いで、調整中に怪我をした場合に比べれば影響は少ないですが、ファンの目線からすれば不安がよぎります。

大沢選手はしきりに「今回は調子が良い、スランプから抜けました」と言っていたのに、こんなタイミングの怪我で歯車が狂ってなければいいが…。

そんなこんなで多少不安を持って会場に行ったのですが、結論から言うと皆さんご存知のとおり心配は杞憂に終わりました。
試合5_R

試合4_R
大沢選手は序盤からジャブが良く出て、接近時の避け勘もよく、ボディで弱らせて上で仕留めるという王道の組み立てから、終盤に強打をまとめて二度ダウンを奪ってタオル投入でKOする完勝。プレシアド選手は出入りが速く当て勘もある好選手でしたが引き出しの差が出た内容だったと思います。

試合3_R

大沢選手は9Rに強烈なワンツーを当ててプレシアドをギブアップさせるとコーナーに駆け上がって、溜まっていた鬱憤を晴らすかのように喜びを爆発させました。世界7位に明確な差をつけて完勝。再び世界を狙える力を見せてくれました。

右のパンチ力がついたことで決定力に頼ってやや強引になっていたのを、ガードの位置を少し下げてジャブの出をスムースにしつつ視界も確保するスタイルにチェンジしたことでバランスが良くなり、それにプラスしてベテランらしい駆け引きと左右のパンチをバランスよく出せる引き出しの多さも加わって、更に強くなったなと感じさせる内容でした。接近時のボディ撃ちにもかなり進境が見られたと思います。

とはいえ中盤は昨年から久保戦まで続いていた密着で膠着する場面も多く、今後フェザー級のフィジカルが強い選手と当たった時は課題になるなとも感じました。中間距離を嫌って密着してくる相手を、ジャブで突き放すのか相手を引き出して足を使って得意な距離を作るのか、そこがポイントになってくると思います。

試合前大沢選手は何度も「『大沢は終わった』と言ってる人たちに、世界で戦える力があることを見せます」と言っていましたが、まさに有言実行。来年以降も更に楽しみになる試合でした。

それとメインを務めた辰吉寿以輝選手。回転の良い連打を反応良くガードの間に打ち込む小気味良いボクシングを見せての圧倒的なTKO勝ちで、自分にとっては期待を遥かに上回る素晴らしい内容。

「男子、三日会わざれば刮目して見よ」というのを地で行く成長振りで、こちらも来年以降が楽しみになりました。

来年も会場に行く楽しみができて、良い気分で会場を後にすることが出来ました。大沢選手には来年世界のチャンスがあるといいですね。

OPBFのラウンド4分インターバル2分問題を取材中の(旧徳山と長谷川が好きです)

MBSドキュメンタリー 『あるボクサーの死 ~精神医療を問う父の闘い』を見た

 先だって日曜日の深夜に関西地区で地上波放送されたテレビドキュメンタリー『あるボクサーの死 ~精神医療を問う父の闘い』を見ました。

毎日放送の番組HP
 
 大阪の堺市にある勝輝ジムのプロ第一号だったプロボクサー武藤通隆選手が自殺した事件について、精神医療のあり方を問うという大変に重いテーマを扱った内容でした。

 武藤さんは大阪教育大学を卒業後、高校で数学の非常勤講師をしながらプロボクサーをしていたという異色の選手でした。

 ボクシングの練習後に精神の不調を訴えて訪れた精神科で統合失調症の診断を受けて入院した武藤選手は、身体拘束や向精神薬の注射が必要な状態であるにもかかわらず病院を退院させられて、その後自殺をするにいたりました。その背景には国の精神科の診療報酬についての制度変更の影響があったのではないか?という指摘が番組中なされます。

 男手一つで武藤選手を育てたという父親の浩隆さんは病院を相手取った裁判を闘いつつ、同時に精神医療のあり方についても国に対して積極的に提言をされています。

 統合失調症の発症とボクシング競技には直接の因果関係は無いのかも知れませんが、頭部を打撃することや過酷な減量、試合の恐怖や敗戦の心理的ダメージなどのボクシングにつきものの極限状態が精神にもたらす影響については分からないことだらけです。ボクシングというスポーツを考える上でも様々な示唆にとんだ内容であると思います。

 関西ローカルの番組ですがMBSの有料動画サイトで今後見れるようになると思います→MBS動画イズム 「映像シリーズ」

 ボクシングファンには是非見ていただきたい内容だったので、ご紹介させて頂きました。

 文責 旧徳山と長谷川が好きです

再起戦はまたも世界ランカー 大沢宏晋スパーリングレポート&インタビュー

ポスター_R

 今年四月に元世界チャンピオンの久保隼選手に敗れた元OPBF・WBOAPフェザー級チャンピオン大沢宏晋選手。

 不当なサスペンドからラスベガスでの世界戦、再起ロードまで大沢選手についての過去記事はこちらから→過去記事一覧

 進退をかけることを広言して臨んだ試合だったことからその後の動向が注目されていましたが、来る12月22日に大阪で再起戦を戦うことが正式にアナウンスされました。対戦相手はコロンビアのベルマー・プレシアド選手。ポスターではWBA10位となっていますが、現在のランキングは9位。昨年フランクリン・マンザネラ選手(フリオ・セハに勝利)に勝ってランク入りした30歳です。

プレシアド×マンザネラの動画
    ↓


 大沢選手は世界戦でオスカル・バルデスに敗れて以降5試合目ですが、うち4戦が世界ランカーとの対戦で、そのうち三戦が中南米の選手です。年齢的にも常に後がない大沢選手にとっては試合自体がリスキーであるのは勿論、フェザー級近辺の世界ランカーを中南米から呼べばファイトマネーやエアチケットの経費などがかかり招請費用は高額となります。このような試合が連続して組めるのは「大沢の試合が見たい」という熱心なファンがいるからこそ。そしてお手ごろのアジアンボクサーを呼ぶ安易なマッチメイクだをしないからこそ、ファンも意気に感じてチケットを買っているわけです。
 
 試合間隔は充分ということで、11月の中旬の時点でかなりスパーリングを積んでいるという大沢選手。去る11月16日に堺東ミツキジムに出稽古に行くと言うことで、そちらにお邪魔してスパーの様子を見学してきました。

 スパーの相手を務めるのは11月25日に刈谷で東洋ランカーとの試合を控えて、調整の最終段階だった横川聡也選手(試合結果は見事KO勝ちで東洋ランク入り確実)。

スパー7_R
スパー9_R
スパー10_R
スパー5_R
スパー4_R
スパー1_R


試合直前の横川選手は右を狙った飛び込みのタイミングが印象的。一方大沢選手はキレのあるジャブとパワフルなボディが有効でした。

スパー3_R
スパー後は意見交換

 練習後に大沢選手にお話を伺うことが出来ました(大沢選手の発言は赤文字

HARD BLOW!(以下HB)「負けたら引退という覚悟で久保戦に臨んで結果的に敗れましたが、再起と言う決断になりました」

大沢「それ言われることは覚悟してます。自分は打ち合ってボコボコにされて負けたなら納得いくんですよ。でもあんな試合で『負けた』と言われてもという話で」

 その試合については当方もレポート記事を掲載しています。→一ヶ月で三つの格闘技興行を見て感じたこと

 ひたすら密着して距離を潰す久保選手が僅差判定勝ちしたものの、世界戦への期待値が上がるような試合内容では正直ありませんでした。勝たなければ人が離れる、戦績に傷がついたら後退するという構造は分かるのですが、プロとして「勝てばよい」という試合をしていればいいのか?という疑問を呈する内容になっています。実際勝った久保選手には勝ってもチャンスが来ていません。

HB「密着して打ち合いを避けるような試合をして勝っても結果的に期待値は上がらないですよね」

大沢「あの試合の後、自分よりむしろ周りの人が『あんなんで終わりやなんて冗談や無いで』って再起を後押ししてくれた感じですね」

HB「以前会場でお会いした時は『階級を上げるかも』という話もされていたと思うのですが...」

大沢「自分では分からなくても減量の影響で動きが悪かったのかな?と思ったりして...。ただ今回は対戦相手が見つかったので結局階級アップは無くなりました」

再起に向けて、技術・戦術の見直しの必要を感じたといいます。

大沢「『良かった時と何が違うんやろう』と昔のから自分の試合のビデオを何回も何回も見直して。それでガードの手の位置が高くなってることに気付いて、下げたらジャブが出しやすくなって視野も広くなって、調子が戻ってきたんです」

HB「元々ジャブの評価は高かったですけど、右が強くなってから右につなげる倒すボクシングになって、もう一回原点に戻ってバランスをとったと言う感じですね」

大沢「本当に原因はシンプルなことなんですけどね」

昨年からどこか手数がスムーズに出ず膠着する試合が続いていたのは確かでした。窮屈だったスタイルが、次の試合では変わっているでしょうか?

競技とは無関係のトラブルによるどん底状態から、強敵との連戦でチャンスを切り開いてきた異色のボクサー大沢選手のキャリアも、いよいよ最終盤に入って来ました。勝ってもう一度世界ランクに返り咲き、世界へのチャンスを掴むことが出来るか?

これから試合に向けてレポートを続けていこうと思います。お楽しみにお待ちください。

(ラグビーW杯のチケットは全滅だった)旧徳山と長谷川が好きです

秋のボクシング紀行 ユーリ阿久井政悟VSジェイセバー・アブシードin総社

  『地方興行レポート』というと上から目線に感じられる向きもあるかも知れませんが、他意はございませんので誤解なきように。むしろ首都圏や関西も集客の苦戦が続く日本のプロボクシング興行は地域密着こそ肝だと私考えております。

 今回は日帰りで岡山県の総社市まで倉敷守安ジムのホープ阿久井政悟選手(戦績はこちらから)がWBAアジア王者にして世界ランカーのジェイセバー・アブシードに挑むチャレンジマッチを観戦してきました。2015年度全日本ライトフライ級新人王の阿久井は序盤KOの多いハードパンチャー。練習環境や興行事情など、なにかとハンデの多い地方ジム所属のホープが世界ランクを掴もうと挑んだ意欲的なマッチメイクであります。

 9時頃高速バスで大阪を出て正午には岡山駅に。試合のある総社まではローカル線に乗って30分ほどです。
汽車_R
風景_R

 総社といえば昭和40年代生まれの私にとっては、角川映画の「悪魔の手毬唄」でお馴染みの町でございます。ディーゼル車の車窓から里の秋の風景を楽しむことが出来ました。
駅_R

 総社駅からはタクシーに乗車しましたが、運転手さんは世界ランカーとの試合と言うことをご存知でした。結構周知されているようであります。

 試合の舞台となるサントピアは元々社会保険庁がやっていた厚生年金休暇センターという施設が前身で、広大な敷地内にホテルやテニスやフットサルが出来るコートも備えています。迷路のような館内を案内のままに進むと、本格的なホールが出現。昭和遺産と言う感じであります。

看板_R
会場_R

 施設の巨大さに比べると集客は少し寂しく感じます。とはいえ会場では馴染みの観戦仲間や現役選手・元選手と何人も出会いました。メインカードに対する関心はなかなか高いといえそうです。

 アンダーカードで一つ気になったのは4回戦で2-1と判定が割れた試合。勝者につけた二人はフルマークと言う採点で、私にとっても「なんでこれでスプリットになるの?」と言う印象。敗者につけたジャッジには大変疑問を感じました。4回戦でここまで採点が割れると、採点基準への信頼がなくなると思います。

 その後物凄く淡々とした進行で休憩も無くメインを迎えたのですが、集客は正直少し寂しい感じ。地方都市で車がないと来れない会場と言うことを考えれば仕方ないのかも知れませんが、選手はリスクをとっているし、陣営とて経費を使って世界ランカーを呼んでいるのに勿体無いなと感じました。

 WBA11位にランクされているアブシードは昨年ミニマム級で小浦翼選手(WBC2位)にKO負けしていますが、フライ級に上げて世界ランカーを撃破する殊勲を上げて再浮上。阿久井と同じ23歳でKO率も高く侮れない相手です(ジェイセバー・アブシード選手の戦績)。

 ユーリ_R
リングインした阿久井選手と守安会長
 一方の阿久井は、今年四月に中日本のホープ矢吹正道とのサバイバルマッチを制すると、世界ランカーとの試合に備えて積極的に関東や関西に出稽古を重ねて来ました。地方ジムの選手は、スパーリングパートナーを探すのも都市部に比べれば大変です。まして今回の相手は阿久井が唯一敗れている中谷潤人選手(WBC4位)と同じサウスポー。千里馬神戸ジムでのスパーリングの際に少しお話を聞いたときは「出稽古にはなれているし、自分の環境の中で出来ることをやるだけ」と淡々と答えてくれましたが、果たして成果はいかに?

 序盤からアブシードは積極的に手数を出し、パワーパンチを振るってきます。阿久井は圧力もかけれているし左ボディが有効ですがやや手数が少なく、打ち終わりを狙われた被弾も多い。アブシードはボディが効いているそぶりは見せるのですが、被弾すれば必ずそれ以上のパンチを返してポイントも拮抗。手数を見ればアブシード勝ちにつけているジャッジがいてもおかしくない互角の展開が続きます。
 試合1_R
試合2_R
試合3_R
試合4_R
試合5_R
試合6_R
 
 試合が動いたのは7回、アブシードの左ストレートがヒットして阿久井がダウン。

試合7_R
試合9_R
試合10_R

 このダウンはそこまで効いている感じは無かったですが、再開後に左フックがジャストミートしてまたも阿久井ダウン。これはかなり効いたダウンでした。このまま試合を決めようとアブシードは猛ラッシュ。阿久井は防戦一方でラウンドを流すのがやっと。

試合11_R
試合12_R
試合13_R
試合14_R

 レフェリーが何度も顔を覗き込んでダメージを確認しますが、なりふり構わずクリンチでしのいでなんとかゴングまで耐えた阿久井。とはいえダメージは明白で、さすがに回復は無理なのでは?と思わせる疲労振り。次のラウンドで終わってしまうのか?

 ところがなんと、7R開始直後にロープ際での阿久井の乾坤一擲の右アッパーでアブシードの頭が大きく跳ね上がって、一気に形勢逆転。今度は阿久井が猛ラッシュでアブシードは防戦一方。残り時間は2分以上。阿久井は逆転KOのチャンス!会場の地元ファンも大声援を送って阿久井の背中を押す。

試合16_R
試合17_R
試合18_R
試合19_R
試合20_R

 アブシードはコーナーに詰まって反撃出来ず、何度か体も流れてダウン寸前。ここで一発良いのが入れば試合が決まる!という場面が続くが阿久井も打ち疲れたか?一方的展開ながら決め手を欠いて惜しくもラウンド終了。深刻なダメージをものともしない阿久井の超人的な大攻勢で会場は大盛り上がり。一方青コーナーではフィリピン人セコンドが意識が遠のいたアブシードに張り手打ちをして気合を入れるという異様な雰囲気に。

 両者ともダメージはあるが、残り3ラウンドどうなるか?と思わせましたが、8Rすでに阿久井には余力は無く、今度は急激に回復したアブシードが阿久井を攻め立てて、阿久井の体が流れたところでレフェリーが試合をストップ。判断に迷う場面が多い難しい試合でしたが、試合全体で公平なレフェリングが光りました。

試合21_R
試合22_R


 7Rに阿久井選手が逆転KOで試合を決めていれば伝説的な一戦になったと思いますが、これが勝負の厳しさ。とはいえKO負け寸前からあわやの場面を作った驚異的な回復力と強靭なメンタルは大変印象的でした。一方敵地で気持ちを切らさず勝ちきったアブシードもお見事。若武者同士の気持ちがぶつかった素晴らしい一戦でした。

 試合後、阿久井選手は自身のツイッターで1Rに右腕を痛めていたことを告白していましたが、万全な状態で再起して欲しいと思います。7Rの右アッパーは本当に勝負をかけたパンチだったんだなあ。

 とはいえ、折角の熱戦だったのにテレビ中継も無く、試合写真つきの報道も無く、私には『本当に勿体無い』としか言えません。ネットを活用して試合の映像を流したりする工夫がなければ、選手は文字情報だけで判断されてしまうだけです。好試合が見られないのはファンにとっても不幸なことです。ほんとボクシング界もうちょっとなんとかならんのでしょうか?当事者の自助努力だけではなんともならんと思います。

 12月の興行集中はなんとかならんのか?と感じる(旧徳山と長谷川が好きです)